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image1747.png公開年:1979年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:ジェームズ・ブリッジス
出 演:ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン、マイケル・ダグラス、ダニエル・ヴァルデス、ジム・ハンプトン、ピーター・ドゥナット、スコット・ブラディ、ウィルフォード・ブリムリー、ルイス・アークエット、リチャード・ハード、スタン・ボーマン、ジェームズ・カレン、マイケル・アライモ、ドナルド・ホットン、ポール・ラーソン、ロン・ロンバード、ニック・ペレグリーノ、カリラ・アリ 他
受 賞:【1979年/第32回カンヌ国際映画祭】男優賞(ジャック・レモン)
【1979年/第33回英国アカデミー賞】主演男優賞(ジャック・レモン)、主演女優賞(ジェーン・フォンダ)

地方テレビ局の女性リポーター・キンバリーは、硬派なニュースキャスターを志望していたのに、街中の他愛も無い日常ニュースしか担当させてもらえないことを不満に思っていた。そんな彼女に、原子力発電所の取材というのステップアップのチャンスが舞い込む。彼女はカメラマンのリチャードとともに取材をはじめるが、コントロールルームを見学している最中に、原子力発電所にトラブルが発生する。発電所側からは問題なしと発表されたが、事故当時の様子を撮影したフィルムを専門家に見せると、重大事故が発生寸前の可能性があるという見解が。一方、発電所の技師ゴデルは、過去の資料の再調査で原発の欠陥を発見。その事を知ったキンバリーは彼の協力を得て、公表しようとするのだが…というストーリー。

実際に事故に到って、“チャイナ・シンドローム”してくれるようなSFチックなお話なのか思ったら全然違った。利益のために都合の悪いことを隠蔽する企業と、心ある人たちの争い…という内容。でも決して社会派な物語ではなく、あくまで純粋なサスペンス。
本作の公開直後にたまたまスリーマイル島の事故が発生してしまい、社会問題として注目されてしまっただけ。製作側は、単なるテラー要素として原発を持ち出したのであって、社会派作品を目指したわけじゃないと思う。
悪役の企業側がわかりやすすぎるキャラなのも、その証だろう。本当に社会派作品を目指したのならば、利益以外の企業が隠蔽しなくてはいけない事情や、その老獪さ陰湿さをネチネチと表現したに違いない。所詮、隠蔽するためにチンピラを差し向けるだけのわかりやすい悪役だ。

とはいえ、伝説の巻物をめぐって攻防する冒険小説のように、機器のエックス線写真を巡ってのカーチェイスや、ゴデルが立てこもってからの緊迫感、スリルは特筆に価する。ジェーン・フォンダやマイケル・ダグラスもがんばってはいるが、ジャック・レモンの演技は数段上をいっており、ぐいぐい引き込まれる。「ゴデルさん、カメラまわってるんだから、もっとわかりやすく話せよ~!」と、まるで「志村、後ろ~!」って叫んでる子供みたいな気持ちになる。

ところが、一転、ラストはちょっと残念な感じに。TV中継にて同僚のフォローこそあったものの、せっかくのゴデルの勇気は狂人の仕業として片付けられてしまう。大体にして、フォローした同僚だって、事故がおこる前はゴデルをアホ扱いした腹立つヤツなので、なんか引っかかるしなぁ。
篭城中の緊迫感と、事後のうやむやでモヤモヤしたラストの、振幅の大きさがとっても残念な感じ。ジャック・レモンの名演技がなければ、本作の評価はせいぜい凡作どまりだったと思うな。

“チャイナ・シンドローム”っていうのは、メルトダウンすると漏れた核燃料が、地面に溶けていき中国に達しちゃうぞ!っていう、アメリカンジョークが元らしい。これはジョークであって、科学的な事実とはもちろん異なるので、それは別に良い。しかし、本作に登場する物理学者が、したり顔で“チャイナ・シンドロームがおこる”っていうところでガクっときてしまった。物理上の地球の裏側を持ち出すよりも、“竹のカーテン”共産主義中国を真反対として持ち出すのは、ジョークとしては悪くない、だけど、まじめな顔した物理学者が、重大インシデントを前にしてジョークを言うとも思えなくて、違和感アリアリ。もしかして脚本家は本気で言ってるのか?と。

それにしても、本作にでてくる反原発活動家の様子をみていると、何年たっても同じことしかしないんだな…というか。今と変わらないことがよくわかる。
死刑制度に反対だからって、小手先の抵抗で判決や執行を遅延させる自称人権弁護士と一緒ですな。こういうのは、根本問題に向き合って、時間がかかったとしてもコツコツ対応しなければ、永遠に解決しないのに。つまり、曲がりなりにも法治国家なんだから、法を変える努力をしろ!ということ。それにむかってコツコツと努力ができないなら、もっともらしいことをいうなよ!ということなのだが、自称人権弁護士さんや反原発のプロ市民の人たちには、そういう感覚がまったく欠如しているらしく…。

原発に関しては、危ないからやめるってのが、一見当たり前と思うだろうが、じゃあ、なんであぶない原発を作る必要があったのか?というところを真剣に考えないといけない。利権がどうのこうのは後からの話であって、根本はそこではないということを理解しないと。

簡単にいうと、第二次世界大戦の発生要因、それと同じことを繰り返さないための対策として原発は導入されている。どこかの国からの輸入に依存するということは、その国に首根っこを掴まれるのと同じということ。つまり産油国に生殺与奪を握られるということだ。石油による火力発電一辺倒でなければいいわけで、逆に言えば、特定国家間との関係に問題が生じても、安定供給が可能であればエネルギー源はなんでもよかったわけ。しかし、当時は核以外にそんなものは存在しなかった。いや、今でも存在しない。

どっかの社長が大々的に太陽光発電に投資するとかいっているが、そんな非効率な発電方法ではなんともならん(個人的には地熱でいけそうな気はしているが、どこまで安定的に高出力が可能かは疑問なところ)。
で、原発を導入した後に、我々が目指すべきだったことは、原子力より安全で効率的なエネルギーによる発電方法を確立すること(原発が事故をおこすまでに)。そして我々は結果としてそのレースに負けたのだ。“我々は負けた”この事実を国民全員が受け止めないと、何もはじまらない。
特に原発事故の後に「ほらみたことか」状態で、即座に反原発の側にススッと移動して言いたいことを言っている人間は、ダーティな人間である。まず、“自分も”負けたのだということをしっかり認めた上で、「で、我々はどうすべきなのか?」と議論すべきなのだ。

ちなみに、東電をはじめ日本の電力会社は、本来は次世代エネルギーに積極的に研究・投資しなければいけなかったのだが、儲けの出ている原発システムが永遠に続けばいいというスタンスになった。彼らが攻められるべき点は、新エネルギーの模索をいう絶対必須なレースを自発的にリタイアした所である(いや、根本的にそれが自分のミッションだとすら思ってもいなかっただろうけど)。
そういう意味で、本作にでてくる電力会社と一緒で、単なる利益追求団体と同じってことなんだけどさ。

等々、色々な思いが涵養される、良作である。お薦め。



負けるな日本

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image1782.png公開年:2010年
公開国:日本
時 間:99分
監 督:しぎのあきら
出 演:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、真柴摩利、林玉緒、一龍斎貞友、佐藤智恵、釘宮理恵、内海賢二、白石涼子、神田朱未、近藤春菜、黒沢かずこ、はるな愛、いとうあさこ、椿鬼奴、玄田哲章、茶風林、石井康嗣、あおきさやか、大西健晴、倉田雅世、楠見尚己、菅原淳一、笹島かほる、いのくちゆか、小田敏充、中田隼人、東龍一、神奈延年 他
コピー:未来も愛もその手でつかめ!

ある日、公園で遊んでいるしんのすけたちすかべ防衛隊の前に、タイムマシンで時を越えてやってきたタミコという女性が出現。彼女は、しんのすけの未来の婚約者だと名乗り、未来世界で大人のしんのすけがネオトキオ”の支配者・金有増蔵に捕まってしまい、救出するためには5歳のしんのすけの手助けが必要だというのだ。半信半疑ながら、しんのすけたちはタミコと一緒に未来の春日部にタイムトリップするが、未来の世界は、地球に衝突した隕石の影響で、一日中太陽の出ない世界だった…というストーリー。

『爆発!温泉わくわく大決戦』『嵐を呼ぶジャングル』『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』と徐々に光を増し、『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』で、とうとうアニメの範疇を越え、日本映画史の中に燦然と輝くレベルに達した劇場版のクレヨンしんちゃん。しかし、直後の『嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』で、早々に陰りが見え(私は劇場で観たけれど空回りしていたね)、その後は回を重ねる度にクオリティは堕ちる一方。
それでも、ムトウユージ監督時代は、レンタルとはいえなんとか見続けていたのだが、『ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者』でとうとう三行半。観るのを止めてしまった。それと同時に、TV放送も一切観なくなった。

本作はなかなか興収もよかったということで、レンタル料金も安くなっていたので、久々に借りてみた。
#まあ、観ていない『オタケべ!カスカベ野生王国』もチェックしてみるかな。
それにしても、クレヨンしんちゃんの映画に出てくる女の子は、だんだんかわいくなくなっていくのは、どういうことなのか、不思議極まりない。

TV放送を観なくなった間に出てきたしぎのあきらのいう監督さん。この人の特徴なのかシナリオのせいなのか、小ネタを繰り返すのはいいんだけれど、ブツ切れになっている感じ。TVシリーズの短いエピソードを作らせたら、ものすごくウマいんだろうなと思うが、良い感じで動き始めたノリが、かならず15分くらいでしぼむ。99分程度なのに、疾走感が皆無で2時間くらい観た感じ。

大筋の話の展開を、小ネタで繋ぐのも止めたほうがいい。例えばぼ~ちゃんロボのくだりだけど、これは小ネタでありおまけ的なエピソード。しかし、ぼ~ちゃんロボが出てこないとこの話は絶対に進まない。小ネタは所詮小ネタであり、シナリオの太い幹は、しっかりとメインキャラで繋ぐべき。

それに、子供が観る映画なのだから、だれかの心が成長しないとダメ。タミコが途中で迷ったりすることはあるけれど、それは周囲を慮ってのことであり、成長ではない。心の弱かった人が強い心を勝ち取るとかね。そう考えると、本当にクローズアップしなければいけなかったのは(主役にしなければいけなかったのは)、長いものに巻かれた大人の風間くん、やさぐれてる大人のネネちゃん、夢を失った大人のマサオくんだろう。彼らが子供のころの夢を取り戻すプロセスに強くスポットを当てるべきだった。残念ながら、そこはしんちゃんを助けに向かうだけで、さらっと流される。
そこに気付けば、なかなかの名作になったと思うんだけどねぇ。この、監督も脚本家もまだまだよのぉ~(オレ生意気)。

まあ、大人がわざわざ借りて観るほどのクオリティではないかな。子供をつれて一緒にみた大人が、飽きないレベルには達していると思うけど、いくら子供映画だからといって、そこを目指しちゃダメだよね。

#タレント(今回は女芸人さんたち)を使うのは、プロモーション的な理由もあって許容するけれど、絵を見ても声を聞いても、誰がやってるかよくわからんようなら、意味がないんじゃないかな…と。



負けるな日本

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image1775.png公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:115分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タートゥーロ、ジョン・ポリト、J・E・フリーマン、マイク・スター、スティーヴ・ブシェミ、フランシス・マクドーマンド 他
コピー:『ゴッドファーザー』以来 ギャングの世界を扱った映画で コーエン兄弟によるこの大胆にして衝撃的な傑作ほど パワフルなものがあったろうか。--ガイ・フラットリー/コスモポリタン

禁酒法時代のアメリカ東部のとある町。イタリア系マフィアのボス・キャスパーは、街を取仕切る大ボスのレオに、八百長賭博の邪魔をするチンピラのバーニーを始末するように相談するが、無碍に断られてしまう。バーニーがレオの情婦ヴァーナの弟だったからだ。レオの右腕であるトムは、キャスパーと不必要に敵対するのは得策ではないと進言するが、それも聞き入られることはなかった。そんなトムは、ギャンブル好きが災いして借金まみれ。その日も、バクチで負け続けて借金を増やしていたが、ひょんなことからヴァーナと一夜を共にしてしまう。しかし、明朝、ヴァーナを尾行していたレオの部下ラグの死体が発見される。これによって、アイルランド系のレオとイタリア系のキャスパー、二人の勢力争いが激化する。しかしトムは、自分との情事がばれるのを恐れたヴァーナがラグを殺害したのではないかと疑い、その説明のためにヴァーナと関係を持ったことをレオに告白してしまう。レオは激怒し、トムを追放。博打の借金に追われるトムは、やむを得ずキャスパーの部下となるが、「バーニーを殺せ」と命令され…というストーリー。

トムは、成田三樹夫が演じるインテリヤクザ的なポジションで、頭がいいなんて周囲から評価されている。たしかに大学出のマフィアは珍しいんだろうけど、その落ち着いた様子がそう見せているのと、他のマフィアさんたちが人並み以下にアホなだけで、それほど賢くはない。
いや、本当に賢かったら、マフィア組織なんかにいないだろうし、借金まみれなわけがない。その借金を自分の手で返そうと、頑なに変なポリシーを守ったりするから、チンピラからみたらまたまた賢く見えたりする。

何がいいたいかというと、この作品と愉しめるか愉しめないかの分水嶺がそこにある…ということだと。つまり、トムがその賢さを駆使して、難局を乗り切るストーリーを期待してしまうかどうか…である。なぜなら、トムが乗り切れた要因の半分は、偶然だから。特に、ミンクの死体のくだりなんかは、トムの意図とはまったくの無関係。偶然以外の何者でもない。
最後も、トムがレオを救ったという形になっているが、トムはそれを目指して行動していたわけじゃないよね。元々、二人の間にどういう友情の歴史があったのかは知らないが、とにかくトムの心の中では、とっくにプッツリと切れているわけだ。
要するに、変化する状況を知恵や追い詰められた時に発揮するズルさを最大限に発揮して乗り切るのではなく、悪く言えば場当たり的に対処していく姿。そして、多くの運で乗り切ってるところに違和感を感じた人は、本作をつまらないと判断したに違いない。

でも、コーエン兄弟の意図としては、そういう綱渡り状態を俯瞰で見せて愉しんでもらたいわけで、小ずるい男がしたり顔で、策を弄して笑いながら乗り切ってる様子を愉しんでほしいわけではない。トムに共感しトム目線で鑑賞するのではなく、その世界に亡霊として存在しているような目線で観ないとおもしろくないということだ。
彼らの他作品でみられるコメディ要素よりも、一枚上から俯瞰で観たコメディって感じがする。いつものコメディ要素は、ちりちりと音がしそうなくらいの綱渡り感に転化されているってところかな。これがコーエン兄弟らしくないと見る向きもあるんだけど、私はOK。このノリさえ、早々に掴めてしまえば、特に終盤はかなり愉しめると思う。軽くお薦めしたい。

トム以外のキャラ設定もおもしろい。レオのマシンガンぶっぱなしエピソードをはじめ、バーニーのクソみたいな行動など、表面上の設定ではなくて、エピソードを重ねることによって人物像を見せていくのは、コーエン兄弟は本当にウマいと思う。捕まって拷問されたデブ男に、あの場面で叫ばせ続ける演出は、私なら思いつかないもんなぁ…。





負けるな日本

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image1211.png公開年:1999年(オリジナルは1984年)
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:フランシス・マクドーマンド、ジョン・ゲッツ、ダン・ヘダヤ、M・エメット・ウォルシュ、ダン・ヘダヤ、サム・アート・ウィリアムス 他
受 賞:【1985年/第1回インディペンデント・スピリット賞】監督賞(ジョエル・コーエン)、主演男優賞(M・エメット・ウォルシュ)
コピー:哀しいほど滑稽な殺人


テキサスの田舎町。酒場の主人マーティは、妻のアビーと従業員のレイが浮気をしているのではないかと疑い、私立探偵のフィッセルに調査を依頼する。調査の結果、妻の浮気を確信したマーティは、レイを問い詰めるが、話し合いは喧嘩別れに終わってしまう。怒りが頂点に達したマーティは、アビーとレイの殺害をフィッセルに依頼。しかし、フィッセルは現場の写真を偽造し殺害を遂行したように見せて報酬を詐取すると、事前に入手していたアビーの銃を使ってマーティを殺害してしまう。しばらくして、マーティと話をつけようとしてレイが酒場を訪れると、そこにはマーティの射殺体とアビーの銃があり…というストーリー。

彼らの初期作品にありがちな、勘違いの末のすったもんだ&そして誰もいなくなった…的な展開。タイトルの通り、アホみたいにシンプルなプロットなのに、ストーリーテリングがあまりに巧みなため、この深み。証拠隠滅がどツボにはまっていくにつれて、増して行く緊迫感。フィッセルの参戦によってそれはピークに達していく。同じ噺でも落語家の腕次第で面白くもなればつまらなくもなる、それと一緒。コーエン兄弟、デビュー作にしてコレだもの。

冒頭では、ウェルタース・オリジナルのCMみたいな解説で始まる本作(1984年の作品に画質の修正・カットの追加をしましたよ…っていう説明)。フォエバーヤングって…(笑)。ネタで差し込んでるのか、マジなのか、微妙なところがまたおもしろい(元を観たことがないので、違いもなにもわからないんだけどね)。
あたりまえなんだけど、細かい部分はしっかり作りこまれている。
妻のバッグには3発の銃弾。それを銃に装填したとして、1発目は夫、2発目は浮気相手が蹴って暴発、3,4,5発目は、埋められた夫がトリガーを引くも玉は無し。ラストで最後の1発。
つまり、12時の位置から時計回りに3発装填して、1発目は真ん中の弾で、その後右まわりだった…ってことだね。細かいな。もう一回、頭から確認のために見直しちゃったわ。

で、観なおすと気付くんだけど、どろっと重厚なのにセリフは少ない。ミルフィーユみたいに状況を重ねて重ねて、サスペンスが織りなされているのが良くわかる。うん。秀逸。文句なしにお薦め。



負けるな日本

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image0245.png公開年:2004年
公開国:アメリカ
時 間:138分
監 督:クエンティン・タランティーノ
出 演:ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ダリル・ハンナ、マイケル・マドセン、ゴードン・リュウ、マイケル・パークス、サミュエル・L・ジャクソン、パーラ・ヘイニー=ジャーディン、ボー・スヴェンソン、ラリー・ビショップ、シド・ヘイ 他
受 賞:【2005年/第14回MTVムービー・アワード】格闘シーン賞(ダリル・ハンナVS.ユマ・サーマン)
コピー:KILL is LOVE

4年もの長い昏睡状態から奇跡的に目覚めた“ザ・ブライド”は、コッパーヘッド、オーレン石井らを次々と仕留めていった。残るはバドとエル・ドライバーとビル。彼女は次なる標的のバドを倒すため、テキサスへ向かう。バドは、かつて持っていた服部半蔵の刀も売り飛ばしてしまい、すでに殺し屋家業から手足を洗っており、今は、パブの用心棒として食いつなぐ日々だった。そんな彼をザ・ブライドは急襲するが…というストーリー。

Vol.1から半年後にVol.2の公開となったわけだが、これはなかなか配給会社泣かせだったのではなかろうか…と思う。Vol.1はカルト的な評価を得て話題になっていたが、残酷っぷりにヒいた人が相当いるので、次作に流れる人は半分くらいだろう。その減少分を、劇場に足を運ばなかったけれど噂を聞いて興味をもった人で穴埋めしたい。そこで、早々にDVDをリリースして、Vol.1を劇場で観なかった人が追いついてくる…という流れが必要だった。しかし、Vol.2のDVDリリースはVol.2公開の1週間後。おまけに当時は、セルからすこし遅れてレンタル開始だったので、Vol.2公開前に鑑賞する絶対数が多くはならなかった。おまけに、そうこうしているうちにVol.2の評判が聞こえてくる。「Vol.1と全然違う。」「つまんなかった…」と。そうなると、じゃあVol.2もレンタル待ちでいいかな…と。実際、私はコレだった。

まあ、結果的にはVol.1には満たないまでも興収的には成功したんだけどさ。でも、作品自体への評価は高くなかった。

今、改めて観ると、Vol.1/Vol.2というよりも前編/後編ってノリで、あわせて一本として作られたものだということが判る。それが証拠に、スタッフロールはVol.1/Vol.2両方のエンドロールとなっているのも、その証拠。両作の映像がふんだんに使われていて、類を見ないような見ごたえのある充実っぷり。これ自体は高く評価したい。

でも、あまりにキャッチーなほどにバイオレンスだったVol.1のノリを期待したら、確実に肩透かしを喰らうのは必至。これでもかこれでもかというサブカル的な演出や、おバカなノリが完全に鳴りを潜めるのは、致命的だと思う。オマージュもピンとこない作品を対象としたものが多い。
じゃあラブロマンスに寄ってるのかというと、半分冗談めいた中国修行なんかもあるので、寄り切ってはいない。さらに、中国での修行のくだりもぜんぜんハジけていなかったりする。ショートレンジパンチも、ちょっとスベってるんだよなぁ。カンフー映画にありがちでクスっとできるポイントがもっとあったと思う…(ミヤギさんのワックス掛けのほうが面白いわ)。で、結局、最後に五点掌爆心拳を使いたいがための単なる伏線になっちゃってる。

好意的に表現すればドラマ性が増しているといえるかもしれないが、エピソードが盛りだくさんのわりには、退屈に感じてしまう。それは、好きなシーンをただ並べただけだから。はたして138分の必要があるのか。特に、メキシコの娼館のくだりは必要なのか(雰囲気がユニークなのはわかるけど)。ビルの居場所を突き止めるために、ワンクッション必要だったのは理解できるし、ビルも曲がりなりにも人に愛されていたという表現なのだとは思うが、もっと整理したほうが良かっただろう。こういう冗長さが多々みられる。

結局、ザ・ブライドの本名をピー音で隠していた意味もわからんしなぁ。2作に分けるほどだから、もっと巧妙な仕掛けがあると期待したほうが悪かったのかもしれないが、ただの悪ふざけだったとしたら、Vol.1まで汚された感じがして少し不快だわ。

もう一度いうけれど、連続で観てはじめて意味を成す作品。本当は3時間超になってもいいから1本にまとめたほうがよかったんだと思うよ。

#パイ・メイとクレイジー88のハゲは、同一俳優なんだね。




負けるな日本

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image1774.png公開年:1961年
公開国:日本
時 間:97分
監 督:市川崑
出 演:船越英二、岸恵子、山本富士子、宮城まり子、中村玉緒、岸田今日子、宇野良子、村井千恵子、有明マスミ、紺野ユカ、倉田マユミ、森山加代子、永井智雄、大辻伺郎、伊丹一三、佐山俊二、中川弘子、浜村純、伊東光一、夏木章、志保京助、ハナ肇とクレージーキャッツ 他



テレビプロデューサーの風は、妻帯者でありながらモテまくりで、愛人関係にある女性は10人と下らない。愛人たちは、自分以外に愛人がいることに感づいており、風の浮気性も承知しているのだが、彼のにくめない性格のためか、別れることができずにいた。本妻の双葉でさえ、そんな夫をあきらめて飲食店経営に没頭することで気を紛らしている始末。女たちは、そんなぶつけどころのない状況から、「風がポックり死んでくれれば楽になる」「いっそ誰かが風を殺してくれればいいのに…」などといいはじめる。ひょんなことから、そんな女たちの言葉が風に耳に入ると、元々気の弱い風は、女たちが自分を本気で殺そうとしているのではないかと思いはじめる。能天気な風は、なぜ女たちがそのように思うのか理解できず、妻の双葉に相談してしまい…というストーリー。

男と女の噛み合わなさという点については、人間の進化の過程で獲得した分業に伴う特質なので、どうしようもないことで、そちらの観点では面白みは無かった。しかし、打算と執着という相反する二面性を持っている得体の知れないものとしての女については、見事に表現しきっているとと思う。
「誰にでも優しいって事は、誰にも優しくないってこと」うむ、確かにそうなんだけど、これって言われても男はどうしようもないのよ、実際。

犯罪映画であり、恋愛映画であり、幽霊が出てくるコメディでもあり、シニカルな社会風刺映画でもある。風は表面上は好人物だけど、やってることは悪人といわれても仕方が無いわけで、そう意味ではピカレスク映画ともいえる。このように掴み所のない作品なのだが、ストーリー運びがものすごくウマいので、とっ散らかることなく、これらすべての要素が渾然一体となっている。さすが市川崑ってところか。

浜辺にて黒い服装の十人の女たちに囲まれる船越英二の構図は、まるでゴダール作品みたい。白黒画像が持つ緊迫感やインパクトなんかを最大限にに活用した作品といえるだろう。

常連・岸恵子が美しいアイコンでありながら微妙なくたびれ具合を演じきっているが、彼女以外の”主役”の女たちもなかなかいい感じ。中村玉緒はとってもキュートで、いつからあんなボエボエした声になったのやら。岸田今日子ですら庶民臭さを醸し出しながらも結構アリな感じで魅力的。

まあ、問題は、ラストの車炎上シーンをどう受け取るか?だろうね。これからの市子の生活を案じさせてるってことなのか。色々解釈はできると思う。
2002年に市川崑が自らの手でTVドラマにセリフリメイクしていて、ちょっとラストが異なるらしいんだけど、その違いから市川崑の意図が見えるのかも?と思ったのだが、当時は見逃しているし、いま観ようとしてもレンタルしていない模様。ぐぬぬ。

見たことのない人には、是非お薦め。同時代の日本映画には見られない魅力がある。



負けるな日本

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image1773.png公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:91分
監 督:マイケル・プリース
出 演:チャック・ノリス、エディ・シブリアン、ジョー・スパーノ、ジェフ・コーバー、ブレンドン・ライアン・バレット、ジェームズ・ギャモン、アントニー・コルナキオーネ 他





シカゴ地方検事のファロンは、ギャングのタルゴーノを有罪にしようとしていたが、ある夜、警察によって警護されていたにも関わらず、タルゴーノの手下に襲撃されてしまう。ファロンとその妻と押さない娘が殺害され、生き残ったのは不思議な危機察知能力を持つ長男のローガンのみ。これによりタルゴーノの訴訟は棄却されてしまう。ローガンは、叔父のジェイクに引き取られる。ジェイクは元アメリカ軍の英雄で、現在は農場を軽視しているが、ローガンの生まれ持った危機察知能力に気付き、彼に特訓を施す。成長したローガンは陸軍レンジャー部隊に志願。歴戦を重ね軍曹となし、殊勲十字勲章を得るまでに。しかし、帰郷したローガンは除隊することをジェイクに告げる。タルゴーノへの復讐を果たすために…というストーリー。

レンタルビデオ屋で物色していたら、安っぽいパッケージの本作を何気に発見。チャ・ッ・ク・ノ・リ・ス?
ん?もしやこの人が例の、アメリカの死亡原因の第2位といわれるあのチャック・ノリスか?小便でコンクリートを削り自分名前を彫るというチャック・ノリス?ピアノでバイオリンを弾けるというチャック・ノリス?
噂には聞いていたが、これまで出会うことなく、このたび偶然にも初遭遇。ビギナーとして1作目はこれでいいのか?と思いつつも、他を探しても、本作より新しい作品が他に1本あるだけで、パッと見で見当たらない。まあいいや…とエイヤーでレンタル。

結論からいうと、チャック・ノリス ビギナーとして、1本目が本作というのはダメだったのかも。CMを挟む用の編集があるので、テレビムービーなんだろうね。

大体にして、チャック・ノリスは主人公でもなんでもない。地方検事の兄(主人公の叔父)役で登場。長い鼻の下にヒゲのおっさんは、主人公のお助け役で、半分も出てこない。

父と母と妹を殺されて仮面ライダーV3状態の主人公は、プロキシミティセンスという謎の第六感を保持しており、同じ能力を持つチャック・ノリスが、ジェダイのように訓練を施すのだが、このプロキシミティセンスというギミックに、ストーリー上の必然性を感じない。むしろ普通に、歴戦のヒーローの手ほどきをうけて強くなった…とした方が面白かったと思う。危機を色で表現するという陳腐な画像処理が、さらなるチープ感・トンデモ感の増幅に一役買っているだけ。

そのくせ、主人公の若者はなんだかピリっとしていなくて、画面上のインパクトはチャック・ノリスがズバ抜けている。そして、最後の山場にだけは、ちゃっかりはせ参じて主人公に助力。主人公以上の大立ち回りを披露して、悪者が乗るキャデラックのフロントガラスにとび蹴りを食らわす。むしろ、これがやりたっかっただけと言わんばかりに(笑)。

こうやって書くと、逆に興味が沸いちゃう人がいるかもしれないけど、正直、途中でかなり飽きてきちゃって、ちょこちょこ別のことやってたわ。お薦めはしない。多分、1980年前後のを観なきゃダメなんだろう。まあ、積極的に探す気は無くて、また偶然に出会えたら…ってことで。

まあ、大義名分さえ立てば、戦争したってノープロブレム!っていうアメリカの短絡志向を象徴している、おめでたい作品ですわ。






負けるな日本

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image0972.png公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:リドリー・スコット
出 演:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レイ・リオッタ、フランチェスカ・ネリ、ゲイリー・オールドマン 他
ノミネート:【2001年/第10回MTVムービー・アワード】作品賞、キス・シーン賞(アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア)、悪役賞(アンソニー・ホプキンス)
コピー:沈黙は、悲鳴で破られる。


“バッファロー・ビル事件”と呼ばれた連続猟奇殺人の解決後に、ハンニバル・レクターが脱走してから10年後。その事件でレクターの協力のもと犯人を逮捕した当時FBI訓練生だったクラリス・スターリングも、今やFBIのベテラン捜査官に。しかし、彼女はとある任務中に指名手配犯を射殺したことで窮地に追い込まれる。レクターに深い恨みを持つ大富豪メイスンは、そんな彼女を利用しようと考え、司法省のクレンドラを買収し、クラリスをレクター捜査へ復帰させる工作を行う。その頃、レクターはイタリアのフィレンツェに潜伏し、偽名で司書の仕事に就いていた。これまで、クラリスの行動を注視していたレクターは、窮地に陥った彼女にコンタクトをはかり…というストーリー。

ハンニバル・レクターシリーズには、必ず、彼にとって“はじめて”の人が登場する。
『ハンニバル・ライジング』は、はじめて愛を交わした人。『レッド・ドラゴン』は、はじめて彼を逮捕した人。『羊たちの沈黙』は、はじめて共感した人。本作は、はじめて生き残った人。最後はちょっと弱いけど、その弱さはグロさで補ってるって感じかな。

本作は、衝撃的な頭パッカーンにばかり目がいってしまうけれど、フォレンチェでのパッツィ刑事の顛末、メイスンとの因縁と執着、クレンドラとの軋轢等々、盛りだくさんのエピソードを納まりよくまとめている。それらが下劣な人間を決して許さないレクターの美学によって、きれいに整頓されているのが、実に秀逸。構成や編集がすばらしい。

『羊たちの沈黙』からクラリス役がジュリアン・ムーアに変わってしまった。公開当時は落胆した人もいたと思うが、観終わった感想をいえば、正直そんなことはどうでもいいレベル。それは、クラリスに対するレクターの普遍の愛があれば、その愛の影として現れるクラリスの姿に、何一つ違いがないということを証明している。
レクターの様子を見ていると、男女の間に友情が成立するとすれば、それが父性に基づいたときだろうな…とまで感じさせてくれる。猟奇的で極めてクレイジーなのだが、哲学的な思索を湧かせてくれるのも事実である。

演者で光っているのは、高慢で下品なクソ野郎を演じさせたらピカイチなレイ・リオッタ。存在感を放ちつつも小物をしっかりと演じられる力は、改めて感服する。

重ね重ね残念なのは、飛行機で向かっていると思しき日本での続編エピソードをかすかに期待しても、エンドロール最後の「Bye Bye H.」で、もうそれは無いんだな…と思い知らされることである。

難点はセリフと効果音の音量のバランスが下品なことくらい(音で驚かす演出は無用だと思うな)。受賞歴もあまりなく評価も高くないのだが、それはあくまでレクターシリーズの一本として見られているからだと思う。純粋にこの一作のクオリティは高い。秀作だと思う。

#FBI指定の凶悪犯10人の中にウサマ・ビン・ラディンがいるのに、隔世の感があるね。





負けるな日本

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image1766.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:141分
監 督:ロブ・マーシャル
出 演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ジェフリー・ラッシュ、イアン・マクシェーン、サム・クラフリン、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、ケヴィン・R・マクナリー、キース・リチャーズ、スティーヴン・グレアム、グレッグ・エリス、リチャード・グリフィス、ジュディ・デンチ、ジェマ・ウォード、クリストファー・フェアバンク、ポール・ベイズリー、ブロンソン・ウェッブ、リチャード・トムソン、松崎悠希、セバスチャン・アルメストロ、ホアン・カルロス・ヴェリド、オスカー・ジャネーダ、ポール・ハンター、アントン・レッサー、ロジャー・エイラム、ルーク・ロバーツ、デオビア・オパレイ、ロビー・ケイ、スティーヴ・エヴェッツ、エミリア・ジョーンズ 他

ジャック・スパロウと間違われて捕らえられた相棒のギブス。彼を救うためにロンドンにやってくるジャック。法廷から見事に逃走した彼らの前に、かつてジャックと抗争を繰り広げたバルボッサが現れる。バルボッサは、永遠の生命をもたらす“生命の泉”を求める英国王ジョージ2世に忠誠を誓い、英国海軍の士爵となっており、同様に生命の泉を探すスペイン王フェルナンド6世と、熾烈な争いを繰り広げていた。そんな中、ジャックは、かつて恋人だったた女海賊アンジェリカと再会。彼女も、父親である海賊“黒ひげ”のために、生命の泉を目指しており、ジャックはその後悔に巻き込まれてしまい…というストーリー。

監督が『NINE』のロブ・マーシャルに変更に。彼に変更した効果はいまいち見えないけれど、新旧のキャラを自然に織り交ぜ、前3作の質を毀損することなく、楽しい冒険活劇に仕上がってはいる(まあ、織り交ぜといっても、旧キャラはギブスとバルボッサくらいのもんだけど)。

ただし、これまでと同レベルの仕上がりとはいえ、もう少し何とかならなかったのか…というポイントはいくつかある。
まず、サブタイトルの“生命の泉”が何なのか、中盤を越えるまでさっぱりわからない。何となく延命に関わること…ってことだけで、イギリス・スペイン・黒ひげが本気で必死になっていることに、どうも違和感が。
ちょっとネタバレになってしまうが、一方の寿命が片方に移る…という生命の泉のギミックも何か変。だって、人の寿命なんて残りどのくらいあるのか判らないし、移ったあとにどれだけになったのかわからなければ、次のどのタイミングで聖杯を使えばいいのかわからないじゃないか。

また、アンジェリカが、何であんなに父親に偏執的に加担するのか、説明不足。ただ父親だから、献身的なカトリックだから…という説明だけで、ほぼ一緒に生活をしたこともない父親に、自分の生命を差し出すなんてのが、全然説得力がない。
大体にして、本当に父親である…というのは、アンジェリカがそういっているだけだし。ちゃんとした映画なら、親子関係に説得力を持たせる証拠を描くと思う。
そこがふわっとしているせいで、別の問題も。本作の一番の悪役は黒ひげで、本来ならば、むちゃくちゃなクソ野郎に描くべきなのだが、アンジェリカが彼を慕う必要があるため、闇雲に悪逆非道に描くことができず、最後の最後で子に対する愛情なんか無い…と描くにとどまっている。
悪役が立派に悪役を演じていないということは、主役も生きないということである。それが証拠に、本作のジャック・スパロウは、主役にもなりきれていないし、かといって狂言廻しでもない中途半端な立ち位置になってしまっている。最後の聖杯のトリックだって何のヒネリも無く、おもしろくもなんともない。

あれだけ必死に生命の泉を探していたスペインが、ああいう行動に出るのもいまいち意味不明だしなぁ。そう、本作のシナリオは圧倒的に説得力に欠けるんだよね。

おっと、これでは難点だらけの作品のように聞こえてしまうかな。まあ、前3作もこのレベルの難点は散見されたから、同じクオリティだと思ってくれればよいと思う。まあ、本作は3D作品で、そっちで楽しめれば、シナリオの稚拙さには目はいかないだろうってノリなのかな。

大作だけど至極普通。準新作レンタルくらいまで待っても、全然問題ないレベル。






負けるな日本

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image1765.png公開年:2009年
公開国:アメリカ、イギリス
時 間:87分
監 督:ウェス・アンダーソン
出 演:ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、ウォーリー・ウォロダースキー、エリック・アンダーソン、マイケル・ガンボン、ウィレム・デフォー、オーウェン・ウィルソン、ジャーヴィス・コッカー 他
受 賞:【2009年/第44回全米批評家協会賞】プロダクションデザイン賞(ネルソン・ロウリー)
【2009年/第76回NY批評家協会賞】アニメーション賞
【2009年/第35回LA批評家協会賞】アニメーション賞
コピー:ファンタスティックに、生き残る──。

泥棒だったMr.FOXは、妻の妊娠を機に足を洗い、以後、妻と息子と3人家族で平穏に暮らしてきた。しかし、貧乏な穴ぐら生活のまか人生を終えてよいのかと疑問を感じ始め、家族のために一念発起して丘の上の家を購入を計画する。しかし、丘の近くには、人間が経営する農場が3つもあり、弁護士のバジャーは大反対。それでもMr.FOXは強行して購入する。ところが、農場で飼育されている動物達を見て、彼の野生本能が目覚めてしまい、再び泥棒を開始。そして、大切な家畜を奪われ、怒り狂う農場主たちの反撃が始まり…というストーリー。

製作のペースが遅いウェス・アンダーソンが、2007年の『ダージリン急行』に続き製作した作品。待ちわびてた割りに、忙しくて劇場には行かなかったんだけどね。もちろん新作レンタルで鑑賞。

昨今のCG全盛のご時世、完全ストップモーションアニメにチャレンジした作品。あまりにデキが良過ぎて、逆にCGなんじゃないかと思えてくるくらい。日本でもストップモーションアニメは脈々と作られているけど、残念ながらこの技術レベルの作品は観たことがない。こういうのは日本人は得意そうなんだけど、予算の問題なのか、教育番組の短編レベルしか見かけないし、クレイばっかりだし、この世界では完全に後塵を拝している感じ。

童話原作が存在するということなのだが、いかにもウェス・アンダーソンらしい設定&ストーリー。
はみだしてるけど自分の生き方は変えないオヤジ。コンプレックスのある息子。変わった行動の脇役。
オヤジが責められる展開になるんだけど、俯瞰して眺めると、責めてる方も責められてる方も実は変。キャラ全員の立っている地平が根本的におかしい。
そして、すったもんだありながらも、最後はみんなでまとまって一つの方向に進む。ふわっとした大団円で着地。いつものパターンで、逆に安心。これは、原作の段階からそうなのか、ウェス・アンダーソンが加えた部分なのか(わかりまへん)。

ラスト近くで、狼が登場するのだが、あれは何を表しているのか。解釈が難しい。だけど、ジ~ンとしてしまうの何故か。
狼は孤高のアイコン。Mr.FOXは自分達を野生動物だと常々主張しているのだが、野生の狼と比較すれば、絶対に彼らは野生じゃない(Mr.FOXの尻尾がとれちゃったところなんかも、それを表しているのかも)。
でも彼らは完全に野生にもどるなんてことはしない。人間が存在することも環境の一つだし、都会で“野性”を発揮することを選択する。孤高の野性もあるだろうし、環境に対応するという野性もある。我ら人間は、社会生活の中で野性を失ったのか?いやいや、アーバンビーストとして、野性はいくらでも発揮できるよ。それこそ生きるってことだよねっていう、一つの答えを提示してくれているのかと。
まあ、それは私の答えなわけで、もしウェス・アンダーソンに会えたら、どういうつもりでこれを差し込んだのか是非聞いてみたいわ~。

こうやって、全体的に軽いノリの作品なのに、心にひっかかりを与え、立ち止まって考えさせてくれるのが、ウェス・アンダーソンの魅力。私が彼の作品を愛するのは、それ故だね。ウェス・アンダーソンを観たことがない人へのちょうど良い入門的作品になるかもしれない。
観終わった後にものすごい満足感アリ。いやあ、ファンタスティックだったよ。お薦め。





負けるな日本

 

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image0244.png公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:113分
監 督:クエンティン・タランティーノ
出 演:ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ダリル・ハンナ、ルーシー・リュー、千葉真一、栗山千明、ヴィヴィカ・A・フォックス、ジュリー・ドレフュス、マイケル・マドセン、マイケル・パークス、ゴードン・リュウ、麿赤兒、國村隼、北村一輝、田中要次、風祭ゆき、大葉健二、シャナ・スタイン、ボー・スヴェンソン、マイケル・ジェイ・ホワイト、前田愛、楠見尚己、緑川光 他
受 賞:【2004年/第13回MTVムービー・アワード】女優賞(ユマ・サーマン)、格闘シーン賞(ユマ・サーマンVS.栗山千明)、悪役賞(ルーシー・リュー)
コピー:許せない。許さない。

4年もの長い昏睡状態から目覚めた女“ザ・ブライド”。彼女はかつて最強の暗殺集団に属していたが、妊娠を機に足を洗おうと、一般男性との結婚を選択する。その結婚式のリハーサルにて、組織のボスであるビルとその配下の4人の殺し屋から襲撃を受け、夫を殺され、彼女も重傷を負わされて昏睡状態となってしまう。目覚めた彼女は、自分の幸せを奪ったビルと4人の殺し屋を血祭りに上げるため、復讐の鬼と化す…というストーリー。

既に2,3回は観てると思うが、『修羅雪姫』の後に本作を観ると、ニヤニヤが込み上げてきて、おもしろさ倍増だった。タランティーノは、『修羅雪姫』へのオマージュといっているようだが、これはパロディの域。仮面ノリダーと同じレベルだと思うよ(笑)。馬鹿馬鹿しさをとことんまで追求すると、ここまで昇華するのだ…という好例である。
復讐!復讐!復讐!、クレイジー!クレイジー!クレイジー!がしっかり引き継がれているね。

昨今、日本が登場する映画は数あれど、一番しっくりくる日本像は、案外本作なのかもしれない。いや、細かいディテール云々ではなく、日本人の頭にある日本像という意味で。千葉真一演じる服部半蔵の寿司屋なんか、絶対に日本じゃないんだけど、日本人クリエイターが無国籍っぽい場面をつくったらこんな感じになるだろうな…とは思うわけ。本作を観て、日本刀を持って飛行機に乗れるわけねーじゃん!とか野暮なツッコミをしている人がいるけど、これパラレルワールド、架空の世界だから、そういう恥ずかしい指摘はしないように。
そんな数ある日本表現の中で一番光っているのが、高校生キラー・ゴーゴー夕張を演じる栗山千明だってのが、いかにもって感じだよね。

本作のアイコンでもあるユマ・サーマンが着る黄色いトラックスーツは、Vol.2の中国拳法修行への布石。でも純粋に格好よくて、靴が鬼塚タイガーなところの芸が細かい。その他の細かいポイントを見ても、日本人しか気付かないであろうセンスが取り入れられており、タランティーノが日本人のアドバイスを素直にそれを受け入れているのがよく判る。

#で、本作のアンサーとして、三池崇史監督の『スキヤキウエスタン・ジャンゴ』があるんだろうな。日本人がへなちょこ英語を駆使する西部劇ってことで(アンサーになっていたかどうかは甚だ疑問だけどね)。

不必要とも思える惨殺シーンに閉口する人、主人公をはじめ登場人物全員の考え方や行動に共感できない人、色々と本作を忌避する理由はたくさんあると思うが、元ネタの『修羅雪姫』がクレイジーの局地で、それを引き継いだのだから、本作がそうなのも仕方が無い。むしろ『修羅雪姫』が、終盤にクレイジーさを失いかけているのに対して、同じ轍を踏まないようにしようと思えば、こうなるのは当たり前。

二部作にする意味があったのかどうか疑問だったが、ラストは『修羅雪姫』を踏まえて、大人数のバトル→雪の庭での一騎打ち…にしたかったんだろう。そう考えるとむしろ必然だよね。

もし、『修羅雪姫』をみていない人はワンセットで観てみることを強く強くお薦めする。新たな何かが見えるはず。
#タランティーノのBGMの選曲のセンスはやはりスゴいなぁ。




負けるな日本

 

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image1764.png公開年:1973年
公開国:日本
時 間:97分
監 督:藤田敏八
出 演:梶芽衣子、赤座美代子、大門正明、内田慎一、楠田薫、根岸明美、西村晃、高木均、岡田英次、中原早苗、仲谷昇、地井武男、黒沢年男、中田喜子、小松方正、長谷川弘、松崎真、阿藤海、大倉賢二 他




明治初頭の日本。塚本儀四郎、正景徳市、北浜おこの、竹村伴蔵の四人組による詐欺事件に巻き込まれた小学校教員・鹿島剛の一家。政府の税徴収官であるとして鹿島剛と長男を惨殺され、生き残った妻小夜は、彼らに弄ばれる。その後、小夜は正景徳市をの復讐を果たし殺害に至るものの、その咎で入獄する。小夜の恨みは納まることを知らず、子供に復讐をさせるために獄中で身篭り、産まれた女の子に雪と名づけ絶命。雪は、小夜の同情したスリ師・タジレのお菊により引き取られ、剣豪でもあった道海和尚の元で厳しい修行を受けるのだった。成長した雪は、母に代わって復讐の旅を続ける…というストーリー。

近所のレンタルビデオ屋で発見。『キル・ビル』の元ネタということで。

恨みを晴らすために、誰彼かまわず子作りを試みるというエグさ。主人公・雪は父親がだれかも知らず(知りたくもないだろうけど)、ただただ暗殺マシーンとして育て上げられる。暗殺マシーンを育てられる和尚って何者だよ!って、本当にマンガ展開(まあ、マンガ原作なんだから仕方ないんだけど)。小池一夫にしたって白戸三平にしたって、この時代の劇画クリエイターは良い意味でクレイジー!それを実写で表現すると、そのクレイジーさは特に際立つ。でも、これがほんとに面白い。
復讐!復讐!復讐!これ以外の枝葉末節を排除した割り切りが、娯楽作品としてとても秀逸。ごちゃごちゃと余計な複数の要素を、盛り込みがちな日本映画だが、腹の据わったプロットとはこういう物だと、見習って欲しい。

時代背景が明治初期っていうのも面白い。金田一耕助シリーズのWW2終戦直後の世界同様、国情が混乱しており有象無象が湧き出すバーリトゥードな世界。WW2後直後と明治初期には、多少無茶なエピソードもまんざら有り得なくも無いと思わせるダイナミズムがある。日本はいい時代の歴史を持っている。

斬られた人からあふれ出す血しぶきはこれでもか!という量。『キル・ビル』を観た時もやりすぎだろ~アホか…と思ったけど、さすが元ネタというだけあって、本作も負けず劣らず。一方で、斬られても血が一滴も出ない時代劇が日本には厳然と存在するわけで(むしろそっちが主流)、そういうったアンリアルなお約束世界との対比も面白い(まあ、振り切りすぎて、こっちはこっちでアンリアルなんだけど)。

しかし、残念ながら藤田敏八の演出は、後半以降徐々に力尽きていく。
北浜おこのの殺害シーンはインパクトこそあるものの、なんで首を吊っているのかピンとこない状態。おそらく原作では、おこのを精神的にも追い詰めていく描写があるのだろうが、本作では強固に対峙しているおこのが、まだ余力があるのに突然首を吊った印象に。
さらに、最後の鹿鳴館のシーンになると、完全に気が抜けた状態に。最後の一人なんだから、替え玉一人くらいじゃちょっと物足りない。取り巻きの人間との大バトルなんかがあってもよかったかと。あれじゃあ『死亡遊戯』の「WAX!」と一緒だもんなぁ(笑)。まあ、タランティーノもその辺の物足りなさを感じたからこそ、『キル・ビル』でクレイジー88との大バトルシーンを入れたんだろう。

まあ、そういう残念な部分はあるけれど、日本映画史に残る、娯楽アクション作品だと思うなぁ。お薦めする。カルトムービー扱いする人が多いけど、この程度をカルト扱いしてるようだから、日本映画がこじんまりとしてるんじゃないのかな。作り手側と観客側、両方の心の問題なのかも。

二作目「怨み恋歌」を是非観たくなったが、とりあえず『キル・ビル』を再び観てみようと思う。



負けるな日本

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image1761.png公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:ロブ・マーシャル
出 演:ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ケイト・ハドソン、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレン、ファーギー、リッキー・トニャッツィ、エリオ・ジェルマーノ、アンドレア・ディ・ステファノ 他
ノミネート:【2009年/第82回アカデミー賞】助演女優賞(ペネロペ・クルス)、歌曲賞(曲/詞:モーリー・イェストン“Take It All”)、美術賞(ジョン・マイヤー、ゴードン・シム)、衣装デザイン賞(コリーン・アトウッド)
【2009年/第67回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、男優賞[コメディ/ミュージカル](ダニエル・デイ=ルイス)、女優賞[コメディ/ミュージカル](マリオン・コティヤール)、助演女優賞(ペネロペ・クルス)、歌曲賞(モーリー・イェストン“Cinema Italiano”)
【2009年/第63回英国アカデミー賞】メイクアップ&ヘアー賞(Peter ‘Swords’ King)
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】作品賞、助演女優賞(マリオン・コティヤール)、アンサンブル演技賞、撮影賞(ディオン・ビーブ)、編集賞(クレア・シンプソン、ワイアット・スミス)、美術賞(ジョン・マイヤー、ゴードン・シム)、衣装デザイン賞(コリーン・アトウッド)、メイクアップ賞、音響賞、歌曲賞(モーリー・イェストン“Cinema Italiano”)
コピー:世界は、男と女と愛でできている。

世界的な映画監督グイドは、新作『ITALIA』のクランクインが迫っているにもかかわらず、創作意欲がまったく湧かず、未だに1ページもシナリオは書けていない。そんな状態で製作発表の記者会見をさせられるが、記者達から問い詰められ、精神的に益々追い込まれていく。そのまま海沿いのリゾートホテルに逃亡し、愛人カルラを呼び寄せて自らを癒そうとするが、プロデューサーに居場所を突き止められ、ホテルにセットを持ってきて撮影を迫られる。そこへ妻ルイザもやってきて…というストーリー。

このホテルはフェリーニの『8 1/2』に出てきたホテルに似てるなぁ…。イタリアはこういうのが多いのかなぁ…。そういえばストーリーもなんとなく近いなぁ…、なんて感じで観ていたのだが、後で解説を読んだら、『8 /1/2』をモチーフにしたミュージカル作品の映画版なんだって。
普通の生活や会話の中で踊って歌っちゃうミュージカル映画が多いけれど、本作のミュージカルシーンは想像・空想の中でのみ展開する。私はこういう方が興醒めしなくて好きである。

グイドは多数の浮名を流すわけだが、意識してか否かはわからないが、全ての女性に母親の影を強く求めている。娼婦のような女を求めているようでも結局そこに帰結してしまう。どこの国の男性でもその傾向はあるのかもしれないが、イタリア人男性のマザコン具合の顕著さ垣間見えて、ちょっと気持ち悪かったりはする。
表面的には様々な女達との関係に苦悩するマエストロの話。だけど話の本質的には、女に依存した男の滑稽さ云々というよりも、実生活でウソが増えた分、創造の世界でウソが付けなくなった男の話ってところか。

それら女性陣を演じる中では、ペネロペの存在感が半端ない。顔小っさ!から始まり、奔放なビッチっぷりを演じきっている。こういう役をやらせたら天下一品。
ニコール・キッドマンは、美人女優が多数登場する作品の中で、さらに美人女優役のアイコンを演じなければならないわけだ。いかにもな美人な感じをしっかりと演じてくれているが、ちょっと作品の中では浮いている感じは否めなかった(ちょっと作品から浮いてる感じ)。

反面、その女性達から愛を受ける主人公を演じるダニエル・デイ=ルイスは、ピンとこない。落ち目の監督らしい風貌で、確かにダメ男には見えるのだが、男性目線だからかもしれないが、そんなに魅力的に見えない。女性から見ると納得できるの?これ。

リメイク作品と考えちゃうと凡作だと思うのだが、自分の中にある弱さとシンパシーを得られれば、軽妙な音楽と相まってなかなか愉しめると思う。軽くお薦め。でも、若い人には向いていないかも。

#余談だけど、ソフィア・ローレンの整形(特に唇)は怖いっす。アメリカのおばさんでああいうピローンと左右に突っ張ったような唇にする人がいるけど、何が良くてあれをしようと思うのか、理解に苦しむ。




負けるな日本

 

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image0613.png公開年:2005年
公開国:アメリカ
時 間:124分
監 督:ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー、クエンティン・タランティーノ
出 演:ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライヴ・オーウェン、ジェシカ・アルバ、ベニチオ・デル・トロ、イライジャ・ウッド、ブリタニー・マーフィ、デヴォン青木、ジョシュ・ハートネット、ロザリオ・ドーソン、マイケル・クラーク・ダンカン、ニック・スタール、カーラ・グギーノ、マイケル・マドセン、ジェイミー・キング、アレクシス・ブレデル、ルトガー・ハウアー、パワーズ・ブース、マーリー・シェルトン、アリ・ヴァーヴィーン、ジュード・チコレッラ、トミー・フラナガン、リック・ゴメス、ニッキー・カット、マッケンジー・ヴェガ、フランク・ミラー 他
受 賞:【2006年/第15回MTVムービー・アワード】セクシー演技賞(ジェシカ・アルバ)
コピー:この街では、愛さえも闘い

――醜い顔と屈強な体格のマーヴは、ゴールディという娼婦と一夜を共にするが、目を醒ますと自分の横で彼女が殺されており、直後に警官隊が駆けつけてきた。辛くもホテルから脱出するが、ゴールディを殺し、自分を犯人にしようと陥れたやつに復讐すべく立ち上がる…。――過去に犯した罪から逃れるべく、整形して身を隠すドワイトは、新しい彼女シェリーにしつこく付きまとう男ジャッキーボーイに、制裁を加え追い返す。胸騒ぎを感じたドワイトは、ジャッキーボーイを追跡するが、昔の恋人ゲイルが仕切る娼婦街に逃げ込まれてしまう。娼婦たちは、ジャッキーボーイの下賎な振る舞いに怒り、彼を殺してしまう。しかし、娼婦街はその自治を維持するために、警察やマフィアがトラブルを起こしても、穏便に解決する契約を結んでいた。その契約を破ってしまったことで娼婦街は再び無法地帯に戻ってしまい…。――心臓の病を抱える刑事ハーティガンは引退を決めていたが、最後に連続幼女殺人犯であるロアーク・ジュニアを捕らえることを決心。隠れ家に乗り込んで、少女ナンシーの救出に成功する。しかし、相棒の刑事ボブの裏切りで瀕死の重傷を負ってしまう。その上、ロアーク・ジュニアの父親である上院議員の工作によって、連続幼女殺人犯に仕立て上げられ、8年の獄中生活を送ることに。出所したハーティガンは再びナンシーが狙われていることを知り、成長した彼女の元へ救出に向かう…というストーリー。

ビジュアル面では漫画チックな白黒にパートカラーという手法で、特徴的な作品。見て欲しい部分を強調し、それ以外を極力排除するというアプローチだが、その意図どおりの効果を得られていると思う。

ただ、肝心のシナリオには問題が。
3本の話を『パルプ・フィクション』的な、時系列ごちゃ混ぜの手法でまとめているのだが、3本の関連性が希薄。この3本が渦を巻くように集約されていくとよかったのだが、だら~んと終わる印象。シナリオの巧みさという点では、『パルプ・フィクション』には遥かに及ばない。

また、表現のエグさがいささかやりすぎ。ロドリゲスとタランティーノは、グロ表現に麻痺しちゃってて、客の受け取り方とか必然性とかを完全に無視している感じ。グロいわりに後味が悪くないので、綺麗にまとめてくれた…と勘違いしてしまいがちだが、これは目の前をパッ!パッ!と画像が通り過ぎただけで、脳に焼きついていないだけ。
それに、ショッキングなレベルのカットが頻繁に差し込まれているにも関わらず、途中で眠くなるってのは、意味を成していないってことじゃなかろうか。これは、ロドリゲス作品の悪い時のパターンかな。

シナリオがよろしくない証拠のひとつとして、最後の人は誰?って点が挙げられるだろう。ジョシュ・ハートネットなんだけど、3本の話の中に出てたっけ?あれ?あれ?となる。頭から見直して判ったのだが、プロローグに出てくる殺し屋(強盗か?)なのである。本編のストーリーに全然関係してこないから、ラストの時には全然記憶に残ってなかったわけだ。本当に、最初と最後のオチだけで本編には無関係なんだわ。見直したり解説してもらわないとわからない存在でラストを締めるってのはどうだろう。どこかに、思いあがりというか客に対する慢心がある証拠かな…と。
#これが、パルム・ドールにノミネートされてるってのが、どうも信じられなくて…。

まあ、主役は“シン・シティ”っていう犯罪都市ですよってことなのかもしれないし、燃えカスみたいなおっさんの燃えカスみたいな恋愛ストーリーって観方もできるかな。そういう好意的なバイアスで観て、良作に届くか届かないかってところだと思う。

#ジェシカアルバとデヴォン青木は光ってたな。うん。






負けるな日本

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プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
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