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image1694.png公開年:2010年
公開国:日本
時 間:133分
監 督:トラン・アン・ユン
出 演:松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾、霧島れいか、初音映莉子、柄本時生、糸井重里、細野晴臣、高橋幸宏、玉山鉄二 他
受 賞:【2010年/第20回日本映画プロフェッショナル大賞】新人奨励賞(水原希子)
コピー:深く愛すること。強く生きること。



親友キズキが突然自殺をしてしまい、深い悲しみに暮れるワタナベ。その悲しみから立ち直れないまま東京の大学に進学し、神戸から離れる。ある日、ワタナベはキズキの恋人だった直子と東京で偶然に再会し、そのまま交流を持つようになる。キズキを失った哀しみを共有する二人の心は徐々に近づいていったが、それに比例するように、直子は精神の状態を崩していく。やがてその症状は加速し、ついに直子は京都の療養所に入所することになってしまう。直子との面会が認められず疎遠になるなか、ワタナベは同じ大学の生徒で明るく積極的な緑という女性と出会う。直子とは正反対の性格の緑と交流を重ねつつ、一方で直子の症状が心配でしょうがないワタナベ。ある日、ようやく直子との面会が許され、京都へと向かうワタナベだったが…というストーリ-。

原作は読んだことが無い。それどころか村上春樹の作品を一作たりとも読んだことが無い。なので、本作のデキの良い部分が、原作のおかげなのかトラン・アン・ユン監督のおかげなのかは判断はつかない。

味のある雰囲気と、遅れて去来する独特な余韻の心地よさがすばらしい。ヨーロッパとアジアの風が融合したような空気感が画面から溢れてくる。フランス在住のベトナム人監督だから…って言ってしまうのは簡単だけど、だから出せるというものでもなかろう。
画角の切り取り方にセンスを感じるし、大胆ともいえる割り切った編集が大変よろしい。説明的な部分や煩わしく感じさせる部分は極力排除できており、ものすごくセンスを感じる。この編集をやっているのがマリオ・バティステルとクレジットされている人。日本人ではないようだが、詳細なプロフィールは不明。ちょっと覚えておきたい。

時代は1960年代後半。世界中の空気が核実験由来の放射性物質で溢れていた時代。だからその時代の人は少しクレイジーなの?だから団塊の世代の半分は救いようの無いアホなの?…という冗談はさておき。今よりも、「こうある“べき”」というもっともらしい理屈があれば、暴力が正当化される時代で(暴力といってもフィジカル面だけにあらず)、まあ、はっきりいって何か狂っているように見える時代。そしてその狂った様子になにか魅力を感じなくも無い時代。
まあ、金があれば何でもできると言い放っていたポンコツが時代の寵児なっていた頃よりは、はるかに味のある時代だったのかもしれない。

まあ、心理学的というか生態学的というか、幼少から兄弟のように育った男女が性的に結ばれない例はけっこうあるし、満たされない状態(または満たしてあげることができなかった状態)から、さらに過度な喪失感や、自分に理由があるようなないようなショックな出来事が重なれば、整理ができずに精神を病んでしまうのは、当然の帰結。
トラウマにならないように転地して生活するのはいい手立てだったのに、思い出させるような人間と接触してしまえば、揺り戻しで症状が悪化するのも自然。理詰めで考えれば、ワタナベと直子は距離を置くべきなのだが、やめられない止まらない。若さゆえ、愛ゆえ、人間ゆえ、ああ人の業の深さよ。しかも、それが他者への共感という、人間として絶対に持つべき要素に端を発しているところが、せつない。

もうここまでくると、ワタナベと直子の間にあるものが、愛なのかどうかも怪しくなってくる。いや、それを通り越して愛って何なのか。きっと原作は、そういうことを読者に考えさせるから、評価されているんだろうね(とかいいつつ、原作を読む気がない。ここまで読書しない私もどうかと思うけど)。

本作に対する私の満足度は高い。日本人監督だったら、原作をレイプしたとブーイングがおこったのではないかとゾッとするが、そんな心配ご無用の仕上がり。誰がトラン・アン・ユンをつれてきたのかは知らないけど、その人がMVP。お薦め。

菊地凛子の女子大生って無理がありすぎ…って思ったけれど、病んだキャラクターとしては、グッジョブだった。この人、『バベル』でもそうだったけど“病んだ女”のアイコンになりつつあるな。だって普通の役だとパッとしないんだもの。
一方、一部で評価の高い水原希子。個人的には、つたないにもほどがある印象。日本人監督だったらもう少し演技を付けてしまっただろうけど、逆に若さゆえの脆さの表現には繋がっていて、怪我の功名くさい部分が大きい。評価は次回作という所か。




負けるな日本

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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