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image1892.png公開年:2011年
公開国:日本
時 間:65分
監 督:柴崎貴行
出 演:渡部秀、三浦涼介、高田里穂、岩永洋昭、君嶋麻耶、有末麻祐子、神尾佑、甲斐まり恵、宇梶剛士、酒井美紀、根岸泰樹、松平健、山田悠介、橋本汰斗、松本博之、未来穂香、荻野可鈴、唐橋充、氏家恵、ピーター・ブルーネ、内藤邦秋、西村匡生、西山清孝、おぐらとしひろ、大岩剣也、高橋静香、野間仁雄、福士蒼汰、清水富美加、ゆかな、北沢力、大友龍三郎 他
コピー:コアメダルの秘密!
世界の終末を前に、オーズが時空を超えた大冒険!

ドイツの森の奥深く。800年前にオーメダルを作り出した錬金術師と“失われたメダル”が眠っているという伝説をつきとめた鴻上会長は、調査団を率いて発掘を行っていた。調査団は遺跡を発見し封印を解くが、その途端、地面がメダルのように“裏返り”、ドイツの森と東京の空間が入れ替わってしまう。同時に復活した錬金術師ガラは、オーズやグリードたちからコアメダルを次々と奪取。自分が集めたメダルをつかって世界の王になることを宣言。ガラは一般人の欲望を奪い続け、その力で次々と各地を恐竜時代など過去の空間と現代を入れ替えていく。映司・アンク・比奈と駿少年も、それに巻き込まれて江戸時代へ飛ばされてしまい…というストーリー。

昨今の、先輩ライダー大集合みたいなのには食傷していたので、暴れん坊将軍を引っ張り出すようなムチャをしようが、こっちのほうが好みである。でも、TV放送エピソードのスピンオフみたいなものなので、観ていなかった人にはちんぷんかんぷんに違いない。ゴウカイジャーの映画版と同時上映なので、上映時間も短い(要するに“まんがまつり”だ)。

メダルの数とかグリードさんたちが簡単にメダルをオーズに渡しちゃうキャラの違和感とか、本編との整合性をしっかり取るつもりもないようで、細かい矛盾が色々あるのだが、そういう自由さは悪いことではない。突拍子もないプロットなのでダイナミックに展開してくれればそれはそれで面白くなるはず。しかし、残念ながら本作は全然ダイナミックじゃないんだ。それは、小林靖子の脚本だからかと。

小林靖子の脚本は、“マッチ箱の中の嵐”を観せられているように感じる。小林靖子の“人間臭さ”の表現が、妙に小綺麗だったり、描かれた真の友情みたいなものが、上っ面の友情にしか見えないので、熱くなれない。その友情とやらを表現するのに、ウダウダと説明が入るのも鬱陶しい。説明しないと伝わらない友情や愛情なんて、友情でも愛情でもないだろう…と。
それは、敵味方の関係にも転化されていて、中途半端なエセ勧善懲悪に感じられることが多い。悪者退治に口で理屈こねなくていいと思うんだわ。

男性キャラクターに、同人誌的なホモセクシャル表現を匂わすのも好きじゃない。また、魅力のあるサブキャラが立ってくるのは結構なことだが、サブキャラに色を付けすぎて、主役が空気になることが多いのも好きじゃない。

このストーリーに本当に勢いがあるのなら、将軍様にバースを装着させるくらいの悪ノリをしてもよかったはず。それこそ、最年長ライダーで話題になるし、バース将軍タイプでおもちゃ展開できたじゃん。丸いところに葵の御紋が入って、ちょんまげつけりゃいいんだから、大した労力じゃないし。松平健を引っ張り出したところでプロデュース力が尽きてしまった感じ。もったいない。

なんで将軍が未知のコアメダルなんぞを持っているのか。入手経路は説明していたのだが、知りたいのはそこじゃないっての(笑)。ポルトガルかスペインか知らんけど、王家がなんでそのメダルを徳川家に献上したのか、諸々の経緯こそおもしろくなると思うんだけどね。

せっかくのお祭り作品なんだけど、浅い脚本のせいで、水を差されたようなへんな気持ちになった。
 

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image1549.png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:139分
監 督:中村義洋
出 演:堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、柄本明、濱田岳、渋川清彦、ベンガル、大森南朋、貫地谷しほり、相武紗季、永島敏行、石丸謙二郎、ソニン、でんでん、滝藤賢一、木下隆行、木内みどり、竜雷太、伊東四朗、香川照之 他
コピー:無実の男、首相暗殺犯に断定
事件のガギを握るのは、ビートルズの名曲


仙台の運送会社に勤務する青柳雅春、30歳。総理大臣が地元パレードを行う日に、大学時代の友人・森田から釣りに誘われる。しかし、森田は一向に釣りに向かう様子はなく、それどころか青柳を薬で眠らせた後、“オズワルドにされるぞ”と警告するのだった。その直後、パレード会場で爆発が発生。直後に青柳と森田の前に警官が詰め寄り、躊躇なく発砲される。青柳が反射的に逃走するとその直後に、森田が残っていた車両も爆発。やがて、捏造された証拠によって、自分が首相暗殺犯に仕立てられていることを知り…というストーリー。

サスペンスからはみ出た笑いを愉しむというスタンスは、非常に好み。『フィッシュストーリー』に匹敵する満足度が得られたのだが、いささか始めの30分がモタツキすぎ。近年の日本人監督に共通することなのだが、「ちゃんと伝わってるかな?」「ここ見落とされないかな?」と自信がないのか、テンポを阻害してまで、まどろっこしい演出や過剰な説明を入れるケースが多い。
冒頭でグッと観客を気を掴むのは、非常に重要。この監督がその重要性を理解しているのかどうか、甚だ疑問に感じるほど。本作の冒頭30分で、私が観るのを中断したのは、なんと3回。これから事件に巻き込まれるという流れで、いかにもおかしなことがおこるぞという、雰囲気を必要以上に漂わせることに何のメリットがあるのか。
#TV放映したら、始めの30分でガクンと視聴率さがると思うよ、これ。視聴者を引き止める力がない。
好みの問題といえばそれまでだが、吉岡秀隆と劇団ひとりの演技は、ノリの阻害要因として負の活躍をしていたと思う。その演技がミスリードに効果的に働いているわけでもなく、雰囲気に助力しているわけでもなく、ただただ自分の演技をしただけ。作品全体にチームプレーとして参加していない、ダメ仕事だったと感じる。

完全にストーリーの構図が確立された後は、非常におもしろくなる。これは監督の力というよりも、原作の力だろう。ラストの、自分が生きていることを伝えていく様子なんか、非常に見事だと思う。

あらゆる登場人物が、本当に見方になってくれるのか、やはり今の生活のために裏切るのか、はたまた元々“敵”のサイドなのか。
竹内結子が演じる樋口晴子というキャラクターが一番魅力的。思わず好きなってしまいそうなほど、魅力的。飄々とした役柄に竹内結子はマッチしているのだろう。その他、柄本明、濱田岳が演じた役もアウトローでありあながら共感できる素敵なキャラクターに仕上がっている。
香川照之や永島敏行演じる屈強な警官も、同じように魅力的になり得たはずなのだが、単なる悪役としてしか描けなかったのは監督の力不足だと思う。

純粋なサスペンスとして捉えてしまうと、事件の黒幕は明かされないし、本人の人生がめちゃめちゃになってしまったことには変わらないし、一矢報いたとも言いがたいので、不満足に感じた人も多いだろう。その不満は正しい。
原作的には、伊坂幸太郎の世界観の中の1ページでしかないので、本作できれいに完結する必要はまったくない。しかし、映画は一期一会。この一作で、すっきり終わらせるべきなのは事実。そこに折り合いをつけるのも、監督と脚本家の仕事だとは思うが、うまくはいっていないということ。

ただ私には、サスペンスだからといって、判で押したようにきれいに全ての謎を解決するだけが能ではないという思いもある。得体の知れない巨大な力に対して、市井の人がどういうしたたかさを見せるか…、そういう焦点の当て方は好きだ。そのために、巨悪はびこる社会っていうのを放置したとしても許容できる。まあ、その“市井の人”ってのに焦点を当てきれていないのが、本作の最大の難点なんだけどさ(だから、ご都合主義的に感じるの)。

良作っていいたいんだけど、ひっかかる。私は原作は読んでいないんだけど、このオモシロさを味わうには、原作を読んだほうがいいんじゃないか?そんな気がするんだもの。

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image1681.png公開年:2000年
公開国:イタリア、チェコ、ドイツ
時 間:176分
監 督:ロジャー・ヤング
出 演:ヨハネス・ブランドラップ、トーマス・ロックヤー、バルボラ・ボブローヴァ、G・W・ベイリー、エンニオ・ファンタスティキーニ、フランコ・ネロ、ジョルジョ・パソッティ、ダニエラ・ポギー、ウンベルト・オルシーニ、ジョヴァンニ・ロンバルド・ラディス




イエスが十字架に架けられてまもなくの頃。エルサレムはキリストの教えを異端として迫害していたが、そのエルサレムを支配下においていたローマ帝国もイエスの弟子たちの行動を問題視しており、鎮圧を指示していた。テント職人として財を成しローマ市民権を保持しているサウロも、イエスの教えを毛嫌いし弾圧していた。彼は、王と大祭司から地方でイエスの教えを広めている者たちを捕らえる命令を受け、友人である祭司ルベンと共に出立するのだったが…というストーリー。

おそらく、カトリック系チャンネルで放送されたTVムービー。CMの境目がはっきりわかる。おまけに前後編に分けるほど長く、2回にわたって放送されたんだろう。
カトリック信者向けに製作されたもので、歴史的な検証とかは度外視されているのが、クリスチャンではない私から見ると、首を傾げたくなる部分が多い。さすがに、パウロの時代に三位一体の教義が確立されていたとは思えない。途中で、「何世紀も…」というのが出てくるが、その時代から“世紀”という通念があるかねえぇ。
このような演出を見れば、本作が熱狂的な信者のためにつくられた作品であって、歴史的な検証には固執するつもりが一切ないことがわかる。
“パウロの回心”これが何だったのか、子供を持つ親や教師の便利な教材として、そして老人たちが「ありがたや~、ありがたや~」となる娯楽作品として、つくられた作品であって、教義にいささかの疑問を沸かせるような点があってはいけないのだ。

とはいえ、パウロが存在しなければキリスト教というものが存在していないほどの人物なのに、彼がイエスの直弟子でないという事実、それどころか、むしろ十二使徒たちは、キリスト教が確立されるにあたっての阻害要因だったという事実をはっきり描いている点は、興味深い。
現存する宗教をちょっと調べてみれば、啓いた人を直接知らない人が躍進させるのはパターン。というか、開祖がいないほうが神格化できて利用しやすいし、現実を知らないので猛進しやすいわけだ。それに、抵抗する人間ほどハマりやすいのは、宗教でありがちでしょ。

まあ、歴史検証的な価値はその程度。すまん。一生懸命価値を見出そうとしたけど、キリスト教徒でない私が引き出せるのはそのくらいだ。無関係の人には価値は無く、これをみて改宗する気になる人が出てくるようなレベルの作品でもない。

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image1467.png公開年:2008年
公開国:日本、オランダ、香港
時 間:119分
監 督:黒沢清
出 演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥、津田寛治、児嶋一哉、役所広司 他
受 賞:【2008年/第18回日本映画プロフェッショナル大賞】ベスト10(第2位)
コピー:ボクんち、不協和音。



竜平は平凡なサラリーマンだったが、家族のために懸命に働いてきた。しかし、ある日突然リストラにあい会社をクビになってしまう。プライドの高い竜平は、どうしてもその事実を家族に伝えることができず、毎朝スーツを着て家を出ては、職安や公園などを巡る日々を重ねるだけだった。妻の恵は、夫はもちろん二人の子供からも大事にされず、自分を見失いかけていることねの不安と不満を募らせていた。一方、長男の貴は突然米軍への入隊を決め、次男の健二は給食費をくすねて家族に内緒でピアノ教室へ通うようになる。家族それぞれの心は、散り散りに離れ…というストーリー。

総務部で業務のアウトソーシングをすることはありえる話。でも部署がなくなったからといって辞める必要はなかろう。劇中でも別にクビを言い渡されたわけではなく、部署転換を強いられただけ。あまりに無礼な扱いをされたから、その場で辞めるって啖呵切っちゃったんだよ!って言いたいのかもしれないが、子供が二人いて家のローンもあるオッサンが、そうそう辞める決断をするわけがない。啖呵をきった場面はなかったしそれを臭わせる描写もない。
リストラにあった人が、家族にそれを言えなくて普通にスーツをきて家を出るなんて話は、確かに聞いたことがある。だけど、本作に限って言えば、そこまでひたすらに隠さねばならない理由が見当たらない。仮にすぐに次の仕事が見つかったら、実は転職したんだよ…っていうつもりだったのだろうか。プライドの高い男なんだよって、言いたいのかもしれないが、それにしても程度が過ぎるだろう。
早々にそんなことができないことくらい見え見えなのに。世のサラリーマンお父さん像からかなり離れていると思う。はっきりいってリアリティがない。

こういう展開をみて、頭をよぎったことは、脚本家も監督もまともにサラリーマンをやったことがないんじゃないか…ってこと、そして、取材が足りないんじゃないか…ってこと。そして、日本人の職業観がわかっていないんじゃないか…ってこと。
これから観る人には申し訳ないが、冒頭から40分くらいまでは、はっきりいって、モタモタ、グダグダの繰り返し。身近にありえるテーマなのに、会社員というものをぞんざいに扱われているようで、はっきりいって気分が悪かった。

その他にも、取材不足なんじゃないという点が散見される。グリーンカードも持たない未成年の日本人が米軍に入隊できるものだろうか。親の承諾がどうのこうのって、そんな次元の話なんだろうか。これはどこの並行世界の物語か。それとも私の知識が足りないのか。

どうみても小学生にしか見えない男の子を、黙秘したからといって成年と同じ扱いにするだろうか。指紋をとるだろうか。一般の犯罪者と一緒の拘置部屋に入れるだろうか。生活課など未成年を扱う部門に渡すのではないだろうか。役所や教育委員会など関係各所に連絡するのではないだろうか。“不起訴”という扱いになって放り出されるなどということがありえるだろうか。

はっきり言おう。私はこれらの描写をみて、黒沢清はバカなんだ…と確信してしまった。

しかし、40分を過ぎたところで一変する。小泉今日子演じる母親が、ソファーに寝た状態から上に両手を伸ばし「だれか引っ張って…」と言ったその瞬間から、ストーリーが動き始めるのだ。はっきりいって、この映画は小泉今日子に救われた。彼女の吐き出すのをギリギリで抑えているような演技。これだけが見所である。そして、こんなタイミングで、こんな役に役所広司を使うか…という部分は評価する。

とはいえ、そんな彼女のいい演技も、いくら海の近くの小屋だからって、エンジン音が聞こえないわけないじゃないか…というツッコミと、岸壁から落ちるならまだしも、なだらかな砂浜から海にめがけて車を沈められるわけはないじゃないか…(途中で止まる)というツッコミで台無しになってしまうのだが。

よく事情にわからない外国では、ある程度の評価は得られるかもしれない(というかごまかせるかもしれない)。百歩譲って、これは“トウキョウ”という、この地球上でもないどこかのファンタジー世界のお話だったとしよう。でも、もう一回言おうじゃないか。黒沢清はバカなんだ…と。
そして、最後のピアノのシーン。何が言いたいのか、何を意味するのか、私には何も伝わってこなかった。

決して香川照之の演技は悪いわけではないが、他の作品と錯誤するくらいにどこかで観たような演技で、胸焼けしそうなんだ。

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imageX0050.Png公開年:1957年
公開国:日本
時 間:99分
監 督:市川崑
出 演:川口浩、笠智衆、杉村春子、小野道子、川崎敬三、船越英二、潮万太郎、山茶花究、見明凡太郎、伊東光一、浜村純、入江洋佑、袋野元臣、杉森麟、響令子、新宮信子、葉山たか子、半谷光子、佐々木正時、酒井三郎、葛木香一、泉静治、杉田康、花布辰男、高村栄一、春本富士夫、南方伸夫、宮代恵子、久保田紀子、直木明、志保京助、此木透、志賀暁子、吉井莞象、河原侃二、宮島城之 他


茂呂井民雄は名門・平和大学を卒業し大企業・駱駝麦酒株式会社に就職する。大企業といってもその月給は大したものではない。この先勤め上げたとしても、得られる生活レベルは大したものではないことは予想できた。しかし、世の中は就職難で、一流大学卒といっても就職先が簡単に見つかるわけでもない。夢や希望を追及したところで、求めるものが得られるわけでもない。そう、この満員電車のような世の中で、出来る限りはりきるしかべきなのだ…と、割り切っていた。民雄は、大学時代に付き合っていた複数の女性を整理して、入社。新入社員講習を経て、大阪・尼崎の工場へ赴任する。そこで、同僚の更利ら、サラリーマンは、健康を崩さないように、サボっているいるように見えない程度に休まず働かずが第一だと聞かされ、どうにもしっくりこない気持ちになる。そんな中、故郷の父から母が発狂したとの手紙が届き…、というストーリー。

雨の中の卒業式という、シニカルで直球なコメディ描写でスタート。
戦後10年ちょっとで、とても同じ日本とは思えない雰囲気の世の中。舞台が大阪なのが、より異国感を漂わせる。空間的な圧迫感は今も変わらないけど、昔の大阪の街はおもしろい。なんでもアリなノリであふれ、過保護ではない“乱世”な感じに、うらやましさすら憶える。
でも、行政予算の消化の問題は、この時代も一緒みたい。行政に対する文民統制が効いていないアホ国家であることだけは変わらないんだな。情けねえもんだ。
“サラリーマン”という部分に焦点が当たっているけれど、結局は都市への労働力集中に伴う“疎外”の中、生きる価値観をどうやって見つけていくかもがく…という話だ。

川口浩が、こんな飄々とした魅力的な演技をする人だったとは。あの探検隊で無駄に威張ってた隊長のイメージしかないから、ちょっと新鮮だった。

発狂した母親の原因究明のためにサラリーマンが研究者を雇う流れは、コメディとはいえ無理がある。まあ、実は父親のほうが…っていうのは読めはしたけど、けっこう良いデキだと思う。『ファイトクラブ』ばりの仕掛けだ。
しかし民雄は、父親が無料で病院にやっかいになるということを聞いて、なんで、精神化医に詰め寄っているのかがよくわからない。実際、父親はそういう状態なんだし、お礼にタダで収容してくれるっていってるのに。
それに、白髪が戻るのはいくらなんでもねぇ。まあ、その辺りからは、ちょっとカオス気味な展開に。用務員をクビになったあと、風に飛ばされる掘っ立て小屋にしがみつく民雄は、まるで『博士の異常な愛情』の例のシーンみたいだよ。

社会派コメディにしてはオチがちょっと弱いんだけど、ただ、不思議と、若者の社会内でのポジションや価値なんかは、現在に近いね。結婚を臭わされたときのリアクションなんて、いかにも草食系っぽい(嫌いな単語だけど)。
本作を原案にして、今リメイクしたら、おもしろくなるんじゃなかろうか。いいよ、これ。機会があったら是非観て欲しい。

 

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imageX0049.Png公開年:2005年
公開国:日本
時 間:107分
監 督:本広克行
出 演:瑛太、上野樹里、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典、本多力、真木よう子、升毅、三上市朗、楠見薫、川下大洋、佐々木蔵之介 他
コピー:BACK TO THE 昨日!!!
タイムマシン ムダ使い



四国のとある大学の夏休み。“SF研究会”の男子部員たちは、SFの研究なんかそっちのけで草野球の日々。汗を流しにいった銭湯から戻った彼らと、部室を共有する女性写真部員の伊藤と柴田が大騒ぎすると、部室のクーラーのリモコンにコーラをこぼしてしまい、壊してしまう。本体で操作はできないクーラーだったため動かすことができず、うだるような猛暑の中でぐったりする部員たち。そんな時、謎の金属製の機会が出現。操作パネルなどの形状からタイムマシンらしい。とりあえず物は試しと、壊れる前のリモコンを取りに昨日へ戻ってみることにするのだが…というストーリー。

本広監督の映画作品の中では一番デキが良いと思う。SF的にどうなの?っていう人もいるかもしれないけど、そこに引っかかる必要はない。ドタバタの材料として、タイムマシーンをどう使うかってだけのこと。
リモコンの時間旅行は、よく練られているけど、別にそこで勝負したわけじゃない。考えているような考えていない学生たちが、タイムマシンにしがみついて、振り回される様子がただただ楽しいだけ。疾走感とくだらなさをキレイに絡めた、いいコメディにできていると思う。

タイムマシンをリモコン探しというくだらない理由に使うわけだが、それほどくだらない行為とは思わない。タイムマシンを使える回数に制限がわるわけでもないし、どういう影響があるのかもわからない。それなら、とりあえずリモコンでも持ってきてみますか!っていうのは、ターゲットは明確だし、ハードルとしては低いし、ミッションのチョイスとしては至極真っ当だと思うのよ。
冒頭20分までのまどろっこしさが、気にならなくもないが、それを越えてしまえば、何てことはない。舞台作品が原作ということで、これから作ろうとしてる作品の最終形のイメージが、しっかり頭に描けたいたんだと思う。非常に小慣れたストーリーテリングが、ライトなコメディを一切邪魔しておらず、爽やかさすら感じるほどである。
三谷監督作品のような、まるでドヤ顔してるような鬱陶しい演出はない。若い演者たちの演技が、多少拙くても、こういう内容であれば十分。

そして何気に、最後の最後で『時をかける少女』臭を醸し出す。娯楽作品としてもっと評価されてもいい。真夏の夜長に、友達数人でビールのみながらワイワイ観るには丁度いい作品だな。

これを見ると、はたして『のだめカンタービレ』は上野樹里にとって良かったのかどうか…と考えざるを得ない。だって普通の上野樹里は非常に魅力的なのだもの…。
#真木よう子はなんか顔が違う。

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imageX0048.Png公開年:1955年
公開国:日本
時 間:108分
監 督:溝口健二
出 演:市川雷蔵、久我美子、林成年、木暮実千代、大矢市次郎、進藤英太郎、菅井一郎、千田是也、柳永二郎、羅門光三郎、夏目俊二、河野秋武、石黒達也、中村玉緒、十朱久雄、沢村国太郎、香川良介、杉山昌三九、南條新太郎、荒木忍、東良之助、西田智、上田寛、小柳圭子 他



平安末期。藤原氏による貴族社会が長く続いていたが、その勢いは台頭してきた武士によって脅かされつつあった。武士勢力の筆頭であった平忠盛は、朝廷の命により西方の海賊討伐を行い、成果を挙げて凱旋したものの、貴族たちの讒言により朝廷からの恩賞どころか上皇からのねぎらいの言葉すら貰えない始末。忠盛は、自分の馬を売らねば部下をねぎらう祝宴を開くこともままならぬほど窮乏しており、武士たちの怒りは爆発寸前となっていた。そんな中、藤原時信が、忠盛に恩賞を与えるべきと進言し謹慎させられたという噂を聞き、忠盛は息子・清盛に礼状持たせ時信の屋敷に向かわせる。その帰り、酒屋へ立ち寄ると、自分が白川上皇の息子であると噂されていることを知った清盛は衝撃を受け…というストーリー。

オープンセットの豪華さ…というか、本当に町を一つ造ってしまったんじゃないかと思うほど。カメラがワンショットでどこまで追っていっても、平安の京都がそこにある。なんと隙が無いセットなのか。おそらく実際の建造物も使用しているとは思うのだが、境目がよくわからない。1955年に、カラー作品でこの制作費の掛けっぷり、目眩がするほどだ。

原作は吉川英治。主人公清盛は、武士、上皇、僧侶と、自分はいったい誰の子かという、出自に悩みぬく。もちろんそんな設定はフィクションだろうが、同じ吉川作品である三国志の劉備玄徳が景帝の落胤であるという設定に近く(まあ、玄徳の設定は三国志演義のものだが)、実に吉川英治らしい冴えた娯楽要素だと思う。
#ちょっと韓国ドラマ臭い幼稚さではあるが、これはこれで“様式”だ。

僧兵とのぶつかりあいは、清盛というよりも信長のそれを彷彿とさせるが、まあそれもご愛嬌。別に歴史映画を目指しているわけではない。

出自の問題もさることならがら、存命の母親のビッチっぷりがハンパない。そんなクソみたいな母親のおかげなのかどうかわからないが、自分が誰の子かなんてどうってことないよ、自分がどうするか!それが大事!と吹っ切れるところでおしまい。ここで終わったのは非常に残念だが、まあ、平清盛がのし上がっていく姿を描ききれるものではないし、ヤング清盛に焦点を当てるコンセプトだと納得するしかない。

市川雷蔵なんて、林家木久翁の似てるんだか似てないんだかわかんないモノマネでしかしらない。今回、初めて観た。勢いもあるし顔力こそ感じるが、セリフも聞きにくいし、感情表現が一辺倒だし、力不足な感は否めない。まゆげが無ければ、始めの20分などはたして誰が主人公なのか…と、思う人もいるに違いない。

すごい!とは思うが、愉しめますよ…と薦めるのはちょっとはばかられる作品。もっと悪くいうと、吉川英治の表面上の娯楽+豪華なセット+見映えだけつくろった市川雷蔵=表面だけが華美なハリボテ映画。そんな風に思えてしまうのは私だけか。ストーリーに何か芯が足りない、そう思えて仕方が無い。
#溝口健二をディスるのは勇気いるけど。

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imageX0046.Png公開年:1962年
公開国:日本
時 間:86分
監 督:古沢憲吾
出 演:植木等、重山規子、ハナ肇、久慈あさみ、峰健二、清水元、藤山陽子、田崎潤、谷啓、安田伸、犬塚弘、石橋エータロー、櫻井千里、松村達雄、由利徹、中島そのみ、団令子、中北千枝子、稲垣隆、田武謙三、人見明、小川安三、清水由記、岡豊、荒木保夫、記平佳枝、門脇三郎、宮田羊容、井上大助、土屋詩朗、出雲八重子、峯丘ひろみ、丘照美、宮川澄江、杉浦千恵、田辺和佳子、谷和子、寺沢広美、原紀世子、吉田静司、大内ヨシオ、朽名章宣、康本佳男 他

会社をクビになってフラフラしている男・平均(たいらひとし)。金も無いのに立ち寄ったバーで、有名企業の太平洋酒が乗っ取り工作にあっている話を小耳に挟む。ピンときた均は、太平洋酒社長・氏家勇作が尊敬する代議士の側近を装い接触。太平洋酒の乗っ取り対策要員として、太平洋酒の総務部に入社する。早速、均は、大株主の富山社長に株を売らないように賄賂を使って買収。この成功によって係長に昇進するのだが、その後、バーのマダム・京子から富山社長が黒田物産の黒田有人社長に株を買ったことを知らされる。黒田は山海食品社長・大島良介のバックアップで、株の買占めをしていたのだった。この失敗によってクビになった均だったが、バーで黒田と出会い親密に。再び太平洋酒に部長として復帰することになったのだが…というストーリー。

サラリーマンという形態が、決して既定値ではなかった時代。組合が全共闘と同じ部類だと思ってるアホな時代。世の中の未熟さや馬鹿馬鹿しさと堅苦しさが混ざり合った時代。それを、スチャラカ”と形容される軽薄な男が切り裂いてく様は、痛快で実におもしろい。
いや、痛快という言葉は適切でないように思える。前の会社は競馬でヘタこいてクビになったという設定なのだが、それに違和感を感じるくらい、主人公・平均の行動は一見俗っぽく見えるが真逆。彼のキャラクターは、もう妖精のレベルだと思う。その証拠に、彼は女性にモテモテになっても深い関係にはならない。それどころか心すら満足に通わせない。人間離れしているキャラクターなんだよ。ラストで無理やり結婚を発表してしまうが、そこの愛欲も性欲も一切感じられない。魔法の国へご招待している感じですらある。

はじめは、口八丁手八丁でのし上がっていく男の話になるのかと思ったが、彼はさほど地位には興味が無い。それどころか、自分が嬉々として愉しめる場所を欲しているだけに見える。企業内で“ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)”を貫けることって、理想じゃないか。テキトーなんだけど、案外、芯を突いてる発言のオンパレード。この時代を感じさせない新しさは異常。

突然ピンスポで唄いはじめるシーン。何気に日本映画史にのこるインパクトシーンだと思う。女口調の社員が、まさかの伏線という巧みさでわかるように、目の行き届いた、なかなかしっかりしたシナリオである。
植木等の歌は知っていても映画は観ていないという人が案外多いだろう。これは是非観るべきだ。

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image0407.png公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:119分
監 督:マイク・ニューウェル
出 演:ジュリア・ロバーツ、キルステン・ダンスト、ジュリア・スタイルズ、マギー・ギレンホール、ジニファー・グッドウィン、ドミニク・ウェスト、ジュリエット・スティーヴンソン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジョン・スラッテリー、マリアン・セルデス、ドナ・ミッチェル、テレンス・リグビイ、トファー・グレイス、ジョン・スカーティ、ローラ・アレン 他
受 賞:【2003年/第61回ゴールデン・グローブ】歌曲賞(作曲:エルトン・ジョン、作詞:Bernie Taupin“The Heart Of Every Girl”)
【2003年/第9回放送映画批評家協会賞】歌曲賞(作曲:エルトン・ジョン、作詞:Bernie Taupin“The Heart Of Every Girl”)
コピー:誰もがみんな愛に迷っていたあの頃――輝きをくれたのはあなたでした。

1953年。自由な考え方をもった美術教師キャサリン・ワトソンは、ニューイングランド地方にある名門ウェルズリー大学に助教授として採用され、カリフォルニアから赴任してくる。アメリカ一保守的といわれるウェルズリー大学に、自由な考え方を吹き込もうと意気揚々と着任するが、生徒や他の教師たちは、大学でエリートの恋人を見つけ結婚することが女性の理想という考え方で、彼女の教育方針は一蹴されてしまう。それでも彼女は諦めることなく、絵を通して学生たちを変えようとするのだが…というストーリー。

教育現場のお話なんだけど、『陽のあたる教室』みたいな直球の教師モノではない。というか、美術史教師なのに、美術を通して生徒の心を変えていくって部分が、非常に弱い。
教師云々ではなく、女性の価値観のぶつかり合い。最終的に彼女の授業は人気が出たけれど、教師として信頼を勝ち取ったんじゃなく、友達というかお姉さんとして仲良くなっただけだと思う。

生徒たちは、彼女を好きになるけど、元々大学の方針や教師たちのことが好きなわけでもなく、猫をかぶっていただけで、彼女たちの何かが変わったわけではない。伝統を振りかざして、彼女を煙たがる古株教師たちの考え方を変えるわけでもない。彼女たちを縛り続ける、親をはじめとする町の人々の考え方がわかるわけでもない。心の拠り所でもあった、彼女と付き合う男たちが、彼女のことをわかってくれたわけでもない。

1950年代の状況を考えると、こういう軋轢は判るんだけど、これまでの慣習を重んじる人たちの考えが悪いともいえないんだもん。っていうか、生徒たちがあそこまで優秀だったら文句いう必要ないわ。自由にさせてやれって感じ。
途中で、生徒たちが、先生の思い通りに動かないから気に喰わないんでしょ?っていうんだけど、私もその通りだと思ったもの。

はじめから最後まで何も変わっていないと思う。映画というのは基本的に、何かが変化していく様子を観るものだから、そういう意味では、映画足りえていのではないか。
教師モノっていうのは、涙や感動を与えられないならば、正しいかどうかは別にして何らか“答え”を出さないと、私はダメだと思うのね。結局“モナリザ・スマイル”を彼女たちがどう捉えて、自分たちの何になぞらえて、それをどうすべきと考えたのか。私にはピンとこなかった。

とはいえ、、ジュリア・ロバーツ、キルステン・ダンストら、彼女たちの演技がなかなかウマく、駄作にならず踏みとどめている(特にマギー・ギレンホールがいいね)。凡作中の凡作で、あえて観る必要を感じない作品。
 

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image1770.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:125分
監 督:ベン・アフレック
出 演:ベン・アフレック、ジョン・ハム、レベッカ・ホール、ブレイク・ライヴリー、ジェレミー・レナー、タイタス・ウェリヴァー、ピート・ポスルスウェイト、クリス・クーパー、スレイン、オーウェン・バーク、コレーナ・チェイス、ブライアン・スキャンネル、デニス・マクラフリン、ヴィクター・ガーバー 他
ノミネート:【2010年/第83回アカデミー賞】助演男優賞(ジェレミー・レナー)
【2010年/第68回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(ジェレミー・レナー)
【2010年/第64回英国アカデミー賞】助演男優賞(ピート・ポスルスウェイト)
【2010年/第16回放送映画批評家協会賞】作品賞、助演男優賞(ジェレミー・レナー)、アンサンブル演技賞、脚色賞(アーロン・ストッカード、ベン・アフレック、ピーター・クレイグ)、アクション映画賞

強盗事件が多発する街ボストンのチャールズタウン。この街で育ったダグは、かつてはホッケー選手の夢を追っていたが挫折し、今は幼馴染と結成した強盗団のリーダとなっていた。綿密な準備を重ねる鮮やな手口で、銀行強盗を繰り返している。しかしある日、逃走のためにやむを得ず女性副頭取を人質にする。逃走の途中でその女性は解放し、なんとか逃げ切ったものの、その女性が同じ町の住人であることが発覚。自分たちの正体がバレることを恐れたダグは、偶然を装い彼女に近づくのだったが、その女性クレアの美しさに不覚にも恋におちてしまい…というストーリー。

強盗犯が、襲った銀行で人質にとった女性と、後日出会い恋に落ちる。そこまでは、宣伝で説明されている。そういう関係になるまでの、見え見えの展開を見続けなくてはいけない苦痛をどれだけ我慢できるかが勝負。はっきりいって、かなりの苦痛。私はそこを越えるまでに、二度、DVD止めたからね。もっとさらっと展開させるなり、他に注意が向くような演出をするなり、工夫すべきだったろうね。

はっきりいって、主人公は強盗で喰ってるクソ人間。もっとタチの悪い仲間がいようが、人は殺さなかろうが、知ったこっちゃない。元プロホッケー選手を目指していたとか、この環境を好ましく思っていなかろうが、完全なクソ人間。擁護する価値もないほどのクズ。しかし、ベン・アフレック演じる主人公はそうは見えない。まるで仕方なくやっているようで、ものすごく賢く、実はキレイな人間なんですよ…という感じにしか見えない。ベン・アフレックは役者としてはやっぱだめだな。
まあ、どうみても凶悪なヤツが銀行の副頭取と簡単に恋に落ちてしまう方がリアリティが無いってのはわかるが、そこは、ちょっとあやしいけど、見た目と優しさのギャップに惚れちゃった…みたいな演出にしないと、トータルバランスが悪すぎる。

最後も、元銀行副頭取の女が、ダグが強盗した金を臆面もなく自分の子供ホッケーチームに使うとか。君なら正しい使い方ができるだろう…って、正しいも何も盗んだ金だろ。せめて、その金がが別の犯罪組織の金だとか、いうんならまだしも、普通に銀行に預金されてる金だぜ?これを納得して観られる人なんかいないだろ。
この女も、騙された!とか常識人ぶってるけど、相当のクソ人間。クソ人間同士のラブストーリー。クソ人間であることを自覚して開き直ってくれるならいいんだけど、二人とも自分はけっこうまともと思ってるんだぜ?救いようないじゃん。

しかし、犯罪シーンやFBIとの丁々発止はすごくおもしろく観ることが出来た。駄作に陥りそうなところを、十分救っていると思う。低レベルプロットのシナリオをここまでまとめあげることができるんだから、ベン・アフレックは監督には向いているんだよ。そっちに専念すべきだね。いや、出てもいいけど、主役をはれる力はないんだよ。カメオ程度に抑えるべき。

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imageX0046.Png公開年:2005年
公開国:日本
時 間:119分
監 督:滝田洋二郎
出 演:市川染五郎、宮沢りえ、大倉孝二、皆川猿時、二反田雅澄、桑原和生、山田辰夫、螢雪次朗、樋口可南子、土屋久美子、韓英恵、山中陽子、鵜沢優子、関根あすか、半澤友美、沢尻エリカ、小日向文世、内藤剛志、渡部篤郎 他
コピー:恋をすると鬼になる――越えてはいけない愛の結界。
阿修羅目覚める時、逆しまの天空に不落の城浮かび、現し世は魔界に還る――


一見平和に見える江戸だったが、町のいたるとろに人を襲う“鬼”が蔓延っていた。人間側も手をこまねいているわけではなく、鬼と人間を見分け、鬼を滅ぼす力をもった能力を持つ“鬼御門”という組織が対抗していた。かつて、その鬼御門で“鬼殺し”の異名ととっていた病葉出門は、とある事件をきっかけに組織をやめ、今は中村座の四世鶴屋南北の元で舞台役者になっている。そんな彼はある日、安倍晴明殺害の下手人として鬼御門の副隊長・邪空に追われている渡り巫女つばきと出会い、一目で恋に落ちてしまうのだが…というストーリー。

内藤剛志と渡部篤郎はTVドラマなどのイメージが強すぎて、こういうファンタジーっぽい映画には不向き。出てくるだけで醒めてしまう。とはいえ、冒頭は、セットやメイクを含め映像的にはなかなか力が入っていて、『魔界転生』みたいなイメージで好感が持てた。しかし、褒めようかとおもったら、早々に馬脚を現す。

鶴屋南北がさりげなく喋る“鬼=ゾンビ”の設定。鬼が人間を噛んで増殖させるシーンもなければ、ゾンビ設定が活きているエピソードは、その後のストーリーの中で皆無。何の意味があったのか。
鬼や鬼殺し、鬼を抜けた主人公・出門と、謎の女性・つばきという複数の対立軸がある間は、そのカオス状態でなんとか愉しめるのだが、“阿修羅”の話に集約されていくと、ワクワク感が皆無になる。
ただでさえ、ファンタジーというかアニメちっくなノリを貫いていたのに、突然、不必要にリアルなセックスシーン。せめてそれがキレイなら許せなくも無いが、ぎょっとすっるほどガリガリな宮沢りえにドン引き。そのガリガリさんが、妙にリアルな喘ぎ声を続けるから、さらにドン引き。どういう演出やねん。
大体にして、阿修羅を復活させることにどういう意味があるのか、観ていてまったくピンとこないから、それがどれほど悪いことなのか…。人がいけない橋の向こうで、デカイ顔してるだけなら、どうってことなさそう。
その宮沢りえがラスボスなんだけど、まったくラスボス臭がしない。実際、劇中のどの殺陣やアクションよりもしょぼく。刀を持って、ふらふら歩いているだけに近い。他のシーンではCGなりなんなりを使っているんだけど、ラストで盛り上げる気ないのかよ。っていうか、途中から監督がやる気を失ったとしか思えないわ。

エンドロール前、鬼の子みたいなのが鶴屋南北についてるのだが、理由も方法も過程も一切わからんし。というか、鶴屋南北に狂言廻しをやらせようと思っていたんだろうけど、その役目は全然果たせていない。中途半端な出歯亀。失敗シナリオだよな。

でも、間違いなく一番のウィークポイントだと言い切れる点は、渡部篤郎の演技がポンコツすぎること。特に悪者ぶって凄んでいるシーンがまるで学芸会のよう。観ていてこっちが恥ずかしくなってくる。彼一人でこの映画を台無しにしているといっても言いすぎではない。

始めの15分まで以外は、完全な駄作。こんな作品をつくってしまった3年後に『おくりびと』を作るという、その挽回ぶりにはおどろくわ。

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image0552.png公開年:2006年
公開国:アメリカ
時 間:117分
監 督:ガブリエレ・ムッチーノ
出 演:ウィル・スミス、ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス、タンディ・ニュートン、タンディ・ニュートン、ジェームス・カレン、ブライアン・ボウ、カート・フラー、ダン・カステラネタ、タカヨ・フィッシャー、ケヴィン・ウェスト、ジョージ・K・チェン 他
受 賞:【2007年/第16回MTVムービー・アワード】ブレイクスルー演技賞(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス)
コピー:この手は、離さない──
全財産21ドルから立ち上がった父子の、実話に基づいた感動作。

1981年サンフランシスコ。クリス・ガードナーは医療機器のセールスマンをしているが、売り上げは芳しくない。5歳の息子クリストファーには、生活のつらさを味あわせたくはないと思っているが家計は苦しく、妻が働きに出ても、家賃の支払いもままならなぬ状態。やがて、生活に疲れた妻は出て行き、家賃滞納で部屋からも追い出されてしまう。息子と安モーテルや慈善事業の世話になりつつ、起死回生を狙って証券会社のインターンに応募する。しかし、数十人のインターンから正式採用されるのは1名で、おまけに6ヶ月のインターンの間は無給であることが判明。親子の生活は困窮を極め…というストーリー。

観客を感動させよう!希望を与えよう!という意図で作られたのは間違いない。しかし、その目的は達成されていない。
実話だそうだが、クリス・ガードナーという人を知らないので、驚きもないし感銘も受けない。アメリカでは成功者としてよく知られた人物だから…だと思うのだが、主人公によるナレーションが入るのだ。その時の私はこういう感じだった…、これから始まる話はこんな感じ…、みたいに。
本人を知らない私にとっては、これは、愚作以外の何者でもない。完全に掴みに失敗していると思う。だって、俯瞰目線での語りを聞くと、これから始まる話が、もうオチが決まっている話なんですよ…と、観客を我に帰らせて、ストーリーに没頭することを疎外するではないか。それに、語り口が穏やかだから、絶対に成功するんだろうな…と判ってしまう。先がわかる話を、嬉々として観るなんて、よほどのことがないかぎりありえないと思う。

それに、実話ベースの罠が。ウソみたいだけど実話なんだもん…っていうエピソードが多い。
お国柄なのか、個人的な事情なのかわからないが、母親が息子を置いていく様子が、どうもしっくりこない。はっきりいってこの奥さんはクソ人間。劇中ではずっとイライラしっぱなしで、観ているこっちもイライラしてくる。ノイローゼになっちゃんただな…みたいな描写が不足しているせいなのか、なんかしっくりこない。

クリス・ガードナーが大変だったのはわかるし、綱渡りをしてきたのもよくわかる。素直に大変な状況だねぇ…と言える。でも、結局ガードナーは、すごく賢いから乗り切れたんだよ!という描写が、素直に共感させてくれない。彼が他の人間より賢いというくだり、このシナリオで必要か?ルービックキューブのくだりをエピソードを入れるためには必要だったのかもしれないが、邪魔な設定だと思う。

なんか違和感ばりバリバリだったから、調べてみたら(ってwikipediaだけど)、全然この映画と話が違う。まず、妻じゃなくて不倫相手じゃねーか。インターンの間、子供の面倒を見ていたことになっているけど、妻は子供を連れて行っている。正式採用されて、そこで働いたように描かれているけど、ほどなくして別の会社に転職している(なんだそりゃ)。その後に、妻が現れて子供を置いていって、父子家庭はそれから。ホームレス生活は事実らしいが、タイミングが全然違うじゃないか。実話ベースって、もう脚色の嵐じゃねえか。家無しで子供を育てながら、無給のインターンなんてすげーな!って思った、俺の気持ち返せや! なんかむかつくんだけど。

エンドロールの前にクリス・ガードナーの現在について文章が入るのだが、その後成功したんですよ…だけじゃ、感動できるわけもない。普通、自分と同じような境遇の人にチャンスを与えているとか、そういう感じにならないと、単なる自慢話じゃないか。
あ、そうか、ナレーションも含めて、単なる自慢話を聞かされてる感じになるから、つまんないんだ。納得。

 

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image1426.png公開年:2009年
公開国:日本
時 間:122分
監 督:真利子哲也、遠山智子、野原位、西野真伊
出 演:堺雅人、寺島しのぶ、柄本佑、板尾創路、団時朗、MINJI、深水元基、永井努、竹嶋康成、筒井真理子、塩見三省、塩谷瞬、大鷹明良、田村泰二郎、重松収、近藤良平、山本光二郎、佐藤江梨子 他
コピー:絶望は、なんて希望にあふれているんだろう



虐待されていた生い立ちから、神に救いを求めて宗教団体に所属する青年・河原崎。相手を破滅させるほどの額は盗まないという美学を持つ泥棒・黒澤。不倫相手のサッカー選手と、お互いの伴侶を殺す計画を立てているカウンセラーの京子。職を失い、街を彷徨う男・豊田。とある一日、そんな彼らにおこった出来事は、次第に絡み合っていき…というストーリー。

様々なキャラクター毎にエピソードが語られる。始めの画商のエピソードが不快なだけで掴みに失敗しているのに輪をかけて、続くエピソードがエグさ満開。一体、何を見せたいのか。世の中にある不快なものをこれでもかこれでもかと観せる。そんなコンセプトなのかな?と。知ってはいるが主役を張るような役者じゃない人ばかりで、観ていて不安になる。それも狙いか?

そう思っていたら、35分経過したあたりで堺雅人登場。団時朗や塩見三省には悪いが、堺雅人が出てきて正直ホッとした。打って変わって魅力のある泥棒さんのエピソード。
何か、義賊的な展開を見せるのかと思ったら、特に大きな展開もなく、寺島しのぶ演じるカウンセラーの話に。死体が増える展開の意味もわからないし、バラバラだった死体はなんだったのか?もわからない。わからないまま、寺島しのぶの発狂で終わる。そして、板尾創路のエピソードになるが、ますます、前のエピソードとは繋がりはない。

『パルプ・フィクション』のように、こんなバラバラなエピソードが、糸を撚るように繋がっていくに違いない…と信じて疑わなかった私は、“ラッシュライフ”ドーン!でエンドロールに突入してガク然とした。
後から考えれば、各エピソードは、犬やら銃やらで繋がってはいるんだけど、その繋がりに魅力も感じられないし、大体にして、それぞれのエピソードが同じ一日であることも、よくわからんし。

この監督さんたちは、東京芸大の学生さんで、企画から配給まで全部学生さんがやったとか。名だたる役者さんたちや伊坂幸太郎が主旨に賛同してくれたのはまあ良いとしても、結果的には役者の無駄遣いだったわ。
学生さんだろうがなんだろうが、観客からすりゃ、同じく金払って観てるんだから、大目にみる必要はないよな。同じように文句は言わせてもらう。いくら素人監督とはいえ、駄作にもほどがあるだろう。話のタネにでも観てみるか…ってノリで観たとしても時間の無駄。誰がどのエピソードをやったのはわからないけど、こんなデキじゃ、その後、仕事もらえないと思うよ。いくらなんでも。

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image1837.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:アリスター・グリアソン
出 演:リチャード・ロクスバーグ、リース・ウェイクフィールド、アリス・パーキンソン、ダン・ワイリー、クリストファー・ベイカー、ジョン・ガーヴィン、ヨアン・グリフィズ 他
コピー:世界には、まだ人間が行ってはならない場所がある。そこは、聖域――




パプアニューギニアのジャングルにある前人未踏の巨大洞穴。ベテラン冒険家フランクを隊長とする探検隊は、この洞穴の調査を進めているが、複雑な構造のため未だ全貌を掴めずにいた。そんな中、サイクロンの急接近により大量の雨水が洞穴に流入。地上にいたメンバは退避できたが、洞穴内にいたフランクと相棒のクレイジー・ジョージ、フランクの息子ジョシュ、この探検のスポンサーであるカールとその恋人ヴィクトリアたちは、洞穴の底に閉じ込められてしまう。彼らは出口を求めて、だれも踏み入れたことの無い洞穴の奥深くへと進まざるを得なくなり…というストーリー。

『ディセント』みたいに、謎の生き物が登場したりするのかと思ったけど、それは無し。がっつりのサバイバルムービーだった。正統派のサバイバルムービーか?といわれるとちょっと違う気はしないでもない。
実話というか元ネタみたいなものはあるようだけど、ほぼフィクションと考えてよいだろう。

私、数年に一回くらい、海底洞窟みたいのに泳いでいって、だんだん狭くなって、この先を進んでいいものだろうか…みたいな夢を見るので、既視感バリバリで背筋が寒くなった。観ていて息が詰まるよ。
あまりメジャーな役者も出ていないし、メインのキャストの演技も正直いってたいしたことないのだが、とにかく洞穴自体の迫力がすごくて、なかなかハラハラさせてくれる。ある意味、この洞穴が主役なんだろうな。

100人に、この中で誰が生き残るでしょーか?って聞いたら、65%が正解の人を挙げるだろう。さらに最後に生き残るのが○人ですよって、ヒントを加えたら、85%が当てると思う。そのくらいシナリオとしては稚拙。
親子の相克とか、息子の成長とか、ストーリーの盛り上がりにさほど貢献していないし、ピンチになる前に後でアッと驚かせてくれるような伏線があるわけでもない。
こういう、サバイバル物なら、死亡フラグみたいなものが散見されるのが普通だが、嫌な奴の行動に特別何かの伏線が貼られるわけでもない(わざとらしい死亡フラグが無くて、そこは逆に良かったのだが…)。

振り返ってみれば、普通に危機的状況に陥って、落ち着いて行動できたやつが生き残るという、なんともヒネリのない話だったな。でも、さっきも言ったけど、すべて洞窟の迫力がカバーしてくれるんだよね。普通にドキドキできる佳作。

劇場公開は3Dだったみたいだが、DVDで観たのでもちろん2D。普通、3Dは物体が飛び出す系が多いんだけど、こういう巨大空間の奥行きはうまく表現されたのだろうか。その点は非常に興味があるが、仮に3Dのブルーレイがあったとしても、我が家には機材がない。観た人、どうだったか教えて。

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クボタカユキ
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映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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