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公開年:2008年
公開国:日本
時 間:119分
監 督:北野武
出 演:ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬、伊武雅刀、大杉漣、大森南朋、筒井真理子、吉岡澪皇、円城寺あや、徳永えり、仁科貴、寺島進、六平直政、ふせえり、大林丈史、不破万作、ビートきよし、大竹まこと、三又又三、林田麻里、アル北郷、お宮の松、松坂早苗、丸岡奨詞、風祭ゆき、武重勉、山野海、こばやしあきこ、須永慶、諏訪太朗、ボビー・オロゴン、電撃ネットワーク 他
コピー:スキ、だけど。スキ、だから。
夢を追いかける夫婦の物語。。
裕福な家に生まれた真知寿は、絵を描くことが好きで、画家になることを夢見ていたが、父の会社が倒産し、立て続けに両親が自殺し環境が一変。叔父の家に預けられ、辛い少年時代を送るが、画家になるという思いだけで生き抜く。しかし大人になっても、一向に画家として芽は出ない。そんなある日、幸子という女性が、絵を描くことしか知らない真知寿に惹かれ、やがて2人は結婚。真知寿の夢は夫婦の夢となり、二人でアートの道を進んでいくのだが…というストーリー。
北野作品は、『座頭市』と『監督・ばんざい!』くらいしか観たことがない(それもTV放映)。どうも興味がそそられなくて、DVDレンタルしようとも思わないタイプの監督。漂う独特の暗さ…というか、なにか自分とは合わないようなタチの悪さみたいなものを、無意識に感じているみたい。
でも、おそらく喰わず嫌いなんだろう。最近、おすぎと淀川長治の映画対談の本を読んで、『あの夏、いちばん静かな海。』をものすごく褒めていたので、ちょっと興味が湧いている。
北野作品は、日本での興行はメタメタな場合は多いけれど、ヨーロッパで一定の評価を得ているので、コンスタントに作り続けられている。そんな状況の中で、「こんなのも作っておきたいな…」的なノリで作ったような本作。世の監督たちは、ひとつコケれば次は無い…くらいの一球入魂でやってると思うのだが、その覚悟に著しく欠けているように見えるのは、私の穿った見方だろうか。それを楽しめるほどコアなファンではないので、正直、最後まで観るのは辛かった。
でもね、私ごときが言うのもなんだけど、北野監督という人のセンスはまともだよ。娘がなんで死んだかを説明しなかった。凡人ならぜったいセリフにしちゃうものね。
冒頭で流れるアニメ“ゼノンのパラドックス”は本編の内容と何が関係あるのか、解ったような解らないような。ゼノンのパラドックスは、私も初めて聞いたときは、“不思議!”と頭を混乱させたものだけれど、後から考えれば、追いつくまでの時間をひたすら細分化しているだけのことで、詭弁中の詭弁でしかない。芸術なんてもっともらしいことを言っているだけ。“もっともらしい”だけなのに、世の中ではまるで真実のように扱われる。それも往々にして、判ってない人間ほど、それを真実と吹聴する。
パンと芸術どちらが人間にとって必要かという問いかけが、本作の随所に散りばめられている。最後には、最大の理解者である幸子までもが、現実から乖離し続ける真知寿を「人間じゃない」といって突き放す。でも、一度、アートというあってもなくてもいいモノにとりつかれてしまうと、どうしようもなくなってしまうもの。実際の北野監督も、興行的な成功と自分が満足する芸術性との乖離に引き裂かれそうになっているということだろうか。
でも、そこは、“喰わなきゃ死ぬ”人間が元々持っている業。社会の中でしか生きられない社会性動物の性。大概の人間は、弱いので(肉体的にも精神的にも)、いち早くそこに妥協点を見つける。でも、真知寿はその妥協点を見つけることはない。まるでダメ人間、弱い人間のように見えるけど、実は、それに折り合いとつけないくてもなんだかんだ生きていける強い人間なのだ。
中途半端に芸術家ぶって、真知寿に共感できるわ~なんてことは口が裂けても言えない。そんな強い人間なんて存在し得ないのだ。まるで神。最後の包帯姿が顕わしているように、芸術とは異形の神なのだ。人間は幸子のように、ただそれに寄り添うことができるだけの存在なのである。
笑える作品でも、スッキリする作品でも、泣ける作品でも、感動できる作品でも、芸術性の高い映画でもない。ソフィストが、自らの言葉か詭弁でることを重々承知の上で語った、“詭弁映画”である。それを聞いた上で、それでも興味が湧いた人だけ、観ればいいでしょう。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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