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公開年:2011年
公開国:イギリス
時 間:88分
監 督:ジョー・コーニッシュ
出 演:トジョディ・ウィッテカー、ジョン・ボイエガ、アレックス・エスメイル、フランツ・ドラメー、リーオン・ジョーンズ、サイモン・ハワード、ルーク・トレッダウェイ、ジャメイン・ハンター、ニック・フロスト 他
ノミネート:【2011年/第65回英国アカデミー賞】 新人賞(ジョー・コーニッシュ)
コピー:団地の不良キッズVS謎の凶悪エイリアン
南ロンドンにある、低所得者向け公営団地“ブロック”。そのに住むモーゼス率いる5人組みは、毎晩のように大騒ぎしたり、時には通りかかった人を脅して金品を巻き上げることまでする、筋金入りの不良グループ。その日も、ブロックに引っ越して間もないサムという女性を脅して金品を巻き上げていると、突然彼らの目の前の空から隕石のようなものが落下してくる。落下物はエイリアンと思しき生物で、モーゼスたちを襲撃しはじめる。血気盛んな彼らは、ひるむことなく反撃し、逃げる謎の生物を追跡し仕留めてしまう。戦利品として死体を団地に運ぶモーゼスたちだったが、その後、先ほどと同じ落下物が団地中に飛来。さきほど倒した生物よりも共謀な種類のエイリアンが多数出現し、団地中がパニックになる。しかしモーゼスたちは、団地の人々を守るために、原付バイクや花火、忍者ソードなど、身の回りを駆使して立ち向かい…というストーリー。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のスタッフによる作品とのこと。たしかに、同じノリ。しかし、主人公があまりにもタチの悪いチンピラ集団で、しばらくするまで彼らが主人公だと認識できないレベル(カツアゲされた看護婦が主人公で、黒人のチンピラたちは途中であっさり殺されるキャラだと思っていた)。
主人公というのは程度の差はあれ、観客が共感できる人物である必要があると思う。モーゼスたちよりもとてつもなく悪い人間も登場するが、モーゼスたちの言動は完全に一線を超えているし共感できるものではない。民族的な差もあって、とても中学生くらいの歳には見えないというのも大きいが、イギリスではこの程度の悪さなら、子供のおイタの範疇で許容できるものなのだろうか。団地の子は環境が悪くてかわいそうだなぁ…って感じになるのだろうか。いやいや。可愛げがないだけでなく、未熟さと凶悪さのギャップが痛々しくすら感じられるほど。
いや、まあ、そういう他の作品とは違う異質な主人公で話をまわしてみようっていう狙いなんだろうと、頭を切り替えることに。イギリスの笑いのラインっていうのが、半周まわって、日本人にとっては笑えないラインのところにいるってことだろう。良いとか悪いの問題じゃなく、社会基盤とか集団的価値観自体が、異質なんだと思う。イギリス圏って今一番、日本と感覚が異質なのかもしれないね。
冒頭で、サムという女性から強盗をしてしまうわけだが、エイリアンから逃げている時に、偶然サムを再会してしまう。この団地の住人だと知って後悔するモーゼス(団地の住人は襲わないことにしている…と言うのだが、そういう問題じゃないだろう…というツッコミは脇に置くとして)。とにかく、イギリスは低所得者には将来がない社会。簡単に言えば、いまでも階級社会で、リッチマンと労働者階級がパックリ割れていて、上がっていくことが極めて困難。さらに“ブロック”は掃き溜め状態で、まともな教育を受けることもままならないから、ブロックで生きていくしかないという悪循環。
そんな見下されたエリア内のことなので、エイリアンが襲ってきても、警察なんかそうそう動いてくれない。ブロックの人たちへの仲間意識は強いモーゼスなので、友達や周囲の人が殺されるのを見て反撃をすることに躊躇がない。まともな教育環境にない子供の価値観は偏っているけれど、隣人愛を発端にしているのは間違いなく、製作側はそこにイギリスの未来を見ているのかもしれない。クソみたいなイギリス社会に対して一石を投じる意味合いがあるんだろうな…と予想はつくが、あまりに日本と違いすぎてその点はピンとこないレベルかも。
さて、この手の作品の場合、終盤になればなるほどグダグダになることが多いのだが、そうならないのがさすが『ショーン・オブ・ザ・デッド』のスタッフ。モーゼスを演じてる役者の子がウマイのも幸いしている(この子、伸びると思う)。
なんで、エイリアンがこのブロックに堕ちてきらのか? こいつら何なのか? という根本的な原因は不明だけど、なんでこのブロックに集中してくるのか? なんでモーゼスたちが追いかけられるのか? という理由はしっかりと整合性があって、且つきちんと解決の糸口にも繋がっており、好感が持てるシナリオだった。
最後はブロックの中の賞賛を受けるという終わり方。あくまでブロックの中でアイデンティティを確立するというオチなのがミソなんだろう。狙ってセンター前にポテンヒットを落とした感じ。クリーンヒットではないけど、小気味良い(というか小憎らしい)。まさに、小品良作。軽くお薦めする。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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