忍者ブログ
[1]  [2]  [3]  [4]  [5
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

image1954.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:105分
監 督:アミ・カナーン・マン
出 演:サム・ワーシントン、ジェフリー・ディーン・モーガン、ジェシカ・チャステイン、クロエ・グレース・モレッツ、ジェイソン・クラーク、アナベス・ギッシュ、シェリル・リー、スティーヴン・グレアム、ジェームズ・ヘバート 他
コピー:絶対に救い出す――。

テキサス州の郊外にある“キリング・フィールズ”と呼ばれる湿地帯では、多くの死体が発見されることで有名で、その多くが未解決となっていた。ニューヨークから転属してきたブライアン刑事は、相棒のマイクとのコンビで犯罪多発地区での捜査を行う日々。今は、住宅街で起きた少女の殺人事件を担当しているが、一向に手がかりが掴めずにいた。そんな中、連続少女失踪事件が発生。地道な捜査の末、有力な容疑者が浮かび上がった矢先、ブライアンが気にかけ面倒を見ていたリトル・アンという少女が誘拐されてしまい…というストーリー。

監督のアミ・カナーン・マンは、『ヒート』『コラテラル』のマイケル・マンの娘らしい。だけど、父親の作風に近い部分はみられない。というか、作風云々の前にシナリオが良くない。ちなみにマイケル・マンは製作。脚本のチョイスが悪いのは、父親のせいじゃないのかな(笑)。

実在の事件がベースらしい。携帯電話が通じない地域で、少女の連続殺人が発生する。クロエ・モレッツ演じる少女は、家庭環境がヒドく、ちゃんと生きようとしても如何ともしがたい状況。逃げ場所のない郊外の町では、夢も希望もないのだが、そこを主役の刑事が手を差し伸べようとする。クロエ・モレッツを軸に展開するのかとおもったら、しばらく出てこなくなって、「あれ、クロエたんは単なる宣伝目的のキャスティングか?」と。
マイケル・マンなら、そういう家庭環境に問題のある少女や、捜査の手が届かないような無法地帯を扱うならば、社会的な目線というかメッセージを盛り込むと思うのだが、この娘には、そういう視点が弱い。

主人公の同僚とその元嫁のすったもんだがはじまり、並行して猟奇的な事件が発生する。事件を軽く考える同僚と、これはなにかヤバい事件だと警告する元嫁(元嫁も管轄の違う刑事)。主人公もこりゃなんかヤバいぞ…と思い始めるが、そうなると同僚と軋轢が生まれ…と、人間ドラマの線が加わる。

この手のサスペンスだと、“犯人は誰だ!こいつあやしい!”とか、そういう視点があってしかるべきなんだが、そういう楽しみが皆無。犯人をいってしまうとさすがにつまらないからいわないけど、その犯人ってなんやねんって感じ。
思い出したように、クロエたんが再登場し、唐突に拉致されるが、その犯人がクロエたんを処分しようとする理由もよくわからんし、結局うまく描ききれていないと思う。

あっちえいったりこっちへいったりするシナリオなくせに、抑揚もメリハリもないし。題材としては悪くはないはずなのだが、ひどい出来映え。主人公の真のやさしさみたいな部分も描ききれていないから、最後、ほっとするようなこともない。観客に何を見せたいのか、しっかり狙いを定め、腰を据えて製作してほしい。この監督は表現力が無さ過ぎる。駄作。
普通は、日本で公開されるレベルじゃない。やはりそこは旬のクロエたんのおかげか。

 

拍手[0回]

PR
image1948.png公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:85分
監 督:マイク・ガンサー
出 演:カーティス・“50 Cent”・ジャクソン、ブルース・ウィリス、ライアン・フィリップ、ジェナ・ディーワン、ランディ・クートゥア、ジェームズ・レマー、ショーン・トーブ、ウィル・ユン・リー、スージー・アブロマイト、ラルフ・リスター、ブレット・グランスタッフ 他



幼いころから兄弟同然に育ったサニー、ビンス、デイブの3人。劣悪な環境ゆえに彼らは犯罪に手を染めていたが、一世一代の大仕事として500万ドル相当のダイアモンド強奪を計画。首尾よくそれを成功させ、戦利品を分配しようという段になって、突如ビンスがデイブとサニーに銃弾を浴びせ、ダイアモンドを独り占めして逃走するのだった。運良く一命を取り留めたサニーは、裏切ったビンスへの復讐に燃え、彼の居場所を捜すのだったが…というストーリー。

ジャケットのド真ん中にデーンとブルース・ウィリス様が鎮座しているが、彼は本作では脇役中の脇役。明らかにブルース・ウィリスの映画だと間違って観ることを狙っている。
で、主役は黒人のお兄さん。ヒップホップ・スターの“50 Cent”とかいう人らしいが、私は知らない。おまけに、どこにでもいそうで、いかにも黒人…という表情や体の動きで、目立った演技らしい演技も見受けられない。あまりに華も特徴も無いので、この人が主人公なのか、しばらく判断できないくらいである。
まず“私は悪人である”という告白はらはじまるので、主人公に対して共感しにくい。それに加えて、この主人公の重要な性格上の特徴である、“悪人なのだが人は殺さない”という要素。これがなぜそうなのか…という部分がきちんと説明されていないので、ますます、興味が沸かない。キャラクター想像の失敗例だと思う。

映画自体はクライムサスペンス。サスペンス部分は、“ビンスはどういう理由で仲間を裏切ったのか?”を明かしてく流れになるのだが、結局は金が必要だったので裏切っただけ…ということには違いがなく、その金を何に使いたかったのか?という点も、大して面白みがない。
主人公のサニーが、復讐に燃えながらも、さらに追い詰められる新たな要素が発生し、どうなっちゃうのやら…という部分は、私の大好きな『ペイバック』のような雰囲気。その点は非常に好感が持てるのだが、やはり、オチがつまらない。なにかうまい作成で大逆転を勝ち取ったわけでもないし、最後まで“殺さず”を貫き続けることが最後の勝利に繋がったとも思えない。この映画の冒頭が、“二週間前”からスタートするのだが、そういう振り返り演出をするならば、何か通常ならざる興味深い結果があって、それを説明することに面白みがなければいけないのだが、「ああ、そういうことか!」的な感嘆はない。実に無駄な演出。

独特なグィっとフォーカスインする演出を多用しているのだが、それによって緊迫感やメリハリが生まれているわけでもなく、効果薄。初期のガイ・リッチーよりも踏み込み甘い演出だと思う。このマイク・ガンサーという監督さんは、この先も期待できない。赤点ギリギリの凡作。

拍手[0回]

image1909.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:108分
監 督:マルコム・ヴェンヴィル
出 演:キアヌ・リーヴス、ヴェラ・ファーミガ、ジェームズ・カーン、ピーター・ストーメア、ジュディ・グリア、ダニー・ホック、カリー・グレアム、デヴィッド・コスタビル、フィッシャー・スティーヴンス、ビル・デューク 他
コピー:信じたら、だまされる。



ハイウェイの料金所で働くヘンリーは、ごく平凡な毎日を繰り返すだけの日々を繰り返していた。そんなある日、高校時代の同級生に騙され、知らぬ間に銀行強盗の一味にされた上に、自分だけが逮捕されてしまう。しかし、ヘンリーは仲間の名前を一切証言せず、そのせいで収監されてしまう。つまらない毎日から逃れたいという気持ちがあったせいなのか、子供を作ろうと執拗にせがむ妻にうんざりしていたせいなのか、つらいはずに監獄生活が、不思議と苦痛に感じないのだった。1年後、仮出所したヘンリーは、逮捕の舞台となった銀行へと向かう。ふらふらと銀行に近づいていくと、路上で車にはねられてしまう。幸い大事には至らなかったが、その車を運転していたジュリーという女優と顔見知りなる。彼女はは銀行の横にある劇場でチェーホフの“桜の園”の稽古中。ヘンリーは、ふとしたことから、銀行とその劇場が古い地下道で繋がっていることを知り、本当に銀行強盗をすることを思いつく…というストーリー。

実際の内容と邦題の乖離が甚だしい。“フェイク”って何を指しているのやら。ものすごう犯罪サスペンスのようなDVDパッケージもいかがなものかと思う。そして“信じたら、だまされる”というコピーがひどい。もしかして観ていないんじゃないかと思うほど的外れ。誰が付けたかしらないが、もし配給会社の人とかなら、もう業界を去ったほうがいい。センスが無さすぎ。

ネット上でこの作品の色々な評価をみるとけっこう散々なんだけど、私の評価は高い。

キアヌ・リーヴスが公園のベンチでぼーっとしている写真が話題になったが、それを踏まえての配役なのか、現在の生活に虚無感を感じている男の役が実にぴったり。
彼は普通に幸せな生活さえ送れていればそれでいいと思っている。でも、能動的に自分が他者に影響を及ぼすことを避けている。子供お作ろうとしないのも、将来に不安があるとかそういうことではない。いや、なんで躊躇するのか自分でもよくはわかっていないのかも。でも、こんなの自分じゃないと思っていて、変えるきっかけはほしいとは思っている。でも能動的に何かは決してしない。だから、何かに巻き込まれたら流されることしかしない。ソフトな自暴自棄みたいなもんだ。

この主人公のスタンスが実に共感しやすい。今の生活が気に喰わないからって、世のサラリーマンたちは仕事お投げ出したり生活をリセットしたりはできない。いや、そんなことも望んではない。でも、なにか違う…という思いが頭の片隅を支配して離れない。そんなことがあるはずだ。

で、彼はただ自分の前を流れる潮流にただ流されてみることを選択する。その結果、銀行強盗にされてしまうが、普通なら私は知らない、これこれこういう流れで、車に乗せられただけだ…と言えば済む話である。妻だってソフトボールに参加させられるくだりを知っているわけだし証言はしてくれるだろう。でも彼は黙秘と貫く。妻に何かをしてもらうことを静かに拒否する。結果、彼女と距離を置くこともできるし、退屈な生活ともおさらばできる。でも、やっていない犯罪を認めることはない。

そんな彼が仮出所した後、どう変わるのか。彼は犯罪をしようと刑務所で同部屋だったおっさんを仮出所させる。そのおっさんは、はじめは乗り気じゃなかったが、乗りかかった船、トントンと計画を進めていく。でも、ヘンリーはやっぱりどこかズレていて、犯罪をしたいという気持ちとは違う様子。自分を変えるツールぐらいにしか思っていないんじゃないかというフシ。だから、簡単に女優のジュリーに計画を話しちゃう。

計画のためには仲間が必要になって、元妻と結婚してしまった銀行強盗仲間だった男が参加したり、ヘンリーをはじめに捕まえたガードマンが参加してきたり。穴を掘る場所を確保するためにヘンリーが役者になってみたりと、状況は混沌としてくる。そして、その劇は、彼らの犯罪計画や、ヘンリーとジュリーの間の事柄と微妙にシンクロして…と。笑わそうとはしていないが、立派なコメディだと思う。
女優だって同部屋だったおさんだって、今の自分から変化しようとしているのもおもしろい。

で、この作品がなんで評価されないか、それは最後の最後が息切れしてまったく締りがないからである。ヘンリーは何故舞台に戻ったのか。観終わって冷静に考えれば、彼女と一緒に逃走するつもりなんだろう…と、それしかないということになるのだが、観ている最中はちょっとわからなくて変な感じ。
その、混乱の元は、押しかけてきて仲間になったもう一人の銀行強盗を縛って地下に置いてきたことに起因する。まず、ヘンリーは、フロリダのグレープフルーツのことを言って降車して劇場に向かう。その発言が、後から行く…なのか、おっさん幸せにな…なのかはわかりにくい。また、おっさんと一緒に逃走する元妻と結婚したアホ男は元妻を捨てるの?ともわかりにくい。だって、金をもらってそのまま暮らしても、地下に残してきた男が証言したらパーだもの。それはヘンリーとジュリーも同じで、もう一緒に逃走しないと、絶対に捕まるのだから。黒人ガードマンだってそうだ。

はっきりいうと、、おっさんが縛った男を殺す演出にすべきだったと私は考える。作風を合わないから止めたんだとは思うが、そうすれば、もっといろんな解釈がなりたつ作品になったと思うし、けっこうカルトな人気を博することもできたと思う。

本当に、最後の最後だけで失敗している作品。でも、とにかくトータル的には、笑わせない笑いを極めた作品だと思う。ジャケットのサスペンス臭やアクション臭で忌避することがないように、是非レンタルして観てほしい。犯罪・マフィアにカテゴライズしたが、正面きってコメディとカテゴライズするのも変だし、単にドラマとするのも変。そのくらい掴み所の無い魅力の作品で、私は好き。お薦め。

 

拍手[0回]

image0505.png公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:170分
監 督:フランシス・フォード・コッポラ
出 演:アル・パチーノ、ダイアン・キートン、アンディ・ガルシア、タリア・シャイア、ソフィア・コッポラ、フランク・ダンブロシオ、リチャード・ブライト、ジョン・サヴェージ、ジョージ・ハミルトン、ブリジット・フォンダ、イーライ・ウォラック、ジョー・マンテーニャ、ヘルムート・バーガー、ラフ・ヴァローネ、ドナル・ドネリー、エンゾ・ロブッティ 他
受 賞:【1990年/第11回ラジー賞】ワースト助演女優賞(ソフィア・コッポラ)、ワースト新人賞(ソフィア・コッポラ)
コピー:15年の歳月をかけた-- 巨匠フランシス・コッポラの集大成!!
いかなる権力をもってしても 運命の流れには逆らえない-

1979年。マイケルはファミリーの安寧のために、バチカンのギルディ大司教と結託。“ヴィト・コルレオーネ財団”名義で、シシリー復興資金として多額の寄付を行い、その功績としてバチカンより叙勲される。マイケルはこれを機に、かねてからの望みであった違法なビジネスからの脱却を決意する。マイケルの叙勲を祝うパーティで、マイケルは10年前に離婚した妻ケイと再会。そこで、息子アンソニーと一緒に、大学を中退しオペラ歌手をめざすことを許して欲しいと懇願される。アンソニーはファミリービジネスを毛嫌いしていたのだった。パーティには、マイケルの妹コニーがファミリーの後継者候補と考えている長兄の故ソニーの息子ヴィンセントの姿もあった。マイケルの娘メリーは従兄にあたるビンセントに惹かれていくのだったが…というストーリー。

パート2で、ビトーがファヌッチを殺害するのはキリスト教の祭のさなかだったが、パート3でマイケルが争いの主戦場となるのは、カトリックの世界。
モチーフになっているヨハネ・パウロ1世の急死とか銀行家の暗殺とか、実際に発生したバチカンスキャンダル。パート2でもキューバ革命なんかが舞台になっていたけど、マイケルサイドが能動的に関与しているので、妙に生々しい。
生々しいおかげか、何を目的に何をしようとしているのかが、パート2よりも判りやすい。

一生懸命、違法なビジネスから脱却しようと努力し、遅々としながらもそれに向かって歩んでいるのだが、反比例して家族はどんどん離れていく。ゴッドファーザーという作品は、人生のあらゆる場面でみられるこの“アンビバレントを浮き彫りにし、生きるということの難しさを表現してくれる。
家族と一緒に退避しようとしていた“合法な世界”。その表面上の美名とは裏腹に、汚いとおもっていたファミリーの仕事よりも汚かったと知ってしまったマイケル。その美名の代表格でもあるカトリック社会までもが、海千山千だと思っていた自分よりも上手だったと知ったとき彼はどうするのか。

違法なビジネスと距離をおこうとしているマイケルは、おのずとヘビーな行動は取らなくなるし、それに追い討ちをかけるように体を壊してしまう。マイケルははやる周囲の人間を止めるばかり。それを補うかのように登場するのがビンセント。アウトローを気取れるのは、若さゆえ、知らないがゆえの美徳。怖いものを知ってしまうと、人生は膠着してしまう。でも、何か物事を推進する力というのは、逆に物事を知らないからこそできる。

ただこのビンセントは、マイケルが若いころの自分を重ね合わせられるような人間ではない。あの粗暴な兄ソニーの子供であり、ソニーの愛人(元娼婦)が育てたという設定。知的さと思慮深さを併せ持ったマイケルとは決定的に違う。
マイケルかビンセントに見たのは、若き日の自分ではなく、かつてのファミリーにあった、そして自分が圧倒的に欠けていた“直情”である。マイケルはそんなビンセントを、手を変え品を変え、自分に後継者となれるよう仕込んでいくが、結果としてマイケルのいうことをきいて落ち着いてしまうの展開がどうも好きではない。やはり、表面上は繕ってもソニーの子はソニー。最後は制御できずにやらかして欲しかったと思う。

シリーズを通して、誰がいちばんキライなキャラか?というのは人によって分かれるところだと思うが、私は圧倒的にダイアン・キートン演じるマイケルの妻である。もっともらしいことはいっているが、物事の本質から目をそむけ、その彼女と退避して登場するのが妹。どちらししても、「女ってやつは…」という言葉が自然に出てくるくらい、“女性”のうんざりしてしまう一面を表現していると思う。

ラジー賞をもらってしまったソフィア・コッポラだが、これだけは同意せざるを得ない。キャスティング的にも、ビジュアルの面においても、彼女は雰囲気を阻害していたのは否めない。はっきりいって、聖女のアイコンとして、あまりにも力不足。もう、“親の贔屓目”というネタでしかない。

ゴッドファーザー・サーガの締めくくりとしては、ちょっと小粒な気がしないでもないが、変に発散せずに、判りやすくまとまっていることを評価したい。腹を括って連続で観るべき。他作品にはないカタルシスが得られること必至。

拍手[0回]

image0504.png公開年:1974年
公開国:アメリカ
時 間:200分
監 督:フランシス・フォード・コッポラ
出 演:アル・パチーノ、ロバート・デュヴァル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、ジョン・カザール、タリア・シャイア、リー・ストラスバーグ、マイケル・V・ガッツォ、マリアンナ・ヒル、ハリー・ディーン・スタントン、ダニー・アイエロ、ジェームズ・カーン、トロイ・ドナヒュー、ジョー・スピネル 他
受 賞:1974年/第47回アカデミー賞】作品賞、助演男優賞(ロバート・デ・ニーロ、マイケル・V・ガッツォ、リー・ストラスバーグ)、監督賞(フランシス・フォード・コッポラ)、脚色賞(フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ)、作曲賞(カーマイン・コッポラ、ニーノ・ロータ)、美術監督・装置(Angelo Graham:美術、Dean Tavoularis:美術、George R.Nelson:装置)
【1974年/第9回全米批評家協会賞】監督賞(フランシス・フォード・コッポラ)、撮影賞(ゴードン・ウィリス「パララックス・ビュー」に対しても)
【1975年/第29回英国アカデミー賞】主演男優賞(アル・パチーノ)
【1993年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品
コピー:巨大な組織を 若い新しいゴッドファーザーが 受け継いだ-

コピー 巨大な組織を 若い新しいゴッドファーザーが 受け継いだ-

コルレオーネファミリーのドンを継承して5年たったマイケルは、本拠地をニューヨークから収入源であるラスベガスに移転していた。ファミリーの運営は順調に見えたが、問題は山積で、マイケルの脳裏には在りし日の父ビトーの姿が巡る。---ビトーの父はシシリー島のドン・チッチオに殺害されたが、子供による復讐を恐れたチッチオが、子供たちの殺害を命じていた。ビトーの兄は葬儀中に射殺され、復讐の意図はないと命乞いにいった母もチッチオに殺されてしまう。天涯孤独となったビトーはチッチオ一派の目を逃れアメリカへ逃亡する。そのままリトル・イタリアで成長した青年ビトーは、若き日のクレメンツァ、テッシオ、ジェンコらと知り合い、様々な職業を経ていく中、イタリア移民の信頼を集めていく。そんな彼に、当時のイタリア移民界を牛耳っていたファヌッチが目をつけ、上納金を要求してくる。かねてからファヌッチの横暴さに辟易していたビトーは、意を決してファヌッチを殺害する。これが、コルレオーネ・ファミリーの始まりであった…というストーリー。

父ビトーとマイケルがのしあがっていく過程を交互に描いているが、比較したいのだろうなという演出意図はよく理解できるものの、その比較で何を表したいのかが、実はけっこう判りにくくてかなり混乱した。マイケルに不足していたもの。“ファミリー”を守るために必要だったのもなのか…というのが、最終的には判るのだが、3時間を越えてからだったかな。長い長い。

それは非情さであり、ビトーが復讐心の帰結として当たり前のように持っていた非情な心だ。ドンとして恐れられていながらも決定的な場面において非情さを貫くことができなかったマイケルがそれを気付くことができるのか否か…である。そう、ビトーの非情さは“愛こそが発露”だったわけだ。

彼の、決定的な場面での非情さの欠如は、マイケルの心の奥底にある彼の究極の目標に原因がある。彼の望むもの、それは“大事なファミリーと一緒に、この非合法な世界を抜け出して、平穏無事に暮らすこと”。しかし、ファミリーの平穏を得るためには、闇の世界から忍び寄る手から、非合法な手段で立ち向かうしかないという、このアンビバレントさ。それが彼の曇った表情の根源であり、妻を恐れさせ結果的に守りたい家族を失うことに繋がる。守ろうとすればするだけ失っていくという、この二律背反こそが、このマイケルという男のサーガの醍醐味といえる。

そういう基本プロットは非情に高尚でよく練られて評価に値すると思う。しかし、キューバ(ハイマン・ロス関連)のくだりが、その意図と方向性の判り難さを助長してしまったと思う。単なる越えるべき敵、ビトーにおける復讐の対象と同列に扱っていると、モヤモヤが残る。ハイマン・ロスマイケルのとって、痛い痛いお勉強代なのだ。

しかし、物事が見えてくると、その達観の先には孤独が待っているという、人生の妙がよく表現できている…というか、観終わってじわじわくる作品だった。名作と評する人が多いのも頷ける。

 

拍手[0回]

image0610.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:ジョン・ラッセンホップ
出 演:マット・ディロン、ポール・ウォーカー、イドリス・エルバ、ジェイ・ヘルナンデス、マイケル・イーリー、ティップ・“T.I.”・ハリス、クリス・ブラウン、ヘイデン・クリステンセン、スティーヴ・ハリス、ジョナサン・シェック、マリアンヌ・ジャン=バプティスト、ギデオン・エメリー、ズライ・エナオ、グリン・ターマン、ゾーイ・サルダナ 他
コピー:全てを手に入れた男たちの予測不能な犯罪計画!


年に一度だけ、綿密な計画をたてて銀行強盗を実行し、その金でリッチな生活を享受するゴードン、ジョン、A.J.、ジェイクとジェスの5人組“テイカーズ”。今回も、200万ドルの銀行強盗を実行し、テレビクルーのヘリコプターを奪って脱出するという大胆な計画で見事な逃走を成功させる。そんなテイカーズの前にかつての仲間ゴーストが現れる。出所したばかりの彼は、5日後に3000万ドルを積んだ現金輸送車を襲うという計画を持ち込んでくる。年に一回しか仕事をしないというルールに反するため躊躇したが、金額の大きさで実行を決断。ロス市街のど真ん中で、爆弾で道路を陥没さえ、落ちた輸送車を襲うという計画を立てるのだったが…というストーリー。

アメリカではスマッシュヒットしただと?思わず、ウソこけっ!て言いたくなるデキ。

まず、年一回の大仕事を成功し続けるというそのポリシーと、途絶ない友情ってのが、描けていない。そして、出所したかつての仲間の誘いに、あっさり乗ってしまうもので、そのユニークな設定が生きていない。大金がかかった仕事だろうが、必要以上にはリスクを犯さないというのが、ポリシーなんじゃないのかい。やるなら、金額以外の理由でどうしてもやらざるを得ない状況をつくらんと、話として成立しない。彼らに対する共感が薄れるわ。

結果的に、ほぼ全編にわたって、出所してきた男に騙され続ける内容。最後の15分くらいで騙されていたことがわかり、佳境に入るのだが、とにかく演出が雑。盗みのテクニックが興味深いとか、そうことでもない。スマートな手口の奴らなのかと思ったら、C4爆弾強奪とか、足の付きそうなやり口ばかり。

彼らを追う刑事のサブストーリーも陳腐。娘との関係や相棒の汚職の件はシナリオの主筋には関係無く、いい効果を生んでいない。最後、「首つっこむな」って怒られておしまいって(笑)。
ヤク中の姉のくだりも、刑事との接点という意味で必要だと考えたのかもしれないが、結局そこから話が展開したわけでもないし、肝心の仕事の最中は都合よくいなくなってるから、足枷として機能しているわけでもない。家族愛みたいな情に訴える効果があったわけでもない。

観るに耐えるのは、所々にみられる暴力シーンばかりで、まるで韓国映画レベル。それ以外に気を惹くところはない。仲間の人数もたいして多くないのだが、キャラんぼ特徴づけがうまくいってないので、最後、もう一人仲間がいたことも失念するくらい。一生懸命スタイリッシュさを演出しようとしているのだが、あまりにもシナリオが凡庸で、如何ともし難い。

“盗人が昔の仲間に騙された痛い目にあった”それ以外に何も無い、凡作中の凡作。

拍手[0回]

image1887.png公開年:2010年
公開国:アメリカ、スウェーデン、イギリス、カナダ
時 間:109分
監 督:マイケル・ウィンターボトム
出 演:ケイシー・アフレック、ケイト・ハドソン、ジェシカ・アルバ、ネッド・ビーティ、イライアス・コティーズ、トム・バウアー、サイモン・ベイカー、ビル・プルマン、ブレント・ブリスコー、リーアム・エイケン、ジェイ・R・ファーガソン、マシュー・マー 他
受 賞:【2010年/第31回ラジー賞】ワースト助演女優賞(ジェシカ・アルバ『Little Fockers』『マチェーテ』『バレンタインデー』に対しても)
コピー:そして目覚める。もう一人の自分。

1950年代、西テキサスの田舎町。保安官助手を務めるルーは好青年で誰からも好かれていた。幼なじみの女性教師エイミーと交際していたが、結婚をはぐらかしながらも、気ままに関係を続ける日々。ある日、町の有力者から、郊外にある一軒家で売春行為が行われているので取り締まるように苦情を受ける。その売春婦ジョイスのもとへルーが訪れると、客と間違えられて歓待されるが、保安官と判ると暴言を吐かれ平手打ちされる。その瞬間、ルーの中に潜んでいた衝動が爆発。彼女をベッドに押さえつけ何度も殴打。そのまま関係を持ってしまう。それ以来、毎日ジョイスとの情事を重ねるルーだったが…というストーリー。

表面的には非常に温厚で社会的地位もある男の内面にはこんな野獣が…というお話なわけだが、まあ、野獣になるまでの過程(生い立ち)が色々語られるわけだが、「そんなことがあれば、そんな風になっちゃうよな…」とはならない。ルーの内なる声は伝わってこないので、何か腑に落ちない。

あらすじを読めば1950年代というのはわかるのだが、何の予備知識もないと、少し古い時代だな…ということはわかるが、いつ頃なのか判然としない。時間が止まったようなものすごいド田舎ってこともありえるからね。なぜそれにこだわるかというと、科学捜査がなされていないことが、非常に奇異に感じるから。

周到な計画の末に罪を逃れられている…というわけではなく、計画は場当たり的といってもよい。指紋の一つでも採られればあっさりと犯人は確定する事件なわけだが、一切そういう描写はない。そのことは指紋採取をしないほど遅れた捜査状況だったのか?かといって、瀕死の娼婦ジョイスを飛行機で都会の病院に移送したり、まんざら田舎検事の行いとも言いがたく…。アメリカにおいて指紋照合のシステムを確立したのが『J.エドガー』なわけだが、その照合システムが地方の事件で活用できたかどうかは別にして、捜査において指紋を採取する…という手順は1950年代にもあったのではないか?と思う。変だなぁと思いつつも、南部の田舎のほうはそういう捜査はしなかったんだな…と思うしかないわけだ。

その点については無理やり納得するとして観進めることに。簡単にバレそうな穴だらけの犯行なのに、なぜかバレない。地方検事は疑いの目を向けるが、ちょっとはぐらかすだけでそれ以上なぜか追求できない。ルーの犯行に気付いて恐喝する男も現れるが、結局はルーの内なる野獣の餌食に。エイミーもジョイスと同様の結末に。いい加減、破綻してもよさそうなのに、あれよあれよとウマい方に転がって、ルー的にはまるく納まってしまう。
なぜかそういう運のある星の下に生まれた、希代の殺人鬼。その展開はなかなか面白いかもしれない…と評価しかけたらなぜか、これまでスリ抜けていたことが通らなくなり、あっさりと逮捕。何が理由で逮捕されたのか、何が理由で精神病院にいれられたのか、さっぱりわからない。いくらなんでも何の説明もなしに逮捕はできんだろう。

(以下ネタバレ)
キャスティングのバランスを考えると、ジェシカ・アルバをそんな前の方で退場させるような勿体無い使いかたをするわけがない…と誰しも思うわけで。おかげで、最後の驚きが全然無いという稚拙さ。
おまけに、なぜか犯人と疑っている人間の前に、彼を追い詰める最大の切り札である証人を差し出してしまうのか。そして、凶行に及んだ犯人を制止するために、なぜか証人の背中に銃弾を浴びせてしまうというトンチンカンさ。

これは、シナリオ教室で、ダメなシナリオとして教材にされるレベル。

ラジー賞をもらってしまったジェシカ・アルバだが、本作の彼女は別にやらかしてはいない。これまでどおりに美しさを爆発させているし、むしろキレイすぎて娼婦というキャラクターに合っていないと感じるほどで、信条には合わなかったであろう役柄をがんばってこなしたと思う。ケイシー・アフレックもうまく狂気を表現したと思うんだけど、如何せんこのシナリオではね…。

拍手[0回]

image1770.png公開年:2010年
公開国:アメリカ
時 間:125分
監 督:ベン・アフレック
出 演:ベン・アフレック、ジョン・ハム、レベッカ・ホール、ブレイク・ライヴリー、ジェレミー・レナー、タイタス・ウェリヴァー、ピート・ポスルスウェイト、クリス・クーパー、スレイン、オーウェン・バーク、コレーナ・チェイス、ブライアン・スキャンネル、デニス・マクラフリン、ヴィクター・ガーバー 他
ノミネート:【2010年/第83回アカデミー賞】助演男優賞(ジェレミー・レナー)
【2010年/第68回ゴールデン・グローブ】助演男優賞(ジェレミー・レナー)
【2010年/第64回英国アカデミー賞】助演男優賞(ピート・ポスルスウェイト)
【2010年/第16回放送映画批評家協会賞】作品賞、助演男優賞(ジェレミー・レナー)、アンサンブル演技賞、脚色賞(アーロン・ストッカード、ベン・アフレック、ピーター・クレイグ)、アクション映画賞

強盗事件が多発する街ボストンのチャールズタウン。この街で育ったダグは、かつてはホッケー選手の夢を追っていたが挫折し、今は幼馴染と結成した強盗団のリーダとなっていた。綿密な準備を重ねる鮮やな手口で、銀行強盗を繰り返している。しかしある日、逃走のためにやむを得ず女性副頭取を人質にする。逃走の途中でその女性は解放し、なんとか逃げ切ったものの、その女性が同じ町の住人であることが発覚。自分たちの正体がバレることを恐れたダグは、偶然を装い彼女に近づくのだったが、その女性クレアの美しさに不覚にも恋におちてしまい…というストーリー。

強盗犯が、襲った銀行で人質にとった女性と、後日出会い恋に落ちる。そこまでは、宣伝で説明されている。そういう関係になるまでの、見え見えの展開を見続けなくてはいけない苦痛をどれだけ我慢できるかが勝負。はっきりいって、かなりの苦痛。私はそこを越えるまでに、二度、DVD止めたからね。もっとさらっと展開させるなり、他に注意が向くような演出をするなり、工夫すべきだったろうね。

はっきりいって、主人公は強盗で喰ってるクソ人間。もっとタチの悪い仲間がいようが、人は殺さなかろうが、知ったこっちゃない。元プロホッケー選手を目指していたとか、この環境を好ましく思っていなかろうが、完全なクソ人間。擁護する価値もないほどのクズ。しかし、ベン・アフレック演じる主人公はそうは見えない。まるで仕方なくやっているようで、ものすごく賢く、実はキレイな人間なんですよ…という感じにしか見えない。ベン・アフレックは役者としてはやっぱだめだな。
まあ、どうみても凶悪なヤツが銀行の副頭取と簡単に恋に落ちてしまう方がリアリティが無いってのはわかるが、そこは、ちょっとあやしいけど、見た目と優しさのギャップに惚れちゃった…みたいな演出にしないと、トータルバランスが悪すぎる。

最後も、元銀行副頭取の女が、ダグが強盗した金を臆面もなく自分の子供ホッケーチームに使うとか。君なら正しい使い方ができるだろう…って、正しいも何も盗んだ金だろ。せめて、その金がが別の犯罪組織の金だとか、いうんならまだしも、普通に銀行に預金されてる金だぜ?これを納得して観られる人なんかいないだろ。
この女も、騙された!とか常識人ぶってるけど、相当のクソ人間。クソ人間同士のラブストーリー。クソ人間であることを自覚して開き直ってくれるならいいんだけど、二人とも自分はけっこうまともと思ってるんだぜ?救いようないじゃん。

しかし、犯罪シーンやFBIとの丁々発止はすごくおもしろく観ることが出来た。駄作に陥りそうなところを、十分救っていると思う。低レベルプロットのシナリオをここまでまとめあげることができるんだから、ベン・アフレックは監督には向いているんだよ。そっちに専念すべきだね。いや、出てもいいけど、主役をはれる力はないんだよ。カメオ程度に抑えるべき。

拍手[0回]

image0503.png公開年:1972年
公開国:アメリカ
時 間:175分
監 督:フランシス・フォード・コッポラ
出 演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ジョン・カザール、ダイアン・キートン、ロバート・デュヴァル、リチャード・カステラーノ、タリア・シャイア、スターリング・ヘイドン、ジョン・マーリー、リチャード・コンテ、アル・レッティエリ、フランコ・チッティ、エイブ・ヴィゴダ、ジャンニ・ルッソ、ルディ・ボンド、アレックス・ロッコ、シモネッタ・ステファネッリ、アンジェロ・インファンティ 他
受 賞:【1972年/第45回アカデミー賞】作品賞、主演男優賞(マーロン・ブランド※受賞拒否)、脚色賞(フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ)
【1972年/第7回全米批評家協会賞】主演男優賞(アル・パチーノ)
【1972年/第30回ゴールデン・グローブ】作品賞[ドラマ]、男優賞[ドラマ](マーロン・ブランド)、監督賞(フランシス・フォード・コッポラ)、脚本賞(フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ)、音楽賞(ニーノ・ロータ)
【1972年/第26回英国アカデミー賞】作曲賞[アンソニー・アスクィス映画音楽賞](ニーノ・ロータ)
【1990年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品

第二次世界大戦が終わった1945年。ドン・ヴィトー・コルレオーネの屋敷では、娘コニーの結婚パーティが行われている。その華やかな宴の裏、ビトーの書斎で、彼は何人もの友人の表立っては相談できない頼みごとを親身に聞き、解決してやっていた。特に報酬を要求するわけでもなく、その恩は、いつかヴィトーが呼び出しをしたときに返せばよかった。それが彼らの掟である。そんなある日、麻薬ビジネスとしようとしているソロッツォが、一緒に商売をしようとコルレオーネ一家に相談を持ちかけてくる。しかし麻薬を嫌うヴィトーはこの話を断る。政界や警察をコネのあるコルレオーネ一家と袂を分かてば、麻薬ビジネスの成功はありえないと考えるソロッツォは、ヴィトーを排除したいと考え…というストーリー。

えっと…なんで本作を観ようと思ったかというと、昨日の『ストリング』で、タイトルロゴの操り人形の手元の絵を思い出したから(ただそれだけ)。

マフィアというものの好き嫌いは別にして、一つの家父長制度の類型が、本当の意味での小さな家族単位と、社会を一つの家族と見た場合の両方において実現されている、イタリア移民の社会。そこでの“ファーザー”とは何なのか。それが時代の変化と他文化との軋轢の中でどう対処を迫られるのか。何を大事にして何を捨てていくのか。

なぜ父は彼マイケル堅気にしたかったのだろう。他の子供たちとは違う持ってもって生まれた輝きが、自分ですら持っていないものだと感じ取っていたから。彼の政治家たちとの付き合いも、商売上のメリットだけを考えてのことだけではなくて、マイケルの将来を視野に入れてのことだったのだろう。さて、ドンとして非情になっていくマイケルは、その天賦の才を輝かせたのか、無駄にしたのか…。

ヴィトは、金儲けと家族の幸せを両立させていた。しかし、長男のソニーだけでなく、マイケルも娘のコニー(その婿であるカルロはもちろん)、誰一人両立することができていない。ラストシーンの姿を見るとマイケルもヴィトのようにうまくやれているとは言いがたい。

シナリオの構成としてなかなかユニークだなと思うのが、ヴィト中心に話が展開されると思いきやズドンとやられて画面から消える点。そして、いない時間も相当長い。もちろんその間は、もうひとりの主人公マイケルにスポットがあたっていくわけだが、ナイーブで堅気が既定路線だったはずのマイケルが諸々の感情の爆発や悲劇を経験して、次の“ドン”へと変貌(というか成長)してく様が展開される。
じゃあ、それでヴィトはフェードアウトしていくのかといえばそうではなく、次の世代がビジネスに比重を置いていく中、自分はファミリーの部分だけを見つめていくと決めたかのように引退し、そして最後は孫と遊びながら死んでいく。
タイトル自体も、マフィアのボスとカトリックでの名付け親のダブルミーニング。大きなストーリーの潮流もダブルの渦が重層的に渦巻いている…ということだね。

前回観たときとは、また違う観点での気付きや想像が沸いてくる。名作というのはこういうものなんだろうな。重ねてみるごとに違った味が染み出してくる。NHKの大河ドラマを3時間のダイジェストにしたとしても、ここまで濃くはならないだろう。コッポラの才能が日本刀のようにキレキレに発揮された文句なしの名作。




負けるな日本 

 

拍手[0回]

image1129.png公開年:2003年
公開国:アメリカ
時 間:131分
監 督:リドリー・スコット
出 演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン、ブルース・マッギル、ブルース・アルトマン、スティーヴ・イースティン、ベス・グラント、メローラ・ウォルターズ、ナイジェル・ギブス 他
コピー:その男、潔癖症の詐欺師。



詐欺師のロイは、自らを芸術家と呼ぶほど、見事な腕前の持ち主。しかし、強迫神経症による極度の潔癖症。オフィスや家を毎日病的なまでに掃除・消毒し、衣服や日用品もきれいに整頓されていないと落ち着かない。汚れ物が出るのを嫌い、食事も毎日ツナ缶で、屋外で空気を吸うのも苦痛なほど。ある日、常用している薬を誤って処分してしまい、薬を貰おうとかかりつけの医者に電話をするが、なんと夜逃げした後。家からも出られず症状がひどくなったロイに、詐欺の相棒のフランクは、精神分析医のクレインを紹介する。その後クレインは、何度か診断した後、ロイの症状が遠い昔に離婚した経験が原因かもしれないと告げる。ロイは元妻と話すことがどうしてもできず、クレインに元妻とコンタクトをとってもらうように依頼。すると、別れた当時妊娠していた妻が娘を出産していたことを知り…というストーリー。

ロイの詐欺の手口や、強迫神経症の症状、病的なまでの潔癖さなど、彼の行動のディテールが実に緻密に表現されている。なので、立派な悪人であっても、どこか興味を惹かれる所があるし、ちょっと応援したくなってしまう。破滅に向かっているであろう彼が、今後どうなってしまうのか、画面から目が離せなくなる。

し・か・し、だ。おそらく観客の6割くらいは、頭によぎったはずだ。
(以下ネタバレ注意)

あれ?もしかして、ロイってば逆に騙されないか???と。まともな映画なら、いやそうじゃないかも…と思わせる、仕掛けもあると思うのだが、本作はそれが弱い。そして、もし、騙しているならば“彼”が首謀者なんじゃないのか?と、すぐにピンときてしまう。そうすると、そっちの彼も彼女もグルってことだよな…と、芋づる式に見えてきてしまうのだ。主人公のディテールはよく描けているのに、肝心のストーリーの仕掛けが見え見えという、実に残念な内容。

(さらにネタバレ)

紹介した医者もグルだった…のは良いだろう。でも、薬が無くなったのは偶然だし、かかりつけの医者が夜逃げしたのは仕込みじゃないだろう。じゃあ、診察を受けたのちにグルになったってことになる(クレインが本物の医者なのか仕込みなのかもわからんけど)。
ロイが妻に電話したて、話せなかったのも医者にとってはたまたまだろう。だって、その電話でしっかり話をしたら子供がいないことはわかってしまう。あくまで医者に電話をしてもらえるように依頼をしたからこそ、あの仕掛けが始まるわけだし。そこから、娘の仕込みをはじめたわけだ。でも、ロイが車を降りない、元妻と会わないという前提がないと、すべてがパーだよね。よくうまくいったよね。
さらに、そこから、デカい詐欺の話を絡めたわけだ。それはいつから仕込まれていたのかなぁ。昔から?いつロイがその気になるかわからないのに?ってことはやっぱりロイがやる気になってから、グルになるやつを見繕ったんだよね。ずいぶん臨機応変にうまいことやったもんだな。そんなにフランクって賢くて、多くの人間を使えるタイプかな?

ん~~~。なんか、フランクの騙しの流れに無理がありすぎじゃねえか?ずいぶん稚拙で穴だらけだし、「やられた!」なんてとても思えないだけど…。

それにさ、観ている側としては、少しはロイを応援するスタンスになってるわけ。で、ああ、これからロイの反撃が始まるんだろうな。フランクたち汚ねぇな!って、こっちは拳を振り上げてるわけだ。きっとすっきりさせてくれるんだろうと。
ところが、ロイは反撃しないんだ。アンジェラともそれなりに和解しちゃうし、足も洗ってる。それどころか、幸せな生活を掴んじゃってる。
そうするとさ、こちとら振り上げた拳は「……、ん…。うん…」ってな感じで、ゆっくり下ろすしかないじゃない。犯罪者なんか応援しちゃって、俺って何を言ってるんだか…みたいな感じで、ちょっとはずかしさすら覚えるよね。なんで、こっちがそんな気分にさせられなきゃいけないのよ。
いや、たしかにそのオチは“正しい”んだろうさ。でも、すっきりしないし、微妙な空気になるし、そりゃ評価されないよ。演者も映像もいいんだよ。キャラはものすごく立ってるし、ストーリーだってプロットまでは物凄くいいんだよ。なのに、ストーリー運びかたがクソで詰めが甘いんだ。なんか、“惜しい”“もったいない”という言葉しか浮かばないわ。


負けるな日本

 

拍手[0回]

image1715.png公開年:2002年
公開国:ブラジル
時 間:130分
監 督:フェルナンド・メイレレス、(共同監督)カティア・ルンド
出 演:アレクサンドル・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ、セウ・ジョルジ、アリシー・ブラガ、ドグラス・シルヴァ、ダルラン・クーニャ 他
受 賞:【2003年/第70回NY批評家協会賞】外国映画賞(フェルナンド・メイレレス)
【2002年/第56回英国アカデミー賞】編集賞(Daniel Rezende)
コピー: ブラジル リオデジャネイロ 神の街 暴力も銃もドラッグもすぐそこにある日常を駆け抜ける少年たちの事実にもとづく物語

1960年代後半。リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”の治安は最悪で、強盗や殺人が絶え間なく発生。中でも3人の少年が犯罪行為を繰り返していたが、幼い少年リトル・ダイスは3人組とともにモーテル襲撃に加わると、そこで宿泊客を殺害し、そのまま逃走して行方をくらます。一方、3人組の一人を兄にもつ少年ブスカペは、事件取材の様子を見てカメラマンに憧れるようになる。その後、リトル・ゼと名を改めた成長したリトル・ダイスが、街に舞い戻ってきて…というストーリー。

救いようのないクソ底辺の貧民地区で繰り広げられるチンピラの話。
振り切られないように付いて来いや!って言われているようなスピーディで緊張感のある展開だが、同時に虫が蠢いているようなむずがゆさを感じる。雑然と荒んだ感じが良く表現できている。本物のスラムの子をつかっているらしいのだが、その効果が大きいのかもしれない。

仕事というのが、他人のために何かをして、正当な対価を貰う行為である…ということが、シティの人たちはわかっていない。働いている人も、他者から金を貰うために労力をつかうことが労働だと思っているから、仕事の質が悪いままで貧しいまま。そんな大人を見ていれば、金さえ稼げれば働こうが略奪しようが違いがないように思えて、子供がギャングになるのもあたりまえ。街には教会もあるのだが、貧民窟とカトリックの組み合わせは、貧しさを助長するだけ。

物語はまるでオムニバスのように、目まぐるしくスポットが当たる主人公は変わっていく。強いて言えば真の主人公は、この“シティ”。主役とおぼしきブスカペは狂言廻しだね(まあ、本作の原作者なんだろうけど)。スピード感が溢れすぎで、内容がみっちり詰まっていて、ふと経過時間を見るとまだ半分も終わってないや…と感じるほど。
実録犯罪モノのような印象のジャケット写真だけど、演出や編集手法は実にスタイリッシュ。ありがちな、実話ベースのダレダレ感はない。むしろ実話であることが、効果的におもしろさに繋がっている作品で、予想外の名作。いやぁ、おもしろかった。強くお薦め。

#中南米が、いくら景気が良くても、一過性のものでしかないんだろうな…と感じさせてくれる。社会の基礎がポンコツなんだもの。オリンピックはあるからってブラジルに投資なんかすると、痛い目にあうに違いない。




負けるな日本

拍手[0回]

image1788.png公開年:2009年
公開国:アメリカ、フランス
時 間:117分
監 督:ベルトラン・タヴェルニエ
出 演:トミー・リー・ジョーンズ、ジョン・グッドマン、ピーター・サースガード、メアリー・スティーンバージェン、ケリー・マクドナルド、ジャスティナ・マシャド、ネッド・ビーティ、ジェームズ・ギャモン、プルイット・テイラー・ヴィンス、レヴォン・ヘルム、バディ・ガイ、フリオ・セサール・セディージョ、ジョン・セイルズ 他



若い女性を狙った連続レイプ殺人事件を捜査していた保安官デイヴ。事件現場からの帰宅中に南北戦争の映画の撮影で現地を訪れていた俳優エルロッドと出会うが、彼は湿地帯で白骨死体を発見したとデイヴに告げる。現場を訪れ白骨死体の状況を見たデイヴは、若い頃の記憶が蘇らせる。その後も連続レイプ殺人事件の捜査を続けながら、並行して白骨死体の事件も探るデイヴだったが、エルロッドが出演している映画に投資している男が執拗な妨害をしてきて…というストーリー。

日本未公開作品なので期待はしていなかったが、内容がどうのこうのよりも、このDVDには、ものすごくヒドい点がある。それは吹き替え音声。
冒頭の語りの場面で、いきなり腰がくだける。学芸会か!って感じで、まともな声優が演じているのかどうか調べる気もおきないくらいヒドい。脇役もひどいのだが、主人公のトミー・リー・ジョーンズが顔を声が全然マッチしていない上に棒読み。残り30分くらいになってやっと慣れてくる(というか諦めがつく)レベル。
#まあ、逆に観てくれと言いたくなるわ。

ストーリー運びも結構ヒドい(おそらく原作はそこそこなんだろうが)。
とにかくシナリオの構成がよくない。まず、自分が子供の頃に見たとある殺人と、数十年たって保安官になって発生した事件が繋がるという点が都合が良すぎ。前半は、この無関係な事件を並行に追っていくのだが、観ている側としてはどう関係してくるのはさっぱりわからない上に、徐々にその関係性が狭まってきてハラハラ…とかいうことも無いので、焦点ボケまくりで飽きてくる。そして、展開自体もダラダラとしていて進まない。

途中で、南軍の将軍の亡霊みたいなのが現れるとか、デヴィッド・リンチみたいな演出を差し込んでみたり、いろんな謎解き要素が配置されている。連続レイプ殺人、大昔の黒人銃撃事件、有名だけどアル中の俳優、その恋人の女優、羽振りのより映画出資者、途中で参加してくる女性FBI、それにデイヴの養女…。パーツはたくさんあるんだけど、そのすべてが全然生きていない上に浅い。孤独な捜査を続け、様々な阻害要因と戦うオヤジの姿を見せるのはいいんだけど、肝心の事件を解く鍵は、その捜査の努力で見つかったわけじゃなく、ポっと唐突に出てきた写真なんだもんなぁ。散々配置した仕掛けを生かさない…という、そんなすスカしってアリ?

保釈したら、その犯人に娘をさらわれるとか、そんなグダグダな展開、普通誰もやらねえよ!結局、その事件自体も解決したようなしないような変な感じで、モヤモヤモヤ~。過去の事件と繋げることで、今も根強く残る差別思想みたいなものを、猟奇殺人事件を通じて表現したかったのかなぁ?なんて気もするけど、さっぱり伝わってこないんだよね。

誤射してしまったのを工作してごまかしちゃった主人公の行動を、観ている側はどういう感情で受け止めればいいのかわからん。最後の子供が見ていた本の写真はどういう意味なのかわからん。根本的に“エレクトリック・ミスト”って何を指しているのかわからん。わからんだらけの消化不良作品。観る価値なし。

#劇場未公開なのも頷けるけど、トミー・リー・ジョーンズの仕事の選ばなさにも、ちょっとあきれてくる。





負けるな日本

 

拍手[0回]

image1777.png公開年:1973年
公開国:アメリカ
時 間:130分
監 督:シドニー・ルメット
出 演:アル・パチーノ、ジョン・ランドルフ、ジャック・キーホー、ビフ・マクガイア、トニー・ロバーツ、コーネリア・シャープ、F・マーレイ・エイブラハム、アラン・リッチ 他
受 賞:【1973年/第31回ゴールデン・グローブ】男優賞[ドラマ](アル・パチーノ)
コピー:一人の若い警官が撃たれた…… ニューヨーク市警も彼の死を望んでいた!!
愛する女も仲間も失い戦いつづける妥協を許さぬ青春像!


警察学校を卒業し、82分署に配属されたセルピコ。しかし、署内では賄賂が蔓延し、正義感の強いセルピコには耐え難い状況だった。頑なに賄賂の受け取りを拒否する彼は、次第に署内で孤立し、犯罪情報課勤務を希望する。その後、私服警官としての訓練を受け93分署に配属されるが、初日から賄賂の分け前を渡される。調査部長にその旨を報告したが、部長はただ忘れてしまえと忠告するだけ。絶えかねたセルピコは、やがて告発へと踏み切るが、その直後に最も危険なブルックリンの麻薬犯罪課に配属されてしまう…というストーリー。

アメリカの刑事ドラマには、かならず内部調査の人ができてきて嫌われ者の役。日本の刑事ドラマで、内部調査の人が出てきてもどうもピンとこない。日本の場合は、アメリカみたいなチンピラ的なな腐敗じゃなくて、巧妙に裏金を作る公金横領タイプ。正義感溢れる人間が内部にいたとしても、そいつにはわからないようにやるから。子供のころから、先生にわからないようにイジメをやるわけだから、コソコソやることに関してはエリートだもんな。日本の警察はさ。

リアルな展開すぎて飽きる人もいると思うし、爽快な勧善懲悪を期待して観た人は不満を感じるかもしれない。最後はモヤっと感も漂う。でも実話だから許すべきだろう。ここに創作を放り込むと輝きが失せてしまうと思うんだ。

そんなことは納得できん!ありない!と、どう考えてもこっちが正しいのに、なぜか孤立して、異動させられ続ける。ええ、私にはわかりますよ。サラリーマンの皆様方の中にも、実体験としてこの状況を理解できる人、かなりの数いるでしょ。そして、その反面、かなりの数の理解できない人もいるでしょ。
警察側の腐敗っぷりもひどいけど、セルピコだってちょっと異常ぎみじゃねえか?と感じる人がいるかもしれないが、そういう人は、今まで幸せに暮らしてきたか腐敗してる側の人間。圧倒的な悪に立ち向かう時には、狂気と見まごうくらいのハートが必要なことを知れ!と強く言いたい。
どんな不利な状況になっても強い眼力のアル・パチーノ。だけど、金バッジをもらうことを拒否した後に、泣き出すシーンで、「わかる。わかるわ~」となる。

結局、退職後もアメリカで暮らすことができないというのが、アメリカの闇をよく象徴しているな。公務員になった途端、自分がなんでもらかしていいと思っちゃうやつばっかなのは、民度の低い証拠。自由の国、資本主義の旗手と偉そうに行っても、このレベルだから。私が願うのは、信念を貫いたセルピコが、あれでよかったのだと心を安穏にして天寿を全うできること。そして腐敗した警官たちが、年を負うごとに自分の醜い行為を恥じながら死んでいくことだな。

シドニー・ルメットらしい無骨でとても質のよい社会派作品。
結局、“男”ってのは志が高ければ孤独にならざるを得ないっていう、真理の一面を思い知らされる作品(志=野心ではないぞ)。グっときた。

#オウムもワンちゃんもカワイーっす。セルピコを見捨てないのは全アメリカでペットちゃんだちだけ。




負けるな日本

 

拍手[0回]

image1775.png公開年:1990年
公開国:アメリカ
時 間:115分
監 督:ジョエル・コーエン
出 演:ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、アルバート・フィニー、ジョン・タートゥーロ、ジョン・ポリト、J・E・フリーマン、マイク・スター、スティーヴ・ブシェミ、フランシス・マクドーマンド 他
コピー:『ゴッドファーザー』以来 ギャングの世界を扱った映画で コーエン兄弟によるこの大胆にして衝撃的な傑作ほど パワフルなものがあったろうか。--ガイ・フラットリー/コスモポリタン

禁酒法時代のアメリカ東部のとある町。イタリア系マフィアのボス・キャスパーは、街を取仕切る大ボスのレオに、八百長賭博の邪魔をするチンピラのバーニーを始末するように相談するが、無碍に断られてしまう。バーニーがレオの情婦ヴァーナの弟だったからだ。レオの右腕であるトムは、キャスパーと不必要に敵対するのは得策ではないと進言するが、それも聞き入られることはなかった。そんなトムは、ギャンブル好きが災いして借金まみれ。その日も、バクチで負け続けて借金を増やしていたが、ひょんなことからヴァーナと一夜を共にしてしまう。しかし、明朝、ヴァーナを尾行していたレオの部下ラグの死体が発見される。これによって、アイルランド系のレオとイタリア系のキャスパー、二人の勢力争いが激化する。しかしトムは、自分との情事がばれるのを恐れたヴァーナがラグを殺害したのではないかと疑い、その説明のためにヴァーナと関係を持ったことをレオに告白してしまう。レオは激怒し、トムを追放。博打の借金に追われるトムは、やむを得ずキャスパーの部下となるが、「バーニーを殺せ」と命令され…というストーリー。

トムは、成田三樹夫が演じるインテリヤクザ的なポジションで、頭がいいなんて周囲から評価されている。たしかに大学出のマフィアは珍しいんだろうけど、その落ち着いた様子がそう見せているのと、他のマフィアさんたちが人並み以下にアホなだけで、それほど賢くはない。
いや、本当に賢かったら、マフィア組織なんかにいないだろうし、借金まみれなわけがない。その借金を自分の手で返そうと、頑なに変なポリシーを守ったりするから、チンピラからみたらまたまた賢く見えたりする。

何がいいたいかというと、この作品と愉しめるか愉しめないかの分水嶺がそこにある…ということだと。つまり、トムがその賢さを駆使して、難局を乗り切るストーリーを期待してしまうかどうか…である。なぜなら、トムが乗り切れた要因の半分は、偶然だから。特に、ミンクの死体のくだりなんかは、トムの意図とはまったくの無関係。偶然以外の何者でもない。
最後も、トムがレオを救ったという形になっているが、トムはそれを目指して行動していたわけじゃないよね。元々、二人の間にどういう友情の歴史があったのかは知らないが、とにかくトムの心の中では、とっくにプッツリと切れているわけだ。
要するに、変化する状況を知恵や追い詰められた時に発揮するズルさを最大限に発揮して乗り切るのではなく、悪く言えば場当たり的に対処していく姿。そして、多くの運で乗り切ってるところに違和感を感じた人は、本作をつまらないと判断したに違いない。

でも、コーエン兄弟の意図としては、そういう綱渡り状態を俯瞰で見せて愉しんでもらたいわけで、小ずるい男がしたり顔で、策を弄して笑いながら乗り切ってる様子を愉しんでほしいわけではない。トムに共感しトム目線で鑑賞するのではなく、その世界に亡霊として存在しているような目線で観ないとおもしろくないということだ。
彼らの他作品でみられるコメディ要素よりも、一枚上から俯瞰で観たコメディって感じがする。いつものコメディ要素は、ちりちりと音がしそうなくらいの綱渡り感に転化されているってところかな。これがコーエン兄弟らしくないと見る向きもあるんだけど、私はOK。このノリさえ、早々に掴めてしまえば、特に終盤はかなり愉しめると思う。軽くお薦めしたい。

トム以外のキャラ設定もおもしろい。レオのマシンガンぶっぱなしエピソードをはじめ、バーニーのクソみたいな行動など、表面上の設定ではなくて、エピソードを重ねることによって人物像を見せていくのは、コーエン兄弟は本当にウマいと思う。捕まって拷問されたデブ男に、あの場面で叫ばせ続ける演出は、私なら思いつかないもんなぁ…。





負けるな日本

拍手[0回]

プロフィール
HN:
クボタカユキ
性別:
男性
趣味:
映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
自己紹介:
一日一シネマ。読んだら拍手ボタンを押してくだされ。
出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
リンク
カウンター
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
最新コメント
[06/03 離脱ラバ]
[06/03 離脱ラバ]
[06/03 離脱ラバ]
[04/28 ETCマンツーマン英会話]
[10/07 絶太]
最新トラックバック
Copyright © 2009-2014 クボタカユキ All rights reserved.
忍者ブログ [PR]