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image1969.png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:112分
監 督:益子昌一
出 演:寺尾聰、竹野内豊、伊東四朗、長谷川初範、木下ほうか、池内万作、中村有志、岡田亮輔、黒田耕平、佐藤貴広、酒井美紀、山谷初男、富永研司、高瀬尚也、吉田友紀、松本匠、森下サトシ、希野秀樹、田中伸一、宮本行、辻雄介、渡辺憲吉、奥村寛至、小島康志、鳴海由子、渡辺杉枝、不二子、大滝奈穂、伊東遥、栗林里莉、宮田直樹、矢嶋俊作、荒木誠 他



ある日、長峰重樹の中学生になる娘・絵摩が、荒川で無惨な死体となって発見される。妻を亡くして以来、娘の成長だけを生きがいにしてきた長嶺は、絶望に打ちひしがれる。そんな長嶺のところに、犯人は菅野と伴崎という男が犯人であるという匿名電話が入り、伴崎のアパートを教えるのだった、長嶺はその内容に従い伴崎のアパートに進入。そこで、娘を殺すまでの様子が撮影されたビデオテープを発見する。激しい怒りに我を忘れた長嶺は、帰宅した伴崎を刺殺。もう一人の菅野の居場所を死ぬ間際に聞き出した長嶺は、潜伏先へ向かうのだった。その後、長嶺は、伴崎殺害を自供する手紙を警察に郵送。刑事たちは、長嶺の絶望感に共感しつつも、法の番人として振舞わねばならない不条理に苦悩する…というストーリー。

おそらく原作は、“少年法”というものを切なく、そして息苦しく描いているのだろうが、本作はすべての焦点がボケまくっている。はじめにいってしまうが、この監督さんはセンスがない。

まず冒頭。未成年の少女が少年グループに拉致されるくだりが、長々と描かれる。もう、どういう展開になるのかは、100人観たら100人がわかっているのに、わざとらしいおどろおどろしい音楽をつけて、ほら、いま拉致されるぞーとやる。本当にわざとらしく冷める。
別にスタイリッシュに描けとか、そういうことを言っているのではない。私なら、狙われいるように一人の女の子に焦点当てておいてスカしたり(別の子でしたーとか)、いっそのこと電話で話した後は、ちらっと襲われるところをみせて、すぐにモルグで、バーンとタイトル!とかにするけどね。

留守番電話に匿名のタレコミが入って、そこを訪れて、結果的に殺人に至り、その後逃走する流れは非常におもしろい。というか、これがこの物語の本筋なんであたりまえなんだけど。でも、部屋で発見するビデオがほとんどスナッフムービーで、音声を聞いているだけで吐き気がしてくる。犯人への憎しみを沸かせたいのだろうけど、これがやりすぎで、かえって観せたい部分から逸れてしまうことになぜ気付かないのか。この部分こそ、うまく寸止めで表現すべきところ。

ここまでくると、唯一、この話と観客を繋いでいるのは、復讐できるか否か。その一点。100人観ていたら99人が、思いを遂げて欲しいともってたに違いない。
いや、でもきっと、99人がそう思っちゃいけないはずなのだ。本当は、観客も「やってよし」と「それでも法を遵守すべき」との間で揺れさせるような演出をしなくてはいけないはず…。竹野内豊演じる若手刑事ははすっかり長峰重樹寄りだし、伊東四朗演じるベテラン刑事だって、別に法の権化ってわけでもないし(このベテラン刑事のキャラは全然生きていないのには、辟易する)。結果的に、少年法の問題にスポットを当てているようで、さっぱり当てられていない。

自分の子供が殺されたからといって、加害者を殺しても良いか?私は必ずしも悪いとは思わない。ただ、それに至る事情や、情状酌量の余地があるとか、それこそ敵相手を間違ってしまうとか、色々な歴史や考えを経て今の制度がある。それ自体は尊重しなければいけないわけで、仮にその制度が実態や国民のニーズに沿っていないというならば、地道に我々が法を変えればいいだけ。はっきりいってそれが答えなのだが。

でも、自分の命を賭してでも復讐を遂げたいという人がそれを“やること”自体は止められない。死には死をもって報いてもらう。結果的に罪を犯すことになる私を社会が受け入れないというならば、それに対するいかなる罰も甘受する。だからやらせろとなると、良いも悪いもない。あとはやる方と止める方がガチンコでぶつかるだけの話。

警察機構を超えた存在があれば、スッキリするのに…という考えはダレにでも浮かぶ。そういういう一種の問題提起から作られる物語っていうのは、『必殺仕事人』や『ワイルド7』や『ハングリー・ラビット』みたいな、法を超えた組織を主人公したお話になっていく。特撮ヒーローものだって、水戸黄門だってある意味、この範疇のお話だ。
だから、単に“復讐者”を応援するだけのお話になると、凡作になっちゃうので、それだけは避けなければいけなかったのに…。

さらに、稚拙極まりなかったのがラスト。
空砲だったよ…じゃなくて、弾は入って無かったよ…じゃないのかよ。途中で空砲を入手するなんて難しくないか?ペンションの親父が空砲を入れてた?それもおかしいでしょ。
まあ、空砲を見つけたという設定だとしよう。だとしても、二発入っているとわざわざペンションの親父に台詞をいわせているのだがら、川崎で空砲を一発撃って、警察に本気だと思わせる…っていう演出をすべきだろう。ほんとに稚拙。

原作を無視していいならば…、長峰重樹から託された若い刑事は、審判の結果、少年がほとんど罪に問われないをいう結果を知り、長峰重樹の意思を継いで、法廷で犯人の少年のを殺す。このくらい私ならやるけどね。そのためには、若い刑事にも長峰重樹に強いシンパシーを感じる過去設定が必要だけど。

まあ、とにかく、中途半端な作品だった。

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image2050.png公開年:2009年
公開国:アメリカ、アラブ首長国連邦
時 間:89分
監 督:ロバート・ロドリゲス
出 演:ジョン・クライヤー、ウィリアム・H・メイシー、レスリー・マン、ジェームズ・スペイダー、ジミー・ベネット、カット・デニングス、ジェイク・ショート、デヴォン・ギアハート、レオ・ハワード、トレヴァー・ガニョン、レベル・ロドリゲス、ジョリー・ヴァニエ 他




万能ツールを販売しているブラック・ボックス社がある郊外の町ブラック・フォールズ。住人はブラック・ボックス社に何らかの形で関わっており、ブラック・ボックス社が支配している言っても過言ではない。学校で社長の子供たちからいじめられている少年トビーは、空から降ってきた虹色の石を発見。その石が何でも願いを叶えてくれる“魔法の石”であることに気付く。はじめは自分の望みを次々と叶えていくトビーだったが、その石は友達ルーギーなど、様々な持ち主を転々として、彼らの願いを叶えていくのだが、誰一人うまく使いこなすことができず、大騒動を巻き起こしてしまう。やがて、石はとある陰謀に利用されてしまい…というストーリー。

日本未公開になるほど悪い作品ではない。でも、公開されない理由はちょっとわからないでもない。ロバート・ロドリゲスによる子供向け作品は、しっかりと子供目線で作られており、これができるのは、すばらしい才能。でも、ロドリゲスの子供向け作品には類型パターンがあるから。つまり既視感が満載だからではなかろうか。

表面的には相反する男の子と女の子。いじめられっこが主人公側。そのいじめは度が過ぎる。親以外に彼らを援助する大人。スーパーツール。ドロドロ・ぐちょぐちょな物。変人が登場し、はじめは敵対するが主人公の味方に。女の子のキャスティングがうまくて地味にかわいい(今回だとジミー・バフェット)…etc。
どことなく似ていて、『スパイキッズ』の枠をいつまでも超えられていないような…。

『パルプ・フィクション』ばりの、時間軸行ったり来たりする演出も本作の特徴だが、これによって興味深くなっているような気もするし、別にこれが無くても成立しているような気もするし、効果はよくわからない。
また、何でも願いごとがかなう石っていうのが、オールマイティすぎて逆にピンとこないような。

まあ、愉快にまとまってる作品だけど、凡作。子供もちょっと飽きちゃうかも。

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image2049.png公開年:2004年
公開国:日本
時 間:144分
監 督:崔洋一
出 演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、朴武、松重豊、中村優子、唯野未歩子、濱田マリ、柏原収史、張賛明、塩見三省、北村一輝、國村隼、寺島進、朴希範、伊藤淳史、仁科貴、佐藤貢三、中村麻美 他
出 演:【2004年/第28回日本アカデミー賞】主演女優賞(鈴木京香)、助演男優賞(オダギリジョー)、監督賞(崔洋一)
 【2004年/第47回ブルーリボン賞】助演男優賞(オダギリジョー『この世の外へ クラブ進駐軍』に対しても)
コピー:血は母より、骨は父より受け継ぐ

1923年。17歳で済州島から大阪へ渡って来た金俊平。他の朝鮮移民と同様に日本で一旗揚げることを夢みて渡ってきた。子連れの李英姫と結婚し、花子と正雄のふたりの子供をもうけるが、酒を飲んでは暴れ、家族の心が安らぐ日は無かった。戦争中は行方不明となり1945年にフラりと戻ると、突然、蒲鉾工場を開くと言い出す。強靱な肉体で従業員を高圧的に支配し、持ち前の強欲さと時勢がら蒲鉾工場は大成功を収める。そんな彼の前に、かつて人妻に生ませた息子・武が現れ金をせびるようになるが、守銭奴の俊平は一銭も渡す気はなく、大乱闘の末、追い出してしまう。自分の息子たちが反抗的なことに常々不満をもっていた俊平は、一年後、自宅のすぐ目の前の家で妾・清子を囲い始め、さらに高利貸しを始めますます景気がよくなるのだった。しかし、清子が脳腫瘍で倒れてしまい、動くことも話すこともできなくなてしまう。そのやり場のない怒りを、再び家族に向け始める…というストーリー。

公開時に売られていた漫画版をチョロっとコンビニで立ち読みしたら、けっこうエグくて、今に至るまで観る気がおこらなかった。うじ虫のたくさん湧いた腐りかけの豚の生肉を食べるところとか、脳梗塞になる妾さんは片方の脳を大きく摘出して、ペコペコのカバーで覆っている状態だってのを、あまりうまくない絵で見せられると、本当にエグさ倍増でね。

だけど、『月はどっちにでている』の主人公と、本作の主人公というか狂言回し(子供・金正雄)が、原作設定的には同一人物だと知り、興味が沸き、やっと観ることに。でも、原作では繋がっているのかもしれないけど、映画同士だと時代もキャラクター設定も異なるので、全然繋がっていない。大体にして母親の李英姫、死んじゃってるしね。
#鈴木京香の晩年が絵沢萠子ってのは、結構絶妙な気がしないでもないが…。

済州島から自分の意思でやってきているシーンからスタートするところから始まるのは、実はすごい。在日朝鮮人たちが、日本から強制的に連れて来られたと主張し続けるのを真っ向否定しているのがね。理不尽極まりない金俊平の行動だけでなく、取り巻き全員が何か理不尽。差別されてるとかなんだとか、そんなレベルではなく、全員が全員、地虫のような生き方しかしていない。行き詰っても、すべて人のせい、人のせい。
蒲鉾屋で成功しても、そこから世間様に顔向けできるような企業にしようとかそういう発想が根本的にない。その後も金貸しに転じるが、目先の金を稼ぐことしか目がいかず、一度成功したら、不法だろうが何だろうがお構いなしにそれだけを繰り返す。
#電車でキムチ喰うなよ…。
最後も、私たちから見たら「はぁ?」って思うのだが、済州島出身なのに、なんで北朝鮮の帰国事業にのっかるのか。結局は、騙されるわけだが、騙されるほうがアホ。

こういうクレイジーな男を軸にして話が展開するので、明確なメッセージ性がどうのとか、そんな次元ではない。野生の王国を観る時のような、そういう圧倒的な人外な風景がそこにあるだけ。単純に話はものすごく面白い。
本作で一番評価したいのは照明。しっかりと対象物を浮かばせつつも、貧乏臭い薄暗さで、リアリティをつくっている。セットも衣装も、よく揃えたなと思うくらいがばってる。とにかく技術スタッフの力は大きい。

一方、演出面では、首を傾げるところが散見。演出的には理解するけど、首吊った親族を見つけたら、すぐに降ろすだろ…とか。はじめの方の、ビートたけしが鈴木京香を襲うシーンも、子連れの李英姫と無理やり結婚しようとしているシーンだということがわかりにくい…とか、色々。
済州島から渡ってくるシーンを冒頭だけでなく、終盤も差し込んだのは、崔洋一が韓国人で『ゴッドファーザー』をやるつもりだったと、私は見ている。しかし、無理があった。そこに愛がないからダメなんだと思う。

キャスティングも、似ていることよりも演技力を重視したのは理解するが、子供時代と成長した姿に乖離がありすぎるのな難点。息子・金正雄にほくろを付けざるを得なかったことで、言わずもがな…という所だ。

別に悪いわけじゃないけど、鈴木京香の日本アカデミー賞とオダギリジョーの助演男優賞ってのは褒めすぎだろうに…って思って調べたら、同年の他のノミネートされた人が、それほどいい仕事していなかったり、作品自体がいまいちだったりで、ごっつあんゴールだった…orz。でも、照明賞(高屋齋)、美術賞(磯見俊裕)は受賞させないとだめでしょ。見る目無いなぁ、日本アカデミー賞。

よく出来た作品で、崔洋一作品の中では飛びぬけていると思う。だけど、鶴橋界隈にに行くのちょっと怖くなる。
#この時代から飛田って飛田なんだなぁ…。

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image2048.png公開年:1987年
公開国:香港
時 間:93分
監 督:チン・シウトン
出 演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ウー・マ、ラム・ウェイ、ラウ・シウミン 他
受 賞:【1988年/第16回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭】審査員特別賞、心臓に一撃賞
コピー:人は最後に何を願うのか




借金を集金するために旅をしている書生の青年寧采臣は、借金の帳簿を濡らして読めなくしてしまい、集金が出来なくなってしまう。無一文の彼は、ただで泊まれると聞き、蘭若寺へと向かう。しかし、そこで二人の道士、夏候兄と燕赤霞の戦いに巻き込まれてしまう。その戦いの最中、美しい娘が現れて夏候兄を誘惑。夏候兄はその娘に精気を奪われて屍となってしまう。一方、寧采臣はその難を逃れ、琴の音が漏れる一軒家を訪ねる。そこには小倩という妖艶な美女がおり、すぐに恋に落ちてしまう。しかし、その小倩こそ夏候兄の精気を吸った妖女であると見抜いた燕赤霞は、寧采臣に忠告するが、寧采臣は聞き入れない。実は小倩も、若い男の精気を吸うために吸血鬼に操られており、魔王の花嫁にされようとしていた…というストーリー。

『金瓶梅』のような艶っぽい話になりそうなものだが、エロ要素はほぼ無し。むしろ綺麗な純愛物で、童話的な雰囲気すら醸し、且つゾンビ物とうまく融合している。ホラーというよりもファンタジー。もちろん香港映画お得意のワイヤーアクション満載。SFXも80年代ということを考えれば、優秀だと思う。

リマスター版のDVDだったのだが、それでもフィルムが古くて画質は荒い。でも、見得を切ったような印象的なカットがたくさんで、美しく感じる。製作のツイ・ハークの力か。

賞金稼ぎが街中にたくさんいたり、町人たちの行動がコミカルだったり、燕赤霞をお尋ね者と間違えるが、実は元優秀な役人だったとか、コメディ要素がたくさん散りばめられているのだが、そっちのほうはイマイチ。まあ、時代や国境を越える万能な笑いなんてものは存在しないので、そこは大目に見たい。

残念ながら、ストーリーに緩急がないので、終盤ちょっと飽きるのが玉に瑕か。そして、画やノリをしっかり愉しむためには、字幕を読ませるのは難点。是非、吹き替え音声ありのDVDを作るべき。

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image2047.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:129分
監 督:土井裕泰
出 演:阿部寛、新垣結衣、溝端淳平、松坂桃李、菅田将暉、山崎賢人、柄本時生、竹富聖花、聖也、黒木メイサ、向井理、山崎努、加賀隆正、三浦貴大、劇団ひとり、秋山菜津子、鶴見辰吾、松重豊、田中麗奈、中井貴一、北見敏之、相築あきこ、中村靖日、緋田康人、松澤一之、小泉深雪、大堀こういち、Velo武田、江澤大樹、コッセこういち、辰巳蒼生、吉見幸洋、川井つと、森輝弥、谷川昭一朗、西慶子、中村祐樹、柳東士、金谷真由美、ヘイデル龍生、名雪佳代、菅原大吉、田中要次、志賀廣太郎、大石吾朗 他
コピー:人は最後に何を願うのか

東京・日本橋の翼のある麒麟像の下で、男性が殺害される事件が発生。被害者はカネセキ金属の製造本部長、青柳武明。彼は腹部を刺された場所から、誰にも助けを求めることなく発見現場まで8分も歩き続けるという不可解な行動をとっていたことが判明。一方、事件の容疑者には、彼のバッグを持って現場から逃走する際に車に轢かれて意識不明になった青年・八島冬樹が上がる。彼の恋人・中原香織は、無実を訴えるが、捜査本部は八島の犯行と断定し、本人意識不明のまま書類送検しようとしていた。しかし、捜査に当たっていた日本橋署の刑事・加賀恭一郎は、独自の捜査を進め…というストーリー。

TVドラマをほとんどみない私が、珍しくほとんど観たのが、TBSの『新参者』。本作は、既に先日TV放送してしまっていたが、しっかり観たかったのであえて放送はスルーして、レンタルが旧作料金になるまでウェイトして、やっと今、鑑賞に至る。
私、以前、この舞台になっている日本橋の自転車圏内に住んでおり、住み始めた頃に日々の食材を買う場所を探しに、このあたりをレンタルサイクルで走ったことがある(結局、全然スーパーマーケット的な店は無かったんだけど)。非常に懐かしい。ちょっと綺麗になった気はするけど、基本的にはあまり変わっていない地域だね。私にとっては“ご当地映画”だったりする。

まあ、それはそれとして、良くも悪くもTVドラマの映画版だった。財布を盗んだ男が、追われているのが判ってから、いつまでもそれを所持したまま逃走するのが、実に不自然だったり。その他、労災隠し等々、様々なミスリードが配置されているが、ミステリーとしての話の筋は、あまりウマいとは思えない(悪いわけではないが映画版としてスポットを当てるほど長けてはいない)。
しかし、辛うじて、TVドラマにありがちな「ああ、この人が犯人なんだろうな…」とすぐに犯人の予想がつく展開にはなっていないのが救い。そして、一生懸命ミステリーとして成立させようと腐心したことによって、人情ドラマの方が薄くなってしまった気がする。親子の確執、若い恋人同士の想い、要素は多いが、散ってしまった印象。
TVドラマを観ていなければ、山崎努、田中麗奈、黒木メイサのキャラクターはいまいちピンとこないだろう。思い切ってこの三人を捨てて、他の話を厚くしたほうがよかった。
#内容と直接関係ないが、新垣結衣はデカすぎ。この人、英語を覚えて海外にいったら大成するんじゃなかろうか。

最後もスッキリできなくて、力技でなぎ倒した感じ。せめて、労災隠しをしたのが青柳武明ではないということが、世間に知られないと浮かばれない。劇団ひとりが演じた中学教師の行い、これが事件の発端だったのに、結局これはどう処罰されたのか。父のメッセージを受け取った息子は、何の罪にも問われないのか。問われないならせめて、被害者の親には告白にいったのか…。引っかかりが多くて、カタルシスには至らない。

しかし、TVドラマを観た人にとっては、十分に愉しめるご褒美なのは間違いない。それ以外の人には、イマイチかと。
#それにしても、ミキプルーンのイメージの破壊力ってすげーな。中井貴一が出てくるたびに、頭の片隅にミキプルーンが浮かぶわ。

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image2041.png公開年:2012年
公開国:日本
時 間:68分
監 督:中村義洋
出 演:濱田岳、木村文乃、大森南朋、石田えり、中林大樹、松岡茉優、阿部亮平、中村義洋、桜金造 他





空き巣の青年・今村と恋人の若葉は、プロ野球選手・尾崎のマンションに忍び込む。今村は尾崎のファンらしく、野球のことなど全然知らない若菜に熱く彼の凄さを語り始める。すると、部屋の電話が突然鳴り出す。留守電の声を聞くと、若い女が尾崎に助けを求める内容。何故か今村は、その女性に会うといい始め…というストーリー。

『ゴールデンスランバー』と同じ世界のお話。伊坂幸太郎の世界観。本作に出てくるデパートなんかも『ゴールデンスランバー』で使われたデパートで、さすが監督もプロデューサも一緒。ファンはこの質の統一感を愉しめるんだろう。

短編ながら、謎解きは厚みがあり、プロットは良い。おそらく原作自体が良いのだと思う。しかし、一点だけどうしようもないのが、最後の野球場のシーン。予算がなかったのはわかるが、まったくもって大勢の人が球場にいる空気を出せていない。まるで社会人野球の準々決勝くらいの雰囲気。さらに最悪なのが音声(というか効果音)。まったく広い球場の感じが出せていない。そりゃパ・リーグの試合なんて、スカスカな客入りの時もあるけれど、広い空間ゆえの音というのがある。こういう技術的なダメさには、すっかり興醒めさせられる。
さらに、最後の最後のフライを取るシーン。話の筋的に、フライを取ることに意味があるのはわかるが、さすがダイレクトのホームランボールは素手では取れない。木でも建造物でもいいから、せめてどこかにバウンドさせてからにすればよいのに。興ざめ。
映画監督だってそれぞれ得手不得手はある。別の監督の手に掛かっていれば、世界観の統一はされなかったかもしれないが、この興冷めはなかったかもしれない。同じ監督による世界観の統一という弊害と言ってよいのではなかろうか。

タイトルの“ポテチ”。わざわざタイトルにするくらいだから、意味があるのだろうな…と思って観ていたのに、何で違う味のポテトチップを渡した後のくだりで、主人公は泣いたのか…ということに、すぐ気づかなかった、鈍感な私…というか、眠くてぼーっとしてた。自分が欲しかった味のポテチじゃなくても食べてみたらおいしかったからこれでいいや…って、恋人が行ってくれたので、自分とダブらせて泣いちゃったってことか。まあ、詳しくは本作を観てくだされ。

伊坂幸太郎×中村義洋の一連の作品が好きな人にとっては小気味良い作品。そうでない人にとっては極めて凡作。

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image2046.png公開年:2007年
公開国:イギリス、フランス
時 間:120分
監 督:エドガー・ライト
出 演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、ジム・ブロードベント、パディ・コンシダイン、ティモシー・ダルトン、ビル・ナイ、ビリー・ホワイトロー、エドワード・ウッドワード、ビル・ベイリー、デヴィッド・ブラッドリー、ケヴィン・エルドン、レイフ・スポール、カール・ジョンソン、オリヴィア・コールマン、ケン・クラナム、ピーター・ワイト、アン・リード、ジュリア・ディーキン、パトリシア・フランクリン、ポール・フリーマン、スチュアート・ウィルソン、アダム・バクストン、ロン・クック、マーティン・フリーマン、ルーシー・パンチ、デヴィッド・スレルフォール、スティーヴン・マーチャント、スティーヴ・クーガン、ケイト・ブランシェット、ピーター・ジャクソン 他
コピー:呼ばれてないけど、参上。

ロンドンの警官・ニコラス・エンジェルは、検挙率№1で9回も表彰されたほどの優秀な巡査。しかし、その優秀すぎる能力のせいで、組織内で疎まれ、地方の村サンドフォードに左遷されてしまう。サンドフォードは、イギリスで一番安全といわれる村で、事件らしい事件はおこらない。エンジェルは、軽微な事件を見つけては、片っ端から逮捕していくが、警察署長や町の自警組織は、強く罰することばかりが社会維持の最良作ではないとして、すべて温情処理してしまう。そして、彼に残された仕事は、地域の集会の警備などの閑職で、まったく馴染めないまま。おまけに、警察署長の息子・若手警官ダニーとコンビを組まされることに。トロくて能天気で警官映画オタクな彼と、エンジェルは噛み合わず、完全に嫌気がさしてしまうのだった。そんなある日、村を訪れた役者と、彼と付き合っていたと思われる村の女性が無残な死に方をする事件が発生。その後も、次々と不審死が続くが、村人たちは事故だといって心配する様子もない。絶対に殺人事件だと確信するエンジェルは、ダニーと共に捜査を始め…というストーリー。

冒頭のチョケっぷりで、イギリス映画でありがちな寒いお笑い作品か?とかなりゲンナリ。着任してからも、低レベルのお笑いネタが重ねられ続け、何も感じていなかったのだが、サンドフォードの住人が、わざとらしい笑いを連発してくるあたりで、「ありゃ、こりゃ何か違うぞ?」と気づき始める。
コメディ映画としておかしな村人を登場させている…という演出ではない。とある理由があって、村人がおかしな人を演じているという“実際の状況”を描いているのだ。
それに気づいた直後、作品全体が得体の知れないサスペンス臭で満ち溢れる。この空気が作れてしまったら、その後、どれだけつまらないギャグや、わざとらしい伏線を配置しようとも、「もしかしてミスリードか?」「何かのひっかけか?」と深読みしてしまう。
同僚の警官たちは、イギリス人=不細工という風評を逆手にとって、実際に不細工なイギリス人の代表みたいなのばかり集めているのだが、これすら、なにかの伏線か?と思うほどだ。

これを計算してやってたとすると、スゴイことだな…と思ってたら、監督・脚本は『ショーン・オブ・ザ・デッド』のエドガー・ライトとサイモン・ペッグじゃないか。いや、これ、偶然じゃなく明確な演出なんだな。スゴイ。
途中、『クリムゾン・リバー2』や『ミレニアム2』を彷彿とさせるシーンや、「『わらの犬』にエキストラで出ていた」なんていう台詞があり、相変わらずの映画オタクっぷり。

で、終盤は、目が覚めるほどのアクションに転じ、これがまたまた、見事なハジケっぷり。『ショーン・オブ・ザ・デッド』の二番煎じと言えなくもないが、ニック・フロストがまたもや、ほろりとさせるいい役を演じている。
小気味良い作品。お薦め。

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image2044.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:アーロン・ハーヴィー
出 演:フォレスト・ウィッテカー、ブルース・ウィリス、マリン・アッカーマン、ニッキー・リード、デボラ・アン・ウォール、シェー・ウィガム、ジル・ストークスベリー、ブラッド・ドゥーリフ 他
コピー:全員、クセ者。
 すべてはこの一撃から始まる。



テスは、仲間のドーンとカラの姉妹をと一緒に仕事に向かう。彼女たちは、麻薬の売人と強盗を生業にしており、ボスのメルの指示で、とある郊外のダイナーに向かうよう指示を受けている。そこで、メルのシマを荒らしている奴らが取引をしているので、ヤクを奪えという。3人は、前回の仕事で失敗しており、この仕事が最後のチャンス、絶対に失敗は許されない。道中、エルモアと名乗る黒人の警官に車を止められ、目的地まで着いて行ってやろうなどとおせっかいをやかれたり、いざ目的のダイナーについても、聞いていた話とは様子が違ったり、何か妙な感じ。しかし、仕事は中断できない。話し合いの末、店主とおぼしきウェイトレスが事情を知っているに違いないと踏んで、店内に銃を構える。しかし、ウェイトレスはライフルを取り出しで、反撃をしてきて…というストーリー。

フォレスト・ウィッテカー、ブルース・ウィリスと、豪華なキャスト。でも、この二人だからといって、大作になるとは限らない。フォレスト・ウィッテカーは、『ラストキング・オブ・スコットランド』以降、わざとか?ってくらいチョイ役やTVドラマばっかりに出ているし、ブルース・ウィリスも『処刑教室』や『コップ・アウト』など微妙な役柄が多い。そして、本作もその線。
それが悪いというわけではなく、肩の力が抜けた、一種の“悪ノリ”をやってくれれば何の問題もない。

一時期、多用された時間軸を行ったり来たりさせる『パルプ・フィクション』的な手法。さすがに食傷ぎみで、最近鳴りを潜めていたが、久々に見た。
若い女の三人組がダイナーで会話をしていて、突然強盗に転じるという、それこそ『パルプ・フィクション』のパクりじゃね?ってシーンを、何度も何度も繰り返すということをやっている。それが意図的に行われているのは明らかで、微妙に数分ずつ進めることで、一体何がおこっているの?という謎解きと、緊張感を同時に煽るという、両方を演出できており、なかなか巧み。期待できる雰囲気が涵養されている。

で、このプロットの何がスゴイかって、
(以下、ネタバレ)
麻薬売買に手を染めている女が、何百万ドルもの取引でヘタこいたもんだから、ボスにカタに嵌められるっていう、ただそれだけのお話だっていうこと。たった、それだけを、ここまで興味を途切れさせず魅せるのは、なかなかの腕前かと。新人同然の監督だが、ガイ・リッチーのような感じになっていくかもしれない(若い頃のガイ・リッチーの演出に似ていると思うよ)。

ところが、シナリオも監督のアーロン・ハーヴィーが手がけているのだが、完全に息切れ。ダイナーで三つ巴になったところが最大のピークで、あとは尻すぼみで終わってしまったのが残念。何か驚くような印象的なシーンが一つでもあれば、この作品は、怪作として評価されたと思う。今一歩、いや今1.5歩の作品。本当におしい。
#原題の『CATCH .44』の意味は不明。

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image2038.png公開年:2010年
公開国:インド
時 間:139分
監 督:シャンカール
出 演:ラジニカーント、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン、ダニー・デンゾンパ 他
コピー:ワケわからんが面白い





天才工学者バシー博士は、10年に及ぶ研究の末、高性能二足歩行型ロボット“チッティ”の開発に成功。あらゆる点で人間を凌駕する能力を有し、人間の命令に忠実に従うチッティを、バシーは軍用として役立てることを夢見ている。しかし、政府の認可を得ようとするも、バシー博士と同じくロボット研究をしているボーラ博士の“人間い忠実すぎて危険”という指摘によって認可は見送られてしまう。そこで、バシー博士は、チッティに人間の感情をも理解するように改造を施す。しかし、それによりチッティは、バシー博士の恋人サナに恋をしてしまう。バシー博士を恋敵として張り合うチッティに対して、サナはチッティの思いをきっぱりと拒否する。深く傷ついたチッティは、さらに暴走してしまい、バシー博士の手で廃棄処分にされてしまう。しかし、残骸を回収したボーラ博士により、冷酷なターミネーターとして蘇らされ…というストーリー。

むりやり褒めれば、得体の知れないパワーがある…ってことなんだろうが、何か振り切れていない感じ。『鉄腕アトム』や『アンドリューNDR114』のようなストーリーで、ロボットが社会に出れば、いろいろなトラブルがありますよね…、ロボットが悪人をやっつけたり人助けをしたりしますよ…というというお約束的展開がある。だが、この手の話につきものの、人間に近づいたが故の悲哀とか、哲学的な思索というのはあまり感じない。結局、人間の心をもってやったことは、色狂いだものなぁ…、深みも何もあったもんじゃない(期待しちゃいないけど)。

インドもずいぶんがんばるなぁ…というくらいCGが盛りだくさん。といっても、10年前のレベルだけど。そして、予算の関係だとは思うが、チッティがフルCGで動く部分は、冒頭でおしまい。あとは模型と特殊メイクで展開する。前半のアクションシーンはなかなかおもしろかった。格闘アクションはベタベタだけど、アジアの表現力は凄いと思う。見所は電車内のバトルまでだった。
インド映画といえば、いつでもどこでもダンスが特徴だが、本作は意外と多くない。そして、ダンスが差し込まれるポイントが悪いのか、いまいち盛り上がらない。

このお話、共感できるキャラクターがおらず、観客は置き去りになる。主人公のバシー博士は、自分の目標達成のために、チッティに人間らしさを植えつけながら、都合が悪くなって廃棄する。恋人のサナも、言うことを聞くだけのチッティは良しとしていたが、バシー博士と張り合うようになると、うっとうしく感じ、排除しようとする。チッティ本人も、ロボットの悲哀を感じさせてくれればまだましだったが、色狂いから完全に悪のゲージを振り切ったキャラになる。ボーラ博士は言わずもがなの、ステレオタイプの悪人。『鉄腕アトム』で言ったら、お茶の水博士も感じの悪いおっさんで、アトムまで人間を襲っちゃうような話。だれにも感情移入できないという感じ。

もうすこしブラッシュアップしたほうがいだろうが、インド映画にそれを望むのは酷か…。もっと馬鹿馬鹿しいとか、ワケわからん…とか、そうだったらよかったんだけどね(コピーは看板に偽りアリ)。これ、短いバージョンらしく、元は3時間近くあるらしい。実に厳しい。レンタル料金100円が、損した気持ち。

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image2037.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:117分
監 督:森田芳光
出 演:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、ピエール瀧、村川絵梨、星野知子、伊東ゆかり、菅原大吉、三上市朗、松平千里、副島ジュン、デイビット矢野、笹野高史、伊武雅刀、西岡徳馬、松坂慶子、鈴木亮平、近野成美、田村ツトム、橋本一郎、佐藤恒治、小村裕次郎、白木隆史、大熊未沙、安藤聖、山下奈々、竹本聡子、河村春花、神農幸、加藤夢望、大和田悠太、山田キヌヲ、住吉晃典、清水優、笠兼三、伊藤力、真島公平、戸谷公人、山本浩司、細川洋平、中村靖日、伊藤克信 他
コピー:ココから 世界のどこだって行ける!!
 恋と仕事と好きなコト――森田芳光監督からのラストエール

大手不動産開発会社、のぞみ地所の社員・小町圭は、列車に乗り車窓を眺めながら音楽を聴くのが好きな“乗り鉄”。一方、蒲田にある小さな町工場“コダマ鉄工所”の二代目・小玉健太も車両の音を聞くのが大好きな鉄道オタク。ふとしたきっかけで出会った二人は早速意気投合。二人は鉄道という趣味だけでなく、恋愛がうまくいかないという同じ悩みを抱えていた。そして、小町がマンションを追い出されてしまったのを機に、コダマ鉄工所の寮に転がり込み、友情を深めていく。しかし、小町は九州支社に転勤になってしまうことに。九州支社は、本社の的外れな方針によって業績が振るわず、他の社員とはちょっと違った感覚の持ち主の小町に、社長が白羽の矢を立てたのだった。一方の小玉の町工場は、銀行から融資を断られて、いつ潰れてもおかしくない状況で…。

昨日の札幌から九州へトリップ。数ヶ月前に博多にいったばかりなので、なんかワクワクして観てしまったよ。まさに、のぞみ地所の九州支店付近こそ、私が行った場所。博多駅からドーム方面に路線バスで行くと、高速に乗っちゃうから、一瞬不安になるよね(笑)。もっとご当地臭を出したほうがよかったんじゃないかな。小町が夜の街に興味がないっていう設定なもんで、中州も屋台もいまいち出てこないもんね。彼らが電車を楽しんでいるのは、田舎ばっかで、九州らしさがよくわからんかったもん。
#”かろのうろん”に松山ケンイチの写真が貼ってあったけど、この撮影の時のかなぁ…。

森田芳光監督の遺作だが、これまでの作品とは雰囲気が異なる。おそらく、多くの人が、主人公二人の抑揚のない話し方に違和感を感じ、「なんだこりゃ…」と思った人は多いのではないか。でも、こういう話し方をする人、普通にいると思うよ。私は鉄道のことは何もわからないので、世の鉄道オタクの人たちが、この作品を好意的に観るか否かはわからない(登場人物の名前が電車の名前ってのも、一般人でもわかるレベル)。でも、好きなことを嬉々として語り合う姿は、“男の子”共通の性質だ。好感が持てる。

予告CMとかを見ると、鉄道オタクの恋愛事情…みたいな内容で好みじゃないなぁ…と思っていた。でも、実際に観ると、確かに恋愛がらみのシーンは多いが、全然主題じゃない。何を観せたいのかなぁ…って思っていたら、あれよあれよという間に、ビジネスよりの話になっていく。こりゃあ、社長シリーズとか『釣りバカ日誌』だ。鉄道で、『釣りバカ日誌』をつくったってことだな。
小町だけでなく小玉の仕事にも無理やり繋げていくが、この意外な展開、悪くなかった。でも、終盤は息切れしている(森田芳光の体調のせいか…)。さすがに、サッカー親父が、見合い相手の親だったってのはやりすぎだし、九州支社に初出社の時に、電車のことを喋った声の主もわからずじまいだし、ほころびがあちらこちらに。まあ、許せる範囲か。

松山ケンイチと瑛太なんていう、若手のホープを使うもんだから、変な期待を抱かせちゃってるだけ。いい感じのホンワカムービーだよ。森田芳光は、けっこう本気で、ポスト『釣りバカ日誌』を狙っていたんじゃないかと思う。
#大井町のキャバレー…。あんまり見ないな。飲み屋しかしらん。

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image2036.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:125分
監 督:橋本一
出 演:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、田口トモロヲ、波岡一喜、有薗芳記、竹下景子、石橋蓮司、松重豊、高嶋政伸、マギー、安藤玉恵、榊英雄、片桐竜次、桝田徳寿、カルメン・マキ、本宮泰風、吉高由里子、街田しおん、阿知波悟美、野村周平、新谷真弓、中村育二 他
ノミネート:【2011年/第35回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(大泉洋)、助演男優賞(松田龍平)、脚本賞(須藤泰司、古沢良太)、音楽賞(池頼広)、録音賞(室薗剛、田村智昭)、編集賞(只野信也)
コピー:何かあったら電話してくれ。

札幌・ススキノで、探偵稼業を営む“俺”。事務所を構えず、行きつけのBARで依頼の電話を待つ。いつものように、相棒兼運転手の高田とBARでオセロに興じていると、“コンドウキョウコ”と名乗る女から電話が入る。「南という弁護士に会い、去年の2/5加藤はどこにいたか聞いてくれ」という簡単な依頼だったため、訝しく思いながらも引き受けて翌日実行。しかし、その直後に拉致され、雪に埋められ、危うく死にかける。怒り心頭の探偵は、仕事とは無権系に、報復しようと考え、独自に調査を開始する。すると、謎の美女・沙織と、大物実業家・霧島にまつわる複数の殺人事件にぶつかり…というストーリー。

西田敏行はメインキャストなのかなぁ…、作風に合ってなさそうだなぁ…って思っていたら、早々に死んでよかった。西田敏行批判ではない。単に作品の雰囲気にあっていないというだけで悪意はない。で、実際、西田敏行や竹下景子、石橋蓮司など、壮年役者陣の演技のデキはいまいちだった。監督が演技付けるのを臆したのかな…。
小雪の演技は大方の予想通り。別格。この台詞まわしはどうにかならんのか…。あらゆる台詞が全部同じ抑揚ってどういうことやねん。もう、日本語が不自由な人ですか?と聞きたくなるくらいだ…。長い台詞を喋らせるのは失敗だったな。
#吉高由里子のフェイクはなかなかやるね。

正直、謎解きのレベルは、探偵物のアドベンチャーゲームのファミコンソフト程度だと思う。いや、ファミコンソフトだって、作家さんがシナリオ書いているので、バカにしたものでもないのだが。謎解き一本でずっと見せ続けるような作品ではないということ。でも、悪役が、バカ左翼からの転向組という設定は非常に良かったと思う(北海道新聞が一番売れてるバカ左翼の温床だからね)。

とりあえず、どんどんキャラクターを動かす。話がうまく動かなけりゃ、バキバキとアクションを差込み、ダレてきたら重要なキャラを殺す。稚拙な演出と思うかもしれないが、“魅せる”映画なんて、案外これが基本だったりする。

間違いなく、札幌の風景、雰囲気がそのまま伝わってる作品。北海道が舞台になってる映画はたくさんあるけれど、大抵、北海道ロケじゃなかったりするからね。すぐに違うってバレて興醒めされちゃうのに。予算をケチるところが間違ってるんだよね。ここまでしっかり全編ロケしてくれたら、褒めるしかない。映画を観て、ああ、あれはあそこだ…って、どこだかわかるところがすごい。若者が自首しにいく警察署も本物の警察署だし(ああ、また免許更新いかねーとな)。かなり人通りの多い所でのロケが多いところからみて、早朝ロケが多かっただろう。エキストラも大変だったろうなぁ。
「まだ、オートバイサーカスってやってるんか?」地元民しかわからん小ネタも多い。
札幌に旅行にくるときは、観てから来なよ、そう言える作品はめずらしい。雪祭りにくる人は、予習で。でも、この撮影のときから、札幌の様子、変わってるところ多いね。地下通路も北洋のビルも完成してるし。不景気といいつつ、結構再開発すすんでるな…と。

いやー、これは間違いなく、続編がつくられますな。って思ってたら、最後に第二弾製作決定だって。そりゃそうだな。内容のドロドロと裏腹に非常に愉快な作品。
#特急か、せめていしかりライナーにのれ!よ…と、JR使いはツッコむと思われ…。

 

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image1951.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:129分
監 督:園子温
出 演:染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、諏訪太朗、川屋せっちん、吹越満、神楽坂恵、田村圭子、光石研、渡辺真起子、モト冬樹、黒沢あすか、堀部圭亮、でんでん、村上淳、窪塚洋介、吉高由里子、西島隆弘、鈴木杏、手塚とおる、清水優、清水智史、 新井浩文、永岡佑、小林ユウキチ、麻美、今村美乃、遠藤雄弥、深水元基、玄覺悠子、矢柴俊博、新納敏正、ペ・ジョンミョン、翁長誠、吉田エマ、石川ゆうや、岸田茜、姉吉祐樹、大堀こういち、石垣光代、斎藤嘉樹、内田慈、木野花、小久保寿人、宮台真司、永井まどか 他
受 賞:【2011年/第68回マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)】二階堂ふみ、染谷将太

15歳の少年・住田祐一は、貸しボート屋を営む母親と暮らしている。しかし、母親からの愛情を感じることなく成長した祐一は、人生に夢を抱くことができず、誰にも迷惑をかけず普通の大人になることだけが望みだった。祐一は高校進学を考えておらず、卒業後は貸しボート屋を手伝って生きようと考えていた。そんな貸しボート屋の主意には、震災で家をなくした人が何人か集っており、ずっと年下の祐一と楽しく生活していた。祐一の同級生・茶沢景子は、他の男子とは雰囲気の違う祐一に惹かれており、彼に猛アプローチするが、祐一はそれを疎ましく思い忌避していたが、それでも少しでも距離が縮まっていくことに喜びを感じる景子だった。そんなある日、借金をつくって蒸発していた祐一の父親が戻ってくる。彼は金を無心しながら、祐一を激しく殴りつづけるのだった。やがて、祐一の母は別の男と駆け落ち。祐一は一人で生きていかねばならなくなるのだったが…というストーリー。

わざわざアクション監督をつけているくらいなので、たしかにアクションシーンは臨場感があった。でも、暴力シーンを観せられれば、だれでも血圧があがる。それが理不尽であればあるほど、その内容や質がどうであれ、人は反応してしまう。申し訳ないが、その血圧の乱高下は、演出のすばらしさのせいではなく、単なる人間の低レベルの生理反応である。本作はそんなシーンのオンパレード。まさかとは思うが、その単なる生理反応を、演出で観客の心を動かしたを思っているならば、大きな勘違いだと思う。簡単にいえば、血圧は上がっているけど心に響いてるわけじゃないよ…そう声を大にしていいたい。そんな気持ちになる映画。

原作では、震災は出てこないとのこと(というか震災前の作品)。さて、わざわざ、震災に見舞われた直後に、実際の被災地を撮影し、被災者をキャラクターとしたことに、どういう意味があるのか、どういう効果があるのか、そういう訴えかけがあるのか、私は非常に注視させてもらった。そりゃ、どういう使われ方をしているのか、注視して当然すしてるでしょ。現在進行形のことで、苦しんでいる人もいるわけだからね。

冒頭に担任が、“一つだけの花”という表現を引き合いにだし、主人公を励ますが、主人公はそれに抵抗する。ナンバーワンじゃなくオンリーワンってどっちも一緒でしょ、平凡でなんでいけないわけ?これが主人公・祐一の主張だ。そりゃ、生物としての存在意義を否定され続けるような環境で育ったら、とりあえず、ひっそり普通にいきることで精一杯だろう。それ以上を望んだら、内部的にも外部的にも、ロクでもないことになるだろう…という見識なのだ。
ただ、救いは、祐一が“平凡でないこと”=“人の役nたつこと”だと思っている点だろう。自分にはそんな大それたことはできない。そういう次元で僕は平凡でございます、何がいけないんでしょうか…といっている。まあ、途中で景子が指摘するように、自分で自分の枠を決めて苦しんでいるとはそういう意味だろう。

ラストシーンでは、のっぴきならない状況になった彼を、彼をずっと見つめつづけてきた彼女が、“一つだけの花”だからがんばれと励まし、彼もそれに泣きながら応える。
人間は、その成長の過程で無条件の無償の愛を受けなければならない(というか、受ける必要がある)。悲しいかな、そうでない人は相当数いるし、そういう人は自分の子供にも愛を傾けることは難しい。そんな負の連鎖があるのは事実。彼女が同じ匂いを感じ取ったんだろうが、彼にどんだけ邪険にされても近づいていく。最後は、その無償の愛にに応える。それだけが唯一の立ち直る方法だと…、それは判る。
でも、ラストで急に、まるで園子温が自己批判を始めたように思えて、気持ち悪くなってしまった。こんな殊勝なことをいう監督だったか?この人。

それと、ナンバーワンやらオンリーワンやらの価値観と何の関係が?
もっと、釈然としないのは、被災地が必要だったか?ということ。私は被災者じゃないのでわかりはしないのだが、なんか、被災者に失礼な気がしてしようがない。少なくとも、被災者・被災地を持ち出す意味があったとは感じられない。別に渡辺哲演じる元社長は、津波で資産を失う設定じゃなければ、話が成立しないということはない。普通に世の中にある、大きな事故や、不幸なできごとでも問題はない。
大体にしてこの舞台になっている土地はどこなんだ?被災者が野宿しているような場所が関東ってことはあるまい。石巻の被災者ってことは、それほど遠くない近隣の町ってことでいいのか?でも、誰一人、東北訛りの人はいないぞ。そんな馬鹿なことはあるまい。あえて標準語のみという演出か?でも、そうだとしてどういう効果を狙っている?不明。
被災者が、ボート屋を経営してるってどういうことだ?ん?もしかすると、主人公は被災者じゃないのか?被災地を歩いているシーンは想像なのか?もう、なんだかわからない。無理やり震災を絡めて、破綻してるじゃないか。
これで元気付けられた被災者がいるとは思えないし、ましてや最後の茶沢のはげましが、被災者への励ましになっているとは到底思えず…。本作は震災の描写がなければ、それなりの良作だったと思うのだがなぁ。

こういう、必要のない被災地をさしこみ、自分の主張の材料にするのって関心しない。もしかして園子温って、世の中の“バカサヨク”っていわれるような人間と、おんなじ思考の人なのかな?はっきり不快だ!と感じるよりも、もっと気持ち悪い何かが沈殿物としに残る感じ。

 

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image1965.png公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:102分
監 督:バー・スティアーズ
出 演:ザック・エフロン、レスリー・マン、トーマス・レノン、ミシェル・トラクテンバーグ、スターリング・ナイト、メロラ・ハーディン、マシュー・ペリー、タイラー・スティールマン、アリソン・ミラー、ハンター・パリッシュ、ブライアン・ドイル=マーレイ、ジム・ガフィガン、ローナ・スコット、ニコール・サリヴァン、マーガレット・チョー、ラリー・ポインデクスター、カテリーナ・グレアム、メリッサ・オードウェイ、アダム・グレゴリー、ジョジー・ローレン、トミー・デューイ、ティヤ・シルカー 他
ノミネート:【2010年/第19回MTVムービー・アワード】男優賞(ザック・エフロン)
コピー:37歳から、ある日突然17歳に!
 人生2度目のハイスクール・ライフが、彼にくれたものとは──?

1989年、17歳の高校生マイク・オドネルは、将来を嘱望されあバスケットボールのスター選手。この試合でスカウトの御眼鏡に適えば奨学金で大学進学が決定する。そんな運命の試合開始前、恋人のスカーレットが現れ、マイクに妊娠していることを告げる。マイクの将来を考えて、去ろうとしているスカーレットを見て、彼は試合を放棄して彼女の元へ。彼女と人生を歩むことを選択する。それから20年、妻とは不仲になり家から追い出され、子供からも相手にされない日々。しばらく親友ネッドの家に居候していたが、とうとう離婚訴訟までおこされてしまう。おまけに、期待していた昇進も見送りになったことで上司に反抗しクビになってしまう。失意の中、車を走らせていると、老人が老人が橋の欄干から飛び込むところを目撃。助けようと橋の下を覗くと、不思議な渦の中に引き込まれてしまう。命からがらネッドの家に戻ると、マイクは自分が17歳の体に戻っていることに気づき…というストーリー。

所詮、アイドル映画だろうとタカをくくっていたらどうしてどうして。侮るなかれ、なかなか見ごたえのある作品だった。

在学中に妊娠が発覚して“愛に生きる”ことを選択したマイクだったが、今では散々な生活。別に散々な目にあったとそういうことではなく、やっぱりあの妊娠がなければ、自分はスター選手だった“はず”なのに…という思いをずっと引きずったまま20年を生きてきて、うまくいかなければ全部そのせい…といわんばかりの態度を家族に取り続けていたというのだがら、うまくいくはずがない。そうこうしているうちに離婚訴訟までおこされる。自分は妻も子供愛しているはずなのに…、そう確信しているのだが、いざ向き合うとうまくいかない。なんとか挽回しようとしても、どんどんドツボにはまっていく。
いやぁ、人間、初老の声を聞こうかという頃になると、多かれ少なかれ同じような経験はあるだろう。ああ、あのときこうしていれば、あれを選択していれば…、でも実際はそんなタラレバに何一つ意味はない。だって時間は戻らないんだもん。なかなか身につまされる展開だな…とストーリーに魅入りはじめたところで、スポ~んと“漫画”かよ!ってノリで若返ってしまう。いや、そのまま人生の悲哀を感じさせてくれるストーリーのままでもおもしろそうだったのに…ってくらい、冒頭の入り方はいい感じだった。

次は若い姿で転校生として学校に潜りこむ。これで、娘と息子の置かれたヒドい状況が判明、そして妻の本音を聞くことができてしまう。どちらかというと、娘と息子のヘルプにまわるシーンがすごく面白くて、この展開でもまた魅入ってしまう。これ以上は説明しない。是非観てほしい。

サイドストーリーの愉しさも秀逸。エルフ語って~~~(笑)。
#こういう映画LOVEな演出は大好きだ。

(ネタバレ)
ザック・エフロンが主演ということで、ターゲット層がティーンだったせだと思うが、元サヤに収まるオチになる。高校在学中に妊娠して結婚した夫婦が、結局うまくいきませんでした…というのを、若い世代に見せたくなかったのかもしれない。でも、それは作品の足枷になったと思う。私は、夫婦がそれぞれの道を歩むことを“スッキリ”納得して選択し、子供たちも自分で歩くことができるようになる…という内容のほうがよかったと思う。もしその展開だったら、人生を考えさせる傑作になったと思う。難点はそれだけ。

 

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image2005.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:118分
監 督:原田眞人
出 演:役所広司、樹木希林、宮崎あおい、南果歩、キムラ緑子、ミムラ、赤間麻里子、菊池亜希子、三浦貴大、真野恵里菜、三國連太郎 他
受 賞:【2011年/第35回モントリオール世界映画祭】審査員特別グランプリ
コピー:たとえ忘れてしまっても、きっと愛だけが残る。



1959年。小説家の伊上洪作は、父・隼人の見舞いのために両親が住む湯ヶ島を訪れていたが、思っていたよりも容体が悪くなく、仕事も残っていたために早々に東京の家に戻ことに。帰り際、母・八重の異変に気づきつつも帰宅。自宅では、家族が洪作の新作小説にせっせと検印をしている最中だった。洪作は、幼少期に自分だけが両親と離れてくらしてたことがあり、“母に捨てられた”という思いが拭えないまま成長したが、それが彼の作家としての成功に大きな力となってもいた。しかし、そのせいで、娘たちへ干渉が過剰となり、娘たちとの関係はうまくいっておらず、特に三女・琴子は反抗期の真っ盛り。検印を手伝わない彼女に、洪作は激昂し、ますます関係は悪化してしまう。その夜、持ち直したかに見えた父の訃報が入る。その後、洪作の妹たちが母・八重の面倒を見ていたが、あまりに物忘れがひどくなるばかり。ある日、妹・妹・志賀子の夫が交通事故で入院することになり、八重を洪作が引き取ることになるのだが…というストーリー。

ボケた母親との生活を綴った、どちらかといえば緩いお話にもかかわらず、何故か作品全体に緊迫感が漂う。なかなか惹きこまれる。これは編集の技だと思う。言葉で表現するのがとても難しいのだが、観ている側が予想する場面展開のタイミングを微妙にはずして緊迫感を作っている。特に、母・八重が登場するシーンではあからさまに、異質な空気感を演出している。市川崑作品のそれに通じるものがある。これが、原田眞人監督によって生み出されているのか、息子の原田遊人によって生み出されているのかが定かでない。私は、賞するに価する仕事だと思う。

子供の頃に母に捨てられた…と思っている作家が主人公。井上靖の自伝的小説とのこと。その、否応なしに大海に投げ出されたような記憶が、作家としての感性を育んだという設定。でも、どういう作風なのか、作中では描かれていないので、どういう影響を受けたのかよくわからず(井上靖を知ってりゃ自明だろ…といわれるかもしれないが、この映画はこの映画なので、この作品の中で描ききるべきかと)。

凄く気になるのが、家族全員が八重のことを、非常に暖かい目で見守り、接しているという点。同じ言葉を繰り返す、偏執して譲らない、俳諧する、おかまいなしに悪口をいう…などなど、ありがちな痴呆老人の姿なのだが、全編通してこの姿しか出てこない。三人娘がおばあちゃんと会話しているシーンなど、ボケたおばあちゃんを半分馬鹿にしているようで、人によっては不快に感じるかも…と思うほど。実の娘にいたっては、奇行の末に使用人よばわりで、不快な思いしかしていない。でも、みんなが八重のこと心配し、亡くなった際には、かけがえのない人を失ったかのように号泣するのである。
いや、老人を大事にすることは良いことだし、老母を敬うことがおかしいといっているのではない。でも、ここまで苦労させられているのに、彼らがやさしく見守り、労力を傾けるのは理由があるんだろう?きっと、ボケる前はいいおばあちゃんで、いい交流があったんだろう。それを描くべきなのだ。娘はまだしも、孫の琴子がそこまで祖母に肩入れするには、絶対にそう思うに至る理由があるはず。で、それら女達と八重のいい関係と、子供の頃に母に捨てられた…と思っている息子とのぎくしゃくした関係が対比されることこそ、本作の演出上重要なのではないか? と私は思うのである。

(ネタバレ)
おぬいばあさんに預けられている間に、八重が息子の様子を伺いに足を運んでいたことを知り、母の愛を確認する…という流れなのだが、どうもここがきちんと描ききれていないのが気になる。八重は台湾からはるばる沼津まで様子を見に来ていたということか?それとも台湾に渡る前か?それとも台湾から戻った後に、すぐに息子を引き取れずに、見守るだけの時期があったのか?どれなのかさっぱりわからない。原作では、そのあたりが描かれているのだろうが、本作では、結果的に消化不良になっているのが残念。よって、洪作が八重への感情を劇的に変化させるほどのものなのか否か、ピンとこないため、最後のトラックで徘徊→渡米から離脱→海岸で待ってる…の流れもぼやけてしまった。
おばあちゃんの思い出を、作品の中の家族と、我々観客が共有することができなかった。これは、いまいち本作が心に響かない原因である。編集の良さとシナリオの詰めの甘さのギャップが、非常に残念な作品。
#娘の彼氏であり元付き人である人間を、コンクールで選出するって、身内エゴも甚だしいな。私は下品…と思ってしまったのだが…。

宮崎あおいは、幼い時期から大人になるまで、見た目に違和感がない便利な役者だと思う。でも、服装が変わっただけで、演技の上で成長を演じることはできていない。個人的にあまり好きではないからかもしれないが、漂う既視感が、作品に没頭するのを邪魔する。

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プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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