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image1693.png公開年:2010年
公開国:日本
時 間:141分
監 督:三池崇史
出 演:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、波岡一喜、石垣佑磨、近藤公園、窪田正孝、伊原剛志、松方弘樹、吹石一恵、谷村美月、斎藤工、阿部進之介、上杉祥三、斎藤歩、井上肇、治田敦、高川裕也、辰巳ヒロシ、桜井明美、茂手木桜子、神楽坂恵、内野聖陽、光石研、岸部一徳、平幹二朗、松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親 他
受 賞:【2010年/第34回日本アカデミー賞】撮影賞(北信康)、照明賞(渡部嘉)、美術賞(林田裕至)、録音賞(中村淳)
コピー:命を、燃やせ。

将軍の異母弟で明石藩主の松平斉韶は、その領地において悪逆非道の限りを尽くし民や家臣を苦しめていた。家老間宮図書はそれを諌めるためために切腹憤死したが、将軍の配慮によって斉韶はお咎めなしとなる。それどころか、来春に斉韶が幕府の老中に就任することが決まっており、その人事を知る老中・土井利位は、密かに斉韶を討ち取ることを決意。かねてより良く知る御目付・島田新左衛門を呼び出し、暗殺の密命を下す。新左衛門は、甥の新六郎をはじめ十一人の腕に覚えある男たちを召集。後に加わる山の民・木賀小弥太を含む総勢十三人の暗殺部隊を組織し、参勤交代帰国途上の中山道落合宿にて斉韶を討つことにした。しかし、斉韶の腹心・鬼頭半兵衛もまたその動きを察知し、その守りを堅め…というストーリー。

エログロ&バイオレンス映画の旗手ながら、『ヤッターマン』や最近では『忍たま乱太郎』などのアニメの実写化と、“職業監督”を着実にこなす仕事人。そうやってスタッフ達に飯を喰わせ続けているのだと考えると、ただただ立派としか言いようが無い。だから、たまに本作のような、自分の趣味を自由に盛り込める作品に出会ったときくらい好き勝手にさせてあげてもいいじゃないか…という気になる。

1960年代の作品のリメイクらしい。ただリメイク作品とはいえ、本来三池監督がやりたかった部類の作品なんだと思う。その証拠に、本作におけるエログロ描写の容赦なさは、永井豪の『バイオレンスジャック』並(そういえば、永井豪とセンスが似てるかもしれん)。本来こういう表現が本職の人だから、嬉々としてやってるのが目に浮かぶ(おそらくオリジナルにはこの描写はないはず)。PG-12になってるけど、ちょっと中学生には見せたくないレベルなんだけどなぁ…(トラウマになっちゃう子いると思うよ)。
岸部一徳の例のシーンなど本当に必要なのか否か甚だ疑問なのだが、これを入れるのが普通っていう感覚の監督だからね。そういう意味では、昨日の『アウトレイジ』よりも振り切れているかもしれない。
観ていて力の入るシーンがたくさんあって、純粋に楽しめるチャンバラ映画に仕上がっているのでお薦めしたい。

ただ、自由にやりすぎて、役所広司が締めていなかったら、『SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ』の二の舞になっていたんじゃないかとゾッとする面もある。
それにいくらなんでも小弥太が生きてるのは無理があるだろう。私は、新六郎も実は死んでいて、最後に自分の死体に躓いて…みたいなオチを予測していたのに、そうじゃなかったみたい。

新境地を開いたといわれる稲垣吾郎だが、確かにしっかりと狂人を演じてはいる。しかし、他作でも使ってみようという気になるかは微妙なところ。どうせ、他の役でも代わり映えのない演技に違いないし、逆にこの役のイメージがダブって使いにくい(本作で先にキャスティングしたもの勝ちってことだ)。
それに対して、いつもシュッとしたキャスティングばかりの伊勢谷友介は、こういう汚れた役のほうがマッチすることが判明し、仕事が増えること請け合いだろう。

また、CGを極力使わなかったのは結構なことなのだが、逆に部分的に使用した箇所が目立ってしまったのはちょっと残念かも。照明や美術などアナログな部分のデキがすごくよかっただけにね。

#オリジナルを観てみたくなった(レンタルしてるかな?)




負けるな日本

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image0445.png公開年:1957年
公開国:日本
時 間:110分
監 督:黒澤明
出 演:三船敏郎、山田五十鈴、志村喬、久保明、太刀川洋一、千秋実、佐々木孝丸、清水元、藤木悠、土屋嘉男、浅野光男、大友伸、佐田豊、高堂国典、富田仲次郎、稲葉義男、土屋詩朗、高木新平、増田正雄、松下猛夫、大友純、上田吉二郎、谷晃、堺左千夫、沢村いき雄、大村千吉、三好栄子、浪花千栄子、恩田清二郎、笈川武夫、桜井巨郎、井上昭文、小池朝雄、坪野鎌之、加藤武、高木均、樋口迪也、大橋史典、木村功、宮口精二、中村伸郎 他

戦国時代。蜘蛛巣城の城主都築国春は、北の館城主藤巻の謀反により攻め込まれ、やむなく篭城。もはやこれまでと城内で覚悟を決める。そんな中、一の砦の鷲津武時と二の砦の三木義明の活躍により形勢が逆転し、何とか難を乗り切ることができた。危急を救った武時と義明は主君に召され蜘蛛巣城へ向かうが、何故か道に城の前にある蜘蛛手の森から迷って抜け出せなくなる。すばらくすると小屋を発見。その中には老婆がおり、「武時は北の館の主になり、その後蜘蛛巣城の城主になる。義明は一の砦の大将になり、義明の子はやがて蜘蛛巣城の城主になる」と予言するのだった…というストーリー。

他の黒沢作品にある社会主義的視点とか、ストーリーの裏にある寓意を読み取ろうとか、そういう観方をすると、ちょっと調子が掴めないかもしれない。もちろん、娯楽大作でもない。

実のところ、話の筋はまるっきりシェークスピアの「マクベス」で、キャラクターからあらすじまでほぼ一緒。三人の魔女が一人のもののけに変わっているのと、一部のキャラが省略されている程度しか差がない。「洗っても血が落ちないよぉ~」なんてのも、「マクベス」が元ネタで、そういうレベルまで一緒。その戯曲を戦国チックにして歌舞伎や能の様式美を加えて仕上げた作品ということ。後の『乱』なんかと同じ方向性の作品、いや習作だったといってもいいくらいである。

ストーリー自体はかなりぶっ飛んでいるのだが、元の「マクベス」自体がかなり不思議な話なので、黒澤明のせいでは無い。魔女の予言どおりにことが進んでいるだけで、主人公がなにか悪さをしたから因果応報で滅びてしまうとか、そういう教訓めいた話ではない。はっきりいってけっこう理不尽な話で、シェイクスピア悲劇の中最も不吉な作品と言われるのはそのせいである。

予定説の概念をなんとなく理解している欧米人にはピンとくる作品だと思うが、日本人にはどこか納得のいかない話かもしれない。実際、欧米での評価は海外では高い模様。

ということなので、ストーリー上の工夫はほぼないといってよい。やはり、「マクベス」を愚直になぞりながらも、それを日本の様式美で如何に表現するか?というテーマだったんだと思う。そういう意味では大成功だし、以前に本作を観た時はマクベスを知らずに観たのだが、今回内容を把握してから観ると、やはり感じ方に差があった。「あーら、同じ。うまいこと戦国時代に置き換わってる~」っていう感心。原作どおりに『ハリーポッター』がうまいこと映画化されてるのを観て感心するのと同じ感覚かも。

じゃあ、所詮マネっこなので、それほど見る価値はないか?といわれるとそんなことはない。なんといっても、最後の絶命時の雨あられと矢が突き刺さるシーンは圧巻の極みで、昨今のCGなんか紙クズみたいに感じる。首に刺さるシーンはどうやって撮ったのか、何度観てもよくわからないほど。黒澤組の技術力に圧倒されること必至である。音声が聞きにくいのは毎度のことだけど、画の力でなんとなく持っていかれて納得しちゃうくらい。黒澤作品の時代劇の中では、説教臭い部分がないので、一番すっきり楽しめる作品なのかも。お薦め。




負けるな日本

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image1670.png公開年:2001年 
公開国:日本
時 間:137分
監 督:佐藤純彌
出 演:大沢たかお、長谷川京子、柄本明、生瀬勝久、渡辺裕之、加藤清史郎、中村ゆり、渡部豪太、須賀健太、本田博太郎、温水洋一、北村有起哉、田中要次、坂東巳之助、永澤俊矢、池内博之、榎木孝明、西村雅彦、伊武雅刀、北大路欣也 他
コピー:幕末リアリズム。
日本の未来を変えた、史上最大の事件


嘉永6年(西暦1853年)、浦賀沖にペリーの黒船が来航し開国を迫る中、幕府内では、井伊直弼ら南紀派と、水戸藩主・徳川斉昭を筆頭とする一橋派の対立が激化していた。諸々の巧策によって大老に就任した井伊は、天皇の意見を仰ぐことなく独断で開国を進め、徳川斉昭らを排斥。さらには尊王攘夷派を大量粛清した安政の大獄へ繋がっていく。これ以上の井伊の専横を防ぐにはもはや暗殺以外に手立てはないと、関鉄之介ら水戸藩士17名に薩摩藩士・有村次左衛門を加えた襲撃実行部隊が組織され、実行の機会を狙うのだったが…というストーリー。

小学生の歴史の授業でも出てくるので、事件の名前と“いいなおすけ”というキーワードは誰でも浮かぶだろう。でも、事件の内容とか経緯は良くわからない人が多いはず。そして私もすぐには思い出せず、観ながら「ああ、そうか」と思い出した、そんな感じ。

昔、NHK教育テレビでは、小額6年生の社会科番組で再現ドラマのようなようなものがあったが、本作を観ながらそれを思い出した。ほんとに映画というよりも教材みたい。挿絵や止め絵でのナレーションに字幕での説明。ストーリー的に重要ではない誰だか判らない人物の氏名・年齢・刑罰内容にダラダラと時間を割いてみたりと、歴史マニア以外おもしろく感じるわけがない演出が多々ある。

全体的な構成もちょっと意図がわからない。
国を憂いて売国奴を誅滅することに命をかけた男たちの心意気を賛美したいのかと思ったが、早々に暗殺の件は終わる。では、そんな義心をもって人たちの思いが報われない悲哀とせつなさを見せたいのか。でも、その割には、後半は逃げ回って徐々に捕まっていくだけで、特段何かがあるわけでもない。
国会議事堂と桜田門が近いというのは、「へぇ」と思ったが、この作品の中で、わざわざ差し込むのは何故か。単なるトリビアなのか、現在のグローバルスタンダード至上主義を非難しているのか(もう、そんな傾向も下火だが)、現政権の批判なのか(製作中に政権交代があったので、どっちの政権を批判したのか、よくわからないけど)。

結局は、歴史的な事実を整理して、こうやって日本の礎はできてきたんだよということを紹介したいのか。でも、それにしてはずいぶん水戸藩を贔屓した内容に思える。現実を無視して攘夷攘夷と騒ぐところまでは、百歩譲って許すとしても、井伊暗殺は攘夷のための手段だったのに、途中から目的に変質してしまったことに気付かない愚かさよ。他藩が手を引いたことをまるで裏切りであるかのように言っているが、最終目的である攘夷の手段として井伊暗殺が最適では無いと判断したから引いただけ。坂本竜馬が「今はその時期ではない」と言うのは、目的を果たすために、現時点では最適な手段ではないよ…といっているわけで、至極もっとも。それすら理解できないほど、私怨で頭が麻痺している。これでは単なるテロリストと言われても仕方があるまい。
私は、このように、手段を目的化してしまった組織をクレイジーだと思っており、自分への戒めとしているので、まったく共感できない。むしろ害悪だとすら思う。

ということで、歴史事実を整理しているようにみえて、製作している側も狭い視点で製作しているように思える。こんなことなら、多少事実から逸脱しても、軽率なことやってしまった人間に悲哀、そうやって突っ走っちゃうことってあるよね…っている誰しも経験したことがある理想へのこだわりゆへの失敗なんかにフォーカスを当てたほうが、おもしろくなっただろうと思う。
ということで、“他人に観てもらう”という意味で腰が座っていない作品なので、お薦めできない。
#中途半端に濡れ場があるから、歴史のお勉強ってことで子供に見せることもできないし…。使えねえ。






負けるな日本

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image0740.png公開年:2002年 
公開国:日本
時 間:129分
監 督:山田洋次
出 演:真田広之、宮沢りえ、小林稔侍、大杉漣、吹越満、伊藤未希、橋口恵莉奈、深浦加奈子、神戸浩、草村礼子、嵐圭史、中村梅雀、赤塚真人、佐藤正宏、桜井センリ、北山雅康、尾美としのり、中村信二郎、田中泯、岸恵子、丹波哲郎 他
受 賞:【2002年/第26回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(宮沢りえ)、助演男優賞(田中泯、小林稔侍)、監督賞(山田洋次)、脚本賞(山田洋次、朝間義隆)、音楽賞(冨田勲)、撮影賞(長沼六男)、照明賞(中岡源権)、美術賞(出川三男、西岡善信)、録音賞(岸田和美)、編集賞(石井巌)、新人俳優賞(田中泯)
【2002年/第45回ブルーリボン賞】作品賞、助演女優賞(宮沢りえ)
コピー:ただ、愛する人のために。
ある日、「人を殺してこい。」というのが上司の命令でした。
心に、お帰りなさい。

庄内・海坂藩の下級武士、井口清兵衛。労咳で妻を亡くし、現在は娘2人と痴呆の母を養っている。妻の治療費や葬儀代で作った借金のために生活は苦しく、仕事が終わるとすぐに帰宅し家事と内職の日々。同僚との付き合いを頑なに断り帰宅するため“たそがれ”と揶揄されている。ある日、清兵衛は幼馴染みの朋江が、夫の酒乱が原因で離縁していたことを知るが、酔った元夫・甲田が朋江の実家に押しかけていたところに居合わせ、成り行きで果し合いをすることになってしまい…というストーリー。

日本人のサラリーマンの悲哀みたいなものを時代劇で表現したってことなんだろうけど、そういう意味ではちょっと直球すぎるかも。海外公開もされたみたいだけど、直球すぎてピンとこなかったかもしれない。

2002年っていう時代に製作されたことは意味があったと思う。どこかの浅はかで下品男の発言象徴されるように、“世の中にカネで買えないものなんてない”的な意見に、相当数の人々が賛同する世の中で、この貧乏下級武士のスタンスは非常に光るものがあったし、そんな意見がおかしいだろ!って言葉で反論する以上の力をもっていたと思う。そして、日本が明治維新を経てこれだけ強固な教育基盤を持てた一番の理由は、下級武士のおかげという歴史的事実。

資本主義の基本は、“他人のためになる施しをして正統な対価をもらうこと”で、何が人のためになるのかを必死で考えることである。しかし、“他人が金を払ってくれるものを売って金を稼ぐ”ために、金が稼げることを探すっていう行為と、表面上はほぼイコールになる…、この極めてトリッキーな構図が資本主義発展のエンジンになった。何がトリッキーかって、拝金主義の愚かな行為が、他者のための行為に転換されたように見えるのだから(私は常々言っているニアリーイコール論。資本主義が発展した理由である)。

直球すぎるとはいえども、訴えたいことが明確であることと、加えて丁寧なつくりが非常に好感が持てる。世の中には、会社での出世ことが人生のすべてではない、やりがいのある仕事こそ本分だと思っているサラリーマンが多数いるし、ちょっと意味は異なるけれど、昨今の草食系といわれる若者にも、共感を与えるかもしれない。

おおむね難も無く愉しめたのだが、小さい難点が3点だけある。

1点目。前半に、朋江が出戻りして甲田とモメる流れと、藩のお家騒動の流れと、2つの話があるのだが、この2つが直列つなぎになっている(つまり一つのエピソードが終わった後に、もう一つが流れる)のだ。これらはある程度、並列で流すべきだった。それの何がいけないかというと、観ている側が一つの話に集中してしまうので、先読みできてしまうから。簡単に言うと、複数の話を並行で流して、観ている側の気を散らせ!そういうこと。

2点目。次女が成長した後とおぼしきナレーションが入るのだが、結論から言うと宜しくない。なぜなら、今展開しているストーリーがすでに終わった話であることが印象付けられて、リアルタイムで展開している緊張感が削がれるから。こういう演出をするのだから、思い出話する大きな意味があってしかるべきなのだが、最後で家族の顛末を語るだけで、効果なし。ナレーションはなかったほうが絶対によい。それに最後の墓のあるシーンはどこなんだろう。あんな田舎にまで線路が到達していたと?発展した明治を印象付ける意図とは思うが、ちょっとリアリティが無いような…。

3点目。藩命で余五善右衛門という武士と死合うことになるわけだが、その相手について。中盤で清兵衛の仕事場に余五が訪れ名乗るのだが、役者の滑舌がわるくて名前が聞き取りにくい。そのせいで、藩命をうけた時に武士の名前が出てきた時に、あの武士のことか…とピンとこない人が多かったに違いない。だから、余五が訪れた直後に同僚がやってきて「あれは御馬廻役の余五善右衛門ではないか。こんなところに何の用向きであろう…」などというシーンを加えて、名前を印象付けるべきだたろう。

まあ、そういう気になる点はあれど、よくできた作品だと思う。そこそこお薦め。
生活のために藩命を受けて命を懸けるあたり、福島原発の作業員とダブるのだけれど、今どこの局が放映権を持っているのか知らないが、日テレでもTBSでもいいから、もしこれをサラっとTV放映するセンスがあったら、大いに褒めてあげよう。CM料欲しさに東電寄りの論調になってると穿った見方をされているTV局も、その誹りも少しは軽減するのでは?





負けるな日本

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image0184.png公開年:1980年 
公開国:日本
時 間:179分
監 督:黒澤明
出 演:仲代達矢、山崎努、萩原健一、根津甚八、大滝秀治、隆大介、油井昌由樹、桃井かおり、倍賞美津子、室田日出男、志浦隆之、清水紘治、清水のぼる、山本亘、杉森修平、油井孝太、山中康仁、音羽久米子、山下哲夫、阿藤海、江幡高志、島香裕、田辺年秋、井口成人、山口芳満、金窪英一、杉崎昭彦、宮崎雄吾、栗山雅嗣、松井範雄、矢吹二朗、土信田泰史、曽根徳、フランシスコ・セルク、アレキサンダー・カイリス、加藤敏光、清水利比古、志村喬、藤原釜足、浦田保利、金子有隣、渡辺隆、伊藤栄八、梁瀬守弘、ポール大河、大村千吉 他
受 賞:【1980年/第33回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(黒澤明)
【1980年/第34回英国アカデミー賞】監督賞(黒澤明)、衣装デザイン賞
【1980年/第23回ブルーリボン賞】作品賞、主演男優賞(仲代達矢:「二百三高地」に対しても)
【1980年/第6回セザール賞】外国映画賞(黒澤明)

戦国時代。長く武田信玄の影武者を務めていた弟・信廉は、自分よりも信玄にそっくりの男を見つけ、万が一のため新たな影武者に仕立てようとする。罪人だったその男は、戦で多くの人を殺める武将をひどく憎み、信玄に対しても牙を向いたが、信玄の人間としての懐の大きさに、あっという間に心酔してしまう。ほどなくして、家康の野田城攻めの最中、信玄は鉄砲で撃たれ急逝。男は急遽、影武者として振舞うことになる。しかし、戦国の雄・信玄として生きることはあまりにも過酷で…というストーリー。

私の黒沢作品の初体験は『乱』であった。学生時代に劇場で観たのだが、元ネタのシェークスピアに造詣が深いわけでもないし、根本的に映画を見慣れていなかった私は、重厚な内容のため162分ですら長く感じた。肉体的な限界を感じながらも、なにかすごいモノを観たなという感じはしたので、とりあえず小遣いが少ないにも関わらずパンフレットだけは買ったのを記憶している(今も本棚に鎮座している)。

ただ、その肉体的な苦痛のせいか、“黒澤作品は体調を整えて心して観ないとヤラれてしまう”と自然に刷り込まれてしまい、以降、疎遠になってしまうのだった。いい歳になって、180分もなんとかこなせるようになり(笑)、やっと本作を観るに至ったと。

いきなり結果から言ってしまうと、華々しい受賞歴から想像したほどの感動は、残念ながら無し。大きな理由は、ドラマとしてよく出来とはとても言いがたいからである。盗人が影武者になり、労した策がバレて放逐されるというのが大きな流れだが、この影武者が苦心する経過が、いまいちおもしろみに欠けるのだ。
このプロットは、陳腐な展開になりがちである。簡単にいえば、影法師が意外といい感じで武将としてウマイことやってしまう…とか、バレちゃいけないのをいいことに、重臣の一人と結託して乗っ取っちゃう…とか。まるで童話『王子と乞食』のように展開させることは可能だが、あえてそういうアリガチな展開にはしなかったと思われる。その方向性は間違ってはいないとは思うのだが、そうしないかわりに、何を持ってきたかというと、信玄の霊が影武者の体を乗っ取ってしまうというギミックなのだ。

影武者が夢を観たあたりから信玄の霊がどんどん侵食しはじめ、まるで本人のように振る舞いはじめ、放逐された後に織田軍に向かっていったのは、影武者ではなく信玄なのだ!ってことだろう。しかし、この描写、如何せんわかりにくいのだ。まあ、そこをはっきりと表現したら、おそらくカンヌは採れなかったとは思うので、怪我の功名ともいえるのだが…。

ただ、それならこの180分という長さは解せない。だから、実際は、豪華絢爛な衣装やリアルな城郭や軍隊を大スペクタクルでみせたかったのが主目的で、逆にそれを邪魔するような、いささか陳腐と捉えられてしまうかもしれない脚本上のギミックは極力排除した…ということだと思う。まるで絵画のような各場面を見せるために本作が存在するならば、ストーリーに判りにくさがあろうとも、人間の体力と集中力が継続可能な3時間という長さであることも頷けるわけである。

これを手放しで評価してしまうカンヌが、映画をどういうものと捉えているのかよく判る。後世にのこる芸術というものは、あくまで後世の人が判断して残っていくものなのに、後世に残るであろうものを一生懸命見つけようとしているのだ。今、よいと思うかどうか、むしろ現在良いと思う事を逆に罪悪とでも思っているかのようで、自分が芸術の神にでもなった感覚で作品を選んでいるのだろう。「何でこんな作品を選んだんだ?」という後世の人の声を恐れて。それは実にくだらない了見であり、芸術への冒涜でもある。やっぱりカンヌは私のセンスに合わない。

さすがに、この苦行を承知でお薦めはしにくいが、ルーカスとコッポラが関わった大スペクタクル時代劇ってのがどんなものかと眺める分にはいいかもしれない。ちょっと美術館で絵画を眺める感覚で。途中、紅茶とシフォンケーキでブレイクしながらどうぞ。ほとんど血なまぐさいシーンはないので。

#あと、どうも『乱』の原作がリア王だったりと、モチーフを西洋作品から得るケースが多い黒澤監督だが、さすがに風林火の三銃士の件はトホホかもしれない。

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image1484.png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:131分
監 督:中野裕之
出 演:小栗旬、柴本幸、田中圭、やべきょうすけ、池内博之、本田博太郎、松方弘樹、近藤正臣、萩原健一、山口祥行、綾野剛、須賀貴匡 他
コピー:その男、多襄丸。絶対、女を捨てない。己を曲げない。そして、どこまでも自由。




室町末期。畠山家の次男・直光は、大納言の娘である幼なじみ阿古姫と将来を誓い合っていた。ある日、大納言である阿古姫の父が急逝するが、将軍・足利義政は、阿古姫と結婚したものに、畠山家の家督および管領職を継がせると言う。この発言により長男・信綱は激しく動揺し、阿古姫を力ずくで奪いに掛かるが、直光は阿古姫と共にすべてを捨てようと逃亡をはかる。しかし、そんな時、幼少より目をかけてきた家臣・桜丸の思わぬ裏切りに遭ってしまい…というストーリー。

いわずもがな、芥川龍之介の『藪の中』がベース。ある意味、黒澤作品の『羅生門』のリメイクといってもよいかも(黒澤『羅生門』の原作は、芥川龍之介の『藪の中』であり、かつ芥川龍之介の作品の中に『羅生門』という別の内容の作品もあるわけで、非常にややこしいのは、周知のこと)。『椿三十朗』『隠し砦の三悪人』と黒澤リメイクが続いた流れの一つと捉えてよいと思う。

原作の『藪の中』は、盗賊と貴族の若者とお姫様の三者の話が食い違うという、同じ状況であっても別の人間の視点から見ると、まったく違うものだなぁ、真実とはなんだろうなぁ、というのがテーマ。結局、真実は何なのか?という研究が行われているくらいの名作である(そんなこと研究すること自体、私は野暮だと思うんだけど、それは、真実を匂わすような表現が随所に見られるためで、後の研究者たちもまんまと芥川の術中にはまっているのである)。

私は、この“藪の中”感こそ、大事だと思うのだが、本作では、スパっと事実を明白にしてしまう。ネタバレになるので詳しくは言わないが、ああ、そこで勝負はしないんだな…と、ある意味、この割り切りを評価しかけていた。芥川作品でもなく黒澤作品でもない、あくまで『藪の中』はモチーフにしているだけで、本作はオリジナルですよ!という意気込みかと。それはそれでクリエイターとして尊敬できる姿勢で、ちょっと応援しかけたのだが。

しかし、結局、お白州の場面になって、結局、三者三様の食い違い場面が差し込まれる。ただし、それは“藪の中”感を出すためではなく、愛を確認するために差し込まれる。がっかり。割り切ってるんだか割り切ってないんだか、この揺り戻しの中途半端な感じが実に気持ち悪い。もしかして、原作の霊媒師のくだりがしっくりこなかったので、他に見ている人がいましたってことにしたかっただけなんだろうか…。おまけに、最後は、中途半端な駆け落ちものになってしまう。これでいいんだろうか。少なくとも私の趣味ではない。

視点を変える。
松方弘樹、ショーケンって役者なんだねーと再確認させてくれた。田中圭も池内博之もなかなか光る演技。みんないい仕事をしたと思う。しかし、廻りの輝きのせいで、小栗旬の演技の幼さが際立ち、結局彼だけが損をしているように見えるのは私だけだろうか(まさに、完全に“喰われた”状態)。作風から小栗旬をキャスティングしたことは、すごく理解できる。しかし、これまで、なかなか評価されてきた小栗旬だったが、この作品はマズイ。学芸会に毛の生えた程度の演技に映る。アイドル的な要素は薄れてきたので、次回作で挽回しないと、役者としてのキャリアは危ういかもしれない(余計なお世話か)。

そんなに悪い作品ではないので、否定こそしないが、最後のオチまで明確にイメージできた上で、製作されたのかは、ちょっと疑問になるような作品。最後までしっかり走りきって欲しかった。息切れ作品。もったいない。

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image0102.png公開年:1953年 
公開国:日本
時 間:97分  
監 督:溝口健二
出 演:京マチ子、森雅之、水戸光子、田中絹代、小沢栄、小沢栄太郎、青山杉作、羅門光三郎、香川良介、上田吉二郎、毛利菊枝、南部彰三、光岡龍三郎、天野一郎、尾上栄五郎、伊達三郎、沢村市三郎、村田宏二、横山文彦、玉置一恵、藤川準、福井隆次、菊野昌代士、大美輝子、小柳圭子 他
受 賞:【1953年/第14回ヴェネチア国際映画祭】サン・マルコ銀獅子賞(溝口健二)、イタリア批評家賞(溝口健二)

戦国の世、貧しい陶工の源十郎は、陶器を売りに出た都にて若狭姫という女に見初められ、契りを結び生活をともにする。だが若狭姫の正体が死霊であることに気付き故郷に逃げようとするが、彼女は執拗に追いすがる…というストーリー。

『さらばベルリン』が少しがっかりな内容だったので、別の白黒映画を観てみようと、本作をチョイス。

ヴェネチア銀獅子賞をとった作品であることは、映画検定的にも(笑)押さえていないといけない情報。よっぽど受賞がうれしかったようで、しばし冒頭に、獅子像のお姿が差し込まれている。

日本にもアメリカ国立フィルム登録簿みたいなのが存在すれば、間違いなく登録される一本だとは思うのだが、当時、どういうポイントが評価されて受賞に至ったかは、もちろん判らないわけで、予想するしかない。場面間の繋ぎやアングルなど注目に値するポイントはあるし、衣装やセットの時代考証もしっかりしていて穴がない。脚本も、男の愚かさを寓話的に表現しつつ、女の情念というものの類型をうまく散りばめまとめあげている点は評価できる。しかし、無条件に、傑作々々とありがたがるほどのものかどうかは微妙なところ(と私は思う)。
まあ、観も蓋もないことを言ってしまえば「エキゾチック・ジャパン」ということだろう。ヨーロッパの映画賞にありがちなのだが、「俺は海外でこんなのを見つけてきたぜぇ」的な、発掘合戦的な要素がある(小津安二郎だってそういう目線で見つけられたものだろう)。そういうバイアスがかかった上での受賞だと私は考える。

などと、こんな評価をしているとお叱りをうけそうなのだが、問題は、今、お薦めできるかどうかなわけで、芸術性や歴史的意義を振りかざしても仕方がないのだから、許して欲しい。そういう観点で言わせていただくと…、、、もう仕事のこととかで、ちょっと疲れているんだけれど、アクション映画を観てスカっとしたいとかそういうポジティブな気力はないんだよね…っていうときに、フラットな気持ちで観てくれれば楽しめるかもしれない。

まあ、大人の寓話ではあるけれど、娯楽作品ではないということかな。

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image0182.png公開年:1958年  
公開国:日本
時 間:139分  
監 督:黒澤明
出 演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、藤田進、志村喬、上原美佐、三好栄子、樋口年子、藤木悠、笈川武夫、土屋嘉男、高堂国典、加藤武、三井弘次、小川虎之助、佐田豊、上田吉二郎、沢村いき雄、大村千吉、小杉義男、中島春雄、堺左千夫、谷晃、佐藤允、中丸忠雄、緒方燐作、熊谷二良、広瀬正一、西条康彦、日方一夫、千葉一郎、山口博哉 他
受 賞:【1959年/第9回ベルリン国際映画祭】監督賞(黒澤明)、国際評論家連盟賞
【1958年/第9回ブルーリボン賞】作品賞

image1289.png公開年:2008年  
公開国:日本
時 間:118分  
監 督:樋口真嗣
出 演:松本潤、長澤まさみ、椎名桔平、宮川大輔、甲本雅裕、皆川猿時、小松和重、田鍋謙一郎、坂野友香、中村橋弥、橋本じゅん、粟根まこと、川口節子、古田新太、生瀬勝久、ピエール瀧、徳井優、黒瀬真奈美、KREVA、上川隆也、國村隼、高嶋政宏、阿部寛 他



続いて、隠し砦の三悪人をオリジナル作・リメイク版を鑑賞。

時は戦国時代、とある地方に秋月、早川、山名という互いに隣接した3つの小国があった。秋月家は隣国の山名家と一戦を交えて陥落。秋月家の侍大将真壁六郎太は、世継の雪姫を擁して数名の残党と隠し砦にこもった。お家の再興を図るための軍資金黄金二百貫をもって、同盟国の早川領へ脱出の機会を狙っていたが…というストーリー。

オリジナル版の千秋実、藤原釜足が、スター・ウォーズのC-3POとR2-D2のモデルであることは有名だが、姫を守りながらの再興をめざす冒険譚というストーリーも似ており、共通点は多い。本当に深い深いところには、なにかしらの重いテーマがあるのかもしれないが、私は、純粋な冒険活劇として楽しんだ。ただ、『椿三十郎』のときにも言ったが、いかんせん音声が聞き取りにくいのが、玉に瑕。

さて、リメイク版であるが、まず阿部寛が三船敏郎の役であることは疑いないのだが、松潤は千秋実の役なのか?と、まず混乱発生(背は宮川大輔の方が高いしね)。あわてて、オリジナル版をもう一度調べる始末。役名からして違う。オリジナルキャラクターだ。狂言回し的なこの2人は、本作の特徴中の特徴なのだが、まず、ここから壊してきた。設定も性格も名前も別のキャラクターだ(まあ、それは許される演出の範囲だろう)。

しかし、なにやら姫(長澤まさみ)と松潤に恋愛的な演出が。オリジナルでは、姫と六郎太(三船敏郎)の間に微妙な恋愛感情的演出があったのだが(『クレヨンしんちゃん アッパレ戦国大作戦』のモトネタだと、私は思っているのだが)、そこも壊してきた。リメイク版の恋愛的なくだりに、ストーリーを面白くする効果は感じない。ただアイドルが二人いるから、もちょもちょさせてみただけなのか。つまらない。
オリジナルでは特異な存在で記憶に残る田所兵衛の行動も違う。あれだけリアルに死闘を演じたにも関わらず、あそこで裏切るからこそ、安い政治体制を超える正義・感情というものがあるのだよ、という、取り方によっては反体制・革命的に見えなくもない要素が、すぱっと無くなってしまった。私は、あの裏切りのくだりが、最高に面白いと思うのだけれど。それを完全な悪者にして得られた効果はなんだろう?何も無い。断言する。
どうも、リメイク版は、人の感情表現にまつわる演出がつまらない。この監督は、人の心の機微というものを感じ取る能力が低いのではなかろうか。

さらにオチは決定的に異なる。
なにやら、君主と民のあるべき姿という、君主論的な要素が加わっておる。なんだこれは?

『隠し砦の三悪人』の特徴的な要素をすべて壊してさらに、監督の政治的主張を盛り込むなど、リメイク作品としていかがなものだろう?まるで自分の政治理念を語るために、黒澤作品をいたずらに引っ張ってきただけではないか。よくこのシナリオで『隠し砦の三悪人』のリメイクと名乗ることを許したものだ。そして名乗れるものだ。挙句の果てに、死ぬ思いで運んでいたアレが、実は…だと?意味がわからん。頭がおかしくなりそうだ。そんな演出の何が面白いのか説明してほしい。
はっきりいうが、お気に入りの役者でも出ていない限りは、リメイク版を見る必要はない。オリジナルを知らない人でも、最後まで見たら、得体の知れないモヤモヤした感情で溢れかえってしまう思うので、見ないほうがよい。

少しだけ、フォローしておくと、阿部寛をはじめ、演者の皆さんはとても良い仕事をされていると思う。悪いのは、監督をはじめとするスタッフだ。

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image0379.png公開年:1962年  
公開国:日本
時 間:96分  
監 督:黒澤明
出 演:三船敏郎、仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、団令子、志村喬、藤原釜足、入江たか子、清水将夫、伊藤雄之助、久保明、太刀川寛、土屋嘉男、田中邦衛、江原達怡、平田昭彦、小川虎之助、堺左千夫、堤康久、山田彰、松井鍵三、樋口年子、波里達彦、佐田豊、清水元、山口博義、広瀬正一、大友伸、大橋史典、峯丘ひろみ、河美智子、爪生登喜、伊藤実、宇留多耕司 他


image1411.png公開年:2007年  
公開国:日本
時 間:119分  
監 督:森田芳光
出 演:織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、鈴木杏、村川絵梨、佐々木蔵之介、林剛史、一太郎、粕谷吉洋、富川一人、戸谷公人、鈴木亮平、小林裕吉、中山卓也、風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍、中村玉緒、藤田まこと他




とある城下町の薄暗い社殿で九人の若侍が密かに話し合いをしていた。彼らは、上役の次席家老・黒藤と国許用人・竹林の汚職を暴こうとして、意見書を城代家老・睦田に差し出したが撥ねつけられた。その後、意見書は大目付の菊井に受け入れられ、この社殿に集められたのだ。それを図らずも聞いていた浪人はは、正しいのは睦田で、菊井が黒幕だと言い放つ。その通り社殿は菊井の手下に包囲されていたが、浪人の機転で窮場をしのぐことができた。やがて浪人は、意気上がるも頼りない若侍たちのためにに一肌脱ぐこととなるのだが…というストーリー。

2007年は椿三十郎、翌年は隠し砦の三悪人と、リメイクが続いた黒澤作品。オリジナルとリメイク作品を比較してみようと思う。今回は『椿三十郎』。

まずは、椿三十郎のリメイク作品。同じシナリオでカット割も愚直なまでに再現している様子。映画自体のおもしろさよりも「おんなじ、おんなじ、へへへ」という、子供の学芸会を「うまい、うまい」と楽しむ感覚に近いかも。誤解されるといけないので断っておくが、決して演技が学芸会といっているわけではない。むしろ、名作のリメイクというプレッシャーもあっただろうに、演者各位大変よく演じていると思う。松山ケンイチや一太郎や中村玉緒や鈴木杏の演技の青臭さにイマイチ感を覚えた人がいるかもしれないが、実は黒澤版も同じようなもの(いや、むしろそれをコピーした感すらある)。

このまま、単なる焼き直しで終わるのかと思いきや、『椿三十郎』のラストシーンといえばこれ、、、という有名なシーンが異なるのだ。マンガのような大量の血しぶきのシーンが、細かいカット割とスローモーションの演出に変わっている。もちろん血しぶきはない。黒澤版の公開当時には、この血しぶきのシーンがあまりに極端なことに対して、賛否両論があったそうだ。でも、私は、大量の血しぶきを変だとは思わない。良くも悪くも苛烈に生きた男の死に様の表現として至極真っ当だと思うし、若造達とは生きている世界・境地が違うのだよ…というコントラスト表現だと思うからだ。

私はリメイク版のこのシーンを見て、軽い驚きとともに若干困惑した。ここまで焼き直しのように作ってきて、ラストだけ違えるということは、何を意味するのだろう。森田芳光監督は黒澤版のラストだけが気に入っておらず、作り直したのか?それとも、黒澤版を知っている人がとまどうように、仕掛けを楽しんでいるのか?予算をかけて、ただコピーをつくったと揶揄されるのを恐れたか?
いずれにせよ、オリジナルのラストが嫌いではない私にとっては、趣味に合わない演出だし、戸惑わせるにしても、少なくないであろう制作費をかけてやるには、実に趣味が悪いし、大した効果も得られていない。

正直、こんなことなら、オリジナルを着色したり、聞きにくい音声をクリアにして公開したほうが、楽しめたのではないかと思える。リメイク作品はこの世にたくさんあるが、いったいリメイク作品の使命とはなんなのか…。すくなくとも本作から、その答えは見えず。

やはりオリジナルは、いい味が出ている名作なのでお勧めするが、いかんせん、白黒な上に音声は聞き取りにくい(技術的な問題だけでなく、演者の滑舌も決して良くはない)のも事実。気楽に本作のエッセンスを楽しむならばリメイク作品もよいと思う。松ケンやトヨエツがお気に入りなら尚の事(でも、その場合も、ラストの違いは比べてみてほしいが)。

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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