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imageX0087.Png公開年:1964年
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:ドン・シーゲル
出 演:リー・マーヴィン、ロナルド・レーガン、アンジー・ディキンソン、ジョン・カサヴェテス、クルー・ギャラガー、クロード・エイキンス、シーモア・カッセル、ノーマン・フェル 他
受 賞:【1965年/第19回英国アカデミー賞】 男優賞[国外](リー・マーヴィン)




殺し屋チャーリーとリーは、ろうあ学校の教師ジョニーの殺害を依頼され、任務を果たす。しかし二人は、ジョニーを殺害する理由を彼が100万ドルを盗んだからと聞いていたのに、その100万ドルの在り処を探せとはいわれなかったことを不思議に思う。きっと、100万ドルはジョニーではなく別の人間が持っているに違いないと踏み、本件の事情を探ってみることにした。二人は、ジョニーのレーサー時代の相棒だった男を訪ね、無理やり事情を聞きだす。その頃ジョニーはベテランレーサーで快進撃を続けていたが、そこにシーラという女が現れ、ジョニーに迫ったことからすべてが崩れていったという。彼女に夢中になったジョニーは、不摂生な生活を続けたせいで、レースで事故を起こし、レーサーとしての道を断念せざるを得なくなってしまったのだ。その後、シーラはジョニーをジャックという評判の悪い男に紹介し、とある儲け話に加担させようとするのだったが…というストーリー。

レーガン大統領が役者だったというのは、よく知られた話だが、実際に彼が出演した映画というのを観た人は少なかろう。私も観たことがなったが、本作がそれ。正直、彼の演技は2.5流。演じるだけで精一杯で、悪役らしい苦味というか憎たらしさなど微塵も表現できておらず、そこまで求めるのは酷なんだろうな…というレベル。こりゃ俳優では大成しない。まあ、それはそれとして…。

ドン・シーゲル監督といえば、『ダーティハリー』や『アルカトラズからの脱出』など男臭いサスペンス仕立ての作品を作らせたら一流で、本作もこれらの路線。しかし、どうも本作はピリっとしない。
二人の殺し屋は、10万ドルを盗んだ男の殺害を命じられたのはいいが、肝心の10万ドルの在り処を、依頼主が気にしていないことに不信感を抱くという掴みはよいと思う。しかし、その理由を確かめるために行う謎解きが、ほとんどか回想で語られるという構成がクソなのだ。タイトルでかつ主役であろう“殺人者”たちは、それを聞きまわって歩くという、ただの狂言回しである。いや、その聞き廻る様子が、実に下品で小物でチンピラ然としていて、まったく面白みを感じない二人組みで、狂言回しとしても落第点なのだ。
で、謎解きの結果、殺人の依頼主のところにぶち当たるというのも芸がない。

それに、ジョニーを放っておいちゃいけない理由がきちんと描かれていない。その盗んだ金を元でにジャックが大成して、今は社会的な地位を得ているとか、もしくはこれから議員にでも立候補しようと思っていて、過去を知っている人間がいると都合が悪いとか、そういう理由でもなけりゃわざわざ殺すリスクを犯す必要がない。シーラがまだジョニーに未練があるとかそういうわけでもなく、妻になっているらしいので、恋愛がらみの心配もなさそう。
おまけに、百戦錬磨の殺人者のはずなのに、簡単に撃ち殺される若い方。年上の殺人者のほうが.、瀕死の状態でジャックの家にいって相打ちになるのもあまりおもしろくもない。それをやりたいなら、彼がなんで金に固執するのかを描けばよかったと思う。

掘り下げが甘くて、つまらない作品。まあ、実は、冒頭のジョニーが殺されるシーンで、ジョニー役の人が、倒れながら自分の顔に血糊を塗ったくっているところで、この作品のレベルは予想がついていたんだけどね。

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image2026.png公開年:1967年
公開国:フランス、イタリア
時 間:129分
監 督:ジャン=リュック・ゴダール
出 演:ミレーユ・ダルク、ジャン・ヤンヌ、ジャン=ピエール・カルフォン、ヴァレリー・ラグランジェ、ジャン=ピエール・レオ、ジュリエット・ベルト、ジョルジュ・スタケ、ダニエル・ポムルール、ヴィルジニー・ヴィニョン、ブランディーヌ・ジャンソン、イヴ・アフォンソ、ポール・ジェゴフ、アンヌ・ヴィアゼムスキー、ミシェル・クルノー、ジャン=クロード・ギルベール、ラズロ・サボ、エルネスト・メンゼル、イヴ・ベネイトン、イザベル・ポンス 他



ロランとコリンヌは、別々に不倫しているが、表面上は仲のよい夫婦を装っている。コリンヌの父が危篤なのだが、母が遺産を独り占めしないか気がかりで、土曜日に、コリンヌの実家のあるワンヴィルに二人で出かける予定になっていた。都会の人々は、生活に疲れてみんなヒステリー状態となっており、出発時にバンパーをこすったくらいで隣人に銃弾を浴びせられる始末。また、いざ出発してみると、同じく週末旅行で郊外に向かおうとする人が多く、渋滞が発生。近道しようと迂回路を通るが、いらいらした人々は、あちらこちらで悲惨な事故を頻発させていた。結局、ロランとコリンヌも事故に巻き込まれてしまい車は大破、なんとかワンヴィルに向かう手段を見つけなければならなかったが…というストーリー。

芸術的に評価する評価を見ることが多いが、本当にそうか?と私は思う。
申し訳ないが、15分に一回眠れる。いや、冗談じゃなく、本当にそのくらい寝た。全部観終わるまでに、6時間くらいかかったと思う。
有名な渋滞のシーンにしたって、そりゃ渋滞の先にショッキングな状況が繰り広げられていたとしても、その前にあまりにもダラダラと渋滞のシーンを観せ続けられたら、普通飽きるでしょ。その後も、本人はインパクトがあるとおもって多用している、交通事故の血だらけの死体とか、何度も使われると飽きる。
長台詞なのに、画面がほとんど変わらないカットが多すぎて、観るのがつらすぎる。これは、フランス語を理解できる人が、耳と目で愉しむ作品であって、字幕を追って観る作品ではない。

当時の社会の空気がわかっていれば、風刺の部分も理解できるかもしれないけれど、今観てもさっぱりかと。それは、この映画が決して普遍性を持っていない証明ではないかと思う。
まさか、自動車社会への警鐘とか、そういうことなのだろうか。自動車社会は発展すると死屍累々になるから止めなさいって?
アフリカ人への差別は止めなさい、複数の人種が普通にミックスしている社会があるべき姿だって?今のヨーロッパの移民政策の失敗を見てただ、そんなことはくだらない夢想だってのが証明されている中、こんなの見せられても、「はいはい…、おじいちゃんもう寝ましょうね…」っていいたい気持ちになる。
政治体制を歴史を紐解きならが文化を批評するシーンも、なにがなにやら。中途半端な社会主義思想とニヒリズムが混じった史観は、聞いていてうんざり。根底に、現状のへの不満をぶつけたいだけ…とか、どうせ無意味…とか、そういうネガティブで邪悪な思想が垣間見える。

もう、最後の食人のくだりにいたっては、何がいいたいのかもわからない。現在の人が、この作品がすばらしいすばらしいって、それは裸の王様でしょ。不条理なという狙いはわかるけど、芸術性という意味では幼稚で完成度が低いと思う。本年度、観た作品の中で、一番時間を無駄にした作品。

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image2018.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:106分
監 督:ロジャー・ドナルドソン
出 演:ニコラス・ケイジ、ジャニュアリー・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ハロルド・ペリノー、ジェニファー・カーペンター、ザンダー・バークレイ 他
コピー:“代理殺人”の契約から始まる、危険な罠――




ニューオーリンズの高校教師ウィルは、音楽家の妻ローラと幸せな毎日を送っていたが、ある日、ローラが帰宅途中に暴行され病院に搬送される。突然の出来事にウィルは激しく動揺する。ローラの治療が行われている病院の待合室で狼狽していると、見知らぬ男が近寄ってくる。その男は、ウィルの代わりに犯人を捜しだし殺してやると持ちかける。代金は不要で、いつか簡単な頼みごとをするだけだという。傷ついた妻のことを思い、怒りが溢れていたウィルは、その提案を受け入れてしまう。ほどなくして、保険屋を名乗る男が、暴行時にローラが奪われたネックレスの入った封筒をウィルに渡した。それは復讐の完了を意味していた。それから半年後、約束の頼みごとのために、あの男がやってくるのだった…というストーリー。

昨日に『ダーク・フェアリー』とはガイ・ピアースつながり。

復讐の対価はとらないが、いずれなにか手伝って欲しいことをお願いする。『ゴッド・ファーザー』もそんな感じだったけど、本作のそれにはミステリアスさと危うさが漂う。
マフィアのような脱法組織とは異なる、自警団ならぬ私刑団という設定は、現代社会において非常に魅力的に映る。民主主義社会において、市民を守るための権力は、与えられた力の行使にはデュー・プロセスが必須である。それはその権力の暴走にキャップをかけるためであるが、デュー・プロセスに不備があれば犯罪者は野放しになるし、根本的に犯罪者が増えれば裁き切れなくなる。現代社会では往々にして裁きの日まで時間を要するし、裁いたとしても被害者が満足のいく結果になることは多くない。その満たされない市民の怒りを代行する組織であり、民主主義国家が揺籃してくると、無意識に渇望されるもの。日本でいえば必殺仕事人のようなものである。

一見、庶民の味方のような組織が、なぜか自分を嵌めようとしているようにしか思えない恐怖。それに、自分も人の死を不法に求めてしまった後ろめたさがあいまって、実に緊迫感のあるシナリオになっている。ニコラス・ケイジ作品はポンコツシナリオの作品が多いが、今回は比較的当たりである。
護身用に催涙スプレーを買うことも、主人公が国語教師であることも、ストーリーを進める上で、しっかり意味をもっていて、なかなか小技が聞いている。

(以下、ネタバレ)
組織が『ファイトクラブ』のように一般社会にまぎれているのも魅力的。しかし、“ハングリー・ラビット”自体が、実は正義とは程遠い組織なのか、本来の組織から逸脱した一部のグループが暴走しているのかが重要ポイント。結果的には後者なのだが、そうだとするならば、その他のメンバーはウィルを援護するような動きをしてしかるべきで、なぜかウィルは要所要所でピンチをすり抜けることができる…という部分を強くだすべきだったと思う。そうすることで、謎はもっと深まったと思う。
さらにそうすることで、ウィルの最期の足掻きのシーンも不要になったと思う。最期のあれはいらない。だって、ウィルはある意味裏切り者になったわけだから、立場が悪くなっちゃうじゃん。

まあ、その点以外は、おおむね満足、なかなかの良作。軽くお薦めする。

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image0607.png公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:116分
監 督:ニック・カサヴェテス
出 演:デンゼル・ワシントン、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ、アン・ヘッシュ、エディ・グリフィン、キンバリー・エリス、ショーン・ハトシー、レイ・リオッタ、ダニエル・E・スミス、ケヴィン・コナリー、ポール・ヨハンセン、ヘザー・ウォールクィスト、ローラ・ハリング、ラリッサ・ラスキン 他
コピー:その時、彼は病院を占拠した。
要求はただ一つ、「息子の命を救うこと」

シカゴ。妻デニスと9歳になる息子マイクの3人で幸せに暮らしているジョンだったが、不況の波で勤務時間が減らされ収入は減少する一方で、とうとう妻の車が借金のかたに取られてしまう。なんとか新たな仕事を探そうとしている中、マイクが野球の試合中に倒れてしまう。診断の結果、マイクは重い心臓病を患っており、このままでは余命幾ばくもないこと、助かるためには心臓移植しかないことが告げられる。保険に入っていると安心していたジョンだったが、半日勤務となっていたジョンの保険は、高額医療に適用されないものに変更されており、支払いを拒否されてしまう。知人たちのカンパや家財を売却することで、なんとか支払いを続けていたが、いよいよ滞ってしまい退院を勧告されてしまう。ジョンは病院に拳銃を持って押しかけ、医師や居合わせた患者を人質に、マイクを移植用の心臓待ちリストにのせることを要求する…というストーリー。

人質をとって立て籠もった犯人を、一般市民が応援するという展開は、『狼たちの午後』に通じるものがある。『狼たちの午後』の主人公ソニーが強盗した理由は、ゲイである恋人の性転換手術の費用のため。刹那的で理不尽な理由だと思うが、さて本作の主人公ジョンの理由はどうか。子供は心臓移植をしなければ死んでしまうという状況で、とうとう金策が尽きて窮してしまい、人質をとって立て籠もる。正しいとは言えないが、、理屈の通った理由であるように思える。しかし、どうだろう。

冷たい人だと思われてもかまわない。はっきりいってこの主人公も妻デニスも、クソ人間だ。皆保険制度のないアメリカ社会がどうだこうだいうのは簡単だが、日本だって、転職の端境で手続きを怠った人は健康保険を使えないし、任意保険に入っていない人にはもちろん給付はない。確かに、保険会社はセコいこと小ズルいことをやっているかもしれないけれど、健康保険に入っていない人が多いからといって、それが正義であるかのような論調になるのはおかしな話に感じる。
はっきりいって、私は、ジョンが医者に銃を突きつけて、病院にたまたまいた人を人質にとって立て篭もったとき、このクソ人間、頭を撃ち抜けれて死ねばいいのに…と思った。そして、自分の夫がとんでもないことをやらかしているのに、夫の味方だと言い放つくせに、息子が移植待ちのリストにのせてもらえると聞いた途端に「ありがと~」って、頭おかしいでしょ。いくら、子供ばピンチだからといってここまで破廉恥な行動を取る人間を応援できるわけもない。
そう、この映画は、感情移入できる人間も応援できる人間も不在の映画なのだ。もし彼の行動に、アメリカ人が共感できるというなら、アメリカ人がクソなのだ。

(以下ネタバレ)
で、アメリカ映画だから、子供が死ぬシナリオなんてことはまずないでしょ。じゃあ本当にリストの準備を飛び越えて、心臓移植を受けることができるか?それもないでしょ。じゃあ、どうやってオチをつけるか…を考えたら、想像ついちゃうよね。自分の心臓で移植しようとする以外にあり得ない。結構簡単に思いついちゃうから、観客の気をそらすしかない。だから、DV男と女の逆襲とか、現場責任者と警察署長のバトルとか、色々差し込まざるを得ないわけだ。

そのアイデアは否定しない。だけど、はじめからそれが目的だった…、そのために用意周到に準備していたのか!!!!と、とっても驚ける展開にしてほしかった。本作は、行き当たりばったりに見えるのだ。銃に弾は入っていなかった…とか、その程度じゃ、しっかり計画されていたようには到底思えないないのだ。

息子と自分の適合テストをして確認済みにようなことをいっていたが、そんな描写はどこにもなかったと思う。大体にして、移植できるだけのスタッフを確保して犯行におよんだわけではない。一人の心臓医を確保したにすぎず、他に手術を手伝える医者がいることを確認していない。設備が整っていることも確認できていない。大体にして、拳銃自殺した死体から移植用の心臓を取るのは厳しいのではないか?

はっきりいって、穴がありすぎ。『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』ばりの用意周到さをみせてほしかった。別の場所で要人の人質をとって、言うことを聞いて俺が自殺した後に移植しないと、そいつを殺すぞ…とかしないと、この作戦は成功するはずがない。
で、ジョンが妙に奇跡、奇跡といっているので変だと思ったら、偶然の出来事がおこって終わるという…。そして、手のひらを返したように、事件に巻き込まれた人がジョンの擁護にまわり、保険制度への批判話にすり替わる。

人質をとって不当にリストにのせたという悪行をうやむやにするために、リストにのせていなければあの心臓はムダになっただけという、異常なシチュエーションで誤魔化す。私は、愚かなシナリオだと思う。

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image2010.png公開年:1995年
公開国:アメリカ
時 間:106分
監 督:ガス・ヴァン・サント
出 演:ニコール・キッドマン、マット・ディロン、ケイシー・アフレック、イリアナ・ダグラス、アリソン・フォランド、ダン・ヘダヤ、ウェイン・ナイト、ホアキン・フェニックス、ティム・ホッパー、マリア・トゥッチ 他
受 賞:【1995年/第53回ゴールデン・グローブ】女優賞[コメディ/ミュージカル](ニコール・キッドマン)
【1995年/第1回放送映画批評家協会賞】主演女優賞(ニコール・キッドマン)

“TVに映らなければ生きている意味がない”“いつかTVに出て有名になる”という強い決意をもっていたスザーン・ストーンは、大学を卒業すると、地元のイタリアン・レストランで働くラリー・マレットと結婚する。ハネムーン先はフロリダを選択。ラリーの趣味である釣りに付き合ったと思いきや、実は現地のホテルでTV界の大物たちが会合を開くという情報を得て、それに紛れ込むためだった。夫の知らないところで熱心に自分を売り込んだスザーンは、ハネムーンから戻るやいなや、フロリダで得たアドバイスを元にTV局にごり押しで就職。雑用係での採用のはずが、グイグイと自分をアピールし、ついにお天気キャスターの地位を得る。ラリーは、そんな向上心の強い妻を誇りに思い応援するのだった。お天気キャスターを足がかりにメジャーになろうという野望を持っているスザーンは、高校生たちの実態を描くドキュメンタリーを制作し、それを売り込もうと考えた。彼女は地元の高校に乗り込み、ジミー、ラッセル、リディアの落ちこぼれの3人組に着目し、彼らに焦点を当てることにするのだったが…というストーリー。

冒頭で、ニコール・キッドマン演じるスーザンが逮捕される新聞記事の紹介ではじまるが、その後、スーザンの語りが始まり「おや?」と。逮捕されたはずの彼女の、前向きな語り。これは何?その後、冒頭で頭を撃ち抜かれていた夫と、スーザンの馴れ初めからはじまる。
途中途中で、関係者のインタビューを挟みながら進む。その中には、明らかにTV番組のスタジオにいる両親のものもある。このインタビューは何?さて、彼女は今どうなっているのか?どうしてそうなったのか?という点にグっと着目させる、おもしろい構成である。
本作は、少年をたぶらかして夫を殺させたという実際の事件が元となっているらしい。厳密にその事件を再現するつもりはないだろうが、ある程度の流れはわかってしまうので、色々な仕掛けを施しているというわけだ。

サイコパスの定義は、知識はあるけれど他者への共感がない人間を指すようだが、スーザンは、自己顕示欲と実行力はあるが、それに沿わないものは容赦なく切り捨てるタイプで、非常に近いが、微妙に異なるような気もする。これに巧みさが加わると怖い!って感じになるんだけど、行き当たりばったり感満載なのが特徴か。ニコール・キッドマンは、この浅はかなキャラクターがそれなりに目的に邁進してしまうことに、説得力を持たせるに充分な美貌なのだ。
私は、本作の中で一言も喋らないスザーンの姉の存在が気になった。スザーンの性格形成を考えた上で意図的に配置したならば、これはなかなか秀逸な設定だと思う。

スザーン以上に説得力を発揮しているのが、ホアキン・フェニックスの演技。年上の女に翻弄されつつも、ギラギラとした狂気の渦に身を任せてしまう若者を見事に演じている。

妙に夫の家がイタリア系であることを、ことあるごとに差し込んでくるなと思っていたら、最期は『ゴッドファーザー』的展開。もちろん実際の事件とは違う展開だろう。ギラっと目を輝かせる、ラリーの両親の表情は、なかなか良かった。

正直、この映画自体も浅はかな企画だと思うんだけど、ニコール・キッドマンとホアキン・フェニックスをキャスティングしたことで、成功した作品。他のシリアルキラー物や、猟奇殺人物とは一線を画するユニークな作品に仕上がっている。軽くお薦め。

 

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image2012.png公開年:2007年
公開国:ハンガリー、ドイツ、フランス
時 間:138分
監 督:タル・ベーラ、(共同監督)フラニツキー・アーグネシュ
出 演:ミロスラヴ・クロボット、ティルダ・スウィントン、ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ、レーナールト・イシュトヴァーン 他
コピー:ある晩、静かな港で起こった殺人事件。偶然にも大金を手に入れた男と失った男。二人の人生が交錯し、運命の歯車が狂ってゆく。



港にある鉄道の駅で、夜間の線路の切り替えをしている鉄道員のマロワン。ある晩、ロンドンからの船で到着した男が、殺人を犯す現場を制御室から目撃してしまう。男が逃げ去った後、殺された男が持っていたトランクを海から引き上げる。制御室に戻りトランクの中を見てみると大量の紙幣が。マロワンは警察にも届けず、家族にも告げず、とりあえず隠しておくことに。殺人を犯した男ブラウンは、町に留まりトランクを探しまわり、やがてロンドンから刑事もやってきて海中から死体を発見するのだが…というストーリー。

50分くらいまで観たんだけれど、誰がロンドンから来た男で、誰が殺されたんだか、どういう展開になっているのかさっぱりわからなくなってしまった。ネットであらすじを調べて読んで、始めから見直した。それでやっと腑に落ちた。
とにかく定点カメラによるワンカットが長い。白黒でコントラストも甘く、変化の小さい場面が延々と続く。ハリウッド映画のテンポに馴れている人には耐えられないテンポだろう。私もそれに耐えることができず、目が飽きてしまい、その結果、何が繰り広げられているのか、迷子になってしまったわけだ。

紙幣を乾かすために、ストーブにのせる意味がわからず(いくらなんでもコゲるんじゃね?)。ほとんど金だけ抜いて、少しの紙幣を挟んだ空のカバンを海岸に打ち上げられたようにしておけば、金は流れちゃったんだな…ってことで、刑事は納得して帰ったんじゃないかと思うんだけど…、とか、やたらと間伸びした展開なだけに、色んなことが頭に浮かぶ。浮かぶのはいいんだけど、さほど謎が多いわけでもないし、魅力的な人物や展開というわけでもないので、余計なことばかりが頭に浮かぶ。

このジリジリとしたテンポで、普通のおっさんが大金を手にしてしまったことで追い詰められていく様子を、海水で湿った綿で窒息させられるような感じで表現しようとしているのは理解できる。理解はできるだけど、愉しめるかどうかは別。

ぎゅっとまとめたら40分で終わる話だと思う。それに、はっきりいって、コピーの内容で全体の8割を説明できちゃってると思う。あとは、主人公のマロワンが、どういうオチをつけるか…、残りはそれだけだもの。大金を手に入れたことを、ひた隠しにする苦悩…って展開かと思いきや、気が大きくなって、娘の仕事場の待遇が気に喰わないってことで無理やり辞めさせるわ、新品のパイプは買うわ、娘に毛皮のマフラーを買ってやるわ、結構なお大尽。でも、たいして収入の無いおっさんが、突然娘に高価な毛皮を買ったことで、足が付く展開かのかとおもいきや、そんなこともなく。間伸びしてるくせに、話の軸も定まっていない感じ。

でも、マロワン自身は、刑事が金が見つかるまで町にいることがとにかく心苦しい。そんなときに、娘から、小屋にイギリス人がいることを聞いたマロワン。ピカ!っとあることを思いつき、即座に行動にうつすわけだ。
まあ、わからんではないんだけど、いやァ良く乗り切ったねぇ!って感情が沸いたわけでもなかったし、そうかその手があったか!してやったり…って驚いたわけでもない。実に小市民的だし、結果オーライ的な感じで、心は動かなかった。

正直、もう二度と観たいとは思わないけどね。
#何気に、ティルダ・スウィントンが出ている。『フィクサー』で米アカデミー助演女優賞を獲ったのと同じ年だったりする。

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image0533.png公開年:2003年
公開国:韓国
時 間:130分
監 督:ポン・ジュノ
出 演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ、ソン・ジェホ 他
コピー:おまえが殺ったことを憶えているか?
1986年-1991年、韓国のある農村で10人の女性が殺された。3000人の容疑者が取り調べを受け、180万人の警官が動員されたがたった1人の犯人はまだ捕まっていない…


1986年、ソウル近郊の農村手足を縛られた若い女性の変死体が発見される。被害者は両腕を後ろ手に縛られ強姦されており、農道の側溝に遺棄されていた。さらに、その数日後、同じ手口で若い女性が殺される。地元警察は特別捜査本部を設置し、パク・トゥマン刑事と相棒のチョ・ヨング刑事が担当となる。そして、事件の異常性に着目したソウル市警は、ソ・テユン刑事を特別捜査本部に派遣する。パク刑事は、頭の弱い焼肉屋の息子ペク・クァンホを容疑者として逮捕し、自供を強要するが、証拠不充分で釈放。彼らのいきあたりばったりのいい加減な捜査を見てソ刑事は不快感を示す。そんな中、ソ刑事は、行方不明者のリストの中から、これまでの被害者と特徴が似ている女性を発見。彼女も殺されているに違いないと主張するのだったが…というストーリー。

日本ではバブル経済で沸き始めたころ、お隣の国では、軍出身の全斗煥大統領政権下で、光州事件もここで発生。民主化を求めるデモは軍力で鎮圧するまさに軍政。その一方、ソウルオリンピックの誘致や、日本への歩み寄りや文化開放もあった時代で、俯瞰してみると、圧政の連続である韓国の近年の歴史の中では、比較的ダイナミズムのある時期なのかもしれない。夜間外出令も解除されており、比較的治安の良い時期だったようだ。
ただ、1986年なのに、金田一耕助シリーズばりのどんな陰湿な事件がおこってもおかしくない韓国の農村の様子。不謹慎とは思うが、サスペンスの舞台としては非常に魅力的である。

で、本作の原作は、実際にあった華城連続殺人事件が元になっているらしく、犯人は捕まっていない。実際の事件では10人が被害者になっているが、初めの被害者が71歳で、下は18歳。こういうシリアルキラーは、犯行手順が洗練されていったり、エスカレートしたり、サイクルが短くなったりするものだが、それには当てはまらない。むしろ不自然なインターバルが空いているので、別の事件で収監されていたとか、犯人が複数だとかが考えられるのだが、それ以前に、近隣で他の被害者がいないかどうかがよくわからないので、何とも言いようが無い。私の見立てでは、全部が全部、同一犯人かは甚だ怪しいと考える。

(以下ネタバレ)
結果的には本作も犯人は捕まらずに終わる。そりゃあ、勝手に犯人に当たりをつけるわけにもいかないからね。
で、ソウルからやってきたデュープロセスを守ろうという刑事と、思いつきで容疑者の権利や証拠主義なんかまったく無視の刑事がぶつかる。異様な世界で繰り広げられるぶつかり合いが非常におもしろいのだが、残念なところが一点。
この、両者の行動様式がクロスフェードしてくのが、演出上の見せ所のはずなのだが、徐々に…とか、こういうきっかけで…とかじゃなく、急にソ刑事が粗暴になってくのが芸がないと思う。
勘と自白強要に頼る地元刑事を批判しつつ、自分は理詰めで責めているにもかかわらず、結果的に犯人のいいようにやらる。格好つけたって、ドブみたいな韓国じゃあどうしようもない…と追い詰められていく、そんな様子をもっともっとジリジリと表現すべきだった。ポン・ジュノ監督の踏ん張りが足りなかったと思う。

韓国人自身が一番韓国が嫌いというのがよくわかる作品。ラストシーンの余韻も、もうこんな国いやだわ…ということを共感し合って終わっているのだと思う。『母なる証明』も同じ後味。母親がクスリを売って何もかも忘れて踊る。こんな国いやだ…ってね。この目線があるからこそ、ポン・ジュノ監督の作品は救われていると思うし、我々が観ても、納得できるんだと思う。
未見の人は是非観るべき作品だと思う。絶対に韓国旅行には行きたくないと思うだろうけどね。
#ソ刑事を演じたキム・サンギョンは、ロッチのコカドとハムの人の中間みたい。

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imageX0082.Png公開年:2001年
公開国:フランス、日本
時 間:100分
監 督:クレール・ドニ
出 演:ヴィンセント・ギャロ、トリシア・ヴェッセイ、ベアトリス・ダル、アレックス・デスカス、フロランス・ロワレ=カイユ 他
コピー:逃れられない哀しみの中に囚われた、2人のガーゴイル(怪物)。




パリを訪れたアメリカ人科学者のシェーンと新妻ジューン。楽しい新婚旅行のはずだったが、シェーンはなぜかジューンと性的な関係を結ぼうとしない。実はシェーンは、性交渉の最中に相手を噛み殺す衝動を抑えられなくなるという奇病にかかっていたのだ。そして、シェーンが新婚旅行にパリを選んだ理由は、その奇病の鍵を握る元研究仲間レオと、同じ奇病を患ってレオに監禁されている彼の妻を捜すことだった…というストーリー。

まったく予備知識なしで借りたため、半分くらい経過するまで、何の話かさっぱりわからないままだった。
半分ほど経過して、急に“バンパイア”モノに変貌するという、珍奇な作品(厳密にはバンパイアではないけど)。そこまでは、眠くて眠くてどうしようも無いくらい、ゆるゆると話が進み、実際に何度も寝る始末。ギャロ様の眼光程度では、その眠りを凌駕することができないくらい。
基本、映像は凄く綺麗で好み。レオが妻が殺めた男を埋めるシーンなど、ムダに綺麗。それがまた眠りを誘う。

「なんじゃこの話は!!!」突然、緊張が走る。急に目が醒める。観終わってから振り返れば、そういう奇病だということが、色々フラッシュバックで差し込まれてはいるのだが…。もっと謎解きや、サスペンス要素を強調すれば良かったのに…と思うが、あえてそうしないことを狙ったんだろうな…とも思う

で、なんで“ガーゴイル”なのかは私にはわからん。医学の普及によって化け物になったという設定が、元々豊穣の神であったものガーゴイルが、キリスト教の普及により魔物に変化したのではないかと言われていることにダブるということなのかな。でも、それって一説でしかないし、監督も脚本家もそんな意図はなかったろうから、むりやりヒネりすぎな邦題だな…と思う。

(以下、ネタバレ)
なんでシェーンはレオの妻を殺すのか。何か、別の感染者を食えば、治るとかそういうことじゃないんかい。彼女が人を殺めている映像が頭に浮かんで、そんなことはしちゃいけいない! っていう正義の心? で、結局、自分も我慢できず、ミイラ取りがミイラになっちゃうっていうオチ? ん~。この展開が、まったくもってつまらない。
ギャロ様にしては珍しい作品に出ているな…と思うが、“耽美”とも違うこのノリがイマイチ性に合わない作品。

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imageX0080.Png公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:ジョン・アヴネット
出 演:アル・パチーノ、アリシア・ウィット、エイミー・ブレネマン、リーリー・ソビエスキー、ウィリアム・フォーサイス、デボラ・カーラ・アンガー、ベンジャミン・マッケンジー、ニール・マクドノー、リーア・ケアンズ、スティーヴン・モイヤー、ポール・キャンベル、カイ=エリック・エリクセン、ジュリアン・クリストファー、ティム・ヘンリー、クリスティーナ・コープランド、ブレンダン・フレッチャー、クリストファー・レッドマン 他
ノミネート:【2008年/第29回ラジー賞】ワースト主演男優賞(アル・パチーノ「Righteous Kill」に対しても)、ワースト助演女優賞(リーリー・ソビエスキー「In the Name of the King: A Dungeon Siege Tale」に対しても)
コピー:美女が微笑むとき、今夜も誰かが吊るされる──

女性を逆さ吊りにして切り刻む連続猟奇殺人が発生。そのうちの一つの事件で、双子の姉ジョーニーが餌食となり、妹のジェイニーが命を取り留める。ジェイニーの証言により容疑者フォースターが逮捕される。裁判では、FBI異常犯罪分析医ジャック・グラムの証言により、ジョン・フォースターに死刑判決が下る。9年後、グラムは大学で教鞭を執っていたが、フォースター死刑執行の日の朝、教え子デイル・モリスが猟奇殺人の被害者になったことが知らされる。そしてその手口は9年前のフォースターの手口を酷似していた。すると、グラムの携帯電話が突然鳴り、「お前の命はあと88分だ」と言い切れるのだった…というストーリー。

とにかく、アホか! といいたくなるくらい展開が早い。結果的に言うと、このお話で巻き起こる事件は、非常にありきたり。刑事モノのTVドラマの1エピソード程度の目新しさしかなく、どこかで観た印象すらある。シリアルキラー物の真似事の域を出ていない。
しかし、その凡庸極まりないお話を、どれくらい急展開にすれば、観客にバレずにすむか限界に挑戦! みたいな、実験映画のようですらある。

グラムが犯人を捜す時、意図的に女性をスルーする。シリアルキラーは男性だという傾向を逆手にとっているのだな…ということがありありの演出なのだが、こんな急展開に加えて、キーになる女性が4,5人出てくるが、もうだれがだれだか途中でわからなくなってくる。

さらに、携帯落として壊れるシーンなど、極めてご都合主義的な演出が多数。血を拭くためにハンカチをわたしたが、鼻血は拭かないとか。もう、どんなに稚拙なシナリオといわれようとも、どんな手をつかっても、場をカオス状態にして、観客を煙に巻いてやろうという意志しか感じられない。

こんな状態なので、肝心の犯人を追い詰めていく楽しみは薄い。“88分”は単なるカウントダウンじゃなく、意味があった部分は良かったと思うが、あまりに駆け足なもので、グラムの妹の件を知っていたのはフォスターが妹を殺した犯人だったから? いや、単にグラムの過去を調べただけ?とか、そんな低レベルで大混乱してしまった(でも、巻き戻して観返す気はまったくおきない)。

そういう意味では、演出意図としては成功しているのかもしれない。でも、だからといって面白くはない。そして、そんなグダグダをなんとか締めようと、高所恐怖症のお尻をムズムズさせるような駆け引きで、まとめようとする。これまた稚拙。

ほんと、アル・パチーノじゃなかったら、未公開作品になってもおかしくないレベルだよ。ラジー賞を与えるとするなら、演者ではなく脚本に対してだと思うんだけどね。ある意味、珍作だと思うんで、逆にお薦めしちゃうけどね。自己責任で。

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image0492.png公開年:2002年  
公開国:アメリカ
時 間:106分  
監 督:ルイス・マンドーキ
出 演:シャーリーズ・セロン、ダコタ・ファニング、スチュアート・タウンゼント、ケヴィン・ベーコン、コートニー・ラヴ、プルイット・テイラー・ヴィンス、スティーヴ・ランキン、ゲイリー・チョーク、コリーン・キャンプ  他
コピー:外出禁止。
誘拐。監禁。命は30分ごとの連絡でつながっている。


オレゴン州ポートランド。主婦カレンは、麻酔医の夫ウィルと6歳の娘アビーの3人で幸せな生活を送っていた。ある日、ウィルがシアトルへ出張に出かけると、家に見知らぬ不審な男が侵入。ジョーと名乗るその男は、仲間がアビーを誘拐したことをカレンに告げる。そして、30分ごとに連絡しなければアビーは殺される手はずになっていると脅す。しかし、アビーは重い喘息を患っており、発作をおこせば死の危険もあることを知り、ジョーは動揺する。とりあえず、発作をおさえる薬を、アビーを監禁している山小屋に届けるため、ジョーはカレンに目隠しをして車を走らせるのだったが…というストーリー。

邦題もマッチしてないけど、原題のTRAPPEDもちょっと考えすぎた結果、凡庸になっている。前半は、娘が重度の喘息である設定が生きているので、“30 Minutes”でよかったんじゃないかな。

『ファニーゲーム』ばりの、高圧さと理不尽さで、観ている側も力が入る。出演俳優が豪華だし、見ごたえは十分である。ただし、仕事で疲れた頭で観たならば…である。鑑賞後に、振り返って考えると、ちょっと説明不足かな…と。
まあ、ウィルの家庭のことを調べ上げたのに、娘が喘息なのは調べられなかった…というトホホな点については多めにみることにしよう。

冒頭の6ヶ月前のシーン。この段階で、同じ手口で誘拐をやっている。はじめはただの誘拐かと思っていたが、アビーの誘拐が営利目的ではないと考えると、これまでの誘拐はおそらく娘の医療費目的だったんだろう。その点、うまく描けていないよな。
また、ウィルの失敗によって娘が死んだと思い込んだのはいいとして、、病院の麻酔科医が失敗したならば、医療ミスで訴訟すればいいのではないか。いや、深読みすれば、金なんかいらないんだ、同じ思いをさせてやる!っていうことなんだろう。でも、それならば、なんで、大金をせしめることにあそこまで執着するのか。殺しはしないまでも、ギリギリまで苦痛を味あわせてやるということなのか。おそらく状況が変わって、彼の“計画”とやらが揺らいだということなんだろうが、さすがに、アビーを自分の子にしたくなったというのは唐突に思える。せめて、そういう気持ちが涵養されてくるプロセスをもうちょっとうまく表現してほしかった。それとも、ジョーは始めから心の中ではそう思っていたとか?いや、考えにくい。

カレンの行動も不思議。相手の要求がお金であることがわかった。娘の所に薬は渡した。じゃあ後は、おとなしくしているのが得策なのだが、自分が犯されそうになって抵抗する。子供の命と自分の貞操を天秤にかけて貞操を取るというのは、いかがなものか…。
また、不思議なのは、ウィルは自分の失敗ではなく執刀医の失敗だと説明する。でも、それってウィルがそういっているだけで、なんの証拠もない。だけど、シェリルは信じちゃうんだよね。むしろ、ウィルが失敗したとか、病状が重かったからだとは思うが自分のせいでないとは言えない…とか、そういう展開のほうがよかったのではなかろうか。
すごく、スリル溢れてドキドキさせてくれる良いサスペンス作品なんだけど、ちょっと考えると変な部分に気付いちゃうのが、玉に疵なのだ。

自家用飛行機を使ったラストの展開は悪くないと思う。ウィルが自家用飛行機を持っているという設定は生きているし、エンジンを切るアイデアもいいアクセントだと思う。でも、あそこまで大捕物にする必要はなかった。そして、FBIが出てこなくても良かった(ジョーが勝手にFBIにおびえるだけで十分だった)。なんか、削ぎ落とすべきものを削ぎ落としてないのが、敗因な気がする。

結論をいうと、なかなか秀逸だが、粗が目立つ。粗に気付かないようにするためには、少しアルコールを飲みながらみたほうがいい。そうすれば、大満足できる作品だと思う。
#シャーリーズ・セロンも、まさか、ダコタ・ファニングに喰われるとは思ってなかっただろうな。

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image1958.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:101分
監 督:マシュー・チャップマン
出 演:チャーリー・ハナム、リヴ・タイラー、パトリック・ウィルソン、テレンス・ハワード、クリストファー・ゴーラム、ジャクリーヌ・フレミング 他
コピー:生と死の境界線。彼は何故そこに立つのか。




男がビルから飛び降りようとしているとの通報を受け、刑事のホリスは現場へ急行する。現場ではギャビンという男が、高層ビルの屋上の縁に立っていた。ホリスは早速説得にあたったが、ギャビンは「12時調度に自分が飛び降りなければ、ある人が死んでしまう」という。単なる自殺願望者ではないと悟ったホリスは、説得しつつ事情を尋ねると、ギャビンはこのような事態になった理由を説明し始める。それは、ギャビンと彼の隣に引っ越してきた美しい人妻シェーナと、その夫でキリスト教のジョーの間におこった出来事だった…というストーリー。

“Ledge”ってのは建物の出っ張ったところとか崖みたいになったところを指すみたい。ギャビンが飛び降りようと経っている場所のことだろうね。“12時の死刑台”という副題が、いかにもサスペンス的な印象与えるが、それほど直球ではない。売り文句を色々考えたんだろうけど、残念ながら失敗している。でも、宣伝が難しい作品なのは、確かにその通りだと思う。


結構よく出来たシナリオで、ギャビンが一体何故そこから飛び降りるハメになったのかを、全編にわたって辿っていく。その説明で、約100分をひっぱっていくのだが、構成の配分が見事で最後まで飽きることがない。そして、説得に当たっている刑事も、自分の妻がひた隠しにしていた秘密を知ってしまったところで、正直、他人が飛び降りようがどうしようが知ったこっちゃない状況だったりする。刑事とギャビンとのバランスもしっかり取れている。

メインの登場人物である3人は、それぞれ外面的にはしっかりとした人物である。ギャビンはホテルの副支配人だし、シェーナは大学に通う人妻。その夫は宗教バカではあるが仕事を持っており確固たる意思を持っているように見える。むしろギャビンのゲイの同居人のほうが、HIVに感染してしまい職も失い、変な新興宗教まがいのセミナーにはまっていて、弱い存在に見える。
しかし、外面的にはしっかりしていそうな彼らの心には深い傷がある。そして、それぞれが救いを求めて行動しているのだが、それぞれの立場と経験の違い故に軋轢が生じる。

(以下ネタバレ)
おそらく観る人によって感想はかなり異なるのではなかろうか。簡単にいえば、姦通した二人と狂信者のどちらに共感の度合いが傾くか…というバランスが、人によって違うだろうということ。私は、狂信者、特にキリスト教原理主義者の救いようのない不寛容さに、とても不快感を感じているので、その夫に同情する気は一切なかった。自分がどん底にいたときに救ってもらったという、“感謝”という衣をまとった後ろめたさに支配されて、彼女は自分自身を偽り続けるしかない状況。これは何かおかしいのではないか?と思いつつも、そこを越えることができない。
さて、彼女はどうもがいてくのか。彼女が学生でもあるという設定が、実は肝だと思う。開眼して世の中を知っていけばいくほど、人は自分や自分の置かれた環境に対して疑問を抱くようになってく。夫の不寛容も、ゲイに対する嫌悪感も、自分で考えることを止めて、思考を他人の考え方に委ねてしまうというある意味“無知”から生じていると思う。

本作が、あまり評価されていない理由を探すとすれば、あまりにも救いのないオチであること。そして、彼が死なねばならない理由が無いことと、もうちょっとウマいこと処置できなかったのかよ…という思いが湧いてくるからだろう。
だけど、“納得”できるよく練られたシナリオだった。お薦めしたい一作。

#最近、ちょっと気付いたんだけど、日本語吹替音声が無くてで“デカ字幕”が付いているDVDって、なかなかいい内容なのかも。おそらく、吹替音声を付ける予算は無いんだけど、それじゃしのびないから、せめて字幕だけでも大きくしようっていうロジックなんじゃないかな。



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image1986.png公開年:2007年 
公開国:アメリカ
時 間:96分
監 督:フランク・A・カペロ
出 演:クリスチャン・スレイター、エリシャ・カスバート、ウィリアム・H・メイシー、ジョン・ギャラガー、マイケル・デルイーズ、サッシャ・ノップ、デヴィッド・ウェルズ、ランドルフ・マントゥース、フランキー・ソーン、ジェイミソン・ジョーンズ 他




冴えない会社員のボブは、同僚たちをいつか殺してやろうと、デスクに銃と銃弾を潜ませていたが、実行に移すことはできず、乱射することやビルを爆破することを夢想するだけの日々をおくっていた。しかし、とうとう堪忍袋の緒が切れて、銃を撃とうと決心したそのとき、一発の弾丸をデスクの下にころがしてしまう。それを拾おうとデスクの下に潜り込むと、突然銃声が。起き上がると、そこにはボブと同じように会社で馬鹿にされていたコールマンが無差別に銃を乱射しているではないか。そして撃たれた人の中には、ボブが密かに心をよせていたバネッサも。瀕死のバネッサの息の根を止めようとするコールマンを、ボブは射殺する。次の日、ボブは社員を救ったヒーローとして一躍有名になり、副社長の昇進を命ぜられるのだったが…というストーリー。

ストレスを極限まで募らせているハゲのおっさん。家に帰れば帰ったで、金魚の会話を妄想するような、ヤバイ男。そんなサイコぎみのヘタレ中年が、ただただキレまくる作品かと思いきや、まさか別の社員が乱射。ほんの一瞬の差で、凶悪犯の道とヒーローの道が分かれてしまう。予測の一枚上をいく展開と、スピード感。寝ながら観ていたのだが、思わず起き上がってしまうぐらい、惹き込まれた。

(ネタバレ注意)
お気に入りの女性を助けたのはいいが、半身不随になってしまい、何で殺さなかった!と罵られる始末。そんな余生が耐えられない彼女は、ボブに殺してくれと懇願する。いつも周囲のいいなりの彼が、それを正面きって断ることができるはずもなく、ましてや彼女に人生の尊さを説くなんてことができるわけもない。
なんだかんだで、半身不随にならなければ、関係などできるはずもなかった二人。ボブは献身的にバネッサの世話をし、バネッサもボブに感謝とも愛情ともつかない感情を抱き始める。でも、一歩間違えれば、自分が乱射犯人となって、彼女を誤射していたかもしれない。それに、こんなことでも無い限り、彼女が自分を頼りにしてくれるなんてことはあり得ないわけで、この関係を素直に受け入れていいのかどうか。彼女の気持ちを本物なのか?と、彼はずっと疑念を抱き続けるのだ。

一方、会社では幹部に昇進。なにか創造的な仕事が待っているのかと思いきや、仕事なんだかどうだかわからない業務ばかりなのに、なぜかリッチな待遇が与えられる。確かに夢のような生活。しっくりこないにせよ、彼はそんな夢のような展開に満足できるのか、馴染めるのか…。

なかなか魅力的なプロットなのに、本作は日本未公開。なぜか。それはひとえにラストの内容による。

(さらにネタバレ注意)
すべてボブの妄想でした…というオチがわかりにくのだ。妄想でした…というオチが悪いわけではない。あの、一発の銃弾を落としたところから、すべて彼の妄想だったという演出らしいのだが、社長がバネッサの家から出て行った後、自分の家に戻り、次の日になって元の服を着て会社に乗り込んだ…と解釈すれば、別に時系列的におかしくないんだもの。
突然、オフィスの飾りつけは無くなるし、弾丸が転がっている。そしてバネッサは生きている。ただ、あれ?それはバネッサ?似た人?投影?とか色々な可能性は浮かんできて、妄想だったんだ…とスッと入ってこないんだもん。妄想ってことでいいんだよね?ね?と、私は15分くらう戻して観なおすのを2回繰り返したわ。
途中に出てくる、精神科医が差し出したメモとかもよくわからない。そんなメモどっかに出てた?と、そっちは頭から早送り観なおしたけど、出てこなかった(と思う)。わかったのはボブの筆跡だってことだけ。

また、半身不随になった彼女とのストーリーが魅力的だった分、そっちはそっちで観てみたかったという思いが残るのが、妄想じゃないという可能性を無意識に探ったようだ。

最後の15分の演出だけ整理すれば、「ユーリカ!」って感じで、すべての糸がほぐれていくような快感を、観客に感じさせることができたと思う。作り直してくれないかな。

拍手[3回]

image1936.png公開年:2011年
公開国:アイルランド、ポーランド、イギリス
時 間:83分
監 督:パヴェル・パヴリコフスキー
出 演:イーサン・ホーク、クリスティン・スコット・トーマス、ヨアンナ・クーリグ、サミール・ゲスミ、デルフィーヌ・シュイヨー、ジュリー・パピヨン、ジェフリー・キャリー、ママドゥ・ミンテ、モアメド・アルージ 他




アメリカ人の作家・トムは、別れた妻子が住むパリを訪れる。しかし、妻は夫の接近禁止命令を取るほど会うことを嫌がっており、突然訪れた夫に対して警察を呼ぶありさま。失意のトムは、娘と暮らすことを諦めきれずに、しばらくパリに滞在することに。しかし、バスで眠っている間に荷物を全部盗まれてしまう。何とか交渉して、郊外の寂れた旅館に滞在することができたが、旅館の主にパスポートを預かられてしまう。宿賃のメドが立たないため、旅館の主が薦める夜間警備員の仕事に就き、50ユーロの日当を稼ぐ日々。そんな中、トムが作家であることを知った本屋の店主が、パリに住む作家たちが集まるお茶会にトムを招待する。そこで、美しい女性マーゴットと出会い、二人は意気投合する。しかし、それからトムの周りで不可解に出来事が起こりはじめ…というストーリー。

どうしてトムの元妻は、トムの元を去ったのか。会話の内容を聞くと、妻子がフランスに行ったのは、最近の話ではない模様。トムがそこまで固執するのは何故なのか。時間が空いて急襲したのは何故なのか。フランス国内で有効な接近禁止命令が降りるということは、これまでも同様のことを繰り返しているのか。では、なんで今回に限ってはフランスに残ろうとするのか。
追々、ディテールが語られるのだろうと思ったが、最後まで語られはしなかった。

半ば無理やりやらされる夜警の仕事。何か怪しい取引なのか…、どんな事件に巻き込まれるのか…。途中で、ルールを逸脱したことで、なにか危険な事件に巻き込まれるのか!と思ったが、別に何もなかったし、その仕事が何なのか、最後まで明かされなかった。途中で「いったい何をやってるんだ?」と主人公につぶやかせておきながら…である。

この、妻子との話と夜警の話は、まったくリンクしない。きっとラストに近づくにつれ関係が出てくるのだろうな…と思ったが、何もなかった。

殺人事件が発生し、拘束される展開。たいした証拠もないのに拘束されたことから、きっと何かの陰謀に巻き込まれるのだろう。きっと刑事だってグルに違いない…と思ったら、急に斜め上の展開に。
(ネタバレ)
マーゴットがこの世のものではない…とか、なにそれ。ああ、霊だったのか。あのシーンはああいう意味だったのか!という『シックスセンス』的な振り返りの驚きは一切ない。残り10分くらいに急に霊だっていわれても、なにがなにやら。

ワケが判らないまま、娘が誘拐される展開になり、なぜか犯人扱いされるし。霊のマーゴットの仕業で取引するはめになるとか。なんじゃこりゃ。本当にマーゴットの仕あ業だったのかもよくわからんし、その後、取引の通り、トムはお亡くなりになってしまったのかもよくわからん。死んだとして、それに何の意味があるのかもわからない。

なんじゃこりゃ…。もう、これしか言うことはない。イーサン・ホーク、仕事選べよ。観るだけ時間の無駄。観ちゃダメ警報発令。そりゃ日本未公開だよ。
#なんで“五番通りに住む女”がイリュージョンになるのか…

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image1928.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:デブラ・グラニック
出 演:ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、シェリル・リー、デイル・ディッキー、ギャレット・ディラハント、ローレン・スウィートサー、アイザイア・ストーン、アシュリー・トンプソン、ケヴィン・ブレズナハン、テイト・テイラー、シェリー・ワグナー 他
受 賞:【2010年/第26回インディペンデント・スピリット賞】助演男優賞(ジョン・ホークス)、助演女優賞(デイル・ディッキー)
コピー:家族のために 未来のために彼女は大人になるしかなかった――

ミズーリ州のオザーク高原にある、とても現代のアメリカ社会とは思えないような貧しい寒村。父親は家を出てしまい、心を病んだ母親と幼い弟妹と暮らす17歳のリー。特に収入があるわけでもないが、家族を支えるために何とか生活を切り盛りする日々。しかし、父親が言えと土地を保釈金の担保にしたまま失踪したために、あと数日で追い出されることに。家族を守るためには、父親を見つけ出す以外に方法はない。そこで、親戚や村人に尋ねて廻るが、麻薬に関わる触れられたくないことがあるらしく、リーを追い返すばかり。しかし家族を守るために、意を決して犯罪組織に踏み込んでいく…というストーリー。

日本だって、すべての子供が幸せな環境にあるわけではないけれど、極貧で脱法集団ばかりで、何の未来も見えてこないような集落ってことはまず無い。
自由を標榜するのはいいが、それと社会環境の維持がバーターになっているアメリカって。もうあるべき社会像が異なる。日本とアメリカは、ミツバチとスズメバチくらい種類が違うんだな…と感じさせてくれる。土地が広いからとか、そういう問題ではないわ。メディアと通して見ているアメリカ像なんて、実際のアメリカの数%でしかないんだな。

そんな中でも、強く正しく生きている少女。というか、別に肩肘張って生きているわけじゃなくて、犯罪から距離を置こうとしているだけなんだけどね。冬でもないのに、漂う空気は極寒だ。正しく生きようとする人間が生きにくい世界。

周囲の人間がほぼ薬物に関わる犯罪者や、それを隠そうとする人々だらけ。そんな人々から距離を置こうにも、父親の居場所を訊くためには関わらざるを得ない。訊いたら訊いたで暴力を振るわれるというバイオレンスムービー。
そんな苦労をしたにも関わらず、父親の足跡は掴めない。それどころか、皆が嘘をつくばかりで、訊けば訊くだけわからなくなる。町の人々は何を隠しているのか?というミステリームービー。
リスと撃って解体して食いつなぐしかないというサバイバルムービー。
そして、より強い人間へと成長していく、グローインアップムービーでもあり、そんな掃き溜めのような村に、決して美しくはないけれど、家族愛の花が咲く。

派手な作品ではないけれど、お薦めの良作。

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プロフィール
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クボタカユキ
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趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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