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公開年:1957年
公開国:日本
時 間:125分
監 督:黒澤明
出 演:中村鴈治郎、山田五十鈴、香川京子、上田吉二郎、三船敏郎、東野英治郎、三好栄子、根岸明美、清川虹子、三井弘次、藤原釜足、千秋実、田中春男、左卜全、藤木悠、渡辺篤、藤田山 他
陽も当たらず荒れ果てた棟割長屋に、人間らしい生活をすることを諦めた、長屋と同じようにボロボロな人間達が住んでいる。病気で余命いくばくもない妻を抱え始終恨み節ばかり言っている鋳掛屋。本当かどうかもわからない過去の悲恋話で涙する夜鷹の女。わずかなお金をすべて博打につぎこみ斜に世の中を眺める男。アル中でろれつの廻らない元役者。元は御家人だと吹聴する“殿様”とあだ名される男。男気はあるものの泥棒で日銭を稼ぐ捨吉。彼らはみじめさを通り越し、達観したような諦めを醸し出していた。ある日、そんな長屋にお遍路の嘉平老人がやってきて、彼らに色々と声をかけていくのだった…というストーリー。
読んだことはないのだが、ゴリーキーの『どん底』が原作ということで、実にに社会主義的視点に溢れている。溢れすぎていて鼻につくほどだが、多種なキャラたちのありあまる人間臭さで、中和されている感じ。
貧困長屋を舞台にしてグランドホテル形式的に展開していくんだけど、他の黒沢作品にあるようなダイナミックな主筋はない。それがかえって新鮮。
お遍路の格好した左卜全演じる嘉平が、長屋(っていうか共同生活場みたいだけど)に住む人々に色々と声をかけて、ちょっとだけ人々の考え方を変えて希望を与えていく。でも、最終的には誰一人幸せにならないってのがとても気に入った。
ゴーリキーが生きた時代のソ連が標榜している、資本主義の末路みたいなものが、一周まわって今の世の中に通じるものとして表出したような、一種の奇跡を感じてしまう。ゴーリキーとしては社会主義的観点で宗教批判しただけかもしれないが、現在としては観方が少し異なってくるか。現実から目を背けてその場を安心したとしても、その先には何も無い…理詰めで考えれば重いテーゼなんだけど、現実社会を生きていくうえで、思い通りにならないことや、理不尽な場面には少なからず遭遇するわけで、それに向き合ったからって絶望的になって“世の中が悪い”って言われてもね…。
やっぱり、戦後の学生運動や社会主義運動は、思想が若いというか夢想の域を出ていないのかな。目先の苦難や問題を愚直に解決していくしかなくて、それをコツコツやっていくのは非常につらく根気のいること。だけど、政府が悪い企業が悪いっていく、もっともらしいけど簡単な答えに喰いついちゃった、“逃げた”人種だと私は思う。
そして、そういう考えを持って学生運動やっていた世代がつらっと転向して、日本の経済界を牛耳ってたりするんだけどね。そういう人たちが、これから発揮しはじめる“老害”が怖いなぁ(って、元学生運動の闘士的な人が、もっともらしいことを吹聴しはじめてたりするんだけどね)。
作品的な話の戻る。落語みたいにスパン!と落として、余韻を残す。ダラダラとスタッフロールを流すのを嫌うセンスが、今の監督たちに欲しいね。
「どんな悪党でも誰かに好かれている。それもいなくなったらおしまいってこと」なんてセリフは、現代社会では重く響きますな。
ワタクシ的には数ある黒澤作品の中では、かなり上位かと。『七人の侍』やらそういうメジャーどころに目がいってしまうけれど、今こと観るべき作品かもしれない。お薦め。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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