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image1583.png公開年:2010年 
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:アレン・ヒューズ、アルバート・ヒューズ
出 演:デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン、ミラ・クニス、レイ・スティーヴンソン、ジェニファー・ビールス、フランシス・デ・ラ・トゥーア、マイケル・ガンボン、トム・ウェイツ、エヴァン・ジョーンズ、ジョー・ピングー、クリス・ブラウニング、リチャード・セトロン、ラティーフ・クラウダー、マルコム・マクダウェル 他
コピー: 運べ、西へ。世界に残るたった一冊の本を──。


核で滅びた世界。イーライはアメリカ大陸の荒野を本を運んで西に向かって歩き続けていた。彼は、その本を求めて近づこうとする者を容赦なく殺していく。道中、カーネギーという男が独裁的に支配する町に立ち寄ったが、カーネギーは、ある本をずっと探しており、その本があれば世界を支配できると考えていた。そして、イーライが持っている本が、探している本だと感付くのだったが…というストーリー。

いきなりネタバレ注意。

んー。アクションは『アフロサムライ』で根本プロットは『アイ・アム・レジェンド』って感じ。核戦争後の崩壊した世界で…みたいな映画は腐るほどあるので、既視感がものすごくある。それを超えるだけの何かがあるのか無いのか。そこがすべてといえる。

始めは宗教に批判的なノリなのかと思って好意的に観ていたのだが、逆に宗教の尊さを語りたいのが見えてくると、いささかテンションが下がる。文明を滅ぼしたのは“宗教”だけど、文明が壊滅した後に人類を救うのも、やっぱり“宗教”だってこと?それもキリスト教って、正直、なんだかなぁ…という印象。

イーライってのは、旧約聖書に出てくるエリヤのことかな。旧約聖書にはありがちだけど、預言者といえども、結構さくさくと大量殺人はするし、ウィキペディアに載ってる宗教画でも聖書を持ってるくらいなので、ある意味、正しい描写の宗教説話とも言える。キリスト教的価値観がしっくりくる人にはたまらないとは思うのだが、私にはさっぱり響かなかった。

イラーイは「道を逸れるな」と何度もつぶやきながら悪事を見過ごす。一見すると聖書を運ぶことに集中しろって言ってるように見えるけど、実は逆で、聖書を守ることばかりじゃなくて、人のために尽くさないと…と自分を説得してるんだよね?だよね?って、誰かに確認したくなる点が実に多い。色々、ミスリードを仕掛けてるようなのだが、この作品は判りにくい。根本的に“本を運ぶ”というのが啓示によるものだってことすら判りにくい。判りにくさの最たる点は、イーライは座頭市状態なの?って部分。でも、『シックス・センス』の時のように、「ああ!そういうことぉ?」っていう驚きも薄いし、もう一回観ようって気にもならず、映画自体の力の無さを表していると思う。

キリスト教に詳しいか否か。それが、本作をおもしろい!深い!と感じるかどうかの境目。しかし、邦題は“THE BOOK OF ELI”ではなく“ザ・ウォーカー”。配給会社は、大半の日本人には判るはずが無いと判断しているわけだ。コレが答えかな。
お薦めできないわけではないが、多くの人がふわっと観終えることになるだろう。旧作になるのを待ってからで十分だと思う。

#食料が極端に少ない世界なのに、けっこうみんなムチムチなのが、どうかと思うけどね…。

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image1585.png公開年:2008年 
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:マルコム・D・リー
出 演:サミュエル・L・ジャクソン、バーニー・マック、シャロン・リール、アダム・ハーシュマン、ショーン・ヘイズ、ファッツォ=ファサーノ、ジャッキー・ロング、マイク・エップス、ジョン・レジェンド、アイザック・ヘイズ、ヴァネッサ・デル・リオ、P・J・バーン、ケン・ダヴィティアン、ジェニファー・クーリッジ、サラ・エリクソン 他



かつて大人気だったコーラス・グループ、マーカス・フックス&ザ・リアル・ディールだが、脱退したマーカスがソロで大成功したのと対照的に、コーラス・デュオとして再出発したルイスとフロイドは泣かず飛ばずでケンカ別れして、それっきり。それから約20年後、マーカス訃報の報せが届き、ニューヨークのアポロシアターで行われる追悼コンサートでの再結成を依頼される。しかし、久々に再会した二人だったが、仲の悪さは相変わらずで、道中もケンカ続きでトラブルばかり…というストーリー。

意識したわけではないのだが、奇しくも『カントリー・ベアーズ』とは音楽グループ再結成モノっていう共通点があり、昨日の『アフロサムライ』とはサミュエル・L・ジャクソンていう共通点が。日本未公開映画で、TSUTAYA独占レンタル。バーニー・マックが主演で未公開のものはあるんだけど(笑)、サミュエル・L・ジャクソンも主演なのに未公開って、どんだけおもしろくないのかって普通は思っちゃう。

エンドロールのバーニー・マックのインタビューは何?って思って調べてみたら、本作の撮影中にお亡くなりになってるのね。びっくり。まだ若いのに(50歳)。同じく未公開の『Mr.3000』とか、嫌いじゃなかったよ。さらにアイザック・ヘイズも数ヶ月違いでお亡くなりに。いやはや。もしかして、本当はまだ撮る必要があったカットとかがあったのかもしれない。

それはそれとして、内容のレビュを。

劇中で、ジジィ呼ばわりされてるんだが、それほどジジィには見えない点には違和感が。設定的には60年~70年代に活躍したってことなんだから、60歳前後だろう。途中、腰を痛がったり薬を飲んだりと、それなりの演出はあるんだけど、基本的にピンピンしてるのが、なんとも。逆に昔の写真が若くないってのも…。それは小ネタだとしても、もうちょっと老けメイクするなり、工夫をしたほうがよかったんじゃないかな。

テンポがいいのは認めるが、中盤までは、コメディ&ロードームービーにありがちな展開。凡庸さは否めないのだが、シャロン・リールが出てきたあたりで、すこし映画がシマっってくる。意地の悪い言い方をすれば、そろそろ二人で笑いをとるのが苦しくなってきたところで、ポンコツマネージャとか娘の男(夫?彼氏?)を出すことで、何とか凌いだという感じ。とはいえ、棺桶の中のシーンなんかは、なかなか無い演出だと思うし、その他にもちょこちょこ目を引く演出はあるのに、どうも薄皮一枚破れていない感じが、全体的にする。

根本的な難点は、あまりグルーヴを感じないというか、二人のステージのパフォーマンスがとても“絶品”ってレベルじゃないこと。シャロン・リールの歌も『天使にラブ・ソングを2』のローリン・ヒルをみたいな衝撃は無い(『ドリームガールズ』なんだけどね…)。音楽モノで、音楽シーンになってもワクワクもしないし鳥肌も立たないのは、ある意味致命的で、未公開な理由はこのあたりかなと思う。

新作料金で、それに見合った満足感ってわけにはいかないが、旧作料金なら全然アリ。同じTSUTAYA独占レンタルの『ファンボーイズ』よりは落ちるけど、変な比べかたかもしれないが『最高の人生の見つけ方』と同じレベルって感じのおもしろさかな。

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image0039.png公開年:2006年 
公開国:日本、アメリカ
時 間:112分
監 督:木崎文智
出 演:サミュエル・L.ジャクソン、ケリー・フー、ロン・パールマン、ジェフ・ベネット、セヴン・J・ブラム、S・スコット・ブロック、TC・カーソン、グレイ・デリスル、ジョン・ディマジオ、グレッグ・イーグルス、ジョン・カッサー、フィル・ラマール 他
コピー:すべては復讐フクシュウのため



image1589.png公開年:2009年 
公開国:日本、アメリカ
時 間:100分
監 督:木崎文智
出 演:サミュエル・L・ジャクソン、ルーシー・リュー、マーク・ハミル 他






前作で父の仇を遂げ、“一番”のハチマキを得たアフロサムライ。しかし、そんな彼の前に、倒したはずの兄弟子・仁之助と謎の女シヲが現われ、アフロへの復讐として闘いを挑んできた。さらに強化された仁之助の前に破れハチマキを奪われてしまうアフロだったが…というストーリー。

劇場公開ではなく、アメリカのケーブルTV局(なのかな?)で製作されたアニメ(前作は一応劇場公開もされたみたいだけど)。観ればわかるが、レイティングをかけて有料放送にもしない限り、普通には放送されることはない。仮にド深夜だとしても、今後、地上派放送される可能性は低い(日本ではWOWOWで放送されたらしいけど、放送できるギリギリの線かな…と)。まあ、いかにもタランティーノとかが好きそうで、漢字のタトゥーをいれちゃうような層にピンとくるジャパンテイスト具合だといえば、伝わるだろう。

前作から間が空いてしまったので、思い出せるのか疑問だったのだが、案の定、基本設定がさっぱり思い出せず。というか、“一番”“二番”の基本設定が、いきなり無視されていたので、なんか変じゃない?と思い、結局一作目から観直してしまった。せっかく昨日の『カントリー・ベアーズ』で心が癒されたのに、3分と空かずに血まみれシーンで、すっかり台無しである(笑)。
前作で一番のハチマキを勝ち取ったアフロが、権力を行使しなかったために混乱状態になったため…っていう設定なのはわかるんだけど、もうすこしディテールの説明が欲しかったかも。

アメリカ人は日本をこんな感じでみているのかなーっていう部分を逆手にとっていて、そういう着眼点はなかなか白眉だと思う。そして、前作の、プロモビデオみたいな若干うるさい演出は押さえ気味になっていて、シネマとしてのデキはよくなっている。私がアメリカ人だったら、本作を観て、「一度は日本に行きたい!」って思うかもしれない。日本のトラディショナルな要素をどれだけオシャレに興味深く挿入するかって点に、ものすごく注力していて、結果として成功している。

まあ、タランティーノ作品が許容範囲なら、本作も大丈夫だろう。そうじゃなきゃ避けたほうがいい。でも、こんなバイオレンス映画だけど、コリアでもチャイナでも無く、まぎれもなくニッポンだぜ!って言える作品で、東アジア十把一からげのハリウッド映画なんかより、ましなニッポンがそこにあると思う。
とはいえ、実写化の話があるようだが、6,7年前ならいざ知らず、いまさらこのノリの映画をつくっても、そうそうウケないだろう。と、日本の製作会社によるアニメだからこそ、味が出ていると思し、『キル・ビル』以上のものに仕上げられるか、そして受け入れられるかは、極めて微妙。

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image0207.png公開年:2008年 
公開国:アメリカ
時 間:88分
監 督:ピーター・ヘイスティングス
出 演:クリストファー・ウォーケン、スティーヴン・トボロウスキー、ミーガン・フェイ、イーライ・マリエンタール、クイーン・ラティファ、ドン・ヘンリー、ワイクリフ・ジョン、エルトン・ジョン、ウィリー・ネルソン、ダリル・ミッチェル、M・C・ゲイニー、アレックス・ロッコ、ハーレイ・ジョエル・オスメント、ディードリック・ベーダー、キャンディ・フォード、ジェームズ・ギャモン、ブラッド・ギャレット、トビー・ハス、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、スティーヴン・ルート 他
コピー:ディズニーが贈る、子グマのベアリーとゆかいな仲間たちの大冒険!!

子グマのベアリーは人間のバリントン家の養子として育てられ、何不自由なく暮らしていた。ベアリーは、伝説のバンド“カントリー・ベアーズ”大ファンで、寝ても醒めても彼らのことばかり考えている。とはいえ、他の家族と容姿が違うことに疑問に思っており、11歳になったある日、とうとう兄のデックスから養子であることを聞かされてる。ショックで家出してしまうベアリーだったが、思いついた行き先は、かつてカントリー・ベアーズが本拠地としていたカントリー・ベア・ホール。しかし、訪れてみるとホールは資金難により取り壊されようとしていた。そこでベアリーは、ホール存続のために復活コンサートをすることを思いつくのだが…というストーリー。

『抱擁のかけら』『あの日、欲望の大地で』と、連日重いのを続けたので、真逆の作品を観てみることに。
子供向けのディズニー映画のくせにあまり人気のない作品かな。ディズニーランドのアトラクションも結構ガラガラだったりして、半ば休憩場と化していたりする。アトラクションが先なのか映画が先なのか。東京ディズニーランドができた時にはあったような気がするので、映画が後だな。多分。

実は、レンタルが開始されたばかりの時に一度観ており、今回で二度目。細かい内容はあまり覚えていないのだが、当時観た時はいまいちだった記憶だけが残っている。ところが今観てみると意外とイケる。人間と熊が普通に生活してる世界という、ゆるくてくだらない設定を、特に言い訳や説明することもなく、なんとなくなノリで押し切るところが、実に心地がよい。
バーやカフェで突然ノリノリで踊り出したりするシーンは、ベタベタだと判っていても実に楽しいし、カントリーというタイトルだけど、ロックやジャズ的なエッセンスも多大に盛り込まれていて、根底の音楽的要素もハンパなくしっかり作りこまれていて飽きない。確かに、よくある音楽モノやロードムービーのパクリ要素は満載なのだが、批判されるレベルではない。むしろ、こういう肩の力の抜けたおふざけ映画をしっかりと作らせると、アメリカの右に出るものはいないな…と、底力をまざまざと見せられた気にすらなる。こういうものを作らせると、アメリカは本当に上手いと思う。ちょっと昭和の臭いがして、とても2000年代の作品とは思えない古臭さを感じはするけれど、今となっては許容範囲である。

なんでこんなに世間で評価されていないのか不思議に感じるほどだったが、最後まで観て思い出してしまった。オチの演出が、いまいち盛り上がりに欠け、あまりにもサラっと終ってしまうのだ。確かに元々の目的は果たすのだが、あまり問題を乗り越えてミッションコンプリートした!ってカタルシスが得られない。もったいないというか実に残念。

でも、正直にいうと、癒されたという意味では、今年観た映画の中で一番かもしれない。何の悪意も害もなく、くさくさした心にやさしく滲みたお粥みたいな作品である。年末の忙しい中、心がお疲れの人には強くお薦めする。私は癒された。

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image1491.png公開年:2008年 
公開国:アメリカ
時 間:106分
監 督:ギジェルモ・アリアガ
出 演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ホセ・マリア・ヤスピク、ヨアキム・デ・アルメイダ、ジョン・コーベット、ダニー・ピノ、J・D・パルド、ブレット・カレン、テッサ・イア 他
受 賞:【2008年/第65回ヴェネチア国際映画祭】マストロヤンニ賞[新人俳優賞](ジェニファー・ローレンス)
コピー:愛の傷なら、いつか輝く。

アメリカ・ポートランド。高級レストランの女マネージャー・シルヴィアは、行きずりの情事を繰り返していたが、そんな彼女のところに、見知らぬ男が一人の少女を連れてくる…。ニューメキシコ州。ジーナとメキシコ人のニックは国境を超えて不倫関係にあったが、密会に利用していたトレーラーハウスが炎上して、2人は死んでしまう。残されたジーナの夫は、不倫相手の家族を激しく憎むが、娘のマリアーナはその家族の息子と恋愛関係になってしまう…というストーリー。

悪くはないのだが、昨日『抱擁のかけら』を観てしまったのが不運。時制の混在演出も、愛にまつわるテーマも、奇しくもほぼ一緒。まったく予備知識もなく、偶然に連続鑑賞してしまった。
#まあ、時制がいったりきたりするのは、アリアガの十八番だから、パクリとかそういうことではもちろんない。

『21グラム』『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』『バベル』と、ギジェルモ・アリアガが脚本を手がけた作品を、これまで三本観てきたが、これが初監督作品になるんだね。
ラストは、一瞬かすかに光明が見える気がするけど、自分の母親を殺したことを乗り越えようとしただけではなく、意識の戻った後には、彼の父親を殺したことを乗り越えねばならないという、とてつもなく高いハードルがまだまだ残っているわけで…。底なし沼に沈むスピードが落ちこそすれど、底にいることは変わらないという、この無間地獄のような救いのなさが、アリアガらしさ。
これまで観た三本は、いささかトンガった演出が多かったので、アリアガの頭の中にあったものとは乖離があったのかもしれない。本作はハードな内容なのに、奇を衒ったような感じがせず、こなれた感じ。さすがにアルモドバルと比較しちゃいけないんだけど、初監督としては大したものなのではないだろうか。

この映画を20代や30歳そこそこの時に観たとしたら、私には受け止めきれたかどうかわからないなぁ。家庭を顧みず浮気をするのも、子供を捨てるのも、見境なく異性と関係を持つのも、ただ“悪い”で片付けてしまって、それ以上、感じることを拒絶してしまったかもしれない。その辺にころがっているシチュエーションではないけれど、それほど突飛にも感じないのは、やはり年を重ねたからな気もする。

どっぷり中年の人はもちろん、中年に足を踏み入れつつある人にお薦めする。ある意味、自分の人間としてのキャパを図るものさしになるかもしれない。

#シャーリーズ・セロンはオスカーを獲ってしまった余裕というか、貫禄すら感じますな。

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image1514.png公開年:2009年 
公開国:スペイン
時 間:128分
監 督:ペドロ・アルモドバル
出 演:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、ホセ・ルイス・ゴメス、ルーベン・オチャンディアーノ、タマル・ノバス、アンヘラ・モリーナ、チュス・ランプレアベ、キティ・マンベール、ロラ・ドゥエニャス、マリオラ・フエンテス、カルメン・マチ、キラ・ミロ、ロッシ・デ・パルマ、アレホ・サウラス 他
受 賞:【2009年/第22回ヨーロッパ映画賞】音楽賞(アルベルト・イグレシアス)
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】外国語映画賞
コピー:愛から逃げて、愛と出逢う
マドリード。盲目の脚本家ハリーは、かつて映画監督として活躍していたが、とある事件で視力を失った。ある日、ライ・Xと名乗る男が、自分が監督をする映画の脚本を書いて欲しいと依頼に訪れる。しかし、ライ・Xの正体が、過去の事件と関わりのある人物であることに気づく。その事件とは、14年前のこと。ハリーは本名のマテオとして映画監督として活動していたが、オーディションにやってきたレナという美女を見初めて恋に落ちる。しかし、彼女はエルネストという大富豪の愛人で、嫉妬するエルネストは彼女をつなぎとめるために、映画の出資をしつつ、メイキング映像を撮るという名目で息子を監視役として撮影現場に送り込むのだった…というストーリー。

これまで『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール <帰郷>』と観てきたが、女三部作を終えて、次のステージに…という感じかな。これまでは、女の性(さが)に固執しすぎたきらいがあって、趣味に合う・合わないはあったのだが、高いクオリティに感服してきた。しかし、本作はその三作を軽く上回る巧みさだ。

過去と現在を行き来しつつ秘密を明かしていくという手法なんて、ありきたりだし、基本的に恋愛のすったもんだには興味がないので、本来は興味が沸くはずがないジャンルなのだ。しかし、先の予測がつかない演出で、グイグイと世界に引き込まれる。時間と金と有能なスタッフを与えられても、私には到底作れそうもないレベルで、天上人の成せる技というか、完全に脱帽の領域である。

これまでの女の生き様よりも、もっと広い視線になって、人を愛さずにはいられない人間の性、そしてその先に見える“人生ってなにか?”っていう光を垣間見せる。最後の「映画は完成させないと。たとえ手探りでも」は、近年の映画の中では、特筆して深いセリフだろう。人間の業を語りに語って、最後には“赦し”を超えて生きる意味や力を見つける。最後のメッセージは、けっして長々と表現しているわけではないのだが、ズドーンと響いてくる。

ペネロペ・クルスは、いままでで一番ぴったりはまった役で、彼女以外にこの役ができる人間はいない…というか、彼女ありきで出来上がった役といってもいいほどである。反面、アルモドバル監督はこれまでずっとペネロペを使い続けてきたが、これで一旦区切りをつけるのでは?ということを予感させる。やはり、普通の女優を見つめる目線以上の物があるし、彼女を烈火のごとく愛する主人公や嫉妬に狂った老いた夫、そして彼女を執拗に監視する息子の姿は、全部アルモドバルの投影だろう。そして彼女は死に、映画を完成させ納得し、この映画は終わるのだ。ペネロペへの執着を振り払ったと考えてよさそうである。
#この予言が当たるかどうかは、彼の次回作まで。

もう、口を差し挟む余地はない。私なんかが強くお薦めしようがしまいが、微塵も影響を及ぼさない、そんなレベルの作品である。

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image0711.png公開年:1956年 
公開国:アメリカ、イタリア
時 間:151分
監 督:キング・ビダー
出 演:オードリー・ヘプバーン、ヘンリー・フォンダ、ヴィットリオ・ガスマン、アニタ・エクバーグ、メル・ファーラー、ハーバート・ロム、アニタ・エクバーグ、オスカー・ホモルカ、メイ・ブリット、アンナ・マリア・フェレーロ、ジェレミー・ブレット 他
受 賞:【1956年/第14回ゴールデン・グローブ】外国映画賞[外国語]
コピー:ロマンとスペクタクルの壮麗な超大作 生と死、愛と苦悩…… 壮大な歴史のなかに描かれた 人生の真実が いま、ここによみがえる

19世紀、帝政ロシア末期のモスクワでは、フランス軍の侵攻が噂され、軍人達が活気付いていた。貴族の非嫡子であるピエールは、父に愛されていないことを常々嘆いていたが、危篤の父が臨終の際にすべての財産を相続させたことで、自分が愛されていたことを知る。ピエールはかねてからロストフ伯爵の娘ナターシャに想いを寄せていたものの、財産目当てに近づいてきた貴族の娘ヘレーネと結婚してしまう。一方、ピエールの親友アンドレイは、妊娠している妻を置いて戦地にいくが、敗戦し負傷兵となって帰還する。そんな彼は、いつしかナターシャと心通わすようになるのだったが…というストーリー。

言わずと知れたトルストイの大作の映画化。とか言って、文学青年でもなんでもないので、読んだことはない。だって猛烈に分厚いし普通は読まないよ。うん。

三時間半の長時間映画ではあるが、あの百科事典みたいな原作からすると、かなりシュリンクしているのは間違いなかろう。でも、原作を知らないので、何がどうシュリンクされているのはさっぱり不明。とにかく小走りでストーリーは進んでいく。何か韓国ドラマのようだな…なんて思ってしまった。だって、戦争と平和という重々しいタイトルにも関わらず、恋愛がらみでずーっとストーリーが展開するんだもの。徐々に、戦争シーンも増え、恋愛もドロドロしていくけれど、気安くコロコロと展開するのはずっと同じ。ここまでくると、何がどうなっているのか、何を見せたいのか、よく判らなくなってしまう。
そして、最後の最後で、命の大切さについてのトルストイのメッセージのテロップが入る。いやいや、最後で帳尻をあわそうとしても手遅れだから…って、長時間見切った開放感も相まって、笑っちゃったよ。ここから推測するに、多分、原作はこんなジェットコースタードラマみたいな内容ではないと思われる(とてもロシアの文豪の作品だとは思えないもの)。

評価できるのは、フランス軍との戦争関係の描写がしっかりと作りこまれている点か(描写が史実として正しいかどうかは知らんけど)。ナポレオンがらみのシーンや、モスクワ侵攻から“冬将軍”の件まで、そのあたりも長いなぁと思いつつも興味深く観ることができた。逆に言えば、おっさんの鑑賞に堪えたのは、そのあたりだけということなんだけど(恋愛の話なんか、本当につまんないんだよね)。

著作権標記に問題があってアメリカではパブリックドメインになっているらしく映画検定的には押さえどころかな?と思い、表記の不備に着目して見ていたが、私が観たDVDのオープニングにはcopyrightが表記されていたけど。製作年が入っていないのが問題なのかな?

映画の内容と直接関係はないのだが、あまりに長いので字幕を追うのは難しいと判断し、吹き替えで観たのだが、ヘプバーンの声を池田昌子が当てていた。何歳の時に収録したのかわからないが、声が完全におばあちゃんで、活発なヘプバーンとアンマッチすぎる。嫌いな声優さんではないのだが、いくらなんでも…である。『ハウルの動く城』と同様。もうすこし考えて欲しいかな。

よほどトルストイとかロシア文学に興味でもない限り、覚悟がないと最後まで観るのは苦痛だろう。ヘプバーンのファンだ…というだけで観るのもつらいだろう。お薦めしない…というかお薦めするには勇気が必要な作品。

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image1579.png公開年:2010年 
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:フィリップ・ノイス
出 演:アンジェリーナ・ジョリー、リーヴ・シュレイバー、キウェテル・イジョフォー、ダニエル・オルブリフスキー、アンドレ・ブラウアー 他
コピー:彼女は、何者なのか?




ある日、CIAに勤務するイヴリン・ソルトは、ロシアから逃亡してきたという密告者を尋問するが、突然その密告者が、大統領暗殺のためにロシアのスパイがニューヨークに潜伏中であり、さらにそのスパイが目の前のイヴリンであるといい始める。何かの罠だと弁明するが、CIAの同僚たちは彼女を拘束しようとする。追いつめられたソルトは、決死の逃亡を図るのだったが…というストーリー。

まだレンタルし始めたばっかりだから、ネタバレの警告をしておく。以下、完全にネタバレ注意。

結論を言ってしまうと、残念ながらイマイチだった。主演のアンジーにおそらく非はない。しっかりアクションもこなしていて、単なる売れっ子女優としていい加減な仕事をする気はさらさないわよって声が聞こえてきそうな気概を感じた。さらに、アサシン顔とラブモード顔がしっかり演技じ分けられていて、ダテにオスカー女優じゃない硬軟両面を見せてくれていて、何の問題もないと思う。

根本的な着想もプロットにも問題はない。問題は、主人公に感情移入できない演出である。

はじめは、ソルトがあらぬ疑いをかけられて、さらに夫まで誘拐されているらしく、きっと誰かにハメられていて、その疑いを晴らしつつ愛する夫も救わなければならないんだな~、あーこりゃ大変だーと、彼女目線で映画を観るのだ。すっかり彼女に感情移入していたら、なにやら雲行きが怪しくなって、本当にスパイだったのかよ~!ってことに。それまでソルト目線で観ていたのに、突然放り出されてしまう。そこから、この少し悲惨な境遇の女はどういう顛末を迎えるかな…という客観的な目線を強いられる(そういう観方をせざるを得ないと諦める…という表現が正しい)。ところが、ロシアの黒幕のおっさんを殺して、また立場が変化する。おそらくここでは愛する夫を殺されて感情が爆発したんだな…とまた、ソルトに感情移入したくなる。しかしその後、やっぱり大統領暗殺に向かって、CIAの奴らは遠慮なくやっつけ始めちゃうし、一体だれを応援すればいいわけ?何を軸に観たらいいわけ?と混乱状態になる。

いや、話自体はとてもおもしろいのだ。よくデキていると思う。問題は見せ方。同じような映画で『ボーン・アイデンティティー』のシリーズというのがあるが、あっちは事実が徐々に明らかになろうが、さらに謎が深まろうが、ずーっと主人公のジェイソン・ボーン目線なので、映画に没頭できるでしょ。なんで好例があるのに参考にできないか。

監督は、巧みなミスリードを駆使して、観客の鼻をあかしてやったぜ!くらいの気持ちでいるかもしれないが、まったくの逆効果。策に溺れたというか、本当に大事にしなくてはいけない部分を見失ったというか…。あ、この監督『裸足の1500マイル』の監督じゃないか。あの映画も政策批判が前に立って、映画のおもしろさをそっちのけでやっちまったんだよな。同じこと繰り返すなよ。この監督、私の中で、ダメ監督のレッテルを貼られつつあるぞ。2アウトだ。
#まあ、脚本も悪いんだろうけど、そこは演出でカバーしてほしいよ。

旧作になってからで充分。お薦めはしない。
#まあ、続編なんかないだろうよ。これじゃ。

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image1578.png公開年:2010年 
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:ニムロッド・アーントル
出 演:エイドリアン・ブロディ、ダニー・トレホ、トファー・グレイス、ローレンス・フィッシュバーン、アリシー・ブラガ、ウォルトン・ゴギンズ、マハーシャラルハズバズ・アリ、オレッグ・タクタロフ、ルーイ・オザワ・チャンチェン 他




空に放り出され、落下中に意識を取り戻した傭兵のロイス。パラシュートが開き危機一髪で命拾いするも、落下した場所は深いジャングルの中。彼の他にも数人の同じ境遇の人間がいたが、彼らはCIAのスナイパーやロシア特殊部隊の隊員、ヤクザ、連続殺人犯など殺しのエキスパートたち。やがて一同は、自分たちがいる場所が地球ではない別の惑星であり、地球外生命体が狩猟を楽しむために連れてこられたことに気付く…というストーリー。

造形もキャラ設定もストーリー展開も、全てが微妙に至らないクオリティなのが、非常に残念。『AVP』がイマイチだったんだから、観なくても何となくわかりそうなもんだけど、ロバート・ロドリゲスが製作に関わっているということで、私の中でハードルが上がってしまったのだろう。結果からいうと、ロドリゲスの良さも悪さも出ていない。彼が深く関わったように感じられない作品。エイドリアン・ブロディだってロドリゲスが噛んでるから出演したと思うんだけど、彼のキャリア的には損をした感じすらある。

何か違和感を感じる部分が満載のシナリオなのだが、こういう特殊効果バリバリの作品っていうのは、現場での微調整が効かないものなのだろうかね。
一人だけ普通の人っていうのも有り得ないから、普通に考えりゃ殺人医師か黒幕か…しか思いつかないんだけど、ヒネリもなくそのまんまだし。ローレンス・フィッシュバーンの行動が意味不明で、そんなに食料が大事ならはじめから声をかけなきゃいいわけで。わざわざ彼を出す意味もわからない。それに、暗い夜中に、プレデターが2人闘っても、どっちがどっちかわからない。区別がつくような演出をしてほしいし。ラストも同じことが繰り返される…的な感じじゃ、あまりにスッキリ感がなさすぎる。

それに、根本的に『AVP』のようにエイリアン相手のほうが人間よりも闘いがいがあると思うんだよね。グレードダウンしてどうする!(『AVP2』のデキがあまりに悪かったから、同じ路線ってわけにはいかないのはわかるけどさ)
話のギミックは別として、プレデター自体がパワーダウンしているように見えてきているのは、ちょっと今後のシリーズ展開の上で、問題になるかもしれないので、注意してほしいなと思う。

旧作レンタル料金なら何の問題もない作品だと思うけど、プレデター自体に思い入れがない人は新作で借りるのは避けたほうがいいかも(正直、新作で借りなくてもよかったかな…と思っている)。そのレベルかな。

日本の俳優たちは、英語を習得してアメリカにいこうよ(というか、日本の事務所もアメリカのエージェントや俳優組合のことを勉強して、こういうチョイ役くらいには、普通に対応できるようにしようよ)。
#うーん。プレデターのおかげで地球が平和になって助かっちゃうような…(笑)。

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image0762.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:151分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォールバーグ、マーティン・シーン、レイ・ウィンストン、ヴェラ・ファーミガ、アレック・ボールドウィン、アンソニー・アンダーソン、ケヴィン・コリガン、ジェームズ・バッジ・デール、デヴィッド・パトリック・オハラ、マーク・ロルストン、ロバート・ウォールバーグ、クリステン・ダルトン、J・C・マッケンジー 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)、脚色賞(ウィリアム・モナハン)、編集賞(セルマ・スクーンメイカー)
【2006年/第41回全米批評家協会賞】助演男優賞(マーク・ウォールバーグ)
【2006年/第73回NY批評家協会賞】監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2007年/第16回MTVムービー・アワード】悪役賞(ジャック・ニコルソン)
コピー:男は、死ぬまで正体を明かせない。

ボストン。犯罪者だらけの親族と決別すべく警察官を志すビリー・コスティガン。一方、地元マフィアのボス・コステロに目をかけられて育てられ、彼らのスパイとなるために警察に送り込まれるコリン・サリバン。警察学校に入った2人は、各々優秀な成績で卒業し、コリンはマフィア対策の特別捜査班に抜擢され、一方ビリーは優秀さを買われ、コステロのもとへ潜入するという極秘任務を命じられる。二重生活を送るビリーとコリンは、やがて、双方共に内通者の存在を気付き、窮地に追い込まれる…というストーリー。

オリジナルは記憶にない(大昔に観たような観ていないような…)。

リメイクがオスカーを獲るなんて、ハリウッドも堕ちたな…とかいう人がいるんだけど、リメイクだろうがなんだろうがおもしろければ関係ないで、くだらない見方だと思う。ってうか、つまらなかっただーイマイチだーオスカーにふさわしくないだー文句を言っている人が多いんだけど、みんな米アカデミー賞が何か高尚なものだと勘違いしてないだろうか?元々米アカデミー賞なんて、同業者を励ます“がんばったで賞”なんだけど。配給会社の煽り文句に勝手にハードルを上げてしまっただけで、目が曇ってるんじゃないかね(お、世の中を敵に廻すような発言)。
#じゃあ作品賞は『バベル』『硫黄島からの手紙』『リトル・ミス・サンシャイン』『クィーン』のどれがよかったっていうのか。個人的な趣味でいえばダントツで『リトル・ミス・サンシャイン』だけど、そうはいかないし、前者2作だって明らかに『ディパーテッド』より上とは言い難いんだけど…。

雇われ監督で作った作品が受賞してしまったわけだけど、ストーリーテリングに注力しなくてよかったことで、その分演出にエネルギーが傾いたってことだろう。かといってスコセッシ色が紛失したわけでもないし、本人の創作意欲の有り無しにかかわらず、純粋に職人技が評価されたんだと、素直に受け止めていいんだと思う。大体にして、スコセッシ作品を大衆ウケさせること自体が無茶なんだから、ここまでもってこれたら十分すぎるほど十分でしょ。

好みは分かれると思うが、暴力表現が実にすばらしく、特にマーク・ウォールバークの怪演は体表がピリピリするくらい観ていて力が入る。これは響かない人に響かない要素かもしれないが、私、沸点の低いイラチ人間なもので。
登場人物も多いけれど、すべてしっかりキャラが立っているし、それぞれの感情の動きもしっかり表現できていて良く伝わってくる。長めだが決してダラダラしておらず、全体的によく引き締まっている。ラストに苦言と呈する人が多いが、あのナタでスパっと刈ったような終わり方は個人的に好き。

私は、最も成功したリメイク作品だと思うのだが、世の中の正反対の評価が、自分世の中の乖離を感じさせ不安にさせる反面、人と違う快感も覚える。個人的には強くお薦め。

#ディカプリオだって良かったと感じたんだが、世界の映画賞はちょっと彼につれなさすぎじゃないか?

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image1032.png公開年:2007年 
公開国:日本
時 間:112分
監 督:吉田大八
出 演:佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏、山本浩司 他
受 賞:【2007年/第50回ブルーリボン賞】助演女優賞(永作博美)
 【2007年/第17回日本映画プロフェッショナル大賞】新人監督賞(吉田大八)、ベスト10(第8位)
コピー:「あたしは特別。絶対に人とは違う。」「やっぱお姉ちゃんは、最高に面白いよ。」


携帯の電波も届かない北陸の山間部の小さな村に、両親の訃報を受け、和合家の長女・澄伽が帰郷する。彼女は4年前に女優を目指して上京したが、まったく芽が出ずに今に至る。元々演技の才能などまったくないのだが、昔、妹の清深が自分を題材にしたマンガを投稿して騒動になったせいで、今でも演技に集中できないのが原因だと、逆恨みし続けている。清深はそんな姉の帰郷に怯えていたが、ひそかにある考えを巡らせていた…というストーリー。

『クヒオ大佐』でかなりげんなりさせられたので、この監督の作品を観るのは止めようと思ったのだが、観始めてしまった以上、しょうがない。最後まで付き合うことに。

冒頭から半ばくらいまで、5分先の予測が容易につく演出で相当イライラが募ったのだが、永作博美の演技でなんとなく救われている感じ。いやいや、元は舞台劇だそうだが、ストーリー自体はなかなかおもしろいのだよ。これを舞台で観たらさぞ愉しめただろうなと思う。

佐藤江梨子の演技についてはウマいとかハマっているとか、そういう次元ではなくて、ポンコツ女優って役柄なんだから、それこそヘタクソな演技をしてるほうがマッチするわけで、評価の埒外にいるので言及しない。簡単にいってしまうとどうでもいい。それよりも、永作博美と一緒に本作をがっちり支えなければいけない永瀬正敏が、ピリっとしないのがなんともいただけない。永作博美に負けないように演技のバリエーションを発揮してほしい所なのだが、競艇のCMとたいして変わらない演技で…。決してつまらない役じゃないんだから、実にもったいない。

しかし、永作博美の演技に文句はないものの、演出というかキャラ設定がいまいちピンとこない。あの気色悪い人形の件はどういう意図なのだろう。あのキャラ付けは必要なのだろうか。申し訳ないがさっぱり理解できなかった。
また、ラストあたりに、佐藤江梨子がビデオを見るのだが、あの流れでなんでビデオを見ようと思い立つのだろう。理解できない。さらに、あのラストのバスのシーン。はたして、原作も、最後はあんな感じなんだろか。あの取ってつけたような和解したんだかなんだかよくわからない展開。私には蛇足に見えるし、映画の良さを打ち消しかねない危うい演出に見えるのだが…。バスに乗る前までで終わっていんじゃないのかねえ。バイト先もすぐに読めちゃったしなぁ…。読めた上での何かが欲しいんだけど(求めすぎか…)。前半のモタモタと最後の蛇足をとっぱらって90分にまとめたら、ものすごくおもしろくなる気がするんだけど、どう思う?

観ないと損っていうことはないけど、根本的なテーマというか着眼点には、ものすごく光るものを感じる作品。とりあえず、舞台をそのまま録画したものを見てみたいんだけど、そんなものないんだろうなぁ。あ、本作の監督の仕事については、佐藤江梨子と同様で良いとか悪いとかそういう評価の埒外にいると思う。どうでもいい。

#『クヒオ大佐』で、悪印象ができちゃったからなぁ…。

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image0110.Png公開年:2004年 
公開国:スペイン
時 間:125分
監 督:アレハンドロ・アメナバール
出 演:バビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ローラ・ドゥエニャス、クララ・セグラ、マベル・リベラ 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】外国語映画賞
【2004年/第61回ヴェネチア国際映画祭】男優賞(ハビエル・バルデム)、審査員特別賞(アレハンドロ・アメナーバル)
【2004年/第62回ゴールデン・グローブ】外国語映画賞
【2004年/第24回インディペンデント・スピリット賞】外国語映画賞
【2004年/第17回ヨーロッパ映画賞】監督賞(アレハンドロ・アメナーバル)、男優賞(ハビエル・バルデム)
【2004年/第10回放送映画批評家協会賞】外国語映画賞
【2005年/第19回ゴヤ賞】作品賞、監督賞(アレハンドロ・アメナーバル)、脚本賞(アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル)、主演男優賞(ハビエル・バルデム)、主演女優賞(ロラ・ドゥエニャス)、助演男優賞(セルソ・ブガーリョ)、助演女優賞(マベル・リベラ)
コピー:約束しよう。自由になった魂で、きっとあなたを抱きしめる。

スペインのラ・コルーニャの海で育ったラモンは25歳の時、引き潮の海へ飛び込んだ時に海底で頭部を強打し、首から下が完全に麻痺。以来、寝たきりとなり家族の介護の下で生きている。彼は、部屋の窓から外を眺め、想像の世界に身を投じ、詩を書く生活を20年続けたが、ついに自ら命を断つことを決意する。しかし自ら死ぬこともできないため、法的に安楽死することを求め、訴えを起こすことにしたのだが…というストーリー。

華々しい受賞歴故に常々観たいと思ってはいたものの、とにかく重い重いテーマのため、手が出なかった作品。やはり、実際に観ても重かった。

しかし、ただ重いだけでなく、15分おきくらいに観続けたくなるような巧みな演出が多数出てくる。子供が「あの人うごけるよ!」と冗談を真に受ける⇒徐々に動き始め立ち上がるシーン挿入⇒え!そういう話なの?!⇒空想だった。ってこう書くと夢オチみたいじゃん!って感じるかもしれないが、本編内の演出は実に巧みで、「おお!」と引きこまれる。
ラモンの存在を知って、彼を訪ねてきた子持ちの女に対して、「私を見て優越感に浸っている」と言い放つところなんか、痛快とすら思える。神父の件も、世の中で最も害悪なものは、“もっともらしい”だけのことをいう人であると言わんばかりで、そういう視点はとても好みである。この重いテーマを扱うに十分な力量の監督であることがよくわかる。

以下、ネタバレ。

とは言え、ちょっと引っかかる部分が無いわけではない。自分では死ぬこともできないし、誰かに頼めばその人が幇助したことになるので、どうか合法的に死なせてくれと願い、提訴するのはわからないでもない。でもそこまで考えるなら、誰の手も汚さずに死ぬ方法に落着して欲しかったのだが、結局は手を借りた。最後のビデオで“幇助ではない”といっていたが、自分の言うことを聞いてくれた人を見つけただけだと私は思うし、信念を貫いたようで貫いていない気がして、私の好きな展流れではなかった。
また、弁護士も似たような立場になるという展開も、ちょっと都合が良すぎるように感じたし、それ以上に弁護士の夫が不憫でならなかった。何か他人のことを慮れる人ばかりが損をしているような気もしてきて、ちょっと後味が悪いし。この路線は良くないとは言わないが、もう少し別の展開が観たかった気もする。

ただ、“人間”っていうのは、いくらエゴを振りかざしても、結局、自分以外の誰かの為にしか生きられないんだな…、そんなことに気づかせてくれた素敵な作品であることには変わらない。本当に、最後に一ひねりさえあれば、文句なしの名作と太鼓判を押したと思う。考えさせられる作品だけど、強くお薦めはしない。このくらいの評価で勘弁して…と、何故か謝ってしまいたくなる作品(変な感じ)。

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image1503.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:113分
監 督:吉田大八
出 演:堺雅人、松雪泰子、満島ひかり、中村優子、新井浩文、児嶋一哉、安藤サクラ、内野聖陽、品川徹、大河内浩、石川真希、古舘寛治、近藤智行、安藤聖、玉置孝匡、俵木藤汰 他
コピー:嘘のない恋愛なんて、退屈でしょう?
実在した結婚サギ師。滑稽だけど、なぜか切ない。


父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ、現在は米軍特殊部隊ジェットパイロット、36歳のアメリカ人ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。しかし、その正体は、微妙な変装にもかかわらず、ウソの経歴で女性たちを次々騙しては金を貢がせる結婚詐欺師。弁当屋の女社長しのぶには結婚話を信じさせ、一方、博物館学芸員の春にも興味を示す。さらに、銀座のホステス未知子にも巧みに近づくクヒオ大佐だったが…というストーリー。

日本の犯罪史の中で、血なまぐさい話もなく、普通に考えたらウマくいくわけないだろ?ってレベルで、ここまで特異に輝く人物はいないだろう。数々のドキュメンタリー系バラエティ番組で紹介され、その度に、多くの人の首を傾げさせている。スゴク興味をもっていた人物である。
#まあ、そこまでいう割には劇場にはいかなかったんだけどね。

若干、年齢の設定は異なるものの、騙しのテクニックは伝えられている通りのもので、事件をよく研究していると思う(そのくらいあたりまえか)。
(誤解を恐れず言えば)「女性の欲するものを提供しているだけ」その点を突き詰めていくストーリーは、おもしろいに違いない。松雪泰子演じる弁当やの女社長との絡みや、博物館学芸員の春の心の隙間に入っていく様子は実に痛快で、このまま女から女へ捕まることなくスリ抜けていく様が展開されるなら、さぞや楽しい映画だろうと、ものすごく期待した。

ところがどっこい、弁当屋のダメ弟が登場し恐喝し始めたら、とたんにつまらなくなる。だって、もう後は、これからどうやって捕まるのかしかないのだから。それって予測していた展開とはまるで真逆。中盤以降は追い詰められていく展開だけなんて、つまらないこと極まりない。そこをめげずに、別の街の女を渡り歩きでもするのかと思いきや、結局その辺の女の間をちょろちょろするだけ。

挙句の果てには、北海道の子供時代に虐待されていたから…なんて、多重人格者が形成される過程じゃあるまいし、そんな同情なんだか言い訳なんだかわからないような説明なんか、なんの面白みもない。実際、多重人格でもないし、自分でも本当かウソか判然としなくなっていたなんてことはなく、はっきり犯意は自覚している演出をしているじゃないか。なんだこの脚本。なんだこの監督。期待していただけに、バカじゃなかろうかと怒りたい。
せっかくのすてきな題材を台無しにした。フォアグラでチャーハン作られたみたいながっかり具合。おや?いま並行して観始めた『「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』もこの監督作品だよ。観るの止めようかな。アホらしくなってきた。

メインの堺雅人、松雪泰子の演技はなかなかよろしかったけど、満島ひかりをキャスティングしているってことは、もっとセクシー描写に倒すのかと思ったけどそうでもなかったし、彼女だけじゃなく全体のキャスティングが何か中途半端。

とにかく、ピリっとしない作品。残念だけどお薦めしない。だれか“クヒオ大佐”作り直して頂戴。

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image1576.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ
時 間:162分
監 督:ジェームズ・キャメロン
出 演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガーニー・ウィーヴァー、スティーヴン・ラング、ミシェル・ロドリゲス、ジョヴァンニ・リビシ、ジョエル・デヴィッド・ムーア、CCH・パウンダー、ウェス・ステューディ、ラズ・アロンソ 他
受 賞:【2009年/第82回アカデミー賞】撮影賞(マウロ・フィオーレ)、美術賞(リック・カーター、ロバート・ストロンバーグ、Kim Sinclair)、視覚効果賞(ジョー・レッテリ、Stephen Rosenbaum、Richard Baneham、アンディー・ジョーンズ)
【2009年/第67回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、監督賞(ジェームズ・キャメロン)
【2009年/第63回英国アカデミー賞】プロダクションデザイン賞(リック・カーター、ロバート・ストロンバーグ、Kim Sinclair)、特殊視覚効果賞(Richard Baneham、ジョー・レッテリ、Stephen Rosenbaum、Andrew R. Jones)
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】撮影賞(マウロ・フィオーレ)、編集賞(スティーヴン・リフキン、ジョン・ルフーア、ジェームズ・キャメロン)、美術賞(リック・カーター、ロバート・ストロンバーグ)、視覚効果賞、音響賞、アクション映画賞
コピー:観るのではない。そこにいるのだ。
もうひとつの体。もうひとつの運命。

西暦2154年。人類は遥か宇宙の彼方にあるパンドラという星で希少な鉱物を採取していた。パンドラは未開の美しい星で、獰猛な野生動物とナヴィという人間に似たの種族が暮らしており、その大気を人間は呼吸できないためマスクを必要とした。また、人間とナヴィの遺伝子を組み合わせ作りあげた肉体“アバター”が用いられ、人間の意識を転移させコミュニケーションを図ろうと試みたが、芳しい成果を挙げられずにいた。ある日、戦争により下半身不随となった元海兵隊員ジェイクが、アバター・プロジェクトにスカウトされ、ナヴィたちとの交渉役を命じられる。アバターを介して久々に歩く喜びを味わうジェイクは、パンドラの森へと足を踏み入れ、ナヴィ族の女性ネイティリと出会い、彼らの生活に深く関わっていくのだが…というストーリー。

いわずと知れた大ヒット作。いまごろ鑑賞ですが、何か(笑)。もちろんDVDレンタルなので3Dにあらず。

“驚きの映像”的な評価が多かったのでハードルが上がりきってしまったせいか、どうも不満が。人間のシーンとパンドラの森のシーンの質感の差が甚だしい。ディズニーシーのリトルマーメイドのところ(屋内)から、いきなり舞浜駅に瞬間移動させられたくらいの差を感じる。とても同じ星の上の空間とは思えない。場面が切り替わると、アニメと実写映像が切り替わったくらいの感覚を覚える。
それは、光源の違いで、恒星や電灯からの光があたっている人間と、蛍光物質によってあたり一面の淡い光に包まれているパンドラの違いだよ…といわれそうだが、果たしてそれだけだろうか。本作では、人間の表情をアニメに反映させる素晴らしい技術を採用しており、それは文句のつけようがないが、CGとして基本的なテクスチャ処理はイマイチな気がする。ラストの戦闘シーンでも、森の中の木漏れ日という特殊な状況で同じ画面に収めていたし、全体的に同じ画に人間とナヴィがいたシーンがものすごく少なくて、どうもゴマカされた気がする。
…とはいえ、他の映画から比べれば、素晴らしいデキなのはいうまでもなく、デキが良すぎるがための贅沢な文句なのだが。

話は変わるが、ヒットの法則というか構図というものが見えてきたような気がする。


大きな愛                      小さな愛
(人間愛、慈愛、家族愛など)           (恋愛)
   ← この2つを流麗な展開で判然とさせず →
     ぼやかして大きな一つの“愛”と
     感じさせる

                  ↑

    ①イベントが発生し抵抗勢力が消滅しカタルシスを得る
    ②そして“愛”が残り、感動が生まれる

                  ↓

    理不尽な差別により“愛”を毀損する抵抗勢力
    (民族差別・階級差別・経済差別・身体的差別)
    & 判りやすい憎たらしさの悪役キャラが複数

まったくもって『タイタニック』にも当てはまる構図。途中でこれに気づいてしまったら、(勝手に気づいたくせに)なんか興醒めしてしまった部分も無きにしも非ず。まあ、どうあれ、ここまでやりきったら、娯楽スペクタクルとして誰も文句はいわないでしょう。SFなんかに興味がない人にもお薦めできる。というか、SFにして生臭さを消しているだけで、結局はポカホンタスみたいな原住民虐殺話だからねぇ。

でも、2、3と続編は決まっているみたいだけど、多分、劇場に足は運ばないと思う。そのレベル。
#こんなのを3Dで全編見せられたら、眼は相当疲れたんじゃないかね。

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プロフィール
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クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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