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image1507.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:スティーブン・ソダーバーグ
出 演:マット・デイモン、スコット・バクラ、ジョエル・マクヘイル、メラニー・リンスキー、ルーカス・キャロル、エディ・ジェイミソン、ラスティ・シュウィマー、リック・オーヴァートン、トム・ウィルソン、クランシー・ブラウン、スコット・アツィット 他
ノミネート:【2009年/第67回ゴールデン・グローブ】男優賞[コメディ/ミュージカル](マット・デイモン)、音楽賞(マーヴィン・ハムリッシュ)
【2009年/第15回放送映画批評家協会賞】音楽賞(マーヴィン・ハムリッシュ)
コピー:ある企業内部告発者を描く本当にあった物語。

食品添加物製造大手のADMに勤めるマーク・ウィテカーは、工場で発生したウイルスによる損失の責任を追及される。彼はウイルスをばらまいたのは日本のライバル企業で、1000万ドル払えばやめると脅迫されたことを会社に報告。会社側は恐喝事件としてFBIに捜査を依頼する。これを受けてFBI捜査官がウィテカーに事情を聞くと、その事件とはまったく無関係の、ADMと世界中の企業による価格カルテルの存在を告発しはじめる。FBIは、ウィテカーを内部協力者(インフォーマント)として迎え、確たる証拠を掴むために潜入捜査を開始するが…というストーリー。

ソダーバーグ作品というだけで、どういう話なのかまったく予備知識を入れず、コピーすら知らずに鑑賞。やたら“味の素”だ“協和発酵”だ実名が出てくるので、薄々気付きはしたが、エンドロール前のテロップを見て、やっぱり実話だったかと認識。実際の談合事件が元になっているので、“味の素”も“協和発酵”も文句のいいようがないということだろう。

なにやら、大企業の不正という重いテーマなのに、思わず笑ってしまう憎めないキャラと評されたり、希代の詐欺師の映画といわれたりするのだが、そういった指摘は大きく的外れだろう。彼は単なるパラノイアだ。作中でも、パラノイアと妄想性人格障害の境界をいったりきたりしているのだが、主人公の内証の台詞と実際の行動が並行して流れるので、観ている側(私)が干渉してしまって、吐き気すら覚えてくる(ちょっと感受性ありすぎ?)。
パラノイアは理路整然としているので、よほど知識があるか勘が鋭くないと見抜けずに振り回されるし、その上、本作のケースでは多くの事実が入り混じっているので、見抜けなかったのは、ある程度理解できる…。しかし、この狂人が、現在もアメリカのどこぞの会社のCEOとして社会的地位を得ている事実。これが許容されるアメリカ市場は狂っているではないか?アメリカにおける信用とは何なのか?

どうも、今、ソダーバーグは、常人を越えた能力(正義とか社会性とは無関係な純粋な“能力”)を保持する実在の人物ご執心のようだ。そして、その常人を越えた能力が造る渦に巻き込まれる人々の姿を描くことに興味があるようだ。そういう意味では、目的は達成できている作品だ。『チェ 28歳の革命』も同じノリだったと思うが、ゲバラの心の内はあまり伝わってはこないで、イベントの羅列に終わった感じもあったので、狂人の頭の中を覗かせてくれた本作は、『チェ~』を超えた、失敗を挽回したといっていいだろう。しかし、狂人の内証を映画で表現…というと、最近のデヴィッド・リンチを思い出してしまうけど、ソダーバーグにはそこまでイッちゃっうことなくほどほどの所で留まってほしいと切に願う。

狂人の頭の中に入って世の中を除くという稀有な体験ができる、ある意味実験的な作品としてお薦めする。攻めの作品として評価したい。

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image0756.png公開年:2003年 
公開国:イギリス、ドイツ
時 間:91分
監 督:J・A・バヨナアラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット
出 演:(ナレーション)マイケル・ガンボン 他
コピー:誰も見たことのない世界を見せてあげよう





自然・動物ドキュメンタリーで高い評価を受けているBBCが製作した海洋ドキュメンタリー。撮影4年半、ロケ地200ヶ所、撮影フィルム7000時間を基に、深海の世界から馴染み深い生物の生態までを余すことなく綴った作品。

『ミクロコスモス』や『皇帝ペンギン』など、動物ドキュメンタリーといえばフランス作品を観ることが多く、この手の作品がコンスタントに製作され、且つペイしていくフランス映画界の土壌がすばらしいと評価していた。

しかし、イギリス製である本作はそれらを圧倒的に上回っている。こういう作品はより大画面で観たくなるというのが、普通だ。事実、『ミクロコスモス』や『皇帝ペンギン』をDVDで観た時にはそう思った。しかし、本作は、画のメリハリ、コントラストが非常によろしくてDVDでも充分に美しいと感じる。人為的なライティングは施していないので、自然光によるものだろうが、カメラの性能なのか天気が良くなるまで根気よく待ったのか、実に神々しく撮れている。いままで観た、自然系ドキュメンタリーで№1のデキだと思う。

#ただ、先日、上野の国立科学博物館で「大哺乳類展−海のなかまたち」をみてきたから、ちょっとバイアスがかかってるかも(笑)。

どうも、シャチのハンティング場面や海中での捕食シーンに難色を示す人がいるのだが、これが野生の真実だし、特段これをクローズアップしているわけでもないし、自然を撮ろうと考えた場合に、包み隠すほうが不自然なわけで、むしろバランスの取れた構成だと私は思う。これに文句をつける人はほのぼの動物ビデオに期待しているのだろうが、そっちのほうが不自然だと感じないことが、逆に不思議である。
そして、北極のシーンで、地球温暖化かどうしたこうしたと、くだらないインチキ解説が入らないのがよい。できる限り、あるがままを伝えようとするBBCの哲学と心意気を感じる。さすが『不都合な真実』の論旨に問題があるとばっさり切りつけたイギリス、といったところか。

元はTV番組だったものを、劇場版として再構成したものらしいが、この構成(場面の繋ぎ)はなかなか秀逸。ただ並べただけという意見もあるようだが、私はそうは思わない。変に場面場面を密接に関連付けられるのも逆にイヤだし、かといって突拍子も無い繋ぎでもないし、いいさじ加減だと思う。

なぜか『皇帝ペンギン』よりも涼しく感じられるのが不思議なのだが、おそらく水の音のおかげだろう。非常に夏向き。体感温度が3度くらい下がった期がする。今、見るべき。是非是非お勧め。

#近いうちに、『オーシャンズ』も鑑賞予定。さて本作を越えるか否か。

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image0658.png公開年:2003年 
公開国:アメリカ
時 間:126分
監 督:ヴァディム・パールマン
出 演:ジェニファー・コネリー、ベン・キングズレー、ロン・エルダード、ショーレ・アグダシュルー、フランシス・フィッシャー、ジョナサン・アードー、ナヴィ・ラワット、カルロス・ゴメス、キム・ディケンズ、レイ・アブルッツォ、マルコ・ロドリゲス、アキ・アレオン 他
受 賞:【2003年/第70回NY批評家協会賞】助演女優賞(ショーレ・アグダシュルー)
【2003年/第29回LA批評家協会賞】助演女優賞(ショーレ・アグダシュルー)
【2003年/第19回インディペンデント・スピリット賞】助演女優賞(ショーレ・アグダシュルー)
コピー:失って、初めて気付いた。求めていたのは、家<ハウス>ではなく家庭<ホーム>だったと…。

結婚生活が破綻して夫に去られ、仕事もせず悲しみに暮れていたキャシーは、小額の税金未納が原因で家を差し押さえられ追い出さてしまう。行政の手違いがあったと判明したものの、既に家は競売によって他人の所有となっていた。購入したのは、政変でイランを追われアメリカに亡命してきたベラーニ元大佐の一家。愛する妻ナディと息子のため、この家で人生をやり直そうとしていたのだが…というストーリー。

『真珠の耳飾りの少女(GIRL WITH A PEARL EARRING)』と同様に、直訳の邦題。“砂”が中東からの難民であるベラーニ一家なのはわかるが、キャシーがなんで“霧”なのか意味は良く判らない。

いやいや、こんなひどい話は久々である。脚本が悪いとかそういう質の問題ではなく、純粋にストーリーがヒドい。社会問題、家族問題、民族問題、宗教問題、色々な問題を絡みあわせて問いかける正統派ドラマだとは思う。しかし、ベラーニ大佐は善意の第三者であり落ち度はない。取得価格の4倍の値段で引き取れという主張を貪欲だと思う人がいるかもしれないが、正当な市場価格の範囲であり、それが証拠に買い手は訪れている。自由の国に亡命してきて、やっと幸運を掴みかけたところで、自堕落で無責任な連中に踏み潰されるのだ。やってられない。
それどころか、本来、ベラーニ一家はキャシーが自殺しようが知ったことではないのに、傷ついた小鳥に同情して転売を諦めようとまでする。ベラーニの過去や性格には色々難はあったのかもしれないが、他人の痛みを感じることができる善良な家族なのだ。こんな奴らの所業のために破滅するなんて、どんな悲劇的なシーンを見せられても、泣くに泣けない。腹立たしいだけである。この映画で涙したという人がいるのだが、神経がよくわからん。

特に、キャシーの性格には微塵も同情する部分が無い。父性をもとめるキャシーゆえに副保安官に惹かれる。しかし、この関係が自分と同じようなさみしい人間を作り出すことに気付いても、ベラーニにも父性があることに気付いても、時すでに遅し。
散々好き勝手やった人間やイジメをしていた人間は、往々にして「あの時はごめんね」で済むと思っているようだが、やられた方の傷がそんなもんで補われるわけがない。

映画なんだから、ブチ切れて、関係者を皆殺しにしたっていいと思ったくらいだが、そうはならなかった。まあ、そういう原作なんだろうからしかたないけ、。監督のヴァディム・パールマンもウクライナからの移民だったらしいので、本当のところはブチギレしたかったのではないか…と予想する。

とにかくこんな納得のいかないイライラストーリーにも関わらず観続けられたのは、ベン・キングズレーとショーレ・アグダシュルーの神懸りといっていいくらいの演技と眼力のおかげ。その点は評価したいが、やっぱり不快なストーリーが優ってしまうので、お薦めしない。

#めずらしく内務調査部が悪役ではない作品かな。

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image1384.png公開年:2007年 
公開国:スペイン、メキシコ
時 間:108分
監 督:J・A・バヨナ
出 演:ベレン・ルエダ、フェルナンド・カヨ、ロジェール・プリンセプ、ジェラルディン・チャップリン、マベル・リベラ、モンセラート・カルーヤ、アンドレス・ヘルトルディクス、エドガール・ビバル 他
受 賞:【2008年/第22回ゴヤ賞】脚本賞(セルヒオ・G・サンチェス)
コピー:愛を信じたら、本物の光が見える。


海辺に建つ古い孤児院を買い、医師である夫カルロスと7歳の息子シモンと暮らすことにしたライラ。彼女は昔、この孤児院で生活しており、里親に引き取られて30年が経つ。現在は閉鎖されているこの孤児院を、障害を持つ子どもたちのための施設として再建するつもりだ。開園準備を進めるさなか、シモンがに見えない子供たちが見えるといい始め、さらには彼ら遊ぶようになる。不安を覚えつつも、施設のオープンは近づき、開園を祝うパーティが催されたが、その場でシモンが忽然と姿を消してしまう。警察も加わって捜索が行われたが発見に至らず。ラウラは精神的に衰弱しながらも、必死にシモンの行方を追い続ると、孤児院に秘められた過去にたどり着く…というストーリー。

スペインの映画観客動員記録を塗り替えて、7つのゴヤ賞を受賞して、フランスのジェラールメール・ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得したという、華々しい肩書きの本作。ここまで評価されているのだがから、さぞや…とハードルがあがりまくったのがいけなかったか。それとも根本的に趣味が合わなかったか。結果を言ってしまうと、可もなく不可もなくという評価である。

ばぁさんが女性にアタックしてくる点は『スペル』と同じなんだけど、足場が違うというか、監督の境地が違うというか。
緊張感をずっと維持できていることと、ジャパニーズホラー的な情愛とかの絡め方はよい点だとは思う。そう、ジャパニーズホラー的というキーワード。効果音の大きさとか、どっきりポイントのズラし具合とか、前半の引っ張りに比べて後半がしぼむ感じとか、西洋ホラーとか趣が異なる。もしかすると、そういうテイストがスペインではウケたのかもしれない。
ただ、それだけなら、同様に評価できたのだが、どうも気になる点が散見され、乗っかりきれなかった。

(以下、ネタバレ)

色々あるので箇条書きになってしまうが…。

・幽霊でした、、で片付けられて、ふわーっと終わってしまうと、「はあ、そうですか」としか言いようが無い。
・閉じ込めてしまったというオチは、鉄パイプが「ガンッ」ってなったところで、多くの人の頭をよぎったと思われる。
・広い屋敷で行方不明になったのだし、さらに子供は病気で倒れている可能性があるのだから、見取り図で入ることが可能な部分はすべて捜索するのが警察の仕事では?いや、それも霊の仕業だったんだよ…と、思い込もうとしたが、どうしても納得できず。
・ベニグノが犯行に及んだ心情・経緯をもっとクローズアップしたほうがよい。どう考えても第一容疑者なのに、逃げ切れている状況も説明してほしい(はじめは容疑者だったが、別の有力な容疑者が浮上して放免になったとか)。
・「母の愛」はわかるが、なぜ異様なまでに情愛を発揮するのか、バックボーンのエピソードがあってもよい。

私は、ラウラが子供たちの死に実は関わっているとか、もっと危機一髪な状況だったとか、下手に演出がうまいせいで、後半はたくさん想像してしまったのだ。でも、その結果、閉じ込めちゃってました、幽霊でした…と、想像を遥かに下回る凡庸なオチに。軽く落とし穴にはまった気分。

そう考えると、同じように杜撰なら、『スペル』のほうが割り切っていてよかったかな。だけど、決してお薦めできないわけではない。おそらく好みの問題。女性のほうが母性的に共感できて、良いと感じるかもしれない。

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image0614.png公開年:2003年 
公開国:イギリス
時 間:100分
監 督:ピーター・ウェーバー
出 演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィー、エシー・デイヴィス、ジュディ・パーフィット、アラキーナ・マン、アナ・ポップルウェル 他
受 賞:【2003年/第29回LA批評家協会賞】撮影賞(エドゥアルド・セラ)
【2004年/第17回ヨーロッパ映画賞】撮影賞(エドゥアルド・セラ)
コピー:謎の天才画家フェルメールの名画に秘められた物語が 今、解き明かされる。

1665年、オランダ。タイル職人であったグリートの父が事故で失明。彼女は家計を支えるため画家フェルメールの家で奉公をすることに。フェルメール家は、家庭内不和状態ながらも子沢山で、その喧騒の中、彼女は日夜働き続ける。ある日、アトリエの窓拭きをするグリートの容姿から、フェルメールはに新作を描く意欲が沸く。さらに、彼女の色彩感覚に着目し、顔料の調合を手伝わせるようになる。しかし、周囲はフェルメールとグリートの関係を誤解しはじめ…というストーリー。

『宮廷画家ゴヤは見た』に続いての画家モノ。ただし、こちらは歴史劇要素は薄い。フェルメール自体が結構ナゾの人物だし、モデルもよくわかっていないし、それを逆手にとっておもしろく膨らませる着想が、たいへんすばらしい(原作がね)。このような、史実を捻じ曲げることなく、最大限にフィクションを展開させた作品は好みである(小氷期で運河が凍りに覆われる様など、よく研究されていると思う)。実話かと錯覚するほどの出来栄え。インスパイアの極み。

とはいえ、ストーリーがいささか単調であることは否めない。しかし、本作の見所はそこだけではない。映像美である。技術上のポイントは、フェルメール作品の色彩や構図を映像で表現している点。絵画を切り取ったようなカットが随所にちりばめられており、いくら鈍感な人でも気付くに違いない。衣装、セット、メイク、ライティングの究極的なこだわりが渾然一体となった技術である。米アカデミー賞では、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞の3つにノミネートされているが受賞にいたらず。合わせ技一本で、なんらかの賞を受賞させるべきなのだが、適当な枠の賞が無かったという極めて不幸な例だろう(さすがに特別賞を与えるほどではないのだが)。

未見の方には、お薦めしたい作品である。

以前、『ママの遺したラヴソング』のレビュで、スカーレット・ヨハンソンの半開きの口がアホっぽいと書いたことがあったが、真珠の耳飾りの少女自体が半開きの口だからね。面白いキャスティングだとおもったし、同じポイントに着目する人はいるんだなと。まあ、絵と少女とスカーレット・ヨハンソンは全然にてないけどね。

#スカーレット・ヨハンソンの吹替えが、あまりよろしくない。かといって字幕を追うとステキな画に集中できないという、本作もこのジレンマを抱えた作品である(っていうか、吹替え声優、もうちょっとしっかりしろってハナシなんだけど)。

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image0107.png公開年:1993年 
公開国:日本
時 間:72分
監 督:望月智充
出 演:飛田展男、坂本洋子、関俊彦、荒木香恵、緑川光、天野由梨、渡部猛、徳丸完、有本欽隆、金丸淳一、さとうあい、鈴木れい子、関智一  他
コピー:高知・夏・17歳




高知県。高校生・杜崎拓は、東京から転校してきた武藤里伽子のことが気になる。美人で文武両道だが周囲にまるで馴染もうとしない彼女に拓の親友・松野は恋しているらしい。しかし、ひょんなことから、里伽子と拓は東京へ二人旅をすることになる。そこで拓は里伽子の家庭の事情を知ることとなり、それ以降二人の距離は縮まるかと思われたが…というストーリー。

『借りぐらしのアリエッティ』で盛り上がり中のジブリ。ファンタジー要素は強そうだが、テイスト的には『耳をすませば』のラインかと思われるので、私のストライクゾーンからはずれていそう。病弱な男の子が『ゲド戦記』を連想させ、なにやらイヤな感じすら漂う(杞憂とは思うが)。おそらく観にいくことはないかなと。それどころか、以前も書いたが、『千と千尋の神隠し』で私のなかのジブリは終わってしまっていて、それより後の作品をきちんと鑑賞していなかったりするんだけど…。最近、『千と千尋の神隠し』より後の作品では、動画に“グルーヴ感”がないことに気付いた。“グルーヴ感”っていうと判りにくいかもしれないけど、ちょっとテンポがモタりぎみになる感じといえばいいか。近頃の作品はリズムマシンで刻んだように、すたすた動きすぎるのだ。昔はモタり感とか浮揚感とかがあったと思うのだ。皆さんは、そう思わない?

閑話休題。
特に強いきっかけがあったわけではないが、『千と千尋の神隠し』以前のジブリ作品でも、観ていないのは本作だけだったな、と思い出し鑑賞。テレビムービーだったし青春恋愛モノってことで、まあ、手にとることはなかった。龍馬ブームってことで高知が舞台の本作を(ウソ)。作画監督は近藤喜文さんと思い込んでいたけれど、近藤勝也さんだった。『おもひでぽろぽろ』とおんなじだもの、そりゃそうか。それに、過剰な高知弁を地元の人はどう思っているのか不明だけれど、方言指導が島本須美ってのはおもしろいですな。

話が動き始めるまでは、退屈でしかたがなかったが、東京へ旅をするあたりから徐々に、いい感じに。17年も前の作品だが、悪くない。でも、この妙な青臭さは、これを遠い過去に感じられるからこそ正視できるのであって、近しい年代の頃なら厳しかったかもしれない。実写でやると俳優の生々しさで目を背けたくなる内容だと思う。アニメでちょうどよかった作品なのかも。まあ、私、同窓会とか行く気にならない人間なので、大抵の人は多かれ少なかれ自分の青春時代と重ねたりできるんだろうけど、私にとっては異世界ファンタジーと同レベルなんだけどね。

一番気になるのは、女子グループのリーダーっぽい落ち着いた感じの人なんだけど、それ以上展開・発散させなかったのも、いいセンスだと思う。

また、実在の商品や乗り物や構造物にものすごくノスタルジーを感じる。案外、時間が経過して再評価される作品かもしれないし、たった17年でこういう味の作品が無くなってしまった(作れなくなってしまった もしくは、成立しなくなってしまた)、日本アニメ界に、若干不安を感じるところではある。未見の人で、特に青春なんて遠い昔って感じの方に、軽くお薦め。

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image0916.png公開年:2001年 
公開国:アメリカ
時 間:183分
監 督:マイケル・ベイ
出 演:ベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット、ケイト・ベッキンセイル、ウィリアム・リー・スコット、グレッグ・ゾーラ、ユエン・ブレムナー、アレック・ボールドウィン、ジェームズ・キング、キャサリン・ケルナー、ジェニファー・ガーナー、ジョン・ヴォイト、キューバ・グッディング・Jr、マイケル・シャノン、コルム・フィオール、ピーター・ファース、ベス・グラント、デヴィッド・カウフマン、マコ、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、リーランド・オーサー、トム・サイズモア、ガイ・トーリー、スコット・ウィルソン、トマス・アラナ、ウィリアム・フィクトナー、マット・デイヴィス、ジョン・ディール 他
受 賞:【2001年/第74回アカデミー賞】音響賞[編集](Christopher Boyes、George Watters II)
コピー:それは日曜日の朝だった…

1941年。幼馴染のレイフとダニーはアメリカ陸軍航空隊の戦闘機パイロット。レイフは恋人イヴリンをダニーに託し、イギリスのイーグル飛行中隊に参加しドイツ空軍と戦う。その後、ハワイ転属命令を受けたダニーとイヴリンのもとにレイフ戦死の報が届く。二人は互いの心の傷を癒すべく支えあい、いつしか結ばれるが、戦況が逼迫し始めたある日、二人の目の前に死んだはずのレイフが現われ…というストーリー。

大した内容でもなさそうなのに2枚組みという、この暴れん坊っぷりに臆していたが、やっと観る気になった。

結果から言うと、マイケルベイとジェリーブラッカイマーコンビ作品の中では、群を抜いた駄作。日本描写云々については、いまさらどうこう言うつもりはない。非常に歴史的描写にクレームが付けられた作品であることも承知しているが、所詮、娯楽作品。日本をショッカーや宇宙人扱いして、勧善懲悪ドラマにしたって、それは自由である。歪曲したことによる引っかかりを超えるだけの愉しさが提供されていれば、ある程度は許容できる。大体にしてあそこまでトンチキな日本描写なら、怒るまでもない。

エンターテイメントだから歴史を捻じ曲げる覚悟があってもよいとはおもうが、この陳腐な恋愛劇のために歴史を曲げてるのか…と思うと、実にくだらなく感じてしまう。歴史をないがしろにするだけのおもしろさは存在しないのである。
やってもいない民間人や医療施設への爆撃を描くのは反則だと思うし(若干誤爆はあったらしいが)、「日本がなぜ?」ってセリフが実にバカバカしい。日本と中国が戦争→これ以上の日本の支配力増大をよしとしないアメリカは石油・鉄の輸出を制限→日本は資源確保のために南アジアに侵攻→日本の侵攻が気にくわないアメリカ・イギリス・オランダは石油の輸出を停止→日本さらに窮して開戦…って、流れなんだから、まるで部外者面で突然奇襲を受けたなんて顔をしているのが、笑えてくる(もしかして、当時のアメリカ人は国際情勢なんかまったくわからないバカ揃いだってことを表現してるのかな)。

まあ、本土を叩かれたことのないアメリカにとって、真珠湾攻撃がトラウマなんだってことはよくわかるけれど、ドンパチになる前に、散々策を弄してのっぴきならない状況にするのは、昔も今も変わらないのね。人間の性格が変わらないように、国の性格もなかなか変わらないということか。

ダラダラな上に、韓国ドラマばりのショボいメロドラマで、見せられるのは戦闘シーンだけ。こんなレベルなので、CG盛りだくさんのドンパチ映像の物量作戦にならざるを得ず、結果として3時間越えの二枚組みDVDになってるのだが、ABCD包囲網で物量にモノを言わせてイジメていた自国への皮肉かなのかしら。
もしかして、マイケルベイとブラッカイマーは、自国アメリカへの皮肉を多分に盛り込んだつもりだったのに、一周まわって、ただのアホ映画になってしまったのかも。

いやあ、二度と観ないのは確実。私、ベン・アフレックが出てる作品で、おもしろかった映画ってみたことがないかも。もちろんお薦めしないし、確実に時間の無駄。久々に注意報を発令したい。
#本当はカテゴリを戦争にするのはイヤである。

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image1464.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ、スペイン
時 間:114分
監 督:ミロス・フォアマン
出 演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド、ミシェル・ロンズデール、ホセ・ルイス・ゴメス、マベル・リベラ、ブランカ・ポルティージョ、ウナクス・ウガルデ、フェルナンド・ティエルブ、デヴィッド・コールダー 他
コピー:それは、立ち入り禁止の、愛。



18世紀末、スペイン国王の宮廷画家フランシスコ・デ・ゴヤは、裕福な商人の娘で天使のように魅力的な少女イネスと、ロレンソ神父の肖像画を手がけていた。そんな中、カトリック教会は、ロレンソの提案によって異端審問を復活。そして、居酒屋で豚肉を嫌ったイネスは、ユダヤ教徒の嫌疑を懸けられ審問所へ収容されてしまう。イネスの父ビルバトゥアは友人ゴヤを介してロレンゾを家に招待し、娘を返してほしいと懇願するが…というストーリー。

美術に関する知識が乏しくて、ゴヤが活躍した時代すらピンときていない状態で鑑賞。タイトルから、家政婦は見た的な感じの宮廷スキャンダルものだと思っていたが全然違い(笑)、骨太の歴史ドラマだった。ナポレオン登場前後のスペインが舞台の映画は初めてで、当地の歴史にも詳しくないので、私にとっては興味深い教材である。所々に差し込まれるゴヤの作品を見て、美術の副読本の記憶が蘇る。

主役のゴヤは完全に狂言回し。王妃をブサイクなまま描き不評を買っても、なんで?という表情のゴヤ。この正眼ゆえに歴史を見つめる適任者ということだろう。

スペイン国王カルロス4世はフランス人。次にナポレオンが王を立て、続いてイギリスのウェリントン公が王を立て、その都度、解放を名目とする兵は民衆を虐殺・凌辱する。ロレンソはスペインを称して"売春婦"と言うが、次々と違う男が上にいる売春婦と一緒だっていう意味。それが証拠に、革命軍が上に立とうが、教会が上に立とうが、民衆は同じように熱狂する。さらに古くはイスラム教徒に支配されていた時代もあるし、ゴヤの絵にも中東系の顔立ちの人々がたくさんでてくる。近現代においても共和制時代やらファシズム体制時代と、不安定な政情が続くスペイン。その国としてのアイデンティティとは何か?歴史的には非常に難しい国。

侵略と殺戮の歴史が繰り返される不安定なヨーロッパでは、“普遍”を求める民の心の上に、一神教のキリスト教が君臨するのも致し方ないとは思うが、本作で見られるカトリックの所業には実にうんざりさせられる。昨日は書かなかったが、『81/2』では随所にカトリック批判表現が散見された。本作ではそれ以上に直接的にカトリックのダークな側面が描かれている。

演者で特筆すべきは、ナタリー・ポートマン。特殊メイクのおかげといってしまえばそれまでだが、痩せこけみすぼらしくなったイネス役は鬼気迫る熱演だった。配収も低調だったようだし、全然受賞もしていないのだが、作品自体の評価がもう少し高ければ、彼女もなんらかの賞レースにノミネートくらいはされていたと思う。

世に評価されてこそいないが、なかなかの良作。飽きることなく最後まで観終えることができ、そこそこお薦め。

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imageX0008.png公開年:1963年 
公開国:イタリア
時 間:140分
監 督:フェデリコ・フェリーニ
出 演:マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ、クラウディア・カルディナーレ、サンドラ・ミーロ、バーバラ・スティール 他
受 賞:【1963年/第36回アカデミー賞】外国語映画賞、装デザイン賞[白黒](Piero Gherardi)
【1963年/第29回NY批評家協会賞】外国映画賞


映画監督のグイドは、日々の精神的・肉体的な疲れを癒す為、温泉に療養に出掛けるが、そこでも仕事や生活から逃れれられない。仕舞には、自分が温泉で余生を過ごす老人達の中にいるという幻覚まで見始める始末。そうこうしつつも映画制作は進行していくが、映画の内容は決まらないし、出資者への対応も苦痛極まりない。彼は次第に、自らの理想の世界へと現実逃避していく…というストーリー。

これを、「はっかにぶんのいち」と読むか「はちとにぶんのいち」と読むかで年齢がわかってしまうかな。昔は帯分数を‘か’と教えていたからね。独身女性の方々はお気をつけあれ(笑)。

かねてから観たいと思っていたのだが、近隣ではレンタルしておらず、BSで放送していたのをガッチリ録画。その後、しばらく溜め込んでいたのをやっと鑑賞。フェリーニの作品は、過去に『サテリコン』しか観たことがない。

冒頭の温泉保養所のシーンで北野武の『監督ばんざい!』が思い出された。調べてみると、北野監督自身が『監督ばんざい!』は影響をうけて作られていると発言している模様(私の映画観も鍛えられてきたかな(笑))。個人的に追い詰められていく芸術家の様子を、映像として表現する点など、影響どころか、基本アイデアはそのままに見えるけど。

はじめの夢のシーンで、いきなりいいパンチをかましてくれる。現実と夢想の境界をあいまいにする表現は洗練されていて、現代でも陳腐さを感じさせない。いいセンスの持ち主であることが、否が応でも判る。
全体的に美しい映像の連続ではあるが、アップショットの連続が多くて、空間が感じられない場合が多い。個人的に気に入らない点ではあるが、おそらくそれも狙いなのでよしとする。
その映像にドンピシャな音楽や、わからないまでも場の空気づくりに貢献している流麗なイタリア語もすばらしく、是非とも吹替えではなくイタリア語でご覧あれ、と、言いたいところ。しかし、映像に集中したいので吹替えで観たくもあり、このジレンマ、非常に苦しい。
#まあ、BS放送は字幕版だったので選択肢はなかったが、やはり映像に集中したかったので、吹替えでみたかったかな。

一般に難解だといわれているけれど、ここ数年のデイヴィッド・リンチに比べれば、かわいいものかと。とはいえ、映画史に残る名作と評されることが多いからといって、うかつにそれに乗っかって、わかったふりをすると怪我をしそう。正直に言うと、『サテリコン』もかなりの謎作品だったが、本作も同等レベルの謎作品だった。最終的に何がいいたいわけ?という問いは、おそらく無意味で、『マルコヴィッチの穴』のごとく、フェリーニの脳内が表現されていると考えれば、たしかによくできていると思われる。ただ、それが面白いかどうかは、別問題。

お薦めというわけではないが、美術館で絵画を鑑賞…的なノリで一度観ておくとよいかも…という作品。といっても、お薦めしたところおで、DVDレンタルしていないところが多いようではあるが…。

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image1488.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:スティーヴン・ソマーズ
出 演:チャニング・テイタム、レイチェル・ニコルズ、マーロン・ウェイアンズ、シエナ・ミラー、レイ・パーク、イ・ビョンホン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、アドウェール・アキノエ=アグバエ、クリストファー・エクルストン、サイード・タグマウイ、デニス・クエイド、ジョナサン・プライス、アーノルド・ヴォスルー 他
受 賞:【2009年/第30回ゴールデン・ラズベリー賞】ワースト助演女優賞(シエナ・ミラー)
コピー:この戦い、かなり刺激的。
NATOの開発した、あらゆる金属を粉砕する驚異の化学物質ナノマイトが悪の組織コブラと武器商人デストロに強奪される。化学兵器に転用されることを恐れるアメリカ政府は、訓練された強靱な肉体とハイパースーツなど最新装備を操る最強の国際機密部隊“G.I.ジョー”を送り込む。しかし、G.I.ジョーの若きメンバー・デュークとコブラのメンバー・バロネスとの因縁などが絡み合い、苛烈を極めた攻防に発展していく…というストーリー。

CGの質もアクションも充分だし、基本的なストーリーのアイデアも悪くは無い。それでも、ラジー賞の格好の餌食になってしまった本作。
イ・ビョンホン演じるヘンテコ忍者の設定とか、日本描写がヘンテコなのは、毎度のことなので、腹も立たない。しかし、コブラとデストロの構図がいまいち判りにくいとか、登場キャラクターが多すぎる上に、それぞれのバックボーンやエピソードや特徴が中途半端で感情移入しにくい。一切わくわくしない、こんなアクション映画はめずらしい。捨てるべきところを捨てずにとりあえず思いついたことは全部残してしまった感じ。

イ・ビョンホンは欧米人の中に混じっても、なかなかの存在感で、ハリウッドでも充分やっていけそうな感じなのだが、いかんせん一発目が本作とは、運が無い。

これだけ激しいアクションの連続なのに、観ている側をぽやーんとさせる、実に奇妙な映画。企画先行で、会議を重ねて設定もストーリーも配役も決めて、その結果を雇われ監督に作らせたって感じ。当初の企画はボヤけにボヤけ、“G.I.ジョー”である必要すら無くなってしまうという、笑い話にもならない状況。“G.I.ジョー”といえば「こち亀」にでてくるあのオモチャだけど、そのイメージの残滓すらない。

残念ながら、久々に時間の無駄だと思わせる映画。お薦めしない。

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image1512.png公開年:2009年 
公開国:日本
時 間:111分
監 督:摩砂雪、鶴巻和哉
出 演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、山寺宏一、石田彰、立木文彦、清川元夢、長沢美樹、子安武人、 優希比呂、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、麦人、丸山詠二、西村知道、宇垣秀成、中博史、佐久間レイ、山崎和佳奈、野田順子、大原さやか、世戸さおり、大川透、小野塚貴志、滝知史、室園丈裕、杉崎亮、茂木たかまさ、山村響、藤本たかひろ、金丸淳一、MAI、入江崇史、ベーテ・有理・黒崎、島田知美、トマス・ヘルサス、ジェーニア・ダブビューク、バロン山崎、ジョシュ・ケラー、兼光ダニエル真 他

第3使徒がネルフ北極施設に出現。真希波・マリ・イラストリアス搭乗したエヴァ仮設5号機が迎撃するも大破消失。一方、日本では、第7使徒が出現。こちらは式波・アスカ・ラングレー搭乗の2号機が殲滅する。アスカはシンジたちの中学校に転入し、ミサトのマンションに同居することに。そして、ネルフ本部へ直接落下する第8使徒が襲来。零号機、初号機、2号機は連係して、それを殲滅。こうした戦いと学園生活を通じて、距離感のあった3人の心の距離は縮まっていく。しかし、続く第9、第10使徒との戦闘は、彼らにより過酷な運命背負わせる…というストーリー。

私、エヴァンゲリオンのTVシリーズを観たのは、ほんの数年前。世の中でやいのやいの流行っていた時は、まったくもって無視していた。私は、こういうブームには、一線を置くことが多いですな。観るものもないし小難しいものは観たくないなっていう時に、全部レンタルして一気に観たんだけど、特に良いとも悪いとも…。そんな感じ。『序』も大して期待していたわけでもなく、たまたまレンタル空きがあっただけのこと。

第1作はマイナーチェンジ程度の変更はあれど、ほぼオリジナルのまま。正直なところ、なぜこの程度の内容でわざわざ映画にしなくてはいけないのか。今頃やるなら思い切り内容もテーマも変えてしまえばいいのに…と思ったものだ。そして、なんでこれが大ヒットしているのか…。自分と世の中の乖離具合に、若干不安を覚えるほどで。
私の思いが通じたのか(そんなことはない)、第2作は一転、キャラの役割も扱いも、ストーリーの方向性も、TV版とはかなり違う。やっと映画にする意味が出てきた。そんな感じ。エヴァファンでは無く思いいれもないので、キャラの扱い(アスカとか新キャラとか)には特になんの感慨もおどろきもなし。昨今の“萌え”キャラを前面に出してくる、アニメにはうんざりしているので、逆にアニメ映画らしく仕上がっているのかも。

ストーリーの方向性が明確になっているためなのか、非常に分かりやすくなって、観やすい。TV版の無意味に思える迷走や思わせぶり感はまったくなし。これをよしとするか否かは趣味の分かれるところだろう。
ストーリー的には、まだ途中の作品なので、これ以上は言わないが、私には製作側の宗教観とか社会科学観が、TV版を作っていたときとは大きく変化しているように感じる。次作は、よりはみだして、問題作に仕上げてくるかも。今回は、日本アニメに対する苦言、次は日本映画に対する苦言って感じになるのかな。

技術的に文句を一つ。ほぼ、立体構造物は3DCGを元に原画を興しているようだが、昔のような不自然さはほぼ無くなっていて、非常に好感がもてる。ただし、大きな航空機(輸送機)のシーンだけが、異様に不自然。これは、原画の線の太さに問題があるから。原画をCGでおこす際に、引きの絵(遠くにある物体に表現に)する時に、線まで細くしているから。こういうときは線はあまり細くしすぎないほうがよい。アニメ作品の中で、「あ、CG」って興醒めするのは、往々にしてこの場合である。

あまりエヴァファンでなければ、わざわざ観なくてもよいとは思う。もしくは数年後に全部揃ってからでも遅くないかも。

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image0953.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:143分
監 督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出 演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、アドリアナ・バラッザ、エル・ファニング 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】作曲賞(グスターボ・サンタオラヤ)
【2006年/第59回カンヌ国際映画祭】監督賞(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)
【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]
【2006年/第60回英国アカデミー賞】作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](グスターボ・サンタオラヤ)
コピー:神は、人を、分けた。

モロッコ。山羊飼いのアブドゥラは知り合いから一挺のライフルを買い、ジャッカルを駆除するようにと二人の息子アフメッドとユセフに与える。兄弟は遊び半分で射撃の腕を競い合い、一台のバスを撃つ。そのバスには、アメリカ人夫妻リチャードとスーザンが乗っていたが、二人は3人目の子供を亡くしたことで関係が悪化し、その関係修復のための旅行の最中だった。そして、銃弾が運悪くスーザンの肩を直撃し、バスは医者のいる村へと急ぐ。一方、夫妻がアメリカに残してきた子供マイクとデビーの面倒をみるメキシコ人不法滞在者である乳母のアメリアは、息子の結婚式に出るため帰郷する予定だったが、夫妻が戻らず困り果てる。彼女は仕方なく、マイクとデビーを連れてメキシコへと向かう。日本。妻が自殺して以来、父娘関係が冷えきっている東京の会社員ヤスジローと女子高生の聾唖者チエコ。チエコは満たされない日々に絶望する生活を送っているが、そんな中、モロッコの銃撃に使用されたライフルの所有者がヤスジローであることが判り…というストーリー。

モロッコ人、アメリカ人、メキシコ人、日本人の4つのストーリーは、奇異ともいえる繋がりを見せながらも、別々の流れで展開。完全に並行ではなく、時間軸はずらされているが、もうすでに、『21グラム』『クラッシュ』とにたような味付けの作品を見ているので、目新しくも感じないし、あまりよい効果を得られているようにも思えない。群像劇だが、最後に話をつなげて一つの流れにする気はないらしく、4つの悲劇の羅列といってよいくらい。

だが、いろいろ批判はあるようだが、個人的には嫌いなセンスではない。
人間は不完全で愚かで、偶然によってふれあい、ちょっとした思いやりのなさで離れる。世界は人のぬくもりを乞うが得られない人でできあがっている。その刹那な空気感を愉しむ映画かなと。この映画が伝えたいことって何かな?って、色々考えたくなるんだけど、あまり社会的な意味とか政治的な意味を考えないほうがいいような気がする。世界各地で、同じ人間が同じ時間を過ごしているのに、どうして世界はこんなにばらばらなのか、それだけを味わえばいいんじゃなかろうか。それ以上のことを期待すると“バベル”というタイトルが、あまりにも仰々しくなっちゃう。軽く考えることにする。

実に、日本のパートは不要だという意見が多い。たしかに、モロッコとアメリカの出来事と日本のエピソードは、テイストにかなりの乖離が見られる。日本パートとそれ以外のパートの2軸といってもいいくらい。加えて、日本パートの性的倒錯要素が濃すぎて、そのおかげで、全体のテーマのバランスが崩れてしまったように見える。またまた加えて、違和感を感じる日本描写が多すぎて集中できない。もうすこし、細かい部分に違和感を感じないように、日本人のアドバイスをうけることはできなかったのだろうか。話の主筋とは関係ない部分で無駄な引っかかりを残しすぎ。例えば、いかにもアメリカ人的に中指立てたり、渋谷のクラブ名“J-POP”だとか、いくら外国のできごととはいえ未成年の容疑者の顔を報道したりとか、自分名義の猟銃を海外に持ち出して、さらに海外に置いてきてしまうとか、猟銃で妻が自殺した事件を所轄の刑事が知らないとか。
#おそらく、モロッコ人にも文句をいいたい部分があるんだろうなあ(笑)

まあ、昼間から屋外で薬物摂取してるとか、チエコの行動がいくらなんでも不自然に感じられるという点は、性的虐待があるのかな?と匂わせている感じなので百歩譲ってよしとするけど、なにやら、日本はそういう性的に倒錯した人間の巣窟みたいな(それこそ女体盛りが日常行われてるような)目線でつくられてるような気もして、なんかしっくりこないけど。

監督は、チエコ役には、幼さが残る高校生の未熟な肉体を期待したと予測されるが、菊池凛子の裸は、アメリカ人から見れば子供にみえるのかもしれないけど、不健康な成人女性にしか見えない(肌のコンディションがよろしくない)。そういう部分も含めて、思うことは、彼女は演技がよかったからノミネートされたんじゃなく、いろんな意味で監督の意図を超えちゃったからノミネートされたのではないかと。ただ、それが、偶然なのか計算なのかが把握できなかった。明確にこりゃあ計算ずくでやってるな、、、とアカデミー会員に伝わっていれば、受賞したのではないかと思われる。
#その後の菊池凛子の仕事を見ると、どうやら偶然らしいと思われるので、受賞させずに正解だったかも、、とは思う。

日本パートとモロッコパートで子供の性に焦点を当てているが、はじめはもっとこの要素が強くて、製作過程で変遷していったのかなとも思える。また、鶏の血と撃たれた血をリンクさせるような稚拙な演出と感じる部分もあり、よく練られているようで、練りきれていない部分も散見される。そのくせ尺は長い。もう一回、腕まくりして編集しなおせば、すっきりとよい作品になった気もするが、まあ、それもこの監督の味というかクセというか。これでも『21グラム』よりは、よくなってると思う。

監督のメッセージを読み取ろうみたいな感じで、肩肘張って見なければ、十分愉しめると思う。それなりにお薦め。10%くらいの人がよかったといい、50%くらいの人が文句いいながらも、まあまあだったという、そんなところかな。

#役所広司の無駄遣い。

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image0192.png公開年:2007年 
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:トム・コーカー、デヴィッド・エリオット
出 演:シャニン・ソサモン、ラデュ・アンドレイ・ミク、ケイン・マノーリ、アリシア・ムーア、エミール・ホスティナ、サンディ・ドラゴア 他
コピー:恐怖に心が犯される。




アメリカ人のヴィクトリアは内気で極度に臆病な性格だったが、ソルボンヌ大学に通う姉キャロリンから誘われ、パリへ初めての海外旅行に。妹を迎えたキャロリンは、700万体もの遺骨がむき出し葬られている巨大な地下墓地“カタコンベ”で行われる過激なアンダーグラウンド・パーティに彼女を連れ出す。しかし、喧噪を避け会場から抜け出したヴィクトリアは、巨大な地下迷路に迷い込み出口がわからなくなってしまう…というストーリー。

ソウの製作陣によるホラームービーということだが、引き継いでいるのは、怖いと感じさせる直感的な表現や、観ている側の感情を煽る技術だけで、肝心の巧みなストーリー展開は引き継いでいない。よって、内容も上に書いた以上のものは何もない。

あとは、最後に、どんでん返しというか、ひと展開あるだけである。本作がまあまあの作品と評価されるとすれば、その最後のギミックがあればこそで、それがなければ駄作であることは確実。それが何かをいってしまうと、何ものこらないので、もちろん言わない。よって、これ以上、説明も評価もできない。

私が本作を早々に見切ってしまったのは、あまりにも設定が練られておらず、製作側の真剣さが見えてこなかったから。それは何か。警察にばれないように、深い迷路の中を場所を転転と移しながら、ダンスパーティーを行っているという設定で、かなりの大人数が浴びるように酒を飲み踊る。しかし、カタコンベの深部にはトイレなんかない。バレないようにしているのだから頻繁に外に出るわけがない。簡易トイレが持ち込まれているなんてありえない。じゃあ、どうしてるんだ?タレ流しか?

細かすぎる指摘だと思うかもしれないが、絶対にこの問題を解決しない成立しない設定。これに気付いてしまったら、馬鹿馬鹿しくなってしまって、初めの30分までに2度ほど見るのを中断した。
時間の無駄とまではいわないが、『ソウ』の6分の1くらいのデキだと思ってよい。はじめからハードルを下げておけば、まあまあ満足できるのかも。私はお薦めしないけど。

でも、『ソウ』シリーズで味をしめている人たちなので、2をつくるに違いないとは思う。でも、さすがにおもしろくはならないだろうけれど。
でも、出るまえに水のなかに飛び込んで血は落とすべきだと思うし、手ぶらなのに空港に向かうのは無意味だと思うし、やっぱりシナリオの詰めが甘いんだよな。

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image0153.png公開年:2007年 
公開国:アメリカ
時 間:92分
監 督:ロバート・レッドフォード
出 演:ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズ、マイケル・ペーニャ、デレク・ルーク、アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・バーグ 他
コピー:何のために戦い、何のために死ぬのか──?




大統領への野望を抱く上院議員アーヴィングは、自身の対テロ対策理論をもって世論の支持を得るため、女性ジャーナリスト・ロスを呼びつけ、特別に情報をリークすることで有利な報道をするように仕掛ける。しかし、その持ちかけに“裏”があると確信した彼女は、逆にその真相を明らかにしようと考える。その頃、アーヴィングがリークした情報ネタである、アフガニスタンにおける対テロ作戦は遂行されており、その作戦には戦争に身を投じることを選択した2人の若者アーネストとアリアンが参加していた。一方、そのアーネストとアリアンの恩師である大学教授マレーは、二人の選択に戸惑いを覚えていた…というストーリー。

①野望を抱く政治家とその裏を探るジャーナリストの会談。
②教授と生徒の真に目を向けるべきことがらについての話し合い。
③対テロ作戦に参加した2人の学生の様子。

この三本の話によって、光を三方から当てて、皆さんには何が浮かび上がって見えますか?というアプローチ。その手法自体は決して悪く無いが、最終的には、皆さん持ち帰って考えてくださいというラスト。演出のおかげで、最後はなんとなく考えされられたような気になるのだが、冷静になってみると、巧みな仕掛けがあるわけでもないし、これってよくないよね…という以上に何かが見えるわけでもない。観終わったあとに、複数の線が繋がって、その潮流によってカタルシスが得られる…というようなこともない。

でも、三者に共通して存在する異様な部分を、はばかりながら指摘してみよう。それは、全員が分不相応な“万能感”の持ち主たちということ。自信を持つことは結構なことだが、自分の能力を客観的に見ることができず、自分がデキるはずというもっともらしいが根拠のない確信について、疑うそぶりすらないこと。この万能感は周囲を不幸にする。もっと別の表現を使えば、彼らの中に謙虚の文字がないこと。案外、アメリカの問題は、そんな卑近な感覚の欠如のせいなのではなかろうか。簡単にいうと“驕り”。
欧米の学生はリベートで鍛えられているから、日本人の交渉力の無さとは雲泥の差だ…という意見がある。たしかにそのとおりかもしれないが、でも、リベートの勝利は真実の勝利ではない。時間内のリベートに勝つだけなら、恥知らずの詭弁者にはかなわない。それなら、口下手な人間は永遠に負け続けることになるのか?他人を傷つける表現をよしとしない奥ゆかしい人間は負け犬か?相手に理解してもらうために気長に教育する親や先生は愚か者なのか?そうではないだろう。私は日ごろ、それでも人間は前に進まなければ行けないんだという趣旨のことを書いているが、アーヴィングのように、過去を切り捨て、もっともらしい自論を武器にして、ただただ未来に向かって強引に突き進もうとする政治家を良しとはしたくない。

また、資本に左右され、風見鶏になってしまったマスコミと、その結果無関心になる国民の姿を指摘しているが、それを嘆くことに意味があるとは思えない。逆に、国民全員がギラギラと政治問題に注視し続ける国が、私にはマトモだとは思えないから。程度の問題。バランスの問題。100か0かしか選択できない、アメリカの馬鹿さ加減がよく浮き彫りになっている。誤解を恐れずに言えば、彼らは“中庸”という状態に耐えられないのだろう。
#そう考えると、正しいかどうかは別として、池上彰みたいな政治と国民のギャップを埋める調停者みたいな人が自然発生して、ゴールデン番組が成立する日本って、とても健全な気がしてくる。

と、色々考えると共感できる部分も無きにしもあらずだが、実のところ、レッドフォードの共和党批判作品なのかな…とも。そう思いはじめると、本作の価値がどんどん落ちていく。もっともらしいけど、何か煮え切らないし、観点がずれている気がする。

ほとんどがメリル・ストリープとトム・クルーズの二人劇が占めており、舞台の二人芝居でも通用しちゃうくらいなんだけど、異様に台詞も多くて、眠くなりそう(吹替えで観たけれど、字幕を追ったらならさぞ大変だったと思う)。もし、トム・クルーズが、もっともらしい詭弁を弄するアホを意図的に演じているなら大したものなのだが、こいつならまじめに演じてもアホに見えるという監督の意図にハマッただけという可能性もあるので、彼の演技を単純には評価しにくい(笑)。で、結局、メリル・ストリープに救われちゃたのかなぁ…と。こまった時のストリープ頼みか。
決して悪い作品ではないけれど、最近はやりの書籍『これからの「正義」の話をしよう』に出てくる事例の域を出ていない。“映画”としては、光の当て方がストレートすぎるので、角度を工夫しなければいけないと思う。映画の芸術性という側面をすっかり忘却して製作された作品かなと。

#私がこの映画から得た慧眼は、大人とはいくつもの決断を重ねた人のこと…ってことかな。

決してこういう種類の作品の否定はしないけれど、金払って何でモヤモヤやイライラを持ち帰らねばいかんのか…と、そう思いたくない人は観ないほうがよい。

#邦題は、まとはずれだし、センスもない。作品自体を馬鹿にしているのか、客を馬鹿にしているのか、もしくは配給会社が馬鹿なのか、いずれにせよ“馬鹿”なんだろう。もういい加減、会議で邦題を決めるのをやめたらどうだろう。万人が納得するものを目指すと、結局万人が満足しないというのは、商品開発のセオリーだと思うのだが、なぜそれに気付かないのか…。
 

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プロフィール
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クボタカユキ
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映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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