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公開国:アメリカ
時 間:106分
監 督:サム・ライミ
出 演:ジェームズ・フランコ、ミラ・クニス、レイチェル・ワイズ、ミシェル・ウィリアムズ、ビル・コッブス、トニー・コックス、ザック・ブラフ、ジョーイ・キング 他
コピー:魔法の国に迷いこんだ奇術師と、3人の魔女たち その出会いは、美しすぎる戦いのはじまり――
サーカス一座のインチキ奇術師オズは、いつか自分は偉大な人間なると分不相応な野心を抱いていた。ある日、自らが招いた女性トラブルで逃げ回っている際に気球に乗り込むと、そのまま竜巻に巻き込まれてしまう。たどり着いた場所は、この世のものとは思えないほど美しい魔法の国。国の名前は偶然にも“オズ”。オズの国は、邪悪な魔女に支配されており、苦しめられている国民たちは、偉大な魔法使いオズが現れ国を救うという予言を心の拠り所にして生きていた。そこに、突然予言と同名の男が現れたため、オズは“偉大な魔法使い”と誤解されてしまうのだった。オズは西の魔女セオドラの案内で、姉である東の魔女エヴァノラが住むエメラルド・シティの宮殿へ導かれる。二人の美貌と、予言が実現したあかつきに手に入る財宝に目がくらんだオズは、翼の生えた猿フィンリーを案内役に、南の邪悪な魔女を倒すために旅立つのだった…というストーリー。
公開中は“スパイダーマンの監督が送る!”と、散々宣伝していたが、その謳い文句に効果はあったのか? “サム・ライミが送る”ではいかんのか?(笑)。それより、サム・ライミらしさが、微塵も感じられなかったわけだが、その点は、もうアッチの世界の人間になってしまったと諦めるべきことなんだろう(何がコッチで、何がアッチなんだかわからんけど)。
冒頭の白黒4:3映像から、ワイドのカラーになっていく演出。おそらく劇場では3Dになるんで、さぞや愉しかっただろう。しかし、レンタルDVDで観る限り、別になんとも思わない。鮮やかなオズの世界の物体が、DVDでは平板で、植物なんかも堅い構造物に感じられてしまうなど、むしろちょっと興を削がれる感じになっているのは残念。
『オズの魔法使』のオチを知ったとき、たしかに、オズがこの国に来て、どうやって国民を騙くらかしたのか?という点に興味が沸いた。だから、ミュージカルの『WICKED』には興味津々だったのだが、劇団四季が上演しているところに出張が決まってチケットを取ろうとすると、丁度訪れる日には終わっていたり、チケットが取れなかったりと、縁が無かった模様(『WICKED』は本作のような前日譚ではないけどね)。
大筋にプロットは、期待に沿ったもので満足できたのだが、細かいディテールが、どうにもダメ。
まず、オズの性格設定がこれでよかったのか甚だ疑問。女ったらしで打算的というクズ設定ではあるのだが、一般人レベルのクズっぷりでしかない。もっとダメ人間にすべきだった気がする。緑の魔女になってしまった妹が、たしかにそんなことされたら怒り狂って魔女にもなるがな…っていうくらいのクズのほうがマシだったと思う。ちょっと中途半端に“いい人”“正義感のある人”というのがおもしろくない。
はじめは、ロバート・ダウニー・Jrにオファーがあったとのこと。正直、そっちのほうが、キャラにあっていたと思う。ジェームズ・フランコはインチキ臭さを演じ切れていない。
私は、レイチェル・ワイズがいまいち好きじゃないので、直球の悪役がしっくりきすぎ。彼女にとって新境地ってことなんだろうけど、こういう役がお似合い(その点は満足)。
最終的に、『オズの魔法使』の状態に結びつけなければいけないので、展開が限定されるのは致し方ない。しかし、科学=魔女とは違うけど魔法!という認識を国民に納得させることは十分できるだろうから、閉じこもらなければいけない理由は無い思うんだよね。それだけの魔力があれば、再び人の体を得ることに成功した!っていっても、皆、納得してくれるだろう。何か、説得力に欠ける。このしっくりこない感じが、さほど評価されていない理由だと思う。
また、本作のオズの世界が、あのブリキや案山子やライオンがいる世界と同一と思えないのが残念(だって、普通のライオンが出てたやんけ)。
色々、調べたら、『オズ』(1985)という作品があることを発見。
時系列的には、本作⇒『オズの魔法使』(1939)⇒『オズ』(1985)という流れの模様。未見なので借りてみたい。ちなみに『オズ』(1985)はディズニー作品の模様。借りてみようっと。
公開国:アメリカ
時 間:88分
監 督:トミー・ウィルコラ
出 演:ジェレミー・レナー、ジェマ・アータートン、ファムケ・ヤンセン、ピヒラ・ヴィータラ、ピーター・ストーメア、デレク・ミアーズ、イングリッド・ボルゾ・ベルダル、ヨアンナ・クーリグ、トーマス・マン、ビョルン・スンクェスト、ライナー・ボック、ゾーイ・ベル、モニーク・ガンダートン 他
両親に捨てられ、森の奥深くの“お菓子の家”に迷い込んだヘンゼルとグレーテルは、そこに住む魔女に捕えられたが、すきを見て魔女をかまどに突き落とし、何とか生き延びる。それから15年。二人は有名な魔女ハンターとして賞金稼ぎの日々を送っていた。しかし、グレーテルは今でも悪夢にうなされ、ヘンゼルはかつてのお菓子漬けの生活で糖尿病になっており、苦しんでいた。そんなある日、アウグスブルグの町で数多くの子供たちが消える事件が発生。町の保安官は魔女とおぼしき人を火あぶりの刑にしていたが、一向に事態が収束する気配はない。そこで市長は、ヘンゼルとグレーテルを雇い、子供たちの捜索を依頼するのだったが…というストーリー。
本作は、日本での公開が予定されていたのに、中止になった作品。理由はなんなんだろ。観た限りでは思いつかない。残酷表現?別に、頭っから、子供向け作品って感じじゃないし、それが理由ってのは考えにくいね。『アベンジャーズ 』ではホークアイ、『ボーン・レガシー』では主役アーロン・クロスと、好調のジェレミー・レナー。悪役は贅沢にもファムケ・ヤンセンだよ。
いや、確かにホークアイは生身で地味だったし、簡単に乗っ取られてたよ。『ボーン・レガシー』は、ボーンシリーズとしてカウントしたくないようなデキだった。ん~、結局、彼じゃ、客は入らないっていう判断だったのかな。それよりも、むしろ子供の時に糖尿病に…っていう設定のほうが、ヤバいと考えたかもしれないね。
じゃあ、本作はつまらなかったか?いやいや、面白かった。あの童話の後日譚として、その後、魔女ハンターになってたなんて、なかなかハジケた設定。銃器やら蓄音機やら、時代設定なんか無視無視。いいんだよ、相手は魔女なんだし。もちろんジェレミー・レナーだもの、アクションもキレキレ。
魔女ハンターだけど、敵は魔女だけじゃなく、“魔女狩り”やってるクソ保安官たちも。正義の味方なのに、全方位的に敵だらけの状況。また、正義の味方だけど、望んでハンターをやってるわけでもない…っていうのも、良いキャラクターの味付けになっているし、さらに、ストーリーの謎解きの一つにも絡んでくる。アクション満載のバカっぽい作品のように見せて、なかなか考えているシナリオなんだよ、これが。
(以下、ネタバレ)
で、二人のお母さんは、彼らを捨てたんじゃなくて、実は魔女で…、という創作設定も面白い(お父さんは?という興味も沸いたが、そこは特になにもなし)。ヘンゼルとグレーテルのそれぞれに、恋人というか取り巻きというか異性とのエピソードもあり。魔女を守る怪物の設定もあり。
彼らのチーム構成はなかなかよい。RPG的な感じ。ヘンゼルのお相手の白魔女さんが、なかなかいいキャラで死なせてしまうのはもったいないような気がした。ドラクエでも攻撃系の魔法使いと、防御系の僧侶がいるでしょ。魔女が二人いても問題ないじゃん。
続編ができてもおかしくない作品だと思う。そのときは白魔女さんは復活させてほしいね。
これを公開しないとか、日本おかしいわ。続編が出来ても公開しないつもりかねぇ?
公開国:フランス、ドイツ、ベルギー
時 間:92分
監 督:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
出 演:マチュー・アマルリック、エドゥアール・ベール、マリア・デ・メディロス、ゴルシフテ・ファラハニ、キアラ・マストロヤンニ、イザベラ・ロッセリーニ、エリック・カラヴァカ、ジャメル・ドゥブーズ 他
コピー:叶わなかった愛が、いちばん美しい。
天才的なバイオリニストのナセル・アリは、命よりも大事な愛用のバイオリンを妻に壊されてしまう。それは音楽の師から譲り受けたストラディバリウスで、いくら替わりのバイオリンを探しても同じ音色を奏でるものは見つからなかった。もう自分の演奏ができないと悟ったナセルは自殺を決意し、自室に引きこもる。そして死ぬ瞬間までの8日間、かつて思い通りにならなかった人生を思い出す。妻ファランギーとの打算的な結婚。母親の死。そして、音楽の修行時代、おまえの奏でる音は空っぽだと師にいわれた時に、イラーヌという美しい女性と出会い恋に落ちたことが、今でも彼の心を締め付けており…というストーリー。
バイオリニストが、一世一代の決意をしてとある行動を…とか何とかいう感じの紹介を見て借りたわけだが、前向きさのかけらも無い“自殺”という展開。『ペルセポリス』の女流監督の作品だった。そりゃ、こうなるか。いや、本人はシュールというかちょい笑いも差し込んだ作品にしているつもりなのかもしれない。いや、おそらく、本気でコメディをつくっているつもりのではなかろうか。だけど、キャラクターがいくら希望を持ったとしても、その根底にはどん底の諦めが漂っている。お国柄というかこれまでの経験からなんだろうけど、とにかく暗い。
暗いけれど、その反面、映像センスはすばらしく、特にイランの町並みの美しさや、独特の文様には目を奪われる。途中で差し込まれる、子供向け童話アニメのようなのが、賛否分かれるところかもしれない。全体の作風や、元々監督の漫画とも乖離しているので、わざとらしさや、狙いすぎている印象を与えているかもしれない。
ただ、それはそれとして、このアニメのデキがすごく好き。まったく予備知識なしで、このクリエイターに日本昔話をつくらせたら、ものすごく面白くなるんじゃないかと思った。
ストーリーに話を戻す。まあ、替わりのバイオリンを捜している間というのは、愛していない妻との生活でもなんとかやっていこうという一縷の可能性があったんだろう。しかし、もう、永遠に見つかることはないと悟った時、彼は死を覚悟し、そして本当に自分が手に入れたかった愛のことを思い出し死んでいこうとするわけだ。
演出上、よくわらないのは、娘や息子の将来の姿が、ナセルの妄想の中の出来事なのか、事実なのか。この作品にイマイチのめりこめないのは、一人称なのか、主人公以外の別のだれかの語りなのか、純粋な俯瞰目線なのか、定まっていないところかもしれない。
あんなに夫を罵倒していた妻なのに、実は…という、謎解きのような展開や、なんでナセルはこんなに、夢のない人間なのか…ということが、ゆっくりと、そして淡々と語られていく。まあ、簡単に言えば愛のすれ違いを描いているわけだが、喪失感からくる絶望とあきらめを通り越して、“虚無”がそこにある。その愛の無さが自分の子供にも向けられているのを見ると、(観ている間は感じなかったが思い出すと)吐き気をもよおしてくるほど。
もう、幼少からの心の傷を、かさぶたが覆い、また覆いの繰り返しで、何が傷なんだかわからなくなった人間による作品に思える。サルトルの書籍を読んだときに感じた不快な感覚に近いかも。
公開国:アメリカ
時 間:106分
監 督:ターセム・シン・ダンドワール
出 演:ジュリア・ロバーツ、リリー・コリンズ、アーミー・ハマー、ネイサン・レイン、メア・ウィニンガム、マイケル・ラーナー、ロバート・エムズ、ショーン・ビーン、ジョーダン・プレンティス、マーク・ポヴィネッリ、ジョー・ノッフォ、ダニー・ウッドバーン、セバスチャン・サラセーノ、マーティン・クレバ、ロナルド・リー・クラーク、ボニー・ベントレー 他
ノミネート:【2012年/第85回アカデミー賞】衣装デザイン賞(石岡瑛子)
コピー:おとぎの国でバトルが始まる。
白雪姫は、幼少の頃に父親である国王を亡くしたが、それ以来継母の女王によって幽閉されていた。しかし、女王の浪費癖によって王国の財政はすぐに逼迫。女王は窮地を乗り切るために、裕福な男との再婚を何度も繰り返していた。白雪姫が18歳になってもその状況は続いており、またもや国庫は空に。そこで女王は裕福な隣国の王子を画策する。しかし、王子は女王ではなく白雪姫に一目惚れしてしまい、それを知った女王は彼女の殺害を命ずるのだった。何とか窮地を脱した白雪姫は森に逃げ込むが、そこで7人の小人の盗賊団と出会う。これまで幽閉されていたため国の様子を知らなかった白雪姫は、領民が困窮しているkとおを知り愕然とする。そこで、彼らの仲間に入れてもらった白雪姫は、小人たちから戦い方や生きる知恵を学び、王国の危機を救うため、女王に立ち向かうことを決意する…というストーリー。
ターセムと石岡瑛子のコンビは、『ザ・セル』(2000)、『落下の王国』(2006)、『インモータルズ -神々の戦い-』(2011)に続いて4作目。っていうか、その4作がターセムの全作品で、2000年以降に石岡瑛子が携わった映画もこの4作だけ。
ターセム作品は、その映像美ゆえに評価されているわけだが、その半分近くは石岡瑛子の力と言っても良い(観ればわかる)。もう合作…といっていいんじゃないのかね。
まあ、衣装デザインは見事ですわ。頭に白鳥が乗っかったドレスとか、目を惹く。森で小人たちと格闘するときに、スカートが汚れるんだけど、その汚れすら美しいグラデーションに見えるという(おそらく計算)。
ストーリー的には、ありきたりな、現代訳白雪姫なんだろうな…と、まったく期待していなかった。この手のコメディで字幕を追いながら観るのもいやだったんで、吹き替えで観たんだけど、吹き替えがちょっとオーバーというか、いかにも笑わせにかかっているみたいで、いまいちノりきれなかった。
冒頭を女王の一人称で始める意味がわからない。まあ、ジュリア・ロバーツの悪役演技が大事なのはよく判るし、状況説明なのもわかるのだが、彼女の語りではじめてしまうと、ずっと女王目線で展開するのかな…なんて思っちゃうでしょ。あれは、鏡の女王の語りでいいと思うんだけど。
ターセムの作品の一番の難点は、シナリオがグダグダというか、ところどころで足がもつれたみたいになるところ。明らかにここが変っていう指摘は難しいんだけど、場面場面のつなぎがなんかモタつく。いや、ストーリーに大波みたいな盛り上がりの連続性がないからそう感じるのかも。
キャラクターに深みが無いっていうのも、原因の一つかな。小人は愉快なキャラだよ。でも、深みはない。元々職業を持っていたのに、村人から迫害されてしまっという重い設定がある。そういう状況だった…という説明はあるが、それだけ。元教師の小人もいるんだから、村で教え子に遭遇して…とか、複雑な感情を表現する展開は、色々考えられるよね。
王子が白雪姫に一目惚れするのはわかる。でも、白雪姫が王子を好きになるのはなんでだろう。魔法とはいえ王子は女王側についていたわけで、それを超えてまで王子を愛するようなエピソードがあったろうか。ああ、そういう言動に、まじめで慈悲深い白雪姫は惚れたんだな…という場面がない。
…なんてマジメに考えていたら、閉じ込められた家から出るための寸劇で、どうでも良くなってきた。もう、アメリカ人(ターセムはインド系だけど)、笑いのレベル、低すぎ。これでも脚本家が3人ついていて、リライトを重ねてると思うんだけどねぇ。
でも、ありきたりの白雪姫ではなかった点は評価する。毒りんご⇒王子のキスという流れを捨てたことや、王が実は…なことなど、いいアイデアは随所に見られる。でも、鏡の女王の目的がモヤモヤしているのは、残念(やっぱり文句で終わってしまうか…)。
それでも、シャーリーズ・セロンの『スノーホワイト』よりは、5倍はマトモ(あっちは、観ていられなから)。
で、残念ながら石岡瑛子は亡くなってしまった。次の石岡瑛子なしのターセム作品はどうなるか。ちょっと意地が悪いが、お手並み拝見ですな。
公開国:日本
時 間:145分
監 督:犬童一心、樋口真嗣
出 演:野村萬斎、榮倉奈々、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、平岳大、前田吟、中尾明慶、尾野真千子、芦田愛菜、ピエール瀧、和田聰宏、谷川昭一朗、ちすん、米原幸佑、中村靖日、黒田大輔、古村隼人、チョロ松、水野駿太朗、笠原紳司、村本明久、西村雅彦、中原丈雄、鈴木保奈美、平泉成、夏八木勲、市村正親、佐藤浩市 他
受 賞:【2012年/第36回日本アカデミー賞】美術賞(近藤成之、磯田典宏)
コピー:この男の奇策、とんでもないッ!
戦国時代末期。天下統一を目前した豊臣秀吉は、最後の敵、北条家に総攻撃をかける。小田原城を包囲するとともに、支城を次々を陥落していく秀吉軍。秀吉は、周囲を湖で囲まれ“浮き城”の異名を持つ“忍城”を、2万の軍勢で落とすよう石田三成に命じる。忍城の城主・成田氏長は小田原城の援軍に向わねばならなかったが、本心では秀吉勢と対峙するつもりはなく、秀吉と密かに内通し安全を確保するので、秀吉軍が攻めてきたら開城するように、叔父の成田泰季に言い含めていた。しかし、成田泰季は直後に病に臥してしまう。代わって城を任されたのは泰季の息子・長親。いつも農民や子供たちと楽しそうに戯れているばかりで、“でくのぼう”を意味する“のぼう様”の愛称でよばれるほどで、武士たちからは嘲笑される存在。いよいよ忍城は包囲され、使者として長束正家が登城し、戦か開城かを迫ったきた。しかし、長束正家の秀吉の威を借りた不遜な態度に、気分を害した長親は、とっさに戦うと宣言。はじめは驚く家臣たちだったが、領民たちを護るという長親の強い意思に導かれ…というストーリー。
コピーにあるような、主人公・長親の奇策とやらが、それほどに感じられなかった。いや、歴史上の事実であることを考えれば、なかなかすごい行動であることは間違いないのだが、コピーが無駄にハードルを上げてしまったんだろう。配給会社が客との距離感をつかめていないってことなんでしょうな。
この無用なハードル上げがなければ、部下ばっかり活躍して、長親、城でドキドキしてるだけじゃん!出て行ったと思ったら踊っただけじゃん!っていうツッコミをすることもなかっただろう。
とはいえ、素直におもしろかったのは事実。私が感じた難点は次の3つだけ。
一つ目。秀吉が高松城を水攻めするシーン。大量の水についてはCGを使うのは問題はない。ヒキの絵の時はしかたがないと思うが、普通に本物の水をバシャっとやったほうが臨場感が出たであろうカットがある。「ああ、CGだな…」という違和感で気持ちが削がれた。石田三成が自分もやってみたいとゾクゾクするほどのシーンなんだから、きちんとつくるべきだったと思う。「あ、そこ、CG使うから、水しぶきが上がってるていで…」なんていう監督の指示が聞こえてきそう。そんな労力を惜しんで、客の心を離してしまっては、意味がない。こういう情熱を失った手抜きは嫌い。
二つ目。冒頭から43分ほど、宣戦布告するシーンまでが長い。なんとか25~30分にまとめられなかったものか。いや、後々を考えれば、大事なことばかりなのはわかる。長親はでくのぼうだが愛されているという描写。赤ん坊をあやすシーン。血気盛んな部下たち。甲斐姫のキャラ設定。秀吉や三成の性格設定。農家の若い夫婦のエピソード。全部、後半に繋がりはある。
原作を読んだら(私は読んでないけど)、きっと全部が大事な要素で、削れなくなったんだろう。わからんではない。でも、2時間程度の作品として魅せるためには、テンポは大事だよ。
原作と異なっても、いくつか削るべきだったと思う。私だったら、靭負が甲斐姫に恋しているという設定は切る。台詞まわしとかポジションを考えると、狂言回し的な使い方をしたかったのかもしれないが、できていない。冒頭と最後以外に甲斐姫に恋しているという描写はなく、それ以外で生きていない設定。無駄。
中尾明慶演じる農民が過去に妻を侍に手篭めにされた恨みをもっている…という設定も切る。元々侍が嫌いから長親も嫌いという単純な考え方だったのに、長うが撃たれたのを見るとゲリラ活動を始める。口では田畑を荒らしたからといっているが、水攻めしたら田畑が荒れるのはわかっているし、水攻めで妻子が死んだ可能性もあるのに動揺もしていない不自然さ。アンビバレントなキャラ設定ですっきりしない。
堤をつくらされてはいるが、水攻めに使うなんてことが、馬鹿すぎて気付かなかったという設定にして、いざ水攻めは始まって愕然。三成軍が、長親の踊りに注目している間に工作開始…という流れでよかろう。よって、戦にはならないと聞いていたのに戦にしてしまい、約束が破られたことに対して村を出た人間が少なからずいて、そいつらが堤を壊す…で問題なし。
長親が親には唯一頭が上がらないという設定はわかるが、開戦に至るまでのすったもんだは、いらなかった。倒れた後にすぐに死んで、長親に任せざるを得ないという設定に変更してよかったのではなかろうか。
三つ目。甲斐姫のオチ。歴史的に秀吉のお側に置かれるのは事実なので変えようが無い。いくらそういう時代だから仕方が無いとはいえ、ツンデレキャラにしておいて、あれは救いがないだろう。あの終わり方だと、長親はけっこうな人非人だよ。
こういうオチにしたいなら…戦国の世の常としてそうなる覚悟はできている、だからこの戦ではおもいっきりお転婆を発揮して、とことんまでやりつくす。やるだけやるけど、結果的に長親と甲斐姫の二人が領民のために身を切ることになる。実際に結ばれることのなかった二人だが、身を切った二人というシンパシーにより、夫婦以上の結びつきを胸に、その後も二人は生きていく。こうじゃいかんのか。
ここまで言うとお気づきかも知れないが、無駄に名前のあるキャストが使われている。正直邪魔。尾野真千子、芦田愛菜、市村正親は不要だったな。
長々と書いちゃったけど、難点はこのあたりだけで、概ねおもしろく観ることができた。歴史的に、本作にあったように水攻めに固執したのが三成だったか否かは怪しいところ。そこを無理やりくさいけど、たのしい味付けに仕上がっているのは見事。おそらく、良質の原作なんだろうね。
#ロケ地は苫小牧とのこと。たしかにそういわれれば北海道らしい雰囲気である。
公開国:アメリカ、アラブ首長国連邦、ポーランド
時 間:134分
監 督:ピーター・ウィアー
出 演:ジム・スタージェス、エド・ハリス、シアーシャ・ローナン、コリン・ファレル、マーク・ストロング、グスタフ・スカルスガルド、アレクサンドル・ポトチェアン、ゼバスティアン・ウルツェンドウスキ、ドラゴス・ブクル 他
コピー:生きるために 歩く。
シベリアからインドまで6500kmを踏破した男達の真実の物語
1940年、スターリン体制下のソ連。ポーランド人兵士のヤヌシュ・ヴィスチェックは、スターリン批判をしたことと、スパイ容疑で逮捕される。無実だったが、ヤヌシュの妻が拷問された末に行った供述を元に、懲役20年を言い渡され、シベリアの収容所に送られた。寒さと飢えと重労働によって、死亡するものが続出。ヤヌシュは、収容所で親しくなったロシア人俳優のカバロフから、脱出する方法があると聞き、希望を持った。しかし、脱走したとしても、500kmも離れたバイカル湖に沿ってさらに南下し、モンゴルに脱出する必要がある。しかし、このまま収容所にいても生き残るのは難しいと考えたヤヌシュと他の6人は、脱出を決行。すぐにロシア兵に発見されるが、猛吹雪に助けられ、追っ手を巻くことに成功する。しかし、満足な食料も装備も持たない彼らは、早々に困窮し…というストーリー。
歩いて帰るっていう内容なので、タイトルは間違っていない。でも地味なので副題をつけたくなる気持ちもわかる。でも、“-脱出6500km-”はいくらなんでもダサいかな。
正直、コリン・ファレルを見て、ダメ映画かな?なんて、ちょっといやな予感がした。でも、案外マッチしてる良い役だったし、ほどよい途中退場具合。キャスティングのセンスを感じた。うん、邦題以外は、悪くない。アドベンチャー物としてはなかなか楽しめた。
あまりに過酷な状況で、普通なら絶対に挫けてしまうのだが、ロシア兵というか共産主義の波がどんどん迫ってくる恐怖が、彼らの背中を押す。しかし、ギャングまがいのヴァルカや、菓子職人に絵描きや地下鉄技師など、こんな特殊な状況でなければ、一緒に行動することはなかったであろう面々。誰かが裏切るのでは?という疑心暗鬼も相まって、緊迫感はさらに増す。そして、案の定力尽きる者が徐々に出てくる。
途中で合流するイリーナ役のシアーシャ・ローナンは、『ラブリーボーン』(2009)とか『ハンナ』(2011)の人。なんか、女が一人というシチュエーションにキナ臭いものを感じたが、そういう展開はなし(まあ、あったらかなりヒくが…)。でも、彼女の薄幸そうな容姿から、予想がつくと思うが、そういう展開になる。でも、衰弱する様子はなかなか説得力があった。
説得力という意味では、アメリカ人地下鉄技師ミスター・スミス役のエド・ハリスもなかなか。元々、頬もコケてるし、死にそうな感じはなかなかリアルだった。
軽くお薦めしたいところなのだが、ちょっと補足しておく。本作はまるで実話のような感じがする。実際、原作がある模様。でも、その原作の内容自体が、事実か否かかなり怪しいものだとWikipediaには書いてありますな(笑)。そう考えると、確かに、ちょっとあり得ない内容のオンパレードだ。
北海道のブリザードを歩いたことがある人間なら、ビバークでもしなけりゃすぐに凍死するし、歩けるような雪の深さではないことくらいわかるだろう(せめてカンジキくらいは自作しないとさ)。それに、真冬に食い物は本当にない。数週間歩き続けるのは無理だろう。
一番、私が疑問に思ったのは、砂漠を歩くところ。砂漠=暑いという発想なのか、まるでサハラ砂漠を歩いているような描写なんだけど、モンゴルの砂漠なんてそれほど暑くないと思うんだよね。また、ちょっと考えればわかると思うのだが、昼は砂をほって影とつくって睡眠し、夜に移動が上策だろう。なんで彼らは昼にあるこうとするのだろう…。
ミスター・スミスはチベットから中国に入り、アメリカ軍に合流すると言っている。中国と日本は戦争中。敵の敵は味方…という理屈はわかるが、別にアメリカ軍と中国軍がうまくやっていたわけでもなかろう。無理だと思うんだよね…。
いや、みんな、考えるな、感じろ。私が上に書いたことは忘れるんだ。そうすれば、楽しく観れる。あ、言い忘れたけど、ものすごく音楽が良い。
公開国:アメリカ
時 間:90分
監 督:アンソニー・C・フェランテ
出 演:ディー・ウォレス、ステファニー・グレコ、ブレント・リディク、ジャスパー・コール 他
女主人・リリスが経営するミートパイが絶品のパン屋でアルバイトをするグレーテル。双子の兄のヘンゼルはゲームおたくで、部屋に篭ってゲーム三昧。二人は母親を幼い時に失っており、父親と3人で暮らしている。そんなある日、父が若い恋人と再婚すると打ち明けられると、ヘンゼルは憤慨し家を飛び出し、森に入ってしまう。兄を追いかけるグレーテル。ヘンゼルは何故か森に仕掛けてあった罠にはまってしまい、足を大怪我してしまう。追いついたグレーテルと重傷のヘンデルは森を彷徨っていると、一軒の家が。ノックすると出てきたのはリリス。こんな森の中に住んでいるとは露知らずおどろくグレーテル。取り急ぎヘンゼルの治療をしてもらうと、リリスはグレーテルに、今夜は泊まって行くことを薦める。そして、突然リリスは、パン屋の権利をグレーテルに譲りたいを言いはじめ…というストーリー。
お気付きだとは思うが『ヘンゼル&グレーテル』(2013)と間違えたわけですわ。そりゃ間違えるでしょ。同じタイトルなんだから。
もう、こういうのいい加減にしてほしい。リンカーン、ヘンゼルとグレーテル、ジャックと豆の木、こいつら多すぎ。
まあ、元々人喰い魔女のお話なので、お約束の展開になるのは大方の予想通り。要するにリリスが人喰いなわけだが、密かに育てている息子二人も人喰いなわけだ。ほぼ地下室などにいるようで、髪もボサボサ、風呂に入っていないような風貌。こいつらが、捕まえてきた人を捌いているわけだ。
まあ、なかなかエグい描写もあって、ホラー物としてはアリなのかもしれない。でも、冒頭で出てくる焼却炉はどうみてもオーブンに見えないのだが、野菜でデコってたところを見るとやっぱりオーブンなんだろうね。
たかだか3人の食人鬼なので、1日に食べる量なんか知れているんで、冷蔵庫とか必要だと思うんだけど、そういう描写は一切ないんだ。ということは余りは捨てているのか、ミートパイになっているのか…。でも、さすがに毎日一人ペースで人を殺しているわけではなさそう。
あまりに芸がないと思い始めたのか、突然、幻覚剤が噴霧される演出。そんな幻覚剤を噴霧できるような、高度なことができるなら、もっとバレないように色々できると思うのよ。その技術力を冷凍技術に向ければ、いかにおいしく死体を保存できるか…という冷蔵庫があったら、“飼っておく”意味もあまりなくなってしまうので、やっぱり無いような気がする。でも、それじゃ、なんか矛盾を感じる。
誰でも考え付きそうな内容なんで、驚きも感心も無いんだけど、それに加えて、ディテールが甘すぎて、時間の経過と共に興味が失せていく。
ストーリー上の大きな謎ポイントが、リリスがグレーテルを後継者と見込んでいるところ。契約書にポタりと血が落ちると、それがグレーテルという文字に。魔女的な臭いをプンプン感じさせる演出なのに、それ以降“魔法”的な演出は無くなり、タダの殺人鬼に…。なんだ、このいきあたりばったり演出…。
で、結局「私と似ているのよ…」で片付けてしまい、謎解きはない。ヒドい。
一緒につかまっていた人はもちろん、親も保安官も死んでしまった後、なんであのパンやに戻れるのか…。で、無理やりリリスの声に従ってミートパイを喰いはじめるグレーテル。だ・か・ら、そういう演出をしたいんなら“似ている”だけで片付けちゃだめなんだよ。
それに、それが最後のオチでは弱すぎる。まず、グレーテルが後継者であるおもしろい理由。その後は、グレーテルとヘンゼルの兄妹バトルに発展するくらいのむちゃくちゃしないとさ。
中学1年生レベルのシナリオ…。これは、観ちゃダメ警報。
公開国:アメリカ
時 間:91分
監 督:デヴィッド・コープ
出 演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・シャノン、ダニア・ラミレス、ジェイミー・チャン、ローレン・アシュリー・カーター、ショーン・ケネディ、キンバリー・パーフェット、アシュリー・オースティン・モリス、アーシフ・マンドヴィ、チャールズ・ボーランド 他
ロースクール出身のウィリーは、オフィスワーカーになることを嫌い、司法試験を受けずに、マンハッタンでバイク・メッセンジャーをやって数年になる。付き合っている彼女は、メッセンジャーとしての彼のテクニックは認めつつも、その気になれば弁護士になれる道を自ら閉ざしていることに苛立ち、別れを告げる。そんな中、ウィーリーに“プレミアム・ラッシュ”(超特急便)の依頼が入る。依頼者のいる大学で、一人の中国人留学生から、一通の封筒を託される。早速、配送を開始すると、一人の男が、さきほど渡した封筒は誤りだったので返して欲しいと近寄ってくる。規則でそれはできないと突っぱねると、その男は、封筒を奪おうと執拗に車で追跡してくるのだった…というストーリー。
こんなにおもしろいのに、なんで日本未公開なのか。ましてやレンタルもTSUTAYAのみとか。こんな扱いを受ける作品ではない。もう一度言う。これは面白い。ジョセフ・ゴードン=レヴィットのアイドル映画扱いする人もいるが、決してそんなことはない。
もしかすると、主人公ウィリーがピストバイク(ブレーキなし自転車)の礼賛者だから、昨今のピストバイク規制の絡みで、問題になることを避けたとか?事実はわからんが、もし本当にそういう理由で日本で劇場公開されなかったんだとしたら、日本の配給会社、もう終わってるで。
時間勝負のバイク・メッセンジャーのお話ということで、ギュンギュンのスピード感を愉しむ作品なのかと思ったが、その点はそれほどでもなかった。中国人留学生の秘密…が話の軸になっていて、それに関する謎解きが、時間軸を交互して展開する。現在時間については、ほぼ上映時間と同じに流れる。
前半は、なんで追われているのか?という謎解き展開。中盤は“義心”とプライド。終盤は怒り。うまくパート別けされているし、そこに恋愛、ライバル、自己成長のストーリーも絡んでいる。敵役として悪徳警官や中国マフィア、自転車警官なんかもうまく配置されており、盛りだくさん。盛りだくさんすぎて、自転車警官の件は消化しきれず終わってしまったいたり、メッセンジャー仲間の仲間意識が発揮される部分もいまいち効果的に描けず、感動できなったりと、端々ではイマイチポイントがあるものの、それらを差し引いても優秀なシナリオ。
あのチケットを、悪徳警官が奪ってどうするんだ?と一瞬考えてしまったが、金中国人留学生がチケットを入手した時に、「これは現金と同じ」といわれているので、単純に金に換えたかっただけか…。
まあ、一番の悪役が下衆すぎ&小物すぎなところも、難点といえば難点かもしれん。同僚にも悪事がバレて、中国マフィアだけでなく警官仲間からも逆に追われて、もっと無残に死ねばよかった。そう思うほど、近年まれに見る、下衆なキャラクターで、ある意味成功していると思う。
冒頭とエンディングでThe Whoの『Baba O'riley』が使用されている。同じニューヨークが舞台の『CSI NY』との繋がり?でも、その曲だけじゃなく、本編で使われている曲はなかなかいい感じ。洋楽はあんまり詳しくないけど、ちょっとサントラをレンタルしたい感じ。
お薦めです。夏の夜長に丁度良い疾走感。
#中国人留学生役の人は、『DRAGONBALL EVOLUTION』のチチ役とか、『ハングオーバー!!』の2作目とかに出ていた人ですな。『ハリー・ポッター』シリーズのチョウ・チャンの人ではない。
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:ゲイリー・J・タニクリフ
出 演:ギルバート・ゴットフリード、チェヴィー・チェイス、クロエ・グレース・モレッツ、クリストファー・ロイド、ケイティ・セイガル、ウォーレス・ショーン、コリン・フォード、ジェームズ・アール・ジョーンズ 他
学校での成績が芳しくなく落第の危機にあるジャック少年。父親がヒーローになると出ていったきり戻ってこないため、そのことで校長にまで馬鹿にされることうんざりしており、いつか自分はヒーローになると強く誓っていたが、まったくもって空回り。ヒーローとは自己犠牲的な行いをすることであると聞いたジャックは、自分が大事にしている高価なゲーム機を三粒の豆と交換してしまう。帰宅すると仕事に出ているはずの母親がおり、クビになったと告げる。母は、生活が苦しいのであのゲーム機を売って、当面の生活費にしようとジャックにお願いするが、さっき売ってしまったばかり。自分の馬鹿さ加減にあきれたジャックは、豆を外に投げ捨てて、眠ってしまう。夜になると、豆は発芽し雲の上まで伸びる。そして豆の一粒をたべたガチョウのグレイソンは半人の姿に。二人はヒーローになるため、豆の木を登り始める。雲の上に到達すると、嘆いている老人を発見。聞けば娘のデスティニーが巨人にさらわれただけでなく、歌うハープまで奪われてしまったとのこと。ジャックはデスティニー救出のため、意気揚々と巨人の住処へ向かったが…というストーリー。
お気付きだとは思うが『ジャックと天空の巨人』(2013)と間違えたわけですわ。そりゃ間違えるでしょ。同じタイトルなんだから。
あらゆる場面が全部、板の間の上でやってるコントみたいな感じ。世界の奥行きや不自然な感じが溢れるのはそのせい。巨人のメイクの粗さは、わざとなのか本気でやってそれなのか。とにかく、TVムービーのレベルですわ。なんでこんなレベルの作品にクロエたんがでてるのか。
彼女がが出てこないところは、観るのも苦痛なシーンばかり。しかし、なんだか本作のクロエは、デヴィ婦人みたいなかんじで、いまいち可愛くないときている。可愛く撮ろうと思えばどうにでもなると思うのだが、これは監督の能力が低いだけだろう。
もう、根本的に話がつまらない…というか変。あの店屋のおやじがクロエ演じるジリアンの親父だとして、なんで、ジャックにいかせなければいけないのか。自分を助けてくれた勇者の息子だからといいたいのだろうだが、なんでその息子なら助けられると思ったのか。意味不明。別にジャックじゃないと豆を発芽させられないわけでもなかろうし、自分で娘を救いにいけばいいんだ。なんだっつーねん。
地面で繰り広げられている、ポンコツコントが輪をかけてつまらない。童話の主人公学校みたいな設定もクソつまらない。
親父のせいで村中から馬鹿にされている設定がかなり不快だし、最後にキチンと勇者的な仕事はした!と名誉回復こそするが、結局死んでいるわけで、救いが全然ない。
竪琴のじいさんの孫を救うことが目的だったのが、途中で監督が忘れてしまったのか、最後にチロっと出てくる。証拠の竪琴が消えてしまった!というから、じいさんとところにおいてきたのかと思ったが、そこのシーンでは見えないような…。どこいったんじゃ。
もうね、色々ヒドいす。子供もマトモに観ていられないレベル。
公開国:ブルガリア、ドイツ、ハンガリー、スロヴェニア、セルビア
時 間:105分
監 督:ステファン・コマンダレフ
出 演:ミキ・マノイロヴィッチ、カルロ・リューベック、フリスト・ムタフチェフ、アナ・パパドプル、ドルカ・グリルシュ 他
コピー:前を向いて行こう。
これは、故郷に帰る旅。そして、自分を取りもどす旅。
1983年、共産党政権下のブルガリア。アレックス少年の住む田舎町にも、共産党の圧政が忍び寄り、町で一番のバックギャモンの名人である祖父バイ・ダンを共産党員が監視しはじめる。その共産党員は、アレックスの父ヴァスコが勤務する工場の上司。ヴァスコの経歴に詐称した箇所があることを発見した上司は、ヴァスコにバイ・ダンを見張ってその動向を逐一報告することを命じる。しかし、どうしても義父を売るようなマネができないヴァスコは、妻ヤナとアレックスを連れて、ドイツ亡命を決意する。それから25年後。アレックス一家は交通事故に遭い、病院に搬送されたアレックスが病院で目を覚ますと、事故以前の記憶をすべて失っており…というストーリー。
いかにもロードムービーっぽいジャケット画像だし、そう紹介されているようだけど、タンデム自転車で旅をする部分は、それほど長くは無い。というか、アレックスの人生自体がロードムービーって感じ。本作は、サシェが記憶喪失になった後の現在と、サシェの幼少期の話が交互に語られるという構成。
はじめの23分くらいまでは、記憶喪失になった青年の記憶と取り戻そうとする、ありがちなお話にしか観えなくて、つまらなく感じるだろう。でも、絶対に観るのをやめずにその壁を越えてほしい。共産党員による陰湿な所業によって、サシェの父親が追い詰められていくあたりから、急に面白くなりはじめる(一瞬、あの事故も共産党によるもの?とか頭をよぎるのだが、それは考えすぎ)。
私が不勉強なせいかもしれないが、なんで祖父は、共産党から目を付けられていたのかが、不明。本当にバックギャモンの台を作って売ったというだけの理由なのか?当時のブルガリアではそういう締め付け政策があったのだろうか。あまり語り過ぎずに、いいさじ加減の演出であることは間違いないのだが、祖父が長い間投獄されたであろうことは想像できるが、そこの詳細も描かない。あまりにブルガリアのことを知らなすぎて、ピンとこない箇所が散見されたため、もうちょっと説明してほしいな…という部分があったかも。
#私、バックギャモンのルールはまったく知りません。知っていたらもっとたのしめたのかも。
でも、東西冷戦の真っ只中ではあるが、共産主義自体が疲弊してきている時期なのは間違いない。共産主義的な組織は、外部にうまく攻撃できなくなると、その牙を内に向けるのは必定だからね。何故か、基本的に何かを噛み殺したい衝動に駆られているのが、共産思想。共産思想がそういう人間をつくるのか、そういう人間が共産思想を利用するのか。まあ、後者である。日本で共産革命を標榜していた人間の大半がそう。そして今でも。
やりすぎな陳腐な監督なら、収容施設から脱出するときの闇業者にも騙されちゃう展開にしちゃうと思うけれど、そうはしなかった。また、ブルガリアの共産党員や、イタリアに難民収容施設の職員など、胸クソ悪くなる人物が多々出てくるが、勧善懲悪で彼らが懲らしめられる場面は、作中にはない。そういう狭い了見を超越したお話であることが、人間として達観しすぎている祖父が体現している。
#アレックスの役者もバイ・ダンの役者も本当にいい顔している。
アレックスが取り戻すのは記憶だけじゃない。共産国家の呪縛から体は逃れられたけど、心は何かに縛られたままだった。
深く考えすぎても、楽観しすぎてもいけない。どんな状況にあっても、心だけは自由であれ。いい映画だった。お勧め。
#どういうツテで、両親の連絡先がわかったのか…も、後から考えると気になる部分ではあるが…。
公開国:アメリカ
時 間:99分
監 督:マイケル・ギャラガー
出 演:ケイトリン・ジェラード、メラニー・パパリア、シェーン・ドーソン、アンドリュー・ジェームズ・アレン、ライザ・ウェイル、トビー・ターナー、ロジャー・バート、キース・デヴィッド 他
母親が自殺し、心を病んで大学を休学していたアシュリー。復学を機に環境を変えようと、実家から離れて同級生プロキシの住んでいる家に同居することに。プロキシの誘いでネット仲間のパーティに誘われたアシュリーは、そこで、とある都市伝説のことを知る。それは、インターネットのチャット上で、“I did it for lulz”とメッセージを3回タイプすると、相手の家に人間の皮膚を笑った表情のように縫い合わせた仮面の殺人鬼“スマイリー”が現れ、相手を殺してしまうというもの。そこで、パーティに参加していたネット仲間が遊び半分でタイプすると、本当にスマイリーが現れてしまう。アシュリーとポロシーは驚愕するが、ネット仲間は悪戯だと一笑に付す。帰宅後、本当に悪戯なのか疑問に思った二人は、確かめようと自分のパソコンからメッセージを打つが…というストーリー。
この、スマイルマークに縫い合わせた皮膚のマスクは、『テキサス・チェーンソー・マサカー』以上のインパクトがあるかもしれない。本当にジャケットの画像は気持ち悪い。こりゃあ、ホラー界の新ヒーローが誕生か!と期待。
しかし、アシュリーがパソコンで見る“スマイリー”は、縫い合わせた笑い顔のマスクではあるが布製である。アシュリーの妄想の中に登場するのは肉マスクだが、実際に出てくるのは違う。うーん、どう考えても、モンスターではなく、人間がマスクを被っている。
んー。犯人は人間だよねぇ…。
で、誰が犯人なのかしら…という展開になるのだが、そこから始まるのは謎解きではなく、アシュリーがまた病んでくる。アシュリーは何故か判らないけど、スマイリーが超常的な存在だと恐れ始める(まあ、画像が消えたりしていたので、そう思うのもわからなくはないんだけど…)。
そこからしばらく、カウンセリングを受けたり、大学教授が犯人か?みたいなおもしろくないミスリードがったりして、非常に退屈。ホラーなのに眠くなる。10分くらいカットしてもなんの問題もない。英語がわからなくても主役の子の演技がイマイチなのがわかるレベルなのが、退屈さを助長する。
(以下ネタバレ)
で、結局、ネット仲間のタチの悪い悪戯でした…ってオチなんだけど、どう考えても辻褄があわないところが。アシュリーはポロシーの彼氏の家にいくのだが、そこで落ちていた銃を拾う。そして、自分の部屋に帰ったときに誤って恋仲になりかけているゼーンを撃ち殺してしまう。
で、ネタばらしで、実は空砲で血糊を仕込んでいたんでーすってことになるのだが、アシュリーが銃を拾ったのなんか偶然じゃん。撃つかどうかもわかんないじゃん。
さらに、プロローグで出てきた、本編には関係ない女の子のチャットには肉仮面のスマイリーが出てきたから、あれは何なのか?ってことになっちゃうから、最後にとって付けたように本物を出しちゃう。人が死ぬような悪ふざけをしても、悪いとも感じない若者たちの神経の恐ろしさ…というオチだったのに、本物を出してしまたっために怖さが半減。もう、そこまでくるとグダグダで、エンドロールにアシュリーの目を醒まさせてしまう。生きてました…に何の意味があるのか。行き当たりばったりアンド行き当たりばったり。
駄作ですな。このシナリオを中学1年生が書いたっていうなら、将来有望だと思うけどさ。いい大人が世に出す作品ではないよ。
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:ウェス・アンダーソン
出 演:ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード 他
ノミネート:【2012年/第85回アカデミー賞】脚本賞(ロマン・コッポラ、ウェス・アンダーソン)
【2012年/第65回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ウェス・アンダーソン)
【2012年/第70回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]
【2012年/第66回英国アカデミー賞】オリジナル脚本賞(ロマン・コッポラ、ウェス・アンダーソン)
【2012年/第28回インディペンデント・スピリット賞】作品賞、監督賞(ウェス・アンダーソン)、助演男優賞(ブルース・ウィリス)、脚本賞(ロマン・コッポラ、ウェス・アンダーソン)、撮影賞(ロバート・イェーマン)
【2012年/第18回放送映画批評家協会賞】作品賞、アンサンブル演技賞、若手俳優賞(カーラ・ヘイワード)、オリジナル脚本賞(ロマン・コッポラ、ウェス・アンダーソン)、音楽賞(アレクサンドル・デスプラ))
【2013年/第22回MTVムービー・アワード】キス・シーン賞(ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード)
コピー:恋をしに出かけよう! ふたりだけの秘密の場所へ――。
1965年、アメリカのニューイングランド沖に浮かぶニューペンザンス島。厳しい両親とうっとおしい3人の弟と暮らしている12歳のスージー。同級生とも家族ともうまく付き合えない彼女は、本を読んで自分の世界に浸ること。そして、双眼鏡を通して世界を見ること。そんなある日、双眼鏡で外を見ていると、母とシャープ警部が密会しているのを目撃していします。一方、ボーイスカウトに所属している、同じく12歳のサムは、ウォード隊長に手紙を残しキャンプを脱走する。実は、スージーとサムは、1年前に演劇鑑賞の舞台で知り合い、その後文通を続け、愛をはぐくんでいた。そして駆け落ちの計画を練り、今回実行にうつしたのだった。二人は草原でおちあい、“3.25海里 潮流口”を目指し愛の逃避行へ。そして、二人が“ムーンライズ・キングダム”と名づけた美しい入り江にキャンプをはり、楽しく過ごすのだった。翌朝、二人がいなくなったことい気付いた大人たちは、あわてて捜索をはじめるのだったが…というストーリー。
またまた、ブルース・ウィリス登場。金に困っているのか?余命宣告でも受けたの?なんでもかんでも出すぎだろう。
悪口に聞こえちゃうかもしれないけど、本当にいかにもウェス・アンダーソンっていう作品で、だれかがウェス・アンダーソンのパロディ作品を作ってもこうなるんじゃないか…っていうくらい、お決まりの要素で溢れている。もしかすると、ウェス・アンダーソンを好きな人じゃないと、ちょっと、うっとしく感じてしまうかも…と心配になるくらい。
両親を亡くし、里子として預けられているサム。ボーイスカウトのウォード隊長やシャープ警部はそんな事情が気付かなかったくらい、周囲の大人には普通に見えていたんだけど、実際はボーイスカウトでもいじめられているし、家でもいじめられている。まあちょっと変わってるとは思うけど、おかしいのは、周囲の方に感じるけど、里親は他の子(というか実子)のいうことを真に受けて、もうサムの面倒は見ないと宣言する(ヒドイ)。
スージーの家庭環境も、なかなか面倒くさい両親のもとで抑圧されてるんだけど、こっちの方は本人に著しい問題がある。簡単にキレて暴力を振るうので停学になっちゃうほど。その臭いを感じ取ったのか、サムはスージーに一目で惹かれ、すぐにスージーも同様に。異端者同士のシンパシー。
最近は、『ダージリン急行』(2007)『ファンタスティック Mr.FOX』(2009)と、置きにいったといか小洒落た感じにまとめにいったという感じがあったが、本作は、『天才マックスの世界』(1998)や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001) 『ライフ・アクアティック』(2004)のころに戻った感じ。この3作品が好きなのでうれしいかぎり。
はじめは小さな愛の逃避行だったが、狭い島の人々に与える影響は小さくなく、この騒動は、閉塞した島でまかり通っていたおかしな状況を揺すっていく。そして、人の奥底の愛情や連帯感みたいなものを思い出しはじめる。もちろん二人が結婚にいたるわけはなく、以前のような平穏に戻っていくが、同じようにみえても、愛が溢れた世界はまるで違うものになっている。
まあ、安定のウェス・アンダーソン節ですわ。
#フレンチキスの誤解は解消されるでしょう。
公開国:日本
時 間:107分
監 督:竹中直人
出 演:竹中直人、風吹ジュン、三東康太郎、山口美也子、マルセ太郎、神戸浩、神代辰巳、いとうせいこう、大杉漣、草薙幸二郎、須賀不二男、久我美子、野村昭子、船場牡丹、原田芳雄、三浦友和 他
受 賞:【1991年/第48回ヴェネチア国際映画祭】国際批評家連盟賞(竹中直人)
【1991年/第34回ブルーリボン賞】主演男優賞(竹中直人)、助演女優賞(風吹ジュン)
それなりの売れっ子マンガ家だった助川助三は、マンガへの情熱を失ってしまい、数々の商売の手を出しては失敗を繰り返していた。家計は、妻モモコがチラシ配りで得る収入だけで支えられていた。助三は、元手のかからない石が売れたらなんと素晴らしいことだろうと、ふと思い立ち、石屋を開業することに。もちろん街中に開店する資金などあるはずもなく、川原に自作の小屋を建てて商売を始める。来年小学校に上がる一人息子の三助を連れ、朝から夕方まで店に座り続けるものの、一つたりとも石が売れることはなかった。ある日、石の愛好家の専門誌を読んだ助川は、オークションで石が高額で売買されていることを知り、オークションを主催している石山という男の家を訪れる。石についての講釈を聞き、売れる石を出品するためには、上流まで石を探さねばいけないと考えた助三は、家族を伴い遠く山梨まで採石に出かけるのだったが…というストーリー。
つげ義春のマンガは、ねじ式をぱらりと読んだ程度でほぼ読んだことがない。よって、本作が原作の雰囲気をよく表しているか否かはよくわからないのだが、世間の評価は高い模様。ロケ地や舞台が、わざとらしくシュールに描かれているということはないのだが、不穏な空気というか微かな違和感というか、そういったものを常に漂わせており、そういう意味では成功しているように思える。
たしかにシュールな空気は漂っているのだが、本作の主人公はシュールというよりも、単に楽して儲けたい人に見える。タイトルの“無能”とは何なのか。その漫画の才能を捨ててしまったら無能になった?
かつて、マンガを描くことはたのしいことだった。つまり、マンガで稼げていたことは彼にとって“楽に稼げていた成功体験”なわけだ。商業的な仕事はしたくないっていうのは単なるいい訳で、マンガを描くことが、今の彼にって“楽”じゃなくなってしまっただけのハナシ。彼は苦労しないで儲けることに快感を覚えるようになってしまった。その成功体験が忘れられずに、とにかく楽に稼げる商売を探しまくる。だけど、楽に稼ぎたいので、商売を軌道に乗せるために頭を使ったりはしない。すべて、他人から聞いた儲け話みたいなのに乗っかるだけ。
普通は、貧しさの苦痛と、こつこつ働くことを天秤にかけて後者になるのだが、楽して儲けられないくらいなら、極貧でもかまわないというスタンスが、普通の感覚じゃない。
でも、実世界でも、程度の違いはあるが、こういう人がは案外いるので、それほど浮世離れしているとも思えないところがミソ。
競りで、妻ががんばっちゃうのは、一つのおもしろエピソードを見るべきなのか、もっと深い、男女の根源的な関係を示唆しているのはよくわからん。正直、家族3人が手を繋いで歩いてくシーンも、餓鬼・畜生が無表情で地獄への道へ進んでいるようにみえて、デカダン臭満載で心苦しく感じてしまった。
いきなり初監督映画が、ヴェネチアで賞を取ってしまった竹中直人。その後も数年おきに、『119』(1994)、『東京日和』(1997)、『連弾』(2001)、『サヨナラ COLOR』(2004)、『山形スクリーム』(2009)と、コンスタンに監督はやっている。俳優の仕事の多忙さを考えるとスゴイってのもあるが、さほど商業的に成功しているとも思えないのに、映画を作らせてくれる信頼を得ているというほうがスゴい。
娯楽作品ではないけれど、他の作品とは一線を画すという意味では、際立った作品かも。
エンドロールを見て友情出演のオンパレードなことに気付いたが、観ている最中はあまり気にならなかったというか気付かなかったというか…。どこにつげ義春出てた?
公開国:アメリカ
時 間:97分
監 督:デヴィッド・バレット
出 演:ジョシュ・デュアメル、ブルース・ウィリス、ロザリオ・ドーソン、ヴィンセント・ドノフリオ、ジュリアン・マクマホン、カーティス・“50 Cent”・ジャクソン、ヴィニー・ジョーンズ、アリ・ヴァーヴィーン、エリック・ウィンター、ボニー・サマーヴィル、リチャード・シフ 、クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン 他
コピー:人生、完全消去。
カリフォルニア州ロングビーチ。消防士のジェレミー・コールマンは、勤務終わりでコンビニに立ち寄ったところで強盗殺人事件に巻き込まれる。犯人は、新興ギャング組織のボス、デヴィッド・ヘイガンとその部下。立地のよい店を立ち退きさせようとしての犯行。店主とその息子は射殺されるが、ジェレミーは隙をついて裏口から脱出し一命を取り留める。彼の証言からヘイガンが逮捕されるが、証拠不十分で釈放。過去、ヘイガンに相棒を殺された過去を持つマイク・セラ警部補は、今回の件でなんとか立件したいと考え、ジェレミーに裁判での証言を依頼する。正義感の強いジェレミーはその申し出を受ける気があったが、早速ヘイガンは部下をつかって早速脅しをかけてきた。そこで、“証人保護プログラム”の適用。ジェレミーは裁判まで、別人としてニューオーリンズで生活することとなる。そして8か月が経過、2週間後の開廷が決定するのだったが…というストーリー。
最近、脇役なのにジャケット映像にはデカデカお顔が…というパターン連発のブルース・ウィリス。本作も同様で『シャドー・チェイサー』と同レベルのお仕事。それが悪いわけじゃないんだけど、
過去に同僚とその妻が殺されており、こめかみから血が吹き出そうなくらい復讐心に燃えるキャラクター。充分に“ブチギレ”に期待できる性格設定だし、実際にブチギレさせることができる話の流れだったのだが、結局は大人の対応の範囲で収まってしまった。主役を乗っ取るようなことをさせるわけにはいかないだろうけど、観客がそれを期待するのは致し方なく、不完全燃焼感を漂わせての終演に。結果的にはキャスティングのミスなのかも。最後、ヘイガンの写真を捨て、同僚の写真をポケットにいれておしまい…じゃあねえ。
いくら新興ギャングだとはいえ、FBIからもマークされてこれまで何度も訴訟を潜り抜けてきたという設定で、作中では“大物”扱いなのに、トップ自らコンビに強盗というスケールの小ささに若干の違和感はある。しかし、粘着質なナチ野郎という気色の悪いユニークなキャラではあるので、許容範囲か。
そのヘビのような粘着具合で、周りの人間が不幸になっていく…というか、本来は天涯孤独なので自分の身さえ護っていればよかったのに、迂闊な行動を取ってしまうジェレミー。というか、下半身がだらしない。命に関わる問題なのに、真の愛だのなんだの的外れないい訳が見苦しく、ちょっと共感しにくかった。そうしないと話が進まないので仕方が無いのはわかるが、それならもうちょっと、彼女と結ばれる必然性というか説得力が欲しかった(二人が、単なる肉欲ではなく、強くシンパシーを感じる過去があるとかね)。
途中、ニューオリンズの保安官タリアが、もしかしてヘイガン側のスパイ?みたいに見える演出は余計だったかも。彼女の部分は、家族の危険を顧みず、“愛に生きる”という覚悟の部分にスポットを当てるだけで充分だっただろう。そのためには、彼女の家族の安全を確保するか、いっそのこと襲われてしまうという流れが必要だったと思うが、その辺をフワっと流した点は残念だ。
残念ながら、シナリオ的に致命的な欠陥が一つ。なんで、ジェレミーは元同僚に消防士の装備を用意させたのか。ヘイガンのアジトに火をつけるだけなら装備は不要。実際に火をつけたあとは、建物の外から電話をかけており、彼の作戦の中に消防士の装備を必要とする場面はない。
ところが、予想外にタリアがヘイガンに捕らえられていることが判明。しかし火はすっかり廻っている。ここではじめて消防士の装備が必要となる。うーん、不自然でご都合主義も甚だしい。その流れなので、「俺を信じろ、そうすれば助かる!」が非常に格好悪くて、全然キマっていない。
メリハリの付け方を誤った脚本だね。凡作中の凡作。
#格闘家とかラップ系の有名人が出てくるけど、正直どうでもいいや。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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