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公開年:2002年
公開国:スペイン
時 間:113分
監 督:ペドロ・アルモドヴァル
出 演:ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、レオノール・ワトリング、ロサリオ・フローレス、ジェラルディン・チャップリン、パス・ベガ、ピナ・バウシュ、カエターノ・ヴェローゾ、ロベルト・アルバレス、セシリア・ロス 他
受 賞:【2002年/第75回アカデミー賞】脚本賞(ペドロ・アルモドバル)
【2002年/第28回LA批評家協会賞】監督賞(ペドロ・アルモドバル)
【2002年/第60回ゴールデン・グローブ】外国語映画賞
【2002年/第56回英国アカデミー賞】オリジナル脚本賞(ペドロ・アルモドバル)、外国語映画賞
【2002年/第15回ヨーロッパ映画賞】作品賞、監督賞(ペドロ・アルモドバル)、脚本賞(ペドロ・アルモドバル)、観客賞[監督賞](ペドロ・アルモドバル)、観客賞[男優賞](ハビエル・カマラ)
【2002年/第28回セザール賞】EU[欧州連合]作品賞(ペドロ・アルモドバル)
コピー:深い眠りの底でも、女は女であり続ける。
4年前、交通事故に遭い昏睡状態に陥ったアリシア。看護士のベニグノは4年間彼女を世話し続け、決して応えてくれることのない彼女に向かって毎日語り続けていた。一方、女闘牛士のリディアもまた競技中の事故で昏睡状態に陥り、彼女の恋人マルコは彼女に付き添いながらもただただ哀しみに暮れている。ベニグノとマルコは病院で顔を合わすうちに、言葉を交わすようになり、次第に友情を深めるのだったが…というストーリー。
重いテーマながら、さらっとするっと、何一つ引っ掛ること無くごく自然に展開。こんなにスムーズに気持ちが乗っかる映画は、初めてかも…なんて、アルモドバルすげーなぁと思いながら観ていたのだが、それは中盤まで、そう思わせること自体が引っ掛けだったか。
(以下ネタバレ)
まず、ベニグノがレイプしたのかどうか。実際はしていないかもしれないという見方をする人もいる。そりゃ直接、そのシーンはないので、やってないと解釈することは可能なんだけど、そうじゃないと、まったく方向性の違う話になっちゃうし、死産だったてことは、DNA検査して容疑が固まったことを明確に示しているわけで、そこを疑うのは、やっぱり野暮だと思う。ということで、ベニグノがレイプしたということで話をすすめる。
ベニグノとマルコは、それぞれ昏睡した愛する女性のもとにいる、ある意味同じ立場の男同士なんだけど、ベニグノはただただ疑うことなく愛を傾ける。マルコはただただ喪失感ゆえに落ち込むだけ。さらに時間が経過すると、ベニグノは、彼女が昏睡状態でなければ、まずありえないであろう、彼女と結婚することを望み始め、逆にマルコは、実は彼女が別れを決めていたことを知り、ショックで去ろうとする。まったく逆の行動をとる二人なのに、その間にはなぜかシンパシーが。
まあ、マルコは外国人で、過去の恋人とのつらさとか、不安定な職業とか、“孤独”というキーワードで共通していて、そういったひずみみたいなものが、ベニグノにたいする興味・情という形で発現しているということなんだろう。
愛に渇望する男同士ゆえ理解しあうってことなんだろうけど、やっぱりベニグノのは愛なのか?という疑問に、ぶち当たる。“無償の愛”“一途な愛”“純愛”といえば聞こえはいいが、単なる一方通行の執着を愛と呼ぶかな。
そして、つきつめて考えれば、世の中の人が声高にいっている“愛”っていうのは幻想なんじゃないか?ってことをベニグノを通して気付かせてくれる。
ベニグノは死にアリシアは目が覚める。やはり無償の愛は尊いんじゃないかと思わせてておいて、マルコとバレーの先生の会話になる。マルコは「単純ですよ」といい、バレーの先生は「単純じゃない」という、案外、それが答えかも。男は愛をシンプルだと思いこみ、女はそうじゃないと思う。そのコントラストを表現するためには、アルモドバル的にはレイプするところまでもっていかないといけなかったのかもしれない。しかし、結果からいえば、あまりに不快なできあがり。
別に、本作におけるレイプの非道徳さをどうこういっているのではない。だって映画だから、殺人だろうがレイプだろうが、必要であれば表現すればいい。ただ、それまで流麗に展開していたのに、流体オブジェの液体のとろーんと流れる表現なんかをもってこられると、ワタシ的には趣味が悪すぎると感じざるを得ない(例の無声映画も同様)。アルモドバルは、いつもちょっと有り得ないようなシチュエーションをつくってグイグイ展開していくんだけど、このレイプってさほど有り得ないシチュエーションでもないところが気持ち悪さに繋がっているんだよね。普通の感覚なら、サイコホラーどこかスナッフムービーくらい気持ち悪い話なんだから。もうちょっとリアルさが削がれるくらいじゃないと、引いてしまう。
だから、意識不明の女性をレイプする酷い映画だと観る人が相当数いて当たり前。共感できないと思うひとがいて当たり前。申し訳ないけれど、これは脚本の演出上の足かせであって、もうこの設定にした以上、評価が真っ二つに分かれるのは必然。なのに、なぜか諸手を挙げて色々な脚本賞を受賞しているのが、腑に落ちない。賞をあげるだけじゃなくって、どの部分をどう評価・解釈して賞をあげているのか、説明して欲しいと思いたくなる。
たくさんの受賞歴だけで、さぞやおもしろいんだろうと予想して観ると、痛い目にあうかも。坂口安吾とか芥川龍之介なんかと同じカテゴリだと思えばいいんじゃなかろうか。ああ、そうか、ワタシも、他のアルモドバルと似たような感じだという先入観でみたからダメだったんだな。坂口安吾とか芥川龍之介と同じカテゴリ。うん、我ながら言い得て妙かも。お薦めしないわけではない。ただアクは強い。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:86分
監 督:クレイグ・メイジン
出 演:ドレイク・ベル、サラ・パクストン、クリストファー・マクドナルド、レスリー・ニールセン、パメラ・アンダーソン、ケヴィン・ハート、マリオン・ロス、ライアン・ハンセン、キース・デヴィッド、ブレント・スピナー、ロバート・ジョイ、ジェフリー・タンバー、ロバート・ヘイズ、ニコール・サリヴァン、トレイシー・モーガン、レジーナ・ホール、クレイグ・ビアーコ、リチャード・ティルマン、サイモン・レックス、ダン・カステラネタ 他
両親を亡くし、伯父母に育てられてきた高校生リック。隣家に住むジルに想いを寄せているが、彼女はランスという彼氏がいるため、気持ちを伝えられずにいる。ある日、リックは課外授業で訪れた研究所で遺伝子操作されたトンボに噛まれてしまい、5日間眠り続ける。目を覚ますと、特殊能力を身に付けた超人になっており…というストーリー。
毎日毎日1本ずつ映画を観ていると、どうしても何も考えたくない日があるね。今日がそれ。
パロディも何も、遺伝子操作を施されたクモ…じゃなくってトンボに咬まれた高校生がその遺伝子の影響を受けて、発現した能力を使ってスーパーヒーローとして悪と闘うってことで、基本ストーリーは『スパイダーマン』そのまんまの展開で進行。その他もネタもXーMENやらファンタスティックフォーやらアメコミばかり。
パロディの具合もあまり洗練されていないし、ただ無造作に、過激な下ネタとか、ちょっと引いちゃうような障害者ネタをまぶしている。ボンズの薬物ネタとかトム・クルーズそっくりさんとか、いまどきの若い人なんかには、ピンとこないんじゃないかな。だいたいにして、いまごろ『スパイダーマン』のパロディって、ちょっと遅くないかな。
はじめっから期待はしていなかったけど、もうちょっと「いいとこ付くなあ」って感じにできなかったものかなと。
最近のアメリカのパロディものって、下品さとかゴシップネタのインフレ状態だなあ。もうこの手の作品自体が終焉を向かえつつあるのかしれない。
ほとんど笑えないので、もちろんお薦めしないのだが、“笑えない”それがなぜか心地のよい日というのがあるのだ(疲れてるのかな…)。
公開年:2005年
公開国:アメリカ
時 間:120分
監 督:ライアン・ジョンソン
出 演:ジョセフ・ゴードン=レビット、ノラ・ゼヘットナー、ルーカス・ハース、ノア・フレイス、マット・オリアリー、エミリー・デ・レイヴィン、リチャード・ラウンドトゥリー、ミーガン・グッド、ブライアン・ホワイト、ノア・セガン 他
受 賞:【2006年/第59回カンヌ【2005年/サンダンス映画祭】審査員特別賞
南カリフォルニアの高校生ブレンダンは、排水溝に横たわる元彼女エミリーの死体を発見。その2日前、2ヵ月前に別れたエミリーから助けを求める電話を受けたが、彼女は“ブリック”“ピン”といった謎の言葉を残しただけで要領を得なかった。ブレンダンは唯一の友人ブレインの協力を得て、エミリーの捜索に乗り出したのだが…というストーリー。
まあ、サンダンスで評価される作品らしいといえばらしいのだが、あくまで将来性を感じさせなくはないというだけであって、本作自体のデキがいいわけではない(とワタシは思う)。
思わせぶりな演出がつづくのだが、根本のストーリーはあまりにも単純だし、その思わせぶりも特段理由があってそうしているわけではない。アクションシーンには、“お!?”と思わせるところも無くはないのだが、最終的にはそれっぽく外面を整えるのに助力しているだけ。奇を衒ってみただけ。この製作姿勢は、まったく評価できない。
色々、どう面白くなるのかと期待はしたのだが、結局はチンピラ高校生たちのチッポケな犯罪ストーリー以上のなにものでないし、本来クローズアップすべきである愛する者のための謎解きも不完全燃焼。“消された暗号”なんって邦題がつけられているが、ピントはずれもいいところ。なんといっても、根本的に愛のために行動しているように見えないのが致命的。
ほどなく観た人の脳裏から消えてなくなるであろう駄作である。残念だが、このままでは、この監督は世で評価される日はこない。おそらくこの受賞自体が彼のためになっていない(サンダンスは、若い監督を奨励するつもりで、かえって芽を潰してしまったんだろう)。時間の無駄なのでお薦めしない。吹替え音声もないのだが、加えて字幕のデキも悪い。
公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:103分
監 督:クリス・コロンバ
出 演:マコーレー・カルキン、ジョー・ペシ、ダニエル・スターン、ジョン・ハード、ロバーツ・ブロッサム 他
ノミネート:【1990年/第63回アカデミー賞】作曲賞(ジョン・ウィリアムズ)、主題歌賞(曲:ジョン・ウィリアムズ/詞:レスリー・ブリッカス“Somewhere in My Memory”)
【1990年/第48回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、男優賞[コメディ/ミュージカル](マコーレー・カルキン)
コピー:ボク、どうしよう!家族が留守中のファミリー・アドベンチャー!
一家総出でクリスマスのパリ旅行に行くことになったマカリスター家。ところが息子のケビンは、出発のどさくさで屋敷に取り残されてしまう。しかし、日頃ぞんざいに扱われているケビンには、一人の生活がうれしくて仕方がない。そんな時、二人組の泥棒が屋敷が留守だと踏んで進入してくる。ケビンは家を守るため、撃退作戦を敢行するが…というストーリー。
家族がなにげに観ていたので、便乗して鑑賞。
本作と同様に1990年前後の作品である『ダイ・ハード』『天使にラブ・ソングを…』と合わせ、この三本は映画の教科書が存在するならば、まちがいなく教材になる。伏線の貼り方、サイドストーリーの立て方/からめ方、サブキャラの作り方、心の成長や他者への愛情/友情エピソードの盛り込み方。いずれもクリスチャン的要素が濃いというのも特徴かも。
いまさら気付くなよ…と言われるかもしれないが、本作の音楽担当ジョン・ウィリアムズは、色々なヒット作を手掛けているのだが、その中でも、本作とハリポタシリーズは同じテイスト。
演者の中でもジョー・ペシの演技はピカイチ。本作に続いて『リーサル・ウェポン2』『ホーム・アローン2』『~3』と、大ヒット作にコメディ要素の強い役を重ねてノっていた時期。特にホーム・アローンシリーズのおもしろさの3分の1は彼のおかげといってよいかも。
未見の人はあまりいないと思うが、観るものがなくてヘタな物を観ちゃうくらいなら、よっぽど楽しめる(TV放映していたらなにげにみちゃうものね)。ただし、早い展開やさりげない伏線を見落とさないためにも、吹き替えで観るべき。
公開年:1998年
公開国:アメリカ
時 間:119分
監 督:トニー・ケイ
出 演:エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング、ビヴァリー・ダンジェロ、フェアルーザ・バーク、エイヴリー・ブルックス、ステイシー・キーチ、エリオット・グールド、イーサン・サプリー、ガイ・トーリー 他
ノミネート:【1998年/第71回アカデミー賞】主演男優賞(エドワード・ノートン)
コピー:兄さん、僕たちの物語は憎しみの歴史にピリオドを打てるだろうか。
消防士だった父親が黒人に殺されたのをきっかけに、デレクは白人至上主義の組織に入り、その思想にのめり込んでいく。ある日、デレクは車を盗もうとした複数の黒人を殺害し服役。その後、兄のデレクを尊敬する弟ダニーも、組織に出入りするようになる。ダニーは兄の出所を待ちわびたが、数年後に出所したデレクは別人のように変わっており…というストーリー。
パッケージのイメージから、ネオナチなんかをテーマにした、もっと仰々しいストーリーだと思い込んでいた。まったくの食わず嫌いでいままで未見だったのだが、まったくの見当違いで、もっと早く観ておけばよかったとすら思う。
人種差別というのは、不満・ストレスの理由を、手近な差異に結び付けているだけで、真の理由ではない場合がほとんど。デレクの父からデレクへ、デレクからダニーへと、もっともらしい理論の刷り込みが行われるが、“もっともらしい”だけ。この“もっともらしい”点が話しをややこしくしているすべての原因である。実はさほど根深くもややこしくもなく、差別している側もされる側も、このもっともらしいだけで、因果関係もなにもない点を論破できないことが問題なのである。そして往々にして、その解決のためには暴力が用いられ、そうなってしまえば、単なる暴力の連鎖だけが続くのである。
どの演者もとても迫力のある演技だが、エドワード・ノートンの狂気の演技は特にすごい。緊張感が伝わってきて、観ているだけで筋肉に力が入ってくる。米アカデミー主演男優賞にノミネートされているが、その年に獲ったのは『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニ。『ファイトクラブ』大好きのワタシ的にはエドワード・ノートンのほうがふさわしく思える。
ただ、ストーリー的に、若干難点があると思われ、受賞に至らなかった理由はそこかも(本来、ストーリの不備が演技賞に影響を及ぼしてはいけないんだけどね)。
刑務所で偶然出会うある黒人との関わりで、デレクは急激に改心していくわけだが、平気で無慈悲に躊躇無く暴力を振るう彼が、あの程度で改心するというのは、いささかバランスが悪い。オカマを掘られることと、人種差別思想が、同じ程度の重みだって言っているようなものだものなぁ。
最後はガツンとくるラストで終わるのだが、はたしてこの連鎖は終わるのか否か。答えを明確にださないで、終わる。それでよい。あとは実社会でということだ。
未見の人は是非観るべき。人種差別主義者のインチキを見抜くための見識も深まるだろうし、DV野郎がどういう態度で人を支配していくのかもよくわかって対処のお勉強にもなるだだろう。お薦め。
公開年:2006年
公開国:スペイン
時 間:120分
監 督:ペドロ・アルモドヴァル
出 演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ローラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コボ 他
受 賞:【2006年/第59回カンヌ国際映画祭】女優賞(ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、チュス・ランプレアベ、ヨアンナ・コボ、ブランカ・ポルティージョ)、脚本賞(ペドロ・アルモドバル)
【2006年/第19回ヨーロッパ映画賞】監督賞(ペドロ・アルモドバル)、女優賞(ペネロペ・クルス)、音楽賞(アルベルト・イグレシアス)、観客賞(ペドロ・アルモドバル)
コピー:ママ、話したいことがヤマほどあるの。
女たち、流した血から、花咲かす。
失業中の夫と一人娘パウラと暮らすライムンダは、10代の頃に、父母を火事で亡くしている。ある日、夫がパウラに関係を迫り、抵抗したパウラに刺し殺されてしまう。ライムンダは娘を守るために、夫の死体を隠す。すると、今度は故郷に住んでいる伯母の急死の報せが。ライムンダの姉ソーレが葬儀に訪れると、死んだはずの母イレネを見掛けたという村人たちの噂を耳にする…というストーリー。
アルモドヴァルお得意の女性の生き様シリーズ。いつもシリアスで重く感じるんだけど、冷静になって振り返ってみると、けっこう荒唐無稽な展開が多くて、実はあまりリアルじゃないエピソードばかり。それでもグっと心をとらえちゃうんだからアルモドヴァルの力量、おそるべし。もう名人芸の域かもしれない。
その点は本作も同様なのだが、いままでと違い、あからさまにサスペンス要素やミステリー要素が盛り込まれている。おや?いつもと毛色が違うか?と思わせるのだが、結局はいつもどおり女の生き様でムンムンした話に終着。アルモドヴァルを知らない人は、夫の処理のその後の顛末や、母親の存在はどうなるのかとか、それらがどういうオチになるのかについて執着してしまい、不完全燃焼と感じてしまうかもしれない。悪く言えば、半ば投げっぱなしで、未処理で終わる点に不満を抱くかも。まあ、でも、彼の作品はそんなものなので、慣れるしかない…というか、同じアホなら踊らにゃ損というか、そういうノリだと割り切って観たほうが幸せになれる。
それにしてもいつも以上に、セリフの緻密さが光る。冒頭の「未亡人が多いのね」がいい例だが、何気ないセリフの多くが伏線になっていて、ある意味油断も隙もないというか(笑)。まあ、こなれすぎて、いささか角が取れてしまった感は否めないが、映像も音楽も、これまでの作品に増して良いので、間違っても飽きることはないだろう。
仮に趣味に合わないという人がいても、つまらないとまで言う人はほとんどいないはず。最低でも良作評価保証作品なので、お薦めする。
ペネロペはこれまでの出演作の中で、一番のデキだろう。
公開年:2003年
公開国:イタリア
時 間:109分
監 督:ガブリエレ・サルヴァトレス
出 演:アイタナ・サンチェス・ギヨン アドリアーナ・コンセルヴァ ジュゼッペ・クリスティアーノ ジュゼッペ・ボッキーノ ジョルジオ・カレッチア ステファーノ・ビアゼ ディーノ・アッブレーシャ ディエゴ・アバタントゥオーノ ファビオ・アントナッチ マッティア・ディ・ピエッロ 他
コピー:その夏、少年は大人への扉を開けた
1978年、南イタリア。小さな地方の村に住む10歳の少年ミケーレは、廃屋の裏の穴の中に、鎖に繋がた少年を発見。恐ろしさのあまり誰にもその存在を打ち明けることはできなかったが、どうしても気になって何度も穴に通う。やがて、穴の中にいた少年フィリッポに水や食料を運ぶうちに、だんだんと友情を感じ始める。しかしある時、ミケーレ父や父の友人と称する大人たちが交わす、フィリッポにまつわる会話を聞いてしまい…というストーリー。
(いきなりネタバレなんだけど)
綺麗な田園風景と少年たちのさわやかなストーリで始まり、監禁された少年の秘密でナゾは深まり、最後は劇的な冒険譚に…と、褒めたかったのだが、残念ながらそうはならなかった。
父親は金持ちの息子の誘拐に関わって、村で監禁し、自分の子供がそれを見つけて…というプロットはとても良いと思う。しかしその後は、子供が子供なりの正義感で勇気をもってムチャしてくれたりしないと、全然盛り上がれない。さらに、その犯罪もチンケで面白みがない。それなりにハラハラドキドキの演出といえばそうかもしれないけれど、勇気、友情、正義感なんかをクローズアップして盛り上げることができる場面は多々あった。それなのに、わざとかと思うほど、その期待を削いでくれる。後半1時間くらいは、くしゃみが出そうなのに出ない状態がずっとつづくような、モヤモヤした時間が続く。まったくもってすっきりしない。最後にカタルシスを感じる終わりにすることはいくらでもできるたのに、全然である。最後、“グッジョブ!”って感じでミケーレは微笑むけど、映画全体は全然グッジョブで終わっていない。
フィリッポが見つかるまでと、友情を育むあたりがモタモタと長いのだが、そう考えると、正味楽しめる部分の時間は非常に短い。もうすこし別の傍線のストーリーがあって、並行して進めてもいいくらいである。誘拐された親のくだりとか、誘拐にいたった馬鹿大人たちのすったもんだとか、、、盛り込める要素はいくらでもあったのに。誘拐仲間の若者に見つかって車に乗せられたところとか、その若者に母親が食ってかかったところとか。
]悪くないと評する人もいるのを承知の上で、あえて厳しいことを言わせてもらうと、これは、きちんと完成しているとはいえない作品である。感動もカタルシスもない、観ている側にどういう気持ちになってほしいのか、まったく伝わってこない作品である。特段、観る必要のない作品である。お薦めしない。
公開年:2009年
公開国:日本
時 間:120分
監 督:是枝裕和
出 演:ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真里、丸山智己、奈良木未羽、柄本佑、寺島進、山中崇、ペ・ジョンミョン、桜井聖、オダギリジョー、富司純子 他
受 賞:【2009年/第19回日本映画プロフェッショナル大賞】主演女優賞(ぺ・ドゥナ)、ベスト10第3位
コピー:私は「心」を持ってしまいました。持ってはいけない「心」を持ってしまいました。
あなたの息で、私の カラダを 満たして…
ファミレスで働く冴えない中年・秀雄は、空気人形のラブドールとの生活が唯一のやすらぎ。ある朝、その空気人形は心を持ってしまい、秀雄が仕事に出かけると外の世界へ。やがてレンタルビデオ店で、店員の純一とめぐり会いひと目惚れ。以来、その店でアルバイトをするようになり、純一や店長から色々なことを学んでいく空気人形だったが…というストーリー。
本作を観る前に原作を読んでおきたかったのだが、本屋を数件巡ったが発見できず。原作が短編マンガなのは知っていたので、それをどう膨らませたのか?というの点は、評価する上で大事だと思ったからなのだが、かといってネットで購入するほどのこだわりでもなかったので、諦めておとなしく鑑賞。
PG15+なので、まちがってもお子様に見せてはいけない作品…というのはラブドールという性的な要素のせいか…とおもったが、最後まで観ればそれだけが理由でないことは明白。
性の道具としてのエグいギミックを除けば、大人のファンタジーを言い切っても、まったく過言ではない。ペ・ドゥナの透き通るような表情や細かい演技がそれを実現している。この雰囲気とこの演技力を併せ持っている俳優さんは、ちょっと日本ではいないでしょう。日本アカデミー賞は彼女のあげたかったなと、個人的には思う次第。
それにしても画質というかカメラワークが素晴らしいなぁ…と感心していたのだが、リー・ピンビンという台湾のカメラマンだそうで。ちょっと勉強不足で彼のこれれまで撮った作品を観たことは無いのだが、対象物とその他の構造物の間の空気を意識させてくれるというか、ある意味緊張感の漂う画になっており、とても感心。日本のカメラマンさんたちのは申し訳ないけれど、韓国や台湾のカメラマンさんに劣っている場合が多いなと、やはり思うのである。
まあ、その大人のファンタジーも終盤になると、のっぴきならない緊張感に押し流されちゃうんだけど。
ストーリー的には、細かい抑揚は多々あれど、基本的にそうそうドラスティックに展開するわけではないので、語りすぎるとネタバレになってしまう。だからほどほどにするけれど、2箇所で吐き気を感じるシーンがある。気持ち悪いという単純な感覚ではなく、胃がすり潰されるような、エグさとせつなさの混合した不思議な感覚。
一つ目は、秀雄が別の人形を愛でるのを見て、空気人形が嫉妬ともやきもちともつかない文句を言うシーン。性の道具としての扱いを嫌がっていながら、いざ自分がお払い箱になった時に彼女が見せた感情。嫌悪と愛着と惰性という理性ではとても整理できない感情のまだら模様が、ものすごく吐き気をもよおした。
二つ目は、純一が空気を抜いてみたいを言った時。それまでは、なにかが欠けた登場人物たちの中で、そこそこまともだった彼が、その一言を発した瞬間に、幼児体験での死と性の混在が未整理なまま大人になった人格であることが、白日となるシーン。もちろんその後の悲劇に繋がるわけだが、このセリフをいった時点で、あの結末になるのは決まっていたようなもの。エロスとタナトス。空気人形もエロスとタナトスに共感してしまい、その共感故の行為が、例の行為に繋がる。私には決して純一が死に抗おうとしているようには見えなかったのだが、おそらくその見方は正しいのではないかな。その微妙な感じを演じられる今の若手俳優は、たしかにARATAくらいかも。いいキャスティングである。
まあ、哲学の臭い漂う業田義家の原作と、死から生を浮き彫りにする是枝監督の合体だから、このデキになるのはもっともなこと。私は満足のいく内容だったと感じているけど、いかんせん体力がないと、負けちゃいそうな感じかな。変なアドバイスだけど、体調の悪い時とか、心がやられてるときは、観ないことをお薦めする。彼氏や彼女と一緒に観るのもお薦めしない。でも、観て。途中で空気人形に共感するかもしれないけど、観終わると、なぜか自分の中にある“生”を感じられる映画。
公開年:2009年
公開国:日本
時 間:107分
監 督:大岡俊彦
出 演:深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、モト冬樹、蓮佛美沙子、柄本時生、江口のりこ、上村響、村中龍人、中村凛太郎、白川裕大、窪田傑之、宮本愛子、山田スミ子、西原理恵子、たくませいこ、ちすん、いとう麻見、ニタ・ニコルソン、峯のぼる、西山季陽、中谷潔一、上松勝寿、北代一也、大木瞳美、池松壮亮、岡村隆史、吉行和子、蒼井 他
コピー:わすれないでね好きだと必ず帰ってこられるの。
小学生のヨシオのそばには、ヨシオにしか見えない不思議な“いけちゃん”がいつも一緒にいる。いじめにあったり、お父さんが死んだり、つらいときはいつでもいけちゃんに励まされ、ひとつひとつ乗り越えながら少しずつ成長していくのだったが…というストーリー。
西原理恵子の同名原作が話題になったとき、どんな内容なのかな?と思って、平積みになった原作本を立ち読みしたのだが、その時、実はさっぱり意味がわからなく購入に至らなかった。ようするにいけちゃんの正体がまったくわからなかったのね(さささっと立ち読みしたせいかもしれないけど)。
まあ、ネタバレになっちゃうので、もちろん言わないけれど、今回観て理解できたよ。
西原理恵子の他のマンガと同じように、貧乏生活とか乱暴だったり自堕落だったり不貞だったりする登場人物にまつわるエピソードが続くので、こんな大人のファンタジー要素が盛り込まれているなんて、思いもよらなかったんだろうな。
まあ、原作を読んで理解できてなかった私が言うのもなんなんだけど、これは映画にする意味はなかったかな。決して原作のイメージを壊しているとか、雰囲気がおかしくなっちゃったとか、そういうことはなくって本来は褒められてもいいくらいなんだけど、元々そんなに分量の多い内容でもないから1時間もあれば読める程度だしね。どう探しても映画にする意味って見つからないのね。話題になった原作で、かつ“映画にできそう”って、だそれだけで企画が通っちゃったんだね。
逆に、原作を超えた部分が一瞬たりともないということで、西原理恵子はニヤリとしてたりするかもしれないけれど。
原作の内容を知っている人は、観る意味はまったくない。かといって、読んだことがない人が観ても、可もなく不可もない。ふわっとさらっと終わる作品。もし原作の噂を聞いて(“泣ける”とか聞いて)興味をもった人は、映画じゃなくて原作を読むべし。
公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:102分
監 督:ブラッド・シルバーリン
出 演:ベン・バート、エリッサ・ナイトウィル・フェレル、ダニー・マクブライド、アンナ・フリエル、ヨーマ・タコンヌ、ジョン・ボーイラン 他
受 賞:【2009年/第30回ゴールデン・ラズベリー賞】ワースト・リメイク・続編賞
コピー:俺たちタイムトラベラ~
独自のタキオン理論を基にしたタイムワープの研究をするマーシャル博士だったが、その突飛な学説のおかげで学会からは全く相手にされない。ただ一人、女性科学者ホリーだけが彼を信じて研究をサポートし、ついにタイムワープ装置は完成する。2人は、タキオンが異常発生しているらしい場所に向かい、案内役の土産物屋ウィルと一緒にも巻き込み、別世界への時空の旅へ。辿り着いた先は、恐竜に異星人の他、あらゆる時代の物が混在する不思議な世界だった…というストーリー。
アメリカで、1970年代に放送されていたテレビシリーズの子供番組のリメイクらしいんだけど、もちろん知らない。
アドベンチャー映画としているが、実際はコメディ映画(のつもりで製作されている)。コピーの“俺たちタイムトラベラ~”だけど、実はコレを邦題にしたかったのでは?と思う。でも、それだと子供が観に来ないだろうから、内容とアンマッチでもこのタイトルにしたんだろう。
でも、それにひっかかって親子連れで観た人はいろんな意味で騙されたことだろう。まず、ウィル・フェレルはあくまでウィル・フェレルを貫いており、ファミリー要素なんかまったく意識せず、シモネタもドラッグネタもなんでも好き放題。まったく子供向けじゃない。だからといって、そのギャグがおもしろいかというと、ほぼスベりまくり。
CG・特撮のデキがよいだけに、逆に稚拙なシナリオが痛々しい。
私は、一箇所たりとも、クスりともすることはなかった。最近はピンとこないラジー賞が多いが、本作については当然の受賞。まったくお薦めしない。吹替えのケンドー・コバヤシがウマイとかヘタとかいう次元ではなく、声優は力の発揮しようがない。レンタル料金も時間も無駄なので、観なくてよい。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:98分
監 督:アンドリュー・スタントン
出 演:ベン・バート、エリッサ・ナイト、ジェフ・ガーリン、フレッド・ウィラード、ジョン・ラッツェンバーガー、キャシー・ナジミー、シガーニー・ウィーヴァー 他
受 賞:【2008年/第81回アカデミー賞】長編アニメ賞
【2008年/第75回NY批評家協会賞】アニメーション賞
【2008年/第34回LA批評家協会賞】作品賞
【2008年/第66回ゴールデン・グローブ】アニメーション作品賞
【2008年/第62回英国アカデミー賞】アニメーション賞
染されて人類が退避した29世紀の地球。そこには、700年もの間、黙々とゴミ処理を続けるロボット、ウォーリーがいたが、次第に感情的なものが芽生え、いまではゴミの中から様々な物を見つけてはコレクションして楽しんでいる。ある日、空から一体のロボット“イヴ”が地球に降り立つ。その姿を見てたちまち恋に落ちたウォーリーは、彼女の気を惹こうとしたが、お気に入りの“植物”を見せた途端、イヴは動かなくなり、その後現われたロケットに回収されてしまう。イヴを助け出そうとしてロケットにしがみついて、そのまま宇宙へ運ばれてしまうウォーリーだったが…というストーリー。
様々なアニメ賞を受けているが、これをアニメとカテゴライズしてよいのかと思いながら観ていた。だって、CGがリアルすぎて、さらっとアナキン・スカイウォーカーとかが出てきて『スター・ウォーズ』っていわれても、遜色ないんだもの。まあ、後半でアニメちっくな人間がでてくるから、まあアニメなんだろうなって納得はできるけど。
ここまでくると、“アニメ賞”の対象の定義ってなんなのか考えてしまう。演者として人間が出るか否か?じゃあ、モーションキャプチャーで動きは人間のものだけど、映像はCGだったら?逆にアニメだけど、ものすごく実写に近かったら?そろそろ、アニメを特別視して、賞を別カテゴリーにするのは止めるべき時期に来ているのではなかろうか。
人間が地球を見捨てる→移住可能な星を探査するためにロボット派遣っていう流れは『2001年宇宙の旅』みたい(というかオマージュなのかな)。ってことはイヴはモノリスか。でも、SFでもファミリー向けでもなくって、完全にラブストーリーなんだけどね(連日恋愛ものである)。
はじめにいったとおり、前半は人間が出てこないで、ほぼセリフなし。ウォーリーの生活を淡々と写す様子は、とてもか楽しめた。ウォーリーのことをかわいい、愛らしいというのは、地球で一人ぼっちだけど、それなりに楽しくやってる感じを指していたんだろうね。
そのいい感じも人間が出てくるまで。人間登場で、それまでの世界観に抱いていたワクワクがスーッっと醒めていく。スーって音が聞こえるように。そのまま盛り返すこともなく、さらにドタバタになり、さらにエコ的な説教臭さも加味されて、ピントがずれまくってもうぐちゃぐちゃ。バタバタと動きはするんだけど、気持ちは益々離れてしまい、部分的に眠気すら覚える始末。飽きた子供は多いことだろう。
良質な前半のアドバンテージを、時間が経過するごとに食いつぶし、最後は赤点ギリギリで逃げ切る作品。残念ながら無理しても観るような作品にあらず。特段お薦めはしない。
公開年:2004年
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:ミシェル・ゴンドリー
出 演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、マーク ラファロ、イライジャ・ウッド、トム・ウィルキンソン、ジェリー・ロバート・バーン、トーマス・ジェイ・ライアン、ジェーン・アダムス、デヴィッド・クロス 他
受 賞:【2004年/第77回アカデミー賞】脚本賞(チャーリー・カウフマン、ミシェル・ゴンドリー、ピエール・ビスマス)
【2004年/第58回英国アカデミー賞】オリジナル脚本賞(チャーリー・カウフマン)、編集賞(ヴァルディス・オスカードゥティル)
コピー:“さよなら”の代わりに 記憶を消した――
ジョエルは恋人クレメンタインとケンカ別れしたが、そんな彼の元に、クレメンタインがジョエルについての記憶を消去したので、今後彼女に触れないように…というお願い通知が届く。彼女と仲直りしようと思っていたジョエルは納得できず、記憶の消去を行ったラクーナ社を訪れる。そこでは、一晩で特定の記憶だけを消去する施術を行なっており、ジョエルも彼女のことを記憶に留めておくことがつらくなり…というストーリー。
連日のロマンス物で、私らしくないとは思うが、連日、ただのロマンス物ではない。
(ネタバレ注意)
上質な大人の恋愛ドラマだと、私は思う。ただ甘いだけの好きだ嫌いだ言うだけのラブストーリーなんてクソ喰らえって思っているので、こういうSF要素とか哲学的要素をさらっと料理してくれると、こんな私でもすんなりの受け入れられる。記憶を消すビジネスっていうのは監督の原案らしいけれど、その着想自体は、特筆するほど目新しいものではない。やはり脚本の構成と味付けの妙。
はじめの出会いは、本当の出会いじゃない…。そんな仕掛けも随所にあって、さすがチャーリー・カウフマン。
お互いが記憶を消してしまったことを把握したあと、あそこで、“くりかえても同じだから…”となってしまわないところが非常によろしい。
ただ、一度恋に落ちた二人だから記憶をなくしたとしてもまた惹かれ合うのさ…みたいな解釈をしている感想をよく読むのだが、私はそうは思わない。だいたいにして、その“どうせ”みたいな解釈が気に喰わない。
だって、カセットテープで聞いた彼らの告白を聞けば、理屈から言えば、また付き合ってもうまくいかないと思うだろう。だけど、確かに自分の声なんだけど、本当のところ実感はない。理屈ではそうだろうけど、実感が伴わないことに対して、納得して生きていくことなんてことは、人間にはなかなかできはしない。そして、なんだかんだ言っても、人間は前に進まないと生きられない。
失敗しようがどうなろうが、その傷口にできたかさぶたの上にさらにかさぶたをつくって人間なんか出来上がっているんだ。臆せず前向きに生きろよ!私はそういうメッセージだと受け取ったよ。
ほうら、“どうせ…”みたいなニヒリズム主義とは真逆の解釈になったでしょ。この観る側の微妙た立ち位置で、解釈がガラっと変わる…っていうところが名作の証なの。
未見の人には、是非是非お薦め。普段はロマンス物なんか観ないよという、おっさんにも強くお薦め。
公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:ポール・トーマス・アンダーソン
出 演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、ルイス・ガスマン、フィリップ・シーモア・ホフマン、メアリー・リン・ライスカブ、ジェイソン・アンドリュース、ドン・マクマナス 他
受 賞:【2002年/第55回カンヌ国際映画祭】監督賞(ポール・トーマス・アンダーソン)
コピー:それは目が眩むほど、パンチのきいたラブ・ストーリー やがて衝撃は、陶酔にかわる
ロサンゼルス。バリー・イーガンは、トイレの詰まりを取るための吸盤器具を販売する会社を経営しているが、精神的に不安定で、突然キレたり泣き出したり。そんな彼の最近の関心事は、食品会社のマイレージキャンペーンを利用してマイルを貯め込み、好きなだけ飛行機で旅行すること。ある早朝、会社の隣の修理工場に車を預けに女性がやってくる。実は彼女はバリーの姉の同僚リナ。バリーの写真を見て一目惚れしてしまい、車の修理を口実に顔を見に来たのだった。やがて2人の仲は親密になっていくのだが…というストーリー。
『マグノリア』のように性的にいささか倒錯したキャラもいるし、突飛な出来事も(CGを使って)次々発生するなど、これまでのPTA作品との共通点はもちろんある。けれど、決定的に群像劇色が薄い。
『マグノリア』公開前に父上を亡くされているらしいが、その影響だろうか。本作はいささか精神に問題を抱えて悩む青年を軸に展開する。次作の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も強烈な個性ながらもアンバランスな人物を扱っていた。何やら興味の対象というか意識の向きどころが、俯瞰目線から個(もしくは自分の内面)に変わったのかもしれない。
主人公バリーのイライラは観ている側に伝染してくる。7人の姉をはじめカチンとくる登場人物たちの行動に、こっちもイライラしてくるのだが、それは監督の演出の妙技のおかげで、すっかり共感してしまっているということに違いない。
『ブギーナイツ』や『マグノリア』もこのように異常な状況が展開され、それらは時間が進むにつれて増幅していったが、本作でも同様に膨らんで膨らんで最後にパチンとはじけてくれるのかと予測していたのだが、趣が違った。
不思議なことに、時間が経つにつれ、異常な人物たちや理不尽な状況が、ちょっと考えてみたら現実社会もこんなもんだよな…って思いはじめて、むしろリアル社会の投影に思えてくるという、不思議な感覚に。往々にして、むちゃくちゃな状況の中で、ある一つのことだけは死守しようと、そんな生き方をしてる場合って多いよなぁ…、みたいな変な共感が。
“パンチドランク・ラブ”っていうのは、強烈な一目ぼれ状態を指していると思うが、バリー→リナのことなのかリナ→バリーなのか、はたまた両方のことなのか良く判らず。プリンのマイレージのくだりだって、別にストーリーの主要素じゃない。そんなふわっふわしたものの寄せ集めなんだけど、そのふわふわが渦を形成するような稀有な映画である。
フィリップ・シーモア・ホフマンはもちろん主演のアダム・サンドラーも、他作品とは様子の違う感じ。ぼーっとみ別人と思う人がいてもおかしくないくらい。役者の中の別面を引き出すのがうまいのもPTAの妙技。
でも、通ぶるわけじゃないけれど、おそらく6割くらいの人は、いまいちだと思うだろうね。万人ウケは絶対にしない作品。これがカンヌ作品?って。繰り返し見ようとは思わないけど、脳の片隅に焼きつく作品ではある。もやっと頭に霧がかかったような時に鑑賞してみてはいかがか。ますます霧は濃くなるけど、何か別のものに見えてくる。そんな感じ。妙作としてお薦め。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:110分
監 督:ティムール・ベクマンベトフ
出 演:アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン、テレンス・スタンプ、トーマス・クレッチマン、コモン、クリステン・ヘイガー、マーク・ウォーレン、デヴィッド・オハラ、コンスタンチン・ハベンスキー、クリス・プラット、ローナ・スコット 他
ノミネート:【2008年/第81回アカデミー賞】音響賞[編集](Wylie Stateman)、音響賞[調整](Frank A. Montano、Petr Forejt、Chris Jenkins)
【2008年/第14回放送映画批評家協会賞】アクション映画賞
コピー:“1を倒して、1000を救う”
凡庸なサラリーマン生活をおくるウェスリー。そんな彼の前に、ウェスリーの亡き父が凄腕の暗殺者だったと語る謎の女フォックスが現われ、事情がよく判らないまま銃撃戦に巻き込まれる。応戦するフォックスに引き連れられ、古来からから神に代わり“運命の意志”を実践する“フラタニティ”という秘密暗殺組織の元へ。ウェスリーの父もその組織の一員で、ウェスリーもその資質を引き継いでいると知らされる。彼は父の復讐を誓い、暗殺者としての潜在能力を覚醒させるため、フォックスの下で特訓を受けることになったがが…というストーリー。
一番の中心的な設定である“フラタニティ”だが、荒唐無稽だわ存在意義もいまいち良く判らないわ、普通ならアホくさ…と興醒めするところなのだが、CGとアクションの融合具合がうまいので、とにかくノリだけでグイグイと押し切られる。そのアクションも、物理的には有り得ないレベルばかりで、弾道カーブなんて『リベリオン』くらいのいい意味での珍作かも……なんて思うのは、中盤まで。
終盤にさしかかり、ストーリーを集約し始はじめると、まるで強制的に夢から醒まされたようで、出来事すべてがクダラないものに見えてくる。結局、“フラタニティ”ってなんなんだか。なんとなくその場の感情で左右される程度の掟とか、大概の人は予測がつくような父親の秘密とか、とってつけたような『マイノリティ・リポート』みたいなノリとか、合わない入れ歯を無理やり嵌めたような具合の悪さ。もう、最後までなんとか突っ走ることはできなかったのだろうか。私は急に眠たくなってしまったよ。
さらに、誰もが間違いなく同じことを思ったに違いないが、その興醒め具合に油を注いでいるのが、DAIGOの吹替え。平板な抑揚に所々ヘンテコなイントネーション、叫び声に至っては聞いていて恥ずかしくなる。DAIGOの吹替えにどれだけ集客力があると判断したのか知らないが、このめまぐるしいアクションシーンは、字幕を追わずに観たほうがいいと思うので、せめてDVDリリースする時には、別の声優のトラックを入れてほしかった。配給会社の失策である。
時間が経つごとに徐々に減点されて、最後は赤点ギリギリで終了する作品。特にお薦めはしない。4割の人が別に観なくてもよかったな…と思うこと必至。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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