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image0745.png公開年:2000年
公開国:デンマーク
時 間:140分
監 督:ラース・フォン・トリアー
出 演:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・モース、ピーター・ストーメア、ジョエル・グレイ、ジャン=マルク・バール、ジョエル・グレ 他
受 賞:【2000年/第53回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ラース・フォン・トリアー)、女優賞(ビョーク)
【2000年/第13回ヨーロッパ映画賞】作品賞、女優賞(ビョーク)、観客賞[監督賞](ラース・フォン・トリアー)、観客賞[女優賞](ビョーク)
【2000年/第16回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞
【2000年/第24回日本アカデミー賞】外国作品賞
【2000年/第43回ブルーリボン賞】外国作品賞
コピー:魂の歌声は、誰にも止められない。

1960年代、アメリカの田舎町。チェコ出身のセルマは、一人息子のジーンを育てながら、工場で働いている。セルマは次第に視力を失うという遺伝性の病気を患っており、ジーンもやがて発症することがわかっているのだが、ショックを受けないように秘密にしており、ジーンに手術を受けさせるために、工場勤務だけでなく内職もして、こつこつと貯金をしているのだった。そんな彼女はミュージカルが大好きで、地元のアマチュア劇団に参加したり、友人のキャシーと一緒にミュージカル映画を観ることを楽しみにしていた。しかし、セルマの視力は日に日に落ちており、今では、映画の映像を満足に観ることも出来ない状態になっていた。そして、とうとう、工場で失敗を重ね続けたため解雇されてしまう。これまで貯めていた金額でなんとか手術をしてもらおうと、貯めていた金を持って病院に行こうとすると、何と約2000ドルの貯金が無くなっていた。いままで、親切にしてくれた警察官のビルの仕業であると思い、金を返すように彼に迫るのだったが…というストーリー。

以前に観たときは、もう二度と観ることはないだろう…と思っていたが、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』と盲人つながりで思い出して…。

前半の展開は、コールタールの中を歩かされているように、ネバネバと進む。上映時間が長めなのはそのせいである。
これでもかこれでもかと不幸が降ってくるのだが、かならず不幸の前フリがあって、予想通りの不幸な目にあう。こんな予想のつく内容なのに、飽きさせないのというのは物凄い才能でだと、素直に感心する。

うって変わって、ビルを殺害した後は、テンポが急速に上がる。正直それまでは、このノリが最期まで続くのなら観てられないな…くらいの気持ちになったのだが、これを境にガラリとかわる。もちろんこれも計算だろう。そこで私が一番好きなのは、法廷でのミュージカルシーン。といってもセルマの妄想だが。これが実に観ている側の心も踊る良い出来映え。そしてその妄想の楽しさと、現実の理不尽さのコントラストがたまらない。

そして、本作はトリアー監督のアメリカ批判の結実なのかな…という気がする。知力でも肉体的にも人より劣るセルマ。彼女は、ただただ、“産んでしまった”という罪を購うために、薄給を貯蓄し続けているだけ。そんな彼女を、見得と強欲と自分勝手が、破滅に追いやるのだ。見得と強欲と自分勝手こそ、アメリカの象徴だと彼は言っているような気がする。

そんな彼は、心の病により飛行機に乗れず、アメリカが舞台の映画でもヨーロッパで撮影するしかない。そんな彼が、なんで、『ドッグヴィル』『マンダレイ』とアメリカ三部作を作ろうとしているのか(まあ、3作目は製作されてないけど)。アメリカの歴史や社会構造に、人間の負の部分の象徴を見出しているのだと思う。

前回に観たときは、なんと理不尽だろうと思ったのだが、改めて観ると、何だかんだいってセルマはビルを撃っているし、法廷で自分の父親のことについて嘘をついているし、致し方ないのかな…という思いが沸いた。もっとうまくやれば、私刑は逃れられるだろうと、前回は思ったが、真の目標である息子の手術させ確実に叶えば、もうそれでいいという思いや落胆が良く判った。まあ、チャンスは与えられるが、そのレールからはずれたものに対してはひたすらに厳しいという、アメリカ社会への落胆の象徴とも言える。
そして、映画史上に残るであろう、文字通りの幕切れ。おそらく、このラストシーンが始めに思いついて、そこから逆算で膨らませていったのではないかな?と私は思っている。

トリアー監督は結局この陰湿なノリから外れることが未だにない。『ドッグヴィル』『アンチクライスト』は闇の部分が強すぎる。年々エログロの要素が増しており、おそらくこの路線は、一般人が付いていけないところまでいってしまうだろう。でも、どれだけ過激になろうとも、トリアー監督のラインナップを追って観続けたら、馴れてしまい、新しい感激はおきないだろう。今のトリアー監督は、彼自身が闇にまっしぐらだと思う。
正気と狂気のバランスは、本作が一番適度であり、結果的にトリアー監督の現時点での最高傑作であろう。
前半はセルマに感情移入してしまいがちだが、感情移入してしまうと本作を観るのは結構つらい。神が下界の様子を無感情で眺めるように、あくまで客観的に眺めていると、味わい深く観ることができるだろう。

観ているだけで鬱になりそうな作品なので、手放しでお薦めはできないが、体力のある時にどうぞ。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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