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image1731.png公開年:2007年
公開国:フランス
時 間:125分
監 督:オリヴィエ・マルシャル
出 演:ダニエル・オートゥイユ、オリヴィア・ボナミー、カトリーヌ・マルシャル、フランシス・ルノー、ジェラール・ラロシュ、フィリップ・ナオン、ムーサ・マースクリ 他




自分の過失によって娘を失い、妻は病院で寝たきり状態にしてしまったシュナイデル刑事は、酒に溺れた生活をおくり、終にはバスジャック騒動までおこしてしまう。過去の功績のおかげで免職は逃れるが、引き換えに、自分が追いかけていた連続猟奇殺人の捜査からは外されてしまう。どうしても自分の手で解決したいシュナイデルは、独断で捜査を継続する。一方、25年前に両親を目の前で殺され、未だにトラウマを抱える女性ジュスティーヌは、終身刑になった犯人が仮出所するという噂を聞き苦悩。当時、犯人を逮捕したのがシュナイデルであることを知り、彼に話を聞こうと接触を試みる…というストーリー。

同監督による『あるいは裏切りという名の犬』と同じく、野良犬のように堕ちていく刑事が、泥くさく事件を追っていく…みたいな感じかと思い観てみたのだが、微妙に違った。
本作は元刑事というキャリアをもつ監督が、実在の事件に基づいて作ったということらしいのだが、実話ベースのくせにまったくもってリアリティが感じられない。事実は小説より奇なり…とか、そういうレベルじゃなく、お世辞でも薦められないレベル。とにかく、シナリオがとっちらかっているとしか言いようが無い。

連続殺人事件を追う話と刑務所に入っている猟奇殺人鬼が出所する話が、なんらかの形でリンクするんだろうと予測していたのだが、基本的に無関係。こういう展開がダメとはいわないが、普通は事件の上で何らかの関係があると思うのでは?この肩透かしがピンとこない一番の理由。
同時進行させる意味があまり無いし、実際におもしろさに繋がっていない。この二つが無関係なんて、許されるのだろうか。こんなことなら、お偉いさんの息子が犯人だった流れだけを膨らませて、サイコサスペンスに徹すればよかったのに。警察上部の隠蔽工作とかの話もあるわけだし、いくらでも膨らませようはあったっだろう。

フランス映画のノリなんてこんな感じだよ…といわれてしまえばそうなのかもしれないが、何でジュスティーヌがシュナイデルに話を聞こう思ったのか、振り返るとよくわからん。当時の刑事に話を聞いたところで、その犯人が更正したかどうかの判断なんかつかないだろうに。

また、自分の行動が招いてしまった取り返しの付かない行為を悔やんでいるのは判るが、心が病んでいるということを表現するために、バスジャックをしてしまうという演出は必要だろうか。つらい経験に耐え切れない男を表現したいだけなのに、ちょっとオーバーで不必要な演出だと思う。

自分が捜査に加われなくても、独自に調べて情報を流すことはできるし、上部がもみ消そうとしても証拠を集めてマスコミにリークするなり、方法はいくらでもありそう。それが思いつかないだけならいざしらず、打つ手打つ手がすべて短絡的。その無念さを警察組織にぶつけているのが、理不尽にすら見えるし、同僚(上司?)の刑事を悪役にするのも、稚拙で都合によい設定に感じる。知恵というものを発揮して難局を乗りる場面があまり見られず、ただ狂ったように荒くれるだけでは、共感のしようもない。
『あるいは裏切りという名の犬』では、脱法していても理があるように見えるから主人公への共感が可能なのだが、本作の主人公は、ただ自分が捜査したいからやってるだけに見える。

ラストに向かうにつれ、観ている側と主人公の距離が離れ、最後は完全に冷めていくという…。日本未公開なのもさもありなん。お薦めしない。



負けるな日本

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image0232.png公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:141分
監 督:スティーヴン・スピルバーグ
出 演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、マーティン・シーン、ナタリー・バイ、エイミー・アダムス、ジェニファー・ガーナー、フランク・ジョン・ヒューズ、ブライアン・ホウ、ジェームズ・ブローリン、スティーヴ・イースティン、エリザベス・バンクス、エレン・ポンピオ、ナンシー・レネハン、リリアン・ショーヴァン、エイミー・アッカー 他
受 賞:【2002年/第37回全米批評家協会賞】助演男優賞(クリストファー・ウォーケン)
【2002年/第56回英国アカデミー賞】助演男優賞(クリストファー・ウォーケン)
【2002年/第8回放送映画批評家協会賞】監督賞(スティーヴン・スピルバーグ「マイノリティ・リポート」に対しても)、音楽賞(ジョン・ウィリアムズ「ハリー・ポッターと秘密の部屋」「マイノリティ・リポート」に対しても)
コピー:本物の偽者<にせもの>を描いた真実のドラマ。

高校生のフランク・アバグネイル・Jrは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで家を飛び出す。しかし、すぐにお金が底を尽きたため、生きるために小切手の偽造で詐欺を働くようになる。初めは失敗を繰り返したが、パンナムのパイロットに成りすます手口を発見してから、面白いように成功するようになる。さらに偽造の手口は巧妙になり、巨額の資金を手に入れることに成功する。一方、巨額小切手偽造詐欺事件を捜査していたFBI捜査官カール・ハンラティは、巧みな手口を一つ一つ解明し、徐々に犯人に迫っていく…というストーリー。

数ある実話物の映画の中で、私が一番おもしろいと思っている作品。これまで何回か観ている。おもしろい作品というか、こんな映画のような人間が実在したということに、鳥肌が立つ…といったほうが正確かも。

この線でやると決めた後の、フランクの割り切りと実行力が半端じゃない。マイアミの空港での切り抜け方は、これが実話だと思うと腰が砕けそうになるね。
親の離婚によって居所を失った少年が、天賦の才能を持ち合わせていたばっかりに、その満たされない心を犯罪という方向で爆発させてしまった、とんでもない事例。その天才ぶりは、司法試験を簡単にパスしちゃったことからも明白なんだけど、まあ常人とは脳の構造が違う人、それこそサバン症候群クラスの脳の持ち主なんだろうね。

ラストは、泥棒をスカウトして泥棒対策のコンサルタントにするようなものだがら、日本の公的機関じゃ絶対にやらないことをやっちゃうFBIの実利主義にも頭が下がる(まあ、人様の命を殺めたわけじゃないからね)。
#トム・ハンクス演じるハンラティは架空の人物らしいけど。
こんな形で自分の居所を見つけてしまう、それも捕まえた側が手を差し伸べるなんて、なんてスケールのでかい自分探しの旅なんだろう。

ディカプリオの演技もなかなのものだと思うんだけど、受賞していない。なんなんだ、この人の賞の縁の無さって。欧米の人から見るとどうしても引っかかる何かがあるのかな。

とにかく娯楽映画として満点に近いと思うし、実話だというスパイスが加わることでK点超え必至の作品。地味にコンスタントにTV放映されているので観た人は多いと思うけど、もし未見の人がいたら、是非観るべきだと思う。強くお薦め。




負けるな日本

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image1690.png公開年:1975年
公開国:アメリカ
時 間:126分
監 督:シドニー・ルメット
出 演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、ジェームズ・ブロデリック、クリス・サランドン、ペニー・アレン、キャロル・ケイン、サリー・ボイヤー、ランス・ヘンリクセン 他
受 賞:【1975年/第48回アカデミー賞】脚本賞(フランク・ピアソン)
【1975年/第1回LA批評家協会賞】作品賞、男優賞(アル・パチーノ)、監督賞(シドニー・ルメット)
【1975年/第29回英国アカデミー賞】主演男優賞(アル・パチーノ)、編集賞
コピー:暑い夏の昼下り 全米の注視をうけて演じられた-- あまりにも突飛な事件……だがそれはまぎれもない事実だった! 

真夏のブルックリン。小さな銀行に3人組の強盗が押し入るが、彼らの手口はグダグダで、犯行はまったくスムーズに進まない。おまけに早々に仲間の一人が怖気づいて逃走する始末。残ったソニーとサルは、金庫を開けたものの移送された後で金はわずかしかなく、さらに手間取っているうちに、銀行の様子がおかしいことに気付かれたのか、あっというまに大量の警官隊やマスコミに包囲されてしまう。彼らは、残った人質を取って篭城するしか手段がなくなってしまう。しかし、篭城が続き、警察とソニーたちの膠着状態が長引くについて、何故かあつまった野次馬たちからヒーロー扱いされて…というストーリー。

『十二人の怒れる男』『オリエント急行殺人事件』『デストラップ・死の罠』『その土曜日、7時58分』。私が今まで観たルメット作品はこんなところかな。基本的に大ハズレの無い打率の高い監督だと思う。

狼って誰のことを指してるの?って思った人は多かったのでは。アル・パチーノ演じるソニーは狼って感じじゃないし、仲間のサルだってマッドドッグって感じではない。原題の“Dog Day”はうだるような暑い日を意味するらしい。だから犬とも狼とも無関係。狼なんていうからハードなギャングっぽいものを想像したのだけれど、コミカルというかニューシネマ的というか、印象の違いが甚だしすぎる。この邦題は良くないよ。警察に包囲されちゃってから、人質の行員に「だから、カネ持って早く出て行けと言ったのに」なんて説教されるレベルの強盗のお話なんだもの。

予測していた内容とは違ったが、観すすめるうちにグイグイと引き込まれる作品。小さな銀行だけでストーリが展開していく閉塞間がよい。役者陣の丁々発止のやりとりの緊迫感がハンパないのだが、アドリブがものすごく多いらしい。こういう作品は役者冥利に尽きるんだろう。端役までが何か爪あとを残してやろうとギラギラしているのが、そのまま作品のパワーになっている感じ。もちろん一番ギラギラしてるのは若きパチーノだけどね。
キャラクター描写も秀逸。緊張感がある中で、間抜けな行動が繰り広げられるのは愉しいが、元々不幸な人生を過ごしてきた彼らが、さらに絶望的になっていく様子は、観ていて切なくなってくるほど。

アドリブが多いといいつつ、ストーリーにはまったく無駄が無いと言ってよい。これはルメットの力が大きい。自分が政府や社会に不満があると、反社会的人間を祭り上げてしまう大衆心理。そういう奇妙な空間に響きわたるマイノリティの叫び。1975年とは思えない新しさも感じる。個人的な趣味とは少し外れるので傑作とは言わないが、充分に良作・快作だといえる。お薦めする。

ああ、ちなみに本作は実際の事件を扱った作品。ソニーは20年の刑なので、とっくにソニーはシャバに出ているんだろうね。
でも、いくらモチーフになったからといって、配収の一部が犯人さんに手渡されるのって変じゃね?公になった事件を扱っただけであって、それに著作権や肖像権って発生するかね。やっぱりアメリカってクレイジーな気がする。

#なにか、聞き覚えのある作品名だと思っていたら、『ソードフィッシュ』の中でトラヴォルタが演じるキャラクターが絶賛していたヤツだ。久々に観るかな。




負けるな日本

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image1674.png公開年:2007年 
公開国:アメリカ
時 間:109分
監 督:ジョン・カラン
出 演:ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、フランセス・コンロイ、エンヴェア・ジョカイ、ペッパー・ビンクリー 他
コピー:悪を憎み続ける男 正義をあざわらう男 男たちを蝕む女──そして理性は崩壊していく。



デトロイトで仮釈放管理官として働くジャック。これまで真面目に働き続け定年を間近に控えていた。最後に担当する受刑者は“ストーン”と呼ばれる男で、祖父母を放火で死なせた罪でこれまで8年間服役し残りの刑期が3年だった。仮釈放と強く望むストーンだったが、その反抗的な態度にジャックは強硬な姿勢を崩さず、面談はうまく進まない。そこでストーンは妻のルセッタにジャックを誘惑し、評価に手心を加えてもらおうと画策する。ルセッタは指示どおりにジャックに接近。当初は接触を拒むジャックだったが、結局根負けし二人きりで会うと一線を越えてしまうのだった。その一方、刑務所の中で精神世界に興味を持ち始め、自己啓発にのめり込んでいくストーンは、徐々に真人間に近づいていき…というストーリー。

昨日の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は、カトリック社会の空気がわからないとピンとこないのかな…と思ったが、本作はそれ以上にピンとこないかも。要するに、罪と罰に対する感覚がどうもスっと入ってこないのだ。同様にキャストが豪華な点も共通しているが、そちらの点でも本作は劣る。エドワード・ノートン自体どこか知的な匂いを拭いきれないので、こういう展開になるのが読める。また、ビッチ系の役ばかり続いているミラ・ジョヴォだけど、そういう役しかこないのか、そういう役しかできないのか。正直、この手の役柄の彼女は飽きた。

この話の主軸は、真面目一本だったジャックと、クソ人間のストーンが、面接を繰り返していくうちに次第に入れ替わっていき、善悪とは何なのか、罪と罰とは何なのか、ひいては生きる意味とは何なのか…ということを考えさせようということだと思う。この逆転の様子を見せるのがおもしろいと思うのだが、仮釈される時のストーンは元に戻っているように見え、どうも逆転したとは考えにくい。冒頭にジャックの若い頃のエピソードを仰々しく差し込んでいるが、それだと彼が元々問題のある性格傾向だということになってしまい、ますます逆転したのではなく、人間なんか内面的には善人も悪人もたいして変わりは無い…という論調になってしまう。単にジャックとストーンが個人的に問題を抱えているだけに見えてしまい、“人間”すべて似たようなところがあるよね…という哲学的なところまで昇華するのを妨げているようにも思える。

シナリオの軸がぶれているのか、私には見えないテーゼが隠れているのか、アメリカで善とされているものが同時に持ち合わせる闇みたいなものを肌で感じていないとダメなのか、本作も評価が難しい作品。ただ、佳作とまでは言いがたい。サスペンス的要素では、明らかに『ゴーン・ベイビー・ゴーン』より劣る。“STONE”もダブルミーニングになってるんだかなってないんだかよくわからないし。特段、お薦めはしない。



負けるな日本

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image1669.png公開年:2010年 
公開国:アメリカ
時 間:105分
監 督:イーサン・マニキス、ロバート・ロドリゲス
出 演:ダニー・トレホ、ジェシカ・アルバ、ロバート・デ・ニーロ、スティーヴン・セガール、ミシェル・ロドリゲス、ジェフ・フェイヒー、ドン・ジョンソン、シェー・ウィガム、リンジー・ローハン、チーチ・マリン 他




連邦捜査官マチェーテは、麻薬王トーレスによって愛する家族を殺され、現在は失意のままアメリカに不法移民として留まっている。抜け殻のように生きながら、その胸の内では復讐の機会を狙っていた。そんなある日、謎のビジネスマンから喧嘩の腕を買われ、高額の報酬で不法移民弾圧をスローガンに掲げるマクラフリン議員の暗殺を依頼される。しかしそれは、不法移民を暗殺犯に仕立て上げることで、不法移民排斥を有利に進めようとする、クラフリン側が仕組んだ罠だったのだ。犯人として捕らえられそうなところを何とか切り抜けたマチェーテは、タコスを販売しながら裏で不法移民を支援する女性ルースと、今でこそ牧師だが昔は殺人も厭わなかった男パードレの助けを借りて、反撃に出るのだった…というストーリー。

ロドリゲス監督の『グラインドハウス』に含まれるフェイク予告編の評判が良かったので、本当に映画にしちゃったって作品。ようするに悪ノリで生まれたってことだね。
フェイク予告編の評判がよかったってことは、プレゼンレベルで成功しているようなものだから、あとはトコトン悪ノリをし続ければいい。こういうノリで作られた作品が、楽しくならないわけがない。

ダニー・トレホ(『スパイ・キッズ』の子供達の叔父さん役の人ね)が主役を張るようなレベルではないのと対比して、デ・ニーロにセガールにジェシカ・アルバと、主役級を遠慮なく脇役(それも端役に近い役)で使っちゃう。この豪華さ。

とはいえ、スティーヴン・セガールは、主役でもなければ正義の味方でもないとき、こんなにしょぼくて奇妙に映るのかと、驚くほど(笑)。ダニー・トレホとB級感と合わさって。この映画全体のB級感の半分を担っているといってもいいほど。

そして、この手のロドリゲス作品ではお約束の、一線をちょっと超えたレベルのエロ演出。そんなエロに直面しても、一切鼻の下を伸ばすことがないダニー・トレホがだんだん格好良くみえてくるから不思議(別に手を出さないわけではないのだが)。男の格好よさって何なんだろうって、ちょっと考えさせられちゃう。

B級感をだそうとして、わざとフィルムを劣化させたような画像処理が陳腐極まりなくて、邪魔臭いが、それは大目に見るとしよう。『グラインドハウス』も同じようにB級一直線を目指した作品だったと思うのだが、どこかに、劇場公開を見据えたA級感が漂っていた。しかし、本作にその臭いはない。それなのに、おそらく劇場で観た人の満足度は結構高かったのではないかと思わせる何かがある。
ノリと統一感のある雰囲気づくり、現実世界を頭によぎらせない疾走感。もしかすると、金を払ってみる価値の有り無しは、巧みなシナリオでも高等な技術でもないのかもしれない。

移民政策に対する政治的なメッセージがありそうに見えながら、実のところなにがいいたいのかよくわからないという、掴み所の無さもよい。色々考えさせてくれはするけど、深く考えさせもしない、良作でも佳作でもない“おもしろい”作品。お薦め。
#さすがのジェシカ・アルバもはじけるような美しさは薄れてきたかな…。





負けるな日本

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image1607.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ
時 間:100分
監 督:ジョン・アヴネット
出 演:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、カーティス・ジャクソン、カーラ・グギーノ、ジョン・レグイザモ、ドニー・ウォールバーグ、トリルビー・グローヴァー、ブライアン・デネヒー、メリッサ・レオ、アラン・ブルーメンフェルド、オレッグ・タクタロフ、フランク・ジョン・ヒューズ、テリー・セルピコ、アジェイ・ナイデュ、ジョン・セナティエンポ 他



ニューヨーク市警のベテラン刑事タークとルースターは、長年パートナーを組み強い絆で結ばれていた。彼らは数々の犯罪者たちを刑務所送りにしてきたが、多くの悪人が法の網をくぐって社会で悠々と暮らしているという現実に、強い苛立ちを覚えていた。ある日、そのような悪人をターゲットにした連続殺人事件が発生し、その手口から容疑者が警察関係者である可能性が指摘され、タークに疑いの目が向けられ…というストーリー。

『ヒート』の時は、ほとんど一緒の画角におさまってるシーンがないだの、色々いわれていたが、今回はそれをふっとばすようにみっちりタッグを組んでいる作品。もう、ほんとうに頬を寄せるような密着具合で、自然と期待は高まるばかり。特に、アル・パチーノの小汚さはすごく魅力的に映る。しかし…。

色々な伏線やらミスリードのおかげで、誰が犯人だ?どうなっちゃうんだ?とあれやこれやと思いを巡らせながら観ることができたのは事実なのだが、どうも心の底から愉しめたとはいえず、しっくりこない。普通に考えれば、なかなか手の込んだ仕掛けだね…ということになるんだが、この二人を主演にして、そんな姑息な展開が必要か?と、そう思ってしまうのは、あまりにも二人の存在が大きすぎるためか。もっと正面切って、彼らの魅力で渋さや男らしさを見せてくれよ!って気持ちがあったのだが、その欲求は満たされず終い。

やはり、この二人をわざわざ揃えなくてはいけないような話はないと思う。もったいない。諸々のミスリードも空々しく感じられる。特に、性的虐待を受けていたという件は必要だったか否か。サイコキラーなんだか単なる必殺仕事人なんだか、キャラの色づけがイマイチだったと思う。デュープロセスの網をすり抜けた悪人を始末する義の男というキャラのほうが、すっきりしたと思うのだが。

まあ、期待度が高すぎただけのことで、決してつまらない作品というわけではない。及第点には達しているので、その部分はフォローしておこう。特段、お薦めはしないけど。

#それにしても、やる気のない邦題だなぁ…。

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image1592.png公開年:1968年 
公開国:アメリカ
時 間:119分
監 督:リチャード・フライシャー
出 演:トニー・カーティス、ヘンリー・フォンダ、ジョージ・ケネディ、マイク・ケリン、ハード・ハットフィールド、マーレイ・ハミルトン、ジェフ・コーリイ、サリー・ケラーマン、ウィリアム・マーシャル、ジェームズ・ブローリン、ダナ・エルカー 他




1960年代のボストン。1人暮らしの高齢女性ばかりを狙う連続殺人事件が発生。押し入った形跡はなく、被害者は何故か犯人を招き入れていること、犯行に使用されたロープが外科結びと呼ばれる独特の結び方であること、猟奇的な陵辱を受けているなどの共通点のため、事件は話題となり、世間で“ボストン絞殺魔”と称されるようになる。事件の特殊性により捜査は難航。警察は手当たり次第に不審人物を捕らえるが、いずれもシロ。州検事局は、その威信をかけて検事総長補佐ボトムリーを捜査責任者に据えて捜査に乗り出すのだが…というストーリー。

昨日鑑賞した『冷血』の翌年公開作品で、同じようなセミドキュメンタリー(実際の事件がベース)。影響を受けているのが完全にアリアリである(犯人の名前も検事総長補佐の名前も実名らしい)。

以下、ネタバレ。

前半は犯行に対する市民や警察のリアクションがメイン。画面を分割して複数の視点を同時に表現する実験的な演出は目を惹く。スリリングな演出で、グっと作品に引き込まれる。単なる二番煎じという批判を避けるために、こういう目新しい手法を加えた…という見方もできるが、純粋にフライシャーの映画技術が長けていると捉えるべきだろう。

しかし、後半になると突然犯人が明確になり、さらに二重人格者による犯行だということになるのだが、前半と後半のテイストのブレ方が実に大きい。『冷血』と比べると、何を主軸に据えて表現したいのか、よくわからなく感じる。

多重人格者という設定だが、今見れば、いまいち正しくない心理学的描写が多いように感じられ辟易する。それに、実際のデサルボは取調べであんなに混乱したり苦悩したりはしなかったらしく、肝心の事件の根幹が創作であることがわかる(『冷血』でのカポーティの姿勢とは大違い)。その辺の、ストーリー面の強引ともいえる誘導っぷりが、後半のイマイチ感(リアリティの欠如)につながっていると思う。
ラストのテロップの内容など、実にくだらない。“殺人などに至る前に、病を発見して治療する制度はまだ作られていない”って、そんなもん未来予測しろといっているようなもので、永遠に出来上がるわけないじゃない。この感覚で、途中で、超能力者を登場させたのかと思うと、逆にゾッとしてしまう(さすがに、日本でのTV放送時にはカットされてるようだけど)。こういうもっともらしいだけの、ポンコツ偽善者の理屈が世の中で一番タチが悪い。

映画技術の高さと、コンセプトやシナリオの稚拙さにものすごい落差がある。逆に言えば、完全に駄作になるところをフライシャーの技術によって救われたということ(フライシャー的には面目躍如って所)。先に『冷血』を観てしまったからかもしれないが、満足にはほど遠い。あえてお薦めはしない。
 

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image1590.png公開年:1967年 
公開国:アメリカ
時 間:133分
監 督:リチャード・ブルックス
出 演:ロバート・ブレイク、スコット・ウィルソン、ジョン・フォーサイス、ポール・スチュワート、ジェフ・コーリイ、ジェームズ・フラヴィン、ジェラルド・S・オローリン、ジョン・ギャローデット、チャールズ・マックグロー、ウィル・ギア、ジョン・マクライアム、レイモンド・ハットン 他
受 賞:【2008年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品


仮釈放中のペリーとディックは、服役中に得た裕福な農場主の情報を元にカンザス州へ向かった。その後、農場主の一家4人が惨殺されいるのが発見される。農場主はのどを掻き切られた上に至近距離から散弾銃で撃たれ、他の家族も手足を紐で縛られた上に同様に銃撃されるという、あまりにも酷い殺され方であった。被害者は誠実な人柄で生活上のトラブルも一切無く、且つ金品が奪われていないことから、単なる強盗の仕業とは考えにくく、捜査は難航を極め…というストーリー。

2005年公開の『カポーティ』は、この『冷血』という作品を書き上げるまでの、原作者カポーティの苦悩を綴った作品で、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンをはじめ、数々の受賞歴がある。当時、レンタルビデオ点に『冷血』は無く(『カポーティ』と同時にリバイバル的に発売が開始されたはず)、一緒に観ることはできなかったのだが、やはり『カポーティ』を観る前に、本作を観ておくべきだったと、悔やまれる。

2010年版の『時をかける少女』を観る前に、大林版なり昔の作品を観ておけば、余計に楽しめるのと同じで、一緒に観ることは非常に意味がある。原作者のトルーマン・カポーティは、『ティファニーで朝食を』などを世に出す売れっ子作家だったのだが、この事件が発生すると創作意欲をかき立てられ、事件現場や関係者を訪ねるほど。2人の容疑者が逮捕された後は接近を試みて、特にペリーに魅力を感じて何度も面会を重ね、最終的には信頼を得るだけではなく、自分と似たような生い立ちの容疑者に共感してしまい、彼を延命させたいという思いと、早く死刑になってほしいという願い(死刑にまでならないと本を出版できないから)の板ばさみになり苦しむ。それが映画『カポーティ』の内容である。

たしかに『カポーティ』だけ観ても理解できないわけではないのだが、本作を観て「あぁ」と思う点が多々あるのだ。本作には新聞記者役の人物が狂言回し的に登場し、取ってつけたように死刑制度や保釈制度について批判的なセリフを言う。この映画を観て、ペリーに同情して同じ思いを抱く人間はいないだろう。むしろ死刑になるのはもっともだと思うはずで、この演出には違和感を感じる人が多いはず。でもこれは、カポーティがペリーにただならぬ感情を抱いてしまった発露だとすると、しっくりくるのである(ディックよりもペリー寄りの描写が多いのも、これで頷ける)。この『冷血』というタイトルも、二人の犯行に普通の人間的な感情が感じられないところから付けられたと思われているが、加害者に共感しているくせに、作品を世に出すために死刑執行を望んでいる自分こそ“冷血”な奴じゃないか…そういう意味で付けられたという説があるくらい。こういう情報を知ると、一緒に観る意味をご理解いただけるのではなかろうか。
#カポーティの生前の写真を観ると、フィリップ・シーモア・ホフマンよりも、本作のペリーに近い表情に見えるのも、また興味深かった。

本作の演出について。はじめの方では一切犯行シーンは表現されず、犯行前と逃亡過程と捜査状況が淡々と描写される。そして、終盤に刑事にゲロったところと合わせて、犯行シーンが描写される。それはそれでおもしろい演出(逆コロンボみたいなものだ)。
昨今は異常犯罪を扱った作品が多く、各々非常に小馴れているので、本作の演出が古臭く稚拙に見える人もいるかもしれない。また、生い立ちと犯行のつながりも希薄に思えるかもしれない。しかし、実録犯罪モノのまさに走りである点を考慮して大目にみるべきだろう。モノクロ映像なのに、観進めていくうちに一切それが気にならなくなるくらい、リアリティも迫力もある。

是非是非、この『冷血』を観てから『カポーティ』を観ることを強くお薦めする。

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image0762.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:151分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォールバーグ、マーティン・シーン、レイ・ウィンストン、ヴェラ・ファーミガ、アレック・ボールドウィン、アンソニー・アンダーソン、ケヴィン・コリガン、ジェームズ・バッジ・デール、デヴィッド・パトリック・オハラ、マーク・ロルストン、ロバート・ウォールバーグ、クリステン・ダルトン、J・C・マッケンジー 他
受 賞:【2006年/第79回アカデミー賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)、脚色賞(ウィリアム・モナハン)、編集賞(セルマ・スクーンメイカー)
【2006年/第41回全米批評家協会賞】助演男優賞(マーク・ウォールバーグ)
【2006年/第73回NY批評家協会賞】監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2006年/第64回ゴールデン・グローブ】監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2006年/第12回放送映画批評家協会賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)
【2007年/第16回MTVムービー・アワード】悪役賞(ジャック・ニコルソン)
コピー:男は、死ぬまで正体を明かせない。

ボストン。犯罪者だらけの親族と決別すべく警察官を志すビリー・コスティガン。一方、地元マフィアのボス・コステロに目をかけられて育てられ、彼らのスパイとなるために警察に送り込まれるコリン・サリバン。警察学校に入った2人は、各々優秀な成績で卒業し、コリンはマフィア対策の特別捜査班に抜擢され、一方ビリーは優秀さを買われ、コステロのもとへ潜入するという極秘任務を命じられる。二重生活を送るビリーとコリンは、やがて、双方共に内通者の存在を気付き、窮地に追い込まれる…というストーリー。

オリジナルは記憶にない(大昔に観たような観ていないような…)。

リメイクがオスカーを獲るなんて、ハリウッドも堕ちたな…とかいう人がいるんだけど、リメイクだろうがなんだろうがおもしろければ関係ないで、くだらない見方だと思う。ってうか、つまらなかっただーイマイチだーオスカーにふさわしくないだー文句を言っている人が多いんだけど、みんな米アカデミー賞が何か高尚なものだと勘違いしてないだろうか?元々米アカデミー賞なんて、同業者を励ます“がんばったで賞”なんだけど。配給会社の煽り文句に勝手にハードルを上げてしまっただけで、目が曇ってるんじゃないかね(お、世の中を敵に廻すような発言)。
#じゃあ作品賞は『バベル』『硫黄島からの手紙』『リトル・ミス・サンシャイン』『クィーン』のどれがよかったっていうのか。個人的な趣味でいえばダントツで『リトル・ミス・サンシャイン』だけど、そうはいかないし、前者2作だって明らかに『ディパーテッド』より上とは言い難いんだけど…。

雇われ監督で作った作品が受賞してしまったわけだけど、ストーリーテリングに注力しなくてよかったことで、その分演出にエネルギーが傾いたってことだろう。かといってスコセッシ色が紛失したわけでもないし、本人の創作意欲の有り無しにかかわらず、純粋に職人技が評価されたんだと、素直に受け止めていいんだと思う。大体にして、スコセッシ作品を大衆ウケさせること自体が無茶なんだから、ここまでもってこれたら十分すぎるほど十分でしょ。

好みは分かれると思うが、暴力表現が実にすばらしく、特にマーク・ウォールバークの怪演は体表がピリピリするくらい観ていて力が入る。これは響かない人に響かない要素かもしれないが、私、沸点の低いイラチ人間なもので。
登場人物も多いけれど、すべてしっかりキャラが立っているし、それぞれの感情の動きもしっかり表現できていて良く伝わってくる。長めだが決してダラダラしておらず、全体的によく引き締まっている。ラストに苦言と呈する人が多いが、あのナタでスパっと刈ったような終わり方は個人的に好き。

私は、最も成功したリメイク作品だと思うのだが、世の中の正反対の評価が、自分世の中の乖離を感じさせ不安にさせる反面、人と違う快感も覚える。個人的には強くお薦め。

#ディカプリオだって良かったと感じたんだが、世界の映画賞はちょっと彼につれなさすぎじゃないか?

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image0442.png公開年:1997年 
公開国:アメリカ
時 間:145分
監 督:マーティン・スコセッシ
出 演:レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ロレイン・ブラッコ、ポール・ソルヴィノ、クリストファー・セロン、ジュリー・ガーフィールド、サミュエル・L・ジャクソン、フランク・シヴェロ、マイク・スター、フランク・ヴィンセント、ジーナ・マストロジアコモ、ケヴィン・コリガン、マイケル・インペリオリ、フランク・ペレグリノ、トニー・シリコ、イレーナ・ダグラス、ヴィンセント・パストーレ、ヴィンセント・ギャロ、トビン・ベル、トニー・リップ 他
受 賞:【1990年/第63回アカデミー賞】助演男優賞(ジョー・ペシ)
【1990年/第47回ヴェネチア国際映画祭】監督賞(マーティン・スコセッシ)
【1990年/第25回全米批評家協会賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)
【1990年/第56回NY批評家協会賞】作品賞、男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、監督賞(マーティン・スコセッシ)
【1990年/第16回LA批評家協会賞】作品賞、助演男優賞(ジョー・ペシ)、助演女優賞(ロレイン・ブラッコ)、監督賞(マーティン・スコセッシ)、撮影賞(ミヒャエル・バルハウス)
【1990年/第44回英国アカデミー賞】作品賞、監督賞(マーティン・スコセッシ)、脚色賞(マーティン・スコセッシ、ニコラス・ピレッジ)、衣装デザイン賞、編集賞
【2000年/アメリカ国立フィルム登録簿】新規登録作品

幼いころからマフィアの世界に憧れるヘンリーは、12歳の時からブルックリンを牛耳る“ポーリー”のもとで使い走りをはじめ、ついには、ジミーやチンピラのトミーらと共に、本物のマフィアとして物品の横流しや強盗などの手荒い仕事に手を染め、若くして大金を動かすようになる。一方、私生活では裏家業であることを隠してカレンと結婚し、子供をもうける。薄々感づき始めたカレンも、その豪奢な生活から離れることはできず、マフィアであることを許容し始める。その後、刑務所暮らしなどの浮き沈みを経験しても、“グッドフェローズ”達の硬い結束で乗り切ってきたが、史上空前の600万ドル強奪計画が彼らを狂わせて行く…というストーリー。

実話ベースのギャング映画は数あれど、今まで観たギャング映画の中で最もリアリティを感じさせてくれた作品。暴力シーンの描写や、犯罪の様子はもとより、若いころのいかにもギャングらしい様子が、時が現在に近づくにつれ矮小になっていくのがおもしろい。マフィアの男目線だけでなく、奥さん側の目線があるのも効果的な演出。女のほうが生活に密着していて打算的なせいか、矮小化による痛々しさは男連中よりも上に見える。
最後の尻すぼみ感は、ギャングの末路をうまく表現した演出と好意的に受け止めたい。長い年月に渡るギャング・サーガを綺麗にまとめたと思う。

移民や宗教的な観点が描かれるのも、スコセッシならでは。ユダヤ、カトリックの文化的な違いや、純血イタリア人じゃないとイタリアンマフィアの幹部にはなれないなんて、なるほどね~と。

デ・ニーロのギャングっぷりも見事だったが、レイ・リオッタは役柄の立場をその表情でうまく演じきっているし、なんといってもジョー・ペシのクレイジーっぷりが光っている(本当にヤバそうな奴に見える)。わたしは『ゴッド・ファーザー』よりも好みである。未見の人には強くお薦め。

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image1529.png公開年:2009年 
公開国:アメリカ
時 間:141分
監 督:マイケル・マン
出 演:ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール、ビリー・クラダップ、スティーヴン・ドーフ、スティーヴン・ラング、ジェームズ・ルッソ、デヴィッド・ウェンハム、クリスチャン・ストールティ、スティーヴン・グレアム、チャニング・テイタム、ジェイソン・クラーク、ジョヴァンニ・リビシ、ビル・キャンプ、スペンサー・ギャレット、ピーター・ゲレッティ、ブランカ・カティッチ、リーリー・ソビエスキー、ロリー・コクレイン、ジョン・キッシュライン、キャリー・マリガン、リリ・テイラー、ジョン・オーティス、ドン・フライ、マット・クレイヴン、アラン・ワイルダー、デヴィッド・ウォーショフスキー、ランス・ベイカー、スティーヴ・キー、ダイアナ・クラール、ジェフリー・カンター 他
コピー:奪うのは、汚れた金 愛したのは、たった一人の女。

大恐慌時代。銀行強盗ジョン・デリンジャーは、その大胆すぎる手口故に貧困に苦しむ民衆から喝采を浴びていた。警察から追われているさなか、美女ビリーと出会い、一瞬で恋に落ちるデリンジャー。一方、フーバー長官はデリンジャーを“社会の敵(パブリック・エネミー)No.1”と呼び、有能なパーヴィス捜査官を抜擢し陣頭指揮に当たらせ、その逮捕に全力を挙げていくのだったが…というストーリー。

要するにFBI誕生前夜(というか過程)の話なのだが、FBIが舞台・主役(または敵役)になった映画やドラマがどれだけあることか。これだけエンターテイメント界にネタをくれていることを考えると、感謝しなくてはいけない内容なのかも(あ、本作は実話ベースね)。

とはいえ、デリンジャーはアメリカでは有名なのだろうが、日本人のワタシにとってはいまいちピンとこない存在である。多くの人が知っているという前提で作られているためか、人物像を描く演出が希薄に思える。なんか義賊を強調したコピーだが、まったくそんな風には思えなかったので、どういうことなのか調べてみたが、銀行強盗をする時に銀行の金は奪ったが、そこに来ていた客の金を一銭も取らなかったことから、実際に義賊扱いされていたらしい。銀行強盗がいちいち客の金を取るわけがなく、なんでそれで義賊扱いされるのか。今の価値観で考えたら有り得ないことなのだが、それほど国家や社会に対して、当時の民衆が不満を抱いていた(というか正気を失っていた)ってことなんだろう。
しかし、同時代を扱った『アンタッチャブル』など比較すると、本作は、そのトチ狂った社会状況がいまいち表現できていない。そのため、デリンジャーが大したことのないチンピラに見えてしまい、そんなチンピラを捕まえられない捜査官達もポンコツに見えてしまうという、負のドミノが展開される。

歴史的事実を色々調べたり、原作を読めば判らなくもないのだろうが、本作を観た限りでいえば、このコピーはちょっとズレている。その点から、配給会社自体が本作をおもしろいと思っていない証拠だともいえるし、実話の足枷により面白くならなかった作品ともいえる。
逆に言えば、この決定的に面白くならない脚本を、マイケル・マンはよくがんばってここまで引き上げたと評価すべきなのかもしれない。アングルの取り方やカット割りや編集は、奇を衒ったと思われないようにしつつ格好よくなるように工夫されているのがわかる。また、ジョニー・デップは言うことなしの存在感。ここの所、ティム・バートン作品だ、テリー・ギリアム作品だ、海賊だ…と、非現実的な役ばかりだったので、こういう実在の役をきちんと成立させて「もう普通の役はできないかも…」という不安を一掃できたかもしれない。

実話ベースなのでさほど劇的なラストでないことを肝に銘じて、過度な期待を抱かなければそこそこ楽しめる作品といえる。軽くお薦め。あくまでシナリオ以外(長いしね)。

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imageX0013.png公開年:1963年 
公開国:フランス
時 間:121分
監 督:アンリ・ヴェルヌイユ
出 演:ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、ヴィヴィアーヌ・ロマンス、モーリス・ビロー、ジャン・カルメ 他
受 賞:【1963年/第21回ゴールデン・グローブ】外国映画賞
コピー:カジノ地下金庫にねむる 十億フラン強奪に賭けた 最後の大バクチ!!
ビートニックなモダン・ジャズが奏でる不朽のサスペンス大作!(リバイバル時)


5年の懲役を終え出所したシャルルは、足を洗ってほしいという妻の願いを無視して、カンヌのパルム・ビーチにあるカジノの賭金を強奪しようと計画。相棒として、刑務所で目をつけていたフランシスとその義兄ルイを仲間に入れた。賭金がどのように金庫に運ばれるのかを確認し、段取りをつけ、各自の役割が決まり、いざ決行の夜となり…というストーリー。

モノクロ・バージョンとカラー・バージョンが存在するようなのだが、BSで放送していたやつは白黒で、それを鑑賞。

ジャン・ギャバンの渋い演技で始まり、その渋さを際立たせるためなのか、スタイリッシュな音楽とカメラワークが良い。鏡や影と使った表現など、なかなか凝っている。ところが、途中からアラン・ドロンのシーンばかりになると、そのスタイリッシュさや、すばやくて喰い気味の高速編集とかが、白々しく感じてられ、飽き飽きしてくる。あまりにダラダラしていて、観るのをやめようかと思ったくらい。
#1場面が切り替わっただけで、一週間たって付き合い始めているという…。

子供のころ、世の女性達がアラン・ドロンをかっこいい男の代名詞にしていたが、本作の彼を見ていると、それもわからないでもない。なんとなく、上目遣いで白めがちになった時とか、若い頃のジョニー・デップに似ていなくもない。でも、格好はよくても、彼のシーンはつまらない。アラン・ドロンのせいじゃないとは思うけどね。相当な滞在費はどこから出てるのか?とか、アホなチンピラのわりにはうまくコトが進みすぎていてご都合主義だとか、色々。

でも、なんとか最後の30分近くになって、計画が実行されるとグイっと盛り上がってくる。…が、残念ながらラストが「はあ?」なのだ。なんで金の受け渡し場所が、警察が捜査しているであろう現場なのか?とか、水に沈めるのにしっかり口を閉めないのはなぜか?とか、あまりにトホホすぎて、余韻を愉しむことなんかできない。
もうちょっとしっかり練れば、よくなりそうな気もするのだがね。もうちょっとジャン・ギャバンで押せば違ったかもしれないよ。ということで、昔の映画だってことを差し引いても、あまりお薦めできない。ちょっと観た時間が無駄だったな…と。私には本作の良さがわからず。

#通気抗とエレベーターのショットは『ダイ・ハード』が引用してるのかな。

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image1475.png公開年:2004年 
公開国:フランス
時 間:110分
監 督:オリヴィエ・マルシャル
出 演:ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、アンドレ・デュソリエ、ヴァレリア・ゴリノ、ロシュディ・ゼム、ダニエル・デュヴァル、ミレーヌ・ドモンジョ、フランシス・ルノー、カトリーヌ・マルシャル、ソレーヌ・ビアシュ、オーロル・オートゥイユ、オリヴィエ・マルシャル、アラン・フィグラルツ 他
ノミネート:【2004年/第30回セザール賞】作品賞、監督賞(オリヴィエ・マルシャル)、主演男優賞(ダニエル・オートゥイユ)、助演男優賞(アンドレ・デュソリエ)、助演女優賞(ミレーヌ・ドモンジョ)、脚本賞(ジュリアン・ラプノー、フランク・マンキューソ、オリヴィエ・マルシャル)、音響賞(Pierre Mertens、Francois Maurel、Sylvain Lasseur、Joel Rangon)、編集賞(Achde)
コピー:かつて親友だった 同じ女を愛した 今はただ敵と呼ぶのか…
──実話に基づく、激しくも切ない宿命の物語──

パリ警視庁の2人の警視、レオ・ヴリンクスとドニ・クラン。親友だった2人は、かつて同じ女性カミーユを愛していたが、彼女はレオと結婚し、それ以来、友人関係は破綻。今は、次期長官候補としてライバル関係にある。レオは、ある男との取引で現金輸送車強盗犯のアジトの情報を入手し、一網打尽にすべく作戦を展開する。ところが、出世を焦るドニの無謀な行動により、作戦は失敗。ドニはその失敗の責任を追及されたが、ある裏情報を基にレオを密告し、自分は無罪放免、レオを刑務所送りにすることに成功するのだが…というストーリー。

こんな重々しい刑事ドラマは久々だと感じたのと同時に、フランスの刑事のガラの悪さといかタチの悪さというか、とても市民を守ってくれなさそうな風体・態度で、本当にこんなんだったらフランスなんかいきたくないぞ…と思った。
って、観終わってから調べてみたら、監督は元警官で、共同脚本の人も元刑事。そして、かなりアレンジしているけど、この事件のベースは実話なんだって!いやいやいや、こんなに警察機構が腐ってるなら、とても安心してパリになんかいけないから。本当に恐ろしい国だわ。

まあ、その真偽はさておき、演技も映像も音楽も渋い渋い。重い重い。ベタベタな演出かもしれないけど、観ていて本気で悪役を憎く感じるほど、情が動く。それほど入り込んで観れる作品。

その渋さを台無しにしないように、配給会社も真剣になったのか、すばらしくデキの良い邦題。原題が“オルフェーヴル河岸36番地”なんて味も素っ気もないモノ。そこで“あるいは裏切りという名の犬”。だって刑事だから犬だもの。登場人物の全員が、何かを裏切っているもの。“あるいは”なんてヨーロッパっぽ感じが出てるもの。もう、内容ともズレていないし雰囲気もよく反映してるし、100点の邦題でしょう。

主人公のレオが、主役とはいえ脱法しまくり(娼婦を殴った奴をシメたり、ハメられたとはいえ犯罪行為を見逃すことと引き換えに情報を入手したり)なところが、薄っぺらな勧善懲悪を超えた重さに一役買っている。いや、誰でも生きていく上で、多かれ少なかれ何かを裏切ってるよ。なーんて、普段はお気楽なワタシでも、ハードボイルドチックなことを考えちゃうような、しぶい作品。

とはいえ、最後は不満…というかピリっとしない。
(ネタバレ注意)
実のところ、ドニは権力を握ろうがなんだろうが、本質は弱くて小っちゃい人間で、常に自分の所業の報いに怯えながら生きている。だから、殺さずに苦しめるのが一番いいはず。確かに演出上の仕掛けはあるので、工夫をしているのはわかるのだが、殺さずに社会的に窮地に立たされるとか、生き地獄を味あわせてもらいたかったかな。そのくらいじゃないとバランスが取れない。そのせいか、殺されたの見ても溜飲がさがることはなく、なんかあっさり死ねてよかったじゃん…て思っちゃったくらい。
そして、レオはもう脱法することもなく、誰も裏切らない…のはいいんだけど、本当に誰も何も裏切らないもんだから、ふわっと終わってしまう。

まあ、最後の不満はご愛嬌だ。この減点があったとしても、悠々A評価作品。未見の方は是非お薦め。どちらかといえば男の子向け作品かな。

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image0403.png公開年:2006年 
公開国:アメリカ
時 間:107分
監 督:トッド・ロビンソン
出 演:ジョン・トラヴォルタ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ジャレッド・レトー、サルマ・ハエック、スコット・カーン、アリス・クリーグ、ローラ・ダーン、マイケル・ガストン、ブルース・マックヴィッティ、ダン・バード、アンドリュー・ホイーラー、ダグマーラ・ドミンスク、ジョン・ドーマン、ベイリー・マディソン、エレン・トラヴォルタ、ジェイソン・グレイ=スタンフォード 他
コピー:アメリカ犯罪史上、最も悪辣な連続殺人犯:動機は孤独──これは実話
激しい嫉妬で殺して愛す。

1940年代、レイ・フェルナンデスは、新聞の恋人募集欄“ロンリーハート・クラブ”を利用する手口で、戦争未亡人や中年独身女性を狙い結婚詐欺を繰り返していた。ある日、次のターゲット、マーサ・ベックに近いたが、彼女が裕福ではないことがわかりあっさりと手を引く。彼は、次の詐欺の犯行でドジを踏んでしまうが、突然その現場に現れたマーサに危機を救われる。マーサはレイにシンパシーを感じ、追いかけていたのだ。これをきかっけに、マーサはレイの妹役になり、一緒に詐欺を行うようになるが、次第に詐欺相手の女性に強い嫉妬心を抱くようになり、ついには相手女性を殺害してその資産を奪うという手口に変わっていくのだった。一方、女性の自殺現場の検証にあたったロビンソン刑事は、犯罪の臭いに気付き捜査をはじめるが…というストーリー。

昨今、クライム物における異常犯罪者を心理学的に紐解いていく手法は、多く扱われており、心理学を勉強しなくてもシリアルキラーの特徴・行動・種別くらいは知っている人は多い。世の中、にわか犯罪心理学者でいっぱいだ。

そういう状況なのに、本作では、犯人二人の心理状態、特にマーサのシリアルキラーとしての掘り下げが薄い。もちろん当時、プロファイリングなんてものは存在しないのだから、刑事たちがそういう観点で捜査しないのは当然だが、もう少し工夫をしてほしかった。子供の時に性的虐待を加えられていたとか、実際の性行為にはおよばないとか、そういう描写を入れていることから、製作側も考えていないわけではないことは判るのだが、現在の視点で分析して、多少フィクションになったとしても独自の描写・解釈をいれてよかったと思う。男女コンビとはいえ、女性のシリアルキラーはめずらしいのだから。

この踏み込みの甘さは、実話ベースで、その枠をはみ出すことに躊躇したからだろう。さらに言えば、製作総指揮として10人が名を連ね、且つたいしてキャリアのない監督というのを見ると、私の大嫌いな“船頭多くして船山に登る”という状況が容易に想像できる。

正直、レイとマーサの事件にケリをつけることが、ロビンソン刑事自身の過去にケリをつけることに繋がるロジックがよくわからない。刑事を辞めることはなんとなく理解できても、愛人と息子と3人で生活することになる道理がよくわからない。単に、ハードな仕事がいやになっただけ、家族を大事にしたくなっただけ、それだけのことに思え、変に事件の内容に絡めようとする安易さに若干イラっとくる。

芸術作品を、合議で決める手法には、本当にうんざりする。しかし、サルマ・ハエックのクレイジーな演技と、この現実の事件として奇異性が、愚作になるところ凡作まで持ち直してくれている(だから、コピーも実話であることを前面に出さないわけにはいかなったのである)。

クライム物のTVシリーズ中の一つを観た…くらいの感覚ならば充分満足できる作品である。私は、とてもよい題材を大人数でこね回して、マズイ料理に仕上げてしまったことに対して不満なだけである。

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プロフィール
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クボタカユキ
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映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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出張とか入ると、投稿は遅れてしまいますわ。
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