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公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:102分
監 督:マイク・ニコルズ
出 演:トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ネッド・ビーティ、オム・プリ、エミリー・ブラント、ケン・ストット、ジョン・スラッテリー、デニス・オヘア、ジャド・タイラー、ピーター・ゲレッティ、ブライアン・マーキンソン、クリストファー・デナム、トレイシー・フィリップス、ウィン・エヴァレット、メアリー・ボナー・ベイカー、レイチェル・ニコルズ、シリ・アップルビー 他
ノミネート:【2007年/第80回アカデミー賞】助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)
【2007年/第65回ゴールデン・グローブ】作品賞[コメディ/ミュージカル]、男優賞[コメディ/ミュージカル](トム・ハンクス)、助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)、助演女優賞(ジュリア・ロバーツ)、脚本賞(アーロン・ソーキン)
【2007年/第61回英国アカデミー賞】助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)
【2007年/第13回放送映画批評家協会賞】助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)、脚本賞(アーロン・ソーキン)
コピー:たったひとりで世界を変えた本当にウソみたいな話。“Based On The True Story”
実話を元にした、たったひとりでアフガニスタン紛争を終結させたテキサス州の下院議員の話…。
ということなのだが、本作の評価云々の前に、このキャッチコピーとか配給会社や販売元が出しているあらすじの内容にあきれてしまった。本作はコメディなのか?本作を観てコメディに分類するやつの気が知れない。「たったひとりで世界を変えた本当にウソみたいな話。」だと?こんなお気楽なコピーをつけたやつは、とっとと配給会社を辞めるべきである。
すべてが壮大なシニカル(皮肉)だろう。国際情勢通を気取るつもりはさらさら無いが、普通にニュースを見ている人間が、最後のせりふを聞けば、本作のスタンスが判らない訳はないと思うのだが…。アフガンの紛争を解決してソ連を撤退させたものの、その後の戦後処理を誤って、タリバンの増長と反アメリカの構図を生み出し、結局9.11に繋がる“笑えない”話なのだから。それを実録政治コメディというか?私ならそんなこと言ってしまったら、はずかしくて街を歩けない。
ただ一介の国会議員が奮闘して大きなことをやり遂げた顛末を楽しむ映画ではなく、そのすべてが惨劇に繋がったという話。且つそれがたかだか一人の国会議員と、国家諜報組織の、それも大した権限もない人間によってなされたという、システムの恐ろしさ。民主主義とは名ばかりの権利の簒奪。ゾッとする話である。コメディ的な部分など、その恐ろしさを増幅する仕掛けにすぎない。
こうすれば成功したなどという、簡単な答えは歴史にはないが、本作を観ると国際貢献とは何なのか。今、正しいと思っていることが本当に正しいことなのか、信念の根元が揺らぐ気さえしてくる。
本作は色々ノミネートされたが受賞に至らなかった。作品の質として『シリアナ』より劣っているとは思わないので、なにかひとつくらい受賞してもよさそうなものだが、やはり、まだ生々しすぎて後味が悪く、純粋に作品として楽しむことはできない。そういう点も受賞に至らない理由だろう。
短めの作品でかつテンポもよいので、私は結構引き込まれてしまい、ふと気づくと残り30分をすぎていた。当時のアフガンの状況はあまり知られてもいなかったし、なんで、9.11が発生したのか…という遠因(直接原因な気もするが)も腑に落ちる。観ておくべき映画だと思うので、“あえて”お薦めする。もう一度いうが、これはコメディではないよ。
余談。あまりフィジカルな点をあげつらうのはよくないと思うが、ちょっとジュリア・ロバーツの眼窩にはぎょっとしてしまった。昔からあんな感じだったろうか…。
公開年:1994年
公開国:アメリカ
時 間:119分
監 督:オリヴァー・ストーン
出 演:ウディ・ハレルソン、ジュリエット・ルイス、ロバート・ダウニー・Jr、トミー・リー・ジョーンズ、トム・サイズモア、ロドニー・デンジャーフィールド、エド・マックラーグ、デイル・ダイ、サルヴァトール・ゼレブ、リチャード・ラインバック、バルサザール・ゲティ、ラッセル・ミーンズ、プルイット・テイラー・ヴィンス、スティーヴン・ライト、ピーター・クロンビー、ジョー・グリファシ、ポール・ディロン、ジェームズ・ギャモン、マーク・ハーモン、アーリス・ハワード、デニス・リアリー、レイチェル・ティコティン 他
受 賞:【1994年/第51回ヴェネチア国際映画祭】審査員特別賞(オリヴァー・ストーン)、イタリア批評家賞[女優](ジュリエット・ルイス)
コピー:メディアが創ったスーパースター
運命的出会いをしたミッキーとマロリーは、各地で殺害を繰り返しながら逃走。そんな2人をTVが報道し、それを見ていた人々は、彼らをヒーローとして崇め奉るようになってゆく…というストーリー。
オリヴァー・ストーンらしくないと思うが、原案がクエンティン・タランティーノということで納得。端々で見られる奇抜な演出は、彼の影響ということだろう。ちなみに本作はパルプ・フィクションと同年の作品である。
マロリーの家でのやりとりのシーンで、シットコムの音声を重ねる演出など、なかなか奇抜でユニーク。このような実験的な演出が頻発されるが、すべて効果的(当時はかなり新鮮に映ったことだろう)。
ジュリエット・ルイスの演技の狂気っぷりも、本作の趣旨にぴったりである。もう、他の作品に使いづらいんじゃないかと心配になるくらいだ。
ところが、逮捕されて、トミー・リー・ジョーンズが登場してからの後半は、まったく別のノリになる。急にテンポが悪くなりつまらなくなる(トミー・リー・ジョーンズのせいではない)。別人が脚本を書いたのか?と思うぐらい違いがある。
あまりに違うのでちょっと調べてみると、オリバー・ストーンが、タランティーノの意図とは異なる大幅なストーリーの変更を行って、彼を怒らせたとのこと。どこが変更された部分なのかはわからないのだが、おそらく後半だろう。たしかに、タランティーノ以外の2名が脚本にクレジットされている。本当に脚本家が変わっていたのだ。その結果、前半・後半のつながりでいうと、ネイティブ・アメリカンを殺したことへの後悔のくだりは、なんの意味もなくなってしまっている。
暴動で脱出するくだりも、偶然の感じが強くて、彼らのキャラクターが死んでしまった(その分、派手に暴れただけになった)。
ひとつフォローしておくと、この作品の終わらせ方は、基本的に難しいと思う。観ている途中から、どうやってこれに始末をつけるつもりなのか、非常に注目していた。『俺達に明日はない』的な玉砕パターンは、容易に想像できるところだが、その場合よっぽど奇抜な工夫をしないと、凡作に終わってしまう。
タランティーノの元シナリオが、いいモノではなかったため、しかたなく変更したという可能性も否めない(確認しようがないからね)。
しかし、変えた結果として、凡作になってしまったというのも事実で、もったいない作品なのである。
殺伐としていてクレイジーで好みの分かれるところだと思うが、ひとつの時代のトガった作品として、その前半は一見の価値はあると思う。作品全体としては、過度な期待さえしなければ、それなりに楽しめることだろうが、無理にでも観る価値はない。
公開国:アメリカ
時 間:91分
監 督:ジョセフ・ルーベン
出 演:ジュリアン・ムーア、ゲイリー・シニーズ、ドミニク・ウエスト、アンソニー・エドワーズ、アルフレ・ウッダード、ライナス・ローチ 他
コピー:あなたの大切な人生が、ひとつ残らず消えていったら――
飛行機事故で9歳になる一人息子サムを亡くした母親テリー。それから14ヵ月たったいまでもテリーは立ち直れずに、思い出に浸るだけの日々を送っていた。そんなある日、記念写真からサムだけが消え、さらに、アルバムからもビデオテープからもサムが消えてしまった。動揺するテリーに精神科医は、“息子など最初から存在しなかった”と告げる。テリーは、サムの存在を証明しようと躍起になるのだったが…というストーリー。
私の周りの本作を観た人に、「どうだった?」と聞くと、みんなモゴモゴする。ようするにダメだったということなのだが、何がダメかを説明したら内容がわかちゃうから言えなとのこと。ということで、観てみた。
いやいや、冒頭の30分は実にスリリング。サイコ的な方向にくのか、犯罪・陰謀モノになるのか、展開が読めず、惹きつけられた。その謎解き自体がこの映画のジャンルを決めることになるという、めずらしい見せ方。
ジュリアン・ムーアもこの役に合っている。顔を指で押したら、不満とストレスが混ざったどろどろの液がぶちゅ~と出てきそうな感じで、粘着質なキャラクターがよく表現できている。
と、まあ、意外なことに(?)ストーリーはSF的な方向に進むのだが、そこで、この映画はおしまい。
そこから、別の人がシナリオを書いているのではないかと思うぐらい、陳腐で穴だらけである。
一例を出そう。
航空会社社長の家にいって、住所を聞き出そうとするシーン。そこにいた管財人から住所を聞きだそうとして、テリーはウソを言う。社長の私物があったら送って欲しいのだが、社長の住所が変わっているから新しい住所に送ってほしいと。そうしたら、なぜか管財人が社長の机をあさって住所を探し出し、テリーに教えるのだ。意味がわからない。住所が聞きたいのはむしろ管財人の方だし、その見つけた住所で正しいか否かの確認のためだとしても、なんで、番地まで読み上げる必要があるだろうか。
後半は全部、こんなちんけなレベルの連続である。
なんで、この程度の作品に、ジュリアン・ムーアやゲイリー・シニーズが出ているのかと疑問に思うところなのだが、逆に、このクラスのキャストが出ていなければ、ただのB級映画なのは事実。少なくとも、彼らが、この脚本に惚れ込んでオファーを受けたのではないことを祈るところである。
まあ、人が“ズギューーーン”となるCGには、ちょっとドキっとしてしまったけれどね(これを見せたかっただけだったりして…)。
私は、最後の最後で、実は、やっぱり妄想でした…っていう展開に期待したんだけど、そうはならなかった(私が脚本家なら、そうかもしれないっていう含みを持たせて終わらせるね)。
このレビュを読んでどれだけダメなのかに興味をもった人は観ればいいと思うが、そうでなければ観なくてよい。時間のムダである。私は、もうフォーガットンします。
公開国:アメリカ
時 間:129分
監 督:ジョージ・ティルマンJR.
出 演:ロバート・デ・ニーロ、キューバ・グッディング・Jr、シャーリーズ・セロン、アーンジャニュー・エリス、ハル・ホルブルック、マイケル・ラパポート、パワーズ・ブース、デヴィッド・キース、ジョシュア・レナード、デヴィッド・コンラッド、グリン・ターマン、ホルト・マッキャラニー、アリミ・バラード 他
コピー:歴史はルールを変える者によって作られる。
貧しい小作農民の子として生まれたアフリカ系アメリカ人のカールは、夢を抱いて海軍に入隊したが、黒人はコックか雑用係という厳しい現実。しかし、彼の泳ぎの才能を見たプルマン大佐から甲板兵に取り立てられる。やがて、ある事件をきっかけに、彼はダイバーになることを決意する…というストーリー。
実在する伝説のアフリカ系アメリカ人海軍ダイバーがモデルの話。
強烈な人種差別に屈せず、その思いを貫く姿にとにかく燃える。燃える。ベタベタかもしれないが燃えるものは燃える。何のひねりもないが、ただ燃えるのだ。それを魅せる映画だから。
しかし、残念ながら最後の展開で、『セント・オブ・ウーマン』を思い出してしまったのがいけなかったか…(観れば私の言いたいことはわかるはず)。『セント・オブ・ウーマン』に比べると、規模も盛り上がりもいまいちで、ちょっとチャチに感じてしまった。そう考えると、デ・ニーロの役も、アル・パチーノが演じたキャラにかぶってるか…。
まあ、実話ベースということで、会議の規模も展開も、盛り上がり重視でアレンジするなんてことはできまい。実話の足枷。そこはうまいことネゴをとって、実話からおもいっきり逸脱してもよかったのではないか。
よって、ラストにカタルシスが無いことが、本作の難点であろう。
ただ、深夜に見始めたなら、眠気が覚めること請け合い。仕事でイヤなことがあった人が観ると、負けてらんないな!ってかんじで力が沸くだろう。そういう人にお薦めする。
公開国:アメリカ
時 間:97分
監 督:ロブ・ライナー
出 演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ジョン・ヘイズ、ビヴァリー・トッド、ロブ・モロー 他
ノミネート:【2008年/第32回日本アカデミー賞】外国作品賞
コピー:余命6ヶ月、一生分笑う。
自分本位な富豪の男とマジメな自動車整備士が、ともに末期のガンで余命6ヵ月と宣告されたのをきっかけに、死ぬ前にやり残したことを実現しようと2人で病院を抜け出し冒険の旅に出る…というストーリー。
最近、某バラティ番組で泣ける映画として紹介されていたが、私の泣けるツボには一切引っかからなかった。実際に同じ状況になったら、自分も彼らのように案外淡々としているだろうなと、すっかり共感してしまって、逆に冷静に見てしまった(つまらなかったという意味ではない)。私の感受性が低いのだろうか。心が熱くなる場面は
あれど、正直、“泣く”という感情に至る場面がどこあったのかぜんぜんわからない。
原題は“棺桶リスト”の意味で(一人がすっぽり入る容器という意味)、もちろんそういう邦題にするわけもないし、原題のままでは意味が伝わらないだろう(配給会社も悩んだと思う。私なら、原題にプラスして副題として今回の邦題をつけたかな)。ただ、コピーを含めて、ちょっと重い映画と勘違いされ、敬遠する人もいるだろう。
本作は、死を扱いつつ、且つ大富豪という非現実的な設定を扱っているにもかかわらず、重くも荒唐無稽にもなっていない。ロブ・ライナー監督は、ここ15年くらい目立ったヒット作もなかったと思うが、ベテランの味を発揮した、いい仕上がりになっている。冒頭の山を登っているときのナレーションがモーガン・フリーマンで…というのが、じつはひっかけになっている(ネタバレになるので言わないが)、というのが、おもしろい。結構お気に入りの演出だ。単純でズルい手かもしれないが、けっこう効果的だったと思う。
ただ、ロケーション(CG含む)や、豪華二大俳優の演技のすばらしさを差っぴくと、“及第点”というか置きに言ったストライクという感は否めない。というと、否定的な評価に聞こえるかもしれないが、逆に言えば、性別や年齢を選ばず、大抵の人がおもしろいと感じる映画だと思うので、観るものが無いなぁ…という時には、選ぶとよい。ハズレにはならないと思う。
公開年:2001年
公開国:フランス
時 間:108分
監 督:コリーヌ・セロー
出 演:ヴァンサン・ランドン、カトリーヌ フロ、ラシダ・ブラクニ、リーヌ・ルノー、オレリアン・ウィイク 他
受 賞:【2001年/第27回セザール賞】有望若手女優賞(ラシダ・ブラクニ)
コピー:平凡な主婦 meet 謎の娼婦
大変なこともあるけれど、元気です
家事に追われるだけの日常に疑問を感じていた平凡な主婦エレーヌ。車に乗っていた夫とエレーヌのもとに血まみれの女が助けを求めてやって来るが、殴られる女を無視して走り去る。翌日、女のことが心配になったエレーヌは、彼女が収容された病院を探し出し、看病するのだったが、事件に巻き込まれていく…というストーリー。
ヨーロッパ映画で女の生き様が云々かんぬんと聞かされると、『オール・アバウト・マイ・マザー』とか『トーク トゥーハー』のようなちょっと重いテイストを想像してしまったのだが、まったく違った。軽快でドキドキあり笑いありで、とても楽しい作品。
さほど評判を聞かないのは、私をスキーにつれてってばりのダサい邦題と、パッケージのあおり文句が、内容とズレているせいではなかろうか(かといって原題のCHAOSがぴったりかというと、それもピンとこないが)。
#まあ、実は最後まで見れば、邦題もわからなくはないのだが、ダサいものはダサい。
宣伝用の画像がないのか、パッケージに使われている写真が、すべて本編中の画像で、見栄えがしないのも良くないかもしれない。
女性監督らしい視点なのは良いが、あまりに男性が陳腐に描かれており、偏っているとみられるかもしれない。でも、そこは、単なる演出だと考えて、気にしないで観るのがよい。本作にでてくる宗教問題・売春・人身売買・麻薬問題など、これが現実だとすると、恐ろしいかぎりなのだが(冷静に考えると、フランスにいくのがイヤになるくらい怖いかも)、それすらひっくるめて楽しめるのは、この監督の才能だろう。観始めたら、引き込まれること、間違いない。
ただし、残念な点はある。まず、娼婦ノエミが簡単に快復しすぎ。半身不随でチューブだらけだった人間が、簡単にスタスタ歩けるようになるのは、あまりに不自然。もうちょっと工夫してほしかった。それに、娼婦ノエミのこれまでの生い立ちを語るシーンが、あまりにあまりに長すぎ。もうちょっと、さりげなく、うまいこと表現することはできなかったものか。
それでも、その中ダルミからグイッと元のテンポに戻し、スカっとして微笑んでエンドロールを迎えることができた。『キンキー・ブーツ』と一緒で、いい拾いものであった。男性は、パッケージで敬遠するかもしれないが、その先入観は捨てて観て欲しい。お勧めする。
公開年:2005年
公開国:アメリカ、イギリス
時 間:107分
監 督:ジュリアン・ジャロルド
出 演:ジョエル・エドガートン、キウェテル・イジョフォー、サラ=ジェーン・ポッツ、ジェミマ・ルーパー、リンダ・バセット、ニック・フロスト、ユアン・フーパー、ロバート・パフ 他
ノミネート:【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】男優賞[コメディ/ミュージカル](キウェテル・イジョフォー)
コピー:幸せへと導くブーツ、お作りします。
田舎町ノーサンプトンの伝統ある靴工場の跡取り息子チャーリー・プライスは、家業がいやで、婚約者の転勤にくっついて自分もロンドンへ。しかし到着早々、父親が死んでしまい、突然に工場を引き継ぐことになってしまう。おまけに、実は倒産寸前だったことが判明。嫌々ながらも従業員を解雇するなど、どうにか工場を立て直そうとするが、解決策は見えず。そんなある日、ひょんなことから知り合ったドラッグクイーンのローラの悩みをヒントに、女装者向けブーツの開発に活路を見出す。はたして工場が立ち直るか…というストーリー。
いきなり褒めてしまうが、本作はかなりおもしろい。
冒頭30分の無駄を極力排除した編集は、敬服に値する。話の展開がお約束的で大体予想がつくところは、ポンポンとテンポよく進め、感情表現の部分や、演出的に見せたい部分はゆっくりと。この緩急こそ演出の妙。観客を乗せるツボがよくわかっている。
ストーリーとしては、ピンチと克服と成長という『フル・モンティ』や日本の『ウォーター・ボーイズ』なんかにも見られる、陳腐といってもよいほど使い古されたパターンなのだが、努力・友情・勝利といった少年ジャンプ的な匂いすら感じられ、見終わった後は爽快感があった(ちょっと語弊があるかも)。
素人の私がこんなこといっても仕方ないのだが、靴が出来上がった後、工場の人たちが踊り始めるシーンがあるのだが、もし、私が脚本家だったら、ここにこのシーンを挟めただろうか…と、考えさせられてしまった。私にはそれを放り込むバイタリティは無いかも。そういうシーン達が、ありきたりなパターンの映画を、更にその上をいく作品へとグレードアップさせているのだと思う。
いきなり、始めに「実話を元にしてます」という必要があるかは微妙なところだが、『カレンダー・ガール』のスタッフによるものらしいので、二匹目のドジョウ的なノリか。『カレンダー・ガール』は見ていないのだが、観ようという気がおこってきた。そのくらい楽しめた。
見終わった後に、にっこりした表情で終われる作品はそう無い(私はにっこりだった)。まったく受賞歴がないが、もっと評価されてよいのに…と個人的は強く強く思う。メジャーな役者も出ていないし、よくあるタイプの映画だし…という先入観は捨てて、是非観ていただいて、単純に楽しんでもらいたい。お薦めする。
公開国:アメリカ
時 間:104分
監 督:ウィリアム・フリードキン
出 演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、トニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボズフィー 他
受 賞:【1971年/第44回アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(ジーン・ハックマン)、監督賞(ウィリアム・フリードキン)、脚色賞(アーネスト・タイディマン)、編集賞(Jerry Greenberg)
【1971年/第37回NY批評家協会賞】男優賞(ジーン・ハックマン)
【1971年/第29回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](ジーン・ハックマン)、監督賞(ウィリアム・フリードキン)
【1972年/第26回英国アカデミー賞】主演男優賞(ジーン・ハックマン)、編集賞
【2005年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
コピー:獲物を見つけた猟犬は決して振返らない
それを捕まえるか 心臓が破れるまでは……
追う!追う!追う! ビルから地上へ 地上から地下へ 地下鉄 高架線 ハイウェイ フレンチ・コネクションを追う 本能にも似た執念で-- 追うことの中にだけ男は生きた
ニューヨーク市警で通称ポパイと呼ばれるドイル刑事と相棒のラソー刑事は、薬物対策課で辣腕を振るっていたが、強引な捜査でしばしば問題をおこしていた。ある夜、ナイトクラブで、金遣いの荒い夫婦を発見し、不審に思ったドイルとラソーはその夫婦を捜査する。夫婦は、表向きはブルックリンでデリカテッセンを営んでいるが、夫のサル・ボガは、大物マフィアのワインストックの下で麻薬取引に関係していることがわかった。そして、サル・ボガがフランスとのヘロインの大口取引を任されるという情報が入り、財務省麻薬取締部と一緒に捜査を進めることに。すると、“フレンチ・コネクション”と呼ばれる、マルセイユの黒幕シャルニエがニューヨークに来ていることを突き止める。ドイルはシャルニエを執拗に追い続けるが…というストーリー。
ちょっと古めの作品を見てみた。最近は、編集方法に不満をもつことが多かったので、過去の名作でもみて勉強してみようかと、作品賞やら編集賞を多く受賞している本作をチョイスしてみた。
とは思ったものの、なんとも難しい。正直に言うと、冒頭の30分を観たところで、ものすごくテンポが悪く感じられて、これがアカデミー賞作品?と思ってしまった(もちろん、途中からぐっと持ち直すのだが)。公開当時、どういう受け止められ方をしていたのか、先輩方の話を伺いたい気持ちである(イヤミではなく)。ジーン・ハックマンの他に、ジョーズの人が刑事役で、バディ物としてスタートするのだが、一緒に張り込みこそせよ協力したアクションシーンなどはあまりなく、途中からは、ほぼハックマンの一人舞台になる(DVDのパッケージも彼一人)。実話ベースなので、バディ物の定義というかバランスは無視されたのか、“バディ物”自体が確立されていなかったのか…、そのあたりはよくわからない(もし、後者だとしたら興味深く、研究の価値ありなのだが)。
高架下のカーアクションは大迫力で、CGの無い時代、逆にウソくささがなくて一見の価値あり。キャラクター設定として奥深さは感じられないが、それを補って余りあるジーン・ハックマンの演技も鬼気迫るものがある。
しかし、今は、警察モノがあふれているせいか、こんな捜査してたら立件できないよ!とか、そこで撃っちゃったら内務調査が!とか、証拠の保全は?!とか、色々頭をよぎってしまう。でも、それは、そういう見方しかできなくなってしまった私の方が悪いのかもしれない。
また、なかなか展開しないなあとやきもししていたら、最後は投げっぱなし状態のラストだった。今だったら、いくら実話がモデルだからといって、許されないだろう。
そういう諸々含めて、実に感想を述べるのが難しい。まあ、実録モノのテイストに、骨太のカーチェイスやバイオレンスを加味した感じが、ひとつの方向性として受け入れられていたということかもしれない。
ひとつの時代の1ページの風を感じる…という意味では、お薦めできるが、純粋に今、刑事ドラマ・ハードボイルドを楽しみたいという人には、他の作品を薦めることになるだろう。このくらいで勘弁してもらいたい。
公開国:日本
時 間:128分
監 督:紀里谷和明
出 演:江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ、要潤、玉山鉄二、チェ・ホンマン、佐藤江梨子、戸田恵梨香、鶴田真由、りょう、藤澤恵麻、佐田真由美、深澤嵐、福田麻由子、広田亮平、田辺季正、佐藤健、蛭子能収、六平直政、小日向文世、中村橋之助、寺島進、平幹二朗、伊武雅刀、奥田瑛二 他
コピー:愛する者のために。
戦国っぽい世界を舞台に、大泥棒・石川五右衛門など歴史上の人物が繰り広げるストーリー。
…としか説明することができない薄っぺらなお話。
映像センス的には、和製ザック・スナイダーといいたいところなのだが、残念ながら明確に劣っている。
比べれば一目瞭然。たとえば、本作のはじめの方に、五右衛門の殺陣のシーンがあって、その中に動きがスピードアップする表現があるが、『300』の戦闘シーンと比較してほしい。本作はまったく迫力が無く、その軽さは滑稽ですらある。とにかく“肉”が動いてる感じがまったくない。格闘ゲームに劣る。
また、カメラアングルや、画角の割り方など、もうすこし工夫したほうがいい。すごく薄っぺらい。色合いも全編ずーっと同じでメリハリがなく、目が飽きてしまう(統一感があることと、代わり映えのないことは別だ)。
それから、セリフや演出が、所々変だ。
楽市楽座で貧富の格差が広がった、、とか、才蔵が死に際に世の中を憂うセリフとか、現代の世相を盛り込んだつもりなのかもしれないが、あまりにうすっぺらな政治見識で、観ているほうがはずかしくなってくる。
「これがお前の自由の代償だ!」???五右衛門が気の利かない頭の悪い人間だっていうだけで、自由云々は関係ない。
ものすごい忍術がつかえる人間なのに、満足に人を掻き分けることもできない。正体がバレるからという理由なら、名前を呼ぶな。ずっとその場にいるな。
秀吉が死んだ後、何が目的で、石田光成と徳川家康の戦いに斬り込んでいったのか、よくわからない。まあ、戦乱を早く終わらせたいってことなんだろうけど、説教たれるために家康の所にまで切り込む理由がよくわからん。
ゴリのキャラクターに、何をさせたいのか。打算的な人間の愚かさを表現したかったのか?むしろ正論を語っていて、狂言回し的なキャラだったのに、こういう扱いにするかねぇ。わびしさなどまったく感じず、不快になる。大体、新参の足軽みたいなのが、なんで純白ヨロイなんか着て家康の傍にいるのか。その理由を考えてたら、ハナシが見えなくなってしまった。
紀里谷監督は、シナリオや製作は他人に任せたほうがいい。もうすこし映像に注力することで、いくらか作品全体のクオリティが向上するだろう。
本作を観ることはお薦めしない。まず、傍らに雑誌があるなら、読みはじめてしまう。カーペットが汚れていたら、コロコロをし始めてしまう。とにかく、鑑賞者を吸い付ける能力に著しく欠ける作品だ。私はモニタの外の何かに、何度も何度も気をとられたが、このレビューを書くために、仕方なく、その度に巻き戻した。
公開年:1999年
公開国:アメリカ
時 間:139分
監 督:デヴィッド・フィンチャー
出 演:エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーター、ミート・ローフ・アディ、ジャレッド・レトー 他
ノミネート:【1999年/第72回アカデミー賞】音響効果編集賞
【2000年/第9回MTVムービー・アワード】格闘シーン賞(エドワード・ノートン:自分自身との対決に)
コピー:危害、破壊、石鹸。
自動車会社のリコール調査員をしているジャックは不眠症。病的なまでにお洒落な雑誌に出てくるような私生活をおくっているが、その心は満たされない。そんなある日、出張中に自宅が爆発。出張中の機内でであった石鹸行商人タイラー・ダーデンに助けを求めた。そして、テイラーに導かれるまま、謎の秘密組織「ファイト・クラブ」のメンバーになるが…というストーリー。
私は『ファイト・クラブ』を、年に一回は必ず観てしまう。今まで何度観ただろう。突然無性に観たくなるのだが、自分でも理由は不明だ。ただ、私は本作を、シナリオの教科書だなと、思っている。『シックス・センス』だと、オチがわかった後に観るとしても答え合わせ的に一回みるくらいでしょ。この映画はオチがわかっても、それ以外の仕掛けが面白いので、何度も観れる(私は)。
満たされない自分から脱却するために、別人格をつくって実現し、それに気付いて対峙するまでが、ストーリーの主筋だが、その間に何をもってくるかが、絶妙なのだ。病人の互助グループ。自動車リコールの調査員。石鹸の原料の入手法。ファイト・クラブメンバーへの宿題…等々。
おそらくこれらは原作の段階で盛り込まれているのだろうが、デヴィッド・フィンチャーも良くまとめている。
本作は、自分でも何でここまで好きなのか整理できていないので、お薦めするとかしないとか偉そうなことは言わない。全然、受賞していないけど、私は見る度に賞をあげてるよ。
公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:M・ナイト・シャマラン
出 演:ポール・ジアマッティ、ブライス・ダラス・ハワード、ボブ・バラバン、ジェフリー・ライト、サリター・チョウドリー、フレディ・ロドリゲス、ビル・アーウィン、ジェレッド・ヘアイズ、ブライス・ダラス・ハワード、ジェフリー・ライト、M.ナイト・シャマラン 他
受 賞:【2006年/第27回ラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)】ワースト監督賞(M・ナイト・シャマラン)、ワースト助演男優賞(M・ナイト・シャマラン)
コピー:「急いで。ハッピーエンドまで、もう時間がないわ」
アパートの管理人クリーブランドの前に、おとぎ話に登場する水の精霊が現れる。彼女は「青い世界」からある目的のために人間界にやって来たのだが、怪物に追われており、目的を果たせないと自分の世界に戻れないという。クリーブランドは、アパートの住民たちの協力を得ておとぎ話に語られる協力者を集め、彼女が無事に戻れるように手助けしようとするが…というストーリー。
公開当時、あのシックス・センス、サインのM・ナイト・シャマラン監督が送る!みたいにCMで煽り、ハードル上がりまくったせいで、逆に、多くの鑑賞者を失望させ、評論家からメタメタにけなされた本作。実は、以前にレンタルして観始めたのだが、途中で止めてしまったことがある。今回は再チャレンジ。
シックス・センス的な展開を期待して観ると、そりゃあこの映画はぜんぜんおもしろくないだろう。ああいったオチで見せる映画ではないのだから。これは、宣伝手法にも大いに問題があっただろう。
まあ、それはそれとして、シャマラン監督がつくったファンタジーなのだ…ということを心に留め置いて観ることにした。しかし、6割くらいまでは、なんとか我慢できたが、それを過ぎると、もうどうにもならない。
とにかく、シナリオがふらふら迷走していて、何を伝えたいのかわからないのだ。ファンタジーならば、なにか寓意みたいなものが見えてくるものだが、見えない。
箇条書きにする。
・水の精霊が現れて目的を果たすまでをひとつの冒険譚と見ることができるが、その過程・謎解きの仕掛けがぜんぜん面白くない。
・ヒーラーが癒しながら、実は自分が癒されているというわけだが、「他人を癒すことは自分を癒すことに繋がる」、、という説教くさいメッセージなのか?そうしたいなら、管理人の心の傷の部分をもっとクローズアップしなくてはならないのではないか。
・これから書く本によって、将来の革新に影響を及ぼすというくだりは、シャマラン本人の願望か?それをストレートに映画にして、さらに監督本人が演じるというのは、あまりにも気持ち悪くないか?(そういうのも含めてラジー賞なのかな)
・映画評論家を殺したが、何か意味があったのか?ストレス解消か?その本作自体がクソミソに評論されることになるという、壮大なコメディだったのか?(そういうのも含めてラジー賞なのかな(笑))
・協力者と運命付けられている人がいたり、精霊が未来を告げたり、予定説的な宗教観の押し付け?自由意志の否定?
特に、最後が気に喰わない。『サイン』のラストは私のお気に入りなのだが(別途レビューする)、『サイン』で感じさせてくれる、神か何かはわからないが大いなる意思の実感のようなものが、本作で、妙にはっきりした運命を司る神になってしまう。実も蓋もない。なにか『サイン』のよさを汚されたみたいで、実に不快。
シャマラン監督の中にある雑多のものを、未整理のまま放り込んでしまっており、1本のテーマが見えない。申し訳ないが、このように、とりあえずまとめてみた程度で誤魔化されるほど、世の中の人は馬鹿ではない。
次作の『ハプニング』で汚名返上できるかと思ったが、上塗りしてしまったところをみると(これも別途レビュする)、脚本を作る能力に限界がきたのだろう。『ヴィレッジ』、本作、『ハプニング』と3アウトで空振り三振ですからね。シャマランは、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のシナリオに参加する予定だったようだが、断ったみたいだね。一度、別の監督の仕事を見るというのは、彼にとっていいチャンスだったろうに。
残念ながら、本作は観る必要はない。あなたの人生になにももたらさない。彼に監督させようというプロデューサは、もういないのではないだろうか。まあ、私が心配するようなことではないが。
公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:117分
監 督:ザック・スナイダー
出 演:ジェラルド・バトラー、レナ・ヘディ、デヴィッド・ウェンハム、ドミニク・ウェスト、マイケル・ファスベンダー、ヴィンセント・リーガン、トム・ウィズダム、アンドリュー・プレヴィン、アンドリュー・ティアナン、ロドリゴ・サントロ、マリー=ジュリー・リヴェス、スティーヴン・マクハティ、タイロン・ベンスキン、ピーター・メンサー 他
受 賞:【2007年/第16回MTVムービー・アワード】格闘シーン賞(ジェラルド・バトラーvs“The Uber Immortal”)
コピー:300人VS1,000,000人、真っ向勝負!
史上最も熾烈な闘いのひとつといわれるテルモピュライの戦いを、斬新な映像で描いた作品…とのことだが、お恥ずかしいことに、高校地歴の教員免許もっていながら、テルモピュライの戦いってなんだっけ状態で、慌てて調べる始末。ヘロドトスの『歴史』にのっている、ギリシャ史上、非常に有名な戦だった。300人という人数はもちろん、戦力差・戦地・戦術・勝敗等々、史実にほぼ忠実なようだ。
まあ、言い訳しても仕方ないのだが、歴史の授業でスパルタなどの国の制度などを教えることは多いだろうが、個々の戦争を教えることはほぼないと思う(ましてや過程や戦術までは)。出てきてもペロポネソス戦争とかカイロネイアの戦いくらいだろう。これを読んでいる皆でも、ああ、あの時教えてもらったあれかぁ…という人は、ごく少数だと思う。
ただ、その史実を忠実に再現することが、この映画の目的でないのは明白であるから、気にする必要はまったくない。原作コミックが元のようだが、とにかく、漢(おとこ)臭さ満開で、憎ったらしい強大な敵に対して、義心を通り越してマゾ的に、戦いに向かっていく姿が描かれる。
本作では、スパルタは侵略される側で、国民の自由を守るために、死をも厭わない姿に描かれるが、実際は基本的に侵略国家だし、ペルシアから奴隷の話が出ると自由を主張して、まるで奴隷制度自体を快く思っていないようにも見えるが、当然スパルタも他のギリシアの国々と同じく奴隷や半自由民がいる。それどころが、自分らは戦闘だけに明けくれ、食糧生産・商業のすべては専ら彼らが担っているという、偏った制度を持っている。
そのあたりをクローズアップしてしまうと、彼らに共感しにくくなるので、ほとんど語られない。語られるのは戦士がいかにして育成されていくか…という過程くらいなもので、他にはあえて蓋をして、スパルタVS.ペルシャの善悪の構図をつくっていき、圧倒的な困難をその肉体と精神で乗り越えるという、わかりやすい勧善懲悪モノに仕上げていることが、功を奏している。だから、むしろこの戦争のこともスパルタのことも知らないほうが、楽しめるはずである。
乗り越えるとか勧善懲悪とか言っているけど、結局最後は負けるわけだから乗り越えていないよね?という意見はあると思うが、私は十分乗り越えていると思う。観ればわかる。
『ウォッチメン』のレビュの時にも書いたが、監督は同じザック・スタイナー。原作を手にとってみたことはないが、何かで紹介されいたのを見る限り、基本的なビジュアルイメージ(色の彩度を抑えた統一感)は原作由来と思われる。やりすぎればモノクロと大差ない状態になってしまうところだが、肉体や構造物が際立って美しく表現できており、かなり注力したことが伺える。戦闘シーンの速度変化表現もごく自然で効果的。下手な監督がやると、わざとらしくなってしまうところだろう。
他にもビジュアルセンスに長けた監督はいるが、ここまで(いい意味で)病的に細部まで気をめぐらすことができる能力は評価したい(ビジュアル面での穴は見つからない。まったく引っかかった部分はない)。彼には、今後も、コミック作品の映画化のようなオファーが続くと予想する。次作に期待したい。
まず、本作は歴史ドラマとしてみないこと。彼らの信義の正しさを深く追求しないこと。この戦いの先に何が残ったか?とか考えないこと。ただ、もっともらしい詭弁ばかり吐く憎たらしいやつ(皆さんの周りにもいるでしょ)を、ただ単に憎たらしいと思い、そのイラっとした気持ちを、スパルタ戦士と一緒に勇気を奮ってバッサリやる。そういうノリで観てほしい。
#まったくの予断だが、クセルクセスの(役者の)顔を見ていると、日ハム・ダルビッシュは、ペルシャ系の遺伝子が濃いのだなぁ…と思う。
公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:113分
監 督:リチャード・ケリー
出 演:ジェイク・ギレンホール、ジェナ・マローン、メアリー・マクドネル、ドリュー・バリモア、パトリック・スウェイジ、ホームズ・オズボーン、キャサリン・ロス、ノア・ワイリー、ベス・グラント、マギー・ギレンホール、デイヴィー・チェイス、ジェームズ・デュヴァル、スチュアート・ストーン、ゲイリー・ランディ、セス・ローゲン、リー・ウィーヴァー、スコッティ・リーヴェンワース、フィリス・リオンズ 他
ノミネート:【2001年/第17回インディペンデント・スピリット】主演男優賞(ジェイク・ギレンホール)、新人作品賞、新人脚本賞(リチャード・ケリー)
コピー:死んでいるのか? 生きているのか?
「世界の終りまで、あと28日6時間42分12秒」
ある晩、高校生ドニー・ダーコは、現れた銀色のウサギに導かれにフラフラと家を出ていくと、あと28日6時間42分12秒で世界が終わると告げられる。翌朝、ドニーはゴルフ場で目を覚まし、帰宅すると、ジェット機のエンジンが落下していてドニーの部屋を直撃していた。その日から彼の周囲では、不可解な出来事が次々と起こり始める…というストーリー。
ドリュー・バリモアが脚本に惚れ込み製作総指揮として参加しており、サンダンス映画祭で「メメント」「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」とともに話題になった作品らしい。
確かに、なかなか他にはないストーリー展開だ。オカルトか、サイコか、SFか、青春モノか、いくら観進めていっても、どういう展開になるか、全然読めなかった。悪い意味で、いっているのではなく、目がはなせない、いいシナリオだと思う。
ただ、タイムリミットが設定されている映画なので、そろそろ最後の方向性が見えてくるなぁ…というころになってくると、どの展開になっても、面白く終わらせるのが難しいことに気付くだろう。そして案の定、それは的中し、残念ながら、本作のシナリオは破綻する。
ネタバレになってしまうが、
公開国:ドイツ
時 間:121分
監 督:ヴォルフガング・ベッカー
出 演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、マリア・シモン、チュルパン・ハマートヴァ、フロリアン・ルーカス 他
受 賞:【2003年/第53回ベルリン国際映画祭】ヨーロピアンフィルム賞 (ヴォルフガング・ベッカー)
【2002年/第37回ヨーロッパ映画賞】作品賞、男優賞(ダニエル・ブリュール)、脚本賞(ベルント・リヒテンベルグ)、観客賞[監督賞](ヴォルフガング・ベッカー)、観客賞[男優賞](ダニエル・ブリュール)、観客賞[女優賞](カトリーン・ザース)
【2003年/第29回セザール賞】EU[欧州連合]作品賞(ヴォルフガング・ベッカー)
コピー:時代は変わっても、心は変わらない。
1989年、東ベルリン。バリバリの社会主義者の母が心臓発作後に昏睡状態になるが、その間に東西ドイツが統一。意識を取り戻した母が再びショックを受けないよう、息子は消滅前の東ドイツを必死に見せ続けるようと奮闘する…というストーリー。
おしい。実におしい。あとちょっと何とかすれば、名作なんだが。とにかくおしい。それが、本作を見ての感想だ。
ネタバレになってしまうが、遠慮せずに苦情をいうと、、、、
お母さんが全然瀕死に見えないので、ウソをつくメリットがまったく感じられず、すぐに本当のことをいったほうがよいのでは?と思わざるを得ない。だから、主人公に共感できないし、それが滑稽だとも思えない。こりゃ、たしかにウソをついたほうがいいかも…を思わせるような状態をつくらないといけない。
主人公の年齢をもうちょっと下にしたり、協力してくれる人たちが、もっとユニークな変人たちだったりすると、さらに、効果的だったかもしれないし、むしろ泣ける演出になったかも。とにかく、観ている方がそのウソを応援したくなるようにしなくては。
また、統一間もないのに、東ドイツの品物を探すのにそこまで苦労するものか。ピクルスのビンをこの映画のアイコンにしたかったのかもしれないが、失敗している。
部屋を偽装するときのテケテケも、稚拙すぎるし、ちょこちょこうっとしい演出が挿入されるのも気になる。母親の貯金がパーになるくだりは、必要だっただろうか?どういう目的で挿入したのだろう。なんで家具がいつまでも家の前にあるかも、よくわからないし。とにかく、設定の練り上げが甘い。
一番残念だったのは、はじめはお母さんのためだったのに、途中から自分のためになっている…という部分に、あまり焦点が当たっていないこと。もっとクローズアップすべきだ。むしろ、この映画の主テーマに据えてもいいくらいで、母親は気付いているのに、だまされているフリをしなくてはと、いつのまにか立場が逆転…的な展開を明確にしないと。
いやはや、なんとも残念。すごくいいところに目をつけたのに、映画のテクニックが追いついていない悲劇。是非とも、イギリスかどこかで、もっとコメディのツボを心得ている監督にリメイクしてもらいたい。
結構けなしてしまったが、なんだかんだ最後の20分くらいで、まとめあげているので、決して駄作ではない。皆さんも、私と同じように、凡作になってしまった残念さを噛みしめてみるといいだろう。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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