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公開年:2009年
公開国:スペイン、アルゼンチン
時 間:129分
監 督:フアン・ホセ・カンパネラ
出 演:リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディーノ、カルラ・ケベド、ギレルモ・フランセーヤ 他
受 賞:【2009年/第82回アカデミー賞】外国語映画賞
コピー:ブエノスアイレスを震撼させた殺人事件から25年── 未解決の謎を小説にする男に、封印された愛が甦る。



刑事裁判所を定年退職したベンハミン。家族のいない彼は、孤独な時間を過ごしていたが、未だに忘れることができない、在職中の殺人事件を題材にして小説を書こうと考えた。それを機に、久々にかつての職場を訪れ、年下ではあったが大卒の上司で、現在は検事となっている女性イレーネと再開する。イレーネは今では2人の子供の母親となっていた。その事件が発生したのは25年前の1974年、ブエノスアイレス。銀行員リカルド・モラレスの妻で23歳の女性教師が、自宅で暴行を受けて殺害された。捜査にあたったベンジャミンの直感で、古い写真に写っていたリリアナの幼なじみの男が容疑者として浮上する。ベンハミンは部下で友人のパブロと共に、男の居場所を捜索するが、彼らが強引な捜査を行ったために問題となり、未解決のままお蔵入りとなってしまう。その1年後、ベンハミンは、被害者の夫リカルドが、毎日、曜日ごとに駅を変えてまで、容疑者の男を探していることを知り、心を動かされる…というストーリー。

裁判所のお話かと思って観ていたら、捜査の順番がどうのこうのというイザコザがおきる。何で裁判所が捜査するんじゃ?と。よく判らないが、アルゼンチンでは刑事事件を扱う裁判所が捜査権も逮捕権も持っているらしい。いわゆる刑事さん的な人も出てくるのだが、下級捜査官みたいな扱いなのかな。
じゃあ、捜査手続きに問題がなかったかとか、立件内容の成否とか誰が判断するんだ?と。逮捕=結審に等しいのか。三権分立、どうなっとるんねん。まあ、国によって色々なんだろうけど、これじゃ冤罪やら不当捜査はもちろん、権力が集中しすぎて癒着や汚職がおこりまくりだろうな。

閑話休題。英米作品とは異なったテンポの作品。冒頭から事件のあらましが語られ始めるまで、非常の迂遠に感じる。現在と25年前を行ったり来たりする構成になっているのか。現在のシーンは、ずーっとただベンハミンとイレーネが思いだして、あの時はどうだったこうだったと語るだけ。解説やいいわけの為に、わざわざ現代にシーンを移さなくても、ナレーションベースで充分じゃないのか?と思える部分さえある。いや、こんなテンポを疎外するような演出をわざわざ行っているのに、無意味なはずがない…、きっと、迷宮入り事件を小説にすることで、当時見えていなかったことがわかり、現代で解決に至る!そんな展開に違いない!それを信じて、観続けよう。

一方、肝心の過去の捜査のあらましについては、どんどん盛り上がる。熱血捜査官の逸脱行為、容疑者逮捕までの執念とドキドキ、上司からの不当な扱い。やっぱり判事に権力が集まりすぎていて好き勝手ができちゃっている。そんなことが可能なのか?ってう驚愕展開。さらに、ベンハミンとイレーネに恋愛感情があったような無かったような場面が、差し込まれる。このシーンにどういう意味が?わからんなぁ…なんて。

で、予想していた通りに、事件を改めて洗い直すと…という流れに。事件の顛末もなかなかの内容だ。おまけに、過去と現在の行ったり来たりが、止まった事件の歯車を動かすだけじゃなく、もう一つの止まっていた歯車も動かす…という展開に繋がっているのが秀逸かも。米アカデミー外国語映画賞を受賞しているが、まあ妥当だと思う。
それで、彼らの心が救われることになるのやら…と感じてしまうエピローグ。完全にスッキリするわけではないのも、いい味になっている。

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公開年:2011年
公開国:ベルギー
時 間:95分
監 督:ニコラス・プロヴォスト
出 演:イサカ・サワドゴ、ステファニア・ロッカ、セルジュ・リアブキン、ティボ・ヴァンデンボーレ、デュードネ・カンボンゴ 他







アフリカから地中海を渡って密入国してきた男アマドゥ。その後、悪質な斡旋業者の元で不法労働していたが、一緒に入国してきた仲間のシアカが病気になって働けなくなってしまい、アマドゥは彼の分まで働いていた。しかし、満足に薬も与えられないれないため、このままでは死んでしまうと考えたアマドゥは、こっそりと抜け出し、廃棄物を転売してなんとか薬を調達する。しかし、戻ってみるとシアカの姿が無い。雇い主に抗議にいくとシアカは逃げたというが、身動きの取れないシアカが逃げることなど不可能で、死んだことは間違いなかった。さらに、雇い主はシアカの在留許可やパスポートのために使った4000ユーロをアマドゥに払えと言う。憤慨したアマドゥは雇い主の高級車を破壊し、そのまま逃亡。あてもなく逃亡したアマドゥは、とある建物に進入。置いてあった服に着替え、金目の物を物色していると、男女が言い争う声が聞こえる。アマドゥはその女の姿に惹かれ、部屋を出て行った彼女を追いかけるのだったが…というストーリー。

タイトルのインベーダーが何を指すのか?という所が、重要なポイントだろう。密入国した黒人が不法労働をするという展開なので、昨今のヨーロッパ諸国での移民問題に焦点を当てた作品なのだろうと、誰しもが思う。密入国者である弱みにつけこまれ不当な待遇で働かされ続けるアマドゥ。怒りを爆発させ、大暴れして逃げてしまう。普通に考えれば、あのいかにも悪そうな雇い主から、追われる展開になると考えるだろう。

ところがどっこいそっちの方向には展開しない。逃げている時に見かけた、金持ちそうな白人女性を執拗に追いかける。逃げている時に何を呑気な…というか、性欲を爆発させている場合じゃなかろう…と思うのだが。
不当に働かされているということで、きっと、この黒人は、かわいそうな境遇なんだろう。友達思いでマジメなんだろう…と考えてしまうが、その観客の頭の中で構築された観念が壊される。何が移民問題だ。その後、危険な情事という、思いも寄らぬ展開を見せてくれる。
これがこの作品の特徴で、この展開のパラダイムシフトがおきるのは、この一回だけではなく、20分程おきに続くのだ(詳細は観て欲しい)。

で、インベーダーが何を指すのか?なワケだが、途中、あれ、インベーダーっていうのはアマドゥのことじゃなく女のことなんじゃね?なんて、見立てが変わっていったりする。で、ラスト。
(ちょっとネタバレしちゃうが)やっぱりインベーダーはアマドゥのことを指していた。え?え?って感じになる展開。あの状況で、気付かれもせずに間にいられるってことは…ってことだよね。

そして、よーく考えると、はじめに考えた移民問題がテーマなのでは?という所に戻っていく。安い労働力という側面はあるにせよ、自国では稼ぐことができない人に手を差し伸べて受け入れてあげたにもかかわらず、最終的にはその手に噛み付く移民たち。結局、自分の欲望のまま行動し、我々の生活を腐食していくインベーダ以外の何者でもないのでは?っていうね。

ヨーロッパの中規模国の国民が潜在意識として感じている移民に対する恐怖が、アマドゥという怪物の姿を借りてうまく形になっている。他に類を見ない構成の作品だと思う。もうちょと評価されてもいい作品かな。

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image2164.png公開年:2013年
公開国:アメリカ
時 間:118分
監 督:テイラー・ハックフォード
出 演:ジェイソン・ステイサム、ジェニファー・ロペス、マイケル・チクリス、ボビー・カナヴェイル、ニック・ノルティ、ウェンデル・ピアース、クリフトン・コリンズ・Jr、パティ・ルポーン、カルロス・カラスコ、エマ・ブース、ダニエル・バーンハード、キップ・ギルマン 他
コピー:華麗なる悪党
 天才強盗<パーカー>に仕掛けられた罠(裏切り)――今、幕を開ける、完璧なるリベンジマッチ!!


強盗のパーカーは、メランダー率いる犯罪グループと組み、オハイオ・ステートフェアを襲撃。パーカーの完璧な計画により、150万ドルの強奪に成功する。しかし、メランダー一味と組むのは今回が初めてで、彼らの不用意な行動で一般人を傷つけてしまったことに、パーカーは立腹。闘争中の車の中で、メランダーは今回奪った金を次の仕事の元でにすることを提案するが、これ以上メランダー達と組むのはまっぴらなパーカーは頑なに拒否する。すると、怒った一味によって、パーカーは何発もの銃弾を浴びせられ、道に捨て置かれる。何とか一命を取り留めたパーカーは、一味が金持ちたちの集まるパームビーチにいることを突き止める。復讐に燃えるパーカーは、テキサスの大富豪に成りすまし、物件を探すふりをして、彼らの次の仕事の計画について調査するのだった。しかし、物件案内を頼んだ不動産業者のレスリーに、大富豪ではないことを見破られ…というストーリー。

またもや強盗したのに裏切られてお金を貰えず、復讐する話。描きやすいのか、アメリカではこの手の犯罪が身近なのか…、よくわからんけど、多すぎでしょ。デジャヴか?って思うレベル。

でも、一昨日の『ゲットバック』よりは、素直な展開。本作の主人公パーカーも、犯罪者のくせに美学を持って仕事をするキャラクター(①奪うのは盗んでもこまらない金だけ、②殺すのは悪人だけ、③仕事は綺麗に美しく)。下衆で非道な他の犯罪者に半死の目にあわされて復讐を誓うという展開。

メランダーの裏に大物がいて、ヤバそうなので妻を別荘に非難させるのだが、妻に被害がおよびそうなくらいヤバそうな展開が最後まで無いのが、消化不良ポイントかな。着々とメランダーに近づき、彼らの情報を集めていくのだが、どうも奴らがそんな大きな仕事をこなせるような人間に見えなかったりする。まあ、アホはアホなりに大胆で、結局は成功しちゃうんだけど。

まーたジェニファー・ロペス、こんな役やってる。盛りの過ぎたラテン女の役、多すぎじゃね?でも、その汚れが似合うからこまる。そして、素人の欲求不満女がプロの殺し屋の世界に踏み込んじゃう。どうなるのか。現実から逃避したい彼女の頭は、ある意味お花畑。あわよくばパーカーといい仲になろうと目論むが、奥さんがいることを知って腰砕けになる、へなちょこっぷり。そういう一点集中できない性格が全ての原因な気がするが、そんな彼女のキャラクターにシンパシーを感じる層はいるのか?いや、いたとしてもそういう層は、この手の映画を観る層と重なっているのか(笑)。

でも、二人でひっそり隠密調査してるはずなんだけど、結構あっさり刺客に見つかったりしちゃう。もう、映画的には派手に展開するしかないので、そんな怪我したら、とても応急処置で動けないから!って状態になる。そしてピンチになったら、避難を指示していた夫自身が、その妻を現地に呼んじゃうという。まあ、あそこで観ている側の緊張感は、薄まったなと正直思う。

奴らのアジトに忍び込んで、武器を盗むシーンは、成功するのはわかっていてもかなりドキドキする。でも、あれどういう意味があったんだろう。特殊な武器?すり替え?うーん、あの時盗んだ武器が、後々何かのポイントになってた?ゴメン、これも観なおして確認する気がおきない…。

もう、そこまでマジメで仕事ができるなら、真っ当な商売でもウマくいきそうなレベルだよね…って考えると、途端に脱力するから考えるのは止めようね。『ゲットバック』よりはひと回りおもしろいと思う。
#嫁父の役でニック・ノルティが出ているが、彼も活躍させてあげればよかったのに。老醜を晒しただけで終わったな。

 

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image2152.png公開年:2011年
公開国:オーストラリア
時 間:81分
監 督:ポール・チャイナ
出 演:ジョージ・シェヴソフ、ジョージナ・ヘイグ、ボブ・ニューマン、リンダ・ストーナー 他






あるバーのオーナーが、貸した金を返さない知人に堪忍袋の緒を切らしてしまい、とうとう殺し屋を雇う。依頼したクロアチア人の殺し屋は、予定通りに仕事を完遂。満足したオーナーはクロアチア人に約束の報酬に加え、ボーナスとして覚醒剤を渡す。一方、そのバーで働くマリリンは、今日、出張中の恋人トラヴィスが帰ってくるのが待ち遠しくて仕方がない。明日からトラヴィスと旅行にいく予定だったが、それ以上にとうとうプロポーズされるのでは?という予感に、心が躍っていた。その後、クロアチア人は貰った覚醒剤を吸いながら、町を去るべく車を飛ばしていると、対向車と接触事故をおこしてしまい、車が大破。相手側の運転手も死亡した模様でそちらの車も動かない。移動手段を確保すべく周囲を見ると、一件の家に明かりが。そこは、恋人の帰りを待つマリリンの家で…というストーリー。

実は、書いたあらすじ(↑)がすべてで、それ以上に何も無かった(驚愕)。ギュっとしたら、29分くらいでおさまりそう。
結局、あのクロアチア人の目的が何だったのか、明かされじまいで終わるのが、モヤモヤする。バーのオーナーの銃を持っていったということは、何か因縁か目的があったんだと思うのだが、さっぱり不明。自分の銃が無くなっていることを知ってオーナーは慌てるのだが、それは犯行に使われたと知ったから慌てたんだよな?単に報酬として持って行かれたから慌てたんじゃないよな?

突然殺し屋が家にやってくるというシチュエーションを思いつき、その殺し屋が田舎町にいる理由を逆算して付け足したらこうなったんだろうけど、もっと真剣にバックボーンを考えないといけないと思う。

主人公のマリリンが拘束されてしまうのは、男をたまたま轢き殺してしまった現場に近い家にいたから。事故で車が動かなくなってしまったから、移動手段が欲しかっただけ。
(以下ネタバレ)
途中で、恋人が殺されてしまったことを知り絶望するが、マリリンがバーサーカーモードに突入するわけでもない。
途中でオーナーがやってくるが、そこで、クロアチア人との関係が明かされるどころか、大バトルをするわけでもない。

半死の恋人トラヴィスが一矢報いるのかと思いきや、ただ、クロアチア人の残忍さを表現しただけ。『ノーカントリー』的な得体の知れない暴力を表現したかったのかもしれないが、それほどキャラが立っているわけでもなく、ただのスプラッタに。そんな立っていないキャラクターが、胸から指輪を出したって、さほど狂気を感じるわけでもなく。ラストカットは、死んでいくクロアチア人と固まったマリリンの画なのだが、観ている方もマリリン同様、固まってしまった。

さて、あのスパンキングのシーンに意味はあっただろうか…。ただでさえ内容が希薄な上に、ゆるゆるな進行具合なのに、そんな無意味なシーンを挟む余裕があるという…。どこぞのインディペンデント系の映画祭で賞を獲ったようなことがパッケージに書いてあったが、他のノミネート作品はどんなレベルだったのか。そっちの方に興味が沸くレベル。人生の貴重な時間を無駄にするので、警報だな。

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image2172.png公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:サイモン・ウェスト
出 演:ニコラス・ケイジ、ジョシュ・ルーカス、マリン・アッカーマン、サミ・ゲイル、ダニー・ヒューストン、M・C・ゲイニー、マーク・ヴァレー、エドリック・ブラウン、バリー・シャバカ・ヘンリー 他
コピー:盗られたものは、奪い返す(ゲットバック)。




長年チームを組む仲間たちと銀行強盗を成功させ1,000万ドルを奪ったウィル・モンゴメリーたち。しかし、逃走中に仲間割れが起き、ウィルがヴィンセントに発砲。その様子を見て焦ったホイトが、1000万ドルを持ったウィルを残して逃走。駆けつけたパトカーをかわしながら逃げ続けるものの、倉庫に追い詰められ力尽きてしまい逮捕される。しかし、彼がもっていたはずの1000万ドルは出てこなかった。ウィルは収監され8年後に出所。その足で娘アリソンに会いに行き許しを請うのだが、娘は激昂し一人でタクシーにのって去ってしまう。その直後、ヴィンセントから電話が入り、あの時の自分の分け前を寄こせと要求。ウィルは、あの時の金は刑を軽くするためい焼却してしまったと白状するが、ヴィンセントは信じない。そして、アリソンを誘拐したことを告げ、12時間以内に1000万ドルを引き渡すことを要求する。切羽詰ったウィルは、かつて自分を逮捕したハーランド刑事に助けを求めるが、ヴィンセントは数年前に死体となって発見されていたため、信じてもらえず…というストーリー。

また、お金を奪った奪われたで、すったもんだする犯罪者のお話。多いね、こういうの。

昔の仲間のみんなが、ウィルは金を隠しもっているに違いないと思っているのなら、皆がウィルを追い掛け回せばよかったのに。さらに、当時、金が出てこなかったことで、立場が悪くなったり冷や飯を喰わされたやつ(刑事とか警備会社とか)も、追い掛け回したらよかったのに。なーんて思いながらみていたのだが、敵は足を打たれた男だけ。

さて、ヴィンセントはなんで、相当な工作をしてまで自分を死んだことにしたかったのか? 他の仲間は存命で、そいつらですらヴィンセントは死んだと思っている。そうするメリットは?そうしないと、自分だけで独り占めできないから?まあ、そんなとこなんだろうけど、それなら、ウィルだけじゃなく他のメンバーとの軋轢も強く描くべきだった。足を失ったことで“狂人”になってしまった所が強調されすぎてしまって、なにか恐ろしさが薄れてしまっている。
警察がウィルのいうことを信じて動かないようにするために…と考えることもできるが、もしそこまで先々考えていたとすると、かなりに切れ者のはずなのだが、娘を連れまわしてる彼と、その緻密な過去の行動がいまいちリンクしない。演出上の齟齬かな。

ウィルは、ヴィンセントの指示に対抗して、SIM交換し携帯電話を電車の網棚に置くのだが、そのくだりの意味がよくわからん。でも、見直して確認する気はおきなかった(そこまで、しっかり観ようって気をおこさせないレベルの作品なの)。

でも、敵も犯罪者だけど主人公も犯罪者で、登場人間はクソ人間&クソ人間というのが、最近の作品に多いね。ウィルも娘に真人間になると誓ったくせに、8年間ずっと考えた…って、もうクズはどこまでいってもクズなのよ。でも、この彼の性向が本作を救っているといってよい。最大の山場は、娘を救うところじゃなくって、8年越しの犯行シーンである。このくだりは、なかなかおもしろい。
で、肝心の娘を救うシーンは、お察しの通りで力技…。

ジジィの刑事は、なぜかウィルが改心していることに期待を掛けている。一方、同僚の若い方の刑事は、ウィルは紛失した金塊を隠匿していると思っている。このシチュエーションは一体何なのか。間違いなく捜査の一環か保釈違反のチェックだと思うのだが、金をウィルが投げ捨てることで、ウィルは逮捕されないですんだ模様……どういうこと?捨てようが捨てまいが、持っていたことには違いはない。で、仮に海に投棄したとして、刑事たちは、拾いにいかんでいいわけ?なにがどうなのか、本気でさっぱりわからない。
そして、その後の、実は…っていう流れも、ウィットに富んだオチとはいささか言い難い。

最後、ぼぉっとしてて注視していなかったので、わからなくなってしまったのだが、ハーバーに一緒にいた女性は、一緒に金塊を盗んだ人?妻?でも、わざわざ観かえす気は起きない。その程度の作品。おもしろくなかったわけじゃないけど、似た作品が多すぎて、どうもねぇ。

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image2171.png公開年:2012年
公開国:イギリス
時 間:95分
監 督:エイドリアン・グランバーグ
出 演:メル・ギブソン、ピーター・ストーメア、ケヴィン・ヘルナンデス、ドロレス・エレディア、ピーター・ゲレッティ、ロベルト・ソサ、 マリオ・サラゴサ、ヘラルド・タラセナ、ディーン・ノリス、テノッチ・ウエルタ・メヒア、フェルナンド・ベセリル、スコット・コーエン、ボブ・ガントン 他
コピー:世界一ヤバイ場所でデカイヤマを踏め!



マフィアから大金を強奪し逃走する男“ドライバー”。国境を強引に突破しメキシコへの逃亡を図るが失敗し、共犯の男は死亡してしまう。メキシコ側で逮捕されるが、悪徳警官共は盗んだ大金を横取りし、ドライバーを刑務所に放り込む。その刑務所は史上最悪の刑務所“エル・プエブリート”で、脱獄以外はドラッグも女も商売も自由だが、犯罪組織に所長も看守も買収されており無法地帯となっていた。そんな中、ドライバーは“キッド”と呼ばれる少年と出会う。キッドは、肝臓を患っている刑務所内のボス、ハビのドナーとして、近いうちに臓器を奪われ殺される運命にあるのだった。ふとしたことからキッドを助けたドライバーは、キッドど共に脱獄の方法を探り始めるが、未だにドライバーが大金を隠し持っていると思い込んでいるマフィアや悪徳警官の手が、ドライバーに忍び寄り…というストーリー。

『パッション』『アポカリプト』とあっちの世界に没頭し、その後、プライベートの醜聞でうんざりさせてくれた、昨今のメル・ギブソン。いや、監督としての能力が一流なのは認めないわけではないのだが、私は『ペイバック』みたいなのが好きなのだ。だから、本作のテイストは大歓迎。やっと戻ってきてくれたか…という感じ。ちなみに脚本もメル・ギブソン。自分が何を求められているのか、気づいてくれたのかと思うと、うれしい限り。

ただ、そのシナリオについては、ちょっと手直しが必要だったかもしれない。主人公も犯罪者だが廻りはもっとクズだらけで、奪われた金を取り返したいが様々な困難が…というプロットは非常にシンプルで良いのだが、構成が良くない。

『ペイバック』のときは、正当な対価(犯罪に正当もクソもないのだが)を払ってもらえなかったので、“筋”を通してもらいましょう…という美学が貫かれていた。その美学っていうのが、他の犯罪者の常識からするとあり得ないレベルで、なんでそんな低額の金でそこまでやるねん!?という驚きと戸惑いと誤解が生まれ、それにダサカッコいいポーターの頑固さが加わった、なんともいえない味となっていた。
本作は『ペイバック』ほど、大金強奪に到った経緯がはっきりしていない。
・大金を奪ったマフィアのボスととドライバーの関係
・妻と間男とドライバーの関係
・そして大金強奪の動機
これらの流れがもうちょっと濃く描かれていれば、もっと“してやったり”感が出ただろう。ラストの間男への復讐が夢なのか事実なのかはわからないが、そこも、大金強奪をする経緯に関わっていたとすればよりすっきりした。奪われていた金への執着がただの下卑た欲なのか否か、ディテールがはっきりすれば、味わいが少し変わったとも思う。

いよいよ、追い詰められて手の込んだ作戦に突入するのだが、マフィアとコンサルタントみたいな若造との関係もわからん。メル・ギブソンのモノマネかくし芸は笑い必至なのだが、オフィスを吹っ飛ばされたおっさんとの関係もいまいちピンとこない。やっぱりディテールが荒い。

これらの荒さを補うのが、キッドとのくだりだが、
(以下、ネタバレ)

これがなければ『ペイバック』と違いがなかったのは事実。とはいえ、その母親共々、幸せに暮らしましたとさ…というオチが気持ちよいかどうかはさすがに微妙。金の奪還…ではなく、スクラップの中に…という流れも、必要だったのか否か(普通に奪還しただけじゃいかんのか…)。

まあ、細かいことは考えないで、メキシコの“ヒャッハー!”な雰囲気で、誤魔化されちゃえばいいんだと思う。まあまあだった(さすがに新作料金だと考えちゃうかな)。

 

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image0907.png公開年:2007年
公開国:アメリカ
時 間:157分
監 督:リドリー・スコット
出 演: デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッティング・Jr.、ジョシュ・ブローリン、テッド・レヴィン、アーマンド・アサンテ、ジョン・オーティス、ジョン・ホークス、カーラ・グギーノ、RZA、ルビー・ディー、コモン、ライマリ・ナダル、ロジャー・グーンヴァー・スミス、マルコム・グッドウィン、ユル・ヴァスケス、リッチー・コスター、ワーナー・ミラー、アルバート・ジョーンズ、J・カイル・マンゼイ、ティップ・ハリス、ジョン・ポリト、ケイディー・ストリックランド、ロジャー・バート、リック・ヤン 他
受 賞:【2007年/第80回アカデミー賞】助演女優賞(ルビー・ディー)、美術賞(アーサー・マックス、Beth A. Rubino)
 【2007年/第65回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](デンゼル・ワシントン)、監督賞(リドリー・スコット)
 【2007年/第61回英国アカデミー賞】作品賞、脚本賞(スティーヴン・ザイリアン)、作曲賞(マルク・ストライテンフェルト)、撮影賞(ハリス・サヴィデス)、編集賞(ピエトロ・スカリア)
 【2007年/第13回放送映画批評家協会賞】作品賞、歌曲賞(Anthony Hamilton“Do You Feel Me”)
 【2008年/第17回MTVムービー・アワード】男優賞(デンゼル・ワシントン)、悪役賞(デンゼル・ワシントン)
コピー:けもの道を行く実在の男たちの 容赦なき闘いの人生!

1968年、ニューヨーク。地元住民たちに慕われていた黒人ギャングのボス、バンピーが急死する。彼の右腕だったフランク・ルーカスは、自分の手でのし上がることを決意する。フランクは、ベトナムに駐留中の米軍兵士を仲間に引き入れ、大胆にもタイから軍用機を使って純度100パーセントのヘロインを直接輸入する。そのヘロインを“ブルー・マジック”の名で流通させ、これまでの麻薬市場を崩壊させ、一揆に麻薬王に君臨する。一方、ニュージャージーの警察に所属する刑事リッチー・ロバーツは、汚職のはびこる警察組織内で、潔癖を通していたため、かえって仲間から疎まれ孤立していた。私生活もうまく言っておらず、息子の養育権をめぐって係争中。そんな汚職とは無縁の姿が検察官の目にとまり、エセックス郡麻薬捜査班のチーフに抜擢される。やがて、ブルー・マジックの供給元を調査するうちに、フランクの存在に辿り着くのだったが…というストーリー。

デンゼル・ワシントン演じるフランクと、ラッセル・クロウ演じるロバーツ刑事は、終盤になるまで絡むことなく、ストーリーが進行する。一方は、ゴッドファーザーのようなギャングのお話で、もう片方は、アンタッチャブルのような刑事のお話。これが交互に描かれるのだが、個々の話はなかなか面白い。しかし、一向に絡みそうもない展開にだんだん飽きてくるのと、フランクを魅力的に描こうとしているものの所詮犯罪者ということで共感できないこと。それに、清廉潔白な刑事のはずなのに何故か共感しにくいロバーツ刑事のせいで、どっぷりと没頭することができない。

長いくせに、キャラクターの描き方が浅いのも気になる。ロバーツ刑事は、司法の道を目指しているという設定なのだが、それを目指す理由や、せっかく合格したの諦めるシーンなど、その“覚悟”がうまく描けておらず、中途半端で生きていない。彼に、強固なポリシーがあるように見えないのは、ラッセル・クロウの演技がマズいのかもしれない。ダークさが滲み出すぎているのかも。

そして、やっぱり“実話”が足枷になってしまったような気がする。フランクのクレバーなキャラクターが、むやみに家族をビジネスに参加させて、自分の首を絞めるような不自然なことに違和感を感じる。事実なのだから仕方がないのだろうが、デンゼル・ワシントンのキャラと合っていない。
一番、この話で表現したかったのは、二人が公権力側の腐敗を排除していった“奇跡”なんだとは思う。アメリカの公権力の腐敗っぷりに呆れるべきなのか、おそらく同じように腐敗しているのに表出せず、自浄しない日本の公権力を嘆くべきなのか。しかし、最後の展開は、それまでの流れからは唐突に収束しすぎる。事実は小説より奇なり…といってしまえばそれまでだが、観客を妙に冷めさせるのも事実。

二台俳優にリドリー・スコットと磐石の布陣のため、非常にハードルが上がってしまった(受賞の数はすごいんだけどね)。もちろん及第点は余裕で越えているが、せめてもう少し短くまとめて欲しかった。

 

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image2066.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:ジョナサン・ヘンズリー
出 演:レイ・スティーヴンソン、ヴィンセント・ドノフリオ、クリストファー・ウォーケン、ヴァル・キルマー、リンダ・カーデリーニ、ヴィニー・ジョーンズ、トニー・ダロウ、ロバート・ダヴィ、フィオヌラ・フラナガン、ボブ・ガントン、ジェイソン・バトラー・ハーナー、トニー・ロー・ビアンコ、ローラ・ラムジー、スティーヴン・R・シリッパ、ポール・ソルヴィノ、マイク・スター、マーカス・トーマス、ヴィニー・ヴェラ 他




1960年代、オハイオ州クリーブランド。アイルランド系の家に生まれたダニー・グリーンは、中学を出てから港湾労働者として働いていた。仲間を大事にする彼は、組合が過酷な労働環境を強いることに怒り、自ら労働者代表として立ち上がり、やがて組合長の座を勝ち取るまでに。しかし、力を得たダニーは、マフィアとも付き合うようになり、汚職を重ね逮捕される。ダニーは、長期の収監を免れるために、FBIへ犯罪者情報を提供する約束で釈放される。釈放はされたものの、家族との関係は悪化し、以前よりも裏社会の仕事に手を染めていくことになる。1970年代。ダニーは車に爆弾を仕掛けられ、間一髪で回避する。犯人を対立していたイタリア系マフィアだと確信したダニーは、同様に爆弾を仕掛け応酬。両陣営は、街全体を巻き込んだ抗争へと発展していき…というストーリー。

実在のアイルランド系マフィアの話らしい。冒頭は、義心に溢れた男が、幸せな家庭を築くまでが描かれる。地位も名誉も財産も得て、幸せ満開だったが、不正が発覚しあっさりと転落。その後、マフィアに関わっていくが、どっぷりマフィア組織の一員なのかというそういうわけでもない。純粋な仲間意識と、自分たちにかけられた火の粉は自分で掃うということを徹底している。その義心だけは昔から変わらず一環しており、その行動が悪であっても魅力的に写るのはそのせい。
完全な武闘派で、争う時は自らの拳で闘う。体を鍛えるために、普通に公園で腕立て伏せしているところが、人間臭さが満開。アイルランド系とはいえアイルランドがどんな所なのかも知らないし、ケルト戦士を自称しているけどそれがどういう戦士なのかも良くわかっていない。ただ、その流れる血の発露するまま行動する男。

元々そういう性格なので、汚い仕事とは完全にマッチできず、独断で慈善活動なんかもするようになる。やがて、マフィアまがいの仕事から足を洗おうとするのだが、そう簡単にはできない。着火点は低いので、恨みを買って攻撃されれば、反撃せざるを得ない。
マフィア側だって、足を洗おうとしているのだから、放っておけば消えるだけで実害はないのに、感情的にダニーとけじめが付けたくて、抗争になる。放っておけば、後のマフィア裁判もなく、そのままマフィアたちは安泰だったのに。
結果的に、マフィアが一掃されることになった、その原因は、ダニーという着火点があったからなのだ…ということでスポットが当たって、作品になったということだろう。

単純なマフィアによる抗争とは違うので、なかなか、掴みどころを絞らせない作品だった。何を観せたいのかピントを絞らせてくれないのだが、決して悪い意味で言っているのではなく、展開が読めないという意味で捉えて欲しい。

ポテトとハギスの罵り合いや、「おい、イタ公、貴様らがアダ名で呼び合うのは、本名もまともに覚えられないからか?」なんて台詞を吐いたり、なかなか面白いシーンもある。そこそこ面白い作品なのに日本未公開なのは、なんだかんだ、最後はあっさり死ぬから。まさに実話だから脚色のしようがないという、実話ベース作品が嵌りやすい落とし穴に嵌っている。
#ヴァル・キルマーがジャケット画像の三本柱の一人として出ているが、単に役者の知名度の問題で出ているだけで、こんなにスポットがあたるような役ではない。おまけにブヨブヨのおっさんで、ちょっとどうにかしないとヤバいレベル。

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image2085.png公開年:1983年
公開国:アメリカ
時 間:170分
監 督:ブライアン・デ・パルマ
出 演:アル・パチーノ、スティーヴン・バウアー、ミシェル・ファイファー、ポール・シェナー、ロバート・ロジア、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、F・マーレイ・エイブラハム、ミリアム・コロン、ラナ・クラークソン、ハリス・ユーリン、リチャード・ベルザー 他
ノミネート:【1983年/第41回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](アル・パチーノ)、助演男優賞(スティーヴン・バウアー)、音楽賞(ジョルジオ・モロダー)
【1983年/第4回ラジー賞】ワースト監督賞(ブライアン・デ・パルマ)


1980年。キューバは政府に反抗する者をアメリカに追放したが、収監されている犯罪者も一緒にアメリカに送致した。トニー・モンタナ、マニー・リベラも刑務所からアメリカに送られた者で、彼らはマイアミの移民キャンプに押し込められた。キャンプ生活にうんざりしたトニーは、多くのキューバ人に恨まれていた政治犯レバンガの殺しを請け負い実行。その後、麻薬取引で財を成したフランクの依頼で、コカインの取引に向かうと、金を横取りされそうになり、殺されかけるが、一瞬の隙をついて反撃し皆殺しにする。それをきっかけに、フランクの部下となるが、トニーはフランクの情婦エルヴィラに惹かれてしまう。数ヵ月後、トニーは独断でボリビアの黒幕ソーサと高額の麻薬取引を成立させるが、フランクの勝手な行動が気に喰わないフランクは、トニーの殺害を命じ…というストーリー。

『暗黒街の顔役』という作品があって、それのリメイクらしいが、もちろん知らず。冷戦のさなか、キューバからの移民受け入れという異常なシチュエーションから始まる。

あたり構わず噛み付いて、ちょっとでも見下していると感じたら容赦しない狂犬トニーをアル・パチーノが見事に演じきっている。かなりのピンチに陥ってもその目は怯えることがなく、それゆえに裏の世界でのし上がっていき、悪行を尽くしながらも見事に望みどおり成功していく。チェーンソーのインパクトはすごい。さすがデ・パルマってところ。あのシーンでトニーという男の性質を一発で描ききった。

その強引さで財を成していくが、学の無さや、志の低さ故に、すぐにほころびが出てくる。満たされない、というか強大な不安が彼を襲い続ける。でも、止まれない。その様子を観ていると、いったいトニーは何を目的に行動しているのか。どういう衝動が彼を突き上げているのか、すごく疑問に感じる。私は結局その彼の裏側みたいなものを見つけることができなかった。

このような悪徳な組織がぬくぬくと大きくなれるのは、かならず公権力のなんらかの助力があるからだ…という本作の切り口は正しいと思う。スケールは違うが、日本のパチンコ業界がぬくぬくと商売できるのも公権力の下支えがあるからである。

技術的に残念なのは、音楽のダサさ。即物的で薄っぺらな裏ビジネスでのしあがっていった様子をダイジェストで描いているシーンの音楽が一番ダサいが、それ以外もかなり格好わるい。
そして、本作は異様に長い。もうちょっとスマートに短くできなかったものか。その長さの末には、大逆転でもなく玉砕でもなくカタルシスもない。自滅の様子をみじめに描いている。このラストは好みの分かれるところだろう。

個人的にはあまり好きではない。アル・パチーノの演技がすべて。

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image2063.png公開年:1978年
公開国:アメリカ
時 間:91分
監 督:ウォルター・ヒル
出 演:ライアン・オニール、イザベル・アジャーニ、ブルース・ダーン、ロニー・ブレイクリー、マット・クラーク、フェリス・オーランディ、ジョセフ・ウォルシュ、ルディ・ラモス、ウィル・ウォーカー、ニック・ディミトリ、ボブ・マイナー 他




通称“カウボーイ”と呼ばれる男は、強盗の逃走を手助けする「ドライバー」を生業としていた。これまで、その逃走テクニックでパトカーの追跡をかわして逃げ切りとおしていた。刑事は彼を捕まえようと躍起になっていたが、証拠を掴むことができずにいた。そして、刑事はとある強盗と取引をする。それは、その強盗の逮捕を見逃してやる代わりに、カウボーイに銀行強盗の手助けをさせろというものだった。奪われる金のナンバーを控えておき、その分け前をカウボーイが受け取れば、それを証拠に逮捕できるという算段だ。当初は仕事の依頼を断っていたカウボーイだったが、とある事情からその仕事を引き受ける気になり…というストーリー。

非常にシンプルなストーリーながらも、主人公のキャラクターが魅力的で、それだけでグイグイを惹きつけてくれる作品。主人公は強盗の逃走を手助けする運転だけを専門に担当する男カウボーイ。いつも携帯ラジオでカントリー・ミュージックを聞いているから。
どういう過去があるのかわからないが、とにかく主人公カウボーイがストイック。必要以上の取り分はもらわないし、気に喰わない仕事はしない。悪徳刑事が言うには、仕事は質素そのもので派手なことは一切しない。何が愉しみで生きているのかもわからない。まるで逃走請負職人を極めようとしているがごとく、それ以外に何のこだわりもみせない。
ホテルに身を隠した時も、強盗がニュースになっているか否か気になりそうなものなのに、TVを見ようともせず、ラジオを聞く。とにかく非常時でも自分のペースは変えない。
結果的に、警察が泳がせた大金を手にした後も、全額いただいてしまおうなんていう色気は出さない。ロンダリングの結果、何分の1になったとしてもそれで構わないという金への執着のなさ。

一方の敵役の刑事は、脱法なんかお構いなしで、ターゲットをお縄にするためなら、どんな小汚い手段でも平気でとる男。警察権力をいいように利用して相手を追い詰めていく、誰が見ても気に喰わないやつ。悪役としてはわかりやすく、ぶり殺してやりたくなるようなクソ人間をうまく表現している。

また、ヒロイン(?)として、ギャンブル好きの金持ちの囲われ女が出てくる。警察の面通しでカウボーイを庇うのだが、そこそこの美人ながらも金に困って助けたとかいう小物っぷり。そのせいなのか、ロマンスに展開しそうなものだが、一切そうはならない。でも、ギャンブラーとしての勘を働かせてカウボーイを助けたり、仕事を手伝いをしたりと、ユニークな展開を観せてくれる。

CGも特撮も何も無い、普通に車を暴走させるカーチェイスの迫力は凄まじく、昨今のカーアクション作品なんかよりも良いデキ。すばらしいクライムアクション作品だ。

そんなに良いポイントばかりなら、もっと有名になってもよさそうなものだが?というツッコミが聞こえてきそう。そう、それには明確な理由がある。
各キャラクターの構図を考えたら、悪徳刑事にひと泡吹かせて、まんまとお金をせしめて、すっきりカタルシスってオチが普通だろう。そこに、どれだけ観客が思いつかないような展開を考えるか。それがすべて。しかし、金は入ってないは、警察はギャフンといわせられないわ、もやもやもやもやした終わり方。
製作側の意図としては、捕まえることができなかったことで、警察はギャフンといってるだろう…って言いたいのかもしれないが、考えうる中で一番つまらない展開だと思う。ギャンブル女なんか、その様子を見つめて、そっと帰る…ってさぁ、、、そりゃないんじゃない?このラストシーンで納得できる人は、よっぽど変わった感覚の持ち主だと思うな。私は。

ラスト4分で、満点から赤点になるというはずかしい大技をやってのけた作品。逆に、みんなこのラスト、どう思うよ?と問いかけたいくらい。

 

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image2044.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:94分
監 督:アーロン・ハーヴィー
出 演:フォレスト・ウィッテカー、ブルース・ウィリス、マリン・アッカーマン、ニッキー・リード、デボラ・アン・ウォール、シェー・ウィガム、ジル・ストークスベリー、ブラッド・ドゥーリフ 他
コピー:全員、クセ者。
 すべてはこの一撃から始まる。



テスは、仲間のドーンとカラの姉妹をと一緒に仕事に向かう。彼女たちは、麻薬の売人と強盗を生業にしており、ボスのメルの指示で、とある郊外のダイナーに向かうよう指示を受けている。そこで、メルのシマを荒らしている奴らが取引をしているので、ヤクを奪えという。3人は、前回の仕事で失敗しており、この仕事が最後のチャンス、絶対に失敗は許されない。道中、エルモアと名乗る黒人の警官に車を止められ、目的地まで着いて行ってやろうなどとおせっかいをやかれたり、いざ目的のダイナーについても、聞いていた話とは様子が違ったり、何か妙な感じ。しかし、仕事は中断できない。話し合いの末、店主とおぼしきウェイトレスが事情を知っているに違いないと踏んで、店内に銃を構える。しかし、ウェイトレスはライフルを取り出しで、反撃をしてきて…というストーリー。

フォレスト・ウィッテカー、ブルース・ウィリスと、豪華なキャスト。でも、この二人だからといって、大作になるとは限らない。フォレスト・ウィッテカーは、『ラストキング・オブ・スコットランド』以降、わざとか?ってくらいチョイ役やTVドラマばっかりに出ているし、ブルース・ウィリスも『処刑教室』や『コップ・アウト』など微妙な役柄が多い。そして、本作もその線。
それが悪いというわけではなく、肩の力が抜けた、一種の“悪ノリ”をやってくれれば何の問題もない。

一時期、多用された時間軸を行ったり来たりさせる『パルプ・フィクション』的な手法。さすがに食傷ぎみで、最近鳴りを潜めていたが、久々に見た。
若い女の三人組がダイナーで会話をしていて、突然強盗に転じるという、それこそ『パルプ・フィクション』のパクりじゃね?ってシーンを、何度も何度も繰り返すということをやっている。それが意図的に行われているのは明らかで、微妙に数分ずつ進めることで、一体何がおこっているの?という謎解きと、緊張感を同時に煽るという、両方を演出できており、なかなか巧み。期待できる雰囲気が涵養されている。

で、このプロットの何がスゴイかって、
(以下、ネタバレ)
麻薬売買に手を染めている女が、何百万ドルもの取引でヘタこいたもんだから、ボスにカタに嵌められるっていう、ただそれだけのお話だっていうこと。たった、それだけを、ここまで興味を途切れさせず魅せるのは、なかなかの腕前かと。新人同然の監督だが、ガイ・リッチーのような感じになっていくかもしれない(若い頃のガイ・リッチーの演出に似ていると思うよ)。

ところが、シナリオも監督のアーロン・ハーヴィーが手がけているのだが、完全に息切れ。ダイナーで三つ巴になったところが最大のピークで、あとは尻すぼみで終わってしまったのが残念。何か驚くような印象的なシーンが一つでもあれば、この作品は、怪作として評価されたと思う。今一歩、いや今1.5歩の作品。本当におしい。
#原題の『CATCH .44』の意味は不明。

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imageX0089.Png公開年:2007年
公開国:イギリス
時 間:108分
監 督:ウディ・アレン
出 演:ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、ヘイリー・アトウェル、サリー・ホーキンス、トム・ウィルキンソン、フィル・デイヴィス、ジョン・ベンフィールド、クレア・ヒギンズ、デヴィッド・ホロヴィッチ、ジェニファー・ハイアム 他




ロンドン。今は父親のレストランを手伝っているが投資やビジネスの世界で成功を夢見ている兄イアンと、酒とギャンブル好きだが恋人ケイトとの幸せな生活を夢見ている自動車修理工場に働いている弟テリー。ある日、テリーがドッグレースで大穴を当て、格安で売りに出されていた小型クルーザーを共同購入し、レースに勝った犬の名前にちなんで“カサンドラズ・ドリーム号”と名づける。その後、イアンは若い舞台女優アンジェラと出会うが、リッチなビジネスマンと嘘をついて付き合い始め、テリーから修理中の高級車を都合して貰うなどして繕っていた。一方のテリーは、ポーカーで惨敗し、巨額の借金を背負うハメになってしまい…というストーリー。

本作以外のウディ・アレンのロンドン三部作といわれる『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』は観ていないが、ユアン・マクレガー、コリン・ファレルという豪華な二枚看板を ウディ・アレンが料理するという、異色の組み合わせに興味津々だった。まあ、肉親の兄弟とはちょっと思えない見た目ではあるけれど。

凡庸で怠惰なくせに、不釣合いな上昇志向の持ち主ある兄。兄以上に凡庸だが、小さな日々の喜びで我慢できる人間だったのに、ギャンブルの興奮を知ってしまったために、泥沼に嵌ってしまう弟。金策に窮して、親の金に手を出してしまうが、そんな小金では大して役に立たない。
そこで、大金持ちの叔父がいるという都合のよいストーリーを観せられると、普通なら興ざめするのだが、そうはならない。叔父にどうやって切り出すのか…という流れ、そして思いもよらない叔父からの逆提案。兄弟が学のない小物であるが故の、低レベルな苦悩。蟻地獄にもがいてももがいてもズルズルと落ちていく蟻をじっと眺めるような感覚になる。

犯罪者の失敗物語としては、実にシンプルなストーリーなのだが、昔のウディ・アレン作品のような、あからさまなお笑い要素は無い。しかし、真剣+真剣+真剣な流れ故に、何かトータルでは滑稽に見えるという、コメディの高等技術に思える。だから、本作はクライムサスペンスなどではなく、間違いなくコメディだと、私は確信している。

しかしながら、残念極まりないのがラスト。破滅型のオチになるのは致し方がないが、展開もアクションもスケールが小さく、ヒネりも味もない。もう、投げ出しちゃったんじゃないんの? と疑いたくなる。さすがにお薦めできない。

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image2004.png公開年:2009年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出 演:ニコラス・ケイジ、エヴァ・メンデス、ヴァル・キルマー、アルヴィン・“イグジビット”・ジョイナー、フェアルーザ・バーク、ショーン・ハトシー、ジェニファー・クーリッジ、ブラッド・ドゥーリフ、マイケル・シャノン、デンゼル・ウィッテカー、シェー・ウィガム、トム・バウアー 他
ノミネート:【2009年/第25回インディペンデント・スピリット賞】撮影賞(ペーター・ツァイトリンガー)
コピー:正気か、狂気か。
荒廃した街 ニューオリンズ。最悪な男が、躍動する。

ハリケーン・カトリーナで水没したニューオーリンズ。テレンス・マクドノー刑事は、拘置していた容疑者を救出するという勇敢な行為で表彰され、“警部補(ルーテナント)”に昇格する。しかし、救出の際に、一生治らない腰の障害を負ってしまう。処方薬だけではその痛みを抑えることができず、ドラッグに手を出すようになってしまう。それ以降、愛人の高級娼婦フランキーとドラッグに興じ、元々好きだった賭博にも歯止めが掛からなくなる。薄給の刑事がそんな生活を続けられるわけもなく、夜の街を歩く人にあらぬ容疑をかけてドラッグを奪ったり、署に保管されている証拠品のドラッグをくすねるまでに。そんな中、セネガルからの不法移民の家族が全員惨殺される事件が発生する。その捜査の指揮を任されるテレンスだったが…というストーリー。

ドラッグが手放せなくなったことをきっかけに、善悪のタガが簡単にはずれてしまう主人公。好きな『ペイバック』に似たノリだけど、主人公のタチが悪い。美学なんかない。そんなクソ人間をニコラス・ケイジが見事に怪演している。
始終、腰の痛い演技も忘れずに貫いている。その設定のおかげで、昨今のクライムサスペンスには珍しく全然アクションをしない主人公というのもユニーク。ただ、たかだか水の中から人を救出しただけで、一生治らないほどの腰の怪我を負うのがよくわからん。元々腰が悪くて悪化したのか、救出時に痛めたのか、よくわからなかったし。どういう経過で腰を痛めたか、そこを描写せずにボヤかす演出意図がよくわからないね。

水没した署で生き残った容疑者と、凄惨な殺人事件の中一匹だけ生き残った観賞魚は、多分ダブらせているんだろうけど、ダブらせる意味は? などなど、色々仕掛けは散りばめられているんだけど、演出上の小技がウマくいっているとはいい難い。
でも、このクソ野郎がどうやって転落していくのかに興味津々になる一方、どうやって切り抜けるのかもちょっと気になるという、不思議な感覚がおもしろい。
立場が悪くなって、保管室勤務という愉快な展開。もう、主人公がラリってる以上に、展開がラリっちゃってるし、全体的にテンポが速く魅力的。ヴェルナー・ヘルツォークという監督さんの作品は初見だが、なかなか性に合うかも。

ラストはスカっとしないしピリっとしてなくて、賛否両論だとは思うけど、悪くは無い作品。あえてグダグダにしている気もするし。ハーヴェイ・カイテル主演で1992年に製作された作品のリメイクらしいので、是非ともそっちも観てみたい。
#ルーテナントが警部補の意味だなんて、大抵の日本人は知らない。これこそ、ウマい邦題を付けるべき作品だとおもうがねぇ。
 

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image1984.png公開年:2008年
公開国:イギリス
時 間:110分
監 督:ロジャー・ドナルドソン
出 演:ジェイソン・ステイサム、サフロン・バロウズ、リチャード・リンターン、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ダニエル・メイズ、ピーター・ボウルズ、キーリー・ホーズ、コリン・サーモン、ピーター・デ・ジャージー、ジェームズ・フォークナー、シャロン・モーン、アルキ・デヴィッド、アリスター・ペトリ、マイケル・ジブソン、ジョージア・テイラー、デヴィッド・スーシェ、ハティ・モラハン、ルパート・フレイザー、クレイグ・フェアブラス、ジェラード・ホラン、ミック・ジャガー 他
コピー:封印された英国史上最大の銀行強盗事件──これは実話である。
奪ったブツは、キャッシュとダイヤと王室スキャンダル。

1971年のロンドン。中古車店を経営するテリーは、借金の返済を迫られる苦しい日々。そんな時、知り合いのマルティーヌから、強盗計画を持ちかけられる。その計画とは、ロイズ銀行では設備の交換を行う予定があり、警備の設備も解除されるその間に貸し金庫を襲おうというもの。一瞬戸惑いはしたものの、家族のために実行を決断。仲間を集め準備する進めるのだった。実は、その貸し金庫には、現金や貴重品ばかりが納められているわけではなく、とある“秘密”も保管されているのだった。マルティーヌは、空港で麻薬密輸犯として逮捕されるのと引き換えに、この“秘密”を入手することを、とある組織に命ぜられていたのだった。しかし、かつてはヤバい仕事に手を染めていたテリー。マルティーヌの不穏な動きから、この計画の裏に何かあると睨み…というストーリー。

王室スキャンダルを秘密裏に葬り去りたい国家諜報組織、そのスキャンダルをだしに金を強請りたいテロ組織、そのテロ組織協力する売春組織、その売春組織と持ちつ持たれつの警察組織。それに、国家諜報組織に弱みを握られ利用されるマルティーヌ、そのマルティーヌから強盗を持ちかけられ参加するテリーら男たち。そして、その強盗を阻止しようとするまじめな警察官たち。6陣営にもおよぶ複雑な構図なのだが、うまくスッキリ説明できているのがすごい。

このストーリーが実話ベースだとは知らずに観ていた。エンドロールで実話だったことを知り驚愕。実際の王室の醜聞が、作品化されるなんてまずあり得ないと思いこんでいたからね。正に、事実は小説より奇なり(まあ、どこまで本当かはわからんのだけど)。

トランシーバーを落として、「ああ、こんなちゃちな演出で、警察に捕まっちゃうとかつまんねーなー」って思ったけど、逆に捕まらない演出とか、なかなか巧み。アマチュア無線で情報が漏れたところなんかは、おそらく事実なんだろうけど、トランシーバー落とすところなんかは創作だろう。こういう事実を創作の融合がいい具合だ。
穴を掘って銀行の地下まで…なんて、ありがちな話なんだけど、強奪した後から、尻上がりに緊迫度を増してく盛り上がり方は異様。

ジェイソン・ステイサム主演なのでバリバリのアクションを期待していた人は裏切られるかも知れないが、それを超えるおもしろさがある。また、ジェイソン・ステイサムらしくない、実にスケールのでかい話だった(彼は小粒なストーリーの作品が多いからね)。かつ、最後の諜報機関と売春組織と警察さんを鉢合わせさせる作戦。ここは脚色なのかも知れないけど、実話クライム作品にしては、出色のウマい締め方だと思う。唯一後味が悪くなりそうだった、妻との話も、それなりにまとまってるし。
あまり、有名じゃないけれど、これは傑作。是非観るべし。

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クボタカユキ
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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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