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image0288.png公開年:2003年 
公開国:イタリア
時 間:102分
監 督:マルコ・ベロッキオ
出 演:マヤ・サンサ、ルイジ・ロ・カーショ、ロベルト・ヘルリッカ、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ、ジョヴァンニ・カルカーニョ、パオロ・ブリグリア 他
受 賞:【2003年/第60回ヴェネチア国際映画祭】芸術貢献賞(マルコ・ベロッキオ)
コピー:私は信じる。きっと自由になる日が来ると。
1978年、ローマ。これはイタリア最大の事件と呼ばれた「事実」に基づいた物語である。


1978年、イタリア。極左武装集団“赤い旅団”がモロ元首相を誘拐する。モロ元首相は、アパートの一室に監禁され、女性メンバーのキアラが身の回りの面倒を見ることに。この事件は大々的に報道されるが、自分たちの行動が社会から支持されていないことを知り、加えて、政府に対する要求がことごとく拒絶されることに、苛立ちを募らせていき…というストーリー。

イタリアの名監督らしいのだが、知らず。たしかに手練な感じはする。音楽の使い方なんかは前衛的な要素もあるが、年寄りの冷や水というか、とって付けた印象も。

連合赤軍事件の永田洋子死刑囚が獄中死亡したニュースも、耳に新しいところだが、同様の共産主義思想の過激派の話である。日本赤軍のような日本の組織を扱った作品の場合、内ゲバや粛清によって、グロい狂気描写だらけになりがちなのだが、本作にはそういうシーンはない。

赤い旅団は明確に共産主義革命を標榜する組織であるが(まあ、実際はチンピラまがいで、マフィアと手を組むなど、志は高かったとは思えないのだが)、事件の被害者となった元首相のモロ氏がキリスト教民主主義党だったことで、共産主義とカトリックとの対比がなされ、共産主義が宗教の一つであることや、それが原始キリスト教の態様に酷似している点が表現されているのが、興味深かった。

人間というものは、他者とのコミュニケーションによって、多かれ少なかれ影響を受けるものである。その変化を成長と呼び、その変化こそ“人間”の社会性動物としての存在意義の一つといって良い。しかし、彼らは、他者の意見を一切受け入れず、その偏狭な考えを決して曲げることはない。その態度は既に“人間”のそれではないと私は思う。人間ではなく且つ他の人間に危害を加えるということは獣である。そして知性のある獣は悪魔と呼ばれるのである。
とはいえ、その知性とやらもレベルが知れているのが厄介。労働者革命の先には、今とは違う階級社会が表出し、再び違う階級闘争が生じる。それが永遠の流血を意味しているという想像すらつかない。そんなポンコツ悪魔たちが、自らの稚拙な所業によって追い詰められていく様子は、不謹慎ながら非常におもしろい。このクソ野郎どもを、痛い目にあわせてやりたい!そういう気持ちが増幅する、めずらしい感情が沸く作品である。

途中で、女性メンバーの心が揺れはじめ、組織が瓦解するのか?この女は転向するのか?と、方向性が変わりそうになるのだが、さすがに史実なので曲がりはしない。ちなみに、このモロ元首相誘拐事件の結末を知っているかいないかで、かなり感じ方は違うと思う。事件を知っている人は、あまり愉しめないと思うので、知らない人はまちがってもウィキペディアで検索しないように(笑)。そのまま観よう。

残念ながら、史実の壁のせいなのか、最後は“だって史実なんだからどうしようもないじゃな~い”と言い訳を叫びながら終わった感じ。決して、良い作品とはいえないのだが、あまり存在しないタイプの作品であることや、人がドツボにはまっていく様子を愉しむという観点では、価値はあると思う。私は意外と楽しめた。

以下、事件の結末を知らない人は読まないように。

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最後、政府による葬儀に遺体がない理由がわかりにくいが、モーロと対立関係にあった当時の首相が、赤い旅団の要求(政治犯の釈放)を拒否したために殺されてしまったと、遺族が思っているからである。イタリア人であれば説明不要なのだろうが、私にはちょっとわかりにくかったので、ウィキペディアで検索した(笑)。
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