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公開年:1993年
公開国:アメリカ
時 間:77分
監 督:ヘンリー・セリック
出 演:クリス・サランドン、キャサリン・オハラ、ウィリアム・ヒッキー、ダニー・エルフマン、ポール・ルーベンス 他
ノミネート:【1993年/第66回アカデミー賞】視覚効果賞(Pete Kozachik、Eric Leighton、Ariel Velasco Shaw、Gordon Baker)
【1993年/第51回ゴールデン・グローブ】音楽賞(ダニー・エルフマン)
コピー:いちばん大切なものは、夢ですか、愛ですか。
家に帰ると、家族が鑑賞していたので、便乗。本作はもう50回以上鑑賞しているはず。なぜなら、一時期、寝る前に必ず流していたか時期があるから。DVDというものが世に発売された時、初めに買うソフトはコレと決めていて、DVDデッキと一緒に購入して、ヘビーローテ。セリフは完璧に頭に入っている。
でも、寝る前に読んでもらう絵本状態だったから、途中で寝ちゃう。50回観たっていっても、エンドロールまで到達したのは15回くらいだと思う(笑い)。
でも、冷静に考えると、寝ちゃうから最後まで到達できなかったわけではないのだ。寝ちゃう理由があるのだ。
本作で楽しめるのは、クリスマスタウンで自前のプレゼントを配り始まるまで。大筋の流れを考えれば、まさにこれから盛り上がるはずなのだが、大抵は、ここで飽きる。イベントごとは準備している最中が一番楽しいってことなのか、いざ事がはじまってしまうと、案外、どうでもよくなってしまう。そんな感覚。
それに、子供に観せるのって、実はどうなのかなーと思う点もある。だって、本作のオチは、信じてがんばれば夢は実現できる…ではなくって、世の中にはどうやったってできないことがあるんだよね…っていうオチだもの。ダメはダメなりに、折り合いとつけるのが人生なんだよ…って、そういうメッセージは、子供にとってあまりいい影響は与えないのかもしれない。
だから、寝ちゃうんじゃなく、防衛本能が働いて脳が拒否しちゃうのかもしれないな。
本当の意味で大人のファンタジー。途中までの子供の喰いつきは、まちがいなく最高。でも、途中で寝る。ある程度のところで寝せたいときはお薦め(なんだそりゃ)。
公開年:2008年
公開国:イギリス、イタリア、フランス
時 間:110分
監 督:ソウル・ディブ
出 演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランプリング、ドミニク・クーパー、ヘイリー・アトウェル、サイモン・マクバーニー、エイダン・マクアードル、ジョン・シュラプネル、アリスター・ペトリ、パトリック・ゴッドフリー、マイケル・メドウィン、ジャスティン・エドワーズ、リチャード・マッケーブ 他
受 賞:【2008年/第81回アカデミー賞】衣装デザイン賞(マイケル・オコナー)
【2008年/第62回英国アカデミー賞】衣装デザイン賞(マイケル・オコナー)
コピー:18世紀にも、スキャンダル。
18世紀後半のイギリス。スペンサー家の令嬢ジョージアナは、名門貴族のデヴォンシャー公爵と結婚することになり、その美しさからロンドン中の注目の的になる。しかし、デヴォンシャー公爵の望みは男子の後継者だけであり、彼女を愛そうとはしない。その後、3人の子供を授かるがすべて女の子で、ますます孤独感が募るジョージアナ。そんな時、エリザベスという女性に出会い、その不幸な身の上に同情したジョージアナは、彼女を自宅に招き入れ一緒に暮らすようになるが…というストーリー。
『恋におちたシェイクスピア』とイギリス繋がりでチョイス。とはいえ、マリー・アントワネットのころなので時代は全然違うけれど。それにしても、この手に作品に衣装デザイン賞をあげるパターンは、もう飽きましたな。手がかかるのはわかるけれど、中世の衣装を揃えること自体は、以前ほど大変でもないでしょう。もっと今までにない創造性や、新たな観点で選出して欲しいものである(まあ、とはいえセットを含めて、素晴らしいデキではあるんだが)。
さて、内容とはそれるが、ちょっと考えされたことが一点。はたして「この映画は実話である」と映画内で表明する意味ってあるのだろうか、という点。“実話です”っていわれて、“ぎゃ”ってなることはたしかにある(『ベティ・サイズモア』とかね)。でも、結局は本編の内容が面白いかどうか。大抵は、いまいちな内容の“言い訳”にしか聞こえないのは私だけだろうか。“実話”は免罪符にはなり得ない。
仮に実話だったとしても、よほどの必要がない限り、言わないのが、マトモな創作者のセンスだと思うのだが、皆様はいかがだろう。で、本作は、初っ端に、実話であることが表明されるのだが、その効果はいかなるものか。
不仲な公爵夫妻の元に潜り込んだエリザベスは、『エスター』のように夫婦を壊して自らの家庭にして……なーんて展開にはならない。
息の詰まるような貴族社会において、ひどい仕打ちを受けたジョージアナは、その復讐のために、したたかで且つ綿密な計画を密かに遂行するのだった…なーんて展開にはならない。
家庭に失望したジョージアナは、公爵を含めた貴族社会を憎み、政治運動に没頭し、やがて市民革命のエンジンとして活動し、フランス革命の一助となったのであった…なーんて展開にもならない。
ネタバレだから言わないけれど、「あ、そう」って内容でしかない。とても豪奢な牢獄でしたね…と。私が脚本家なら、最終的なオチの状況は史実を同じにしながらも、その経過や裏側は創作に創作を重ねるけどね。途中、なんとか持ち直して、面白くなりそうな気配にはなるんだけど、女性の歴史教科書の1ページに成り下がってしまった。お薦めしない。
昨日の『恋におちたシェイクスピア』もそうだったけれど、共通して引っかかるのは、主人公の母親の行動だ。自分も同じように、イヤな思いをしてきただろうに、自分の子にも同じ思いをさせることは厭わない。部活の先輩が、後輩いびりをして、その後輩がイヤだと思っても自分が先輩の立場になったら、同じようにイビリはじめるのと一緒。どうも、多くの人間に同じように備わっている傾向らしい。
貴族、それは永遠の昨日を生きる者。そして、現代においてその役を担うのは官僚である。さてさて、歴史を紐解けば、貴族や官僚は永遠にいなくなることはなそうである。そうなると、いかにそれをコントロールするか。三権分立ですな。ああ、すべての映画は民主主義の教科書か(なーんてね)。
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:124分
監 督:ジョン・マッデン
出 演:グウィネス・パルトロー、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、コリン・ファース、ベン・アフレック、ジュディ・デンチ、トム・ウィルキンソン、サイモン・キャロウ、ジム・カーター、マーティン・クルーンズ、イメルダ・スタウントン、ルパート・エヴェレット 他
受 賞:【1998年/第71回アカデミー賞】作品賞、主演女優賞(グウィネス・パルトロー)、助演女優賞(ジュディ・デンチ)、脚本賞(マーク・ノーマン、トム・ストッパード)、音楽賞[オリジナル・ミュージカル/コメディ](スティーヴン・ウォーベック)、美術賞(マーティン・チャイルズ、ジル・クォーティアー)、衣裳デザイン賞(サンディ・パウエル)
【1999年/第49回ベルリン国際映画祭】功労賞(マーク・ノーマン、トム・ストッパード)
【1998年/第33回全米批評家協会賞】助演女優賞(ジュディ・デンチ)
【1998年/第65回NY批評家協会賞】脚本賞(マーク・ノーマン、トム・ストッパード)
【1998年/第56回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、女優賞[コメディ/ミュージカル](グウィネス・パルトロー)、脚本賞(マーク・ノーマン、トム・ストッパード)
【1998年/第52回英国アカデミー賞】作品賞、助演女優賞(ジュディ・デンチ)、編集賞
【1998年/第4回放送映画批評家協会賞】オリジナル脚本賞(マーク・ノーマン、トム・ストッパード)
【1999年/第8回MTVムービー・アワード】キス・シーン賞(ジョセフ・ファインズ、グウィネス・パルトロー)
16世紀末のロンドン。ここのところ当りがない劇作家シェイクスピアは、オーディションにやって来た一人の役者トマス・ケントの演技に惚れ込み、逃げる彼を追ってある屋敷。しかし、そこにいたのは、女性ヴァイオラ。シェイクスピアと彼の作品を信奉するヴァイオラはたちまち恋におちる。その恋心が創作意欲を刺激して台本は急ピッチに仕上がり、トマス・ケント主演の舞台稽古は順調に進んでいた。そんな折、ヴォイオラから別れの手紙が突然送られ、納得のいかないシェイクスピアは再びトマスの後を追うと、トマスがヴァイオラが男装した姿だった事を知る…というストーリー。
当時、米アカデミー賞を総ナメの勢いで受賞したのを見て、まったくノーマーク(根本的にラブロマンスは眼中の外)だった私は、驚いてしまい、DVD発売と同時に購入(『エリザベス』は元々購入予定だったので、エリザベスⅠ世繋がりで買ったというのが本当のところかも)。グウィネスはそんなに好みのタイプではなかったし、やっぱりラブロマンスは生理的に受け付けなくて、実は、購入時に一回見て、それっきり本棚に封印状態だった。しかし、なにげに目に入って、視聴。
以下、ネタバレ。
本作は、大きく3パートに別れるかな。①ヴァイオラの男装はみんなにばれちゃうか?②男装の秘密を知ったシャイクスピアとヴァイオラの秘め事③みんなにばれちゃってどうなるの?
①②については、まったく趣味に合わない。韓国恋愛ドラマを楽しめる方々ならば、同様に楽しめるかもしれないが、私にとっては退屈極まりなかった。そうなってくると難点ばっかり目についてくるもので、そんなに濃厚なセックスシーンは不必要だと思うし(乳を出す必然性がまったくわからない)、ジョセフ・ファインズのラテン系バリバリな顔立ちのシェイクスピアってどうなのよ?とか。本気で、あからさまなベッドシーンは不要だと思う。これがなければ、中学生に見せても十分楽しめる作品なのに、なんで?って感じである。
ところがどっこい③になってからは飛躍的に面白くなる。ベタベタかもしれないけれど、ノリのいい上質なコメディに仕上がっている。エリザベス女王が大岡越前しちゃうのも馬鹿馬鹿しくて楽しい。ただ、女王が「十二夜」に芝居を上演しろっていった意味とかがわからず、シェイクスピアに詳しいともっとニヤリとできたのかな?(本気でわからないので、意味のわかる人、お教え願う)。ベッドシーンの是非は別として、基本的にお上品なコメディに仕上がっている。ここでいうお上品というのは、まったく毒がないということ。毒というのは、政治的・社会的メッセージのこと。こんなに毒が無いのに、成立している作品というのも珍しいと思う。
なので、エンドロールの新大陸のイメージが、全体の作風に合っていない。女性の自立のイメージか何かだろうか。これこそ蛇足。
良作だけど、男の子向けではないな。10年に一回くらい見てみると、毒抜きになる不思議な作品。
公開年:1993年
公開国:アメリカ
時 間:144分
監 督:ブライアン・デ・パルマ
出 演:アル・パチーノ、ショーン・ペン、ペネロープ・アン・ミラー、ジョン・レグイザモ、イングリッド・ロジャース、ルイス・ガスマン、ヴィゴ・モーテンセン、エイドリアン・パスダー、ジョン・アグスティン・オーティス、ジョン・セダ、ジェームズ・レブホーン、ジョセフ・シラヴォ 他
ノミネート:【1993年/第51回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(ショーン・ペン)、助演女優賞(ペネロープ・アン・ミラー)
麻薬の売買で街を牛耳っていたカリートは長く服役していたが、弁護士のクレインフェルドの手助けによって出所する。しかし、かつては裏の世界にもあった仁義は姿を消し、街は殺伐とした様子に変貌しており、ギャングの世界には嫌気がさしていた。そして、待っていてくれた恋人との愛に生きるため、カリートは街からは出ていくことを心に決めていたが、男としてクレインフェルドに対する借りを返さなければならず…というストーリー。
『ミルク』からのショーンペンつながりでレンタルしてみた。本作にも、私の知らないショーン・ペンがいましたな。ジャンキーの悪徳弁護士というアクの強い役を見事に演じきっている。役に徹するのと、他の役者よりも目立つということの、二つがうまいこと両立できており、実に印象深い。
いくつもギャング映画を観てきて、その後の1本ということならば、足を洗おうとしても洗い切れないギャングの悲しい性みたいな哀愁を楽しめるのかもしれない。しかし、私は、あまりギャング映画の数は観ていなし、造詣も深くないので、ちょっとメリハリがなく単調な作品に思えてしまった(上映時間もなかなか長くて、ダラダラ感が増幅しているような)。純粋に男気が臭い立つようなギャング映画を期待しているならば、裏切られてしまうかも。
カリートが以前に街を牛耳っていた時代のようすがいまいち表現されていないので、その対比としての、現在のちまちま小金を貯めるために商売している様子が、哀愁としてして映らないのかもしれない。
実は、デ・パルマ作品であることを知らずに観て、後から知ったのだが、まったく気付かないくらいデ・パルマらしさはない。ラストの追いかけっこの部分は、思い返せばそういえばそうかも…くらいの感じ。それほどデ・パルマに詳しいわけでないんだけれど、それにしても特徴がなさ過ぎる作品かなと。ちょっとアル・パチーノとショーン・ペンの渋い演技に乗っかりすぎですな。ギャング映画好きでかつ未見ならば楽しめるかもしれないが、その他の人にはお薦めしない。
公開年:2008年
公開国:イギリス
時 間:95分
監 督:ジェームズ・マーシュ
出 演:フィリップ・プティ 他
受 賞:【2008年/第81回アカデミー賞】ドキュメンタリー長編賞(サイモン・チン、ジェームズ・マーシュ)
【2008年/第43回全米批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
【2008年/第75回NY批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
【2008年/第34回LA批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
【2008年/第62回英国アカデミー賞】英国作品賞
【2008年/第24回インディペンデント・スピリット賞】ドキュメンタリー賞(ジェームズ・マーシュ)
【2008年/第14回放送映画批評家協会賞】ドキュメンタリー賞
コピー:空に、夢に、近づきたかった。
1974年、ニューヨーク。当時世界一の高さだったワールド・トレード・センターのツインタワー間にワイヤーを張り、渡り歩いた男がいた。彼はフランスの大道芸人、フィリップ・プティ。無許可のため逮捕されてしまったが、その驚愕のパフォーマンスに人々は喝采。その、無謀とも思えるチャレンジは、綿密な計画と仲間たちの支えによって実現できたのだった…というストーリー。
『おくりびと』が受賞したのと同じ回にドキュメンタリー長編賞を取っているので、記憶にある人いるかもしれない。こっちはおくりびとならぬ“つなわたり”。
インタビューは確かにドキュメントだし、挟まれるニュース映像もたしかに当時のもの。だが、肝心の計画遂行の様子は、完全に再現フィルム。これをドキュメントと呼んでいいのか。ドキュメントの定義とは?このエピソードを元に映画にしちゃったほうが面白かったんじゃないかと、一瞬思うのだが、”実際にこれをやった”感っていうのが大事なので、肝心のシーンはやっぱり当時の映像でいきたいというのもわかる。
ならば、画質が悪かろうとWTC潜入後の映像シーンは、もう少し欲しかった。内容としては50分程度が限度だったのではなかろうか。奇跡体験アンビリーバボーで紹介される程度の内容かなと。
チャレンジ成功後に、友達関係が壊れていくくだりをいれるんなら、彼らのその後をもう少し追ってもよさそうなものだが、入ってないところをみると、語るまでもない人生だったってことか…。
そのくせ数々受賞しているのだが、それは、9.11によってWTCはいまや存在しないという事実があって、あえてそれには作品の中では触れないという、得もいわれぬ哀愁があってこそかなと、私は思う。まあ、日本だったら、逮捕後にこんなに賞賛されないでしょう。やはりアメリカ人はアドレナリンが一回でちゃうと冷静になれない。生物的に異なるんだなぁ、奴らには気をつけないといけないぁ、、と本気で思う。
せめで1時間にまとめてくれれば、かなり楽しめただろうが、吹替え音声もないのでつかれて眠くなること請け合い。まったくお薦めはしない。米アカデミー賞にはまともな価値判断基準が存在していないことを証明した一作ですな。
#私はロープを張ったことよりも、どうやって下ろしたのか?のほうが興味ありますけれどね。アメリカ人はそこには着目しないんだな。やっぱり理解できないなぁ。
公開年:2003年
公開国:イギリス、アメリカ、ドイツ、アルゼンチン、ペルー
時 間:127分
監 督:ウォルター・サレス
出 演:ガエル・ガルシア・ベルナ、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ、メルセデス・モラーン、ジャン・ピエール・ノエル、グスターヴォ・ブエノ 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】歌曲賞(Jorge Drexler:曲/詞“Al Otro Lado Del Rio”)
【2004年/第58回英国アカデミー賞】外国語映画賞、作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](グスターボ・サンタオラヤ)
【2004年/第20回インディペンデント・スピリット賞】撮影賞(エリック・ゴーティエ)、新人俳優賞(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)
コピー:遠い空の下、僕は世界がめざめる音を聞いた
1952年、アルゼンチン。喘息持ちの23歳の医学生エルネストは7歳年上の友人アルベルトと南米大陸縦断の旅に出る。アルベルト所有のバイクを移動手段に、わずかな所持金だけという無謀な計画で、彼らの行く手には様々な困難が待ち受けていたが、南米各地の住民達の過酷な状況を見ることで、エルネストの中で何かが変わっていく…というストーリー。
先日、『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳別れの手紙』を連続で観たわけだが、それよりも前のエピソードである。
まあ、事実なのでどうこう言っても仕方ないのだろうが、バイクで男二人がニケツで南米縦断って、いくら冒険旅行っていったって無謀極まりない。当然のごとく、映画の半分にも到達しないところで“モーターサイクル”は壊れてしまい、タイトルすら成立しなくなるのだが(逆に狙いなのか?)
『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳別れの手紙』を観て、なぜ彼が革命戦士になったのか?という経緯が希薄だったのが不満だった。本作でそれが垣間見れるのかと期待していたが、裏切られた。二作の批評でも書いたが、チェの行動を理解するためには、キューバ革命後に世界を見て回って彼が感じたことや、本作で語られる青年期に南米各地を観て何を感じたか、という点は不可欠だと私は思う。後者が語られるべき本作なのだが、あの苛烈なまでの革命戦士に変貌する理由が説明できているとは、とても思えない。
若い青年が旅で何かを感じ、成長していく様が見事…というような批評を読んだが、普通の人間の話だったら、それでもかまわないが、あのチェ・ゲバラの青年期の話が、これでかたづけられたのでは困ってしまうかなと。ちょっと見識不足な批評だと思う。
とにかく、この旅が革命家チェ・ゲバラを造り上げたのだ…という説得力は皆無である。贔屓目で見ても、“小さな小さなきっかけ”程度しか伺えない。単なる青年のロードームービーとしては、とてもさわやかだし、“映画”としては質のよい作品なのは間違いない。だから、様々な受賞歴やノミネート歴も妥当だと思う。でも、エルネスト・ゲバラを扱った以上、それでは済まされない。
やはり、私はひっかかってしまう。本作のエルネストがあのチェだというならば、チェという男は1を見て10を知った気になった、、、とまでは言わないが、3を見て10判った気になった程度の思い込み男だと、私には映る。別にゲバラを尊敬しているわけではないので、それでも構わないのだが、それでも実際にはもうちょっと何かがあったのではないかと思うのだが。
これまで観た3つのゲバラ作品を観る限り、実際のところチェ・ゲバラ研究というのは、あまり深まっていないのかな…という気がする。いや、それほど研究する価値があると思われていないのかしれない。申し訳ないが、本作に対する高い評価を読んでも、提灯ネタにしか思えないかな。逆にチェを知らない人は楽しめるのかもしれないが、基本的にはやはりお薦めしない。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:ガス・ヴァン・サント
出 演:ショーン・ペン、ジェームズ・フランコ、ジョシュ・ブローリン、エミール・ハーシュ、ディエゴ・ルナ、アリソン・ピル、ルーカス・グラビール、ヴィクター・ガーバー、デニス・オヘア、ジョセフ・クロス、ハワード・ローゼンマン、ブランドン・ボイス、ケルヴィン・ユー、スティーヴン・スピネラ、ジェフ・クーンズ、テッド・ジャン・ロバーツ 他
受 賞:【2008年/第81回アカデミー賞】主演男優賞(ショーン・ペン)、脚本賞(ダスティン・ランス・ブラック)、脚本賞(ダスティン・ランス・ブラック)
【2008年/第43回全米批評家協会賞】主演男優賞(ショーン・ペン)
【2008年/第75回NY批評家協会賞】作品賞、男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ジョシュ・ブローリン)
【2008年/第34回LA批評家協会賞】男優賞(ショーン・ペン)
【2008年/第24回インディペンデント・スピリット賞】助演男優賞(ジェームズ・フランコ)、新人脚本賞(ダスティン・ランス・ブラック)
【2008年/第14回放送映画批評家協会賞】主演男優賞(ショーン・ペン)、アンサンブル演技賞
コピー:「ミルク」は、希望のはじまりだった。
1970年代のアメリカ。マイノリティのために戦った政治家ハーヴィー・ミルク…人生最後の8年間
1972年、ニューヨーク。ハーヴィー・ミルクは、20歳年下のスコット・スミスと出会い、恋に落ちる。彼らはサンフランシスコに移住し、同性愛者が多く住むカストロ地区でカメラ店を開店するが、同性愛者たちの社交場になっていく。ミルクは次第に、同性愛者など社会的弱者の問題に気付き始め、その改善のために活動を始めるようになり、政治に目覚めていく。そして、ついに市政執行委員選挙にも立候補。自由な風潮のサンフランシスコとはいえ、同性愛者ミルクの行動は周囲に波紋を広げていく…というストーリー。
ショーンペンは知的障害者、精神異常者、殺人犯…etc、どちらかといえばかなり尖がったアクの強い役柄を多々演じているが、どれもこれも、一定水準どころか、A+の演技で。
もしかすると、自分の役者としてのキャリアを、野球カードでも集める感覚で揃えているのかもしれない。ショーンペンは『オール・ザ・キングスメン』でも政治家を演じていたが、めずらしくダメダメだった(ダメなのは脚本の方だったが)。それからたった2作目で、再度“政治家”という役を選んだところをみると、けっこうプライドが傷ついていたのかも。でも、結果として大挽回して“政治家”というカードをコレクションに加えた。それもアカデミー主演男優賞というホログラムカードで。
もちろんその姿勢を悪くいう気はないが、穿った見方かもしれないが、ショーン・ペンって、自分の演技の力でいい作品になったって際立つように、逆に力のない監督作品を選んでやしないかい(だって、本作の監督、サイコのリメイク版の監督だよ)。そのガツガツと貪欲な感じ。微妙だなぁ…。
根本的にゲイだろうがなんだろうが、公民権を停止されたり失職させられるのは、間違いなく合衆国憲法違反である。であるにもかかわらず迫害されているのだから、それに抵抗するのは、あるべき姿だと思う。なんといっても、本作の敵役であるキリスト教原始主義者は、いまだに進化論を学校で教えることを認めない人たちだ。取り付く島もない妄信者で、私の周りにこんな集団が存在したら、もう必死で戦うか、早々に脱兎のごとく逃げ出すしかない。それは認める。
しかし、ゲイに嫌悪するというよりも、彼らの行動を男女間の行為と置き換えても、私には醜く写ったのだが、皆さんはどうだろう。街中のどこかしこで濃厚に抱き合ったりキスをする。半裸で歩く。選挙事務所内でヌード写真を見合う。最後だって、別にゲイだから殺されたわけではない。政治家として子汚い工作を弄した報いとはいえないだろうか。
私には、周囲の人々から忌み嫌われても仕方ないように見えるし、さらに加えて、迫害する側もされる側も、その理由がゲイだからだ!と言い合っているのが、滑稽に見えて仕方がない。対立する両方が問題の本質を見極めることなく、殴り合っていることが、こじれ続けている原因に見える。
それに、改めて感じるのは、アメリカ人というのは、両手が血まみれになってもまだ、アドレナリンが出続けている間は、いつまでもいつまで殴るのをやめない人々なのだな…と強く感じた。ちょっと立ち止まって身を律してみようとかいう考えはないのだろうか。ゲイとストレートがお互いを理解するのに時間を要しているように、我々がアメリカ人のアドレナリン過多体質にうまく対処できるようになるのは、時間がかかりそうである。
(日本人を代表する気はさらさらないのだが、)日本人には、なにかピンとこない作品ではないかな。この“ムーブメント”をリアルタイムで現地で感じていた人には、感慨深いのかもしれないが。楽しい作品でもないし、ゲイ文化のお勉強になるわけでもないし、価値観の異なる人々を包含する社会でのあるべき姿が学べるわけでもないし、あまり効能が感じられない作品かも。決して質の悪い映画ではないんだけれど、個人的にはお薦めしない。
公開年:1999年
公開国:アメリカ
時 間:105分
監 督:ティム・バートン
出 演:ジョニー・デップ、クリスティナ・リッチ、ミランダ・リチャードソン、マイケル・ガンボン、キャスパー・ヴァン・ディーン、イアン・マクディアミッド、マイケル・ガフ、クリストファー・リー、ジェフリー・ジョーンズ、マーク・ピッカーリング、リサ・マリー、クリストファー・ウォーケン、レイ・パーク 他
受 賞:【1999年/第72回アカデミー賞】美術賞(リック・ハインリクス、Peter Young)
【1999年/第25回LA批評家協会賞】美術賞(リック・ハインリクス)
【1999年/第53回英国アカデミー賞】プロダクションデザイン賞(リック・ハインリクス)、衣装デザイン賞(コリーン・アトウッド)
18世紀末、NY郊外の村・スリーピー・ホロウにて人間の首が切り落される猟奇連続殺人事件が発生する。科学的な捜査を信条とする市警捜査官のイガボットが派遣されるが、村人から自分の首を求めてさまよう伝説の首なし騎士が犯人と聞かされ…というストーリー。
T・バートン&J・デップの『アリス・イン・ワンダーランド』が公開中ということだが、そちらは観にいかないで、本作を観るという…。多分『アリス』はDVDで観るんだろうな(とてもバートンファンとは思えない発言)。
本作は5度目くらいの鑑賞で、なぜか何度も繰り返し見てしまう作品の一つなのだ。ゴシック・ホラーなんていわれるが、ゴシックというか画の中に漂う空気自体が灰色に感じるくらい。
今回はいつもと違う視点で…と思って観始めたのだが、なぜこれを私が好きなのか気付いてしまった…
私は金田一耕介シリーズが好きなのだが、本作と妙に共通点があるとは思わないか?時代遅れの田舎。因習に縛られた閉塞的な村。猟奇殺人。その解決の役割を担う若い男。一族への恨み。家族への愛憎。あやしい村人達。腹に一物を抱える妻。純真な若い娘。
違いは、この世のモノではない霊的な存在が実際にいるかいないかだけ。ヘタすりゃオマージュですか?リスペクトですか?って言いたくなるぐらい同じ。あとはパートナーが、変な小僧じゃなくってハナ肇で、最後はだまって立ち去ってくれたら、完璧だったろう。
本作のクリスティーナ・リッチを観ていたら、公開中の“アリス”の質感と共通点があるような。バートン監督の中にある、少女と大人の中間にいる女性像のアイコンなんだろうな(クリスティーナ・リッチがかわいくみえるのは本作くらい。他の作品ではちょっと気持ち悪いものね)。
また、その対比として、元パートナーのリサ・マリーがとても綺麗に写っているが、これはこれでバートン監督の中の母親像の投影なのだろう。あまりバカにはしたくないが、女性観としてはちょっと幼い感じがしないでもない。そういうバランスの悪さが、彼のいいところでもあるか。
しかし、その後、ヘレナ・ボナム=カーターが彼を略奪するわけだが(表現が悪いか?)、その後の作品にはリサ・マリー的な母親像はとんと出てこない。影響されやすい人なのね。
バートン作品では、あまり“情念”的な部分は強く出ていないことが多いが、本作と『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は、そっち寄り。未見で横溝正史好きなら、お薦めする。どうぞ。
公開年:1997年
公開国:アメリカ
時 間:155分
監 督:クエンティン・タランティーノ
出 演:パム・グリア、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・フォスター、ブリジット・フォンダ、マイケル・キートン、ロバート・デ・ニーロ、マイケル・ボーウェン、クリス・タッカー、リサ・ゲイ・ハミルトン、トム・“タイニー”・リスター・Jr、ハティ・ウィンストン、デニース・クロスビー、シド・ヘイグ 他
受 賞:【1998年/第48回ベルリン国際映画祭】男優賞(サミュエル・L・ジャクソン)
コピー:すべてのカタは彼女がツケる。
三流航空会社のスチュワーデス・ジャッキーは、密売人オデールの金をメキシコからアメリカに運ぶ副業をしていたが、オデールを狙う捜査官レイに逮捕される。レイはオデールの逮捕に協力するようジャッキーに強要するが、オデールが証拠隠滅のためにジャッキーを消そうとしていることを知り、レイとオデールの両方を騙すことを思いつくが…というストーリー。
多分、本作を観るのは7度目くらいだと思う。とても大好き。
タランティーノ作品の中では駄作だという人がいるが、何をいってるんだか。観るたびに、どんどん面白くなる味のある作品。むしろ、タランティーノ作品の中では、飛びぬけて一番である。
私は、ダメ人間の登場する映画が好きなんだと思う。でも、ただダメ人間だったらなんでもいいのかっていうと違う。うまく言い表せないけど『ペイバック』『リーサル・ウェポン』などが大好き。なんとなく、ラインが判るかな。
美しい人間の顔を見て「整ってるね~」なんていうけれど、私はその表現は間違ってると思う。どんな人間でも“球体”を美しいと感じると思うが、そこから如何にいい感じでくずれてるかなのだ。だから「いい崩れ方してるね~」が正しいのだ(変かな?)。本作の登場人物はみんな“いい崩れ方”をしている。観れば観るほどたまらなくなるのだ(もちろんDVDは購入しているよ)。
これは紛れもなく映画らしい映画。難点を一つだけ言えば、上映時間をあと12、3分カットできれば最高である。タランティーノのことなので、色々な映画のオマージュだったり、好きなシーンを模したりしているに違いなのだが、そういう部分を探す気持ちなんか吹っ飛んでしまって、いつも観入ってしまうのだ。もう13年も前の作品なんて。今後、どんどん評価が高まっていく作品だと思うので、強くお薦めする。
#サントラもステキである。なんなら、映画を流しっぱなしにしていてもいいくらい。
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:104分
監 督:ガス・ヴァン・サン
出 演:ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ、ジュリアン・ムーア、ヴィゴ・モーテンセン、ウィリアム・H・メイシー、ロバート・フォスター、リタ・ウィルソン、チャド・エヴェレット、フィリップ・ベイカー・ホール、アン・ヘイニー、ランス・ハワード、ジェームズ・レグロス、ジェームズ・レマー 他
受 賞:【1998年/第19回ラジー賞】ワースト監督賞(ガス・ヴァン・サント)、ワースト・リメイク・続編賞
恋人との結婚を望むマリオンは、出来心で会社の大金を横領して逃亡する。逃亡中に、豪雨にあったため人里離れたモーテルに宿泊する。そこは青年ベイツが年老いた母親の面倒を見ながら、一人で経営しているさびれたモーテルだった。彼女がシャワーを浴びた時、突然侵入してきた人物が彼女に襲いかかり…というストーリー。1960年のヒッチコック監督による古典サスペンス『サイコ』のリメイク。
前日のオリジナル『サイコ』に続いて、リメイク版を。
オープニング、カメラアングルやカット割り、ストーリー展開にセリフ、事件の展開を音声だけでかぶせる演出までまったく同じ(変わったのは、物価とか、車の値札がついてるとか、覗き穴を見ている様子とか、本筋とはあまり関係ない部分)。それはもう同じというより複製の域。『椿三十郎』のリメイク版を思い出してしまった。リメイクの意味は?と問いかけずにはいられない。大学生の卒業研究作品とか、TV局制作ドラマのイチ企画モノっていうなら許すけど、これならフィルムに着色しただけのほうがよっぽどよくはないだろうか。
とはいえ、1960年にはすでにカラー技術が確立されていたにもかかわらず、ヒッチコックはあえてモノクロにした、、、と聞いたことがある。だから、カラーすることを含め現代の技術を加えたいなら、もう一押し、いや二押しくらいしないと、まともな“リメイク作品”として評価を得るのは難しいだろう。リスペクトのあまり完コピしてしまうという罠に陥り、監督自らのイマジネーションを存分に発揮できなかったこと。これが失敗原因のすべてである。
#リメイク版『椿三十郎』が最後の最後の演出だけが違うように、本作も女装したノーマンが背後から襲ってくるシーンの繋ぎとか、分析医の回りくどい説明とかを治したかっただけなのかも…
オリジナルでアンソニー・パーキンス演じる神経質ぽかったノーマンは、本作では短髪のぽちゃぽちゃ大男に。さらにジュリアン・ムーアが妹って…(まあ、すごく若作りしてるけど)。オリジナルをまったく知らずに観れば、もしかしたらOKか?と思えなくもない。でもそれはリメイク版のデキがいいという意味ではなく、完コピのおかげで要所要所のツボが押さえられているからであり、ヒッチコックのすごさを証明しているにすぎない。
オリジナルを未見ならば、本作でもいいかもしれないが、さすがにお薦めはしない。
#血はなぜか白黒のほうが血に見えるから、不思議だねえ。
公開年:1960年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:アルフレッド・ヒッチコック
出 演:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ジョン・ギャヴィン、ヴェラ・マイルズ、マーティン・バルサム、サイモン・オークランド、ジョン・マッキンタイア、ジョン・アンダーソン、パトリシア・ヒッチコック 他
受 賞:【1960年/第18回ゴールデン・グローブ賞】助演女優賞 ジャネット・リー
【1992年/アメリカ国立フィルム登録簿】 新規登録作品
アリゾナに住むマリオンとサムは昼間から密会。結婚をねだるマリオンだが、サムは経済的な理由をつけてはぐらかす。その後出勤したマリオンは銀行に預けるようにいわれた大金を出来心から横領してしまう。逃避行の末、あるモーテルにたどり着いた彼女はそこの経営者ノーマンと会話を重ねるうち、自首しようと心に決める。しかし、部屋でシャワーを浴びるマリオンに、突然侵入してきた影が襲いかかり…というストーリー。
実は、以前に98年のリメイク版を誤って借りてしまい冒頭だけ観たのだが、名作なのにリメイクを先に観ちゃうのってどうなの?と思い、途中で止めてしまったことがあった。しかし、その後すぐにオリジナルを借りたか?というと、別の作品に浮気してそのまま観ずじまい。先日、BSで本作が放送されたので、チャンス!とばかりに録画して、この度、鑑賞に至ったわけである。明日は続けてリメイク版を観ることにする。長年の宿題をやっと達成である。
往年の名作なのでネタバレしても問題ないだろうが、未見の人は以下読まないでね。
はじめの横領の展開と、タイトルの“サイコ”が結びつかなかったが、30分経過したくらいから、それまでタブーとされていた精神異常犯罪にスポットを当てた問題作に変貌。
時間も適当で、内容も複雑ではないし、テンポも良く飽きさせない。引きの画が少なく、漫画のようなアップショットの連続が多いが、それが妙な閉塞感と緊張感を醸し出している。全編にわたってこのテンションの張りが維持されているのは、実に秀逸。アンソニー・パーキンスの個性的な表情と演技力も目を惹く。
しかし、なんといっても、この人が主人公として展開していくのだろうな…と疑いもしなかったのを裏切ってくれただけでも、私にとっては充分衝撃である。
条理も救いも一切ないラストというのは、当時としてはかなり新しく感じられたことだろう(あまりヒッチコック作品は観たことが無いのだが、ラインナップ中、毛色が違う一作なのではなかろうか)。アメリカ国立フィルム登録簿に登録されているが、純粋に名作というよりも、現在まで脈々と続く“サイコ”物のパイオニアとしての評価が大きいのだと私は考える(実際に、こういう症例があるかどうかなんて、どうでもいいレベル)。
#パート4まであるらしいのだが、これらはレンタル可能なのだろうか。出会ったら、借りてみたいかも(まあ、他はヒッチコック作品ではないから、微妙なのかもしれないけど)。
公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:110分
監 督:ウェス・アンダーソン
出 演:ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロー、ルーク・ウィルソン、オーウェン・ウィルソン、ダニー・グローヴァー、ビル・マーレイ、シーモア・カッセル、クマール・パラーナ、アレック・ボールドウィン 他
受 賞:【2001年/第36回全米批評家協会賞】主演男優賞(ジーン・ハックマン)
【2001年/第59回ゴールデン・グローブ】男優賞[コメディ/ミュージカル](ジーン・ハックマン)
コピー:テネンバウム家、天才ファミリー。名前だけが、彼らのつながり。求めるものは、心のつながり。
テネンバウム家の長男のチャスは10代で卓越した不動産売の才能で財を成し、長女マーゴは12歳で劇作家デビューし、次男リッチーはテニスプレイヤーとして将来を嘱望されていた。しかし、父ロイヤルの愚かな行動によって家族は崩壊。その後、成人したチャスは事故で妻を失い、男手で息子たちを子育て中、長女マーゴは年上男性と愛のない結構をして無気力な暮らしを続け、リッチーは突然テニス界を引退し放浪。かつて天才兄弟を騒がれた彼らは見る影もない。そんな中、母エセルが会計士シャーマンからプロポーズされたことを知り、突然に家族の絆を取り戻したいと思い始めたロイヤルは一計を案じるのだったが…というストーリー。
今回で3度目の鑑賞。あまり意識はしていなかったけれど、私にとって、定期的に観返したくなる作品のようである。『死ぬまでに観たい映画1001本』という書籍の紹介文を読んだのが、本作を観るきっかけ。本作どころかウェス・アンダーソンという監督のこともまったく知らなかった(勉強不足)。パッとみて、異様にキャストは豪華である。
ネット上の色々な感想を読んでみると、高い評価をする人と、まったくピンとこない人と、真っ二つに別れる作品であることがわかる。「いやあおもしろかったぁ」とヘタに紹介すると、“はあ?どこが?あんた映画のセンスないんちゃう?”と思われかねない、ある意味危険な作品といえる。
高い評価をしている人が、本当の所どう思っているのかは知る由もないのだが、私にとって本作の魅力は、“私にはどうがんばっても書けそうにない”という点である。世の中に感動・感心する作品は多々あるが、死ぬ気で搾り出せば、なんとか似たようなレベルまで到達できそうな気がする(実際にどうかは別として)。しかし、本作については、まさに“その発想は無かったわ…”的な感じで、どう逆立ちしても書けそうに無い。あれよあれよという間に降参させられてしまった一本なのだ。
“俺のセンスいいでしょ”みたいに勘違いした作品だ…とか、予告とちがって期待はずれだ…とか、笑えも感動もしない…とか、そういう意見が散見されるのだが、そういう次元ではないんだよなぁ…。放蕩者の親父が失った家族の絆を取り戻そうとする…、人生を振り返ってみて、本当に安らぎを得られるものというのは、案外単純で見落とされがちなくらい身近に存在するものなのだ…なんていう筋書きはありがちだと思う。でも、それをどう調理していくのか…。そのスパイスや素材のカットの仕方が、ちょっと私の脳内センスには無いものなのだ。
私は、誰がなんと言おうと、強く薦める。わかる人にしかわからない珍味であることだけは、ご理解をしていただくけれども。その後の『ライフ・アクアティック』『ダージリン急行』もとても楽しめたが、脳が感じた電流の強さは本作が一番上である。
公開年:2007年
公開国:ドイツ
時 間:95分
監 督:ダニー・レヴィ
出 演:ウルリッヒ・ミューエ、ヘルゲ・シュナイダー、シルヴェスター・グロート、アドリアーナ・アルタラス、シュテファン・クルト、ウルリッヒ・ノエテン、ウド・クロシュヴァルト 他
コピー:私が見たのは、狂気の独裁者ではない、ひとりの孤独な人間だった──
ナチスドイツが劣勢に陥っていた1944年、ゲッベルスは、5日後の新年大会にてヒトラーの演説を大々的に行って国民を煽り、起死回生を図ろうと考えた。しかし、肝心のヒトラーは心を病んでおり、とてもスピーチなどできる状態ではない。そこで、ヒトラーを再生させる大役を世界的俳優(だけどユダヤ人の)グリュンバウム教授に託すことを思いつき、強制収容所から教授を移送し、ヒトラーを教育させるが…というストーリー。
もう、毒を喰らわば皿まで、ナチス映画の連チャンである。
タイトルから、ヒトラーの幼少期に先生だった人の話とかかしら…と勝手に思い込んでいたが、全然違って、ましてやコメディとは…。
冒頭にこの話は実話である…と示されるので、素直にそうなんだろうなぁと思って観ていたが、時間が経過するにつれ、こりゃ実話じゃないな…と思いはじめる。実際にヒトラーにはボイストレーナーがいたらしく、実話なのはその点だけ、あとは創作も創作ということ。
とはいえ、まあ、ブラックなコメディとしてはなかなか軽妙でニヤリとしてしまうのだが、ニヤリとする口角が上がりきる途中で無意識にストップがかかってしまった。なぜか。「これって笑っていいのかしら?」ってことだ。
本作はドイツ映画である。2004年にドイツで作られた『ヒトラー~最期の12日間~』が公開されるときには、ヒトラーを正面きって表現することだけで、製作側にも観る側にもものすごく“引っかかり”があったはず。それが6年たって、今では軽妙なコメディである。ドイツもずいぶん変わったものだ。
ヒトラーは幼少期に虐待を受けていた、祖父はユダヤ人だった、と確かに聞いたことのある話だが半分都市伝説だし、ジャージ姿で体操させたり、ユダヤ人夫婦の間で川の字に寝せてみたり、コミカルに侮蔑したつもりだろうが、人類史上屈指の悪魔に対して、その程度の侮蔑なんか屁でもないな…と思い始めると、さほど笑えなくなってしまう。だって、そうやってバカにしている間に、ベルトコンベア式にガス室送りになっているんだもの。せめてもうすこし、真実かも…と思わせてくれれば、いくらか捉え方も違ったかもしれない。
#それにしても、今の日本にヒトラーレベルの政治家が登場したら、あっさり煽動されて乗っ取られるのだろうな。鳩山首相みたいなポンコツでよかったですね(苦笑)。
まあ、世界中の人がどう受けとめているのか、わからないけれど、私には受け止めきれない作品だった。しかし、まったく気にならない人には、そこそこのコメディと感じられるはずなので、観ていただくこと自体はやぶさかではない。
#ウルリッヒ・ミューエの遺作になってしまったのは、惜しいことであるが、最後がコレをいうのは、なんとも…。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:136分
監 督:エドワード・ズウィック
出 演:ダニエル・クレイグ、リーヴ・シュレイバー、ジェイミー・ベル、アレクサ・ダヴァロス、アラン・コーデュナー、マーク・フォイアスタイン、トマス・アラナ、ジョディ・メイ、ケイト・フェイ、イド・ゴールドバーグ、イーベン・ヤイレ、マーティン・ハンコック、ラヴィル・イシアノフ、ジャセック・コーマン、ジョージ・マッケイ、ジョンジョ・オニール、サム・スプルエル、ミア・ワシコウスカ 他
ノミネート:【2008年/第81回アカデミー賞】作曲賞(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
【2008年/第66回ゴールデン・グローブ】音楽賞(ジェームズ・ニュートン・ハワード)
1941年、ベラルーシはナチスに侵攻され、ナチス親衛隊と地元警察によってユダヤ人狩りが開始された。両親を殺されたビエルスキ兄弟は森の中へ逃げ込んだが、彼らの周りには同じように逃げてきたユダヤ人が次々と合流し、食料や武器を調達しながら共同体を築いていく。そして、“ビエルスキ・パルチザン”を名乗り、ナチスへの抵抗を始めるのだが…というストーリー。
実は、内容を知らずにジャケットのダニエル・クレイグとリーヴ・シュレイバーを見てアクション映画だよね?って軽い気持ちでレンタルしたのだ。そうしたらナチス物で、「またかよ…」って。世の中、石を投げればユダヤ迫害映画に当たる…そんな感じ。
実話とのことで、とても重厚な戦争ドラマだった。ユダヤ迫害物には違いないのだが、家族愛、人間の本性、共同体を維持することの困難さなど、いろいろな要素がてんこ盛り。反面、意外とアクションシーンが軽いというか、よくありがちなアクション映画然としていて、逆にうまくバランスが取れている印象(そっちまでリアルに重いと、つらくなってしまったかも)。そういう意味でダニエル・クレイグだったのは当りなのかも。
主人公は基本的に闘うことに否定的なのだが、状況的にどっぷりハマらざるを得ないのはとても理解できるし、事実として生き残った彼らを賞賛したいとは思う。でも、根底に臭っている流れに、どうもひっかかりを覚えてしまったのだ。だって、自分の国土を持たないからこういう迫害を受けるんだ、国土を得るためにはもう闘わなければいけないんだ!という声が聞こえてくるようで、これに賛同してしまったら、イスラエルの行動を承認してしまうような気がするから。
本作の評判は悪くはないし、その評価もまんざらハズレではないとは思うけれど、その点がどうも引っかかってしまい、私は没頭できなかった。
ただ、最後の最後のエンドロール直前に、モデルになった人たちが、本作のエピソードについて長らく語ろうとはしなかった…という内容のナレーションが入る。私は、本人達が辛い思い出だから語らなかったというわけではなく、その後のイスラエル建国に至るまでのベースとなる思想を良しとしていなかったから…と理解したい(のだが、本当はどうなのか、もちろん知らない。勝手に溜飲を下げているだけ)。
娯楽的な要素は皆無でストレス解消にはまったくならないということを知った上で観る分には及第点以上だと思うので、限定的にお薦めする。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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