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公開年:1967年
公開国:アメリカ
時 間:133分
監 督:リチャード・ブルックス
出 演:ロバート・ブレイク、スコット・ウィルソン、ジョン・フォーサイス、ポール・スチュワート、ジェフ・コーリイ、ジェームズ・フラヴィン、ジェラルド・S・オローリン、ジョン・ギャローデット、チャールズ・マックグロー、ウィル・ギア、ジョン・マクライアム、レイモンド・ハットン 他
受 賞:【2008年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
仮釈放中のペリーとディックは、服役中に得た裕福な農場主の情報を元にカンザス州へ向かった。その後、農場主の一家4人が惨殺されいるのが発見される。農場主はのどを掻き切られた上に至近距離から散弾銃で撃たれ、他の家族も手足を紐で縛られた上に同様に銃撃されるという、あまりにも酷い殺され方であった。被害者は誠実な人柄で生活上のトラブルも一切無く、且つ金品が奪われていないことから、単なる強盗の仕業とは考えにくく、捜査は難航を極め…というストーリー。
2005年公開の『カポーティ』は、この『冷血』という作品を書き上げるまでの、原作者カポーティの苦悩を綴った作品で、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンをはじめ、数々の受賞歴がある。当時、レンタルビデオ点に『冷血』は無く(『カポーティ』と同時にリバイバル的に発売が開始されたはず)、一緒に観ることはできなかったのだが、やはり『カポーティ』を観る前に、本作を観ておくべきだったと、悔やまれる。
2010年版の『時をかける少女』を観る前に、大林版なり昔の作品を観ておけば、余計に楽しめるのと同じで、一緒に観ることは非常に意味がある。原作者のトルーマン・カポーティは、『ティファニーで朝食を』などを世に出す売れっ子作家だったのだが、この事件が発生すると創作意欲をかき立てられ、事件現場や関係者を訪ねるほど。2人の容疑者が逮捕された後は接近を試みて、特にペリーに魅力を感じて何度も面会を重ね、最終的には信頼を得るだけではなく、自分と似たような生い立ちの容疑者に共感してしまい、彼を延命させたいという思いと、早く死刑になってほしいという願い(死刑にまでならないと本を出版できないから)の板ばさみになり苦しむ。それが映画『カポーティ』の内容である。
たしかに『カポーティ』だけ観ても理解できないわけではないのだが、本作を観て「あぁ」と思う点が多々あるのだ。本作には新聞記者役の人物が狂言回し的に登場し、取ってつけたように死刑制度や保釈制度について批判的なセリフを言う。この映画を観て、ペリーに同情して同じ思いを抱く人間はいないだろう。むしろ死刑になるのはもっともだと思うはずで、この演出には違和感を感じる人が多いはず。でもこれは、カポーティがペリーにただならぬ感情を抱いてしまった発露だとすると、しっくりくるのである(ディックよりもペリー寄りの描写が多いのも、これで頷ける)。この『冷血』というタイトルも、二人の犯行に普通の人間的な感情が感じられないところから付けられたと思われているが、加害者に共感しているくせに、作品を世に出すために死刑執行を望んでいる自分こそ“冷血”な奴じゃないか…そういう意味で付けられたという説があるくらい。こういう情報を知ると、一緒に観る意味をご理解いただけるのではなかろうか。
#カポーティの生前の写真を観ると、フィリップ・シーモア・ホフマンよりも、本作のペリーに近い表情に見えるのも、また興味深かった。
本作の演出について。はじめの方では一切犯行シーンは表現されず、犯行前と逃亡過程と捜査状況が淡々と描写される。そして、終盤に刑事にゲロったところと合わせて、犯行シーンが描写される。それはそれでおもしろい演出(逆コロンボみたいなものだ)。
昨今は異常犯罪を扱った作品が多く、各々非常に小馴れているので、本作の演出が古臭く稚拙に見える人もいるかもしれない。また、生い立ちと犯行のつながりも希薄に思えるかもしれない。しかし、実録犯罪モノのまさに走りである点を考慮して大目にみるべきだろう。モノクロ映像なのに、観進めていくうちに一切それが気にならなくなるくらい、リアリティも迫力もある。
是非是非、この『冷血』を観てから『カポーティ』を観ることを強くお薦めする。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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