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公開年:2011年
公開国:ベルギー
時 間:95分
監 督:ニコラス・プロヴォスト
出 演:イサカ・サワドゴ、ステファニア・ロッカ、セルジュ・リアブキン、ティボ・ヴァンデンボーレ、デュードネ・カンボンゴ 他







アフリカから地中海を渡って密入国してきた男アマドゥ。その後、悪質な斡旋業者の元で不法労働していたが、一緒に入国してきた仲間のシアカが病気になって働けなくなってしまい、アマドゥは彼の分まで働いていた。しかし、満足に薬も与えられないれないため、このままでは死んでしまうと考えたアマドゥは、こっそりと抜け出し、廃棄物を転売してなんとか薬を調達する。しかし、戻ってみるとシアカの姿が無い。雇い主に抗議にいくとシアカは逃げたというが、身動きの取れないシアカが逃げることなど不可能で、死んだことは間違いなかった。さらに、雇い主はシアカの在留許可やパスポートのために使った4000ユーロをアマドゥに払えと言う。憤慨したアマドゥは雇い主の高級車を破壊し、そのまま逃亡。あてもなく逃亡したアマドゥは、とある建物に進入。置いてあった服に着替え、金目の物を物色していると、男女が言い争う声が聞こえる。アマドゥはその女の姿に惹かれ、部屋を出て行った彼女を追いかけるのだったが…というストーリー。

タイトルのインベーダーが何を指すのか?という所が、重要なポイントだろう。密入国した黒人が不法労働をするという展開なので、昨今のヨーロッパ諸国での移民問題に焦点を当てた作品なのだろうと、誰しもが思う。密入国者である弱みにつけこまれ不当な待遇で働かされ続けるアマドゥ。怒りを爆発させ、大暴れして逃げてしまう。普通に考えれば、あのいかにも悪そうな雇い主から、追われる展開になると考えるだろう。

ところがどっこいそっちの方向には展開しない。逃げている時に見かけた、金持ちそうな白人女性を執拗に追いかける。逃げている時に何を呑気な…というか、性欲を爆発させている場合じゃなかろう…と思うのだが。
不当に働かされているということで、きっと、この黒人は、かわいそうな境遇なんだろう。友達思いでマジメなんだろう…と考えてしまうが、その観客の頭の中で構築された観念が壊される。何が移民問題だ。その後、危険な情事という、思いも寄らぬ展開を見せてくれる。
これがこの作品の特徴で、この展開のパラダイムシフトがおきるのは、この一回だけではなく、20分程おきに続くのだ(詳細は観て欲しい)。

で、インベーダーが何を指すのか?なワケだが、途中、あれ、インベーダーっていうのはアマドゥのことじゃなく女のことなんじゃね?なんて、見立てが変わっていったりする。で、ラスト。
(ちょっとネタバレしちゃうが)やっぱりインベーダーはアマドゥのことを指していた。え?え?って感じになる展開。あの状況で、気付かれもせずに間にいられるってことは…ってことだよね。

そして、よーく考えると、はじめに考えた移民問題がテーマなのでは?という所に戻っていく。安い労働力という側面はあるにせよ、自国では稼ぐことができない人に手を差し伸べて受け入れてあげたにもかかわらず、最終的にはその手に噛み付く移民たち。結局、自分の欲望のまま行動し、我々の生活を腐食していくインベーダ以外の何者でもないのでは?っていうね。

ヨーロッパの中規模国の国民が潜在意識として感じている移民に対する恐怖が、アマドゥという怪物の姿を借りてうまく形になっている。他に類を見ない構成の作品だと思う。もうちょと評価されてもいい作品かな。

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