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公開年:2009年
公開国:日本
時 間:127分
監 督:西川美和
出 演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、松重豊、岩松了、笹野高史、中村勘三郎、香川照之、八千草薫 他
受 賞:【2009年/第52回ブルーリボン賞】監督賞、主演男優賞(笑福亭鶴瓶)、助演男優賞(瑛太)
【2009年/第33回日本アカデミー賞】最優秀脚本賞、最優秀助演女優賞(余貴美子)
コピー:その嘘は、罪ですか。
数年前、街から遠く遠く離れた無医村に、医師・伊野治が着任し、それ以来、村人から絶大な信頼を寄せられていた。そこに、東京の医大を卒業した相馬が研修医としてやって来る。僻地の状況にはじめは戸惑っていた彼だったが、献身的に村人に接する伊野の姿に感銘を受け、充実した研修師生活を送るようになり、研修後にはこの村に着任したいとまで思うまでに。そんなある日、伊野は、一人暮らしの老婦人かづ子を診療することになったのだが、東京で医師をしている娘に病気のことを知られたくないので、秘密にしてほしいと頼まれる。そして、それを引き受けてしまうのだが…というストーリー。
なんか、言っちゃっていいのかどうかわかんないから、とりあえずネタバレ注意にしておく。
劇場公開時から、ニセ医者の話ってことは公然だった気がするんだけど、違ったかな?多くの人がその点については知った上で観たと思うけど、知っていても、ぐいぐいとストーリー引き込まれたのではなかろうか。この監督、なかなかの力量と評価してよいかな…と一瞬思うが、演出というよりも、個々の役者の演技がすばらしかったおかげ…という気がしないでもない。余貴美子や香川照之、八千草薫は言うまでもなく、笑福亭鶴瓶や瑛太も非常にハマっていると思う。
正直に言うと、私には、この映画が最終的に何を言いたいのかよくわからなかった(いや、もっと正確に言えば、どうしたいのかがわからなかった)。
監督が、僻地の医療現場を取材して、何が大切なのかを感じ取り、「あれ?本当に大切なことって医者の資格とか技術とかそういうのと無関係なことじゃないの?」って気付いたのがアイデアの発端だったかもしれない。それはなんとなく理解できる。でも、その視線(というか意見の表明)だけじゃ映画にはならないから、仕掛けを作り、それがどう破綻していき、騙されていた人はどう受け止めるか…を表現し、その過程を通して浮き彫りにしなくてはならない。そうやって、別の角度から光を当てて、伝えたいことを浮き彫りにすべきなんだけど、“偽医者なのにみんな大満足していた”って演出で、ヒネリもなしに直球で語り尽しちゃってると思うのだ。
刑事に対して、村人が伊野のことを悪くいったり、なんかおかしいとは思ってましたという相馬の発言は、社会的な建前で、困惑しつつも心の奥底ではそう思っていないのは、役者さんたちの微妙な演技でよくわかる。あんただって本当に刑事なのかわかんないでしょっていう村長の台詞がすべてだ。でも、それって、やっぱり、「本当に大切なことって医者の資格とか技術とかそういうのと無関係なことじゃないの?」っていうはじめのアイデアを延々と補足しているだけにしか見えない。やっぱり、ヒネリもなく直球である。
さらに、多くの人が戸惑ったのは、伊野が悪人なのか否かっていう部分だろう。おそらく医者を目指しいたけど、どうしてもなれなくって、でも先生と呼ばれたかったのか…とか、いやいや、はじめは単に金目当てだったんだけど、次第に…とか、色々考えた人が多いだろう(そこをボヤかしたのは意図的かもしれないけれど)。偽医者をやっていくうちに、他者に施すことの素晴らしさに目覚めた男…と判断することもできるけど、最後に病室を訪れたのは、彼女に施すための行動ではなく、どちらかといえば贖罪という気もするし。とにかく、伊野に関しては何かキャラがボケている気がしてならない。
また、警察の手法があきらかにヘンテコでリアリティがなさすぎだし、行方不明になったあとに田んぼに飛び込む瑛太の行動とかいまいちピンとこなかったり、思い返しても「あれってやっぱ変じゃね?」って思うところが散見される。でも、これが小説だったら、気にならずに腑に落ちるんだろうなとも思う。台詞の応酬の面白さはすばらしく、実に白眉な才能だと思う。でも、立派な小説家なのかもしれないけど、その才能に映画監督として追いついていないのかもしれない。うん、そう。“映画”としての部分が、納得いかないってことなんだなぁ。
色々文句はいったけど、軽くはお薦めしておく。人生に答えはない…ってくらいの達観した心持ちで観れば、それなりに満足できるはず。社会派作品として観ると肩透かしをくらうと思う(はじめのアイデアは、とてつもなく社会派な視点だったのにね)。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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