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公開年:1993年
公開国:アメリカ
時 間:110分
監 督:アイヴァン・ライトマン
出 演:ケヴィン・クライン、シガーニー・ウィーヴァー、フランク・ランジェラ、ケヴィン・ダン、ベン・キングズレー、チャールズ・グローディン、ヴィング・レイムス、ボニー・ハント、ローラ・リニー 他
ノミネート:【1993年/第66回アカデミー賞】脚本賞(ゲイリー・ロス)
【1993年/第51回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、男優賞[コメディ/ミュージカル](ケヴィン・クライン)
とある事情で、大統領に瓜二つのデーヴは一夜限りの代役を引き受けることになるのだが、替え玉遂行中に、運悪く大統領が脳卒中で倒れてしまう。大統領の取り巻き達は、副大統領が気に喰わない上に自分の立場が脅かされることを嫌ったため、しばらくデーヴを替え玉のまま使うことを画策する。しかし、まがりなりにも政務をこなすうちに、デーヴは持ち前の誠実さを発揮し始め、おかまいなしに改革を実行していき…というストーリー。
『影武者』のように“王子と乞食”のようなストーリーは多々あるが、その中でも本作は際立ってデキがよい。普通に考えれば、かなり荒唐無稽だし予定調和バリバリの展開なので、飽きてしまいそうなものだが、演者の仕事があまりにも上質なのでグっと引き込まれる。主人公のケビン・クライン演技は上品かつ的確だし、一見ミスキャストとも思えるシガニー・ウィーバーも、なにげにツンデレな感じでうまく仕上げている。ベン・キングスレーも他の作品での重厚さとは一味ちがう善人っぷりが心あたたまる。
こういうコメディ作品の味付けとして非常に大事なのが、小ネタ的ながらも味のあるキャラ。本作でいえばシークレット・サービスの役(『ダイハード』でいうところのパウエルに相当)。本作全体のハートフルさの3分の1は彼が構築したといってもよくて、最後の車内でのセリフは思わずじわっと涙が出そうになるし、エンドロール前の彼には思わずニヤリとしてしまった。
最後のエンドロールが“HIMSELF”のオンパレードなのもおもしろい。日本なんかより政治が身近だな…という感じがものすごくする。同じテーマの作品を日本で作ったとしても、もっとエグくなるか、逆に現実離れした内容になるに違いない。
本作を見てしまうと、いまの事業仕分けがなんでうまくいかないかの理由がわかってしまう。デーヴはホームレスのために予算を確保することを目的に、それより無駄だと思われる予算を削っていき、結果としてうまくいってしまう。いやいや作り話だから…という無かれ。なぜうまくいったかには、はっきりとした理由がある。それは、予算削減をなんでしなくてはいけないか…という目的が明確だからである。目的がはっきりしていれば、その目的よりも重要度や緊急性の低い予算を見つけ出して削ればいいのである。
では、いまの政権の事業仕分けはなんの目的でやっているのか?その目的は予算を削減することである。いやいや、予算の削減というのは、他に予算を使わねばいけないところがあるから行う“手段”であって、決して目的ではない。では、事業仕分けをしている人たちに聞いてみよう。なんで削減しているのか?「そこに無駄があるからだ」と言うに違いがない。もっともらしく聞こえるかもしれないが、手段が目的化した行動こそ、愚かなものはない。目的がはっきりしていないから、ツボがはずれてうまくいくはずがないのだ。いやぁ、こんな17年も前のコメディ作品に教えられるとは、情けない話である。
とにかく、上品でハートフルでウィットに富んでいる定期的に繰り返しみたくなるような作品。強くお薦めする。もし自分が政治家になるようなことがあったら、ことあるごとに観たい作品。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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