[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:96分
監 督:ジェームズ・ガン
出 演:レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、リヴ・タイラー、ケヴィン・ベーコン、ネイサン・フィリオン、グレッグ・ヘンリー、マイケル・ルーカー、アンドレ・ロヨ、ショーン・ガン、スティーヴン・ブラックハート、リンダ・カーデリーニ 他
コピー:
正義の心で悪をKILL
特殊能力ゼロ、モテ度ゼロ、体力微妙──なりきりヒーローが世界を救う
子供の時からいじめられつづけ、いいことなんか無かったブサイク中年男のフランク。彼が人生を振り返って、良かったと思えることはたったの2つ。泥棒が逃げた方向を警官に教えてヒーロー気分になれたことと、自分とは不釣合いなほど美人なサラと結婚したこと。しかし、サラはヤクの売人ジョックと恋仲になり、フランクの元から去ってしまう。失意のどん底のフランクは、突然、神の啓示を受ける。最愛の妻をヤクの売人という悪魔から救うために、正義のヒーローなれと。フランクは、自作のコスチュームを作り、“クリムゾンボルト”と名乗り、街をパトロールし、レンチを武器にチンピラをぶちのめしていく。そんな彼の行動は、ネットやTVニュースで次第に話題となっていく。市民を襲う犯罪者として…。そんな彼の前に、コミックショップの店員リビーが現れ、自分を相棒にしろと、突然押しかけてきて…というストーリー。
誰もが『キック・アス』を思い浮かべるでしょう。だって素人がコスプレしてヒーロー気取り。しまいにはネットやTVニュースで有名になっちゃう。そして女の子のヒロイン仲間が出てくる。ほぼ同じプロットだもの。パクりか?なんて思われるかもしれないけど、公開年は同じだし、たぶんそれはない。
『キック・アス』にあって本作にないもの。それは“スタイリッシュ”。
本作にあって『キック・アス』にないもの。それは、小汚さ。エグさ。作品自体がパンツのシミみたいなイメージだ。
主人公のフランクは、ヘタレキャラどころか、ちょっと頭のネジが緩んでいる。はっきりいって社会不適合者である。対人関係をうまく構築できない、何らかの精神的な障害の持ち主のように見える。そんな彼が、職場のダイナーでヤク中の女性と出会った瞬間に電撃が走り、そのまま結婚にまっしぐら。でも、もちろんうまくいわけがない。妻に去られた後の彼の行動は、アホ丸出しだし、どう考えても逃げた妻が、そこまで固執する価値のある女性にみ映らない。
その愛する妻が、ヤクの売人に寝取られて、打ちひしがれた末に、自作ヒーローとなる契機も、神からの啓示。でも、所々登場するこの“啓示”が彼の特質をよくあらわしている。“啓示”という形をとっているから、外部からの意見に従っているように見えるけれど、結局は彼の内なる声にしたがっているということ。つまり、自分がこうだと信じたことは正しいことだと、基本的に疑わない人間だということである。これはパーソナリティ障害の人の特徴である。
でも、この視点は面白い。ヒーローとは、自分の行いが“正”であり、他人から歓迎される行為であると、疑わない者だから。そりゃ、たまに自分の行動の正当性を悩むヒーローはいるけど、最終的にはやっぱり正しいんだ!ってことになる。だって、そうじゃないとヒーローなんかやってられないもの。でも、現実にそれができる人間は存在するとすれば、こういうパーソナリティ障害の人なんじゃね?と。
ただ、私だけかもしれないが、このフランクを見ていると、なにかじんわり涙が出てくるというか、身につまされるというか…。何故かよくわからないのだが、自分の切り取った一部が巨大化したような、分身のように思えてきて、いままで感じたことがないような、変な“共感”覚えてしまった。私も少し病んでいるのかもしれない。
さらに、パートナーに立候補するエレン・ペイジ演じるリビーも、同様にパーソナリティ障害っぽい性格傾向。しかし、フランクは、悪は許せない!妻を救う!っていう目的があって行動しているのに対して、彼女は制裁を加えること自体が目的。目的と手段の区別がすぐに付かなくなる思考回路の上に、性的にも攻撃的にも欲望を抑えられないというやっかいな人物。
そんな彼女に引っ張られて、フランクの行動も加速せざるをえなくなってくる。
たしかに『キック・アス』のクロエたんは、顔の筋肉が思わず緩むほどかわいかった。対して、本作のエレン・ペイジは、こっちの顔が苦笑いになるほどのトホホっぷりだ。でも、エレン・ペイジの“汚れ役”への徹しぶりはすごい。あっちの果て方から、命の果て方まで、自分のポジションが良くわかっているんだろうけど、あそこまでやられるともう何も言えない。嬉々としてザクッザクやってる様子に、何かを超越した生き物の姿が滲んでいるようだ。彼女の演技を見るだけでも、本作を観る価値があるといってもいいすぎでは無いと思う。
ラストの壁。『メアリー&マックス』と同じ感動がそこにあった。こんなアホな話なのに、『サイン』のラストのような、“大いなる力”への畏怖と敬服を感じてしまう。そう、フランクは最後、悟ってしまうのである。
ああ、ヤバいもの観ちゃったなって感じ。私の中では、『キック・アス』を超えてしまっている。お薦め。
負けるな日本
公開年:1964年
公開国:イギリス、アメリカ
時 間:93分
監 督:スタンリー・キューブリック
出 演:ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、キーナン・ウィン、スリム・ピケンズ、ピーター・ブル、トレイシー・リード、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ジャック・クレリー、ポール・タマリン 他
受 賞:【1964年/第30回NY批評家協会賞】監督賞(スタンリー・キューブリック)
【1964年/第18回英国アカデミー賞】作品賞[総合]、作品賞[国内]、美術賞[モノクロ]、国連賞
【1989年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
アメリカ軍基地の司令官ジャック・リッパー将軍が精神に異常をきたし、ソ連の核施設への核攻撃(R作戦)を発令した。司令官の行動を知った副官であるマンドレイク英国空軍大佐は、司令官を止めようとするが逆に執務室に監禁されてしまう。大統領は、ソ連と連絡を取って事態の収拾を図ろうとするが、ソ連は他国から攻撃された場合に、地球上の全生物を放射性物質によって絶滅させる爆弾が自動的に発射される兵器が配備済であることを告げる…というストーリー。
副題は“または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか”。はじめは気づかなかったけど、ピーター・セラーズが、ストレンジラヴ博士・マンドレイク大佐・アメリカ大統領の3役をこなしてるのね。
正直、世で持ち上げられているほど大傑作とは思わなかったんだけど、それは、キューブリックのこと、ピーター・セラーズのこと、当時の社会情勢…のそれぞれがどれだけピンときているかの度合いによるのかもしれないね。
でも、観終わってすぐはそうは思わないんだけど、すこし落ち着いて振り返ってみると、「ああ、傑作じゃん」って思える。
悲観的に表現していないから逆に怖いっていう効果や、笑わかそうとするのがコメディではないということを体現してる点。それに、ナチスの亡霊とか日本の技術力への納得いかなさとか、枢軸国への揶揄をチラ見せして、東西冷戦にだけ焦点を当てさせないセンスなど、すばらしいと思う。
核戦争がアホな誰かのせいではじまってしまう…とか、人間が自分で作ったシステムのせいで首を絞められてしまう…なんていうのは誰でも考え付く内容。それを、お構いなしの疾走感と、笑いの寸止め具合で、絶妙な出来映えに仕上がっている。大統領へ電話をかけるくだりなんて、あれ以上笑いを取ろうとして何か加えたら、絶対に醒めるもの。正直、私は表面的に笑った場面は一切ない(ニヤリともしなかった)。でも、心の中では笑っていたのは間違いない。
それほど高額な予算をかけているわけでもなさそうな点も感心する。爆撃機の飛行シーンの合成も、それほどハイテクではないし。でも、米軍基地での戦闘シーンの迫力など、できることはきっちりとやろうという、子供騙しと思われない線がキープされている。
ラストでたくさんの核爆発の映像が流れるけれど、これは実際の実験時の記録フィルムかな。当時はあきれるくらいたくさん実験してたからね。その頃の大気は放射性物質満載だったんだろうね。
そのままのオチであることも、逆に大インパクト。そのインパクトの後ろにSee you agein.と曲が流れる、空気の作り方が絶妙。
観ないまま死ぬのは勿体ない名作だね。
負けるな日本
公開年:1974年
公開国:日本
時 間:94分
監 督:福田純
出 演:藤岡弘、由美かおる、草刈正雄、加山雄三、若山富三郎、内田勝正、スティーブ・グリーン、岡田英次、睦五郎、ジミー・ショウ、ロジャー・ウッド、ウィリー・ドウシー、山谷初男、ロルフ・ジェッサー、ゲルマン・ライナー、フランツ・グルーベル、バート・ヨハンソン、デュケネ、ギンター・グレイブ、ダンハム、ヘンリー、ジュリー・クラブ、ケリー・バンシス、高村ルナ、アンドリュウ・ヒューズ 他
国連の秘密組織'“エスパイ”に所属する田村とマリアは、テストレーサーの三木をスカウトする。エスパイは、超能力を悪用する逆エスパイと呼ばれる悪の集団と戦う超能力者集団である。田村とマリアは三木の強力な念動力に目をつけたのだ。やがてエスパイたちは逆エスパイによるバルトニア国首相暗殺計画の情報を察知し、それを阻止するために行動を開始する…というストーリー。
藤岡弘が主演で東宝製作だからなのか、レンタルビデオ屋で特撮ヒーローの棚にあったぞ(笑)。特撮といっても、ちょっとしたオプティカル合成と模型の爆破ぐらいで、もちろん変身ヒーローも怪獣も出てこない。せめてSFの棚だろ。
加山雄三、若山富三郎と無駄に豪華俳優が並ぶし、トルコロケにヨーロッパロケと時代を考えると結構な制作費だったのではなかろうか。
無駄なお色気シーンに、冒頭とラストに流れるムード歌謡。当時、どういう思惑があったのかはわからないが、プロモーション的に迷走した跡が伺える。由美かおるは同じお色気ショットのカットを何回も何回も使われて、ちょっとかわいそう。
タイトルの“エスパイ”てのはエスパーなスパイってことなんだろうけど、“エスパイ”の発音が“眠たい”のイントネーションなのが気になる。“ネクタイ”のイントネーションだと思うんだけど…。
エスパイという正義の組織があって、逆エスパイという悪の組織があって、逆エスパイが企んでる何かをエスパイが阻止するというお話で、至極単純。
#悪の組織名が“逆エスパイ”というのもなかなか新鮮なのだが、エスパイあっての逆エスパイなわけで、逆エスパイの行動を阻止するために存在するのがエスパイという本末転倒な命名に、首を傾げざるを得ない。
超能力といっても念動力、透視能力、予知能力、幻覚能力、読心力等々、色々あると思うのだが、それぞれがどういう能力に長けているのか、いまいち面白く描けていない。サイボーグ009にしろ幻魔大戦だとその辺のギミックやキャラ付けがしっかりしているのだけれど、その辺が極めて浅い。
そんな調子だから、ヨーロッパで鐘の音の超音波で苦戦するというシーンがあるのだが、とても変テコ。老師とやらが(何者だ?)自分の力の限り超音波を阻止すると言うのだが、超音波なんだから、耳にちり紙で栓でもすりゃいいだけだと思うのね。脳に直接送り込まれる波動だ!とかそういうのではないのだから(敵はヘッドホンして防ぐいでるんだし)。
その辺の浅さが究極的に残念なのが、ラストの展開。大悪人だったけど、そういう事情があったのね…程度の内容で映画を締められてもねぇ。せめて、若山富三郎演じる悪の首領ウルロフの悲惨な過去を回想シーンとして挟むとか、いやたとえそんな過去があったからといってダメなものはダメなんだ!俺なんかはこういう経験をしてこう悟ったぜ!だから俺はお前を認めないぜ!とか、そういう正邪のバトルくらいやってもらえないとさ。それに加えて、バトル上の仕掛けとかもあるとよかった。
しかし、わざとくだらなく極めてマンガチックに描こうという意図があるんだとは感じる(劇画マンガ的にという表現が正しいかな)。ノリで突っ走ろうという姿勢は評価したいし、製作姿勢として正しいと思う。だけど、それなら、もっと人間ゆえの苦悩とか、恋愛のもつれとか、不必要に愛や正義を振りかざすとか、スポ根かよ!って思われるくらいのアホなノリにもっと徹してほしかった。
小松左京さんもお亡くなりになったことだし、もう一回つくってもいいくらいのプロット・設定だと思う。もちろんラストの一捻りは必要だろうけど。
『修羅雪姫』クラスのブッ飛び作品だったり、トンデモ作品だっていうなら、是非モノでお薦めしたところなんだけど、意外と観られるレベル。ということで、逆にお薦めしにくい。凡作。
負けるな日本
公開年:2008年
公開国:オーストラリア
時 間:94分
監 督:アダム・エリオット
出 演:トニ・コレット、フィリップ・シーモア・ホフマン、エリック・バナ、ベサニー・ウィットモア 他
コピー: ある日、しあわせの手紙がやってきた──
オーストラリアに住む8歳の少女メアリー。友達ができず、家族にもかまってもらえない彼女は、外国の見知らぬ誰かに手紙を書こうと思いつき、アメリカの電話帳から、変わった名前という理由でマックス・ホロウィッツという人物を選ぶ。そのマックスはニューヨークに住む孤独で過食症による肥満の中年男性。そんな彼の元に、メアリーからの手紙が突然届き、彼はタイプライターで律儀に返事を書く。そして、二人の文通はその後も何年も続き…というストーリー。
これは実話です…という所から始まるのだが、全編クレイアニメというユニークな作品。
周囲の環境に恵まれていないオーストラリアの少女とニューヨークの孤独な中年男が、手紙を通じて自分の思いの丈をぶつけ合う。“心を通わせている”というのとはちょっと違う。確かに、お互いの質問にアドバイスを返したりはするんだけど、片方は小学生だし、片方はアスペルガー症候群のおっさんだし、おたがいの物差しでノーガードでパンチの打ち合いをするようなもの。その様子はなかなかおもしろい。
三分の一くらい進んだあたりで、このままほっこりした触れ合いが続いて、ちょっとした奇跡でもあって、出会うことができたりして感動…みたいな展開なのかなと考えていたが、その予想はいい意味で裏切られる。
それを喋っちゃうと完全にネタバレになっちゃうので言わないけれど、マックスはガラガラと現実社会の坂を転げ落ち(なぜ自分が転げ落ちているのかも理解できずに)、メアリーは鬱屈した日常に身を置きながらも立派に成長していく。この差がやがて二人の間の大きな溝を生むことになるのである。
やはり、この内容をクレイアニメで表現した効果は大きいと思う。それは、なかなか重いストーリーとアニメとのコントラストを産むという意味だけではなく、子供の目から見る世界が大人が見ている世界とは違うということ、また、アスペルガー症候群の人の目にも違って見えているということを暗喩していると、私には思えるからである。
(またまたネタバレぎみになっちゃうんだけど)
だから、最後の部屋を訪れるシーンは、メアリーはすっかり大人になっているわけだし、マックスはいないわけだから、もうアニメである必要はないと思うんだ。もし私が監督だったら、ドアを開けた瞬間から実写にする。イメージにぴったりの役者を、このシーンのためだけにわざわざ見つけてくる。そして最後の壁のシーン。多分、実写のほうが湧き上がるものは大きかったと思う。
まあ、それはそれとして、感動ともほっこりとも違う、味わったことの無い感覚のラストで、とても新鮮だった。ジャケット画像を見て子供だましのアニメだと思ったら大間違い。むしろ子供になんかに見せちゃダメ。
違う角度からグイっとえぐられるような快作だった。是非観てほしい。お薦めしたい。ちょっと、世間の評価が低すぎ。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:129分
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、フランキー・マクラレン、ジョージ・マクラレン、ジェイ・モーア、ブライス・ダラス・ハワード、マルト・ケラー、ティエリー・ヌーヴィック、デレク・ジャコビ、ミレーヌ・ジャンパノイ、ステファーヌ・フレス、リンゼイ・マーシャル、スティーヴン・R・シリッパ、ジェニファー・ルイス、ローラン・バトー、トム・ベアード、ニーヴ・キューザック、ジョージ・コスティガン 他
ノミネート:【2010年/第83回アカデミー賞】視覚効果賞(Joe Farrell、Stephan Trojanski、Bryan Grill、Michael Owens)
パリのジャーナリスト、マリーは、東南アジアでのバカンス中に、津波に遭遇。一時、死線を彷徨うが、その間に不思議な世界を垣間見る。生還した後も、その光景が頭から離れず、それが何なのか調べ始める。サンフランシスコでは、かつて霊能者を仕事としていたジョージが、自らの能力に嫌気がさし、今では工場で働いていた。しかし、本人の意思に反して、今でも彼の能力を頼って人々が押しかけてくるのだった。さらには、料理学校で知り合った女性に好意を抱いても、彼の能力が二人の間を裂く結果となってしまう。ロンドン在住の双子のジェイソンとマーカス。ある日、突然の事故で兄ジェイソンがこの世を去ってしまう。ジェイソンとの別れを受け入れがたいマーカスは、多くの霊能力者を訪ね歩いた末、ジョージのウェブサイトを発見し…というストーリー。
震災の記憶云々は別にしても、冒頭の津波のシーンは、まさに息の詰まるような圧巻の迫力。そこでの臨死体験で、自分の生き方の転機を迎えるパリに住むマリー。同様に、サンフランシスコ、ロンドンで独立したストーリーがバラバラに展開し、はたしてそれらがどのように絡んでいくのか、全然読めない。
それらが、徐々に“死後の世界”というテーマで繋がっていくという、中々巧みなシナリオ…の、はずだったのだが。う~~ん。
霊能力のあるジョージは、自分の能力が“呪い”だと思うほど、苦痛を感じている。日本にも、イタコまがいの商売をやっている人が結構いるけれど、本物だったらつらくなって当然だと思う。本作でも、お気楽に霊能力で商売している人やら、簡単にもっともらしいことを並べるだけの宗教家がたくさん出てくる。それらは、100歩譲ってカウンセリング的な効果があるとしても、はたして“本物”を求め悩む者の救いになり得るのか?
3人は不思議な体験をしているんだけど、彼らの頭の中には“神”というものが不在なのも興味深い。この脚本は、既存の宗教とは無関係な“何か”を表現しようとしているんだと思う。『サイン』に通じる私の好きなテーマなので、物凄く期待した。しかし…。
本作での“HEREAFTER”というのは来世という意味で使われているのだが、輪廻転生的な意味ではなく、死んだらどうなる?という意味合いで使われている。で、本作に出てくる死後の世界のイメージが、一神教的な“あの世”のイメージを押し付けている感じがする。キリスト教がいうところの天国や、イスラム教のいうところの緑園は、あくまで最後の審判の後にやってくる世界だから、審判がやってくるまでのモラトリアムな世界を指している。そのイメージどおりで、既存の宗教と距離を置こうというスタンスを反故にしてしまっているのが、非常に残念。この主旨のブレかたは実にいただけない。
終盤、その3本の糸が、ギュギューっと急激に撚られていくのだが、ジョージはマーカスの願いを叶え、マーカスは二人を結びつけ、マリーとジョージは同じ世界を見た者同士共感する…。で、それ以上に何もない。そこから、何か哲学的な示唆も、心の救いもない。いや、3人自身は共感や納得を得たんでしょう。でも観ているこっちは何も得られないし感じない。
そこで終わっちゃうなんで、まるでパイロットフィルムみたい。これで満足できる観客は、ほぼいないと思う。いくらなんでも肩透かしが過ぎるよ、イーストウッド御大。こんな作品がヒットするわけがない。
ラジー賞にノミネートすらされていないのが不思議…というか、そこからも無視されたという方が正しいかも。そう思うくらいに観終わってのがっかり度が大きい。お薦めしない。
負けるな日本
公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:154分
監 督:マイケル・ベイ
出 演:シャイア・ラブーフ、ジョシュ・デュアメル、ジョン・タートゥーロ、タイリース・ギブソン、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー、パトリック・デンプシー、ケヴィン・ダン、ジュリー・ホワイト、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、グレン・モーシャワー、アラン・テュディック、ケン・チョン、ブレット・スタイムリー、ジョン・トービン、パトリック・パンクハースト、キャスリーン・ギャティ、ドリュー・ピルスバリー、ビル・オライリー、ドン・ジーンズ、ウォルター・クロンカイト、コリー・タッカー、ラヴィル・イスヨノフ、バズ・オルドリン、ジョシュ・ケリー、ミカル・ヴェガ、メレディス・モンロー、スコット・C・ロウ、シャーロット・ラバディー、インナ・コロブキナ、ピーター・カレン、ヒューゴ・ウィーヴィング、レナード・ニモイ、ロバート・フォックスワース、ジェス・ハーネル、チャールズ・アドラー、トム・ケニー、ジェームズ・レマー、レノ・ウィルソン、フランク・ウェルカー、ジョージ・コウ、フランチェスコ・クイン、キース・ザラバッカ、グレッグ・バーグ、レスター・スパイト 他
コピー: 人類は 今 立ち上がる
1969年、アポロ11号は月面着陸に成功するが、アポロ計画には別の真の目的があった。NASAは月の裏側に、地球外の知的生命体によるものと思われる落下物を発見しており、その未知のテクノロジーを入手したかったのだ。しかし、回収された物体は、現在まで封印され続ける。大学を卒業してなんとか就職したサムの会社は、オフィス機器に姿を変えたメガトロンの部下に再び襲撃される。その襲撃の裏に、アポロ11号が回収した物体が関係していることを知ったサムは、オプティマスにその事実を伝えようと、政府機関に押し入る…というストーリー。
二作目(『トランスフォーマー/リベンジ』)のアクションシーンのデキが意外と良くて、こりゃ三作目ができるな…と思ってはいたが、いくらなんでもシナリオがポンコツすぎる。
メガトロンとセンチネルに騙されて、人類は蹂躙されまくりになっちゃう。アメリカが諸外国にやってることを自分たちがやられちゃってるっていう描写に見えるんだけど、そんな反省的な意味合いを娯楽映画に盛り込むなんてめずらしい。派手なアクションに紛れてシニカルな視点を盛り込むなんて、マイケル・ベイ、なかなかやるな…と思ったのだが、別にそういう意図を盛り込むつもりはなかったみたいで、すぐにパトリオットな展開になる(なんだ、行き当たりばったりのシナリオだったのか)。
急に『スターゲート』みたいな展開になるし。母星って滅びたんじゃないのか?結びつけてどうするんだろう。意味がよくわかんない。
その後のバトルは、滑って落ちてのジェットコースタームービーに。オートボットはどうでもいい感じ。途中、彼らが何を目的に動いているのかよくわからなくなり、だんだん眠くなる(いや、実際、一瞬落ちた)。これでもかこれでもかというアクションなんだけど、緩急がないから脳が飽きるの。
あいかわらず、オプティマス、バンブルビー、センチネル以外のオートボットは、誰がだれなんだか区別がつかないし。もうちょっとキャラの個性を立ててほしいんだが。
小娘の口車にのせられて、メガトロンとセンチネルの仲間割れというくだらなさ。センチネルにあれだけ苦戦しながらメガトロンには造作も無く勝利するオプティマスの都合のよさ。最期はグダグダである。
アポロ計画にまつわる諸々の疑惑を絡めた展開は悪くないけど、それ以前に、こんな切り札みたいな手があるなら、メガトロンはもっと早く実行すりゃよかったじゃ無いかって気もするが、まあ、そこは彼らもやっと見つけたんだ…ということにしておこう。
それにしても、なんか重要そうな雰囲気だけだして、ただの端役だったマルコヴィッチ。CIAのおばさんが悪役になりきれていないし、実はいいキャラってわけでもない中途半端さ。ウチの社員はみんな共和党だから…とか、そのレベルのギャグらしきものが散見されるけど、全部がくだらない。
オートボットたちのアクション(というかCG)は、前作以上にキレがいい。さすがマイケル・ベイ!とは思うのだが、本当にそれだけ。これは、劇場で3Dで観たほうがいいんじゃないのかね。映画っていうか単なるアトラクションだと思う。いっそ座席も可動式にして前から風が吹き付けるくらいの設備にして3000円とりゃいいじゃん。ディズニーランドみたいにさ。
これをお家でDVDで観たって、何てこと無いわ。新作料金で観る価値はない。おそらくラジー賞のワースト続編賞は確実かと…。
負けるな日本
公開年:2002年
公開国:ブラジル
時 間:130分
監 督:フェルナンド・メイレレス、(共同監督)カティア・ルンド
出 演:アレクサンドル・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ、アリシー・ブラガ、ドグラス・シルヴァ、ダルラン・クーニャ 他
受 賞:【2003年/第70回NY批評家協会賞】外国映画賞(フェルナンド・メイレレス)
【2002年/第56回英国アカデミー賞】編集賞(Daniel Rezende)
コピー: ブラジル リオデジャネイロ 神の街 暴力も銃もドラッグもすぐそこにある日常を駆け抜ける少年たちの事実にもとづく物語
1960年代後半。リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”の治安は最悪で、強盗や殺人が絶え間なく発生。中でも3人の少年が犯罪行為を繰り返していたが、幼い少年リトル・ダイスは3人組とともにモーテル襲撃に加わると、そこで宿泊客を殺害し、そのまま逃走して行方をくらます。一方、3人組の一人を兄にもつ少年ブスカペは、事件取材の様子を見てカメラマンに憧れるようになる。その後、リトル・ゼと名を改めた成長したリトル・ダイスが、街に舞い戻ってきて…というストーリー。
救いようのないクソ底辺の貧民地区で繰り広げられるチンピラの話。
振り切られないように付いて来いや!って言われているようなスピーディで緊張感のある展開だが、同時に虫が蠢いているようなむずがゆさを感じる。雑然と荒んだ感じが良く表現できている。本物のスラムの子をつかっているらしいのだが、その効果が大きいのかもしれない。
仕事というのが、他人のために何かをして、正当な対価を貰う行為である…ということが、シティの人たちはわかっていない。働いている人も、他者から金を貰うために労力をつかうことが労働だと思っているから、仕事の質が悪いままで貧しいまま。そんな大人を見ていれば、金さえ稼げれば働こうが略奪しようが違いがないように思えて、子供がギャングになるのもあたりまえ。街には教会もあるのだが、貧民窟とカトリックの組み合わせは、貧しさを助長するだけ。
物語はまるでオムニバスのように、目まぐるしくスポットが当たる主人公は変わっていく。強いて言えば真の主人公は、この“シティ”。主役とおぼしきブスカペは狂言廻しだね(まあ、本作の原作者なんだろうけど)。スピード感が溢れすぎで、内容がみっちり詰まっていて、ふと経過時間を見るとまだ半分も終わってないや…と感じるほど。
実録犯罪モノのような印象のジャケット写真だけど、演出や編集手法は実にスタイリッシュ。ありがちな、実話ベースのダレダレ感はない。むしろ実話であることが、効果的におもしろさに繋がっている作品で、予想外の名作。いやぁ、おもしろかった。強くお薦め。
#中南米が、いくら景気が良くても、一過性のものでしかないんだろうな…と感じさせてくれる。社会の基礎がポンコツなんだもの。オリンピックはあるからってブラジルに投資なんかすると、痛い目にあうに違いない。
負けるな日本
公開年:2009年
公開国:ドイツ、ロシア
時 間:112分
監 督:マイケル・ホフマン
出 演:ヘレン・ミレン、クリストファー・プラマー、ジェームズ・マカヴォイ、ポール・ジアマッティ、アンヌ=マリー・ダフ、ケリー・コンドン、ジョン・セッションズ、パトリック・ケネディ 他
ノミネート:【2009年/第82回アカデミー賞】主演女優賞(ヘレン・ミレン)、助演男優賞(クリストファー・プラマー)
【2009年/第67回ゴールデン・グローブ】女優賞[ドラマ](ヘレン・ミレン)、助演男優賞(クリストファー・プラマー)
【2009年/第25回インディペンデント・スピリット賞】作品賞、監督賞(マイケル・ホフマン)、主演女優賞(ヘレン・ミレン)、助演男優賞(クリストファー・プラマー)
コピー: 大作家と“世界三大悪妻”と名高い 妻ソフィヤとの知られざる愛の物語。
ロシアの文豪トルストイが提唱する自然主義的思想を信奉する人々が、彼の元に集い“トルストイ運動”と称する共同生活を送っていた。トルストイも彼らの実践を評価して、自分の財産のすべてをロシア国民に分配しようと、自分の作品の著作権を放棄しようとする。しかし、50年近くも夫を献身的に支えてきた妻ソフィアには、家族の生活を困窮させるその行為が、とても許せるものではなく、必死に阻止しようとする。そんな中、トルストイの個人秘書として雇われた青年ワレンチンは、その誠実な性格から夫婦各々に信頼され、二人の間で板ばさみになっていく…というストーリー。
悪妻で有名なトルストイの妻と、そこから逃げるトルストイの話。トルストイの作品は読んだことはなくて、『戦争と平和』の映画を観たくらいだな。
本作中の、晩年のトルストイは、私有財産制を否定する活動に夢中になっており、実におめでたい。金持ちが財産を独占するから、貧しい人はいつまでも貧しいんだ!という短絡的な想像しかできない、そんなレベルの老人。
まあ、共産主義国家が成立すれば、すべてが平等になってみんなハッピーと本当に思っていたロシア人たちだもの、文豪トルストイといえども、このくらいのアホ思想に溺れてもしかたあるまい。
しかし、例えば、私有せずに共有化したとしても、その財産を維持するためには、誰かが責任もって管理する必要が生じる。その責任を果たすためには占有が必要なわけで、それは私有と変わらない。色々なケースを想像すれば、私有=強欲ではないケースが多々あることがわかりそうなもの。
無償で管理して誰にでも自由に使わせるのは、単なるボランティア。人のために労働して、その正当な対価を貰うことまで否定するから、共産主義国家は全部崩壊したわけだ。その愚かさは歴史が証明している。トルストイ運動はまるで原始キリスト教のよう。共産主義もキリスト教の変種といわれることがあるが、その指摘が実に腑に落ちる。
また、トルストイは、“自由”について色々語るんだけど、普遍的な自由なんか実際には存在しないということが根本的にわかっていない。この世に存在するのは“○○からの自由”だけである。
始めのほうは、あまり悪妻っぷりは関係なさそうな感じで話は進むんだけど、トルストイがこんなアホな運動をし始めるもんだから、そりゃ奥さんもブチ切れる。トルストイ運動 VS. そんなアホなことをやめさせたい妻。このバトルを展開しながらも、夫婦の間にはこれまで育んできた愛の思い出もある。だから夫婦の間はすぐに破綻するわけではないのが面白い。そして、その間で揺れ動くトルストイ信者の若者が、狂言廻しを演じる。
で、結局、この奥さんは悪妻でもなんでもないのだよ。財産を貧しい人に与えたい夫の意志に逆らって、作品の版権を自分の物にしたい強欲人間だ!なんてのは、トルストイ運動をどうしても進めたいとりまきのクズ人間によって作られた風評。本作を見る限り、その悪妻という評判はウソであることがわかる。
誰がどうかんがえても、トルストイ側がやっていることのほうが、クレイジーである。まあ、どこの宗教団体でも似たようなことやるよね。セクトっていうのはこういう風にできていくんだな…と、変な感心をしちゃった。
こんな感じだから、比喩じゃなく、本当に駅で死んだんだ…というオチが、なんだかアホっぽく思える。だけど、ポール・ジアマッティは、こういう小ずるいクソ人間を演じさせたらピカ一だし、さすがヘレン・ミレンって思わせてくれる圧巻の演技が、佳作にまで引っ張り上げてくれている。まあ、あまり万人が興味を抱くような内容ではないな。
負けるな日本
公開年:2000年
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:ジェイ・ラッセル
出 演:フランキー・ムニッズ、ダイアン・レイン、ケヴィン・ベーコン、ルーク・ウィルソン、ケイトリン・ワックス、ブラドリー・コリエル、クリント・ハワード 他
受 賞:【2000年/第6回放送映画批評家協会賞】ファミリー映画賞
コピー: おんなじ気持ちで笑っていた。おんなじ気持ちで泣いていた。おんなじひとりぼっちがふたり。
ウィリー・モリスのベストセラー自伝小説をもとにした少年と犬のハートウォーミング・ストーリー。
1942年、ミシシッピー州にある田舎町。8歳の少年ウィリーは、同級生と馴染めずいじめられる日々をすごしていた。そんな息子を心配した母親は誕生日プレゼントに子犬をプレゼントする。ウィリーは子犬にスキップと名付け、大親友となる。すると、ウィリーはスキップを通じて、周囲の人たちと徐々に打ち解けていき…というストーリー。
ジャケットを見たら、犬メインのありきたりなふれあい感動モノかと思っちゃう。安易に犬を使ってのお涙頂戴映画かと思ったら、ちょっと違った。
舞台は第二次世界大戦時のアメリカ。アメリカ国内のお話で、戦地ではないながらも配給制が布かれており、結構緊迫している情勢。不穏な空気の中でも、子供はどの時代も変わりなく、いじめいじめられながら成長していく
はじめは、いじめられっ子の日々の話で、犬は脇役でしかない。
なんてことのないストーリーなのに、まったく飽きずにひきつけられる。“犬がいたあの日…”って感じで、全編にわたって、じんわりと暖かいものが流れている感覚。
後半になると趣が変わって、出征先から戻ってきてしまった憧れの隣人ディンクのくだりや、過去にスペイン内戦で足を失い偏屈になってしまった父親との和解など、男らしさというか人間らしさってなんだろう、生きるってなんだろう…ってところに焦点が移っていく。
ただ、ちょっと理解できかったのが、犬が戦地で使われているニュース映画を観て、スキップを軍隊に入れようとしちゃうくだり。軍にいれたら別れることになるのに、なぜそれを望むのか、まったくピンとこない。
また、父親や隣人の若者ディンクのくだりも、掘り下げきれておらず、ちょっと不完全燃焼気味。でもそこは、実話だから、仕方がないんだろうね。
犬を飼っている人なら、最期はぜったい経験すること。ベッドに上がれなくなるまで長生きして、ああいう感じの最期を迎えるところを見ると、やっぱりグっときちゃうな。犬とはああいう関係でありたいと思う。
犬を飼っているかいないかで全然感想が異なると思われるが、今時の映画では考えられないほど、緩くて毒がなくて、それが逆に新鮮な作品。意外な良作。軽くお薦め。
負けるな日本
公開年:2008年
公開国:日本
時 間:101分
監 督:宮崎駿
出 演:山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、土井洋輝、奈良柚莉愛、柊瑠美、矢野顕子、吉行和子、奈良岡朋子、左時枝、平岡映美、大橋のぞみ、竹口安芸子、山本与志恵、片岡富枝、佐々木睦、羽鳥慎一、山本道子、金沢映子、齋藤志郎、石住昭彦、田中明生、脇田茂、つかもと景子、山本郁子 他
受 賞:【2008年/第32回日本アカデミー賞】音楽賞(久石譲)、アニメーション作品賞
コピー: 生まれてきてよかった。
海辺の崖の上にある一軒家に暮らす宗介。ある朝、海辺で瓶にはまっていた魚を助け、ポニョと名付ける。宗介もポニョもお互いを大好きになる。ところが、ポニョは、人間をやめて海の住人になっている父フジモトによって海に連れ戻されてしまう。どうしても宗介に会いたいポニョは、人間になる決意をして、フジモトが貯めていた“生命の水”を海に撒き散らし、ポニョの妹たちのつくった大津波に乗って宗介の所を目指す…というストーリー。
アニメーションの技術はいかにも宮崎アニメらしく、美しく魅力的な味わい。古代の海洋生物の魅力はハンパない。宮崎アニメとはベストマッチだね。しかし、ストーリーは…。
名前で家族を呼びあう違和感。なんなのかね、気持ち悪い(ちょっと昔に、こういう“仲の良い親子”像を勘違いしたヤツらっていたけどね)。そういう部分も含めて始めはバタバタした展開で、まとまりがないのだが、40分経過したくらいからやっと落ち着いて見られる感じに。
#海水魚を水道水で飼おうとする子供が現れないことを祈る(笑)。
始めから、物分かりのよいまるで大人のような宗介。ポニョは宗介に会うために変化を遂げるが、宗介は最後まで何も変わらない。大きな冒険も、決断も、成長もしない。これが主人公といえるか?変化のない子供、成長のない子供など、気持ち悪くはないだろうか。まるで『ブリキの太鼓』の成長を止めた子供をみたいじゃないか。
#“名付け”をしたという行がは、彼が大人であることを意味するような気もするし。
こんなことなら、老人ホームの偏屈ばあさんの心の変化にスポットを当てて、彼女を主人公にしたほうがよっぽどマシではなかったろうか。宗介は成長ののびしろのない老人が自分を投影した姿に見えなくもない。この気持ち悪さが本作を支配する違和感のすべてだと思う。
震災後にみると、ちょっとグっとくる言葉が端々にあるのは事実だ(予言めいてはいるが偶然)。大いなる自然を仰々しい表現を用いずに感じさせてくれたのは評価したい。
しかし、海の中のファンタジーの世界と、地上の現実の世界が全然かみ合っていないし(コントラストとしても魅力がない)、穿った観方をすると、デボン紀まで戻った世界はある意味再生したわけで、あの津波で一回リセットさらたわけだ(ナウシカ的にいえば)。あの、海中ドームの様子なんか、みんな“死んだ”と捉えられなくもないな(震災後には言いにくいんだけど)。そう考えると、主人公は宗介じゃなくて“自然”なのかもね。
やはり、もう『千と千尋の神隠し』のキレを期待しちゃダメななんだろうね。凡作と切って捨てるようなレベルでは決して無いけど、何度も観ようとは思うような良作とは決していえない作品。
#所ジョージと山ちゃんのキャスティングは反対がいいような気がするんだけどな。
負けるな日本
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:171分
監 督:テレンス・マリック
出 演:ショーン・ペン、ジム・カヴィーゼル、エイドリアン・ブロディ、ベン・チャップリン、ジョン・キューザック、イライアス・コティーズ、ニック・ノルティ、ジョン・サヴェージ、ジョン・C・ライリー、ジャレッド・レトー、ウディ・ハレルソン、ジョージ・クルーニー、ダッシュ・ミホク、ティム・ブレイク・ネルソン、ジョン・トラヴォルタ、ミランダ・オットー、ポール・グリーソン、ウィル・ウォレス、ペネロープ・アレン、ニック・スタール、トム・ジェーン、光石研、前原一輝、酒井一圭、ラリー・ロマーノ、サイモン・ビリグ 他
受 賞:【1999年/第49回ベルリン国際映画祭】金熊賞(テレンス・マリック)
【1998年/第65回NY批評家協会賞】監督賞(テレンス・マリック)、撮影賞(ジョン・トール)
コピー: パラダイスは、若者たちの魂の中にある。
1942年。ガダルカナル島に日本軍が航空基地を建設しているとの情報がアメリカ軍に入る。基地が完成すればアメリカ軍の制空権を脅かすことになるため、ガダルカナルへの上陸作戦が決行されることに。その頃、アメリカ陸軍C中隊所属のウィット二等兵は、現地の自然と原住民の生活に魅せられ、無許可離隊を繰り返していた。そんな彼をウェルシュ曹長は看護兵に配属し、上陸作戦に参加させる。日本軍が死守する丘の攻略にかかる中隊だったが、激しい機銃掃射に遭い、兵士たちは次々に命を落とし後退を余儀なくされる。しかし、指揮官トール中佐は引き続き突撃を命じる…というストーリー。
繰り広げられる会話一つ一つがすべて哲学的な示唆・内省を含んでいる。演者の一挙手一投足に、脳が回転し続ける感じ。でも、イヤじゃない脳への刺激。素敵な詩を読んでいるような感覚。ここまで、セリフ一つ一つが練りに練られた作品を見たことがない。
冒頭から、なぜ人は戦うのか…ということを問う。人間の中にある“反神性”。遺伝子の中に刻まれた“争う”という業。ちょっとした仏教経典一つくらいの内容があると思う。この映画が何か答えを提示することはない。自分で感じ、自分で見つける作品。
戦争を醒めた目で眺める自分がいる。不思議と先頭を観ているのに、心が落ち着いてくるという不思議。ずっと戦争をしているだけなので、ストーリー性という意味では薄いのかもしれない。170分は確かに長いけれど、決して苦痛ではない。そんな思考の時間を与えてくれる。大傑作。お薦め。
負けるな日本
公開年:2009年
公開国:日本、韓国
時 間:122分
監 督:キム・テギュン
出 演:石黒英雄、渡辺大、水川あさみ、山本耕史、弓削智久、森脇史登、足立理、半田晶也、瀧本美織、山本龍二、深水元基、阪上和子、阿見201、大村彩子、金守珍 他
コピー: 本当の地獄は、これからだ。
高校生の明はたちは、街中で吸血鬼に襲われる少女を発見。救出を試みるも逆襲されピンチに。そこで謎の女性・冷に救われる。冷は、行方不明になってる明の兄が、とある島にいることを告げる。兄を救うために上陸を決意する明。そして明を一人で行かせられないと考えた友人たちは、冷に導かれ島へ上陸。しかし、島は吸血鬼と化した者たちに支配されていた…というストーリー。
マンガ原作。いかにもティーン向けの作品。この手のライト猟奇モノ的な作品も、ちょっと食傷ぎみ。さて、大人の鑑賞に堪えるか否か。
冒頭の、無駄に声を出しながら逃げたり、「あの女に騙されなければ…」とか、死にそうになって「何だろう、あんたのその血の匂いがとてもおいしそうなんだよ…」とか、とてもピンチの場面とは思えない説明的なセリフにうんざり。この監督にセンスが無いことがはじめの3分でわかる…というか、この韓国人じゃないか。セリフの機微とかピンときてなくて、シナリオどおりそのままなんだろうな。脚本家も悪いわ。
まあ、確かにライティングとかカメラワークは、韓国映画っぽいけど。
実は『デイブレイカー』と似たようなプロット。なのに、この差は何か。細かい設定をしっかり詰められておらず、説得力を持たせることができてい。これに尽きる。公式には存在しない島がありましたとさ…とか、それだけで済ませちゃダメだね。
カギが落ちて、逃げることができました…って、トムとジェリーレベル。
事件の事始も非常につまらない。そんな致命的なモノを閉じ込めているなら、部外者がフラっと来て簡単に開けられるような状態にするわけがない。実にくだらない。「そんなことも知らずに俺は…」って、知ってるほうがおかしいだろ。
デブも科学オタクも、何の活躍もせずに、死にもしないというキャラクターの無駄さ加減。登場時点から死亡フラグが立ってるのにな。根本的に、友達連中が自発的にくる流れが不自然極まりないんだけどね。
白塗りのバンパイアが美しくないという、ダサさ。「少しは自分の力をわきまえろ!」って、なんか日本語のセリフ廻しも変だし。“師匠”とやらの存在も意味がよくわからん。
最期、兄貴だって感染していないかもしれないじゃん。何で、疑念を抱かせないように、しっかりと吸血鬼の血が入って感染した描写を入れないのか。
本当に稚拙なシナリオ。どうせ作るなら、もっとちゃんと詰めればいいのに。製作姿勢を疑いたくなる。“THE 子供騙し”。いい大人が観る作品ではない。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:116分
監 督:デヴィッド・O・ラッセル
出 演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ、ジャック・マクギー、メリッサ・マクミーキン、ビアンカ・ハンター、エリカ・マクダーモット、デンドリー・テイラー、ジェナ・ラミア、フランク・レンズーリ、マイケル・バッファー、シュガー・レイ・レナード 他
受 賞:【2010年/第83回アカデミー賞】助演男優賞(クリスチャン・ベイル)、助演女優賞(メリッサ・レオ 、エイミー・アダムス)
【2010年/第77回NY批評家協会賞】助演女優賞(メリッサ・レオ)
【2010年/第68回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(クリスチャン・ベイル)、助演女優賞(メリッサ・レオ、エイミー・アダムス)
【2010年/第16回放送映画批評家協会賞】助演男優賞(クリスチャン・ベイル)、助演女優賞(メリッサ・レオ、エイミー・アダムス)、アンサンブル演技賞
コピー: 頂点へ。
マサチューセッツ州の低所得者階級が暮らす町ローウェル。かつてボクサーとしてシュガー・レイ・レナードと戦ったことがある兄ディッキーは、その過去の栄光にすがるだけで、ドラッグに溺れる荒んだ生活を送っていた。一方、真面目な性格の弟ミッキーもボクサーをやっているが、だらしない兄と、仕事もできないくせに敏腕マネージャ気取りの母親に、いい加減なマッチメイクをされて連敗続き。そんな中、ミッキーと恋仲になったバーに勤務するシャーリーンは、ミッキーの足を引っ張り続ける家族と距離を置くべきだと主張するが…というストーリー。
第一印象は、「この映画は何だ???」。単純なサクセスストーリーでもなさそうだし、社会派ドラマでもなさそう。興味を惹くという意味ではツカミはOK。
ミッキーは鬱屈した環境に不満をもっている若者役。マーク・ウォールバーグはこういう役柄をやらせたら本当にマッチする。ドラッグ漬けの元ボクサーなんて、クリスチャン・ベイルにしか演じられないな。本作のキャスティングは絶妙すぎる。
クズアメリカ人がいう“ファミリー”はタダの親ばなれできない子&子離れできない親の製造機でしかない。ミッキーは、そんなファミリーという名の地獄から抜け出せるのか?自分の足で立てたるのか?それを期待しながら観ていたんだけど、抜け出す前にファミリーが崩壊していく。その前に抜け出して欲しかったのだけれども、本作は実話ベースなので、致し方ない。
小姑集団も懲りたのかと思いきや、いつまでたってもアホ全開。この「U・S・A!U・S・A!」的な展開が実におもしろい。
意外なことに、自分のアホを晒したドキュメント番組をみた後、兄ディッキーもトレーニングをはじめちゃう。まさかカムバック?とか思ったけどそうではなかった。実話ベース作品が尻すぼみになるのは致し方ない。
本当なら最後の試合シーンが山場のはずなんだけど、それがオマケでしかない…という不思議な作品。この勝利の後に、幸せが続きそうもないのが、何か良い。そして、エンドロールで、本人たちが登場して色々喋るんだけど、実際の様子もそれほど幸せそうに見えない。
答え:アメリカ人はアホである。まるでスポーツ映画みたいなコピーだけど、これはスポーツ映画じゃない。昼ドラとか大家族ドキュメントに通じる面白さ。なかなかユニークな作品なので、お薦めしたい。
負けるな日本
公開年:1997年
公開国:アメリカ
時 間:155分
監 督:スティーヴン・スピルバーグ
出 演:マシュー・マコノヒー、アンソニー・ホプキンス、ジャイモン・フンスー、モーガン・フリーマン、デヴィッド・ペイマー、ピート・ポスルスウェイト、ステラン・スカルスガルド、ナイジェル・ホーソーン、アンナ・パキン、キウェテル・イジョフォー、ジェレミー・ノーサム、ザンダー・バークレイ、ラザーク・アドティ、アラン・リッチ 他
受 賞:【1998年/第11回ヨーロッパ映画賞】世界的功績賞(ステラン・スカルスガルド「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の演技に対しても)
【1997年/第3回放送映画批評家協会賞】助演男優賞(アンソニー・ホプキンス)
コピー: 自由は人が持つ 生まれながらの権利
1839年。キューバ沖でスペインの奴隷船アミスタッド号で運ばれていた奴隷53人が暴動をおこし、乗務員を殺害し、船を占拠する。アフリカに戻ろうとするが、操船できない彼らは、2ヶ月後にアメリカ沿岸警備船に捕まり、そのまま投獄される。そして、乗務員殺害の罪で起訴され死刑確実と目されていたが…というストーリー。
ありがちな奴隷解放の話…と思いきや、奴隷の所有権をめぐっての攻防から話が始まる。奴隷の所有権を主張する3者と奴隷を解放したい団体の4陣営による争いが、“民事法廷”で繰り広げられるのが実にユニーク。
また、それが言葉を解しない人が訴訟の対象であり、その中で培われる、奴隷と弁護側との友情という展開。
無駄に説明的なやりとりが極力排除されていて良い。さすがスピルバーグって感じ。例えば、数字のアフリカ言語を言いながら、言葉のわかる人を捜すくだり。一人の黒人が反応した後に、次のカットでは、もう部屋の中でその黒人と打ち合わせをしている。そして、いきさつを語っている法廷シーンにオーバーラップしていく。
「実は、これこれこういう事情で言葉のわかる人を捜しているんだけど…」なんてまどろっこしいシーンは一切ない。とてもよい編集センス。
奴隷が白人による搾取というよりも、内部の抵抗勢力の手助けによって成立している事実にスポットが当てられているのも興味深い。
黒人たちは聖書に救いを求めるようになるけれど、奴隷や現地人の大量虐殺の許可を出したのは、カトリックの法王だったりするんだけどね…。反面、カトリックは無償の慈悲の実践を説くという二面性を持っているわけで、裁判長がカトリックに変わることで、アメリカ最大の内戦・南北戦争に繋がっていくのもおもしろい。
最後は決してハッピーエンドではないけれど、アメリカがアメリカになる重要なプロセスを、スマート且つ克明に描いた名作。ちょっと長めになっているけれど、端折ることができない史実なので致し方ない。そこは、すばらしい編集でカバーしているから。文句なしのお薦め。
#それにしても、スペイン馬鹿まるだし。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |