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image2153.png公開年:2008年
公開国:ブルガリア、ドイツ、ハンガリー、スロヴェニア、セルビア
時 間:105分
監 督:ステファン・コマンダレフ
出 演:ミキ・マノイロヴィッチ、カルロ・リューベック、フリスト・ムタフチェフ、アナ・パパドプル、ドルカ・グリルシュ 他
コピー:前を向いて行こう。
これは、故郷に帰る旅。そして、自分を取りもどす旅。




1983年、共産党政権下のブルガリア。アレックス少年の住む田舎町にも、共産党の圧政が忍び寄り、町で一番のバックギャモンの名人である祖父バイ・ダンを共産党員が監視しはじめる。その共産党員は、アレックスの父ヴァスコが勤務する工場の上司。ヴァスコの経歴に詐称した箇所があることを発見した上司は、ヴァスコにバイ・ダンを見張ってその動向を逐一報告することを命じる。しかし、どうしても義父を売るようなマネができないヴァスコは、妻ヤナとアレックスを連れて、ドイツ亡命を決意する。それから25年後。アレックス一家は交通事故に遭い、病院に搬送されたアレックスが病院で目を覚ますと、事故以前の記憶をすべて失っており…というストーリー。

いかにもロードムービーっぽいジャケット画像だし、そう紹介されているようだけど、タンデム自転車で旅をする部分は、それほど長くは無い。というか、アレックスの人生自体がロードムービーって感じ。本作は、サシェが記憶喪失になった後の現在と、サシェの幼少期の話が交互に語られるという構成。

はじめの23分くらいまでは、記憶喪失になった青年の記憶と取り戻そうとする、ありがちなお話にしか観えなくて、つまらなく感じるだろう。でも、絶対に観るのをやめずにその壁を越えてほしい。共産党員による陰湿な所業によって、サシェの父親が追い詰められていくあたりから、急に面白くなりはじめる(一瞬、あの事故も共産党によるもの?とか頭をよぎるのだが、それは考えすぎ)。

私が不勉強なせいかもしれないが、なんで祖父は、共産党から目を付けられていたのかが、不明。本当にバックギャモンの台を作って売ったというだけの理由なのか?当時のブルガリアではそういう締め付け政策があったのだろうか。あまり語り過ぎずに、いいさじ加減の演出であることは間違いないのだが、祖父が長い間投獄されたであろうことは想像できるが、そこの詳細も描かない。あまりにブルガリアのことを知らなすぎて、ピンとこない箇所が散見されたため、もうちょっと説明してほしいな…という部分があったかも。
#私、バックギャモンのルールはまったく知りません。知っていたらもっとたのしめたのかも。

でも、東西冷戦の真っ只中ではあるが、共産主義自体が疲弊してきている時期なのは間違いない。共産主義的な組織は、外部にうまく攻撃できなくなると、その牙を内に向けるのは必定だからね。何故か、基本的に何かを噛み殺したい衝動に駆られているのが、共産思想。共産思想がそういう人間をつくるのか、そういう人間が共産思想を利用するのか。まあ、後者である。日本で共産革命を標榜していた人間の大半がそう。そして今でも。

やりすぎな陳腐な監督なら、収容施設から脱出するときの闇業者にも騙されちゃう展開にしちゃうと思うけれど、そうはしなかった。また、ブルガリアの共産党員や、イタリアに難民収容施設の職員など、胸クソ悪くなる人物が多々出てくるが、勧善懲悪で彼らが懲らしめられる場面は、作中にはない。そういう狭い了見を超越したお話であることが、人間として達観しすぎている祖父が体現している。
#アレックスの役者もバイ・ダンの役者も本当にいい顔している。

アレックスが取り戻すのは記憶だけじゃない。共産国家の呪縛から体は逃れられたけど、心は何かに縛られたままだった。
深く考えすぎても、楽観しすぎてもいけない。どんな状況にあっても、心だけは自由であれ。いい映画だった。お勧め。
#どういうツテで、両親の連絡先がわかったのか…も、後から考えると気になる部分ではあるが…。

 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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