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image0065.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:141分  
監 督:クリント・イーストウッド
出 演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江、松崎悠希 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】音響賞[編集](Alan Robert Murray)
【2006年/第32回LA批評家協会賞】作品賞
【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】外国語映画賞
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】外国語映画賞
【2007年/第31回日本アカデミー賞】外国作品賞
コピー:世界が忘れてはいけない島がある

1944年6月、日本軍の重要拠点・硫黄島に新たな指揮官、栗林忠道中将が降り立つ。アメリカ留学経験のある栗林は、精神論のみの隊の合理的な体制を整えていくが、オリンピック馬術競技金メダリストの“バロン西”こと西中佐のような理解者もいるが、古参将校たちは反発を強めていった。そんな中、圧倒的なアメリカ軍の戦力を迎撃するため、栗林は島中に地下要塞の構築を進めていくが…というストーリー。

『父親たちの星条旗』が若干がっかりな内容だったので、あまり期待してはいなかったのだが、それなりの受賞歴を見てのとおり、『父親たちの星条旗』よりは格段の緊迫感があり、しっかりと内容に集中させてくれたと思う。

純粋に戦争ドラマだった。本作を観て、国家の体制の違いはあれど、当時の日本人も我々と同じ人間だったのだなぁ…という感想を抱くアメリカ人はいないのではないか。程度の差はあれ、本作の日本人は奇異に映ったと思う。今の日本人の私が観ても、奇異に見える。国家体制があのようだったということは、頭で理解できても、「国家のため」に玉砕していくロジックは、心には沁みてはこない。
『父親たちの星条旗』では、国家のために戦ったのではなく仲間のために戦っただけだ…という表現が出ていたが、本作の日本人は、半分は本気で「国家のため」と思い、半分は何で戦っているのか自分でもよくわかっていないように見える。

軍人としての行動には差がある。捕虜の扱いだ。本作では、不良アメリカ兵によって、降伏した日本兵捕虜が撃ち殺されるのだが、それはあくまでアホな一兵卒の行いである。アメリカ軍の上官はハーグ陸戦条約に乗っ取って手順どおり捕虜の待遇を施しており、小隊長クラスでも“戦争のルール”を理解している。
ところが日本のほうは、ハーグ陸戦条約というもの存在すら知ってるのかすら怪しく、知っていたとしても遵守するつもりは微塵も見えない。
この点は非常に重要なことである。戦後日本は“戦争は悪”として、研究すらタブーである。欧米では当たり前の軍事研究をする学部はもとより歴史学部というものが、日本にはないのだ(今後、できたとしても、近現代の戦争を研究することには、躊躇して、中世・近世の研究をするだろう)。その結果なにがおこっているのか。卑近な例を出そう。どこかの国の軍隊が日本に上陸して、わが町を進軍しているとする。わが国を侵略し、われらの財産を差し押さえていく他国の軍が憎たらしくて仕方が無い。私は自分の財産を守るために、軍人を包丁で襲撃したところ逆に殺されてしまった。その後、日本は逆襲に転じて勝利して戦争は終結した。私の妻は夫である私を殺した相手国を訴えた。さて、その訴えは認められるか?私は国際法のプロではないから保証はしかねるのだが、おそらく“否”である。軍隊として様式(見た目上軍人とわかる服装など)が整っていない者が、攻撃をしかけた場合は、単なる“ゲリラ”活動であり殺されても文句は言えないのだ(一旦ゲリラ活動を行えば捕虜にすらなれない)。
#南京で私服の人間が日本軍に攻撃を仕掛けて逆に殺された場合は、これにあたると思うのだが、それを言うと、望みもしない議論にまきこまれるので、展開はしない。

『私は貝になりたい』でなんで主人公が戦後に裁判にかけられたかといえば、戦争に負けたとばっちりでもなんでもなく、ハーグ陸戦条約に乗っ取った捕虜の扱いをしなかったからなわけ。こういうことは、国がどっかのタイミングで教えなくてはいけないことだと思うのだが、戦争は“悪いこと”なので、教える必要はないという日本国の姿勢なのだ。

何が言いたいかというと、本作で奇異に見えた日本人の姿だが、今、なんらかの理由で同じように徴兵されて戦争に参加することになったら、何も知らず、同じことにやるんだろうな…と思った、、ということである。勝ち取った民主主義と、なし崩しで実現したような民主主義。同じ民主主義でもプロセスが異なると、大きな差があるのだな…という感想である。ただ、この差は真摯な歴史研究と教育によって克服できると私は信じているのだがね。

まあ、いろいろ考えさせてはくれた映画で、その考えが阻害されるような興醒めのシーンはなかったとだけは言っておこう。特段、『父親たちの星条旗』とワンセットでみなくてはいけない理由はないのだが、一応、国家間のコントラストというのが、観かたに影響すると思うでの、時間と気力が許す人は、連続で観るとよいと思う。

技術的な難点を一点だけいっておく。あくまでアメリカ映画なので、本国では字幕で観せることを前提としているため、日本語の聞き取りやすさは二の次になっている。セリフの聞き取りに難い箇所が散見されたのは、残念である。
 

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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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