[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:リー・タマホリ
出 演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、トリー・キトルズ、ピーター・フォーク、ホセ・ズニーガ、ジム・ビーヴァー、マイケル・トルッコ 他
コピー:彼には見える、2分先の未来が──
世界を脅かす核テロリズム。政府はたった一人の男が持つ、予知能力に全てを賭けた。
2分先の未来を予知できる超能力者のクリスだったが、その能力を知られないようにベガスで売れないマジシャンとして暮らしている。しかし、2分先しか見えないはずなのに、美しい女性と出会うイメージが、時折クリスの脳裏を支配し、彼はその出会いの場面のレストランで、当ても無く彼女を待つ日々を繰り返していた。そんなある日、FBI捜査官のカリーが現われ、テロリストに奪われた核兵器の捜索に力を貸して欲しいと依頼に訪れる。面倒に巻き込まれたくないクリスはと要請を断り逃げ回るが、そんな折、レストランであのイメージの女性が現れるのだった…というストーリー。
2分先が見えるという設定は、まあ良しとしよう。
でも、その発動条件は何か?見よう!と思うことか?それともずっとパラレルで見えている状態なのか?
見ようと思うと、その時点から先の2分が始まるのか?いや、それなら見終わった後に2分先の出来事が始まっちゃうから避けられない。ってことは、2分先の出来事が、ぐわーっと一瞬で把握できるってことか?そうじゃないと変だよね。
でも、うまくいかなかったら何度もやり直すシーンがあって、まるで時間が戻っているようなんだけど。テロリストを追い詰める工場らしき場所では、分身の術的な感じで、間違いなく時間をやり直してトレースしているイメージ。なんか、先が見えているのとはちょっと違うんじゃないかな。演習的に。はっきりいってSFとしてギミックが変なんだよ。だからつまんないの。
2分先は見えたところで、その程度じゃぁどうしようもないことが世の中にはいっぱいあるわけで、その制限をどう乗り越えていくか…それがこのアイデアの醍醐味だと思うのだが、描ききれていない。さらにリズに関してだけは、その制限すら外れてしまうって、2分の制限が全てにおいて無意味じゃん。
おまけに、なんでFBI捜査官が彼のことを知り得たのか、発端がやっぱりわからない。探し当てようがないと思うんだけど。
ちょっと考えると荒唐無稽なことばかりで、愉しみようがない。アクションは中途半端だわ、オチはすっきりしないわ、もうクソ映画である。久々に無条件でつまらない映画。お薦めしない。
負けるな日本
公開年:1957年
公開国:日本
時 間:125分
監 督:黒澤明
出 演:中村鴈治郎、山田五十鈴、香川京子、上田吉二郎、三船敏郎、東野英治郎、三好栄子、根岸明美、清川虹子、三井弘次、藤原釜足、千秋実、田中春男、左卜全、藤木悠、渡辺篤、藤田山 他
陽も当たらず荒れ果てた棟割長屋に、人間らしい生活をすることを諦めた、長屋と同じようにボロボロな人間達が住んでいる。病気で余命いくばくもない妻を抱え始終恨み節ばかり言っている鋳掛屋。本当かどうかもわからない過去の悲恋話で涙する夜鷹の女。わずかなお金をすべて博打につぎこみ斜に世の中を眺める男。アル中でろれつの廻らない元役者。元は御家人だと吹聴する“殿様”とあだ名される男。男気はあるものの泥棒で日銭を稼ぐ捨吉。彼らはみじめさを通り越し、達観したような諦めを醸し出していた。ある日、そんな長屋にお遍路の嘉平老人がやってきて、彼らに色々と声をかけていくのだった…というストーリー。
読んだことはないのだが、ゴリーキーの『どん底』が原作ということで、実にに社会主義的視点に溢れている。溢れすぎていて鼻につくほどだが、多種なキャラたちのありあまる人間臭さで、中和されている感じ。
貧困長屋を舞台にしてグランドホテル形式的に展開していくんだけど、他の黒沢作品にあるようなダイナミックな主筋はない。それがかえって新鮮。
お遍路の格好した左卜全演じる嘉平が、長屋(っていうか共同生活場みたいだけど)に住む人々に色々と声をかけて、ちょっとだけ人々の考え方を変えて希望を与えていく。でも、最終的には誰一人幸せにならないってのがとても気に入った。
ゴーリキーが生きた時代のソ連が標榜している、資本主義の末路みたいなものが、一周まわって今の世の中に通じるものとして表出したような、一種の奇跡を感じてしまう。ゴーリキーとしては社会主義的観点で宗教批判しただけかもしれないが、現在としては観方が少し異なってくるか。現実から目を背けてその場を安心したとしても、その先には何も無い…理詰めで考えれば重いテーゼなんだけど、現実社会を生きていくうえで、思い通りにならないことや、理不尽な場面には少なからず遭遇するわけで、それに向き合ったからって絶望的になって“世の中が悪い”って言われてもね…。
やっぱり、戦後の学生運動や社会主義運動は、思想が若いというか夢想の域を出ていないのかな。目先の苦難や問題を愚直に解決していくしかなくて、それをコツコツやっていくのは非常につらく根気のいること。だけど、政府が悪い企業が悪いっていく、もっともらしいけど簡単な答えに喰いついちゃった、“逃げた”人種だと私は思う。
そして、そういう考えを持って学生運動やっていた世代がつらっと転向して、日本の経済界を牛耳ってたりするんだけどね。そういう人たちが、これから発揮しはじめる“老害”が怖いなぁ(って、元学生運動の闘士的な人が、もっともらしいことを吹聴しはじめてたりするんだけどね)。
作品的な話の戻る。落語みたいにスパン!と落として、余韻を残す。ダラダラとスタッフロールを流すのを嫌うセンスが、今の監督たちに欲しいね。
「どんな悪党でも誰かに好かれている。それもいなくなったらおしまいってこと」なんてセリフは、現代社会では重く響きますな。
ワタクシ的には数ある黒澤作品の中では、かなり上位かと。『七人の侍』やらそういうメジャーどころに目がいってしまうけれど、今こと観るべき作品かもしれない。お薦め。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:イギリス、アメリカ
時 間:146分
監 督:デヴィッド・イェーツ
出 演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、トム・フェルトン、レイフ・ファインズ、ブレンダン・グリーソン、リチャード・グリフィス、ジョン・ハート、ジェイソン・アイザックス、ヘレン・マックロリー、ビル・ナイ、ミランダ・リチャードソン、アラン・リックマン、マギー・スミス、ティモシー・スポール、イメルダ・スタウントン、デヴィッド・シューリス、ジュリー・ウォルターズ、ボニー・ライト、ジェームズ・フェルプス、オリヴァー・フェルプス、サイモン・マクバーニー、ジョージ・ハリス、イヴァナ・リンチ、マシュー・ルイス、マーク・ウィリアムズ、ハリー・メリング、ナタリア・テナ、クレマンス・ポエジー、デイヴ・レジーノ、ワーウィック・デイヴィス、フレディ・ストローマ、ピーター・ミュラン、ガイ・ヘンリー、ドーナル・グリーソン、アンディ・リンデン、リス・エヴァンス、デヴィッド・ライオール、マッティエロック・ギブス、ニック・モラン、ジェイミー・キャンベル・バウアー、キャロライン・ピクルズ、ミシェル・フェアリー、アーバン・バジラクタラ、レイド・サーベジヤ、フランク・ディレイン、ジム・ブロードベント、マイケル・ガンボン、トビー・ジョーンズ 他
ノミネート:【2010年/第83回アカデミー賞】美術賞(Stephenie McMillan:セット・デザイン、スチュアート・クレイグ:プロダクション・デザイン)、視覚効果賞(Nicolas Aithadi、Christian Manz、ジョン・リチャードソン、ティム・バーク)
【2010年/第64回英国アカデミー賞】メイクアップ&ヘアー賞、特殊視覚効果賞(Christian Manz、Nicolas Ait'Hadi、ジョン・リチャードソン、ティム・バーク)
【2010年/第16回放送映画批評家協会賞】メイクアップ賞、視覚効果賞
ヴォルデモートの秘密である“分霊箱”を探し出すため、ホグワーツから離脱し旅に出たハリー、ロン、ハーマイオニー。誰の協力も得られない中、わずかなヒントを頼りに分霊箱探索を進めるが、一向に目的に近づく気配がなく、次第に3人の絆に亀裂が入り始める。その間に、魔法省やホグワーツは、事実上ヴォルデモート勢力の影響下に置かれ、死喰い人たちの追手が3人に迫っていた…というストーリー。
原作は4巻から二分冊になったものの、映画はそのまま1本でギュっとまとめており、どうやったら面白くなるかというよりも、後のシリーズに影響が無い様に切れるところはどこか…という、ある意味大人の都合に終始していた感じ。
確かに、よくもまああの上下巻をまとめましたね、という感じではあったけれど、原作を読んでいなければ、細かいところに気付くはずもなく、主筋を把握するのが精一杯だろう。
私としては珍しく原作を読んでいて、且つ律儀に劇場に足を運んでいたのだが、パート4の“職人芸”を目の当たりにて、もうDVDでいいかな…って気分になってしまい観にいっていない。本作も同じく。
前にも書いたけど、ディレクターズカット版として、パート4~6は3時間半くらいに編集しなおして、もうすこしストーリーを把握できるようにすべきだろう。スターウォーズのエピ4~6と同じように、新版のDVDで儲けられそうだね。
で、本作は、もう最後で後の繋ぎを考える必要もないし、別の大人の事情で二本に分けられたので、のびのびと丁寧に演出している印象。前作までのダイジェスト版を観せられているような感覚はない(それでも、フラーの結婚のくだりなんかは、サラっと流されちゃったんだけど)。
まあ、二本に分けられたのも、ドビーという区切りがあって、それなりに盛り上がりを作れたおかげなんだけど。そして、ここで区切ったってことは、パート2はバトルモード全開ということだね。
で、6作目で登場した分霊箱という概念を把握できているか否かが大事なのだが、如何せんパート6で説明不足だったのとダンブルドアの死に目がいってしまったことで、いまいちピンときていない人が多かったにちがいない。もう、雌鹿の精霊が誰の精霊か?なんて、そこに意識が向かってる人なんか少ないでしょうね。そのレベルの細かい点が見えているかいないかで、愉しみの度合いは倍くらい違うのだけれど。
パート2公開前に、これまでの振り返り番組でもTVで放映するか、着目すべきポイントをおさらいするDVDでも、レンタルすればいいと思う。私が配給会社ならまちがいなくやる企画。
まあ、途中経過なので、がっちり評価する必要もない。とにかくパート2を観る前に、おさらいをすることをお薦めする。GWだからこれまでの7作をまとめて借りて、ハリポタナイトでも愉しむとよい。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:アメリカ、イギリス
時 間:140分
監 督:リドリー・スコット
出 演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、マーク・ストロング、ウィリアム・ハート、マーク・アディ、オスカー・アイザック、ダニー・ヒューストン、アイリーン・アトキンス、ケヴィン・デュランド、スコット・グライムズ、アラン・ドイル、レア・セドゥー、マックス・フォン・シドー、マシュー・マクファディン、ダグラス・ホッジ、ロバート・パフ、ジェラルド・マクソーリー、サイモン・マクバーニー 他
コピー:彼は闘いのカリスマ。その生き様は伝説。
12世紀末。獅子心王リチャード1世が率いる十字軍に参加していた弓の名手ロビン・ロングストライド。イングランドへの帰還のさなか、フランス軍と交戦中にリチャード王が死亡すると、褒賞は得られずと判断し部隊から離脱。仲間とともに故郷を目指すが、途中で、リチャード王の王冠を持ち帰る使命を帯びたロバート・ロクスリーが待ち伏せされ殺される現場に遭遇。瀕死のロバートから、王冠の返還と自分の剣を父ウォルターに返却するよう頼まれたロビンは、ロバート・ロクスリーになりすましイングランドへ帰還。王冠をリチャード王の母に返したあと、ノッティンガムへ。そこには、ロバート・ロクスリーの父である領主ウォルターと、夫の帰還を待ちわびる妻マリアンがいた。ロビンは、相続人不在による領地の没収を恐れるウォルターから、そのままロバートとしてこの地に留まってほしいと依頼される。権力には特段興味はなかったが、ロビンの生い立ちを知るそぶりを見せるウォルターの口ぶりに、それを聞き出すために承諾をする。一方、兄の死により新王となったジョンだったが、重用していたゴドフリーが密かにフランスと通じており、その姦計によって民衆の反発が発生し、イギリスは内戦寸前となってしまい…というストーリー。
アクション映画にカテゴライズされることが多いみたいだけれど、限りなく歴史劇。まだ、フォーカスが当たっていない時代やキャラが存在するイギリスの歴史、奥が深いな。
非常に楽しめたので、内容については、あまり言及したくないが、簡単にいうと“THE 民主主義の教科書”。
“自由”とは「人間であれば生まれたときから平等に付与されているもの」と教科書的にはそういうことだけど、それはあくまで方便。それが方便だということに気付かない奴らは歴史を学んでいないから。そういう輩は“自由”と“勝手”に区別が付かない。意外にもそういう考え違いをしている輩は教師に多く、その教師から学んだ若い世代にも多い。平然と“金儲けをして何が悪い”と言うのもその眷属である。
じゃあ、“自由”ってのは何か?意外と思うかもしれないが、自由とは“自由”単独では存在しえない。自由を阻害する何かがあって、その阻害から逃れることを自由というのだ。
自由を阻害するもの、本作でいえば王政である。打倒すべきものが存在する間、または打倒すべきものの記憶が明確な間は、自由とは何かをリアルに感じられ、自由を謳歌できる。しかし自由を獲得した後、世代をいくつか重ね、自由を阻害するものの記憶が薄れると、“自由”はもっともらしく権利を主張するための道具としてだけ存在するようになる。そう、平和が自由を喪失させるという、驚くべき事態が生じる。そして、今がその時代である。
そういう意味で、本作は観る価値がある。自由とは何か。自由のために人はどうあるべきか。そして今、本作のジョン王に相当するもの、つまり闘うべき相手は何なのか(東電でも現政府でもないだろう)。
『グラディエイター』よりも無骨で且つ意味のある作品。リドリー・スコットとラッセル・クロウは、さらなる高みを目指そうとしているように見える。本当にそういう意図で製作しているのならば、無条件に感服する映画人たちである。
子供の頭のリンゴを射るイメージしかない人。まったく違う話なので、そのイメージは捨てるように。強くお薦めしたい。休日にじっくり観たい作品。
負けるな日本
公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:112分
監 督:ジェイ・ラッセル
出 演:アレックス・エテル、エミリー・ワトソン、ベン・チャップリン、デヴィッド・モリッシー、ブライアン・コックス、マーシャル・ネイピア、ジョエル・トベック 他
コピー:ネス湖に眠った、ひとりぼっちの二人の想い “一枚の写真”に隠された、壮大な感動秘話
第二次大戦下のスコットランド。少年アンガスは、父が出征したあと、母・姉と3人で父の帰りを待っている。ある日アンガスは、ネス湖で青く光る不思議な石を見つけ、家に持ち帰ると、謎の生物が孵化する。アンガスはその生き物に“クルーソー”と名付け、内緒で育てるのだった。やがて、家が軍隊に接収されたが、軍人達に見つからないように、クルーソーを育て続ける。下働きにやってきた男から、ケルト人に古く伝わる“ウォーター・ホース”の伝説を聞き、クルーソーがそれであるとアンガスは、もう家で育てるのが難しくなるほど大きくなったクルーソーを仕方なくネス湖へ放すのだった。その後も周囲の大人たちの目を盗んでネス湖を訪れ、クルーソーと会い続けるのだったが…というストーリー。
原作者は『ベイブ』の作家。まさかこんなつまらない作品を映画化しようなんて思わないはずなので、おそらく映画化の段階で台無しにしてしまったんだろう。
『ショコラ』『シッピング・ニュース』の脚本家、『ロード・オブ・ ザ・リング』の映像スタッフでも、こうなってしまう。やはり映画というのは監督の強烈な個性が、すべてを左右するのだな…、映画っていうのは監督の創作物なのだな…、と改めて強く認識させられた作品。
元はスコットランドの伝説上のケルビーという幻獣がモチーフとのこと(ウィキペディアを見ちゃった)。でも、それって馬の姿で尾っぽが魚の尾で藻のたてがみとのこと(まさに幻獣という姿)。これをネス湖のネッシーと重ねたのが、本作の敗因なのでは?ネッシーといえば恐竜の生き残りか?という話があったわけで、本作に出てくる“クルーソー”も魚竜そのもの。しかし、尾びれの形状を見ると、恐竜や魚竜のたぐいではなく、現存生物とはまったく違う系統の生き物(あおの尾びれだと、6本足ということになる)。幻獣ならもっと幻獣らしい特徴をそなえればいいし、魚竜ならちゃんと魚竜にすればいい。この中途半端さが、どのレベルのファンタジーなのかをうやむやにして、観ている側の心構えを阻害していると思う。
舞台を第二次世界大戦下のイギリスにしたのはいいアイデアだと思う。切迫する状況でありながら、且つ物理的にはあまり戦火の影響をうけていない場所、つまり地獄と天国が共存する場所でだから。しかし、子供の成長物語を見せたいのか、戦争の愚かさを主張したいのか、純粋なファンタジーを見せたいのか。もちろんそれらを複合してもいいのだが、それも中途ハンパ。
特に、軍人に対する感情や、下働きに来た元軍人との感情に、いまいち統一感がないなど、母親が不可解な行動をすることが多く、キャラ設定が確立できていない模様。一番大事なのは、夫の死を息子に伝えられずにいるという設定なのだが、それがぼやけてしまっている。
細かいところが気にならなくなるくらいまで、かなり酔っ払ってしまえば、かなり愉しめる気もする。そんなレベル。あまりお薦めする気にはならない。
でも、いまいちノれない一番の理由は、日本に『ドラえもん のび太の恐竜』という名作があるからかもしれない。それに比較すると、ジャイアンほどの仲間もでてこないし、密猟者ほどのはっきりした悪役もいないものね(そう、結局、悪者的な感じで登場した軍人もうやむやだもんな)。ぼやけた感じがするのも、仕方ないよ。
#あんな勢いで潜ったら、人間の肺は破裂してしまうがな…
負けるな日本
公開年:2005年
公開国:アメリカ
時 間:136分
監 督:ジェームス・マンゴールド
出 演:ホアキン・フェニックス、リース・ウイザースプーン、ジニファー・グッドウィン、ロバート・パトリック、ダラス・ロバーツ、シェルビー・リン、ダン・ジョン・ミラー、ラリー・バグビー、タイラー・ヒルトン、ウェイロン・マロイ・ペイン、シューター・ジェニングス、ヴィクトリア・ヘスター、ケリス・ドーシー 他
受 賞:【2005年/第78回アカデミー賞】主演女優賞(リース・ウィザースプーン)
【2005年/第40回全米批評家協会賞】主演女優賞(リース・ウィザースプーン)
【2005年/第63回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、男優賞[コメディ/ミュージカル](ホアキン・フェニックス)、女優賞[コメディ/ミュージカル](リース・ウィザースプーン)
【2005年/第59回英国アカデミー賞】主演女優賞(リース・ウィザースプーン)、音響賞
【2005年/第11回放送映画批評家協会賞】主演女優賞(リース・ウィザースプーン)、サウンドトラック賞
コピー:型破りなラブストーリー、これは真実の物語
綿花栽培の小作の家に生まれたジョニー・キャッシュ。酔って暴力を振う父に怯える日々だったが、そんな彼の幼少時代を優しい兄とラジオから聞こえてくる音楽が支えてくれていた。ところがある日、その兄が不慮の事故で亡くなってしまう。父は「悪魔はできる子のほうを奪った」と言い、ジョニーは深く傷つくのだった。やがて成長したジャックは数年の空軍勤務を経て、初恋の女性ヴィヴィアンと結婚。訪問セールスの仕事に就き、父とは距離を置くことができたものの仕事はまったくうまく行かない。おまけに趣味のバンド活動に理解をしない妻との間には溝が深まるばかりだった。いよいよ生活に困窮し、妻の両親の元に身を寄せねばならなくなったとき、彼はミュージシャンの夢を諦めきれずに一念発起、レコード会社のオーディションを受けると、見事に合格しすぐにレコーディングに。すぐにツアー生活に入り、ヒット曲も生まれたが、妻との距離は広がるばかりだった。そんなツアー生活の中、幼いこところから聞いていたジョニーと出会い…というストーリー。
アメリカでは“生ける伝説”的な存在だったんだろうけど、まったく知らない。『アイム・ノット・ゼア』のボブ・ディランもそうだったが、知っているか否か、興味があるか否かで、受け取り方が全然違うんだろうな。
ただ本作の優れている点は、フィクションだと思ってみても充分に楽しめる内容だということ。主演の二人の受賞歴を見てもわかる通り、すんばらしい演技で、グイグイ引きこんでくれる。
コピーにあるように、“二人の愛”を前面に押す評価が多いけれど、私はそれに賛同しない。見所はそこだと思わない。一番興味深かったのは、ジョニーを薬物依存から脱却させるために、ジョニーの家族が協力するシーン。カトリックとしての純粋な行動なのか、娘の真の気持ちに応えてなのか。南部カトリック教徒の不寛容さも表現しているので、それに相反する行動が、良い意味で非常に奇異に映った。
#最近、やっと日本でも、アメリカのカトリック原始主義者の行動がTVで伝えられるようになった。ね、アメリカってそんなにまともに付き合うような相手じゃないって判ったでしょ。
一番すっきりしないのは、なんといっても父親との関係。ジョニーの人生に大きな影を落としているのは、“自分は愛されていない”という気持ちであり、本作としてもその解釈を強く押しているのだと思う。で、結局、ジョニーから愛されるということを獲得し、父から愛されていないという心の傷を埋めることができ、彼は立ち直ることができたのだよ…ということを言いたいのだろう。でも、いささか弱い。いつも言うことだけど、実話ベースの限界ということだ。
一つ注意したいのは、ジョニーの父を“単なる不器用な男”なだけで決して愛の無い男ではない…と解釈すること。子供の人間形成の失敗の失敗原因の半分は、愛されるべき子供が愛されなかったことで発生する。多少環境に問題があっても、親から愛されているという感覚があれば、反社会的行動をとることは激減する。やはり父親の行動は、人間が社会性動物であることを考えると“悪”以外の何者でもない。この世にいる一番の悪魔は、“愛のない親”だと私は考えている(漠然とした表現だけど)。
でも“愛のない親”というのは動物社会を観察しても出現するので、無くすことはできないのだろう。そして、往々にしてそういう親を後付けで教育することもできないし、時間のねじを戻して愛すべき時期に愛しなおすことはできない。それを補完するのが、愛情深い伴侶と結婚すること、愛情深い隣人に出会うことである(宗教で救われることもこれに含まれる)。ジョニーの場合は、父親だけでなく母親も同様であるという不運。はじめの妻も同様であるという不運。隣人も所詮ビジネス上の関係でしかなかったという不運。一番愛を傾けてくれた人がすでに人妻であったという不運。それらが重なったということだろう。
ラストの実話ゆえのぼんやり感を許容すれば、愉しめる作品だと思うので、軽くお薦め。
#その後、二人が何十年も添い遂げたというナレで、感動したという人もいるようだけど、羨ましいとは思うけど別に感動はしなかったかな…。そう、羨ましい。
負けるな日本
公開年:2008年
公開国:日本
時 間:102分
監 督:内田けんじ
出 演:大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、常盤貴子、田畑智子、北見敏之、大石吾朗、奥田達士、尾上寛之、桃生亜希子、沼田爆、田村泰二郎、ムロツヨシ、佐藤佐吉、長江英和、山本龍二、久保和明、戯武尊、村岡希美、小林隆、斎藤歩、音尾琢真、中山祐一朗、森田ガンツ、吉武怜朗、五十嵐令子、山本圭、伊武雅刀 他
受 賞:【2008年/第51回ブルーリボン賞】助演男優賞(堺雅人「クライマーズ・ハイ」に対しても)
コピー:行方不明の友人、同級生を名乗る探偵、大人の放課後(アフタースクール)には何かが起きる!!笑って、驚いて、巻き込まれて、グッとくる。驚きエンターテインメント!
甘く見てるとダマされちゃいますよ
母校の中学校で教師をしている神野は、産気づいた幼馴染の木村の妻を病院に運ぶ。肝心の木村とは何故か連絡が取れずにいると、そこにちょうど、同級生に北沢と名乗る男がやってくる。北沢は、昨日撮影されたという若い女と車に乗り込む神野の写真を見せ、木村のことを探している追っているという。神野は、北沢の言うがまま木村の捜索を手伝わせられるのだったが…というストーリー。
そろそろ1時間が経過しようというところで大転回し、それが本作の醍醐味。この監督(脚本を書いているのも監督)が、騙しのテクニックに長けているのは認める。しかし、もう一枚、騙しの山がないといけないんじゃなかろうか。
ネタバレになって申し訳ないが、あれよあれよと巻き込まれただけの善良な市民でした…という小粒なオチに対して、見事にだまされたとスッキリ思える人はあまりいないだろう。
以下、完全にネタバレ注意。
①事件に巻き込まれた被害者?→②実は金の強奪を狙う加害者?→③警察の手先として動く小市民…という流れ。
もう一枚④があって、ニヤリという展開があるとか、せめて②と③が逆とかにしないと、観ている側はテンションの持って行き場がないだろう。
だって、実は計算ずくの行動で、善良な彼らが実は…という方向性を見させられたのに、実はちょっとしたきっかけで事件に巻き込まれて、警察の捜査に協力しているだけというのに、がっかりしないほうがおかしい。何が一番悪いかって、神野も木村も自分の頭は何一つ使っておらず、他者のいいなりだったという点。主人公が自律していないことを知って、がっかりしない訳が無い。
おまけに、オチの事件の真相までぼやっとしたままで終わるしね。
振り返ると、はじめの1時間くらいまではもっとシェイプすべきで、もう一展開…というのが無いもんだから、配分も悪くなっているのだ。この内容は80分くらいでまとめるのがちょうどいい分量。要するに材料不足。
#本当は最後に神野が北沢に言ったセリフを主張したいんだよね(その内容については私も強く同意する)。だから、もう少しそこを膨らませて欲しかったかな。
この展開を崩したくないならば、観客の目を笑いで誤魔化すしかなかったろうが、残念ながら笑いの場面は皆無である。この作品をコメディとカテゴライズしているサイトも散見されるのだが、本当にコメディだったらもっと評価できただろう(ゆるいサスペンスってところだよね)。笑う場面はどこなのか、教えて欲しいくらいだ。
…と文句ばっかりになってしまったが、小粒にまとまってしまったとはいえ、佳作なんだと思う。神野と同じように気のいい人たちは、最後のふわっとした感じで、満足できるはず。私のような性根のどこか曲がっている人は(笑)、どこか釈然としない思いに襲われるってことなんだろう。特段お薦めはしない。
#佐々木蔵之介と堺雅人って、役者としてのカテゴリが近いので、メリハリがないような…。
負けるな日本
公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:120分
監 督:ペニー・マーシャル
出 演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ、アンヌ・コンシニ、パトリック・シェネ、ニエル・アレストリュプ、オラツ・ロペス・ヘルメンディア、ジャン=ピエール・カッセル、イザック・ド・バンコレ、エマ・ドゥ・コーヌ、マリナ・ハンズ、マックス・フォン・シドー 他
受 賞:【1990年/第56回NY批評家協会賞】男優賞(ロバート・デ・ニーロ)
コピー:-実話には、本物の感動がある-
精神病院に赴任した医師セイヤーは、これまでの研究所生活との違いに戸惑い馴染めずにいた。ある日、患者が特定の刺激にだけ反応し、健常者のように動くことを発見する。中には投げたボールをキャッチする患者まで表れた。しかし、同僚の医師たちに説明するも、単なる反射行動だと相手にされない。諦めきれずにいたセイヤーは、ある新薬の研究報告を発見。それが患者達に有効なのではないかと思いつく。病院と母親を説得し、30年間昏睡状態だった男レナードに投薬を開始。ほどなく奇跡的に意識を回復し…というストーリー。
過去に観たことがあるけれど、先日の『潜水服は蝶の夢を見る』や『ジャケット』を観て、本作を思い出したので。原因は異なるけれど、脳幹の異常により停止状態に陥ってしまう点は一緒でしょ。そして、結末は『アルジャーノンに花束を』に近くて、未知の治療薬を探し投薬するところは『ロレンツォのオイル』に似ている。そう考えると、似たようなモチーフの作品は結構あるのね。
とはいえ、驚くべきことに本作は実話ベースである。本当に実話か?と思うほどの劇的な展開は、まるで奇跡のよう。加えて特筆すべきは、きちんとラストがまとめあげられていて、ストーリーとして成立している点(だって、実話ですから…と投げっぱなしにはしていない)。セイヤーと看護婦のくだりや、もしかするとレナードの恋のエピソードはフィクションかもしれないけれど、そういう演出が実によい味付けになっていて、実話ベースにありがちなモヤモヤした結末を払拭してくれている。
なぜか受賞歴は少ないのだが、ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズも素晴らしい。特にデニーロの徐々にチック症状が出始めたころの演技は、観ている側に「もしかして…」とかすかに感じさせる適度さが絶妙。ポンコツ役者では興醒めは必至だったろう。
誰一人、悪意のある人は登場せず(他の医師が当初非協力だったことなど悪意のうちに入らず)、誰もが他者のことを慮っているにもかかわらず、まったく報われない顛末に、なんともやるせなくなり心臓がぎゅっと握られたような苦しさを覚える。世の中には簡単に答えを出せないことが多々あるのだな…と、感慨深さと無常感が合わさって、それらが転じて何故か清清しくなるほど。
案外、若い世代は未見の人もいるかもしれない。是非観るべき作品だろう。お薦め。実話ベースでも、この程度の演出は必須、こうあるべきだ!と思える作品。
負けるな日本
公開年:2010年
公開国:日本
時 間:100分
監 督:アベ ユーイチ
出 演:小柳友、濱田龍臣、土屋太鳳、石橋保、さとうやすえ、ベンガル、きたろう、平泉成、宮野真守、緑川光、神谷浩史、関智一、西岡徳馬、若本規夫、川下大洋、宮迫博之、黒部進、森次晃嗣、団時朗、高峰圭二、石丸博也、田中秀幸、長谷川初範、萩原佐代子、石田信之、石坂浩二 他
コピー:皇帝(カイザー)ベリアル、降臨。ゼロ、光とともに立ち向かえ!
突如、M78星雲・光の国が、謎の敵から攻撃される。辛くも撃退するが敵の本体は不明。どうやら別次元の宇宙から、刺客を送り込んだ模様。別次元に送り込めるのは、ウルトラの星の力を結集しても1名がやっと。若き戦士ウルトラマンゼロはその役に自ら志願し、単身旅立つ。やがて、助けを求める声に応え、とある惑星に到達。そこで人間の兄弟と出会い、瀕死の兄ランを助けるために、ランと一体化。その後、惑星エスメラルダの王女エメラナ姫と出会ったゼロは、敵の正体が倒したはずのベリアルであることを知り…というストーリー。
4/6に観た『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』と比較すると、同じ特撮ヒーロー物なのにエラく違いがあり、ちょっと一言いいたくなった。
先に言ってしまうが、比較すると本作のデキのほうが数段よい。とにかく、始めから最後まで“ストーリーが存在する”、なるべく“子供だましは避ける”、単なる“顔見せ興行にはしない”。ちょっとレベルの低い勝負なんだけど、こんな子供も観るような映画ながらも、東映と松竹の性根の違いを見せられた気がしてしょうがない。
その姿勢が顕著に現れているのが、なつかしヒーローの客演である。実は両方ともお父さんが楽しめるような昔のヒーローを出す…というコンセプトが共通している。仮面ライダーのほうは、ストーリー的に何の脈絡もない場面で、キカイダー・01・スバット・イナズマンを4人並べて出しただけ。対して本作は、ミラーマン・ファイヤーマン・ジャンボーグAをモチーフにした新キャラを創造し、決めセリフや技などで懐かしさを醸し出す。どちらがマジメに作っているかは、歴然だろう。
#まあ、個人的には嫌いなデザインなんだけど…。
でも、こんなに違いのあるデキの両作品なのに、仮面ライダーは毎年TVシリーズが繰り返され、ウルトラマンのTVシリーズは断絶してしまうという、世の中の何とうまくいかないことよ。
実はその理由ははっきりしていて、仮面ライダーはシリーズごとの繋がりは考えずに自由に作られているのに対して、ウルトラマンは常に“ウルトラの星”の世界観に縛られ(その世界観から離脱しようしても、ことごとく失敗してきて、結局TVシリーズの終盤に、仲間のウルトラマンの助けを求めてしまう)、ストーリーのダイナミズムや自由な発想が阻害されるているからである。
比較はここまでとして…。
本作で、一番おどろいたのは実はウルトラマンノアの登場だった、まあ、よく考えたらネクサスの監督だし、役者陣もネクサスに登場した人が多かったので、そりゃそうか…って感じなのだが。でもネクサスシリーズは、他のウルトラマンとは一線を画したストーリーだったので、こういうウルトラ世界(ひいては銀河連邦)の統合については、もうちょっと慎重になったほうが(というか、もっと巧みに真剣に考えたほうが)いいと思うな。
仮面ライダーに比べてまともだとは言ったけど、ストーリー的にダメな部分は多々ある。
まず、元気玉パターンは避けたい。安易すぎるから。そして、バラージの盾の発動条件については、もうちょっと巧みなトリックで問題を解決すべき。その後で悪役が「何ぃ!」とかいうパターンも、非常に陳腐。大人も子供も観る作品であることを考えるとこれらは忌避すべきだったろう。
最後はランも記憶を共有していたほうが、よいと思う。
それにジャンナイトは、操縦者とシンクロすると説明しておきながら、最後は自律しているところも変。不整合。
製作陣に勢いもノリもあるのは認めるけれど、松竹側はシナリオの最終チェックをしっかりしてあげようよ。こういう細かい穴を埋めることは、商品価値を上げることに繋がるはず(ちょっと儲かってるからってあぐらかいちゃだめだよ)。
まあ、子供映画としては及第点。それ以上でもそれ以下でもない。ウルトラマンファンでなければ、まったくもって観る価値がない。今後は、ウルトラマンファンじゃなくても、これは見るべき!という、クレヨンしんちゃんでいうところの『戦国アッパレ大作戦』のような作品を目指すべきではなかろうか。志を高くお願いしたいところ。
負けるな日本
公開年:2002年
公開国:日本
時 間:129分
監 督:山田洋次
出 演:真田広之、宮沢りえ、小林稔侍、大杉漣、吹越満、伊藤未希、橋口恵莉奈、深浦加奈子、神戸浩、草村礼子、嵐圭史、中村梅雀、赤塚真人、佐藤正宏、桜井センリ、北山雅康、尾美としのり、中村信二郎、田中泯、岸恵子、丹波哲郎 他
受 賞:【2002年/第26回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(宮沢りえ)、助演男優賞(田中泯、小林稔侍)、監督賞(山田洋次)、脚本賞(山田洋次、朝間義隆)、音楽賞(冨田勲)、撮影賞(長沼六男)、照明賞(中岡源権)、美術賞(出川三男、西岡善信)、録音賞(岸田和美)、編集賞(石井巌)、新人俳優賞(田中泯)
【2002年/第45回ブルーリボン賞】作品賞、助演女優賞(宮沢りえ)
コピー:ただ、愛する人のために。
ある日、「人を殺してこい。」というのが上司の命令でした。
心に、お帰りなさい。
庄内・海坂藩の下級武士、井口清兵衛。労咳で妻を亡くし、現在は娘2人と痴呆の母を養っている。妻の治療費や葬儀代で作った借金のために生活は苦しく、仕事が終わるとすぐに帰宅し家事と内職の日々。同僚との付き合いを頑なに断り帰宅するため“たそがれ”と揶揄されている。ある日、清兵衛は幼馴染みの朋江が、夫の酒乱が原因で離縁していたことを知るが、酔った元夫・甲田が朋江の実家に押しかけていたところに居合わせ、成り行きで果し合いをすることになってしまい…というストーリー。
日本人のサラリーマンの悲哀みたいなものを時代劇で表現したってことなんだろうけど、そういう意味ではちょっと直球すぎるかも。海外公開もされたみたいだけど、直球すぎてピンとこなかったかもしれない。
2002年っていう時代に製作されたことは意味があったと思う。どこかの浅はかで下品男の発言象徴されるように、“世の中にカネで買えないものなんてない”的な意見に、相当数の人々が賛同する世の中で、この貧乏下級武士のスタンスは非常に光るものがあったし、そんな意見がおかしいだろ!って言葉で反論する以上の力をもっていたと思う。そして、日本が明治維新を経てこれだけ強固な教育基盤を持てた一番の理由は、下級武士のおかげという歴史的事実。
資本主義の基本は、“他人のためになる施しをして正統な対価をもらうこと”で、何が人のためになるのかを必死で考えることである。しかし、“他人が金を払ってくれるものを売って金を稼ぐ”ために、金が稼げることを探すっていう行為と、表面上はほぼイコールになる…、この極めてトリッキーな構図が資本主義発展のエンジンになった。何がトリッキーかって、拝金主義の愚かな行為が、他者のための行為に転換されたように見えるのだから(私は常々言っているニアリーイコール論。資本主義が発展した理由である)。
直球すぎるとはいえども、訴えたいことが明確であることと、加えて丁寧なつくりが非常に好感が持てる。世の中には、会社での出世ことが人生のすべてではない、やりがいのある仕事こそ本分だと思っているサラリーマンが多数いるし、ちょっと意味は異なるけれど、昨今の草食系といわれる若者にも、共感を与えるかもしれない。
おおむね難も無く愉しめたのだが、小さい難点が3点だけある。
1点目。前半に、朋江が出戻りして甲田とモメる流れと、藩のお家騒動の流れと、2つの話があるのだが、この2つが直列つなぎになっている(つまり一つのエピソードが終わった後に、もう一つが流れる)のだ。これらはある程度、並列で流すべきだった。それの何がいけないかというと、観ている側が一つの話に集中してしまうので、先読みできてしまうから。簡単に言うと、複数の話を並行で流して、観ている側の気を散らせ!そういうこと。
2点目。次女が成長した後とおぼしきナレーションが入るのだが、結論から言うと宜しくない。なぜなら、今展開しているストーリーがすでに終わった話であることが印象付けられて、リアルタイムで展開している緊張感が削がれるから。こういう演出をするのだから、思い出話する大きな意味があってしかるべきなのだが、最後で家族の顛末を語るだけで、効果なし。ナレーションはなかったほうが絶対によい。それに最後の墓のあるシーンはどこなんだろう。あんな田舎にまで線路が到達していたと?発展した明治を印象付ける意図とは思うが、ちょっとリアリティが無いような…。
3点目。藩命で余五善右衛門という武士と死合うことになるわけだが、その相手について。中盤で清兵衛の仕事場に余五が訪れ名乗るのだが、役者の滑舌がわるくて名前が聞き取りにくい。そのせいで、藩命をうけた時に武士の名前が出てきた時に、あの武士のことか…とピンとこない人が多かったに違いない。だから、余五が訪れた直後に同僚がやってきて「あれは御馬廻役の余五善右衛門ではないか。こんなところに何の用向きであろう…」などというシーンを加えて、名前を印象付けるべきだたろう。
まあ、そういう気になる点はあれど、よくできた作品だと思う。そこそこお薦め。
生活のために藩命を受けて命を懸けるあたり、福島原発の作業員とダブるのだけれど、今どこの局が放映権を持っているのか知らないが、日テレでもTBSでもいいから、もしこれをサラっとTV放映するセンスがあったら、大いに褒めてあげよう。CM料欲しさに東電寄りの論調になってると穿った見方をされているTV局も、その誹りも少しは軽減するのでは?
負けるな日本
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:135分
監 督:ナンシー・マイヤーズ
出 演:キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラック、イーライ・ウォーラック 他
ノミネート:【2007年/第16回MTVムービー・アワード】キス・シーン賞(キャメロン・ディアス、ジュード・ロウ)
コピー:人生に一度だけ、誰にでも運命の休暇がある
ロンドンの新聞社に勤めるアイリスは、別れた後も思わせぶりに接触してくる元恋人の行動に翻弄され続けている。さらにその元恋人が、社内の別の女性と突然の婚約宣言し、心の動揺はピークに。一方、ロスで映画予告編製作会社を経営するアマンダは、同棲相手の浮気が原因で別れることに。そんな2人は、インターネット住居交換サイトで出会い、休暇中だけ互いの家を交換することに。二人は普段の生活とまったく違う環境で2週間のクリスマス休暇をおくることに…というストーリー。
ロマンス系なので、鑑賞を後回しにして今に至ったのだが、もっと早く観れば良かったと思った。またまた、なんでこんなに評価されていないのか、実に不思議な作品。とてつもなくレベルの高い作品だと思うのだが…。先日、『P.S.アイラヴユー』を高く評価したけれど、あっさり超えた。1.5割増くらいの満足度。
とにかく、シナリオとして非常に優秀で、ある意味、基本に忠実というか教科書的とまで言えると思う(箇条書きにしちゃう)。
・別のシナリオが徐々に絡み合う(→交換サイトで出会い。まったく違う環境に置かれる。各々の住居の周辺での出会いで、ほとんどお互いを知らないながらもつながりができていく)。
・自然な伏線のセットアップと、忘れたころに的確に回収。
・魅力ある登場人物(アイリスの兄、脚本家のじいさん、そしてグラハムとマイルズ)。
・各々の問題を自分の変化で克服していく(恋愛感の変化というよりも人間観の変化といっていいくらい)。
アマンダ側に映画関係の登場人物が多いのだが、その中でも脚本家のじいさんアーサーと、映画音楽家のマイルズのキャラに注目。
劇中で脚本家のじいさんに、「月曜日に興行成績のランキングがニュースで発表されるような業界でいい作品ができるか!」と言わせ、さらにいいシナリオについて端々で語る。ここまで言わせておいて、この作品自体のシナリオがポンコツではお笑い種。自分でどんどんハードルを上げて、それを超えるようなシナリオをつくってやるぞ!という気概を感じる。そして実際に超えることができていると思う。
#まるで、シナリオ学校の生徒に「先生、いつもエラそうなこといってますけど、そんあ立派なシナリオかけるんすかぁ~?」とか言われて「何コラ。クソ。じゃあ、書いてやろうじゃねーか!」って感じで、セオリーに忠実に気合いれて書き上げたような。
音楽のほうも、劇中でマイルズがいい映画音楽はこうあるべき論を展開するのだが、そちらもその“べき論”に沿った音楽が、本作が当てられている。エンドロールの音楽を抵抗もなく聞く気になったのは久しぶりかも。
最後、ロンドンの大晦日でなんとなく大団円的な感じになるんだけど、決して諸々の問題が解決したわけではない、手放しの大団円じゃないところが、個人的には好き。毎回言うけど、ロマンス系の映画は好みじゃない。でも本作はラブロマンスの枠を超えて、立派な大人の成長物語にまで昇華していると思う。後半はかなりのシーンで、鳥肌が立つことが多かった。135分が短く感じるくらい、もうちょっと観ていたい気分になるほど。強く強く強くお薦めする。
#いくらお薦めしても、いまいち伝わらない作品だったりするんだけどね…
あ、いい忘れたけど、キャメロン・ディアスはものすごくキュートだし、ケイト・ウィンスレットがモサっとした感じをよく演じきれている。ステキ。
負けるな日本
公開年:2008年
公開国:日本
時 間:121分
監 督:タナダユキ
出 演:蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助、齋藤隆成、笹野高史、嶋田久作、モロ師岡、石田太郎、キムラ緑子、矢島健一、斎藤歩、堀部圭亮、平岩紙、江口のりこ、悠城早矢、弓削智久、佐々木すみ江 他
コピー:百万円貯まったら、この家を出て行きます。
短大を卒業したが就職できずにバイト生活を送る21歳の佐藤鈴子。バイト仲間とのルームシェアにまつわるトラブルから警察沙汰になってしまい、最終的に罰金刑と受けてしまう。一旦実家に戻ったものの居場所がなく、「百万円貯まったら一人で生きていく」と宣言。複数のバイトの末に家を出て、その後も見知らぬ土地で同じようなバイト生活を繰り返していく鈴子だった…というストーリー。
実は、冒頭の20分で、6回観るのを中断した。
なし崩しで3人でルームシェアするくだりが、つまらない展開でうんざりしてアウト。
いざ暮らし始めると男だけで…って展開がくだらなくてアウト。
猫を拾って、捨てられるくだりが、回りくどくてアウト。
警察の取調べの刑事のセリフも演技も言っている内容もくだらなくて、さらに、大して演出上の効果もないのに、蒼井優に「やっときゃよかった」って言わせる演出が、寒気がしてアウト(結局、キャラ付けとしても生きていない)。
そして、初犯で民事的にも大した被害がないのに、立件されて実刑になるリアリティのなさにアウト。
絶対、なにか光るものがある!と感じてレンタルしてるのに、何なの、この冒頭20分の仕打ちは。もっとすっきりさらっと転落しなさいよ。別に転落する様子を見せたいわけじゃないんでしょ?タイトルのとおり“百万円”に早く流し込みたいんでしょ?もうグダグダグダグダと。伏線なんだかそうでないんだかよくわからない無駄なセットアップが多い。実に損。
ところが、本題の流浪のバイト生活に展開したあとはうって変わっておもしろい。この内容なら20歳代後半から30歳代前半の女性は、かなりシンパシーを感じてうらやましく感じた人が多いと思うよ。ちゃぶ台のひっくり返し方(要するに辞め時)が、意外とスカっと共感できる。
#原作の力なのかなぁ…
もう少し短いサイクルにして、もう一つバイト先をいれても良かったんじゃない?あの冒頭のグダグダをシェイプしてさ。そうすりゃもっとすんなりと入れただろうに。
終盤は、恋愛の流れと、弟の流れの二本を徐々にからめていくという、シナリオのセオリーをはずしていない点が好感が持てる。弟の手紙で、自分の逃げっぷりがよくないことを痛感したからって、じゃあ逃げるのをやめる!ってならずに、とりあえず今までどおり逃げるのもいい感じ。
しかし、残念ながら、最後に馬脚を出しちゃった。
お金を用意する時間があったってことは、辞めるってわかってからある程度時間があったわけでしょ。
普通なら、そこで、実は越えないように…って告白するでしょ。
もしくは、大枚を耳を揃えてすぐに返却できた時点で、もしかして…って思うでしょ。
当然、観ている側も気付くでしょ。読めたらちょっと興醒めするでしょ。
あぁ、説教しちゃたよ。
それになんか端はしで、蒼井優にボソっと決めセリフ的なことを言わせてるけど、全然効いてないよ。だから“苦虫”がなんだかピンとこないのよ。
ブラッシュアップ!捨てられるところは捨てないと!こんなことじゃ、TVドラマの仕事はきても映画の仕事はこなくなっちゃうよ(余計なお世話か…)。
#桃を皮ごと喰うほど、農家になじんでたかねぇ…。そういう演出があったようには見えないけど。やっぱりこの監督、描写が甘くないかねぇ。
負けるな日本
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:ミック・ギャリス
出 演:トム・スケリット、スティーブン・ウェバー、アナベス・ギッシュ、ロン・パールマン、シェーン・ハボーチャ、ヘンリー・トーマス、ケリー・オーヴァートン、マット・フルーワー 他
ドライブ中の夫婦が保安官に呼び止められ、トランクから見つかったマリファナを理由に連行される。しかし、連れて行かれたデスペレーションという名の街は荒れ放題で、そこかしこに死体がころがっている状態。夫は突然、保安官に射殺され、妻はそのまま留置所へ。留置所にはすでに数人が捕らえられていた。理由は不明だが、保安官コリーは殺人や拉致監禁を日常的に繰り広げているらしい。捉えれた人たちは、そのうりの一人デヴィッド少年の機転によって脱出するのだが…というストーリー。
テレビムービーのようで、「あぁ、ここでCMにいったんだろうな」っていう区切りがはっきりわかる編集。
スティーブン・キング原作で映像化された作品は数あれど、2つの法則があると思っている(あくまで自論)。
【ルール1】
目に見えない邪悪な何かが人間に乗り移って悪さをして人を襲うので、数人が協力して対峙する…というパターンがある。TV版の『シャニング』とか『IT』なんかがそれだ。このキングの邪悪神ストーリーが、映像化されておもしろかったためしがない。
【ルール2】
キング自信が自分の作品の映像化にあたってスタッフに加わった作品が、おもしろかったためしもない。本作では製作総指揮に名を連ねている。
よって、この二大ルールに完全合致する本作は、おもしろくないに違いない…と予測はしていたのだが、見事的中である。
冒頭の夫婦を捕らえるくだりからして、回りくどいというか、くるぞくるぞ感を妙に煽ろうとして鬱陶しい(一回観るのを中断したくらい)。まだ“邪悪なもの”かどうかわからない段階では、まだ愉しめなくもなかったのだが(もしかすると鉱山から出てきた放射性物質による障害の影響という展開も無くは無いからね)、確定してしまうと、「それを出しちゃったら何でもアリだもんなぁ…」って感じで途端に興醒めしてしまう。せめて、その後は、次々と乗り移って、どんどん追い詰めていくおもしろさを見せてくれればよかったのだが、結局、保安官の後は女性1名とカラスに乗り移るだけ。
やはり、このスティーブン・キングの2大ルールは健在だな。今後もこれで判断することにする。もちろんお薦めしない。このレベルで131分もあるのも、また信じられないし。
#原作は読んでいないんだけど、映像化されるくらいなので、もしかするとおもしろいのかもしれないよ。
負けるな日本
公開年:2005年
公開国:アメリカ
時 間:103分
監 督:ジョン・メイバリー
出 演:キーラ・ナイトレイ、エイドリアン・ブロディ、クリス・クリストファーソン、ジェニファー・ジェイソン・リー、ケリー・リンチ、ブラッド・レンフロー、ダニエル・クレイグ、スティーヴン・マッキントッシュ、ブレンダン・コイル、マッケンジー・フィリップス、ジェイソン・ルイス、ローラ・マラーノ 他
コピー:闇の先、君がいた
1992年、湾岸戦争で瀕死重傷を負ったジャック。帰国するも、後遺症による記憶障害に悩まされ続ける。ある日、ヒッチハイクの旅に出たジャックは、車の故障で立ち往生している母子に出会う。母親が正気を失うほど酔いつぶれていたため、代わりに車を修理してやり、娘のジャッキーからねだられた自分の軍時代の認識票をプレゼントして、そのまま母子とは別れた。その後、若い男の車に乗せてもらったが、途中で事件に巻き込まれ、そのまま意識を失ってしまう。目を覚ましたジャックは警官殺しの罪で逮捕され、精神病院へと送られてしまうのだった…というストーリー。
何年か前に観たはずなんだけど、完全に内容を失念。キーラ・ナイトレイがあんまりガリガリじゃなくて、とても魅力的。
フラッシュバックのビジュアル表現も好みだし、拘束衣でロッカーに入れられるシーンは、観ている側も拘束されている気分になって、息苦しくなるほど。よく伝わってくる演出。
なんとも不思議極まりない作品で、本当に何がどうなってるんだか、さっぱりわからず、先の展開も読めない。それ以前に、サスペンスなんだかサイコ物なんだがSFなんだか、ジャンル自体が読めない。
で、かなりの期待で終盤を迎えるのだが、SF的な要素をどう片付けるのかと思っていたら、ジャッキーとの愛でなぎ倒した感じ。ちょっと力尽きた感が否めないな。
過去だとはいえ子供と愛し合う神経もいまいちよくわからないし、ジャッキーが事情をあっさり把握しすぎるのも違和感がある。殺人事件のほうは片付けないで、タイムパラドックスで安易に片付けてしまった。その安易さが低い評価に繋がっている。せっかくのダニエルクレイグの怪演も、大した伏線になっておらず生きていない。タイムパラドックスであることを理解して、何かを変えようとしているはずなのに、何故かジャックが何をしたいかがぼんやりしていて、良く見えないからドキドキもしない。
せめて、最後にもう一ひねりあれば。本当に、シナリオの力が弱い。弱い。弱い。ただただ、おしいと思う作品。だから特段お薦めしない。
#こんなんじゃ、この監督も脚本家も次の仕事は、なかなかもらえないと思うよ。
負けるな日本
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |