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公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:バルタザール・コルマウクル
出 演:マーク・ウォールバーグ、ケイト・ベッキンセイル、ジョヴァンニ・リビシ、ベン・フォスター、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、J・K・シモンズ、ルーカス・ハース、ディエゴ・ルナ、デヴィッド・オハラ、ウィリアム・ラッキング、オラフル・ダッリ・オラフソン、ロバート・ウォールバーグ、ジャクリーヌ・フレミング、コナー・ヒル、ブライス・マクダニエル 他
コピー:全員、コイツにだまされる
愛する者を守る為、この男《究極のトリック》を密輸する。



“世界一の運び屋”と呼ばれるほど完璧な仕事で名を馳せたクリス。現在は愛する妻と息子達との生活のため、裏社会とは縁を切り、警報装置の設置業者を営んでいる。ところが、コカインの運びやをこっそりやっていた妻の弟アンディが、税関から逃れるためにコカインを海に投棄してしまい、その責任を負わされて組織から命を狙われることになってしまった。クリスは組織のボス・セバスチャンと話をつけにいくが、取り付く島もない。それどころか家族の命までが危険に冒される事態に。コカインの対価を返済するためには、再び裏の仕事をするしかないと覚悟を決めたクリスは、かつての仲間に声を掛け、パナマからの偽札密輸を計画するのだった…というストーリー。

本作は、監督のバルタザール・コルマウクルがアイスランドで撮った自作のセリフリメイクであるとのこと。確かにヨーロッパ臭は漂っている。
元を知らないので、比べようもないのだが、こなれている感じは確かに感じる。結構なテンポでストーリーが展開していくのだが、判りやすく且つスピード感が衰えることがない。

『テッド』みたいなコメディもやれば、時間を開けずに本作のようなアクションもこなすマーク・ウォールバーグ。もちろん『ブギーナイツ』みたいなドエロ作品も躊躇なくこなすのに、作品を観ている最中は、別ジャンルを演じている彼のことが頭をよぎることはない。このメリハリと演じわけが彼のスゴイところ。
同じようにエロ作品とシリアス作品を行ったり来たりしているジュリアン・ムーアの場合は、どうしても頭をよぎる。「ああ、こっちの作品はエロ要素がない方なんだな…」みたいに。
一方、ケイト・ベッキンセイルは、本当に彼女じゃなきゃこの役ダメか?っていうくらい勿体無い感じ。いいようにチンピラに脅されて、殺されかけるだけの、いいとこなしの役。

さすが超一流の運び屋、数々のピンチをギリギリのところですり抜けていく様子は実に痛快なのだが、それを超えるように次々と難関が押し寄せる。そりゃそうだ、ハメられてるんだもん。特に、パナマ以降はカオス状態になるが、その丁々発止と追い詰められ方が実に愉しい。『インファナル・アフェア』のような青臭さもある、いい雰囲気だ。敵役の小者臭が、逆にリアルさというか臨場感に繋がっているのもウマいと思う。

バッドエンドと、ハッピーエンドの振幅も、最近あまり観られない感じで好感が持てる。あまり評価されていないけれど、観て損はない作品だと思う。

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公開年:1978年
公開国:アメリカ
時 間:116分
監 督:コリン・ヒギンズ
出 演:ゴールディ・ホーン、チェヴィー・チェイス、ダドリー・ムーア、バージェス・メレディス、レイチェル・ロバーツ、ブライアン・デネヒー 他
ノミネート:【1978年/第51回アカデミー賞】歌曲賞(作曲:チャールズ・フォックス、作詞: ノーマン・ギンベル『愛に生きる二人』 Ready to Take a Chance Again)
コピー:結末はどんどん人にしゃべって下さい!?
右手にピストル!左手にアンブレラ!奇妙なコンビの全く新しい犯罪(サスペンス)コメディの大傑作!!


世界親善旅行中のローマ法皇がサンフランシスコを訪れることが決まったその日、もてなし役となるサンフランシスコの大司教が何者かに暗殺されてしまう。その頃、離婚したばかりのグローリアが帰宅する途中、車のトラブルで困っている男性がおり、街まで乗せてあげることに。スコットと名乗ったその男性は、タバコを吸いすぎてしまうからとグローリアにタバコの箱を預ける。街に付くと、スコットは用事をたした後、映画館で会わないかと持ちかける。まんざらでもなかったグローリアがはOKし、二人は一旦別れる。先に映画館に入っていたグリーリアのところにやってきたスコットは、彼女に「殺人がある。小人に気をつけろ」という謎の言葉を残し死んでしまう。驚いたグローリアは映画館の支配人を呼びに行くが、戻ってみると遺体が消えている。それ以降、グローリアの近辺に、白皮症の男が出没するようになり…というストーリー。

冒頭部分のあらすじを書き出してみるとなかなかシリアスな内容に見えちゃうけど、実際は、マジなんだかコメディなんだかよくわからない不思議なノリではじまる作品。後半に進むにつれコメディ寄りになっていくんだけど、結局、ノリを掴めずじまいで終わってしまったのかもしれない。決してつまらなかったわけではない。ある意味、高度すぎて私が対応しきれなかっただけかもしれない。

本当にどういうジャンルの映画なのか…すら、最後まで掴ませないってのはスゴいのでは? 結構ガッツリなサスペンス展開なのに、グリーリアを信じてくれるのが、いつ男性に襲われるかとたくさんの防犯グッズを携帯している妄想女友達だけだったりとか、助けを求めた男性がド変態だったりとか。
冒頭に登場するおとぼけ男性は、間違いなくメインキャストのはずなのに、中盤までしばらくお留守だとか。
偉い神父らしき人が殺されるくだりと、タバコの箱との繋がりはなかなか見えないとか、謎解き要素もしっかりしていたし、執拗に追われ、誘拐され、脱出するスリルも満載。かといって、蛇のくだりのスカしっぷりとか、「なんやねん!」って言いたくなるくだらなさ。こんななかなかバラエティに富んだ内容なのに、各要素がバランスよくミックスされていて、侮れない作品。

極めつけは、最後の日本モチーフの謎オペラ。実在するコミックオペラ『ミカド』。これが、トンデモ日本描写に対する不快さを吹き飛ばすくらいのおもしろさ。断片だけなのにおもしろい。その末、最後は何かラブコメみたくなってるし。もう、なにがなんだか…といいながら観客の顔をほころんでしまうという内容。

隠れた良作だな。

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公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:ゲイリー・フレダー
出 演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズ マーリー、ブルース・マッギル、ジェレミー・ピヴェン、ニック・サーシー、スタンリー・アンダーソン、クリフ・カーティス、ジェニファー・ビールス、ネストール・セラノ、リーランド・オーサー、ジョアンナ・ゴーイング、ビル・ナン、ディラン・マクダーモット、マーガリート・モロー、ノーラ・ダン、ラスティ・シュウィマー、セリア・ウェストン、ルイス・ガスマン、コリー・イングリッシュ、ジェイソン・デイヴィス 他
コピー:この審判(トライアル)は――プライドの殴り合い。


ニューオーリンズの証券会社にリストラされた元社員が乱入し、銃を乱射して11人を殺害する事件が発生する。犯人は現場で自殺する。この事件で夫を失った女性セレステは、地元のベテラン弁護士ローアを雇って、犯人が使用した銃の製造会社ヴィックスバーグを相手取って民事訴訟を起こす。2年後、全米が注目する中、公判が開始される。敗訴すれば、被告のヴィックスバーグ社が巨額の賠償金を支払わねばならないのはもちろん、他の銃器メーカーも同様の訴訟を起こされる可能性が高いため共闘。資金を出し合って、有名な陪審コンサルタントであるフィッチを雇い入れる。フィッチはニューオーリンズに乗り込み、陪審員候補を尾行、張り込み、盗聴とあらゆる身辺調査を行い、自分達に有利な陪審員を探し始める。陪審員候補の中にニック・イースターという名のゲームソフト店に勤務する男がいた。シューティングゲームに夢中な彼の様子を見たフィッチのスタッフ達は、銃メーカーに好意的な判決をする人物と判断し、彼を陪審員団に入れようと進言するのだが、フィッチは長年の勘から彼に危険に臭いを感じ取り…というストーリー。

『刑事ジョン・ブック/目撃者』がアメリカにおけるアーミッシュの存在を教えてくれたように、本作は訴訟大国アメリカのおける“陪審員コンサルタント”という存在というか概念を教えてくれる。ただ、本当にここまでやるコンサルタントが存在するか否かは知らない。

何かの目的のために陪審員団に加わろうとするイースター。そして、その彼女と思しきレイチェル・ワイズ演じる謎の女性。レイチェル・ワイズはあまり好きな役者ではないが、本作の役柄はマッチしていたと思う。

手段を選ばない、マフィア並みの陪審員コンサルタントの手口に、個人の力で立ち向かっていく二人の様子は、なかなかスリルがあった。フィッチ側に都合のよさそうな陪審員にターゲットを絞り、巧みに脱落させていく手法はなかなか面白く、フィッチがギリギリと焦る様子は痛快。
そして、二人の真の目的は何なのか?終盤まで読ませなかったのは、なかなかのシナリオだった。

しかし、『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』と同じ年の作品というのは不幸だったかもしれない。
終盤、刑の執行と事実に判明が時間の勝負になるという『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』の展開と、法廷の判決(というか送金)と事実の判明が時間の勝負になるという本作の展開が、酷似してしまうのだが、シリアスさにおいても、話の深みにおいても、すべて一段劣ってしまうという悲しいことに。

また、実際のアメリカ社会では、こんな製造物責任を負わせるような判決が出ているわけではもちろんないという点が、この作品を薄っぺらなものにしているように思える。…というか、そういう願望はわかるとしても、作品で溜飲を下げているように見えなくもないので、みじめさが漂うというか、醒めるというか…。

ちょっと貶しぎみになってしまったが、本当に悪くないシナリオなのにね。名作一歩手前の作品。お薦めしたい。

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公開年:1997年
公開国:アメリカ
時 間:121分
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、エド・ハリス、ローラ・リニー、スコット・グレン、デニス・ヘイスバート、ジュディ・デイヴィス、E・G・マーシャル、メロラ・ハーディン、リチャード・ジェンキンス、ケネス・ウェルシュ、ペニー・ジョンソン、マーク・マーゴリス、エレイン・ケイガン、アリソン・イーストウッド 他




ベテランの泥棒ルーサー・ホイットニーは、リッチモンド大統領の最大の後見人で、政界の大物サリヴァンの邸宅に忍び込む。一家は旅行中で、サリバン夫人の寝室にある金庫の中身に狙いを定めている。ところが、何故かそこに、夫人が大統領を連れて帰宅してくる。慌てて金庫室に隠れるルーサー。やがて二人は口論を始め、夫人がナイフで大統領に怪我を負わせたところで、大統領の大声に反応して入ってきたシークレット・サービスが夫人を射殺してしまう。大統領補佐官のグロリアは、シークレット・サービスに証拠隠滅を指示。しかし、肝心の凶器であるナイフを処分し忘れてしまう。現場から逃走するルーサーはその証拠のナイフを持ち去る。それに気付いたシークレット・サービスを追跡をかわし、なんとか逃げ切ったルーサーだったが、さすがに大統領から追われては逃げきれないと考え、国外逃亡を計画するのだった。一方、サリバン邸強盗殺人事件の担当となったセス・フランク刑事は、泥棒と殺人犯の行動に矛盾を覚え、捜査に行き詰ってしまう。盗みの手口からルーサーの存在が浮かびあがり接触を試みるフランク刑事。この男が何かを知っていると直感はするものの決め手に欠ける。刑事の手が迫ってきたフランクは、逃亡のため空港に向かうが、TVに映ったリッチモンド大統領の白々しい悲しみの会見に、強い怒りを覚え、大統領の犯罪を白日の下に晒してやろうと決心する…というストーリー。

アメリカ大統領が真犯人というのが、リアリティを著しく削いでいる。大統領じゃなく、次期大統領候補も噂される州知事くらいにしておけばよかったのに…と思うのだが、改めてあらすじを書くとわかるのだが、実はかなりマンガな内容。それなのに、クリント・イーストウッド主演なものだから、シリアスに見えてしまっているのではなかろうか。本当はもっとシニカルで軽妙な作品ししたかったのかもしれない。案外これが、本作最大の難点かもしれない。

泥棒ルーサーのキャラクターがかなり特殊。元軍人でやたらとプライドが高く、それに釣り合うだけの泥棒テクニックは持っている(というか超人的)。じゃあ義賊的な何かかと思いきや、それで生計を立てている普通の泥棒家業だったりする。そんな泥棒でもこいつは許せねえ!と思わせるだけの悪役大統領っていう設定なんだろうが、やっぱりコソ泥はコソ泥で、娘への不器用な愛…とか表現されても、いまいち共感はしかねる
一応、殺しはやらないという泥棒貴族を気取っており、そのプライドが傷つけられたという話の流れ。でも、ちょっと説得力が薄い。“こいつ許せん!”だけではなく、どうしても大統領の悪事を晴らさねばならないような、追い詰められる展開が欲しかったところ。フランク刑事が、ルーサーを犯人と決め込んで、娘の弁護士としての将来を台無しにしてしまいそうな勢いだ…とか、そんな流れでもよかったのに。

フランク刑事を中途半端な善人に描写しておきながら、かといってその捜査から真犯人が炙り出されるという展開もなく、結局、道化役で終わったのが勿体ない。
#エド・ハリスが若い刑事だと?聞き間違えかな?
その他にも、途中で出てきたヒットマンの役割が中途半端だったり、大統領の最期がそんな簡単な扱いで済むわけがなかろう…とか、色々しっくりこなかった。

それでも、飽きずに愉しめたのだから、まあまあのデキってこと。

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公開年:1985年
公開国:アメリカ
時 間:113分
監 督:ピーター・ウィアー
出 演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、ルーカス・ハース、ダニー・グローヴァー、ジョセフ・ソマー、アレクサンダー・ゴドノフ、ジャン・ルーブス、パティ・ルポーン、ヴィゴ・モーテンセン 他
受 賞:【1985年/第58回アカデミー賞】脚本賞(ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス)、編集賞(Thom Noble)
【1985年/第39回英国アカデミー賞】作曲賞(モーリス・ジャール)
【1985年/第28回ブルーリボン賞】外国作品賞


ペンシルヴァニア州の郊外に、文明社会から距離を置き、17世紀の生活様式で暮らしている“アーミッシュ”と呼ばれる宗派の人々が住む村がある。夫を亡くし未亡人となったレイチェルは、6歳の息子サミュエルと父親のイーライと暮らしていたが、死後数ヶ月経ったときに、サミュエルと一緒に妹が住むボルチモアへ旅することに。途中で立ちよったフィラデルフィア駅でトイレにいったサミュエルは、そこで殺人事件を目撃してしまう。フィラデルフィア警察のジョン・ブック警部は、唯一の目撃者であるサミュエルから事情聴取を行うためにしばらく母子に留まってもらうことに。署でサミュエルに面通しをしてもらうが、一向に犯人らしき人物が見つからない。そんな中、麻薬事件で表彰された麻薬課長マクフィーの新聞記事を見かけたサミュエルが、この男が犯人だと告げるのだった。さっそくそのことを警察副部長のシェイファーに報告するブックは、押収した大量の麻薬が消えた事件にマクフィーが関わっているのではないか?と疑いをかける。すると、自宅にかえったブックは、マクフィーに襲撃され深手を負ってしまう。シェイファーもマクフィーとグルであることを悟ったブックは、レイチェルとサミュエルをより安全なところに退避させるため、アーミッシュの村に連れて帰るのだが、傷が悪化し昏倒してしてしまい…というストーリー。

アーミッシュの存在を直球で扱った珍しい作品。社会の外に位置する一派で、文化的にそぐわない集団という意味では、ヨーロッパでいうとジプシー、日本でいうと山窩などに類するのかもしれない。しかし、あくまでキリスト教的な戒律を頑なに遵守しているというだけで、偏狭ではあるものの、別の種族か?と思わせるほどの差を感じるほどではないのかもしれない。ただ、移民元の言語から派生したアーミッシュ語が恒常的に使用されるほど特殊なのは事実。作中でも描写されているが、観光客がものめずらしさで訪れるのも事実。

刑事サスペンスとしては極めて凡庸なプロットだとは思うが、そこにアーミッシュという要素が加わることで、ミーツ・ザ・異邦人的な味わいが加味される。もちろん、暴力が常の刑事と、暴力反対のアーミッシュという、両極端な価値観の衝突が描かれるのもポイント。

アーミッシュ村に滞在するブックは、大工仕事をこなし、村人とのふれあいや、軋轢を重ねていき、本来の“自分”を見つめ直すという展開があるのだが、何で彼が大工仕事が得意なのか?とか、牧歌的なこの生き方も悪くないな…としみじみ感じてしまうようなバックボーンが説明不足なのが、いささか残念だ。
#元々、彼が実際に大工だったことを笑いにしたかったわけじゃないよね?

さらに、ケリー・マクギリス演じる未亡人との恋の要素が加わる。『マディソン郡の橋』みたいな雰囲気ではあるが、未亡人と独身男なので両者的にはやましいことは何もない。ただし、アーミッシュの世界において外界の人間とそういう仲になることは村八分的な扱いになる。ある意味ロミオとジュリエット的な流れになるのが興味深いし、アーミッシュゆえの爆発的な感情の表出はなくて、未亡人なのに女子高生の恋みたいな感じなるのもおもしろい。

(ちょっとネタバレ)
もう、親ともうまくいってないんだし、他の村人からも変な噂を立てられてるんだし、そのまま村を出ちゃえばいんじゃね?なんて思うのだが、そうしなかったのが、いい味を生んでいると思う。

さて、話の主筋である、悪徳刑事たちとのバトルは、ダニー・グローヴァーらクソ刑事が、じわじわとアーミッシュ村包囲網を狭めてくるという展開になるのだが、普通に攻めてくるだけっちゃあだけ。おもしろくないわけじゃないのだが、淡白。痛快さには欠ける。やはり本作は恋愛映画なのかもしれないな。

ハリソン・フォードの野暮ったさが、最大に生かされている作品。佳作だと思う。

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公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:115分
監 督:ダニエル・エスピノーサ
出 演:デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ヴェラ・ファーミガ、ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード、ルーベン・ブラデス、ノラ・アルネゼデール、ロバート・パトリック、リーアム・カニンガム、ジョエル・キナマン、ファレス・ファレス 他
コピー:お前は悪魔と逃げている




南アフリカにあるCIAの極秘施設、通称“セーフハウス(隠れ家の意)”。新米職員のマットはその管理を任されていたが、かれこれ1年ほど訪れるものはなく、朝から晩までただそこで過ごすだけだった。異動を願うも無碍にあしらわれるだけ。その頃、南アフリカの米国領事館に、一人の男が出頭してくる。その男はかつてCIAで活躍した伝説のエージェントだったが、敵国に機密情報を流したとして国際指名手配を受けている世界的犯罪者トビン・フロスト。CIAが最も恐れる裏切り者だ。トビン・フロストはセーフハウスに連れてこられる。初めての来訪者、それもトビン・フロストがやって来たあって、動揺するマットだったが、そこで繰り広げられる違法な取調べに眉をひそめる。ところが、取調べの最中に、鉄壁の防御のはずのセーフハウスが武装集団に襲撃され、壊滅状態に陥ってしまう。マットはフロストを連れて脱出し、正体不明の敵の追跡を何とかかわしていくが、脱出の隙を窺うフロストはマットを精神的に追い詰めていき…というストーリー。

CIAの内通者がバレバレ。まさかな…と思うくらいにバレバレ。頼むからミスリードであってくれ…と思うのだが、その予測はハズレではないのは残念。

南アフリカという舞台がなかなか新鮮に映ったし、カーアクションも格闘アクションもなかなかの臨場感。デンゼル・ワシントン演じるフロストは大悪人として登場するが、実は正義のために行動しているのでは?というお約束パターンに見えないのも良い(まぁ、最後にはね…)。

大味のシナリオのように見えて、別のセーフハウスの職員のぼやきを聞いて、自分の変化を感じるなんていう細かい演出もある。
マットとフロストは、CIA職員と犯罪者という対立関係なのだが、若手職員とベテラン職員という関係でもある。同じデンゼル・ワシントン出演作品である『トレーニング デイ』を彷彿とさせたりもする。それが、時にはマットを利用しようという詭弁だったり、先輩としての本心だったりと、目まぐるしく変化していくのだが、フロストの真の姿を終盤まで観客に掴ませない演出に繋がっていて、実に巧みだったと思う。

(以下、完全にネタバレ)
勧善懲悪で正しいオチではあるんだけど、おもしろくないのが難点か。
すっとぼけで、フロストが持っていた資料をマスコミに流すマット。そこは、自分が送信したことが巧みにバレないような仕掛けとかを施していたらおもしろかった。CIAなんだからどの携帯電話から、どの場所で発進されたかとかわかちゃうなじゃないか。必ずしも汚職していた人が全員綺麗にパクられるとは限らないんだからさ。そういうディテールに周到な演習をみせてくれたらよかったと思う。

まあまあの快作。
#最後の彼女とのくだりは、結局どういう関係になったのかよくわからんかった。

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公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:98分
監 督:チャールズ・オリヴァー
出 演:ジェレミー・レナー、ミニー・ドライヴァー、ボビー・コールマン、アダム・ロドリゲス、デヴィッド・デンマン、グリフ・ファースト  他







貧しい家で育ったソール。父親は持病持ちで面倒をみなければいけない状態だったが、ギャンブルで作った借金に追わる日々だった。貸し倉庫屋に勤務していたが、借金の返済のために客が預けた物を無断で売却。それがばれてクビになってしまう。返済期限が迫っていたソールは、友人に借金を頼むが断られてしまい、切羽詰って自動車泥棒を働くが、持ち主に見つかって暴行を受けてしまう。一方、公立学校から多動性障害の息子ジェシーを特殊学級に入れるように宣告されてしまったアナは、私立学校に入れるために新たな仕事を探すことにした。学校教師の夫も、生活に疲れながらも、息子のために仕事を増やすことに。ジェシーを傍に置いて面倒をみながら、複数のアルバイトを掛け持ちしするアナ。ある日、アナとジェシーが立ち寄ったスーパーマーケットに強盗が入る。その強盗犯はソール。ソールはジェシーを人質に逃亡するのだが…というストーリー。

さらっとあらすじを書いたつもりが、ほぼ全部書いてしまった感じだ。

ソールの状況と、アナの状況を交互に描く手法。半分を過ぎても、この二つが同じ時間軸なのかはっきりしない。もしかして、この多動性障害の子供が大きくなったのが、ジェレミー・レナー演じる男なのかな? なんて思ったりもした。
ソールのほうはとことんクソ人間。学もなければ、マジメに働く気もない。というか、満足に仕事が続けられないのは、なんらかの精神的な欠陥があるのでは? と感じたほど。だから、ジェシーとソールが同一人物か?なんて思ったわけだ。

アナのほうは、息子を特殊学級に入れるべきと言われ激昂。まあ、これは日本でもよくあること。自分の子供に目をかけてもらっていないと怒るわけだが、その多動性障害の子供一人をフォローするために、他の子供が学ぶ機会を奪っているということなど、一切想像することがない。教師を無能呼ばわりし、罵倒し、公立学校に子供預けるのをやめてしまう。そのくせ、子供への愛(というか密着度)は、人並み以上で、夫が疲れ果てているにも関わらず、バイトに子供の面倒に驀進する。

ソールとアナの共通点は、満足に公的なサービスを受けることができていない点。もしかして、そういうシンパシーから、何か話が繋がっていくのかな? 政府批判になるのかな? なんて予想したが、そうはならなかった。
まあ、冒頭から、ソールが収監されていて、それも死刑囚っぽい描写だったので、なにかとんでもないことをやらかすであろうことは明白。スーパーにて、アナとソールは初遭遇。それが大変なことに発展する。

(以下、ネタバレ)
最後まで観て、単に“修復的司法”という更生手法についての紹介ビデオだったことを知り、ガックリする。修復的手法とやら(被害者と加害者が面会すること)の成果があることがナレーションで滔々を語られるラストなのだ。
これは、修復的司法を題材した…とか、そんなレベルではない。広義の意味では映画かもしれないが、狭義の意味では違う。意見広告だ。だから、その宣伝のために、わざわざ多動性障害の子供を引っ張り出すのはいかがなものか、何か失礼な気持ちにすらなるほど。こんな目にあった人でも、この手法を使えば、最終的にはよい結果になるんですよ? といいたいのだろうか。

その手法には意味があるのかも知れないが、映画としてはつまらなかった。いや、宣伝なんだからお金を取っちゃだめだな。

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公開年:2011年
公開国:カナダ
時 間:86分
監 督:ランドール・コール
出 演:ニック・スタール、ミア・カーシュナー、デヴォン・サワ、アーロン・エイブラムス、シャーロット・サリヴァン、クリスタ・ブリッジス 他







トロントの閑静な住宅街アレッタ通り388番地。ここに暮らす若い夫婦ジェームズとエイミー。ある日、いつものように車で出勤しようとした2人は、カーオーディオに身に覚えのないCDがセットされていたことで口論に。翌朝、妻は置き手紙を残して姿を消してしまう。その後も家では不可解な出来事が続き、やがてジェームズは自分が正体不明の何者かの標的となってしまったことに気づく。しかし警察は取り合ってくれず、次第に精神的に追い込まれていくジェームズだったが…。

ジェームズ(ニック・スタール)と美しい妻エイミー(ミア・カーシュナー)の若い夫婦は、トロントの高級住宅街アレッタ通り338番地の一軒家で、幸せに暮らしていた。ある朝、ジェームズは仕事に向かうため車に乗り込み、CDをかけると、聴いたこともない音楽が流れ始める。ジェームズは妻のイタズラだと思いエイミーを問い詰めるが、彼女は否定する。言い争いになり、ケンカ別れしたままジェームズが深夜に帰宅すると、「頭を冷やしたい」という書き置きを残して、エイミーはいなくなっていた。ジェームズは彼女の携帯に電話をかけるがつながらず、姉のキャサリンや友人たちも、誰もエイミーの行方を知らなかった。その日から、ジェームズが1人で暮らす家で不可解なことが起こり始めた。なついていた飼い猫が突然うなり始めたり、窓ガラスが割られたり、何度も無言電話がかかってくるようになり……。ジェームズは警察に通報するが、証拠不十分で取り合ってもらえない。それでも一連の出来事は収まることはなく、ついにジェームズの精神状態は極限に達する。憔悴したジェームズが自宅に戻ると、パソコンの電源が入っており、その画面に拘束されたエイミーの姿が映っていた……。

じわじわと追い詰められる様子は、さすが『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリが製作総指揮をしているだけはあるな…と感じる。しかし、こういうビデオ画像をで本編を綴るという演出自体、新規性が薄い。さすがに霊の仕業ってこともないだろうから、なにかの陰謀か? 復讐か? と予想しながら眺め続ける。

たしかに主人公のジェームズはどんどん追い詰められていくのだが、どうも自分も同じサイドに立って追い詰められる感覚に浸ることができない。なぜなら、主人公のジェームズがクソ人間であることが判明してくことがわかるから。いや、はっきりとクソ人間だっていうならば、逆にジェームズの首がどんどん絞まっていく様を楽しむ方向で舵を切ればいいのだが、過去にひどいいじめをしていた…程度っていうのが微妙すぎて。
誘拐された妻も、微妙な性格というか、かなりイラっとさせるクソ女。その姉妹も頭ごなしに決め付けて話すクソ女。その夫も妻に同調するだけの無能。正直、観ている間、もうどうでもいいんだよなぁ…この人たち…って気分になる。
せめて、頭をガーンと打たれるようなオチを期待するわけだが…

(以下、完全にネタバレ注意)
結局、犯人が誰かは明かされない。そういう気持ちの悪い人(サイコキラーかな?)がいる…ということか。同様のことを今までも何度もやっている…という描写だったが、そういう設定にしたいなら、他の例も多かれ少なかれ描写しないと、しっくりこない。

犯人の正体がわからない…という点では『ソウ』なども同じ。どうやら、同僚の女性と深い仲だったことがある模様のジェームズ。その女の復讐か?と疑う様子もある。チラっとその女性がジェームズのパソコンを操作するシーンもあったので、犯人サイドか?とも思ったが。もし、シリーズ化されたなら、そういう依頼と犯人の性癖との利害が一致して…というオチもあり得る。
だけど、シリーズ化されるような、観客を惹き付ける力が本作のシナリオには無い。結局、犯人の正体が明かされることは永遠にないのかもしれない。

いや、なんだかんだ言って最後まで観たんだから、それなりに観所はあったんでしょ? と聞かれそうだが、そこまでの魅力は本作にはない。ここでやめたら、ブログを書くために別のを今から観るのが面倒くさいというネガティブな理由だけで最後まで観た。本当にそれだけ。

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公開年:1974年
公開国:アメリカ
時 間:103分
監 督:アラン・J・パクラ
出 演:ウォーレン・ベイティ、ウィリアム・ダニエルズ、ヒューム・クローニン、ステイシー・キーチ・Sr、ポーラ・プレンティス 他
受 賞:【1957年/第3回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭】批評家賞
コピー:要人暗殺が平然と行われている現代アメリカ! 秘密組織『パララックス』から黒い影が伸びたとき……目撃者は消され証拠は消えていく!



次期大統領候補と目されるキャロル上院議員が狙撃される。事故調査委員会は、狂信的愛国者の単独犯行と断定し、調査は終結する。それから3年。ロサンゼルスの地方紙の新聞記者ジョー・フラディの所に、元恋人のリー・カーターがやってくる。彼女はジャーナリストで、3年前のキャロル上院議員が暗殺の現場にいた人物。リーは、彼女と同様に現場にいた6人の人物が不慮の事故や不自然な病気で、相次いで死亡していることに恐怖を覚えていた。あまり良い別れ方をしなかったせいもあり、私も殺されるという彼女をジョーは一笑に付す。しかし数日後、リーは遺体となって発見される。死因は睡眠薬の飲みすぎということだったが、あまりにも不自然だったために、ジョーは独自に調査を開始する。彼女と同様に現場にいた判事が、とある町の谷川で溺死したことを知った彼は、その町を訪ねるのだったが…というストーリー。

水面下で進行する陰謀に立ち向かう男のお話。静かな緊迫感を漂わせた、渋い大人のサスペンスって感じ。

何やら闇の作戦を進めている会社の名前が“パララックス”なんだけど、タイトルの“パララックス・ビュー”っていうのは複数の視点、つまり見方によって見えてくるものが違う…ていう意味なんだろうね。公式発表における犯行の動機は別にして、外面的な事実は、新聞で伝えられている通りで、ウソがあるわけではない。でも、散発的な事件の点を繋げると、何か別なモノが見えてくる…ということか。

別に直近で死んだ元彼女に、強い思いがあったわけではなくて、純粋に記者魂に火がついたって感じ。私怨で動いているわけじゃないのが良い感じ。
正義感と強い好奇心は理解できるが、さすがに一人で(おそらく)巨大であろう組織に立ち向かっていく恐ろしさは半端ない。この手の作品の主人公が、はみだし者なのはお約束。守るべきものがない強さが如何なく発揮されるのは心地よい。

(ちょっとネタバレ)
彼が、事件現場にいた人間ではないからなのか、結構スルスルとパララックスの内部に食い込むことができる。といっても、暗殺者候補として見出されるわけだが…。このパララックステストなるものが、その人間の暗殺者としての素養と、“ロボット”になる素養を同時に診断するもので、地味に気持ちが悪い。ある意味、『ゾンビ』とは違う方向性ではあるが、“大衆の恐怖”をテーマにして昇華した作品なのかな…と(“気付かない大衆”“踊らされる大衆”という意味で)。
#後に、『クライシス・オブ・アメリカ』なんて作品も作られるし、陰謀&暗殺マシーンってのは、一つの様式美だな。

暗殺者候補として見出されるといっても、もちろんジョーの作戦。正気の彼は、パララックスの陰謀を、小さな抵抗ながらも綱渡りのようにしてブロックし、被害を最小限に食い止めていく。なかなかのヒーローっぷりに興奮するとともに、何がおこるのかはわからないけど、とりあえずできることはやる…という、ある意味自暴自棄ともいえる勇気に寒気すら覚えるほど。
#昔は、飛行機に乗ってからチケット買えたんだな。まさにエアバス。

もしかして、編集長もあっちサイド? なんて思ったりもしたが、まあ、そこは程よいミスリードだったかな。

で、凡作ならば、巨悪を倒すか、そこまではいかなくとも爪痕は残す…という終わり方になると思うのだが、実に虚無感や絶望感が漂うラストが待っている。まったく救いがないんだけど、そう悪くない絶望感かな。良作だと思う。

ただ、すっかり観終わって、後で振り返ると、なんで上院議員暗殺の現場にいた人が殺されていくのが理由がさっぱりわからなかったりするんだよね。彼らは真犯人の何かを知っていたわけでは無さそうだし、事件の真相を究明しようとしたわけでも無さそうなんだよなぁ(笑)。あれ、そこはツッコんじゃダメなのかな?

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公開年:1955年
公開国:アメリカ
時 間:79分
監 督:チャールズ・ロートン
出 演:ロバート・ミッチャム、シェリー・ウィンタース ウィラ・ハーパー、リリアン・ギッシュ、イヴリン・ヴァーデン、ピーター・グレイヴス、ドン・ベドー、ビリー・チャピン、サリー・ジェーン・ブルース、グロリア・カスティロ 他
受 賞:【1992年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品





1930年代、ウェストバージニア州。ベン・ハーパーという男が、困窮する生活から家族を救うために銀行強盗をする。1万ドルを強奪し、殺人まで犯してしまう。警察の追跡を掻い潜り、家族の元にやってきたベンは、強奪した1万ドルをとあるところに隠し、隠し場所を息子のジョンと娘のパールに告げる。自分たちの将来のために使うように…と。やがて、ベンは家族の目の前で警察に逮捕されてしまう。その後、強盗殺人の罪で死刑判決を受けるたが、1万ドルの行方は判らないまま。刑務所に収監されているとき、車両窃盗の罪で収監されている偽伝道師のハリー・パウエルと出会う。ハリーは、ベンの寝言から1万ドルに在り処を家族が知っていると踏み、釈放されるとすぐにベンの家族が住むクリーサップの街を訪れる。しかし、ベンはただの偽伝道師ではなく、神の名の下に未亡人たちを殺害し金品を奪う手口の連続殺人犯だった…というストーリー。

1955年作品と考えると、実に洗練された作品だと感じる。今観てもそれほど古臭さいとは思わなかった。

偽伝道師ベンのキャラクターが強烈。フロイト的な意味で、性的な何らかのコンプレックスを原因として、(自分の価値観の上で)不浄な未亡人を殺害する男。あわせて、金への執着もすごい。相当な倒錯ぶりに加えて、両手の指に「L O V E」と「H A T E」と刺青を入れているというインパクトのある特徴。それを使って、善と悪の戦いを説教するのだが、敬虔な信者であればあるほど信じてしまうという不思議さよ。
口八丁手八丁なだけでなく、目的を果たすために淡々と行動できる様子は、『ノーカントリー』でハビエル・バルデム演じる殺し屋アントン・シガーにも通ずる。

街の人も騙される。ベンの妻ウィラも騙される。何を言っても信じてもらえない、自分だけが気付いているという、遺児ジョンの恐怖。いざ、ハリーが牙を剥きはじめ、逃亡するわけだが、何かあったら俺を頼れといっていたジジィが、ポンコツ酔っ払いえ頼りにならないという子供にとっては、圧倒的な絶望感。そして、危機一髪ですり抜ける、遺児ジョンとパールのサバイバル具合が、実にスリリング。

断言は難しいのだが、最後にジョンとパールを救うおばさんの所に前からいた、年長の少女。この少女がハリーに騙さる。犯行が明白になったあとも好意的な発言と繰り返す。さらに、パールもハリーに懐いているという状況に、引っ掛かりを感じる。犯罪者ハリーの人格形成に“女性”が関わっているのは大いに予想がつくが、彼女たちの行動から、“女性”の感情の恐ろしさを表現しているように思えてならない。
終盤は、これまでハリーを信じていた町の人々が、騙された悔しさからなのか、暴動まで起こすカオス状態になる。大衆の危うさを表現しているのだろうが、ここでも一番扇動するのは、女性だったりする。
影に潜む“女性”というテーマが見えてくると、面白さが倍増する作品。秀作。

#私事だが、この作品を、飛行機の中で観ていたら、隣に座った人の左手の指に「L O V E」の刺青が…。こんな偶然あるかね。右手に「H A T E」はなかったけど。オレが追いかけられてるのかと思ったわ…。

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公開年:1980年
公開国:アメリカ
時 間:105分
監 督:ブライアン・デ・パルマ
出 演:マイケル・ケイン、ナンシー・アレン、アンジー・ディキンソン、キース・ゴードン、デニス・フランツ、デヴィッド・マーグリーズ、ブランドン・マガート 他
ノミネート:【1980年/第1回ラジー賞】ワースト主演男優賞(マイケル・ケイン『アイランド』の演技も併せて)、ワースト主演女優賞(ナンシー・アレン)、ワースト監督賞(ブライアン・デ・パルマ)



夫マイクとの性生活に不満を抱えているケイト。時々、たくましい男性の襲われる夢を見るまでになり、精神分析医エリオットのカウンセリングを受けている。彼女にはピーターという息子がいたが、コンピューターの開発に没頭しており、彼女とは逆に性欲とは無縁の存在だった。ある日、ケイトはカウンセリングの帰りに美術館を訪れる。そこで出会った男性が挑発的にケイトを誘うと、彼女もそれに応え、タクシーの中で情事を交わした後、男のアパートへ向かうのだった。ケイトが男の部屋で目覚めると、男の姿はなかった。彼女は立ち去る前に男にメッセージを残すが、男の正体を知りたくなり机を物色。一通の診断書が目に留まり内容を確認すると、男が性病に犯されていることを知ってしまう。慌てて部屋を出るが、指輪を部屋に忘れてしまったことに気付き、再びエレベータで戻ろうとする。扉が開いた瞬間、彼女は何者かにナイフで切り付けられ、惨殺されてしまうのだった。ちょうどその時、エレベータを待っていた若い女性リズは、ケイト死体を発見。エレベータの防犯鏡に映った犯人らしいブロンドの女性を目撃する。その後、リズは刑事マリノの取り調べを受けるが、彼女が娼婦であったことから、証言が信用してもらえず…というストーリー。

輝く第1回ラジー賞に多々ノミネートされているが、マイケル・ケインやナンシー・アレンの演技がそれほど悪いか?と疑問。脚本とかを貶しているなら判らんでもないが、トンデモな部分を演じているからとって、2人の演技自体に問題があるわけじゃない(もう、初回からラジー賞って的外れなのがよくわかる)。いや、むしろマイケル・ケインの演技なんか、良い評価をされてもいいくらいだ。
画質やらヌードやら、デ・パルマらしさも出しつつ、とっつきにくさは軽減されているから、監督の仕事だって悪くない。

脚本だって大筋はいいデキだと思う。特に頭の方は素晴らしいかと。官能作品かと思わせておいて、サスペンス展開に。と、見せかけて中年の性問題に流れて、危険な情事モノとなり、性病が発覚し家族トラブル物になるのか?と予想させながら、一気にサスペンスに揺り戻す。観客の予測を小さく裏切り、ある意味パラダイムシフトを断続的に起すという高度なテクニックだと思う。

え? トンデモシーンで何かって?
(ネタバレ)

マイケル・ケインの女装と、ナンシー・アレンの夢オチでしょ。前者は女装自体に問題があるわけじゃない。むしろ、マイケル・ケインがそんなことやるか? という固定観念の裏をかいたい良い演出。キャスティングでミスリードするなんて、高度だと思う。ただ、それに加えて、性同一性障害と二重人格という、都合のよい設定が、興醒めさせてくれるだけ。本作での性同一性障害の表現には問題があると思うので、おそらく地上派では放送されないような気もする。

どう考えても、そのままエリオットが暴走してクライマックスに向かうんだろうな…と観客の誰しもが思っただろう。しかし、それを夢オチという下品な手段で萎ませた罪は大きい。スカすならスカすで、もうちょっとやり方があったように思える。

良作だったんだけど、最後の最後で凡作に。ま、脚本はデ・パルマが書いてるので、彼の責任なんだけどね(笑)。
#『サイコ』のオマージュか(パクりか)? とよく話題になるが、私は特に気にならなかった…というかそうは思わなかった。

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公開年:2011年
公開国:スペイン
時 間:114分
監 督:エンリケ・ウルビス
出 演:ホセ・コロナド、ロドルフォ・サンチョ、エレナ・ミケル チャコン、フアンホ・アルテロ、ペドロ・マリア・サンチェス、ナディア・カサード 他
コピー:その男の衝動は、正義か邪心か――。





中年刑事のサントスは、かつて情報部で活躍していた敏腕捜査官だったが、数年前にコロンビアで同僚に重傷を負わせてしまい、失踪人捜索課に左遷されてしまう。その後は、閑職にうんざりする日々を酒で埋め合わせる日々を送っていた。ある日、泥酔して立ち寄った酒場で不審な男たちを目撃。酔いも手伝ってトラブルとなり、3人を射殺してしまう。とっさに証拠隠滅を図るが、現場に潜んでいた男を逃してしまう。保身のためにその男の行方を追うのだったが、売春組織や麻薬販売ルートとの繋がりが浮かびあがり…というストーリー。

判りにくい。まず、その一言に尽きる。改めてあらすじをネットで調べないと、整理できないくらいわかりずらい。

上に書いたあらすじでは、左遷されたくだりを先に書いたが、実際は酒場で刑事の身分証明書を持っている小汚いおっさんが、理不尽にブチ切れて射殺するところから始まる。どう考えてもおっさんの方が悪い。コロンビアの事故の話は、かなり後から出てくる。

殺した人たちが、犯罪組織と繋がっていることが見えてくるのだが、これが証拠隠滅の副産物なのか、実はまだ情報部の仕事をしていて隠密操作をしていた結果かのか、それとも個人的に裏で別動していたのかが、よくわからない。失踪人捜索課におっさんの行動をうまいこと誤魔化している同僚が出てきたから、隠密行動しているんだろうな…と思い込んでいたのだが、ネットであらすじを読んだかぎりは、一つ目らしい…。
本当か?と現時点でも疑っているくらい、よくわからない。

証拠隠滅のシーンでは、右手こそハンカチをもって指紋をつけないようにしているけど、右手ではベタベタさわっているという、意味不明な状況。酔っているから? それとも実は刑事じゃないっていう演出??とまで色々考えさせられたが、ふつうに刑事だった模様。

緊迫感だけはやたら煽る演出をしているが、主人公のおっさんの正体が何者で、どういう目的で行動しているのか、半分過ぎてもよくわからない。
コロンビアの事件の説明だって、かなり後半にならないと出てこない。とにかく設定を後出しで説明する演出が、全然効果を生んでいないのだ。
主人公の目的が見えないのだから、一緒に犯人を追いつめていく共感も得にくい。そりゃぁ、おもしろく感じるはずがない。
ちょっと、サスペンスを履き違えているんじゃないかな…とまで思う。

最後は昔とった杵柄で、悪と対峙して見事に散って、本当にやりたかった人々を救う仕事を全うできた満足で死んでいくという、男のロマンを醸し出したつもりなんだろう(おそらく)。

しかし、本国ではゴヤ賞を獲るほど評価が高かったとのこと。スペイン人には、スッと腑に落ちる何かがあるのかもしれない。
残念ながら、わたしにとっては、ラムコークが飲みたくなるだけの作品だった。

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公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:104分
監 督:モーガン・オニール
出 演:ジョン・キューザック、ジェニファー・カーペンター、ダラス・ロバーツ、メイ・ホイットマン、ソーニャ・ヴァルゲル、マゲイナ・トーヴァ、キャサリン・ウォーターストン、ゲイリー・アンソニー・ウィリアムズ、マイケル・トレヴィーノ、シンディ・サンプソン 他
コピー:不気味な地下工場があった。



ニューヨーク州バッファロー。市警の刑事マイクとケイシーは、3年前から発生している娼婦失踪事件を捜査していた。これまで7名の娼婦が姿を消している。そこにニューハーフの娼婦が誘拐される事件が発生。その娼婦に接触した黒いセダンを特定し、持ち主が性犯罪者であることを突き止め、色めき立つマイク。しかし、令状を取って家宅捜索するものの、車の持ち主は障碍者になっており、犯行は不可能であることが判明。ナンバープレートがその家から盗まれており、例の黒いセダンに付けられている模様。意気消沈する中、マイクの17歳の娘アビーが行方不明になる。夜中に、恋人タッドがアルバイトをしているダイナーに出かけた彼女は、タッドと別れ話になって店を飛び出していた。そのときの彼女は派手なメイクと服装をしており、娼婦と間違えられて誘拐されたと思われる。必死に犯人の行方を追うマイクとケイシーだったが…というストーリー。

セブンのようなじめっとした画質。こっちの指もかじかんできるような寒さを感じる。実はバッファローには叔母さんが住んでいるんだけど、昔は遊びにこいとか留学しにきたら住ませてくれるとか言ってたんだけど20年以上没交渉だな。まあ、五大湖近辺だから冬はこんな感じだわな。

捜査中の刑事の娘が、意図的にターゲットになっていたわけでもないのに誘拐されちゃうという展開が、あまりにご都合主義。これがストーリーの主軸というのが稚拙だ。
この展開の場合、娘が機転を利かせてピンチをのりこえる…っていう展開が望ましいのだが、それほど知恵も発揮しないから、あまりおもしろくないし、ハラハラしない。姪が誘拐されたアレックス・クロスのやつ(モーガン・フリーマン主演の『コレクター』)と同じパターンなのだが、比較すると本作の陳腐さが際立つ。それにしても、わざわざ同じ邦題にするセンスの無さはヒドいかも。コレクションしているわけじゃなく、“工房”って感じなんだよなぁ。

最後の展開は、もの凄く驚く人がいると思う。でも決して褒められる展開ではない。
(以下、ちょっとネタバレ)

共犯者がだれか、もしくは共犯者がいるとは、誰も思わなかっただろう。そういう意味では成功しているのかもしれないのだが、ああ、そういうことか!あれは伏線だったのか!ってな感じにはならない(ここは、もうちょっと工夫してほしかったなぁ)。むしろ、無理やり奇を衒った感じで、それをやっちゃぁなんでもアリでしょ…って気分になる。
だって、それが許されるんなら、共犯は妻でした…とか、上司でした…とかでも、どうにでもできるんだもん。
#どういうオチ?と興味が沸いた人は観てくだされ。

救いもカタルシスもペーソスも何も無い作品だったかも(アビーがそれに気づいた…だけで終わっても何もおもしろくない)。ジョン・キューザックをキャスティングして、この出来映えか…と。
#結局、この女優さんは、そっち方向の役ばかりなんだな…と。CSIとか米ドラでは、犯人寄りの汚れが多いよね。

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 公開年:1978年
公開国:イギリス
時 間:124分
監 督:フランクリン・J・シャフナー
出 演:グレゴリー・ペック、ローレンス・オリヴィエ、ジェームズ・メイソン、リリー・パルマー、ユタ・ヘーゲン、スティーヴ・グッテンバーグ、デンホルム・エリオット、ローズマリー・ハリス、ジョン・デナー、ジョン・ルビンスタイン、アン・メアラ、ジェレミー・ブラック、ブルーノ・ガンツ、ウォルター・ゴテル、デヴィッド・ハースト、ウォルフガング・プライス、マイケル・ガフ、ヨアヒム・ハンセン、スキー・デュ・モン、カール・ドゥーリング、リンダ・ヘイドン、リチャード・マーナー、ゲオルグ・マリシカ、プルネラ・スケイルズ、デヴィッド・ブランドン 他
ノミネート:【1978年/第51回アカデミー賞】主演男優賞(ローレンス・オリヴィエ)、作曲賞(ジェリー・ゴールドスミス)、編集賞(Robert E.Swink)



オーストリアのウィーン。長年にわたりナチスの残党を追いかけてきたリーバーマンの所に、ある男性の写真が郵送されてくる。その写真の送り主コーラも、ナチスの残党を追う青年だったが、彼は独自に、アウシュビッツ他強制収容所の人体実験で“死の天使”と称された元ナチス親衛隊将校ヨーゼフ・メンゲレ博士が南米パラグアイを訪れていることを突き止める。彼らの仲間が集まるであろう屋敷に盗聴器を仕掛けるコーラ。そこで、メンゲレ博士が発した命令を録音することに成功する。コーラはリーバーマンに電話をかけ、録音した内容を聞かせるのだった。その内容は「今後2年半の間に、西ドイツ16人、スウェーデン14人、イギリス13人、アメリカ12人、オーストリア9人、ノルウェー10人、オランダ8人、デンマークとカナダが6人ずつの合計94人の65歳の公務員を特定の日に殺せ」という荒唐無稽なものだった。内容の詳細を確認しようとするリーバーマンだったが、電話口でコーラは殺されてしまうのだった。不審に思ったリーバーマンは、65歳の公務員が死んだ情報をかき集め、遺族を訪ねて聞き取り調査を行うが、そこには、色白でブルーの目をした可愛げのない少年がおり…というストーリー。

現在だと、敵役をナチスにしたって面白くもなんともない(いろんな意味で)。1978年ころのナチスに対する社会認識はこんなものだし、ナチスを絶対悪としないと、成立しないお話なので仕方がない面はある。しかし、リーバーマンがナチスの悪行を論うのだが、それ誇張してないか?ナチス被害者だって言えば何でも通ると思ってないか?と感じる場面が散見される。当事者がハンターしているのだから別に悪くはないんだけど、イギリス人のナチス嫌いが画面から恐怖となって滲みでている感じなのだが、大戦後のイギリスとユダヤがやってきたことを鑑みれば、好き勝手やるために“ナチス怖し”を隠れ蓑にしていうような気がしてイヤな気分になる。だから、主人公リーバーマンに手放しで賛同できないことはいうまでもない。
ただ、そのおかげで、この善良そうなリーバーマンが絶対善には見えない…というのが、サスペンスの味付けとして非常に効果的。怪我の功名というかなんというか…。

ヒトラーの生い立ちを知っていると、早々にピンときちゃう内容だし、それ以前にヒトラーの生い立ちを知っている人なら、この映画の存在くらいは知っていたりする。私も本作は初見だったけど、内容は知っていた。でも、意外や意外、こんな有名な作品なのに、日本未公開だったりするのよね。
また、現代の科学知識をもってすれば、本作の遺伝子やクローン技術に関する情報が、かなりトンチンカンなのはまちがいない。しかし、その科学的知識の“ズレ”が、今観ている私の先読みする思考を微妙に狂わせてくれる。おかげで、オチは大体見えているのに、謎解きサスペンスとして非常に楽しめてしまう結果を生んでいる。これまた怪我の功名。

(以下、ネタバレ)
ヒトラーと同じ遺伝子の子はつくった、公務員の家で育てた、次は同じタイミングで父親を喪失しよう!って、口で言うのは簡単だけど実行するのは相当クレイジー。もし本作を15年前に観たならば、私はくだらね~って言ったと思う。家庭環境だけ同じにしたって、その他の社会情勢とか経済事情や科学の発展具合からの影響の方が大きいに決まっている。また、94人の両親がおなじ環境をキープできるなんでありえないだろう…とか、興醒めさせるツッコミどころは満載だ。
でも、逆に今は、そういう“計画”自体の怖さよりも、それを遂行しようっていう偏執的なパワーの方にリアリティを感じてしまう。宗教や思想をベースにしたテロだって同じようなもの。現在蔓延る、狂気を感じる犯罪に通じるものがある。

一周半廻ってってアリ状態の作品だった。難点はグレゴリー・ペックがナチの博士っていうのが、リアリティがない部分くらいだ。

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プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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