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imageX0042.Png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:125分
監 督:沖田修一
出 演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、西田尚美、古舘寛治、小浜正寛、黒田大輔、小野花梨、小出早織、宇梶剛士、嶋田久作 他
コピー:おいしいごはん、できました。
氷点下54℃、家族が待つ日本までの距離14,000km 究極の単身赴任。



海上保安庁の料理担当だった西村淳は、南極大陸の標高3810メートルの位置にあるドームふじ基地に派遣される。西村の任務は越冬する隊員8名分の植樹を用意すること。平均気温マイナス57℃という過酷な環境で水の確保も困難な中、隊員たちを飽きさせないようにメニューを工夫し、隊員たちの胃袋を満たしていく。しかし、日本に残してきた妻と娘、生まれたばかりの息子のことが気に掛かりで仕方がない。他の隊員も、想像を絶する過酷な環境で疲労とフラストレーションがピークに達し…というストーリー。

タイトルは“料理人”だし、コピーは“おいしいごはん、できました。”なんだから、観てるだけでおなかがすくくらいのうまそうな料理がでてくるのかと思いきや、それほどでもない。ちょっとコピーの煽り方が間違ってる気がするな。

小汚い眼鏡ひげもじゃのキャラがかぶってて、わかりにくい…とか、生瀬勝久・きたろう・豊原功補など、どの作品にでもても変わり映えのしない演技の人たちばかりで面白みのないキャスティングだ…とか、色々イマイチで期待値は下がりまくりだった。

はじめは、なかなかほのぼのしてて楽しそうな生活じゃん…って思っていたのだが、なかなかどうして、物理的にも精神的にも厳しい状況になっていく。さらに追い詰められて散々苦労を重ねるような展開なのかなぁ~って思ったけど、そこまでにはならない。もちろんサスペンスにもホラーにもならない。南極観測隊の映画っていったら『遊星からの物体X』。だけど、日本ときたら食べ物ネタだぜ…という外国人の囁きが聞こえてきそう。
でも、このゆるいさじ加減が、なんともいい感じなんだ。

南極での生活の様子と、観測員になるまでの過程を交互に映していくのだが、まあ、時系列に話しを進めたら、変に盛り上がりを期待しちゃうからね。これでよかったと思う。
延々と小さな緊張と笑いを小刻みに続けるのみなのだが、観ている側も独特の閉塞感に包まれ、シチュエーションコメディーのような、妙な味に支配されていく。だんだん、この映画、どうやってオチをつけるつもりなのか…と不安になってくるのだが、もちろん最後まで“山なし”“オチなし”を貫き通す。だけど、面白かったー。
同じ料理がテーマの『タンポポ』のような、圧力というか主張の押し付けみたいなものが一切無いのも、心地よかったりする。

受賞歴は皆無だけど、こういうのもアリでしょ。こんなに淡々と、“山なし”“オチなし”作品を、心を折らずにまとめあげるなんて、この監督、なかなか才能があると思うよ。
まあ、オチなしといいつつ、帰国の時の嬉しさと安堵とそれぞれの微妙な感情の入り混じった隊員たちの演技は、なかなか良かったと思うけど。

さすがに1800円出せといわれたら怒るかもしれないけど、レンタル料金100円200円くらいだったら全然満足できるレベル。
#海上保安庁の料理担当とか、就職するとき選択肢に浮かんでなかったなぁ…。気付いてたらチャレンジしてたかもしれない。

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image0171.png公開年:1984年
公開国:日本
時 間:124分
監 督:伊丹十三
出 演:山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、奥村公延、財津一郎、江戸家猫八、友里千賀子、尾藤イサオ、岸部一徳、津川雅彦、横山道代、小林薫、池内万平、西川ひかる、海老名美どり、津村隆、高瀬春奈、香川良介、藤原釜足、田中春男、吉川満子、加藤善博、関弘子、佐野浅夫、関山耕司、左右田一平、利重剛、井上陽水、笠智衆 他
受 賞:【1984年/第8回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(山崎努)、助演女優賞(菅井きん)、監督賞(伊丹十三)、脚本賞(伊丹十三)
【1984年/第27回ブルーリボン賞】主演男優賞(山崎努『さらば箱舟』に対しても)、監督賞(伊丹十三)

俳優の夫婦である井上佗助、雨宮千鶴子がCM撮影を行っている現場に、千鶴子の父・真吉が無くなったと訃報が入る。千鶴子の両親は佗助の別荘に住んでいたが、千鶴子の母・きく江はその別荘で葬式を出したいという。そして、長女の夫として親族代表となり葬式を出さなくてはならなくなった侘助は、動揺し途方に暮れマネージャー里見の助けを求めるが、何もかも勝手が分からないのは里見も一緒。一行は別荘に向かい、病院に安置されている亡き父と対面。そこには、母・きく江や千鶴子の妹・綾子夫婦、そして真吉の兄・正吉がおり…というストーリー。

ハウ・ツー映画のはしりであり、日本文化・日本人気質の紹介ムービーにもなっているが、伊丹十三本人がそれを目指していたわけではないだろう。純粋に思いついたこと考えていたことを一生懸命に作品化しただけ。でも、自分が住んでる日本に対する愛と、ちょっと左翼的な日本卑下、そんなアンビバレントな感覚の包含が、客観的で醒めた視線を産んでいるんだろう。怪我の功名ってところは大きいと思う。
カメラワークのデキの良さが秀でているのも、その醒めた視線に助力している。コメディは笑わせようとしないこと。それが大事だなと再認識させてくれる良作だ。

本作への批判としてよく聞くのは、カーチェイスでのサンドイッチ渡しとか林でのセックスシーンとかが無駄だっていう点。たしかに本線ストーリーとはあまりにも無関係。初監督作品っていう自信の無さなのか、“葬式”一本だけで勝負する勇気がなかったことが伺えるが、でも、気をひく演出なのは事実。でも、荒削りなおかげで、他の伊丹作品よりも作為とかあざとさを感じないので、いつ観ても新鮮に感じる。
笠智衆演じる住職のタイルのくだりは、後の『マルサの女』の視点に繋がるが、その他にも後の伊丹作品に繋がる萌芽が随所に見られる。この葬儀屋役って江戸家猫八なんだね。意外に(なんて言うと失礼かもしれないが)ウマい演技だと思う。
ラストの、焚き火で色んなものを処分するシーンでの菅井きんの表情。ああ、そんなにこの先長くないんだろうな…なんて感じを醸し出してる。

葬式ってのは、普段はなかなか会えない懐かしい人と会える。でも、絶対会いたくない人と会わないといけない場でもある。通夜で、岸部一徳演じる明が、茂の正吉に対する反発を茶化すシーン。うるさい奴らが帰宅して、千鶴子ときく江と茂だけが残り飲み直すシーン。まあ、結構どこの親族でもこういう軋轢はあるわな。なるほどなぁって思えるシーンは多々あるし、葬式に関わらずに生きることは難しいので、面白く感じるだけでなく、いつか自分も…っていう緊張感も感じる。

不謹慎だが、身近に訃報を聞くと、思い出して観たくなる作品。

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imageX0037.Png公開年:1991年
公開国:日本
時 間:103分
監 督:周防正行
出 演:本木雅弘、清水美砂、竹中直人、水島かおり、田口浩正、宝井誠明、梅本律子、松田勝、宮坂ひろし、片岡五郎、六平直政、村上冬樹、桜むつ子、ロバート・ホフマン、柄本明 他
受 賞:【1992年/第16回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(本木雅弘)、助演男優賞(竹中直人)、監督賞(周防正行)、脚本賞(周防正行)
【1992年/第35回ブルーリボン賞】作品賞、主演男優賞(本木雅弘)、監督賞(周防正行)


教立大学4年の山本秋平は、父親のコネで就職も決まっていたのだが、卒論指導教授の穴山教授から、代返で一度も出席しなかったことを指摘され、卒業に必要な単位を与えないと宣告される。しかし、卒業と引き換えに、穴山が顧問をしている相撲部の試合に出れば、単位を与えてもいいと言われる。しぶしぶ、仮入部した秋平だったが、相撲部には留年を重ねた青木だけしか部員はおらず、試合出場に必要なメンバーを集めるところから始めなければならなかった。なんとか、太っているだけで気弱な田中、秋平の弟の春雄を入部させ大会には出場するも惨敗。約束の大会出場を果たして、それでおしまいのはずだったのだが、大会後の飲み会で相撲部OBに散々罵倒され、怒った秋平は「次は勝ってやる」と啖呵を切ってしまい…というストーリー。

監督としてよりも脚本家としての力量がすばらしい。
すべてきれいに伏線が回収できている…ってどころか、ちょっとした小ネタか?で流されるような部分も実は伏線で、それすらしっかり後から生きてくるのが驚愕。
正子がマネージャになるくだりとか、スマイリーが入部を勧められるにあたって尻を出すことを拒否するくだりはもちろんだけど、入部当初に田口浩正演じる田中がさりげなく胸で十字を切ったところとか、竹中直人演じる青木が自分の得意技が内無双だっていってシラけさせるところなんかまで、全部後で繋がってくるんだから。ここまで練られたシナリオって、そうそうお見かけできるものではない。
何か、日本の電化製品の変態的な気の配り方に通じるものがある。

実は、超弱小相撲部があって、それを残すために奮闘するお話っていうプロット自体は、さほど珍しくなければおもしろくもないのだ。本木雅弘演じる秋平が卒業を条件に入部したあたりまでなんか、「これ、この後、どうやって面白くするつもりなんだろう…」と逆に心配しちゃうレベルだもの。でも、とてつもなく話しの運び(ストーリーテリング)がうまいの。
『タンポポ』も本作と同じく、そのドロドロ、ベタベタな内容に反して、ラストで爽やかな気持ちにさせてくれた作品だけど、このストーリーテリングのウマさとオチのスッキリ感の合わせ技という観点では、本作のほうが上だろうね。

前作『ファンシイダンス』はなんだかんだいって原作ありで、ストーリーテリングの幅には制限があったし、『Shall We ダンス?』はリメイクもされて評価も高いかもしれないけど、悲哀の部分やウェットな部分が好き嫌いが分かれるところだと思う。竹中直人の既視感もあるし。だから私は、総合して周防監督の代表作と言えるのは本作だと思う。

この手のコメディは、時代の差によって陳腐に感じてしまうモノが多いけれど、20年を越えてもこの色褪せなさ。7,8年に一回は観たくなるレベル。日本映画50本に入る(私は入れたい)作品だと思う。お薦め。体が徐々にできていく流れもあるんで、撮影の順番とか大変だったろうなぁ。

#コメディに出た柄本明が、これ以上にいい仕事をした作品を私は知らない。

 

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image0190.png公開年:1983年
公開国:日本
時 間:106分
監 督:森田芳光
出 演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一、松金よね子、岡本かおり、鶴田忍、戸川純、白川和子、佐々木志郎、伊藤克信、加藤善博、土井浩一郎、植村拓也、前川麻子、渡辺知美、松野真由美、中森いづみ、佐藤真弓、小川隆宏、清水健太郎、阿木燿子 他
受 賞:【1983年/第7回日本アカデミー賞】新人俳優賞(宮川一郎太)
【1983年/第26回ブルーリボン賞】監督賞(森田芳光)

次男・茂之の高校受験を控えた沼田家は家中がピリピリしている。デキの良い兄と比べて茂之の成績は悪く、これまで何人もの家庭教師がきても、誰もがすぐに辞めてしまうほどのクセ者でもあった。そこへ、三流大学7年生の吉本という男が家庭教師としてやってくる。父・孝助は茂之の成績が上がればボーナスを払うことを約束すると、吉本のなりふりかまわない“教育”がスタートする…というストーリー。

げ、もう29年も前の作品だってさ。
残念ながら、森田芳光作品で心から「良いな…」と思ったのは本作だけ。基本的にセンスが合わないのかもしれないが、本作だけは別格だ。

当時としては非情に革新的な作品だったと思うが、30年近くたって今観ると、意図がぼんやりして、深く考えずになんとなく差し込んでみたような部分も。カメラアングルなども含めて“奇を衒った”印象が強く思える。
横長のテーブルにで並んで食事をする家族。駐車場に移動して、会話する父親。片手に図鑑を持っている家庭教師。etc…、極めてCM的というか、ノウハウ本的というか。こんなのおもしろいんじゃない?と企画会議でブレーンストーミングでホワイトボードに書き出してみて、生き残ったアイデアを散りばめてみました…そんな印象。
そういう手法が悪いと言っているわけではない。実際は練られた末なのかもしれないが、とりあえず撮っておいて、使うかどうかは編集の時に考えましょ…みたいな印象を勝手に持ってしまった私がいけないんだろう(『タンポポ』と比較するとどうしてもね)。

そんなに文句をいうクセに良いと評価するのは何故なのか。それは、本作が一見客観性持って、それもシュールな表現で貫いているように見せて、実は極めて主観的な怒りを孕んで進行するからだろう。そのシュールさだって、表面的には沼田家や吉本の行動がシュールに見えているけど、実は社会全体がシュールなんだぜ…と。その社会・周囲に対する怒りを無意識に共有してるから、ストーリーに入り込めるんだと思う。

こんな狭い空間で生活していながら、家族の精神的な距離は遠い。つまり、物理的なパーソナルスペースは狭いのに、精神的なパーソナルスペースはものすごく広いという、チグハグな構図。そこに、いずれのパーソナルスペースにもズケズケと進入してくる家庭教師がやってくる。
吉本の攻撃範囲のイメージは“ドス”みたいな感じかな。いや、これは吉本という架空のキャラクターの持つ攻撃能力じゃなく、松田優作の力なんだろう。

でも、破天荒なキャラに見えて実は単にビジネスライクなだけ。その証拠に、最後の最後で目的が達成できたところで、自分の感情を素直に表出。その結果がアレ。“ボーナス”は貰えたのか?最後の食事の前に貰ったということでいいのか?と、その点はちょっと気になったが、貰ったからこそアレなんだよね(貰う前だけど、キレちゃいました…みたいな演出でもよかった気がするけど)。

贅沢を言えば、湾岸沿いとか川辺付近の風景をもっともっと美しく差し込んでほしかった。淡々とシュールな演出が繰り返されるので、もっと別な方向に脳を持っていく瞬間があっても良かったかと。

その後の日本映画というよりも、テレビドラマに良くも悪くも多大な影響を与えた作品かと。個人的には『タンポポ』には劣ると思うけれど、見事な快作だと思う。30年近くたって、この色褪せなさは見事。

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image0747.png公開年:1985年
公開国:日本
時 間:114分
監 督:伊丹十三
出 演:山崎努、宮本信子、渡辺謙、役所広司、安岡力也、桜金造、池内万作、加藤嘉、大滝秀治、黒田福美、篠井世津子、洞口依子、津川雅彦、村井邦彦、松本明子、榎木兵衛、粟津潔、大屋隆俊、瀬山修、野口元夫、嵯峨善兵、成田次穂、田中明夫、高橋長英、加藤賢崇、橋爪功、アンドレ・ルコント、久保晶、兼松隆、大島宇三郎、川島祐介、都家歌六、MARIO ABE、高木均、二見忠男、横山あきお、辻村真人、高見映、ギリヤーク尼ヶ崎、松井範雄、佐藤昇、日本合唱協会、福原秀雄、北見唯一、柴田美保子、南麻衣子、鈴木美江、小熊恭子、伊藤公子、上田耕一、大月ウルフ、大沢健、藤田敏八、原泉、井川比佐志、三田和代、中村伸郎、田武謙三、林成年、大友柳太朗、岡田茉莉子 他
ノミネート:【1987年/第3回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞

距離トラックの運転手、ゴローと助手のガンが、さびれたラーメン屋に入る。そこは死んだ夫のラーメン屋を一人で切り盛りしている、未亡人タンポポの店。ちょうど店には、タンポポに交際を迫っている幼馴染の土建屋ビスケンが陣取っている。しつこく迫る様子にたまりかねてゴローが助けを出すと、喧嘩になってしまうが、ビスケンの取り巻きも加えての多勢に無勢でゴローはやられてしまう。翌朝、介抱されて目覚めたゴローに、ラーメンの感想を聞くと、今一つとの指摘。落胆したものの、ラーメンの知識があるゴローに藁をもすがる思いで弟子入りを願うタンポポだったが…というストーリー。

またまた再観賞モノ。安定・安心のクオリティを無意識に求めているようだ(ちょっと私お疲れみたい)。

特に印象的なのは、“臨終チャーハン”。海外の人が見たら日本の男尊女卑がうんたらかんたら言うのかもしれないけど、食べ物自体に対する愛ってよりも、「家族への愛≒食わせること」っていう図式がしっくりくるシーンだと思うよ。で、このシーンで、もっと私が注目したいのは、母親がチャーハンを作ってるところで、電車が走ってるシーンを挟む編集。この間の取り方ってすごくて、脳が持っていかれる感じがする。

そう、この作品のすごいところは、編集だと思う。臨終チャーハンのシーンだけじゃないんだ。
ラーメン作りという主軸のほかに、様々な食に関するエピソードが差し込まれる構成なわけだけど、その場面転換のほとんどが、カット編集じゃなくてカメラパーンで行われている。つまり、別の話に移る場合は、横で次のシーンの準備をしているってこと。普通はそれぞれ別撮して後で編集でつなげるでしょ。もう、絵コンテ・撮影の段階で、この繋ぎまで計算されているんだ。この一点だけでもすごいことだよ(厳密に言うと、すべてのカットがそうじゃなくてワイプで次のシーンとかもあるけどね)。

大抵のことでは怒らんが、食い物のことに関してだけは激昂するといわれる日本人。その根幹文化ともいえる食い物へのこだわりと、サブカルチャーとしても百花繚乱のごとく咲き乱れる食文化が、よく表現できていると思う。日本文化を紹介するなら、『菊と刀』なんか読ませるよりも、まず本作を観せることが先だな。出てくる街並みは大きく変わったけど、出てくる食べ物に関しては、何一つ現在でも違和感ないもの。

ただ、このサブエピソードにも批判的な人が、案外多いのも事実。正直にいうと、スーパーで指でぐにぐに押すババアのシーンは、その必要性が私ににゃわからん。虫歯のエピソードを挟むのは良しとして、電車で点心じゃないといけない理由もわからん。イノシシの腸の話も、腸まで進んでりゃすでに山芋の状態なわけがないだろ…というツッコミが。わさび醤油なんか合うかもね…って。まあ、その辺は、ご愛嬌で流すとこなんだろうな。

ぶらりとツワモノたちがあつまり、無償の施しをして去っていく…って、ノリが西部劇みたい(だから、ゴローはテンガロンハットかぶってる)。当時も“ラーメンウエスタン”っていうふれ込みで宣伝してたみたいだけど、そこを前面に出すのは宣伝戦略としては失敗でしょ。
ラーメンとチャーシューメンで勝負っていっておきながら、ピスケンがちょちょいとつくったヤツがまあまあだったからって、あっさりメニュー追加とか(笑)、まあ、その辺は日本人らしくていいわ。宮本信子演じる未亡人タンポポの汚れ具合も調度いい。そのおかげで、恋愛展開なんかどうでもいいし、下着がでてきても「勘弁してくれ…」状態で、観客もラーメンに集中できるわ(笑)。飲食店の厨房の小汚さに通じて、作り手側のアイコンとしてはすばらしい(って、ちょっと失礼か)。
#この頃の渡辺謙から、今のKen Watanabeは想像できんわなぁ。

ラスト。目線だけで「さらば」という山崎努の演技。それでおしまいでもいいのに、エンドロールの授乳カット。あざとい演出だけど、これが真理だものな。文句のいいようがない。
大滝秀治は27年前から秀治だな…って、ああこれ27年前かよ。全然そこまでの古さ感じないなぁ。日本映画の10指に入る作品。昔観たなぁ…という人も改めてみることをお薦めする。日本人のアイデンティティが強く刺激される作品。

#あのオムライスは練習したわ。案外できるもんだよ。

 

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image1351.png公開年:2008年
公開国:日本
時 間:115分
監 督:英勉
出 演:谷原章介、塚地武雅、北川景子、佐田真由美、池内博之、大島美幸、本上まなみ、佐々木希、山本裕典、伊藤明賢、住田隆、ブラザー・トム、温水洋一、中条きよし、伊武雅刀 他




海外で修行したほどの腕前を持ちながら、母親が遺した定食屋“こころ屋”を営む琢郎・33歳。料理の味もさることながら心優しい性格でご近所では人気者。しかし、その容姿はデブでブサイクなため、女性にはまったく縁がない。ある日、突然美人の寛子がバイトに申し込んでくると、一目惚れして即採用。勢いで告白してしまうが、あっさりフラれてしまう。落ち込んだ琢郎が、友人の結婚式のために紳士服店にスーツを買いに行くと、そこの店長が、着るだけでハンサム男に変貌できる“ハンサム・スーツ”を薦める。とりあえず試供品を使ってみるのだが、ハンサムの恩恵により今まで味わったことのない経験の連続で、舞い上がってしまう。そして、街中を歩いていると、モデルにスカウトされて、光山杏仁という名前でデビューすることになり…というストーリー。

リアリティがどうのこうのいうような話ではないのは、DVDジャケットの画像を見れば判るわけで、そんなことは期待していない。むしろマンガチックに振り切れてくれれば良い。しかし、笑いたくてもひっかかりが多すぎて、如何ともしがたい。

ブサイクな自分にうんざりするのまではわかる。ハンサムになれるスーツを着ておもしろいと思うのも判る。今まで自分が経験できなかったことをやってみようと思うのもわかる。しかし、それで「オレってすげー」みたいな感覚になるのがわからん。
「よーし、いい物もらったから、ストレス解消しちゃえ!」とか「悪いことしちゃおう」ならわかる。でも、他人の容姿で好きな人に告白してしまうのって、変じゃないか? だって、モテても自分じゃないのはわかってるわけだから。そういう態度って、自分自身の完全否定。主人公のアイデンティティの崩壊でしょう。
アイデンティティが崩壊しているということ、そしてそれを愉しんでるってことは、自分を捨てたのと同意。つまり自殺したのと同意である。自殺した人間に共感できるか? できるわけがない。だから、観ていても話に入り込めない…というあたりまえな話。ちょっとしたイタズラ心で他人になりすまして、戻るに戻れなくなっちゃった的な展開にすべきだった。

そういう根本設定の問題だけでなく、ストーリー展開でもイマイチな点が満載。
カリスマモデルという設定でありながら、友達の友達でした…っていう、無理やりな設定。いくら、変身後と変身前が対面させられそうになるピンチな状況をつくりたいからといって、稚拙すぎる。

北川景子もが逆スーツを着てるってのは、森山中・大島が登場したところで、9割の人間が判る。別に判ること自体は(まあ稚拙な演出だとは思うが)問題はない。しかし、まるでそれをこの物語の最大のドンデン返しみたいな感じで、長々とネタばらしするラストのくだりは、うんざりする。言わずもがなでサラっとうまいこと表現できないことが、シナリオとしてレベルが低い。

後、勝手に他人をパシャパシャ写真に撮るんじゃねえっ!とか、買ったばかりのガリガリ君が溶けかけとか、小道具くらいちゃんと仕込めや!とか、東京ガールズコレクションのステージで、モデルが立ち止まったから音楽が自然に消えるとかありえねえだろ! とか…。このシナリオに対して誰も指摘しないとか、ありえないでしょ。

バラエティ番組で、笑おうと思っても、ちょっとそれはイジメなんじゃないの?とか、やりすぎて笑えないんだけど…とか、配慮が無さすぎなんじゃない?とか、多々見られるでしょ。あれと一緒。考えが浅いんだと思う。って思って調べたら、原作も脚本も鈴木おさむだった。だれも、鈴木おさむにツッコむ人いないんだな。王様状態かよ。クリエイターとしては、かえって不幸だよなぁ。

でも、最大のトホホポイントは、北川景子が美人のアイコンとして登場するのに、森山中・大島演じる本江さんのほうが、完全に魅力的に見えてしまっているというところか。むしろ、ブスーツを脱いだほうがガッカリするという、ある意味ものすごいシュールさ(夫としてはしてやったりか?)。大体にして、本当の自分を見て欲しかったといっても、その“本当の自分”とやらを寛子の時に発揮できていないだけにしか思えないんだけどね。

日本コメディ映画で、最低の部類かもしれない(実は、途中で観るのを何度も止めてる。ブログに書くネタがなくなるから仕方なく最後までつきあっただけ)。




負けるな日本 

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image1374.png公開年:2008年
公開国:日本
時 間:103分
監 督:矢口史靖
出 演:田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、田中哲司、平岩紙、中村靖日、肘井美佳、森岡龍、正名僕蔵、藤本静、佐藤めぐみ、入山法子、長谷川朝晴、いとうあいこ、江口のりこ、宮田早苗、明星真由美、森下能幸、笹野高史、田山涼成、菅原大吉、竹中直人、木野花、ベンガル、小日向文世、柄本明、岸部一徳 他
コピー:ヒコーキ、飛ばします。

機長昇格の最終訓練に挑む副操縦士の鈴木和博。そのフライトはホノルル行き1980便。前日のシミュレータで失敗し、ただでさえ緊張しているのに、当日になって試験教官が厳しい原田教官急遽変更され、さらに緊張。一方、その便には、初国際線となる新人CA斎藤悦子も搭乗。空港カウンターでは、スタッフの木村菜採が乗客や同僚が引き起こす問題の対応に追われ、整備場では若手整備士が上司に怒鳴られながら整備を行い、各々が定刻運行に向けて必死にがんばっていたのだが…というストーリー。

綾瀬はるかに田辺誠一、田畑智子と、矢口監督作品らしいいかにもなキャストなので、まあ、いつもの感じなんだろうなと、期待せずにいたら、まさかの愉しさ。ストーリーの主筋は、機長昇格訓練のフライトだったんだけど、色々なことが次々おこって、結局、羽田に戻ることになった…という以外には何もない。何もないのに、おもしろい。何がすごいんだろう。

ANA関連の仕事人たちへのインタビューの結果の中から、部外者が興味を持つこと、知ってるようで知らないことを、積み上げて一本の映画にした感じ。どれだけがっちりインタビューできたか、ロケハンできたか、その成果がすべてだったように思える。発生するトラブルが、田辺誠一演じる副機長や、綾瀬はるか演じる初海外便CAなどを、大きく成長させる話に焦点が当たっているわけではない。それらは、一つのサブストーリーのすぎず、主役は“航空業界に携わる仕事人魂”ってことなんだろう。航空関係の業務の奥深さと、職業意識の塊っぷり。脚本としては、それらをうまくまとめたにすぎない。

ある意味、一つのフライトという時空のなかで繰り広げられる、グランドホテル形式の映画だと思う。今までの矢口監督作品とは、フレームのはめかたの次元が違う作品。

まったく架空の部分がないのかといえば、そんなこともなさそう。いくらデザートを溶かしてしまったからって機内で調理することはないだろうし、停電で機器が復旧しないからといって窓口の所にある飛行場の模型を運ぶなんてしないだろうし。
だけど、テンポよく綺麗にまとまっているので、そのくらいのことをしたって、リアル感が台無しになることもない。これってすごいこと。
#ただ、TV放映をした場合、CMで切られると、このテンポが崩れて、おもしろくなくなっちゃうかもしれないね(あれ?TV放映ってしたのかな、これ)。

事故の話ではあるけれど、飛行機に乗り馴れた人は、機内の音や雰囲気で記憶が読みがえり、また飛行機de
旅をしたいと思うんじゃないかな。私はそうだったよん。お上品な笑い(というか微笑ましさ)が鼻につくこともなく、気楽に楽しめた快作。お薦め。




負けるな日本
 

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image1318.png公開年:2008年
公開国:日本
時 間:104分
監 督:李闘士男
出 演:松山ケンイチ、加藤ローサ、秋山竜次、細田よしひこ、大倉孝二、岡田義徳、高橋一生、美波、大地洋輔、大谷ノブ彦、濱田万葉、たくませいこ、米原幸佑、山根和馬、唐沢美帆、小林きな子、藤本道、フジヤマ、東真彌、真、ノゾエ征爾、駿河太郎、マーティ・フリードマン、鮎貝健、ジェレミー・コルソン、鈴木一真、カジヒデキ、K ダブ シャイン、DJオアシス、柊瑠美、菅原大吉、加藤諒、池澤あやか、吉田尚記、ウォード・セクストン、宮崎美子、松雪泰子、ジーン・シモンズ 他
受 賞:【2008年/第32回日本アカデミー賞】話題賞[作品](松山ケンイチ)
【2008年/第18回日本映画プロフェッショナル大賞】特別賞(松山ケンイチ)
コピー:僕がしたかったのは…こんなバンドじゃない!!

オシャレ系のポップスミュージシャンを夢見て九州から上京してきた根岸崇一。デモテープを送った事務所の社長に見初められたのの、望んだ音楽ではなく、悪魔系デスメタルバンド“デトロイト・メタル・シティ”のギター兼ボーカル“ヨハネ・クラウザーⅡ世”としてデビューさせられてしまうのだった。いやいやながら活動しているものの、1stシングル“SATSUGAI”は予想外の大ヒットとなってしまう。そんな中、大学時代の憧れの女性・相川さんと再会。根岸と同様にオシャレ系ポップス好きの彼女に、クラウザーとして活動していることバレないようにひた隠す根岸だったが…というストーリー。

原作漫画はまったく読んだことが無いので、どれだけ似ているのか(または乖離しているのか)まったく不明。

シャケ写を見てマトモな話じゃないと思う人も多いだろうし、漫画原作にありがちなお祭り的な感じで、やっぱり駄作だった…てがっかりさせられちゃうんでしょ?なんて先入観があってあたりまえだと思うが、完全に裏切られる(いい意味で)。

自分のやりたいことと、人から求められることとのギャップに悩むなんてのは、だれもが身近に感じることだから、共感しやすい。意外とテーマがはっきりしているので、明らさまに不自然な演出(逃げて実家に帰ったのに、フル衣装とメイク道具を全部もっていくかね…とか、いくらメイクしてたって家族はわかるでしょ…とか)が多数あるけれど、そういう点もどうでもよく感じてしまう。
あとは、深く考えさせないように、くだらなかろうがなんだろうが、ノリを壊さないように注力したってところか。
まあ、“これこそ夢なんだ”なんて劇中のように言い切られると、それは違うと思うけどね…といいたくなるけど、その辺を深く掘り下げたいわけじゃないから別に問題なし。

この面白さが、原作から包含されている面白さなのか、映画になってからの面白さなのかよくわからないので、李闘士男の評価が非常にしにくい(他の彼の作品は観たことがないので)。ただ、短い時間内に必ず注目できるポイントを作ることができる監督だなとは感じた。要するに飽きさせない工夫はできる人だなと。なので、おそらくTVドラマとかは向いているかもしれない。

どう考えても松山ケンイチ以外では成立し得なかっただろう(他にできる俳優が思いつかない)。ダダ滑りしちゃっても不思議じゃないところを彼一人の双肩でがっちりささえたってことだ。
逆に、松雪泰子を高めに評価している人も多いが、いまいち賛同できず。きわどいセリフを連発してはいるけれど、べつにそろそろベテランの域に入ろうという女優にはどうってことないだろうし、ちょっとドスがたりないというか体力不足なんじゃないのかな。

昨今に漫画原作映画と比較すれば出色の出来映えといっていいでしょう。佳作だと思う。軽くお薦め。「くだらねー」って思うだろうが、そのリアクションを望んで製作されているのだから、始終正しいのである。文句言うやつはべーべーしちゃう。




負けるな日本

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image1423.png公開年:2008年 
公開国:日本
時 間:102分
監 督:羽住英一郎
出 演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル、石田卓也、大後寿々花、福士誠治、光石研、田口浩正、市毛良枝、木村遼希、高橋賢人、橘義尋、本庄正季、恵隆一郎、吉原拓弥 他
受 賞:【2009年/第33回日本アカデミー賞】話題賞[俳優](綾瀬はるか)
【2009年/第52回ブルーリボン賞】主演女優賞(綾瀬はるか)
コピー:見せられるわけ、ないじゃん!?


1979年、北九州のとある中学校に若い国語教師の美香子が赴任してくる。早々に男子バレー部の顧問を任されるが、部員たちはボールすらまともに触ったことのないダメ部員。何とか彼らにやる気を出してもらおうと色々試みる美香子だったが、なぜか“試合に勝ったら、おっぱいを見せる”というとんでもない約束をさせられるハメに。ありえないと思いながらも、やる気になった彼らに水を差すこともできず、日々の練習を重ねていくのだったが…というストーリー。

まあ、そりゃあ情報不足なこの時代設定にしないと、この内容は成立しないわな。当時の九州の様子は良く判らないけど、町並みやら電車やら車やら、大道具さん小道具さんはよくがんばりましたな(CGもあるのかな)。
#九州訛りが一切登場しないのは、頭をよぎったけどね。
だけど、流れてる懐メロって1979年の物かな。もうちょっとばかしズレているような気がする(まあ、その年の曲しばりってわけじゃないんだろうからいいか)。ハマりそうなもんなんだけど、なんか場面としっくりきていなくて取って付けたような感じなのは何故だろうか。

プロモーションを見て劇場に足を運んだのは、綾瀬はるかの猛烈なファンと、本当におっぱい目当ての中学生男子と、そして意外と懐かし目当ての50代前後の人たち(三丁目の夕日とかそういう路線ね)。それ以外の人はピンと来なかっただろう。
ところが、多分駄作なんだろうな…と覚悟はしていたものの、悪い映画ではなかった。簡単な内容に見えて、案外バランスよくこのシナリオを成立させるのは難しかったと思うし、キャスティングからものすごく悩みぬいたような気がする。油断すると、単なるくだらないコメディやスポ根ものになってしまうし、新米教師の成長物語にばかりスポットを当てれば、それこそ“おっぱい”なんかどうでもよくなってしまう。
ただ、そのバランスを取ったせいなのか、肝心の5人の男の子達の個々のキャラが立っていないのが残念かもしれない。

いや、まとまりは良いかも…とはいったけれど、良作とは言ってない。正直、あまり感想とか文句とか湧いてこなかったのだ。毒のある映画はあんまり観たくないな…という時にはいいかも知れないけれど、多分これを観たからってあなたの人生になにか影響を与えるとは到底思えない。そのレベル。お薦めはしない。
#昨日の『映画は映画だ』と比べると、カメラや照明技術にステージが二段くらい差があるように感じてしまう。こんな作品で日本映画の危機を感じてしまうとは。もうちょっとカメラアングルとか照明とかなんとかならんかなぁ、日本映画。

 

負けるな日本。

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image1548.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:134分
監 督:水田伸生
出 演:阿部サダヲ、瑛太、竹内結子、塚本高史、皆川猿時、片桐はいり、鈴木砂羽、カンニング竹山、高橋ジョージ、陣内孝則、藤村俊二、小倉一郎、光石研、伊原剛志、いしだあゆみ 他
コピー:これは“泣ける喜劇”か!? “笑える悲劇”か!?



放蕩な父親のせいで、幼いころに生き別れた兄弟の兄・祐太は、東京の下町の惣菜屋に身を寄せ、今ではその店を継ぎ、ハムカツが名物の超人気店“山ちゃん”として成功している。一方、弟・祐介はつらい境遇を乗り切る術として笑いを身につけ、金城大介という男とコンビを組み、兄弟漫才師“金城ブラザーズ”として人気芸人になっていた。そんなある日、10年以上音信不通だった初代店主の一人娘・デブでブスだった徹子が大変貌を遂げ美人になって突然帰ってくる。いささか引っかかりを覚えつつも、祐太は徹子を温かく迎え入れ、ほどなく2人は結婚することに。そして、婚姻届提出のために確認した戸籍の内容から、“金城ブラザーズ”の祐介が実の弟であることが判明し…というストーリー。

基本的に、宮藤官九郎脚本の作品は、琴線に触れない。あまりおもしろいと思ったことがない。おもしろいと思っていないのだから、それほど多くのクドカン作品を観ているわけでもないので、いささか恐縮ではあるが、好みに合わないものは仕様が無い。

どういう点がおもしろく感じないか。いかにも舞台劇だな…という点について指摘する人は多いが、その点は気にならない。特異なキャラクター設定を重ね、特に性的に倒錯したキャラが多く、それらがひたすら悪ノリを繰り返すというパターン。そういうキャラばかりなので、とにかく演者さんたちもハジける以外に方法がないという状況。そして悪ノリをやりきった演者だけが評価される状態。笑いをとる場面も、チョケかたが気持ち悪い。そういう諸々の感じがどうもなじめない。
いや、それが悪いということではないのだが、どうも私は観ていて冷めるのである。

ただ、宮藤官九郎本人が気づいているのかいないのかはわからないが、本作については、私の嫌いな悪ノリは押さえ気味だし、ちょっぴり考えさせられる人情劇になっている気がする。
自分の境遇と社会とのバランス関係。人間の行動ってその場その場でどっちの行動をとるか、選択の繰り返しで、その積み重ねが他者から見たパーソナリティになる。でもそれは外部要因によって形成された自分であって、内面の自分とは違うことが多い。往々にして、融合してくか、うまく切り替えるなどして解決を図るわけだが、本作の山ちゃんの場合は、折り合いをつけることが許されない立場で、極端な八方美人に徹することを選択しているわけである。程度の差はあれ、このように折り合いがつけられない人は、たくさんいると思われ、奇抜な阿部サダヲの演技でぼやかされるが、共感しなくもない…と感じる人は多いと思う。

そんな感じで好意的に見ていたのだが、“エコ”がらみの件で、やっぱりチョケはじめる。いや、沖縄の件に続けたいのだろうから、削除すべきとまでは言わない。でも、この監督がいつものクドカンの映画と同じノリで演出しちゃったから、残念な結果に。
この作品は、後にクドカンのターニングポイントっていわれるような作品になれたような気がするのだが、どうも、監督も演者もそうは感じていなかったようで…。

従来のクドカン作品のファンには、いまいちを思われるのかもしれないけれど、そうでも無い人は、逆に案外、心に響いてしまう作品かと。少なくとも『舞妓 Haaaan!!!』とは一線を画しており、味わいは3倍はあると思うので、あえて軽くお薦めしてしまう。

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image1492.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:106分
監 督:本広克行
出 演:長澤まさみ、三宅弘城、諏訪雅、中川晴樹、辻修、川島潤哉、岩井秀人、志賀廣太郎、寺島進、松重豊、甲本雅裕、三代目魚武濱田成夫、平田満、木場勝己、ユースケ・サンタマリア、升毅、佐々木蔵之介  他
コピー:エスパーのお陰で、地球はときどき回っていたりする



“カフェ・ド・念力”という奇妙な名前の喫茶店。能力を隠して日々生活をする本物のエスパーたちが、年に1度、クリスマスに集まる場所。日ごろの制限を開放し、思う存分能力を披露し合うのだ。そんな彼らが毛嫌いするのが、“あすなろサイキック”という超常現象を扱うTV番組。ところが、その番組のAD桜井米が、番組のエスパー探しの取材のために“カフェ・ド・念力”に来店。自らの能力を知られまいと大慌てするエスパーたちだったが…というストーリー。

ずいぶん、最近、邦画が多いとお思いの人もいるかもしれない。観はじめたものの、どうしても観続けられなかった作品を、エイヤァで“最後まで観ようじゃないかキャンペーン中”なのだ。ここ数週間の邦画は全部その一群だと思ってくだされ。

閑話休題。

各場面の時間的構成配分がよろしくない。簡単に言えば、冒頭から話しが動き始めるまでのテンポが非常に悪いし、ラスト付近もやたらと迂遠。ここはノリを重視して、伏線でどうしても切れないところ以外は、思い切って切る!という踏ん切りというか割り切るべきところだと思う。冒頭の2割くらいまで観て、それまでのダラダラ具合に「単なるアイドル映画かぁ?」と、さじを投げてしまったというわけでだ。これは、編集担当のせいなのか監督のせいなのか。

ところが、場面が喫茶店メインになってくると、とたんにテンポが上がりおもしろくなってくる。おそらく本作は元は舞台脚本と思われる(そのまま舞台でやれそうだもの)。もしかすると、元脚本の部分が非常におもしろく、映画にするために付け足した部分がつまらないのかもしれない。とにかく、脚本の基本的な発送とこねくり回し方は実に見事だと思う。ただ、106分と短めの映画なのだが、90分で納まる内容。いや、むしろ90分未満にしなければいけない内容。興行的に短すぎるのは問題があったのかもしれないが、足した部分がまさに“蛇足”になっていると予測するが、いかがか。

いささか稚拙な長澤まさみの演技も、役柄にははまっている(長澤まさみありきで脚本を探してきたのか、脚本ありきで長澤まさみをもってきたのかは、微妙だけど)。こういう作品は、役者さんは自分の味を発揮しやすいので、嬉々としてとしてがんばっているのが良くわかる(いや、それに救われている)。
ことでんが出てくるので、香川県が舞台なのかな…と思うけれど、ちょっとご当地色が薄く、香川のフィルムコミッションとしては、ちょっぴり不満足なのでは?。設定的に県外から集まってきたと思しき登場人物の割合が多いので、仕方が無いかもしれないが、全部標準語なのもねえ。

意外におもしろかったが、とにかく、はじめの15分は我慢して観ること。アイドル映画として忌避しないこと。そうすれば、及第点以上の作品が待っている。軽い娯楽作品としては非常に優秀である。

#映画というよりも商品CM的な匂いがするが、めずらしくセンスのよいコピーだと思う。
 

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image1518.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:94分
監 督:塚本連平
出 演:三村マサカズ、大竹一樹、芦名星、ベンガル、井森美幸、田中要次、正名僕蔵、酒井敏也、載寧龍二、岩松了、保積ペペ、長谷川朝晴、小松和重、永岡佑、篠山輝信、入来茉里、尾上綾華、足立麻美、安藤玉恵、佐野泰臣、つぶやきシロー、手島優、板野友美、丘みつ子、麿赤兒 他
コピー:雨ニモ負ケル。風ニモ負ケル。
さまぁ~ず主演!コンプレックス克服ムービー!!

若ハゲに悩む茂は、東京への転勤を機にカツラの装着を考えるが、時間も予算もないため、“安くて早い”という宣伝文句の店“大和田カツラ”を訪れる。念願のカツラを付け転勤初日を迎えたが、周囲にバレるのではないかと不安に押しつぶさる。ある日、森山の部署に涼子という女性スタッフが配属されてくるが、2人で仕事をしていくうちに、二人はいい感じになっていき…というストーリー。

初めから、ヒット作にしようとか賞レースに参加しようとして製作されていないのは明白ではあるのだが、なかなか興味深い作品だと思う。昔のホイチョイ・プロダクションの映画みたいなノリだが、さまぁ~ずの単独ライブDVDを観たことがある人ならお判りだろうが、本作のストーリーは、やろうと思えばコントライブで充分表現できる内容で、さまぁ~ずの得意分野といえる。

役者の半数がホリプロ所属で、失敗しても成功してもホリプロの責任範疇で収めようという意図も見え、ホリプロの税金対策か?なんて穿った見方すらできるが、しかし、許される予算内で且つ最大の効果が得られる演出を、貪欲に模索しているのは判る。さまぁ~ず人気におんぶにだっこしているともいえるが、さまぁ~ず番組のDVDの売り上げは大きいので、公開時の配収が芳しくなくてもDVDでかなり回収できるだろう。
このような芸能事務所がメインとなって映画制作に携わる方式というのは、昨今の製作委員会方式とは異なる新たな映画制作方式になるかもしれない。所属俳優を使えるのでコストは小さいし、スケジュール調整も楽で、撮影期間も短くて済む。製作予算は費用計上できて、それこそ税金対策にもなる。そして一番大きいメリットは、所属俳優を“こういう風に売りたい”という形で出せるということだ。本作でいうなら芦名星がそれ。ちょっと冷たいイメージがあるので、『鴨川ホルモー』みたいに、悪いイメージの役があたることが多いのだが、本作では事務所が臨んでいるであろう、綺麗なおねえさんでツンデレというキャラ。売り出し期間中に事務所が望むような役のオファーがくる可能性なんて小さいのだがら、本作で評判になって同じような役が続けば御の字である。

…ということで、プロモーション的に非常におもしろいと思ったわけである。

で、内容に話を移すが、コメディ映画だと思って観るのではなく、さまぁ~ずのコントDVDだと思ってみれば充分愉しめるだろう。ワタクシ的にはアリだったので、軽くお薦めする。

#大和田は“やまと でん”じゃないんだ……。

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image1496.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:116分
監 督:竹中直人
出 演:成海璃子、沢村一樹、AKIRA、マイコ、竹中直人、桐谷美玲、紗綾、波瑠、温水洋一、六平直政、田中要次、広田レオナ、井口昇、荻野目慶子、緋田康人、篠原ともえ、佐伯新、赤井英和、石橋蓮司、斉木しげる、デビット伊東、クリスタル・ケイ、岩松了、生瀬勝久、由紀さおり 他



美香代は歴史研究会に所属する高校2年生。落ち武者伝説を研究する目的で、かつて平家の落人狩りがあったという山形県の御釈ヶ部村を訪れる。だが、研究会一行が現地に到着すると、落ち武者の霊が眠るといわれる祠を倒す観光キャンペーンのイベントが開催中。祠が倒されると、その祟りで平家の落人たちが蘇り、村人を襲いはじめ、殺された村人たちもゾンビとなって他の者を襲い始めるというとんでもない状況に。研究会メンバーも追い詰められるが、平家の落人の一人・葛貫が愛していた官女・光笛に似ていたためにさ美香代がらわれてしまい…というストーリー。

竹中直人監督云々についてはあえて言及しない。本作のデキの悪さの直接原因は、脚本の質がズバ抜けて悪いためで、監督のせいではないと思われるので。

漫画だっていうんなら、別になんのひっかかりもなくさらっと成立している内容だと思う。おそらく、“マンガ”的なイメージで、設定やストーリーが思い浮かんだんでしょう。それは別にそれはかまわない。だけど、それをそのまま映像にしちゃダメ。実写にしたときに興ざめしないかどうか、もう1枚フィルターかけてなくちゃ。
展開も映像もいくらなんでも陳腐すぎる。中途半端にセットやメイクを作りこんでいることをが、ますます格好悪く映る。とにかく映像センスに欠ける。

こういうコミックホラー的な作品は、過去の名作ホラーのオマージュだったりリスペクトだったりするのが多いけれど、いくらなんでも、呆けたおばあちゃんの歌で頭を破裂させちゃだめ。『マーズアタック』そのまんまのオチはイカン(大元ネタは『アタック・オブ・ザ・キラートマト』だけど)。
“匂わせる”とか“わかる人にはわかる”とか、せめてそういう感じしてほしい。ゾンビだって、ロメロ監督作品では、大衆社会の投影だったりして、往々にして“恐怖=社会の何か”という図式が底辺に隠れているものだ。コミックホラーにだってその図式は絶対に存在してしかるべきなのに、本作のゾンビはただのゾンビである(もっと卑近で俗っぽい何かの投影でよいのに)、何の意味も見えない。私は、ホラー映画マニアではないので、もしかすると、同好の方々は随喜の涙を流すようなシーンが盛りだくさんなのかもしれないから、そうだったらあらかじめ謝っておく。ごめんなさい。もし、表面のギミックだけを真似してるのであれば、それは過去のホラーの作品を馬鹿にしているに等しいように思える。そう、「様々な映画のオマージュを散りばめたホラー・コメディ」。この看板に偽りアリとしか、私の目には映らなかった。これが評価のすべてかも。

もう一度言うが、もしかすると私の映画知識が不足しているために楽しめなかったのかもしれないと断っておく。でも、大半は私と同レベルかそれ未満でしょう。じゃあ、一般的にはつまらんってことだよね…。

結果からいえば、笑えないコメディの先に残った先人への不敬という、がっかりな作品。お薦めしない。唯一、よかったのは、昨今のスレンダーな若手女優全盛のなかで、見事な“健康優良児”っぷりの成海璃子。他にはない独特な雰囲気はズバ抜けているので、今後もいい仕事が舞い込んでくることは必至だろうね。

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image1497.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:93分
監 督:松本人志
出 演:松本人志 他
コピー:想像もつかない“何か”が起こる…





メキシコ。覆面プロレスラー・エスカルゴマンは、いつもと同じように試合へ。彼を送り出した妻は、夫の様子がいつもと違うように感じられ、何やら胸騒ぎが。一方、水玉模様のパジャマを着たマッシュルームカットの男が白い壁に囲まれた部屋で目を覚ます。男は出口も見当たらない部屋の中で途方に暮れつつも、なんとか脱出しようと試みるが…というストーリー。

ありがちな意見かもしれないけれど、正直にこう思うので、素直に書くことにする。

前作の『大日本人』は、最後のまとめ方さえ、あのようでなかったら、私にとって1年に1回は観なおすであろう、ステキな作品になったと本気で思っている。話の展開も、設定もものすごく好み。本当に最後のあの場面の直前まで、誰がなんと言おうとこりゃあスゴイものに出会ったぁと感じていたのだが、最後の最後で、頭を掻いてしまった。表現の問題もあるけれど、政治的なメッセージがあまりにも幼稚すぎた。あまりにも格好悪すぎた。
お願いだから、ラストだけを変えて再公開して欲しいと私は願っているけれど、そんなことは(本心でそう思ってたとしても)口が裂けても言わないだろう。かなわぬ夢は抱き続けるだけ無駄なので、私の中では封印した作品である。

で、本作も、もちろん劇場で鑑賞するはずもなく、DVDレンタル開始になってもすぐには観る気すらおきなかった。どうせまた裏切られるのだから。まあ、前作だって、あんなに途中までイイ出来具合になるとは、監督本人も思っていなかったかもしれないし、海外公開なんて頭になかったかもしれない。コントの延長って感覚が抜けていなかったのかもしれない…。おまけに“白い空間”なんて、カナダ映画の『NOTHING』で扱われているので目新しくもないし…なーんて、ハードルが下がりに下がりきったところで、観てみることに。

ネタバレなので詳しくはいわないけれど、とりあえず脱出して隣の小部屋で行き詰るあたりまで、またもや、ワタクシ的には最高の展開。かなり良い。本当に好きなテイスト。
だけど、“実践”“未来”と、もう、つまらないこと極まりない。彼は“緊張と緩和”と重ね重ね言うけれど、映画においてもそれが重要なのは同じ。ただ、ちょっぴり別の形で現れる。それは“発散と集約”という形で。英語で言えばevolutinとrevolutionかな。本作は、“発散”しかしていない。小波としての“緊張と緩和”は確かにある。だけど、2時間程度の中の大きなの展開のうねりとしての“発散と集約”というものが皆無なのだ。この辺の感覚がよくわからないのならば、(アーチストぶりやがって!という謗り覚悟で)もっとこじんまりと、投げっぱなしで、あとはみなさん考えてください的に、スパっと思わせぶりに終わればいいのである。そのほうがよっぽどいい。

とにかく、意味ありげに格好つけた感じが、逆に格好悪くて、観ているほうが恥ずかしいので、ここだけは何とかしてほしい。本当に“思いつき”は抜群にいいのだから、あとは意固地にならずに、別のブレーンを一人入れて、締め方について意見を仰いだほうがいい。画力は、他の本職の日本の映画監督なんかより数段優れている。絶対に力はあるのだからもったいない。能力の高い人が、陥りやすい罠にはまっているのだと思う。なんでも自分達でやろうとしないで。

とりあえず本作にかぎって言えば、観ても観なくてもいい作品なので、特段お薦めもしないし、薦めなくもない(どうでもいい作品ってことかな。とにかくもったいない)。

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クボタカユキ
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映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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