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公開年:2009年
公開国:フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ
時 間:137分
監 督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出 演:ジャレッド・レトー、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン、リス・エヴァンス、ナターシャ・リトル、トビー・レグボ、ジュノー・テンプル、クレア・ストーン、トマ・バーン、オードリー・ジャコミニ、ローラ・ブリュマーニュ、アラン・コーデュナー、ダニエル・メイズ、マイケル・ライリー、ハロルド・マニング、エミリー・ティルソン、ロリーヌ・スキーアン、アンダース・モリス、パスカル・デュケンヌ、ノア・デ・コスタンツォ、キアラ・カゼッリ 他
受 賞:【2009年/第66回ヴェネチア国際映画祭】技術功績賞(Sylvie Oliv)
【2010年/第23回ヨーロッパ映画賞】観客賞
ニモが目覚めると、そこは西暦2092年の世界。自分が118歳であることが告げられる。技術進歩によって、もはや人は死ぬことのない世界になっていたが、ニモはこの世に残った唯一の“死にゆく人間”として注目を集めていた。命の灯が消えゆく中、記者のインタビューを受けるニモは、これまでの自分の人生を語り始める。9歳のニモは、両親の離婚によって、母についていくか、父の元に残るか選択を迫られていた。ニモは、母についていった自分の過去、父の元に残った過去、そして3人の女性との恋愛を語り始め、インタビュアーを困惑させる。ニモが語る幾通りもの人生の中で、どれが真実なのか…というストーリー。
偶然だと思うけど、昨日の『モンスターホテル』の娘と同じ118歳だな。なんか欧米では意味のある数字なんだろうか…。まあ、それはそれとして…。
離婚した両親のどちらと暮らすのかを起点にして、3人の女性との“if”が次々と語られる。様々なポイントで枝分かれした記憶を散りばめたシナリオになっている。ただ散発的にエピソードを並べているように見えるが、それぞれの対比が際立つように構成されており、苦労の跡が伺える。
ただ、苦労したかどうかは別にして、このお話の最大の焦点である“なんで、この老人は併存しえない記憶を語っているのか?”という部分が、臨終前故の単なる記憶の創出と混濁なのか、希求して止まない望みを語っているのか、単なるホラ話なのか、SF的なパラレルワールドのお話なのか、結局、答えを出していないように思える。冒頭のモルグの状態が正なのか?それとも9歳の少年に押し付けられたつらい選択のせいで、多重人格者よろしく、複数の妄想を生み出したのか? それとも、仏教の唯識論よろしく見えている世界なんかすべて脳が生み出した幻想だとでもいいたいのか?途中、宇宙の創造(時間という概念の出現)やエントロピーについて滔々と語るのだが、持ち出しただけで答えにつながっていない。
終盤まで観進めていくと、果たしてSF設定自体が必要なのか?と思えてくる。耳目を集めて、老人の話を真剣に聞きたいと思っている人を登場させたいがためだけに、SF設定を持ってきたのではなかろうか。別に臨終間際の老人の話をだれかが真剣に聞いていればよいだけのことである。老人のたわごとか?という可能性を演出する意図かもしれないが、いずれにせよ答えをだしていないから意味がない。
もしかすると、人生っていうのは無限の可能性があるんだよ!っていう前向きなメッセージを発信したいのかもしれないけど、登場人物で誰一人として前向きな人は出てこないし、いい気分でそのメッセージを受け取った人は皆無に近いと思う。
意図も真意も伝わってこないという、実につらい作品。
公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:92分
監 督:ゲンディ・タルタコフスキー
出 演:アダム・サンドラー、アンディ・サムバーグ、セレーナ・ゴメス、ケヴィン・ジェームズ、フラン・ドレシャー、スティーヴ・ブシェミ、モリー・シャノン、デヴィッド・スペード、シーロー・グリーン、ジョン・ロヴィッツ 他
ノミネート:【2012年/第70回ゴールデン・グローブ】アニメーション作品賞
コピー:伝統と格式を誇るドラキュラのホテル。創業以来の大事件!
人間が紛れ込み、かわいい娘と恋に落ちた!?
人々を恐怖に陥れると考えられているモンスターたちは、実は人間のことを恐れていた。そんなモンスターたちが、怖い人間たちを避けて、安心してくつろげる場所を提供しようと、ドラキュラがトランシルバニアに作ったのが“モンスター・ホテル”だ。ドラキュラには、最愛の一人娘メイヴィスがいるが、明日は彼女の118歳の誕生日。そのお祝いに世界中からモンスターたちが集まってきた。これまで、人間と接触しないようにホテルの中から出してもらえなかったメイヴィスだったが、118歳になったら外の世界を見に行ってもよいという約束をしており、わくわくしていた。とはいえ、やはり人間世界と関わって欲しくないドラキュラは、ホテルから少し離れた場所に、人間の町のセットを作り、ホテルの従業員たちにメイヴィスを脅かすように命じるのだった。そして、すっかり人間のことがいイヤになって彼女は戻ってきてしまう。そんな中、世界旅行中の陽気な人間の若者ジョニーがモンスター・ホテルに迷い込んできてしまい…というストーリー。
いかにもつまらなそうな感じの絵柄で、まったく期待していなかったのだが、これが意外と巧みなシナリオで結構たのしめてしまった。
まず、モンスターが実は人間を恐れているという設定。そして、特にドラキュラが人間を恐れ、娘を完全な箱入りにしてしまった理由。そこに人間の若者が紛れ込んでくるのだが、本当は一番人間がくるのを恐れている存在なのに、他のモンスターにそれがばれてしまうとホテルの存続問題になってしまうため隠す側に廻らねばならないというシチュエーション。加えて、若者ジョニーが、娘メイヴィスを良さげな関係に発展するだけでなく、モンスターたちともうまくやってしまうという、ドラキュラにとってはなんとも複雑な展開に。チャラ男のジョニーとドラキュラが、打ち解けていく過程も、なかなか微笑ましかったりする。
これらの複数要素が絶妙にミックスされた、非常におもしろいシナリオだった。
ところが、最後の大団円に向かうストーリーの流れだけが、あまりにも稚拙。出ていたジョニーを連れ戻すために、怖がっていた人間の町に向かうドラキュラ一行。偶然、モンスターフェスティバルが開かれていたという流れは、まあ許すとする。しかし、そこで自分達がモンスターであることを告白したら、そこにいた人間たちが、何の躊躇もなくあっさり協力して、めでたしめでたしという展開は、いくらなんでもいい加減すぎる。画竜点睛を欠くとは、まさにこのことか。
この部分だけを作り直せばなかなかの名作になったであろう。非常に残念。
ちなみに、ジョニー役の吹き替えは、オリエンタルラジオの藤森がやっているが、意外や意外ウマかった。単におちゃらけキャラってことで安易にキャスティングされただけだとは思うのだが、芸人としてのフレーズを差し込まなけりゃ彼だと気付かない人がいたかも…と思うくらいいい出来。もっと評価されてよいのでは?
公開年:2013年
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:M・ナイト・シャマラン
出 演:ウィル・スミス、ジェイデン・スミス、ソフィー・オコネドー、ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ、リンカーン・ルイス、サッシャ・ダーワン、クリス・ギア、イザベル・ファーマン、クリストファー・ヒヴュ、デヴィッド・デンマン、ダレル・フォスター 他
コピー:1000年後の地球。そこは人類に牙をむく緑の惑星。
危険は目の前にあるが、恐怖はお前の中にある。
西暦3072年。人類は知友の自然環境を破壊してしまい、1000年以上前に遠く離れたノヴァ・プライムに移住していた。ノヴァ・プライムには先住民がおり、彼らは人類を抹殺する巨大生物“アーサ”をつくり人間の侵略に対抗した。アーサは、人間の恐怖感で生じる微かな臭いを検知し、人を襲撃する。人間も、アーサに対抗するレンジャー部隊を組織して長らく戦闘を繰り広げてきた。現在のレンジャー部隊の最高司令官サイファ・レイジは、恐怖心を抱くことがないためアーサから見つかることがないという特殊能力の持ち主で、数多くの仲間を救った伝説の男。そして彼の息子キタイも、父と同じようにレンジャーを目指して訓練を受けていたが、精神面での問題があり落第してしまう。サイファは、妻の薦めもあって、キタイを次の宇宙遠征任務に同行さることにする。しかし、宇宙船が小惑星嵐に遭遇し故障。緊急的に第一級隔離惑星に不時着を試みるも、宇宙船は二つに折れて墜落してしまう。生き残ったサイファとキタイは、緊急信号を発しようとするが、発信機は機体から遠く離れた位置に落下していた。サイファが骨折して動けないため、キタイが発信機探索に向かうのだったが…というストーリー。
驚愕のクソ映画『エアベンダー』から3年。久々のシャマラン監督作品。脚本にも参加しているってことで、往年のノリを期待したが、お話の原案はウィル・スミスとのことで、シャマランっぽさは皆無といってよい。実は、全部、キタイを鍛えるため(潜在能力を開眼させるため)の、お芝居だったりして!なんて、のを期待したけど、そんなことはなかった。
ウィル・スミスは足を骨折して動けない役なので座っているだけ。つまりアクションはほぼ無し。おまけに、動き回るのは息子のジェイデン・スミス演じるキタイばかり。父親のサイファは“無感情”に近い役だし、親子のコミュニケーションも遠隔通信だし、父親は気絶しそうだし、終いには通信は途切れちゃう。ライオンが子ライオンを鍛える的な演出は、きわめて薄い。
これ、SF設定にしちゃったのが逆効果なんじゃないかと思う(ウィル・スミスの原案の段階ではSFじゃなかったらしいのよ)。不時着していろいろ壊れているとはいえ、便利ツールが盛りだくさん。この万能感が危機感を削いでいる。途中、いろんな動物に襲われてピンチになるが、よくわからん生物に襲われても、痛みとか伝わってこないし。キャンペーンで来日するたびに見せる、クソガキっぷりに閉口させられるわけだが、やんちゃしても許されるくらいの演技力でもあれば納得してあげるのだが、学芸会的なオドオドしたり苦しんだりする演技ばかりで、全然ピンチっぷりが伝わってこない。
#隠す必要も無いと思うので言っちゃうけど、墜落した星は実は地球でした…っていう設定が、驚きもないし、謎解きにもなっていないし、ピンチ脱出のポイントにもなっていないし、全然意味がないのね。
決定的に不足しているのが、“知恵”で乗り越えたっていう部分。“勇気”と“根性”だけで成長されても、いまいち共感しにくかったりする。
CGは素晴らしく、目が飽きることはないのだが、結果的には極めて普通の作品(『エアベンダー』に比べれば)。少年のグローインアップムービーを作りたかったのなら、シャマランにお願いするのが間違っていたんじゃなかな。
公開年:1999年
公開国:アメリカ
時 間:110分
監 督:トロイ・ダフィー
出 演:ウィレム・デフォー、ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス、デヴィッド・デラ・ロッコ、ビリー・コノリー、デヴィッド・フェリー、ドット・ジョーンズ 他
コピー:いまの世の中、間違ってると思いませんか?法で裁けぬ悪人どもに、“死の制裁”を!
サウスボストンに住む精肉工場に勤務するコナー・マクナマスとマーフィー・マクナマスの二卵性双生児。ある日、二人が仲間たちと一緒に行きつけのバーで楽しんでいると、ロシアンマフィアのイワンたちが押し掛け、店主に立ち退きを迫ってきた。イワンたちとマクナマス兄弟たちは大乱闘となり、その場はコナーたちが勝利を収める。しかし、その後イワンたちは復讐のためにマクナマス兄弟の部屋を襲撃し、二人を殺そうとするが、危機一髪のところで大反撃に転じ彼らを殺してしまう。警察沙汰となり報道もされるが、結局、正当防衛が認められ不起訴に。厄介なロシアンマフィアを退治したということで、世間の評判も上々。マスコミの取材から逃れるために、留置場で一泊した二人は、そこで“悪人を処刑せよ”という神の啓示をうけるのだった。出所した二人は、イワンが持っていた金を元に大量の武器を購入するのだったが…というストーリー。
誰でも一度は考える“必殺仕事人”的なストーリーだが、なかなかヒネりが効いている。
冒頭ですっかり“処刑人”になった二人の姿が描かれているので、元々そういう仕事をしているのかと思ったが、そういうことではなく掴みのシーン。その後、時間が少し遡って、彼らが処刑人になるまでの経緯から描かれる。
元々二人の正義感が強かったので…ということが主の理由ではなく、“神の啓示”というところがおもしろい。始めたものの、何をやっていいのかわからなかったりするのもご愛嬌。でも、聖書に出てくる預言者(予言者に非ず)だって、神の声に命じられるまま行動するしかなかったわけで、まさにこの兄弟は“預言者”と同じ。マスコミも彼らを“聖人”と称する。
ハードな二人の対局するのが、ウィレム・デフォー演じるFBI捜査官スメッカーのキャラクターがおもしろい。地元警察の無能さを正面切ってバカにしまくるが、確かに有能。でも、ウォークマンでクラッシックを聞きながら現場検証とかしちゃうアクの強い人。そしてゲイ。とにかく彼の劇場的な怪演&暴走が、本作の屋台骨の一本といってよい。
中盤になってくると、処刑をする直前⇒警察の現場検証⇒処刑の模様⇒スメッカーの苦悩というセットが何度も繰り返され、まるでお笑いコントのようなノリを帯びてくる。その後、スメッカーの苦悩は極限となるが、彼はどういう行動を採るか。これもなかなかおもしろかった。
ラスボス的な感じで、収監されている無敵の殺し屋エル・ドゥーチェが登場し、二人に襲い掛かるのだが、彼がどうなるのか(というか正体)については、個人的にはちょっと不満かも。
凡人なら破滅的なラストにするところだけど、そうしなかったのは良いセンスだと思う。ただし、“市民たちの反応”で終わるラストは、賛否が分かれるところかな。個人的には、こういう煙に巻いたような演出は好きだけどね。
本作を不愉快に感じる人が結構いるみたいだけど、これを愉しめない人とはお友達になれないかな…って思うくらい面白かった。お薦め。
#なお、時間を空けて、続編も出来た模様。いずれ借りてくる。
公開年:1975年
公開国:アメリカ
時 間:159分
監 督:ロバート・アルトマン
出 演:ヘンリー・ギブソン、リリー・トムリン、ロニー・ブレイクリー、グウェン・ウェルズ、シェリー・デュヴァル、キーナン・ウィン、バーバラ・ハリス、スコット・グレン、ロバート・ドクィ、エリオット・グールド、ティモシー・ブラウン、デヴィッド・ヘイワード、バート・レムゼン、ドナ・デントン、ジュリー・クリスティ、カレン・ブラック、アレン・ガーフィールド、バーバラ・バクスレー、ネッド・ビーティ、マイケル・マーフィ、ジェフ・ゴールドブラム、クリスティナ・レインズ、ジェラルディン・チャップリン、キース・キャラダイン、デヴィッド・アーキン 他
受 賞:【1975年/第48回アカデミー賞】歌曲賞(キース・キャラダイン[作詞・作曲])
【1975年/第10回全米批評家協会賞】作品賞、助演男優賞(ヘンリー・ギブソン)、助演女優賞(リリー・トムリン)、監督賞(ロバート・アルトマン)
【1975年/第41回NY批評家協会賞】作品賞、助演女優賞(リリー・トムリン)、監督賞(ロバート・アルトマン)
【1975年/第1回LA批評家協会賞】脚本賞(ジョーン・テュークスベリー)
【1975年/第33回ゴールデン・グローブ】歌曲賞(キース・キャラダイン[作詞・作曲]I'm Easy)
【1992年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
コピー:どこにも『自由』なんか ないけれど ここ(ナッシュビル)に来れば 歌がある! 青春がある! これが映画だ!これがアメリカだ! これが'76年の君だ!
カントリー&ウエスタンのメッカであり、アメリカで最も保守的といわれるテネシー州ナッシュビル。この町で、大統領候補ハル・ウォーカーがキャンペーンを行うことになっていた。そのキャンペーンの模様を取材にきたBBCの女性レポーター・オパールは、イギリスとは異なる雰囲気に大興奮していた。彼女はさっそく、この町の大スターである歌手ヘブン・ハミルトンねの取材を試みるが、あっさり断られてしまう。ヘブンは自己顕示欲の塊のような人間で、清廉潔白な歌手というイメージのために、人前で酒すら飲まぬ男だった。ハル・ウォーカーは、そんな彼を利用しようと密かに画策しており、彼をテネシー州知事に推そうとしていた。そして、キャンペーンを成功させるために、ハル・ウォーカーの腹心であるジョン・トリプレットと弁護士デルバート・リーズが奔走し、人気歌手たちに片っ端から接触するのだったが…というストーリー。
アルトマンといえば群像劇。群像劇といえばアルトマン。
こんな言い方をしちゃぁ何だが、シチュエーションだけが用意されていて、後はキャラが勝手に動くがままにしているような感じで、確固たるストーリーの方向性がない…と感じてしまうほど。あらすじを簡単にまとめられるような内容ではなく、非常に苦労してしまう。
だから、展開を予想するようなことは放棄して、このアメリカ南部の何やら陰湿さと閉塞感が入り混じったような空気の中を漂うように鑑賞するのが正しいのだろう。長い作品なので、ゆっくり身を委ねることができれば愉しめる(私、風呂で半身浴しながら観たけど、さすがに最後までは観られなかった)。
ストーリーのベースはハル・ウォーカー大統領候補のキャンペーンが開催されるまでの5日間。しかし、この大統領候補の政策を流す宣伝カーは登場するが、候補本人が一切登場することがないのがミソ(あくまで設定以上の何者でもないってこと)。
一応、本作の裏に潜んでいるであろうと私が感じるテーマを述べておこう。群像劇なので、たくさんの登場人物が出てくるが、色々な歌手とその取り巻き、政治に関わる人々、そしてマスコミの人々、おおよそこれらに収まると思う。彼らの仕事上の信条の共通点は“自由”。自由の形は異なるのだが、間違いなく自由を標榜する人々なのである。その、それぞれの自由の違いの段差の中に、アメリカの姿が浮き彫りになるに違いない…というのが本作の狙いだと思う。で、ラストは、その“自由の国アメリカ”の大統領を選ぼうというイベントで、“自由への愛”が何をひきおこすのか。
この“自由”というテーマには必ずしもマッチしない場面も多々あって、私のこの観かたが正しいかどうかはわからないけど、まったく方向性を見つけられないと、本作の鑑賞はつらいものになるかもしれない。
決して娯楽作品ではないし、直球のシニカルな作品でもなかった。少なくとも、当時のアメリカ人ではない私たちにはピンとこない作品と感じられても、仕方が無い。
公開年:2011年
公開国:インドネシア
時 間:102分
監 督:ギャレス・エヴァンス
出 演:イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、ジョー・タスリム、ドニー・アラムシャー、レイ・サヘタピー、ピエール・グルノ、テガール・サトリヤ、ヴェルディ・ソライマン 他
コピー:強すぎ!殺りすぎ!敵多すぎ!
インドネシア・ジャカルタのスラム街にある30階の高層ビルは、麻薬王タマ・リヤディ配下のギャングやドラッグ売人が占拠していた。敵対するギャングや警察は、足を踏み入れることすらできない。しかし、警察はリヤディ逮捕のため強制捜査を命令。リヤディ新人警官ラマを含む20人のSWATチームによる奇襲作成が決行される。見張りを倒して突入し、順次フロアを制圧。リヤディがいる15階を目指すが、何故か作戦はリヤディ側に漏れており、迎撃された警官たちは次々と命を落とし、残されたラマたちはビル内に閉じ込められてしまう。さらに館内スピーカーからは、ビル住人に入り込んだ警察を撃退するゆに、ラマの声は響き…というストーリー。
インドネシア映画を観るのははじめてかも。
続編も作られ、ハリウッドでリメイクも決定!っていうけど、なにか本作独特の新規性はあるだろうか。アクションがすごいっていうだけなら、そのアクションをまねればいいだけで、リメイクする必要はないだろう。何が言いたいかというと、ストーリーが無さすぎじゃないか…ってこと。上に書いたあらすじ以上のものは何も無い。
作戦が敵に漏れていて、その黒幕は誰なのか?っていうのが、ストーリー上の強い軸のはずなのに、そこを深く掘り下げていない。取ってつけたように、主人公ラマの兄弟が敵の組織の一人っていう設定があるんだけど、あまり綺麗に処理できていない。主人公ラマにもうすぐ子供ができるっていう、あからさまな死亡フラグも同様。
この圧倒的に欠けているストーリー性を、ハリウッド流のシナリオ術で補完しようってことだろうか?もう一度いうが、別に似たような話をつくっても、パクりだ!なんて騒ぐ奴なんか出てきそうにないほど、オリジナリティは無いと思う。
確かに、アクションはすごい。演出を躊躇しちゃうような、頭を至近距離で撃つとか(画面の外じゃなく頭が打ちぬかれるところがたくさん描かれる)。銃撃戦だけじゃなく、長いナタみたいので切りあうとか、カンフーアクションみたいなフィジカルコンタクトも盛りだくさん。
でもね、はじめはいいんだけど、同じムーブが繰り返されるんだよね。飽きちゃう。ナタで水平に切り込んで、それをダッグやスウェーで交わすシーンを連発されちゃうと、嘘臭すぎて興醒めしちゃう。
で、結局、オチはどうやって終わったんだっけ?って観終わってそれほど時間が経っていないのに、思い出せないんだわ。これ。
荒削りにもほどがあるんだけど、でも、もしかしたら今後タイ映画よりも面白いものが生まれるのかも?ていうインドネシアへの期待は感じさせてくれる作品。
公開年:2000年
公開国:アメリカ
時 間:113分
監 督:スティーヴン・フリアーズ
出 演:ジョン・キューザック、ジャック・ブラック、リサ・ボネ、ジョエル・カーター、ジョーン・キューザック、サラ・ギルバート、イーベン・ヤイレ、トッド・ルイーソ、リリ・テイラー、ナターシャ・グレグソン・ワグナー、スージー・キューザック、ディック・キューザック、ブルース・スプリングスティーン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、クリス・バウアー、アレックス・デザート、 ドレイク・ベル 他
ノミネート:【2000年/第58回ゴールデン・グローブ】男優賞[コメディ/ミュージカル](ジョン・キューザック)
【2000年/第54回英国アカデミー賞】脚色賞(D・V・デヴィンセンティス、スティーヴ・ピンク、ジョン・キューザック、スコット・ローゼンバーグ)
【2001年/第10回MTVムービー・アワード】音楽シーン賞(ジャック・ブラック:ジャック・ブラックによる“Let's Get It On”)、ブレイクスルー演技賞[男優](ジャック・ブラック)、カメオ出演賞(ブルース・スプリングスティーン)
コピー:音楽オタクで恋愛オンチ。誰の胸にもラブソングが流れだすHi-Fiな恋の物語。
30代の独身男ロブ・ゴードンは、シカゴで小さな中古レコード店を経営している。あまりにも音楽へのこだわりが強く、好きな作品しか扱わないため儲かってはいないが、それなりに暮らせるだけの収入はある。そんなある日、同棲していた弁護士の恋人ローラが、突然出て行ってしまう。それをきっかけに、ロブは何で自分の恋愛はうまくいかないのか、これまでの失恋体験をリストアップして振り返る。ローラに付き合っているがいる男がいることが判明すると、思いはさらに暴走。リストアップした過去の恋人のペニーやサラやチャリーたちの現在の居場所を探り出し、自分の何が悪かったのか聞いて回る始末。そうやって、なんとかローラへの思いを断ち切ろうとするロブだったが、彼女への愛は消えることなく…というストーリー。
ロック好きにはたまらない作品だろう。オタクのダメ人間のコメディなんだけど、ジョン・キューザック演じる主人公は結構な数の女性と付き合っており、ナードじゃなくてギークに近い。一方、雇っているディックとバリーはナード寄りだったりして、バランスがおもしろい。そんな、ジャック・ブラック演じるバリーと内向的なディックとの会話が、馬鹿馬鹿しいんだけど、たまにちょっと心に刺さるのも良い。
彼らは大人になれない人たち。でも世の中の男性は、大人のふりができる人とできない人の二種類しかいないでしょ。"フリ”をすることなんかまっぴらごめんっていう素直な人たち。社会性に若干欠けているかもしれないけど、それなりに生きてる。男性は「アホだなー」と思いつつも共感し、女性は自分の周囲の男共がなんでアホなのか理解する一助になることだろう。
絶対に無理めなローラとの関係が再開した後も、微妙な崩壊の予兆を孕み続ける緊張感があったりして、うまいシナリオだった(コメディ調だけど、繰り広げられている恋愛模様はけっこうエグいかも)。そんな展開の中、ジャック・ブラックがいい味を出す。単なる端役かな…なんておもってたんだけど、最後の最後でズドンとやられる。意外や意外、ほっこりした気持ちで観終えることができる。
人間って見た目の印象じゃないよね。多分、人からはそんな風に見られているんだけど、自分の内面ってそうじゃないんだよな…って思ってる人はたくさんいると思う。別にモラトリアムってわけじゃないけど、チャンスというかきっかけが無いって人もいると思うの。いや、やりたいならごちゃごちゃいわないでやればいいじゃん!とか説教たれる人がいるけど、なんでもゴリゴリできる人とそうじゃない人はいるから。そういう意味だと、ちょっと変わった人たちにやさしくできるようになる作品かも。
男目線の恋愛物語としては、かなり優秀。
公開年:2008年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:デヴィッド・エアー
出 演:キアヌ・リーヴス、フォレスト・ウィッテカー、ヒュー・ローリー、クリス・エヴァンス、コモン、ザ・ゲーム、マルタ・イガレータ、ナオミ・ハリス、ジェイ・モーア、ジョン・コーベット、アマウリー・ノラスコ、テリー・クルーズ、セドリック・ジ・エンターテイナー、ノエル・グーリーエミー、マイケル・モンクス、クリー・スローン 他
コピー:最期に頼れるのは、魂か、弾丸か。
ロス市警のトム・ラドロー刑事は、自分のやり方を曲げない一匹狼。飲酒して犯罪現場に単独で乗り込み、犯人の射殺も厭わないその強引さ手段に、同僚達からは浮いた存在となっていた。しかし、上司のジャック・ワンダーだけは、そんなトムを評価し、庇護していた。ある日、トムのかつての相棒だったワシントンが、トムを内部調査部に密告しようとしているという噂が耳に入ってくる。腹が立ったトムは、話をつけようとワシントンを尾行するが、立ち寄った店に2人組みの覆面強盗が乱入。たちまち銃撃戦となり、銃弾を全身に浴びたワシントンは死亡してしまう。犯人は逃走した上に、トムは無傷。さらに、その後の調査で、トムの銃から出た弾丸がワシントンに命中していたことが判明。この事件はトムによる計画的な犯行なのではないかと容疑がかけられる。トムは疑惑を晴らすために、独自に調査を始めるのだった…というストーリー。
ロス暴動のあったところだけに、韓国系をクソみそに扱う箇所がいくつか出てくる。白人と黒人の軋轢ももちろん描かれているが、韓国系はゴミ扱いに近い。ここまで直球な作品は、なかなか無いかも。
で、チンピラたちをゴミ扱いして、捜査手順もなんのその、逸脱したなら多少は誤魔化せばいい…てな具合で、強引に悪人退治をしていくキアヌ・リーヴス演じるトム。一見、回りから嫌われてても世直し刑事ならいいじゃん!って思うんだけど、どうも脛に傷を持ってる感じ。かつての妻のことで若干心を病んでおり、勤務中も酒を飲んでいる。正義感なのか単に直情的な人間なのか、キアヌとは不釣合いなイラチなキャラクターなのだ。
そんな彼が、何かの陰謀に巻き込まれ、あやうい立場になっていく。どうもワンダーとその配下は、トムに火の粉がかからないように工作している模様。しかし、いつもはいささか脱法ぎみのトムだが、自分なりの正義のルールを持ってはいる。ワシントンを殺した犯人については捜査せず迷宮入りにしろだとか、ワシントンの妻が不当な扱いを受けていそうだとか、トムが大人しく眺めているわけにはいかない状況になってくる。
(以下、ネタバレあり)
なんとか独自でワシントンを殺した犯人を見つけようと努力し、はじめはトムを止める立場だった若手刑事ディカウントを巻き込んで、核心に迫っていく…と、悪くは無いストーリー展開なのだが、本作にはちょっと致命的な欠点がある。
冒頭で、だれが黒幕なのか、大半の人が気付いてしまうのだ。トムが誰かに利用されている…というシナリオ自体が崩れない限り、黒幕は彼しかありえない。途中、感じの悪い内部調査官が出てくるが、彼が黒幕ということは考えにくい。
#誰かは書かないが…
で、どんどん陰謀の霧が晴れていって、真実が見えてくるのだが、長々ともったいぶって結局、「やっぱりお前じゃん」ってことになる。その黒幕さんが、何でそんな事に手を染めたのか…とかそのクレイジー加減や、内部調査官のミッションとかは、非常にうまく設定してあるだけに、もう少しミスリードさえうまければ、そして黒幕を演じる役者が彼でなければ、もっと違ったのかもしれない。
ちょっとおしい作品。
公開年:2001年
公開国:アメリカ
時 間:89分
監 督:ベン・スティラー
出 演:ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、クリスティーン・テイラー、ウィル・フェレル、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ジェリー・スティラー、デヴィッド・ドゥカヴニー、ジョン・ヴォイト、ジュダ・フリードランダー、ジャスティン・セロー、エイミー・スティラー、ジェームズ・マースデン、ネイサン・リー・グレアム、ヴィンス・ヴォーン、ビリー・ゼイン、ドナルド・トランプ、クリスチャン・スレイター、キューバ・グッディング・Jr、ナタリー・ポートマン、レニー・クラヴィッツ、デヴィッド・ボウイ、スティーヴン・ドーフ、クラウディア・シファー、ヴィクトリア・ベッカム、ウィノナ・ライダー、パリス・ヒルトン、グウェン・ステファニー、ハイジ・クラム、ギャリー・シャンドリング、ルーカス・ハース、フレッド・ダースト、アレキサンダー・スカルスガルド 他
ノミネート:【2002年/第11回MTVムービー・アワード】チーム賞(ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン)、カメオ出演賞(デヴィッド・ボウイ)、名セリフ賞(ベン・スティラー “There's more to life than just being really, really, really good looking.”)、衣装賞(ベン・スティラー、ウィル・フェレル)
コピー:3%の体脂肪率。1%の知能。彼の名は…
超売れっ子の男性スーパーモデルであるデレク・ズーランダー。これまで年間最優秀モデルを3年連続で受賞しており、今年の受賞も確信していたが、新人モデルのハンセルに奪われてしまう。すっかり落ち込んだデレクは、大事な友人たちも不幸な事故で亡くしてしまい、失意のまま引退を決意。炭鉱で働いている父親や兄弟がいる地元に戻る。しかし、デレクのモデル業を恥だと思っている彼らは、デレクをまったく相手にしない。結局ファッション業界に戻るしかないデレクに、業界№1デザイナーのムガトゥから、ショーモデルのオファーがくる。これを復活のチャンスにしたいデレク。しかし、実はムガトゥは、マレーシア首相の暗殺計画のヒットマンとしてデレクを利用としており…というストーリー。
バカなノリがすごい。まず、ベン・スティラーがトップモデルっていう設定があり得ない。観客はそれを許容する…というか、無理矢理納得しないと話が進まない。モデルの表情の“技”とか、もうわけがわからない。
ファッション業界が、途上国の労働力の搾取から成り立っている!なんていう話からスタートするもんだから、コメディとはいえ裏にはメッセージ性を潜ませているのかと思いきや、ベン・スティラーの社会問題に対するシニカルさが、本気で批判したいのか、批判していること自体を揶揄したいのか、よくわからないときている。煙に巻きすぎ。
なにやら、ファッション業界に潜んでいる“悪”が、労働力を確保するために、国民を搾取から救おうとするマレーシア首相の暗殺しようとする。自分達の手は汚さないで、簡単に洗脳されるアホを利用しよう。そんなアホはいるか?いるじゃん、デレクだよ…って。デレクはおだてられ利用され、いざ暗殺の手ごまになりそうになる。さてどうなるか。ただそれだけのお話。
その薄っすいプロットを、原色バリバリのファッションに、『オースティン・パワーズ』的な下品なネタに、ちょっと昔の良い曲を集めたBGMに、異様に豪華なカメオ出演で、コーティング。
まあ、観終わったあとには、感動も爽快感も、そしてそれほど満足感も何も残らない。ただただバカなノリを一過的に楽しめばそれでいいだけの作品。
公開年:1991年
公開国:日本
時 間:121分
監 督:山田洋次
出 演:三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、田中隆三、原田美枝子、浅田美代子、山口良一、浅利香津代、ケーシー高峰、浜村純、佐藤B作、いかりや長介、梅津栄、渡部夏樹、レオナルド熊、中本賢、小倉一郎、村田正雄、松村達雄、中村メイコ、音無美紀子、奈良岡朋子、田中邦衛 他
受 賞:1991年/第15回日本アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(三國連太郎『釣りバカ日誌4』に対しても)、助演男優賞(永瀬正敏『喪の仕事』に対しても)、助演女優賞(和久井映見『就職戦線異状なし』に対しても)、新人俳優賞(永瀬正敏、和久井映見『アジアン・ビート(日本編)アイ・ラブ・ニッポン』『喪の仕事』『就職戦線異状なし』に対しても)
新宿の居酒屋でアルバイト生活をする哲夫。仕事から帰宅すると、丁度、父・昭男から電話がかかってきて、母親の一周忌に岩手に帰って来いと言う。居酒屋でこきつかわれるのにうんざりしていた哲夫は、アルバイトをやめて帰省し、普段着で法事に参加する。その夜、東京でサラリーマンをしている長男・忠司夫妻が、田舎で一人暮らしの昭男の今後を心配しており、最近購入したマンションに父親を引き取るつもりがあるという。哲夫はそんな会話を気まずそうに聞いていた。翌日、長男・長女が戻っていく中、少し昭男の面倒をみようと哲夫はひとり残ったが、昭男は哲夫が東京でフラフラと転職を繰り返していることをたしなめ、二人の心の溝はかえって深まるばかりであった。東京に戻った哲夫は、下町の鉄工場で働くことにする。思っていた以上に厳しい仕事内容で、またもや辞めてしまいと思いかけたとき、取引先の倉庫で働く征子という女性に一目惚れしてしまう哲夫。彼女に会いたいばかりに哲夫は仕事を続け…というストーリー。
山田洋次作品は、あまり観ていない。階級格差を良しとしたいんだか悪しとしたいんだか、よくわからないな…と感じることが多いし、それが人情話でうやむやにされているような気がするのも、好みじゃない。山田洋次といえば人情話みたいなイメージがあるけれど、私には中途半端な左翼主義者的な臭いが感じられるので、好きじゃないのかも。まあ、わたしが素直じゃないだけなのかもしれないけど。
長男・忠司の描写なんかに、そういう部分は見られるけれど、本作に限って言えば、純粋に父と子の朴訥な愛に、素直にスポットが当たっていると思う。まじめな勤め人だけど少し愛情が薄い長男と、目的意識が薄く感情的で、逆にいえば純粋な次男という、うまい対比ができていると思う。
東北の親類がいる人はよくわかると思うが、ケーシー高峰らが演じる東北人のうざったさが実にリアル。あんたのためを思って言ってあげているんだという割には、押し付けがましく、それが常識だろうという風に、自分の価値観を押し付ける、視野の狭い口だけのお節介な人間が、結構多い。東北人が嫌われる理由の半分がこれだと思う。
そういう明らかに口だけだとわかる言動もそうだが、親だから面倒みなくては…いや、面倒をみる態度は取っておかないと世間体が悪い…という類のウソもある。長男本人も半分はそういう気持ちだが、長男の妻に関しては100%それなのがありありと判る。
だからといって、父親は体も弱ってしまい、本来ならば子供世代に庇護を受けるべき状況なのかもしれないが、それは受けられない。むしろ建前に素直に乗ってしまった先には不幸が待っているのは目に見えている。
かつての戦友の八方塞がりな現在を聞くと、心苦しい。やはり一人でひっそり死ぬのが最適なんじゃないだろうか…、そういう荒んだ気持ちになったところで、まさかの哲夫からの告白。この抑えながらも小躍りするような三國連太郎の演技。本作のいいところを全部一人で持っていちゃった感じ。泣くまではいかずとも、うるっとこない人はいないだろう。
#泣ける、泣けるとは聞いていたが、そうやってハードルをあげられていたにも関わらず泣かせるんだから、大したものだ。
凡人監督(というか凡人脚本家)なら、哲夫の恋愛の進展具合のすったもんだを描いただろうが、すぱすぱと展開させているのが、とてもいいセンスだ。親族が嫁が聾唖者であることを知って云々かんぬんなんて一切描かない。本作の場面構成は、非常に勉強になる。
ああ、本当の幸せなんて、こういう小市民的な出来事の中にあるんだな…、いや、こういうあたりまえの幸せだって、なかなか無いのかもしれない(岩手に戻ったときに、おまえは幸せものだ…と言われるシーンがそれを表現)…ってことなのかな。まあ、その通りなんだけど、ちょっと階級格差での底辺の生き様みたいな感じで描かれているようで、若干気持ち悪かったりする。しかし、それも、最後の三國連太郎の異常なまでの"こりゃ死ぬな…”感でかき消される(死なないけど)。
ラストのスッキリしなさを不満に思う人も多いだろうが、私はあれでよいと思う。人生ってちろちろと蝋燭の灯火のようなものだなって、そう感じさせてくれたもの。良作。
#岩手の家で、スタジオ感がでちゃってるのが、とても興醒め。そのくらいなんとかならんかったのかなぁ…。
公開年:2010年
公開国:スペイン
時 間:118分
監 督:フェルナンド・ゴンサレス・モリナ
出 演:マリオ・カサス、マリア・バルベルデ、アルバーロ・セルバンテス、マリナ・サラス、ルイス・フェルナンデス、アンドレア・ドゥーロ、ディエゴ・マルティン、パブロ・リベロ、ネレア・カマチョ 他
粗暴な生活を送るアチェは、とある暴力事件をおこし有罪となるが、初犯ということもあり罰金刑となり禁固は免れる。しかし、家族からの見る目は厳しくなり、それ以降、違法なバイクレースに没頭し、虚しさを埋めていた。そんな中、とあるパーティで、名門校に通うお嬢様のバビと出会う。まったく別世界に住むアチェに対し、はじめは警戒感を持つバビだったが、それはやがて抑えられない愛に変貌し、二人は恋に落ちてしまう。バビの母親は強く交際に反対するが、かえってバビの思いは強まる一方で…というストーリー。
サスペンスかアクション映画かと思うようなジャケット画像だが、完全なる青春恋愛作品。正直、ちょっと騙された感がある。
裕福な家の箱入り娘と不良青年が出会って大恋愛をするという、いかにも少女マンガ的なストーリー。それを見栄えのよい若者が演じるという、半ばアイドル映画。どちらかといえば乙女目線で愉しむもので、おっさんには非常に厳しい作品となっている。だから、ジャケット画像でおっさんがレンタルしてくると痛い目に遭うよ!という注意報を発令しておこう。
でも、やはりお国柄の違いなのか、ノリがちょっと違う。大抵こういう作品は、ワルに見える男の子が実はいい人で…、でも誤解されて…、その誤解を解消して…みたいな波を経ながら成就に近づいていく…みたいな話が多いと思う。本作のアチェは、単純な意味でのやさしさは持ち合わせているのだが、結構な根の部分で品性が悪い。話が進んでも、悪いことをし続け、それがどういう結果を生むのか、想像できる知力もない。そのせいで、観ている男側からの共感をまったく得られないという結果に結びついている。
かなりはじめのほうで、すっかりお腹一杯になってしまった私は、ちょこちょこ他のことをしながら観ちゃって、色々観落としている模様。はじめの訴訟問題になった、暴力事件の原因が、いまいちわからなかったりする。
結局は悲恋で終わるというのも、特徴的か。まあ、さっき言ったようにアチェの自業自得感が強いんだけど、結局、お嬢様と野良犬の品性は相容れないという、すごくシビアな終わり方をする。そしてイヤミな母親の思い通りになるという流れ。まあ誰しも、思い通りにならない恋愛の一つや二つ経験はあるだろうから、せつなさくらいは共感できただろうが、失恋の悲しみから嗚咽を漏らしながら懸垂するというのは、冷静になって観るとかなりシュール。アイドル俳優の肉体美でごまかすスペイン映画のノリがすごい。
ああ、この恋は、実は大昔からスタートしていたのさ…という、なんだかよくわからないカットが差し込まれるなど、妙にセンチメンタルさを煽った演出なんかもあるのだが、茶番もそこまでくるとたいしたものだと思う。
でも、こういう真剣な悪フザケ感が、本国ではウケたんだと思う。だって続編までつくられたらしいんだもの(まあ、もう観ないけどね)。
公開年:2004年
公開国:アメリカ、カナダ
時 間:96分
監 督:クリストファー・タボリ
出 演:クリスチャン・スレイター、マイケル・クラーク・ダンカン、ギル・ベローズ、エステラ・ウォーレン、コンチータ・キャンベル、ソウル・ルビネック、アンドリュー・スティーヴンス、サラ・ストレンジ、ケン・トレンブレット、タイラー・ラビーン、ケヴィン・マクナルティ、チェラー・ホースダル、スコット・ハイランズ 他
コピー:奴の誘いは命がけ、“NO”の言葉が死の合図。
シアトルの中小企業”ビズトラックス”に勤めるベン・キーツは、人間に投与すると現在位置が人工衛星を通して15分以内に解析できる薬剤を開発した。これを利用した追跡システムは多大な需要が予測され、上場が予定されている株価を大きく跳ね上げ、経営危機に陥っていた会社を救うと期待された。そんなある日、ベンの元に、彼をヘッドハンティングするために、ヴィンセントという男が現れる。多額な報酬を提示するが、ベンは社長のフランクリンに恩義を感じており、首を縦に振ろうとはしない。しかし、ヴィンセントはこれまで、ターゲットをどんな手段を使ってでも引き抜いてきており、そのためには殺人ですら厭わないという冷酷な男だったのだ。ヴィンセントは、偶然を装いベンの妻エミリーに近づき、ベンが多額の報酬を断ってまで現在の会社に残ろうとしていることや、夫への疑念を抱かせるようなことを吹き込んでいく。そして幼い娘の乗馬好きに乗じてプレゼントを贈り、心を掴んでいく。さらに、家族の旅行先にまで現れていろいろな便宜を図るようになる。しかし、それでも引き抜きを了承しないベンに対して、ヴィンセントは強行手段に出て…というストーリー。
なんかSFチックな、ジャケット画像なんだけど、全然内容は違う。
クリスチャン・スレイターが悪役のヘッドハンターさんを演じている。悪くはないのだが、いかにもはじめから悪役臭全開。実はいい人なのでは?とか、実はマイケル・クラーク・ダンカンのほうが悪人なのでは?はたまた陰謀があって裏で手を結んでいるのでは?とか、そういうミスリードはいくらでもできたと思うのだが…、直球で一切ヒネリはない。
唯一のヒネリは、単なる強引なヘッドハンターなんじゃなくて、実はサイコ野郎だっていうところ。
だんだんとヴィンセントの攻めに窮していくんだけど、これがイマイチなんだよねぇ。
すべて、ベンがきちんと説明していれば、こじれないで済む話なの。フランクリン社長や同僚には、自分はこんなヘッドハンターが近づいてきていて、こんなことをいわれていて、こんなことを周囲に吹聴されてこまってるんだ。俺はやめないから、皆も信用するなよ!って宣言すればそれでおしまいだ。
妻に対しても、いくら報酬を提示されてもやめない。だって、せっかく発明した技術は会社にあるわけで、転職したらイチからはじめることになる(日本とは特許の扱いが違うかもしれないけど、本作の場合、共同出願にしてるでしょ)。それにヴィンセントってのは友達でもなんでもない。ヘッドハンターだ。あることないこと吹聴してまわってるので、誤魔化されないでくれといえばいい。
それでも騙されるくたいヴィンセントが巧みで、そりゃ無理だわ…って感じじゃないし。主人公が、ヘッドハントになびいちゃってて、目がくらんでて、気付いたら大変なことになってた…っていう展開なら理解できるのだが、そんなこともないし。
実はヘッドハントは二の次で、彼の真の目的がターゲットを追い詰めること、それだけ!っていう感じならしっくるくる。あまりにベンが抵抗するものだから、もうヘッドハントなんかどうでもよくなって暴走しちゃう!って流れならいいのだが、ヴィンセントはヘッドハントするっていう職業意識からは逸脱しないので、彼のサイコっぷりがイマイチはじけない。
とはいえ、サイコ野郎に完全に翻弄される展開で、ストーリーがすっかり集約するのだが、忘れた頃に夢のテクノロジーを使った反撃を始める。取ってつけたような反撃。遅いわ。それが事件のオチの重要な鍵というのも、どうもね。
ストーリー構成のバランスが非常に悪い。駄作だと思う。
公開年:2004年
公開国:日本
時 間:98分
監 督:内田けんじ
出 演:中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏 他
受 賞:【2005年/第48回ブルーリボン賞】スタッフ賞(内田けんじ/脚本に対して)
【2005年/第15回日本映画プロフェッショナル大賞】新人監督賞(内田けんじ)、ベスト10(第5位)
コピー:この日、ボクの家のドアは3回開いた…
サラリーマン宮田武は、結婚を前提にマンションを購入した直後に、恋人のあゆみに去られてしまう。諦めきれない彼は、いまだに勤務中にあゆみの写真をみては溜息をつく毎日を過ごしていた。ある日、宮田が部屋に帰ると、親友で私立探偵の神田から飯を食おうと誘いの電話が。面倒だった宮田は断るが、実はあゆみのことで話があるといわれ、大急ぎで待ち合わせ場所のレストランに向かうのだった。一方、婚約を破棄して、二人で住む部屋を出てきた桑田真紀は、行く先も無く街をさまよっていたが、一人で入ったレストランで楽しそうにしている他の客を見て、泣き出しそうになる。そこに、宮田を呼び出した神田が入ってくる。神田はあゆみが結婚するらしいということを告げ、女々しい宮田を次の恋愛に進むように叱責する。宮田は隣の席で一人で食事をしようとしていた真紀に、一緒に食事をしようと声をかける。泊まる場所のあてもなかった真紀は、その申し出を素直に受けるのだったが…というストーリー。
薦める人が多く、それに乗っかって素直に鑑賞。でも、あまりハードルを上げすぎると期待を裏切られた感じになるので注意が必要かも。いや、おもしろいことはおもしろいんだけどね。
PFFスカラシップという、若手育成の事業で作られた作品。当然、費用も限られるし、小粒にもなる。そこは、ある程度理解した上で観るのがよいと思う。
また、『パルプ・フィクション』的な時間軸戻し系のお話が、溢れているのと、同じ内田監督作品である『アフタースクール』が、同じような構成であることから、この監督ってこれしかできないんじゃないかな?という疑念が湧いてしまうのも事実。
同じ時間軸を過ごしている人間の、それぞれの思いがうまく交錯…というか、見た目には交わっているように見えてあさっての方向に進んでいて全然心なんか通っていない様子がおもしろい。女性のサバサバした割り切りと、反面、男性がウェットな生き物であることが、おもしろく描かれているのも、結構好き。まあ、「ああ、そういうことだったのね」的な、脳内の配線が繋がる快感ってのは誰しも共通して感じる所だから。
でも、神田の話あたりがちょっとダレるのが残念。それを挽回するように、ヤクザの話がおもしろくて、全体が救われている感じだね。
(ちょっとネタバレ)
ちょっとわかりにくい部分が多い。別に勧善懲悪じゃなきゃいけないわけじゃないんだけど、素直に大金をせしめさせるだけで終わってしまうのが、正直すっきりしない(ちょっと油断すると、あれが偽札であることを見落としちゃうんだよね)。
これで生きていける…と思ったけど、偽札だっていうことで、十分オチていると思うんだけど、エンドロール途中の、真紀が宮田の部屋を訪ねるシーンも、何を言いたいのかいまいちわからない。あれが宮田の先輩だということを観客はほとんど思い出せないし(キャラがそれほど濃くないからわからない)。もしかして先輩が連れてくるといっていた女があゆみなのかもしれず、真紀がみつけたメンソールたばこを吸っていたのがあゆみなのかもしれない。そして二人が鉢合わせ…と。うーん、それっておもしろいか?
トータルで面白かったのは認めるが、笑いのベクトルが私の趣味とは異なる監督さんなのかも。三谷幸喜と同じタイプの人なのかな。その辺はちょっと合わないかも。
#コピーはネタバレになっちゃててNGじゃないか?配給会社はアホだと思う。
公開年:1997年
公開国:アメリカ
時 間:128分
監 督:デヴィッド・フィンチャー
出 演:マイケル・ダグラス、ショーン・ペン、デボラ・カーラ・アンガー、ジェームズ・レブホーン、ピーター・ドゥナット、キャロル・ベイカー、アンナ・カタリーナ、アーミン・ミューラー=スタール、エリザベス・デネヒー 他
コピー:全米№1。『セブン』を越える驚愕と戦慄。ラストの衝撃。緊張度120% 私は盲目であったが今は見える --ヨハネ第9章25節--
サンフランシスコ。大富豪だった父の莫大な資産を引き継ぎ、投資家として成功していたニコラス。今は妻と離婚し、大邸宅に一人で住んでいるが、規則正しく、遊ぶこともなく、ただただシビアに仕事をこなす生活を送っていた。48歳の誕生日、弟のコンラッドと久々に会うと、彼から“CRS”という会社のサービスをプレゼントされる。人生が一変するような素晴らしい体験したのでそれを兄にも経験させたいというコンラッド。軽くあしらっていたニコラスだったが、ある日ふと気になりCRS社に足を運ぶ。サービスの内容が判らないニコラスが説明を求めると、CRSの商品とは“ゲーム”だという。釈然としなかったが、言われるがままにペーパーテストや身体テストを受け、その後帰宅すると、玄関の前にピエロの人形が放置されている。人形を家の中にいれて、テレビのニュースを見てくつろいでいると、テレビの中のキャスターがニコラスに話しかけてきて…というストーリー。
『ファイト・クラブ』の前の作品。私、デヴィッド・フィンチャーは大好きな監督なんだけど、本作だけは記憶にあまり残っていなかった(絶対に以前、観たはずなんだけど)。ということで再鑑賞。
それにしても、当時のコピー、すごい煽りだよね。申し訳ないけど、とてもとても『セブン』は超えていないでしょ。でも、奇作という観点でなら超えているかもしれないのだ。
マイケル・ダグラス演じるニコラスは、たしかにシビアで感情がない仕事っぷりなんだけど、この人、全然悪い人じゃないのね。むしろ優秀で、諸々の招待を断ってるシーンなんか、その判断基準は至極真っ当だし、正直だと思うの。仕事の内容だって世の中の年金を運用しているわけで、人々の将来の安心をしっかり守ろうとしていて、私腹を肥やそうとしているわけじゃない(元々金持ちだからそんなことする必要ないし)。
寂しい人ではあるけど、べつに強くこの状況に苦しんでもいないし、むしろ、別れた後も電話してくる元妻とか、足を引っ張っているだけの役員とか、そっちのほうがうざったいほど。
弟に対してだって、彼がいうほど蔑んでなんかおらず、むしろ本気で心配しているのにそうは見られておらず、本心が伝わっていないという可哀想具合。こういう誤解されてる人ってけっこういるじゃない。だから、なんとなく共感しちゃう。
そんな彼が、ちょっとしたことで乗っかっちゃったゲームで、どんどんハマっていく(とはいえ、ハマるように仕組まれているわけなんだけど)。
まず、テレビが話しかけてきたりする場面で、超常現象的な仮想世界の可能性が考えられるし、壮大な詐欺にハマったという陰謀話かとも思わせる。単純な謎解きというよりももっと俯瞰目線で、“これはどういう作品なのか?”という次元で観客を惑わせている作品である。
(ちょっとネタバレ)
細かいことをいうと、用意周到に計画してました…っていうわりには、ものすごく穴だらけのシナリオなのは事実(映画のシナリオ的にそうなんだけど、CRSのシナリオ自体が穴だらけ)。だから、やっぱりファンタジーとして受け止めるべきなんだと思う。元は弟の兄に対する愛なんだもの。そして最後はニコラスも愛の萌芽を見つけるからね。
デヴィッド・フィンチャー作品のラインナップを考えると、猟奇殺人的なお話ばかりなのだが、本作は誰一人死んでいないという珍しい作品なのだ。そのオチでいいんか?って気持ちになり、もう一どんでんあるのか?と身構えるけど無かったりする。
多分、賛否がスッパリ別れる作品だとは思うけど、私は満足。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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