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公開年:1988年
公開国:アメリカ
時 間:96分
監 督:ジョン・カーペンター
出 演:ロディ・パイパー、メグ・フォスター、キース・デヴィッド、ジョージ・“バック”・フラワー、ピーター・ジェイソン、レイモン・サン・ジャック、ジェイソン・ロバーズⅢ世 他
失業中のネイダは、ようやく工事現場の職にありつく。住むところも無かったが、仲良くなった作業員フランクから、教会が設営しているキャンプ地を紹介してもらう。キャンプにいる人々がTVを観ていると、突然、海賊放送が混信してくる。その放送は、“何者かが、人間たちを仮眠状態にして物質主義の奴隷になるように洗脳している”という荒唐無稽なものだった。その映像が終わると、映像を見ていた一人の男がそそくさと近くの教会に入っていくのを、ネイダは見かける。なにか怪しいと感じたネイダは、賛美歌が聞こえるその教会に潜入するが、賛美歌はテープの音声で、その音に隠れるように数人の男達が何かを議論していた。さらに建物を探ると、壁の中に隠し場所があり、そこに段ボール箱がいくつも入っているのを発見する。それ以降、この教会を見張っていたネイダだったが、ある日、教会に武装警官が乱入。その翌日に、教会に侵入してみるが、誰もいない。例の隠してあったダンボール箱をひとつ盗んで、街の路地裏で開封。中にはぎっしりとサングラスが入っていたが、一つを拝借して残りは投棄する。なにげなくサングラスをかけると、街中の写真や広告に「命令に従え」「消費しろ」「考えるな」などのメッセージが浮かんで見える。また、街にいる人々の多くが、骸骨のような恐ろしい顔をしたエイリアンで…というストーリー。
異星人が人間社会に潜んでいて…というお話は結構多いように思えるが、本作は一味違う。この手のお話の場合、異星人の目的を探ることが一つの軸になることが多い。そして判明した暁には、異星人への反撃を開始するストーリーに転じる。その過程で異星人側から人間に見方する者が現れ…なんていうのも常道だ。しかし、本作は、異星人の目的を明確にしない。なんで、人間たちを消費生活の虜や、政府に抗わない羊にしようとするのか、判ったような判らないような、ぼやっとした感じのまま。“手段”は判るが“目的”は判らないまま、終劇を迎えてしまう。
実は、目的のよくわからない行動というのは、ものすごい恐怖だったりする。連続殺人犯しかり、悪逆の限りを尽くす為政者しかり、その恐ろしい所業に畏怖する一方で、何でそんなことをするのだろう…と疑問に思っている。それに対して、幼少期のトラウマだ、極端な性欲や支配欲の発露だとか理由をつけて納得しようとするのだが、それは、理由をつけて納得することで畏怖感を軽減させようという行為である。
そういえば、『遊星からの物体X』の宇宙から飛来した生物も、なんで人間と融合するのか、その目的はイマイチよく判らない。捕食? 繁殖? となんとなく予想はつくのだが、絶対的に彼らがそうしなければいけない理由はわからない。ジョン・カーペンター作品の“恐怖”の正体は、コレだね。とにかく、そういうものなんだ! という、自然の摂理を振りかざされたような、圧倒的なパワーがある。
もし、人間を融合する彼らの生物特性が明確になり、それを疎外いたり対抗したりする術が判明し、反撃に転じたら、その時点で恐怖の質は、アドレナリンを伴った興奮に変化してしまい、純粋な恐怖ではなくなってしまうだろう。
本当に、本作は異星人たちの行動の理由がわからないの。だって、瞬時にテレポートできる腕時計とか、星間旅行とかできるテクノロジーがあるのに、ショットガンの人間に結構簡単にやられちゃうんだもの。で、すべての人間をだまくらかしているだけかと思ったら、相当数の人間が、異星人再度に寝返って利益を得ていたりもする。ますます、何が目的なのかわからない。人類を穏便に支配して、地球の資源をいただこうとしている? それとも社会実験? それともただ人間と一緒に暮らしたいだけ?
そういう謎まみれの展開の中を、ジョン・カーペンター流の演出が爆走する。なんといっても、いつまでやっとんねん! とツッコミたくなるほどの、黒人の仕事仲間との喧嘩シーン。これは、映画史に残る珍シーンといってよいかもしれない。だって、眼鏡をかけろ! かけない! という理由で、延々と殴り合いつづけるんだもの…。
正直、なんじゃこりゃ…と一瞬思ったんだけどね。すべて理詰めで設定することが、おもしろいシナリオのための必須条件ではないことを、改めて痛感させられた作品(ジョン・カーペンターが行き当たりばったりで本作を作ったといっているわけではない)。もちろん、ラストで何かどんでん返しや、驚くような謎解きがあるわけもない。この投げっぱなしが許される、ある意味脅威的な快作。おもしろかった。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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