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公開年:1962年
公開国:日本
時 間:113分
監 督:小津安二郎
出 演:岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、吉田輝雄、牧紀子、中村伸郎、三宅邦子、東野英治郎、杉村春子、加東大介、北竜二、環三千世、岸田今日子、高橋とよ、浅茅しのぶ、須賀不二男、織田政雄、菅原通済、緒方安雄 他
初老のサラリーマン平山は、これといった不平も不満もなく、平穏な日々をおくっていた。長男の幸一夫婦は共稼ぎながら独立して団地暮らし。次男の和夫はまだ学生で、妻を亡くしてからは24歳になる長女・路子に家事を任せきりだった。ある日、中学時代のヒョータンこと佐久間老先生を迎えてのクラス会が催される。酔いつぶれた先生を家まで送っていくと、そこには嫁に行きそびれた先生の娘がいた。その惨めな様子を見てしまった平山は、年頃の娘のことが急に心配になり…というストーリー。
高度経済成長期の日本の匂いが伝わってくるような映像。その時代に大人じゃなかった人でも、その時代の残滓に触れたことがあるならば、その匂いが脳内に沸き立つに違いない。
まあ、有名な話だろうけど、作中に秋刀魚は一切登場しない。話題にすら出ない。じゃあ何でそんなタイトルなんだ。最後まで観ればわかるはず。それは、秋刀魚の内臓みたいな、ほろにがい昭和の家庭の味。
平山さんは、若い後妻をもらったお友達の様子をみて自分も…って考えていないわけじゃないんだけど、バーのママに死んだ妻の面影をみちゃうってことは、まだ愛しているわけだ。仲の良い家族がずっと一緒にいられるのは幸せなことなんだけど、娘を適切な時期に嫁に出して、自分の妻のようになってもらいたくもある。親が娘の結婚相手を捜すなんて、おせっかいもいいところだけど、それは家族の中にあって当然の愛情だという共通認識のあった時代だね。
「戦争に何で負けたんでしょうね」等々の敗戦に対する人々の受け止め方も、淡々としていて興味深い。親族が空襲で死んでいたり、財産が消失したりしているだろうに、この飄々とした感じ。決してニヒリストを気取っているわけではなくて、生きるってどういうことかな…ってみんな考えてはいるんだけど、まあそれはそれで家族のために働くわ…っていう、健全な精神の時代だったんだと思う。
現実感のない夢や理想を追いかけることが人生の意味だと思っている世代より、よっぽど豊かな人たち。そういう苦痛を知っている大人のやさしさや配慮の上に胡坐をかいて、自由だ権利だと空論ばかりの団塊世代が生まれるわけだけど、“ゆとり世代”にしろあまやかしていいことなんか何一つありゃぁしないってことだよね。
岩下志麻の演技は、表情こそ薄いけれど何か思いを含んだような、少女と女のはざまにいる感じがよく出ている。後の『悪霊島』等での、冷たさが伝わってくるような美しさの片鱗が、この段階で感じられるねぇ。
淡々と似たようなカットが続くんだけど、なぜか飽きずに目が離せない。うまいけどほろ苦いのが、いい人生。もし、今の自分の人生が、“うまいだけ”とか“苦いだけ”だったら、それは何か間違っているってことなのかな…なんて思いが、淡々としたカットの隙間からもたげてくるような作品。そりゃあ、国の内外を問わず研究されるわけだわ。
#ものすごく酒を飲むシーンの連続なんだけど、観ているほうもチビチビと呑みながら観ると愉しいかもしれないね。
負けるな日本
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:111分
監 督:ヴィンセント・ギャロ
出 演:ヴィンセント・ギャロ、クリスティナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・ギャザラ、ケヴィン・コリガン 他
ノミネート:【1998年/第14回インディペンデント・スピリット賞】新人作品賞(ヴィンセント・ギャロ、クリス・ハンレイ)
5年間の服役を終えたビリー・ブラウン。両親には仕事で遠くへいくと伝え、収監されていることは秘密にしていたが、帰るときには妻を連れて帰ると嘘をいってしまっていた。ビリーはその嘘を繕うために若い女性を拉致。うまく妻のふりをすれば、親友になってやる…という、妙な脅迫をするビリー。はじめはしぶしぶそれに従っていた女性・レイラだったが、ビリーの実家で妻のふりをしているうちに、彼の粗野な行動の原因が、子供に無関心な親のもとで孤独に育ったためであることに気付き、ビリーに心を寄せるようになってくる。一方のビリーは、親との会話をしていながらも、5年も収監される原因となったとある人物への復讐心で燃えていた…というストーリー。
食卓のシーンとか、小津映画みたい(意図してるかどうかは知らないけど)。小さいポイントに執拗にこだわってる演出が、コントみたいで非常にユニーク。その他にも、何かとスタイリッシュな演出に感じられるので、オシャレ系の作品と思われがちだけど、駄目男が心の安らぎを得るまでのロードムービーかなって私は思う。たった一日のできごとを追っているだけだし、狭い範囲しか移動していないんだけど、立派にロードムービーだなと。
主人公のビリーは、浅はかなくせに妙に神経質で、周りの人間に嫌悪感をふりまいてばかりの人間。しかし、はじめは冷たく当たくるものの、すぐに謝罪してくる。DV男の典型パターンなんだけど、一部の女性側からみれば、それが堪らない魅力にうつるんでしょ。
ビリーの性格がクソなだけかと思ったら、両親ともにクソ人間で、ビリーがまともにみえるくらい。まったくもって子供に愛情を示さないばかりか、存在を否定するような態度を示す。両親ともに激昂しやすく、どちらの遺伝子も引き継いでいる、まさに人非人エリート。
一方のレイラも、生い立ちの説明は一切ないけれど、「うまくやれば、親友になってやる」で納得しちゃう女。わけありだよね。そんな、さみしい2人が出会ったことで、うっすらと未来が見えてきた感じ。だけどビリーは、その一方で累々と流れる恨みの憤怒を爆発させるのか否か!ビリーはこの1日で成長するのか?しないのか?そこは観てのおたのしみって所でしょう。
なぜか、こっちまでウキウキしてくるラスト。お薦めする。
#でも、ギャロの他の作品を見たいとは思わないんだよなぁ…。不思議。
他の作品ではけっこう気持ち悪かったりするんだけど、クリスティーナ・リッチがムッチムチで可愛いし、ヴィンセント・ギャロ本人の胸糞悪い演技は見事(いや、彼の場合は、元々そういう奴なんだろうな、多分)。
#やっぱりボウリングは、アメリカでは低所得層の娯楽なのか。
負けるな日本
公開年:2009年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:117分
監 督:ベルトラン・タヴェルニエ
出 演:トミー・リー・ジョーンズ、ジョン・グッドマン、ピーター・サースガード、メアリー・スティーンバージェン、ケリー・マクドナルド、ジャスティナ・マシャド、ネッド・ビーティ、ジェームズ・ギャモン、プルイット・テイラー・ヴィンス、レヴォン・ヘルム、バディ・ガイ、フリオ・セサール・セディージョ、ジョン・セイルズ 他
若い女性を狙った連続レイプ殺人事件を捜査していた保安官デイヴ。事件現場からの帰宅中に南北戦争の映画の撮影で現地を訪れていた俳優エルロッドと出会うが、彼は湿地帯で白骨死体を発見したとデイヴに告げる。現場を訪れ白骨死体の状況を見たデイヴは、若い頃の記憶が蘇らせる。その後も連続レイプ殺人事件の捜査を続けながら、並行して白骨死体の事件も探るデイヴだったが、エルロッドが出演している映画に投資している男が執拗な妨害をしてきて…というストーリー。
日本未公開作品なので期待はしていなかったが、内容がどうのこうのよりも、このDVDには、ものすごくヒドい点がある。それは吹き替え音声。
冒頭の語りの場面で、いきなり腰がくだける。学芸会か!って感じで、まともな声優が演じているのかどうか調べる気もおきないくらいヒドい。脇役もひどいのだが、主人公のトミー・リー・ジョーンズが顔を声が全然マッチしていない上に棒読み。残り30分くらいになってやっと慣れてくる(というか諦めがつく)レベル。
#まあ、逆に観てくれと言いたくなるわ。
ストーリー運びも結構ヒドい(おそらく原作はそこそこなんだろうが)。
とにかくシナリオの構成がよくない。まず、自分が子供の頃に見たとある殺人と、数十年たって保安官になって発生した事件が繋がるという点が都合が良すぎ。前半は、この無関係な事件を並行に追っていくのだが、観ている側としてはどう関係してくるのはさっぱりわからない上に、徐々にその関係性が狭まってきてハラハラ…とかいうことも無いので、焦点ボケまくりで飽きてくる。そして、展開自体もダラダラとしていて進まない。
途中で、南軍の将軍の亡霊みたいなのが現れるとか、デヴィッド・リンチみたいな演出を差し込んでみたり、いろんな謎解き要素が配置されている。連続レイプ殺人、大昔の黒人銃撃事件、有名だけどアル中の俳優、その恋人の女優、羽振りのより映画出資者、途中で参加してくる女性FBI、それにデイヴの養女…。パーツはたくさんあるんだけど、そのすべてが全然生きていない上に浅い。孤独な捜査を続け、様々な阻害要因と戦うオヤジの姿を見せるのはいいんだけど、肝心の事件を解く鍵は、その捜査の努力で見つかったわけじゃなく、ポっと唐突に出てきた写真なんだもんなぁ。散々配置した仕掛けを生かさない…という、そんなすスカしってアリ?
保釈したら、その犯人に娘をさらわれるとか、そんなグダグダな展開、普通誰もやらねえよ!結局、その事件自体も解決したようなしないような変な感じで、モヤモヤモヤ~。過去の事件と繋げることで、今も根強く残る差別思想みたいなものを、猟奇殺人事件を通じて表現したかったのかなぁ?なんて気もするけど、さっぱり伝わってこないんだよね。
誤射してしまったのを工作してごまかしちゃった主人公の行動を、観ている側はどういう感情で受け止めればいいのかわからん。最後の子供が見ていた本の写真はどういう意味なのかわからん。根本的に“エレクトリック・ミスト”って何を指しているのかわからん。わからんだらけの消化不良作品。観る価値なし。
#劇場未公開なのも頷けるけど、トミー・リー・ジョーンズの仕事の選ばなさにも、ちょっとあきれてくる。
負けるな日本
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:117分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ジェフ・ブリッジス、ジョン・グッドマン、ジュリアン・ムーア、スティーヴ・ブシェミ、ピーター・ストーメア、サム・エリオット、ジョン・タートゥーロ、デヴィッド・ハドルストン、ベン・ギャザラ、リチャード・ガント、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・マン、デヴィッド・シューリス 他
ノミネート:【1998年/第11回ヨーロッパ映画賞】インターナショナル[非ヨーロッパ]作品賞(ジョエル・コーエン)
コピー:人生は 最高に おもしろい★
無職ながらも自由気ままに暮らすジャフ・リボウスキは、仲間からは“デュード”と呼ばれている。ある日、彼の家に突然2人の男が女房の借金を返せと怒鳴り込んできて、家の中を破壊したり敷物に放尿したりと大暴れ。そんな借金に身に覚えは無いし、大体にしてデュードには妻はいない。その後、同姓同名の大金持ちと間違えられたことに気付き、敷物の弁償を求めて“ビッグ・リボウスキ”邸を訪れる。ビッグ・リボウスキはデュードを怠け者と見下し、問答無用で追い返すが、デュードは無断で屋敷から高価な敷物を持ち帰る。その後、デュードはビッグ・リボウスキから呼び出される。盗んだ敷物を返却しろといわれるのかと思いきや、誘拐されたビッグ・リボウスキの妻バニーの身代金の引渡し役をして欲しいと頼まれ…というストーリー。
次々とアクの強いトンチンカンな人物が登場して、こじれにこじれる…というコーエン兄弟コメディのお決まりパターンではあるけれど、なんとも納まりのより作品。コーエン兄弟のコメディ調作品の中では、最高傑作だと思う。
なんでもベトナム戦争の話にもっていき周囲を侮蔑するウォルターに、だれでも怠け者呼ばわりして周囲を見下すビッグ・リボウスキ。強いアメリカを掲げながらも、相対的な価値にしか立脚できず、むしろ自分より下位の者をつくって、相対的に自分の立場を上にしようという浅ましいアメリカの精神構造。
#貧困者に怠け者のレッテルを貼って侮蔑した結果、デモをおこされるアメリカは、今でもその構造に変化は無い。
そういう“アメリカ”ってものへの侮蔑を端々で見受けられるんだけど、侮蔑は超越すると愛に変わるんだな…って感じ。まあ、愛といっても諦めが入り混じった愛ではあるけれど。
#もしかして、ボウリングってアメリカでは低所得層の娯楽って位置づけなのか?
主人公たちのだらだらした行動と、ころころ変わる切迫した状況との相乗効果でうまれる緩急。不条理ではあるけれど、リアルと虚構の間にある薄い膜は絶対に破らない。これがコーエン兄弟。
誰一人、成長したり心境が変化するような人はいないわけで、観終わっても“何も無い”、これこそシチュエーションコメディの最たるものだ!そう感じるなぁ。
昨日の『バートン・フィンク』にも出演したジョン・グッドマン。話を聞きゃぁしねぇ役をやらせたら、ほんとにピカ一。チョイ役だけどジュリアン・ムーアもいい味を出している。
これはお薦め。眠れない夜に何気に観始めるとハマる一作。
負けるな日本
公開年:1991年
公開国:アメリカ
時 間:116分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ジョン・タートゥーロ、ジョン・グッドマン、ジュディ・デイヴィス、マイケル・ラーナー、ジョン・マホーニー、トニー・シャルーブ、ジョン・ポリト、スティーヴ・ブシェミ、ミーガン・フェイ 他
受 賞:【1991年/第44回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン)、男優賞(ジョン・タートゥーロ)、監督賞(ジョエル・コーエン)
【1991年/第26回全米批評家協会賞】撮影賞(ロジャー・ディーキンス)
【1991年/第57回NY批評家協会賞】助演女優賞(ジュディ・デイヴィス)、撮影賞(ロジャー・ディーキンス)
【1991年/第17回LA批評家協会賞】助演男優賞(マイケル・ラーナー)、撮影賞(ロジャー・ディーキンス)
コピー:見える生活、見えない人生。
1941年。ニューヨークで劇作家として高い評価を受けているバートン・フィンクは、ハリウッドの大手スタジオから、映画脚本執筆のオファーを受ける。悩んだ末にスタジオ専属脚本家となることを決め、ハリウッドのホテルを執筆場所としたが、そこは薄暗く不気味な雰囲気が漂っていた。バートンの雇い主である社長は、レスリング映画の脚本執筆を依頼。早速、執筆を開始するバートンだったが、気分が乗らずまったく筆が進まない。悩んだ彼は、尊敬する小説家でありハリウッドで脚本執筆もしているW・P・メイヒューにアドバイスを乞おうとする。メイヒューの部屋を訪問したバートンは、メイヒューの私設秘書オードリーに好意を抱き…というストーリー。
スランプ作家の苦悩と並行して、それまで個人主義の権化みたいだったバートンが、チャーリーやメイヒューとの関わりで、逆に他人に依存していく様子が展開される。いつものコーエン作品のように、その流れですったもんだが展開されるのかな…なんて思っていたら、オードリーがああなっちゃうあたりから急アクセル。
この急アクセルを、受け止めきれるのか、戸惑うのか…ってことで、感想に差が出てくるかもしれない。コーエン兄弟ファンの私だが、残念ながら後者だったのかな。
ジャケット画像をみると、主人公のバートン・フィンクの風貌が、デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』みたいだな…なんて思っていたら、本当に終盤はリンチ作品みたいな感じになっていった。はて、あのホテル火災は現実の出来事?どこまでがリアルでどこまでが幻想?
チャーリーの「俺はここに住んでる」?「その箱は俺のものじゃない」?どういう意味?専属作家としてシナリオは書かせるが映画にはしないってどういうこと?クビにしない意味がわからん。最後の海辺の水着女にはどういう意味が?
色々、寓意は孕んでいそうなのだが、正直いって私にはさっぱりわからない。
カンヌ国際映画祭で三部門を採ったことは快挙なので、本作がコーエン兄弟の代表作と持ち上げる人が多いけれど、私はそうは思わない。むしろ、こういう精神世界的な表現はコーエン兄弟らしくないな~なんて思う(描写に関してはとことんリアルであってほしいと、私はコーエン兄弟に求めているのかもしれないな)。
確かに、カンヌ国際映画祭はこういうの好きでしょう。いろんな解釈の余地があって、芸術家ぶった批評がしやすいからね。思わせぶりな表現で煙に巻くような作品をやたらと持ち上げるような、エセ批評家発見器じゃないの?これ。そういう意図で、コーエン兄弟がコレを作ったんじゃないかな~なんて、私は思ってるんだけど、皆さんはどう思うか。
もちろん十分に愉しむことができた作品で、世の高評価とちょっとした乖離があるなと思っているだけ。何回か重ねて見ると、もっと味わいが増す作品なのかもね。
負けるな日本
公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:F・ゲイリー・グレイ
出 演:ジェイミー・フォックス、ジェラルド・バトラー、レスリー・ビブ、ブルース・マッギル、コルム・ミーニイ、ヴィオラ・デイヴィス、マイケル・アービー、レジーナ・ホール、グレゴリー・イッツェン、エメラルド・エンジェル・ヤング、クリスチャン・ストールティ、アニー・コーレイ、リチャード・ポートナウ、マイケル・ケリー、ジョシュ・スチュワート、ロジャー・バート 他
コピー:正義とは何か──。
妻と幼いひとり娘との幸せな家庭を築いているクライド。ある日、突然自宅に押し入った2人組の強盗に襲われ、妻と娘が惨殺され、クライド本人も重症を負わされてしまう。ほどなく、犯人のダービーとエイムスは逮捕されるが、彼らを有罪にするための証拠が捜査上の不備により法廷で採用されず、裁判での負けを恐れた検事のニックは、主犯格のダービーと司法取引をすることを決めてしまう。その結果、エイムスの死刑は確定したが、主犯のダービーは数年の禁固刑ということに。クライドは到底納得することができなかったが、どうにもならない。それから10年後、エイムスの死刑執行日。薬物によって安楽死されるはずだったが、彼は苦痛にもがき苦しみながら絶命し…というストーリー。
今年下半期に観た作品の中でトップクラスで面白かった。
ジェイミー・フォックス演じる検事ニックを主人公として物語は展開するが、観ている側は一切彼に同調も共感もせず、その同調と共感は犯人に向けられるだろう。そう、主人公がクソ人間であるだけでなく、彼が立脚する司法制度も丸ごとクソなのだ。
確かに犯人の行いは悪人のそれなのだが、こんなに応援したくなる悪人は、はじめて。珍しい作品だと思う。
シリアルキラーに興味が沸くのとはまったく異質の感情だ。悪人だけど、その行動・考え方は、まったくの“正義”。自分がクライドと同じ立場だったら、できるならば同じ行動をとりたいとすら思う。
単なる感情の話か?というと決してそうではない。クライドの行動は、狂った末の猟奇的な報復か?いやいや、全部計算ずく。司法取引の法廷でのやりとりも、全部計算ずく。個人的な復讐ではなく、司法全体に対する報復という理性に基づく復讐。その怒りの中にある“冷静な執念”に、もう、ゾクゾクしてしまった。その執念たるや、闇の『ショーシャンクの空に』って感じ。
まあ、ラストの先回りのギミックだけは、つまらないかも。多分、そこがイマイチだから、評価が低いのだろう。
でも、その最後だって、ニックはしてやったりと思ってるかもしれないけど、むしろ神々しい死に見えたな。クライドは、残念という表情をちょっとだけ浮かべて、即座に満足の表情になり受け止めている。
これまで検事として、ヘンゼルとグレーテルが小さなパンくずを捨てたのと同じように、これまで“良いこと”と思い自分が捨ててきた信念の重さと、こだわってきたくだらない“数字”の影に流された多くの涙の重さで、ニックは、残りの人生をまともな心持ちで過ごすことなんか絶対にできない。
ただ、“完全なる報復”って邦題が変なんだわ。LAW ABIDING CITIZENって法律を遵守する市民って意味だからね。私はこの原題を、むしろ法が持つ趣旨に則った行動をとっているのはクライドだよ…という意味だと捉えたね。そう、彼のほうが正常だ…とね。
原論からいえば、刑事裁判は国家が犯罪者に対する罰を決める儀式であって、被害者の報復を代行するものではない。報復の代行ではないとしても、法は社会の平穏を保障するものでなければいけないのであって、安易に司法取引をして犯罪者を社会に出すようなことは、法の趣旨に反する。本作のケースの場合、司法取引をしなければ、両方の犯人が軽微な罰にしかならない可能性があったわけだが、それでも司法取引はすべきではなかった。仮に簡単に出所したとしても、それは警察の証拠収集手続きの不備であって、犯人たちは社会の監視の目に置かれ、それと同時にクライドは、適切な手順を誤った警察組織に対して賠償請求ができただろう。本来は、そこでバランスを取るべきだったのに、クソ検事のニックは自分の成績のため、判事は惰性によって司法取引を許した。そりゃあ、クライドの怒りは“正常”だろ?
しかし、民事で賠償を求めようとしても、多くの犯罪者は人の死を償えるほどの財産を持っておらず、殺され損なのが実態。それはアメリカでも日本でも一緒だけど、まあ、それは別の話だな…。
ちなみに、この脚本を書いたカート・ウィマーって、『リベリオン』の監督・脚本の人ね(最近だと『ソルト』の脚本かな)。そう考えると、このくらいは許せるな(どういう意味かは、『リベリオン』をみるべし(笑))。
不謹慎なのは百も承知だが、ニックの家族にも、悲惨な結末が訪れる展開になったなら、『セブン』に匹敵する作品になったと思う。できることならば、バッドエンドバージョンをつくるべき。
無冠だろうが何だろうが、もっと評価されてよいはずの作品。心の底からふつふつと沸く、自分の感情に驚きを覚えるくらい新鮮だった。お薦めしたい。
負けるな日本
公開年:1991年
公開国:アメリカ
時 間:78分
監 督:マーク・L・レスター
出 演:ドルフ・ラングレン、ブランドン・リー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ティア カレル、トシロー・オバタ 他
ロサンゼルスのリトルトウキョーに“鉄の爪”と名乗る日本のヤクザが進出。彼らは飲食店などを脅しみかじめ料などを要求し、街の人たちを恐れさせていた。子供のころ日本で生活した経験を持つロス市警の刑事ケナーは、鉄の爪を壊滅するために、相棒のジョニーと共に強引な捜査を執拗に繰り返すのだった。そして捜査の中で浮かび上がってきた鉄の爪の親分ヨシダの胸に、父を殺した男と同じ刺青があることを発見するケナー。そしてヨシダが、ビール会社を隠れ蓑に麻薬密売に進出しようとしていることを知り…というストーリー。
日本未公開作品で、B級の匂いがプンプンしつつも、ドルフ・ラングレン&ブランドン・リー主演で、製作側がBの線を狙ったわけではないことはわかる(まあ、予算はかけてなさそうだから、そういう意味では間違いなくB級なんだけど)。
日本描写がトンチキで、特に所々出てくる日本語がポンコツなために、トンデモ作品と評されることが多いのだが、個人的にはセーフだと思う。他国の文化を登場させる時なんてこんなもんだろう。ましてや、歴史物語とかシリアスさが要求される作品ならいざしらず、アクション映画なんだし、それも舞台はリトルトーキョーなんだから、二世や三世なら多少日本語がおかしくても変じゃない。
ドルフ・ラングレン演じるケナーの日本語が変なのも、子供の頃に一時期日本にいたっていう設定なら、むしろリアルなんじゃないか?鉄の爪の部下に日本語が変なやつがいたって、現地調達した二世かもしれない。いや、日本のヤクザに英語ペラペラな奴は多くないだろうから、現地調達するほうがかえって自然だろう。ケナー行き着けの飯屋のおばちゃんだって、沖縄出身で幼少のころに移民してきたって設定だったらあんなもんだ。対して、ヒロユキ・タガワやトシロー・オバタの日本語はほとんどネイティブなわけで、こっちは日本からきたヤクザってことだと理解すればいいのだ。
海外で変質した日本コミュニティ。ある意味、海外文化とのシンクレティズムや、外国人の勘違いを逆手にとった日本演出って感じで、逆にありなんだよ。
ヤクザ組織があんな経済ヤクザみたいな行動をとることに、当時は違和感を感じた人もいるかもしれないが、今のヤクザさんたちの行動を見れば、任侠道とヤクザは異なることは理解できるわけで、むしろヤクザ組織の現実に近いといえるよね。
話は変わるが、本作は、映画をつくる上でのベースラインになる作品だと思う。どういう意味かというと、いろんな要素で、このレベルを下回ってはいけない、もし下回っているならばテコいれが必要だ!という目安(ものさし)になる映画だということだ。
お色気描写 → これより、エロくなっちゃダメ。
日本表現 → これより、トンデモジャパンになっちゃダメ。
アクション → これより、レベルが下回っちゃダメ。地味になっちゃダメ。
ストーリー → これより、単純になっちゃダメ。
役者 → これより、キャラの弱いのはダメ。
いい意味でも悪い意味でも、及第点ギリギリの作品。逆にいえばすべての要素をギリギリレベルでクリアしている作品で、軽い気持ちで観るとそれなりに満足しちゃうのが、ちょっと悔しい作品だったりする(こういう仕事ができる監督は、カルト化する可能性が高いよね)。
アホキャラがばれる前の、まだ輝きがあるときのドルフ・ラングレン。体もキレキレである。
負けるな日本
公開年:1970年
公開国:アメリカ、日本
時 間:115分
監 督:リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
出 演:マーティン・バルサム、山村聡、ジェイソン・ロバーズ、ジョセフ・コットン、三橋達也、ジェームズ・ホイットモア、東野英治朗、E・G・マーシャル、田村高廣、千田是也、内田朝雄、安部徹、エドモン・ライアン、島田正吾、ジョージ・マクレディ、エドワード・アンドリュース、キース・アンデス、野々村潔、リチャード・アンダーソン、ネヴィル・ブランド、宇佐美淳也、十朱久雄、リック・クーパー 他
受 賞:【1970年/第43回アカデミー賞】特殊視覚効果賞(L・B・アボット、A.D. Flowers)
コピー:今世紀最高最大のスケールで描く戦争スペクタクル巨篇!太陽は昇った-昭和十六年十二月八日--その真紅の朝焼けは、血と炎のドラマにふさわしく大空をそめた--
各国によるABCD包囲網による経済封鎖で疲弊していく日本。経済制裁を主導するアメリカとの共存を模索する一方で、陸相兼首相の東条英機は、アメリカへの攻撃を進言。アメリカの圧倒的な物量に日本が対抗しきれないことを知る連合艦隊司令長官・山本五十六中将は、短期決戦の末に有利な講和に持ちこむという青写真を描き、太平洋艦隊を編成し、ハワイ攻撃の準備を着々と整える。アメリカ側も日本が攻撃するならばハワイの可能性が高いことを予測していたが、その情報は現地に伝わらない。
その後、野村駐米大使とハル国務長官の交渉は決裂し、日米間の通商条約は破棄され、決戦の日は刻々と近づくのだった…というストーリー。
日本の奇襲が宣戦布告前であるように見える点について、手続き上の不備だったりアメリカ側の組織の怠慢であるとい描き方をしているのが、非常に興味深い。未だに、原爆投下を戦争を終結させるためには必須だったと言って憚らないアメリカ人さんは、奇襲とはいえ軍事施設しか攻撃しない日本人のお行儀の良さをどう見るのか(原爆もB29による焼夷弾攻撃も、すべて民間人への直接攻撃で、ルール違反だからね)。公開時にこれを観たアメリカ人がどう捉えたのだろう。
ベトナム戦争当時だったこともあり、アメリカ国内でもアメリカ(特に軍)に対して納得いかない感情があったのかな…と思うが。それにしても、アメリカの情報機関やハワイ軍の体たらくの描き方が顕著で、私がアメリカ人だったら、情けなくて涙が出てくるレベル。
それにしても、マイケル・ベイ監督の『パール・ハーバー』とは、いったい何なのか…という想いが湧く。あのクソCGと、本作における戦闘機の迫力の違い。細かいことを言えば、日本の戦闘機や戦艦のディテールに事実と違うところが多々あるとは思う。しかし、とにかく“実際に戦闘機を作って飛ばしている”という、今では考えられない驚愕の事実。
映画におけるビジュアル面での技術は確かに発展したのだろうが、本作をみると、なんでもかんでもCGで片付けてしまう現在のほうが、当時よりも“貧しい”と強く感じる(予算的な意味ではなくて)。
『パール・ハーバー』における三文メロドラマって、日本側どころかアメリカ国民すらバカにしてるような気がしてくる。
三橋達也、東野英治朗、田村高廣、井川比佐志。これら日本サイドの役者陣の“顔力”がものすごい。アメリカ側の役者がキャラでも演技でも特徴を打ち出せないでいるのも相まって、彼らの個性の光り方はハンパない。欧米人がアジア人の見分けが付けにくとしても、彼らの顔はイヤでも認識できただろう。
これらの演出が舛田利雄によるものなのか深作欣二によるものなのかは不明。大局的に納得のいかない場面でも、個々が最大限にできることを発揮しようとする、日本人らしさをよく描けていると思う。もし、黒澤明がそのまま演出をしていたら、こういう日本人像になったかどうかは疑問(もっと非道な日本人像になっていた気もする)。
本作における黒澤明の降板騒動は有名な話だが、確かに黒澤明が作ったらどうなったかな…という興味が沸かないといえばウソになる。しかし、彼がそのまま手掛けたとしたら、変なところにこだわりすぎてスジュール延び延びになり費用もかさみ、最悪の場合、日の目を見なかったんじゃないかとすら思えるので、結果オーライかと。
まあ、とにかく、教科書を読むより流れがわかりやすい。というか、意図的にこのあたりを端折ったり、一方的に日本が悪魔の所業で世界に迷惑をかけたと教え込む社会科教師が多いから、若者は見たほうがいいと思うよ。観た後は、自分で判断してくれればよい。
愉しいとか、そういう次元ではなく、観ておくべき一作かな…と。
負けるな日本
公開年:2011年
公開国:イギリス、アメリカ
時 間:130分
監 督:デヴィッド・イェーツ
出 演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ワーウィック・デイヴィス、ジェイソン・アイザックス、ジョン・ハート、アラン・リックマン、マギー・スミス、ジュリー・ウォルターズ、マーク・ウィリアムズ、トム・フェルトン、ボニー・ライト、ジェームズ・フェルプス、オリヴァー・フェルプス、イヴァナ・リンチ、エマ・トンプソン、デヴィッド・シューリス、ゲイリー・オールドマン、ジム・ブロードベント、マシュー・ルイス、キアラン・ハインズ、ジョン・キー、ケリー・マクドナルド、ヘレン・マックロリー、ジョージ・ハリス、ジェラルディン・ソマーヴィル、エイドリアン・ローリンズ、ドーナル・グリーソン、クレマンス・ポエジー、ガイ・ヘンリー、デヴィッド・ブラッドリー、ショーン・ビガースタッフ、デヴォン・マーレー、アルフィー・エノック、ケイティ・ルング、ウィリアム・メリング、ジョッシュ・ハードマン、ルイス・コーディス、スカーレット・バーン、アリエラ・パラダイス、ベネディクト・クラーク、エリー・ダーシー=オルデン、ロビー・ジャービス 他
コピー:これが最後。
ヴォルデモートを倒すために、彼の魂を7つに分けた“分霊箱”を発見し破壊するための旅に出たハリーとロン、ハーマイオニー。ヴォルデモートが放つ死喰い人の追撃の中、いくつかの分霊箱を見つけ破壊していき、ついに4個目の分霊箱“ヘルガ・ハッフルパフのカップ”を壊したハリーたち。秘密の通路を通ってホグワーツ魔法学校に戻るが、そこは校長となったスネイプによって支配されていた。ハリーと不死鳥の騎士団はスネイプに反旗を翻し、最後の決戦が始まる。
これまでの7本を観た人は、間違いなく観るだろうし、逆にこれまで観ていない人が観ることはまず無いわけで、評価がどうのこうのという次元ではない。PART1とはスタッフも一緒で、クオリティになんら遜色も無い。お祭りの最後としては充分な内容だと思う。
しかし、普段小説をほとんど読まない私が、しっかり原作を読んだ作品なので、少しだけ不満を言わせてもらう。個人的に思い入れがあって、もっとしっかり描いて欲しかった箇所がいくつかあるのだ。
まず、ロンのママとベラトリックスのバトル。息子を殺されてブチキレるロンママとのバトルはもうすこし長く、そして子供達を守るっていう覚悟がグッと伝わってくる演出にしてほしかった。ハリーの母親の愛情っていうのは所詮回想の中の出来事。本作におけるリアルな“親の愛”を体現するのはロンママなのだから。あんな2、3回杖を交わしただけでお仕舞いってのはないわ。
もう一つは、ネビルの扱い。ハリーは特別な存在としてシリーズで扱われてきたけれど、実は運命の子っていうより謎解きの1パーツだった。エリートなのかと思ったら、親父はちょっとイヤな奴だったし、それほど特別な魔法使いでもなかった。実は本作における“真のリベンジャー”、そして一番成長したのはネビルである。ハリー同様、肉親を死喰い人たちに殺されたけど、ネビルはヘナチョコ扱い。でも彼は回を重ねるごとに、勇気を振り絞って成長し、信念を貫いてきた。それなのに、なんかイキってポっと出でがんばっちゃいました!みたいな扱いは、何か釈然としない。ネビルのこれまでの感情や思いを、もう少し描いてあげるべきじゃなかろうか。ダメな子ががんばった姿こそ感動ポイントのはず。
最後の駅のシーンも違和感があった。マルフォイはもっと離れた所にいて、ハリーたちと目があたったら、軽く会釈をするかしないかくらいの感じでいて欲しかった。それから、ネビルが先生になっていることに触れてほしかったよ。ちょいちょい原作と異なる描写があるのは許すけれど、蛙チョコのくだりとか差し込む暇があるんなら、もうちょっとネビルにスポット当てろっての。
ああ、やはり、私はネビルが軽く扱われたことが気に喰わないんだわ。エンドロールでルーナとかキングスリーがどうなったかとか、差し込むくらいできたろうになぁ。感動の度合いはかなり違ったと思う。
その他にもスネイプの恋慕の感情が、いまいち描ききれていないとか、まだまだ不満はあるけど、まあいいや。これでハリポタビジネスが終わるとも思えないので、ディレクターズカット版みたいな長尺版が出る気がするから、それに期待するわ。
とりあえず、10年の長旅は終わった。それだけで一定の満足と納得はできる。
負けるな日本
公開年:2009年
公開国:日本
時 間:96分
監 督:しぎのあきら
出 演:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、真柴摩利、林珠緒、一龍斎貞友、佐藤智恵、後藤邑子、山本高広、折笠愛、高城元気、小田敏充、東龍一、福崎正之、瀬那歩美、那須めぐみ、足立友、納谷六朗、高田由美、富沢美智恵、三石琴乃、鈴木れい子、玉川紗己子、郷里大輔、茶風林、楠見尚己、大西健晴、伊倉一恵、星野千寿子、むたあきこ、山寺宏一、ジェロ 他
コピー:解き放て、おバカ本能 しんのすけの雄叫びは人類を救えるか?
いま、母子(おやこ)の絆が試される!
カスカベ市ふたば町では、新町長の四膳守によるエコロジー活動が盛んになっていた。そんなある日、ふたば幼稚園の課外授業で川原でゴミ拾いしているときに、謎のアタッシュケースを発見し、その中に入っていた緑色のドリンクを持ち帰る。その夜、冷蔵庫にいれていたそのドリンクをひろしとみさえが飲んでしまう。すると翌日、ひろしは鶏、みさえは豹に変身してしまう。そのドリンクを作ったのは四膳守。彼の正体は、過激な環境保全組織“SKBE(スケッベ)”のリーダーで、人類を動物に変えることで環境破壊を食い止めようという「人類動物化計画」を推進していたのだ…というストーリー。
『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』の一本前の作品。律儀に借りてみた。
同じしぎのあきら監督作品の『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』よりもこっちのほうがまとまっているし、映画としての流れもある。SKBEっていう悪役組織の名前や、組織の目的とかその時に流行ってるものをディスっちゃう感じや、しんのすけたちの関わり方なんかが、『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』『爆発!温泉わくわく大決戦』時代に回帰したって感じ。個人的には『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』くらいまで戻ってほしいんだけど、ちょっと戻りすぎかな。興収があがらず辟易していた時代に戻っちゃった。だから、既視感があって新鮮味には欠ける。
市の中にある“町”って地域の名前でしょ。町会長くらいならわかるんだけど、町長なんかが存在する?まず、そこから設定の練りこみが浅い。
仰々しくカスカベの地下にある地底世界の設定を持ち出してきたが、結局、地下から戻ってみたら住民が動物になっていました…っていう時間稼ぎに使われただけ。別にアジトに閉じ込められていただけで済むハナシで設定が全然生きていない。
その他にも、組織の№2格のキャラクターに味がないとか、やはり原恵一には一枚も二枚を劣るのは、致し方ないのか。
#ジェロにも意外性は無いし、山ちゃんに声優をやってもらったのもなんか役不足な感じ。色々チグハグだわ(まあ、それは監督の責任ではないだろうけど)。
でも、原恵一のノリを継承できる監督さんなんだろうな…という予感はするし、抜擢された理由もなんとなくわかる(センスは感じる)。生意気なことを言ってもうしわけないが、もっといろんな映画をご覧になって、2時間のストーリーというものがどういう上げ下げで進むのか…とか、意図的なミスリード以外の無駄をどう省くべきなのか…というテクニックが身に付いたら、名作を生んでくれるのはないか。
しかし、本作については、オチが最悪で、この一点だけで駄作確定って言ってよいほど。逆に観てちょうだいよって言いたくなるほど、悪いオチ。こればっかりは擁護のしようがない。
負けるな日本
公開年:1973年
公開国:アメリカ
時 間:130分
監 督:シドニー・ルメット
出 演:アル・パチーノ、ジョン・ランドルフ、ジャック・キーホー、ビフ・マクガイア、トニー・ロバーツ、コーネリア・シャープ、F・マーレイ・エイブラハム、アラン・リッチ 他
受 賞:【1973年/第31回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](アル・パチーノ)
コピー:一人の若い警官が撃たれた…… ニューヨーク市警も彼の死を望んでいた!!
愛する女も仲間も失い戦いつづける妥協を許さぬ青春像!
警察学校を卒業し、82分署に配属されたセルピコ。しかし、署内では賄賂が蔓延し、正義感の強いセルピコには耐え難い状況だった。頑なに賄賂の受け取りを拒否する彼は、次第に署内で孤立し、犯罪情報課勤務を希望する。その後、私服警官としての訓練を受け93分署に配属されるが、初日から賄賂の分け前を渡される。調査部長にその旨を報告したが、部長はただ忘れてしまえと忠告するだけ。絶えかねたセルピコは、やがて告発へと踏み切るが、その直後に最も危険なブルックリンの麻薬犯罪課に配属されてしまう…というストーリー。
アメリカの刑事ドラマには、かならず内部調査の人ができてきて嫌われ者の役。日本の刑事ドラマで、内部調査の人が出てきてもどうもピンとこない。日本の場合は、アメリカみたいなチンピラ的なな腐敗じゃなくて、巧妙に裏金を作る公金横領タイプ。正義感溢れる人間が内部にいたとしても、そいつにはわからないようにやるから。子供のころから、先生にわからないようにイジメをやるわけだから、コソコソやることに関してはエリートだもんな。日本の警察はさ。
リアルな展開すぎて飽きる人もいると思うし、爽快な勧善懲悪を期待して観た人は不満を感じるかもしれない。最後はモヤっと感も漂う。でも実話だから許すべきだろう。ここに創作を放り込むと輝きが失せてしまうと思うんだ。
そんなことは納得できん!ありない!と、どう考えてもこっちが正しいのに、なぜか孤立して、異動させられ続ける。ええ、私にはわかりますよ。サラリーマンの皆様方の中にも、実体験としてこの状況を理解できる人、かなりの数いるでしょ。そして、その反面、かなりの数の理解できない人もいるでしょ。
警察側の腐敗っぷりもひどいけど、セルピコだってちょっと異常ぎみじゃねえか?と感じる人がいるかもしれないが、そういう人は、今まで幸せに暮らしてきたか腐敗してる側の人間。圧倒的な悪に立ち向かう時には、狂気と見まごうくらいのハートが必要なことを知れ!と強く言いたい。
どんな不利な状況になっても強い眼力のアル・パチーノ。だけど、金バッジをもらうことを拒否した後に、泣き出すシーンで、「わかる。わかるわ~」となる。
結局、退職後もアメリカで暮らすことができないというのが、アメリカの闇をよく象徴しているな。公務員になった途端、自分がなんでもらかしていいと思っちゃうやつばっかなのは、民度の低い証拠。自由の国、資本主義の旗手と偉そうに行っても、このレベルだから。私が願うのは、信念を貫いたセルピコが、あれでよかったのだと心を安穏にして天寿を全うできること。そして腐敗した警官たちが、年を負うごとに自分の醜い行為を恥じながら死んでいくことだな。
シドニー・ルメットらしい無骨でとても質のよい社会派作品。
結局、“男”ってのは志が高ければ孤独にならざるを得ないっていう、真理の一面を思い知らされる作品(志=野心ではないぞ)。グっときた。
#オウムもワンちゃんもカワイーっす。セルピコを見捨てないのは全アメリカでペットちゃんだちだけ。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:中国、香港
時 間:138分
監 督:テディ・チャン
出 演:ドニー・イェン、レオン・ライ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ワン・シュエチー、レオン・カーフェイ、フー・ジュン、エリック・ツァン、クリス・リー、サイモン・ヤム、チョウ・ユン、ワン・ポーチエ、メンケ・バータル、カン・リー 他
コピー:1時間、その男を守りぬく
1906年10月に、革命家・孫文がイギリス領香港に来航するという情報が流れる。目的は、腐敗した清朝打倒のための蜂起計画を話し合うためである。北京では、西太后の指令により総勢500人の暗殺団が結成され、孫文の暗殺計画が薦められた。一方、香港では、孫文を守るために、名もなき義士たちが集まり…というストーリー。
民主化活動する側を良い者にした映画なんて、今の中国でアリなんだぁ…と思ったけど、中共政権からすれば、清朝と民主化要求団体との攻防なので、そいつらが勝手に殺しあう内容なら、勝手につくれや…ってことで問題無なのかな。
清朝サイドの人たちの辮髪は後頭部にあったので漢民族だよね(清族に人たちは頭頂部だと思ったけど)。ってことは清朝から冷遇された漢民族VS.清朝にどっぷり浸かった漢民族っていう構図なんだな。
群像劇だとしてもキャラクター個々のエピソードが弱いし、アクション作品としてもそれほど特出したインパクトもない。帯に短し襷に長しとはこのことか。
孫文暗殺事件自体は史実だろうけど、義士たちのバックボーンは創作だろう。話の6割くらいまで全然アクションシーンはなくて、人集めのくだりが続く。
#前半のカット割のデキがよろしくないのも気になる。後半のアクションシーンになると改善されるのだが、途中でカメラマンが変わったか?ってくらい変わる。
義士を集める大物実業家・ユータンは、どんどん人を集めるけど、若者ばかりだしそれほど特殊能力があるわけでもない。清朝への恨みのある人間が集まっているのかというとそうでもなく、昨今のジャスミン革命よろしく、民主化!民主化!なんて理想を掲げているように見えて、自分の貧困や境遇の悪さへの不満のはけ口になっているのと同じ。身内が殺されたとか、自分の生活が貧しいのは清朝のせいだ!とか、挙句の果てには自暴自棄になった自分が生きる力を取り戻す為とか、お世話になったご主人様のためとか、高い志の人間なんかいやしない。
こんなんだから、大アクションの入るまでに「さぁ~、盛り上がってまいりました!!」って感じにはならないんだよね。戦う相手への恨みなんかが全然共有できない。
孫文を守る側、清朝暗殺団に、香港政府側を加えて三つ巴にしても面白かったと思うのだが、描ききれなかったんだろうな。前半では悪役だった香港警察も後半は一転して孫文を守る側の味方になっちゃう。警察署長がユータンの義心を前に心変わりをした…とかそういう描写がしっかり描かれているわけもなく、芯の定まっていないシナリオだと思う。
先日の『修羅雪姫 怨み恋歌』と同様に、銃がほとんど出てこないのが不自然。そりゃチャイニーズアクションを前面に出さないわけにはいかないから仕方が無いのはわかるんだけど、最終目的が孫文の殺害なんだし、暗殺団といいつつも市街で一般人を散々巻き込んでいるんだから、人力車に銃をぶっ放せば目的達成じゃねえか!って、誰もが思うでしょ。
中国ではいくつかの映画賞を採っているようだけど、国外ではさっぱり。まあ、このシナリオだとそうなっちゃうだろうなぁ。
それにしても、中国人ってのは市井の人を巻き込む内容でも、全然違和感を感じないんだね。そりゃ、第二次大戦で南京で兵士が一般人にまぎれてゲリラ戦…なんてことを平気でやるわけだよ。兵士が一般人の服装で攻撃してきたら、捕虜にされることもなく殺されても仕方が無いってルールを中国人は知らないんだな。
一般人を巻き込んじゃうから、職業軍人がそれをやるのは禁忌中の禁忌だと思うんだけど。南京での死者数を誇張するのとは別に、殺されても仕方が無い状況を自分で作ったことを理解できずに、大虐殺だ大虐殺だと叫ぶ中国人って、どうかしていると思うね。
などなど、欠点をあげつらってみたけど、これだけ欠点があっても、セット、映像、役者のスキルなど色々な面で、今の日本映画の遥か上をいっていたりする。今の日本映画はちょっと奇を衒いすぎの箱庭映画ばっかり。凡作なだけに、逆に日本映画の現状を思い知らされてしまう作品。
負けるな日本
公開年:1974年
公開国:日本
時 間:89分
監 督:藤田敏八
出 演:梶芽衣子、伊丹十三、吉行和子、原田芳雄、岸田森、安部徹、山本麟一、南原宏治、広瀬昌助、溝口舜亮、浜田晃、石矢博 他
家族の恨みを晴らした鹿島雪は、殺人犯として指名手配になり、逃亡の末に逮捕され死刑判決が下る。執行の日、護送中の雪は謎の男に救出され、特高警察長官・菊井精四郎の屋敷に連れて行かれる。菊井は雪の命を救う替わりに、無政府主義者・徳永乱水の家に潜入し、彼が所持している書類を入手することを命じる。雪は住み込み女中として乱水の家に入り込むが、徳永の行動と考え方に次第に惹かれ…というストーリー。
冒頭、大人数に囲まれての立ち回りから始まるのだが、キャッチーなほどに切られた腕が飛び、血しぶきが溢れるといた前作の演出は鳴りを潜める。それが無くなったら、“マンガ”じゃなくなるわけで、「ああ、こりゃつまらないに違いない」と予感させてくれる。少なくとも前作までの様式美は消えるだろうなと。
前作の舞台は、明治維新後の混乱期で、主たる武器が刀であることに違和感はまったくなかったが、今回は警察官吏から追われているわけで、当然銃を携帯している。途中で出てくる悪役の皆さんも普通に銃を扱う。しかし、都合よく使わないんだよねぇ(笑)。そして、使ったとしても、たとえ近距離発砲だとしても、うまいこと肩とかにしか当たらないんだわ。
話のキーになる文書というのが、とある人物が特高警察の悪行について書き残したもの。内容はインパクトがあるのかもしれないが、その文書自体にどれだけ証拠能力があるというのか甚だ疑問(公的な文書でもなけりゃ、絶対的な証拠になるわけでもない)。
そんな、根拠のふわふわした文書の在り処を知るために乱水を拷問するのだが、あまりに吐かないもんだから最終手段としてペストに感染させて放り出す。逃げ込む先に文書があるに違いないから、感染防止の名目で焼き払っちゃえばいいじゃん!と、トンデモ展開。そんな作戦でいいのか?と思いつつも、目論見どおり展開し(笑)、結果としてスラム街は焼き討ちにあい、兄のペストが感染した周介と雪だけが生き残る。最後は二人が菊井たちに特攻してく…と。
こうなってくると、観ている方は、映画に引き込まれるどころか、どんどん醒めて行く。
乱水は大杉栄のイメージなのかな。藤田敏八が学生運動にシンパシーを感じているからなのかもしれないけど、学生運動家のお花畑思考が前面に出てきちゃっている。元々リアルとは無縁な設定なので、マンガ・フィクション的なノリをキープしないと、矛盾やアラが目立ってしまうのに。
“怨み恋歌”とあるけれど、雪が恋するわけではない。徳永乱水が実弟・周介が出征している間に妻あやを寝取ってしまったことを指している模様。つまり徳永周介の怨みってことみたい。タイトルにするほどのポイントか?と私なんかは思うんだけど、それも活動家側に比重を置いている証拠だと思うよ。
こんな調子だから、肝心の“修羅雪姫”に焦点が合っておらず、他人の義憤に同調する過程がしっかり描けていない。私が梶芽衣子なら文句いいたくなるわ。
作る意味のなかった続編。駄作だと思う。
#途中、悪役の丸山警部が、妻あやにアイスピックで目を突かれアイパッチ状態に。その後、雪との戦闘で残った目をくりぬかれ悶絶。これ、『キル・ビル Vol.2』のエル・ドライバーの元ネタだね。
負けるな日本
公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:102分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ジェフリー・ラッシュ、セドリック・ジ・エンターテイナー、エドワード・ハーマン、ポール・アデルスタイン、リチャード・ジェンキンス、ビリー・ボブ・ソーントン、ジュリア・ダフィ、ジョナサン・ハダリー 他
コピー:結婚――この世で最も危険な約束。
ロスで離婚訴訟を専門に扱う弁護士のマイルズ・マッシー。彼は、誰がどう考えても不利と思える状況でも、必ず顧客を勝訴に導く辣腕弁護士だった。そんな彼のもとに、妻マリリンから離婚訴訟を起こされた不動産王レックスロスが依頼にやってくる。浮気現場をビデオに撮られており、絶対に勝ち目は無いにもかかわらず、1ドルたりとも妻に払いたくないと要望。この無茶な条件で請け負ったマイルズは、マリリンを食事に差し出した隙に、探偵を彼女の家に進入させ住所録のコピーを入手。その住所録から、彼女が財産目当てにレックスロスと結婚したと証言する人物を探り出し、その証言によりマリリンを敗訴に追い込むのだったが…というストーリー。
離婚大国のアメリカの人は、これで笑えるのだろうか。ベースにある世界感が共有できていないからなのか、私には何一つクスリとこない。コーエン兄弟贔屓の私もさすがにこれは…。単に暗さを排除したとか、そんなレベルの違いではないと思うなぁ。
決して、面と向かって笑わせようとしないスタンスの先に、じわじわと浮かび上がってくる笑いがある。これこそコーエン兄弟作品の良さだと思っているのだが、本作の「はい、これから笑わせますよー」的な感じが、まったくもって受け付けない。神父が歌うところとか、ゼーゼージョーを紹介する老人とか、これ、笑える人っているのかしら。
個人的に一番がっかりしたのは、ゼーゼージョーが吸入器と銃を間違って撃つシーン。吸入するときのプッシュの動作と銃のトリガーを引く動作って、完全に異なるので、これを間違うのってありえるかねぇ。こういうギミックの細かさに抜かりのないのがコーエン兄弟だと思っていたのに…。なんか、本作は幻滅させられる。
#同じ銃でも『ブラッド・シンプル』ではあんなに細かい設定だったのになぁ…。
マリリンへの恋心で正気を失ったという設定なんだろうけど、アレだけ策を弄する小ずるい男が、失策をするほど恋に狂ったように見えないのが致命的。だから、ベテラン弁護士が石油王の息子の人物確認をしないことが、ものすごく不自然に見えてしまう。
騙し騙されみたいなプロ同士の丁々発止が展開されているようにみえないから、マリリンの復讐成功から一転して、マッシーが有利になる展開が、取って付けたようにものすごく陳腐に感じてしまう。最後は、あの状態を目指してストーリーを進めていたわけじゃなく、収拾がつかなくなったから適当にまとめてみた…みたいな印象。
同じコーエン兄弟とジョージ・クルーニーのコンビ作品『オー・ブラザー』よりも数段劣る。限りなく駄作の暗黒面に堕ちるギリギリの作品。コーエン兄弟ファンとては別名義にしてほしいくらい残念な凡作。ジョージ・クルーニーとゼタを使って凡作ってのもなぁ…。
#ただ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、彼女が主演したどんな映画の彼女よりもキレイ。それは間違いない。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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