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公開年:1993年
公開国:オーストラリア
時 間:121分
監 督:ジェーン・カンピオン
出 演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキン、ケリー・ウォーカー、ジュヌヴィエーヴ・レモン、タンジア・ベイカー、イアン・ミューン、ホリ・アヒペーン 他
受 賞:【1993年/第66回アカデミー賞】主演女優賞(ホリー・ハンター)、助演女優賞(アンナ・パキン)、脚本賞(ジェーン・カンピオン)
【1993年/第46回カンヌ国際映画祭】パルム・ドール(ジェーン・カンピオン)、女優賞(ホリー・ハンター)
【1993年/第28回全米批評家協会賞】主演女優賞(ホリー・ハンター)、脚本賞(ジェーン・カンピオン)
【1993年/第60回NY批評家協会賞】女優賞(ホリー・ハンター)、監督賞(ジェーン・カンピオン)、脚本賞(ジェーン・カンピオン)
【1993年/第19回LA批評家協会賞】女優賞(ホリー・ハンター)、助演女優賞(アンナ・パキン)、監督賞(ジェーン・カンピオン)、脚本賞(ジェーン・カンピオン)、撮影賞(スチュアート・ドライバーグ)
【1993年/第51回ゴールデン・グローブ】女優賞[ドラマ](ホリー・ハンター)
【1993年/第47回英国アカデミー賞】主演女優賞(ホリー・ハンター)、プロダクションデザイン賞、衣装デザイン賞
【1993年/第9回インディペンデント・スピリット賞】外国映画賞
【1993年/第19回セザール賞】外国映画賞(ジェーン・カンピオン)

19世紀半ばのスコットランド。口がきけない未亡人のエイダは、ニュージーランドの入植者スチュワートに嫁ぐために、幼い娘フローラと一台のピアノと共に旅立つ。ピアノはエイダが感情を表現する唯一の道具であり、彼女の分身ともいえる物。長い船旅を経てニュージーランドに到着するも、スチュアートは迎えにきておらず、エイダとフローラは海岸で一夜をすごす。日が昇るとスチュアートが現地人の人足を引き連れてやってきたが、ピアノは重すぎるので置いていくという。エイダは強行に反発するが聞き入れてもらえない。ピアノと離れることができないエイダは、毎日のように娘と一緒に、ピアノを弾くために海岸を訪れる。そんな彼女の姿を眺めていたスチュワートの友人で、マオリ族と一緒に生活してすっかり同化している白人のベインズ。彼は、スチュアートに対して、自分の土地とピアノを交換しようと持ちかける。ベインズはピアノを自宅に運ぶが、それに激昂するエイダ。ベインズは、黒鍵の数だけピアノの弾き方を教えてくれれば、ピアノを返却するという。仕方なく受諾し、レッスンを開始するエイダだったが…というストーリー。

本作のサントラCDを持っている。というか、本作でマイケル・ナイマンにハマって他作のサントラも何枚か買ったほど。DVDの時代になって、さあて改めて観てみようなんて思ったのだが、なんとレンタルしていない。少なくともここ15年は間違いなく存在しなかった。『シリアルママ』『アダムス・ファミリー』なんかど同じく、いろんな事情でレンタルがされていなかった。もういい加減にせいや!と、ネットオークションで買おう探したが、これがなかなか高い(かといって1000円以上出すほどの情熱はない)。ここにきってやっとTSUTAYAがレンタルを開始。えらいぞTSUTAYA。

本作公開の後、日本でも『失楽園』ブームみたいな“不倫”ブームがおこったけど、そういう下卑たムーブメントとは圧倒的に地平の違いを感じる。

ホリー・ハンター演じるエイダは口がきけないのだが、口が利けないことで世事と一線を画すことが許されており、そのおかげで一児の母親でありながらひたすらピュアでいることが許されている。ピュア=心がきれいだと純粋だとかいうことではなく、直情的、本能に忠実…という方が近い感じ。
彼女のコミュニケーション面の問題を埋める役割もしている娘フローラは、逆に社交性が発達しており、ほぼ幼児であるにもかかわらず、時に大人のように振舞う。そのため、場面によっては大人と子供が逆転したような箇所もある。

登場人物のユニークさというか変態っぷりはなかかなのもの。

結婚とはいえ、ニュージーランドで本国と同じような生活はできるはずもなく、エイダは厄介払いで嫁に出されたようなもの。スチュワート側だってお手伝いと性処理の相手を調達したようなもので、根本的にまともな人間関係が構築できるスタート地点にいない。それでもなんとかなると思っているスチュワートの鈍感さ。ベインズはピアノを家に運べたのに、スチュワートは運ばない。どれだけ費用がかかるのかしらないが、迎えた新妻の大事な物を簡単に放棄するように命じる男に、魅力を感じるわけがない。

じゃあ、そのベインズはどうかというと、まあ変態オヤジですわ。レッスンを口実に触るは、脱がすわ。ピアノが大事だからといって、それを受け入れるエイダもエイダなのだが、まあそこは理解できなくはない。しかし、一線を越えるところはほぼレイプ状態で、その後、すっかりベインズになびいてしまうという展開。というか、ピアノなんかおかまいなしに欲情しまくて、鼻息を荒くしてベインズの家に突進する始末。さすがの娘もそりゃおかしいんじゃね?となるのだが、それでも止まらない。

2人の関係に気付きはじめてベインズの家に様子を見に行くスチュワート。ことがおっぱじまったら、コラーって乗り込めばいいのに、壁の隙間やら床下からずっとのぞいているという変態っぷり。じゃあ、それを許すのか?っていえば、そんなこともなく、最終的にが激昂してエイダの指を手斧で切っちゃうという気違いっぷり。まあ、恥をかいたっていう思いはわからんでもないが、もっとやりようがあるだろう。こういう展開になると、変態おやじだとおもっていたベインズが、えらくまともに見えてくるから不思議。

こういう話の流れだけおうと、変態メロドラマみたいだけど、ポイントポイントで感情を表現する象徴的な場面が美しく差し挟まれているのが本作の特徴。それこそが、本作の芸術性。最後のあれだけ大事にしていたピアノを沈めようと決心するくだりや、その後に海に引きずりこまれる流れなど、彼女の変化をエピソードでうまく表現していると思う。
義指をつけてピアノを弾いたときのコツコツという音が、特に印象的だった。これまで自分の感情をピアノで表現してきた彼女だが、以後、彼女のピアノの音にはあの義指の音が必ず付いている。あの音は、彼女が人として成長するために必要だった傷を覆うかさぶたであって、その傷跡を含めて“人間”だっていう象徴になっている。うまいよね。

こういう不倫物は基本的に興味ないんだけど、それでも美しかった、観てよかったと思えるのだからよっぽどの名作。お薦め。

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公開年:2013年
公開国:イギリス
時 間:113分
監 督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出 演:ナオミ・ワッツ、ナヴィーン・アンドリュース、ダグラス・ホッジ、ジェラルディン・ジェームズ、キャス・アンヴァー、ローレンス・ベルチャー、チャールズ・エドワーズ、ジュリエット・スティーヴンソン、ジョナサン・ケリガン、ハリー・ホランド 他
ノミネート:【2013年/第34回ラジー賞】ワースト主演女優賞(ナオミ・ワッツ『ムービー43』に対しても)
コピー:やっと会える。本当のあなたに――。


英国皇太子妃ダイアナとチャールズ皇太子が別居をはじめて3年が経過した1995年。2人の王子と離れて暮らす孤独な日々。そんな中、ダイアナの実父が心臓発作で倒れる。ダイアナは搬送先の病院で、父親の心臓手術を担当することになったパキスタン人医師のハスナット・カーンと出会う。やさしく気さくな人柄のハスナットに惹かれたダイアナは、彼に連絡先の電話番号を教え、宮殿に彼を招くようになる。もちろん、皇太子との離婚が成立していない中で、その関係を知られるわけにはいかなかったが、何度か会ううちに2人は男女の関係となる。真のパートナーとめぐり合ったを確信したダイアナは、BBCのインタビュー番組に出演し、別居の理由を告白。王室関係者から強い非難を受けるものの、そんな彼女をハスナットは励まし続けた。1年後、皇太子との離婚が成立。地雷廃絶運動などの人道支援活動を活発に行うダイアナはハスナットとの結婚を考えるようになる。しかし、ハスナットとの関係がゴシップ誌を賑わすようになり、その関係がハスナットの一族の知るところに。一族はダイアナとの結婚を強く反対し…というストーリー。

本作に対する英米の反応は散々で、潤沢な財産を使って好き勝手振舞っている怪物のように描かれてると批判されていた。でもその批判はちょっとズレているかな…と。私の目には、十分、怪物に見えたけど。未だ離婚は成立していない段階で、ゲート付のお屋敷に住んで、警備員が24時間常駐する屋敷に住んでいて(もちろん皇室の費用)、その屋敷に浮気相手を呼び込む…って、いったい何をやってるのか。本作の演出云々を差し引いても、事実だけを並べただけでも、アウトな人だと思う。もちろん、事の発端はチャールズ皇太子の浮気(というか本気)が原因なのだが、だからといって同じ行いをしてよいというわけではなかろう。

王子の母親なんだから普通の生活はできないな…と普通の感覚なら諦めると思うのだが、そうしないだけならまだしも、攻めの行動を続ける感覚がわからん。ハスナットとの関係に区切りがついたら、次はエジプトの大富豪と関係。よく、イギリス王室が、王子とアラブ系の兄弟が誕生することが認められない…と思ったとか、そういう陰謀説があるけど、イギリス王室が恐れていたのは、王子の母親が人質にとられて、政治的なイニシアチブをとられることだと思うんだよね。

何か、ダイアナ批判ばかりになっちゃったけど、国外から興味のない人間の目線なんてそんなもんでしょう。やたらナオミ・ワッツの演技が批判されてるけど、ダイアナの“事実”を認めたくないという無意識の反発を彼女に向けているだけだと思う。
ダイアナに興味のない私には、おめでたい女性がドツボにはまっていく破滅系の物語として普通に愉しめた。庶民派を強調してみたり、立場を利用してハスナットの就職先を勝手に決めちゃうお姫様っぷりを発揮してみたり、ただ“おめでたい”思考回路の持ち主なんだと思う。

「ふ~ん」っていう感想だけが残った凡作。

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公開年:1998年
公開国:フランス
時 間:80分
監 督:フランシス・ヴェベール
出 演:ジャック・ヴィルレ、ティエリー・レルミット、カトリーヌ・フロ、ダニエル・プレヴォスト、フランシス・ユステール、アレクサンドラ・ヴァンダヌート 他
受 賞:【1998年/第24回セザール賞】主演男優賞(ジャック・ヴィルレ)、助演男優賞(ダニエル・プレヴォスト)、脚本賞(フランシス・ヴェベール)




パリ在住で、出版業を営むブロシャンは、毎週友人たちとディナーパーティを催していた。しかし、そのパーティはただの食事会ではなく、仲間の間では“奇人たちの晩餐会”と称されていた。友人たちは持ち回りで、市井の変わり者を連れてきて、晩餐会で彼らの趣味や日々の生活などを好きなだけ語らせる。その奇行や変人ぶりをひそかに嘲笑するという、なんとも趣味の悪い会なのだ。そして今回はブロシャンが見つけてきた税務局勤めのフランソワ・ピニョンという男が招待される番だ。彼はマッチ棒の工作に熱中している不細工な小男だ。しかし、ブロシャンは晩餐会当日にぎっくり腰になって動けなくなってしまう。おまけに、夫の悪趣味さに辟易した妻クリスティーヌは家を出て行ってしまう。そこに、自分の趣味に興味を持ってもらったとウキウキのピニョンが、約束通りやってきて…というストーリー。

フランスのコメディって、イヤミが過ぎるとか、ヒネてるのとかが多いかな。逆に微笑ましいタイプのもあるね。その両極端だと思う。いわゆるコント的なのは、あったとしても面白くないのが大半。国民性の違いといわれればそれまでだけど、見下したり小バカにしたノリが多い。

本作のプロットも、変な人をわざわざ見つけてきては小バカにするという物なんだけど、"笑い”の質としては、そういう感じではない。むしろ、そういう上から目線の人間を逆に馬鹿にするテーマ。そして、純粋なドタバタコメディ。ドタバタといっても本当にドタバタ動くのではなくて珍騒動って感じ。

ピニョンがブロシャンの家に着くまでは、ちょっと作為がすぎるなぁ…という印象で期待薄だったのだが、彼らが二人きりになった瞬間から、馬鹿にしていた奇人に翻弄されまくるという、逆転の構図が繰り広げられる。もちろんピニョンは自分が馬鹿にされているなんて微塵も気づいていないし、ブロシャンとしてもそれに気付かれるわけにはいかない。とっとと帰ってほしいんだけど、ブロシャンに手伝ってもらわないとままならない。やることをやってもらってとっとと帰ってもらいたいんだけど、その度にピニョンがやらかして、ズブズブはまっていく。ぎっくり腰であまり動けないってのがすごく効いている。

ずっと2人芝居というわけじゃなく、ブロシャンの元恋敵や愛人、ピニョンの同僚、もちろんブロシャンの妻も登場するが、無駄に登場してわちゃわちゃするんじゃなく適度なペースで登場するのでごちゃごちゃしていない。そして全員が全員、ピニョンにやられちゃう。

フランスのコメディで、ニヤリじゃなくて普通に笑ったのは本作が始めてかもしれない。ピニョンは馬鹿にされて気の毒だなぁ~と理性では思うんだけど、一方で「こいつマジのアホじゃ~」って本気で笑った。酢をいれたらうまくなってる…とか、このレベルの小ネタも、個人的に好きだわ。

最後、自分が馬鹿にされていたことにやっとピニョンは気付く。ちょっと切ないんだけど、いい味になってる。本当にお薦め。コメディ映画としては、世界中の10指に入れてもいいレベルかもしれない。

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公開年:2013年
公開国:日本
時 間:96分
監 督:橋本昌和、(演出)佐々木忍
出 演:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、真柴摩利、林玉緒、一龍斎貞友、佐藤智恵、辻親八、一条和矢、矢野理香、ジェーニャ、玄田哲章、小桜エツ子、船木まひと、納谷六朗、玉川砂記子、阪口大助、大本眞基子、中村大樹、大川透、神谷浩史、早見沙織、大塚芳忠、鷹森淑乃、利根健太朗、大西健晴、浅利遼太、手塚秀彰、倉田雅世、松元惠、コロッケ、渡辺直美、川越達也、中村悠一 他
コピー:燃えよ! 焼きそば!! 焦がせ! 友情!!



B級グルメの祭典“B級グルメカーニバル”が春日部で開催される。テレビCMを見て、“ソースの健”のやきそばが食べたくてしかたがないしんのすけだったが、連れて行ってもらえない。そこで、カスカベ防衛隊のメンバーと一緒に、親に内緒で会場へ向かう。一方、A級以外グルメと認めずB級グルメの壊滅を企む“A級グルメ機構”は、B級グルメカーニバルを急襲。B級屋台を排除してA級グルメの祭典に変貌させてしまった。ソースの健は、伝説のソースさえあればこの難局を打開できると、知人女性“しょうがの紅子”にソースをカーニバルに届けるように連絡する。ソースを持ってカーニバル会場に向かう紅子だったが、A級グルメ機構の間の手は紅子にも及ぶ。紅子は偶然であったカスカベ防衛隊にソースを托すのだった。しかし、乗るバスを間違えてド田舎に到着してしまったしんのすけたち。遠足気分でのんきに会場を目指すカスカベ防衛隊だったが、そんな彼らにもA級グルメ機構の追っ手が迫る…というストーリー。

久々のカスカベ防衛隊メインの作品だが、既視感はハンパない。ストーリーも、悪の組織が正義の組織を攻撃して、その戦いに一般人やしんのすけの家族や仲間が巻き込まれるという“いつも通り”の内容。
おまけに、A級グルメ機構のグルメッポーイは、『ハイグレ魔王』と『オトナ帝国の逆襲』のミックスみたいな感じだし、その部下は毎度の変態コスチュームの複数人。“B級グルメカーニバル”側も『温泉わくわく大決戦』みたいな感じだが、根本的にソースの健以外はキャラを立たせる気すらない模様。まあ、何をやってもマンネリだと言われるだろうし、気をてらえばてらったで批判されるし、“毎年恒例”作品はしょうがないのかな。

しかし、本作は純粋に“アニメ”といして評価した出来映えだった。クレヨンしんちゃんといえばドタバタのイメージだが、単発の小ネタ的なおもしろムーブシーンはたくさんあるのだが、純粋に動きで楽しませようというシーンは意外と多くない。要するに『トムとジェリー』のような、ああなってこうなって…的な連続ムーブが本作は多いのだ。いつもと原画・動画スタッフが違うのかしら。これが、ストーリーは大しておもしろくなくても、目を惹きつけてくれる。正直、楽しかった。
『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『アッパレ!戦国大合戦』のような、アニメ史どころか日本映画史に爪跡を残すような作品が、そうそう生まれるわけはないのだし、これからは本作のように、“動きで見せる”というアニメの原点に返った作品になってくれるとうれしい。

加えて、個人的にうれしいのは、いつも差し挟まれる中途半端なCGの乗り物や建造物のカットが本作には無いこと。やっと止めてくれた。アレは興ざめするから無くなってうれしいかぎり。

それにしても、テレビ朝日なのに、何でももクロとコラボしないんだろうか。緑とマサオ 君、ピンクとネネちゃんの親和性はハンパないと思うのだが。赤としんちゃんは志の高いおバカ同士だし。ガッツリ出ずっぱりにしたら、興収25億円くらい簡単にいきそうだし、DVDの売れ行きもハンパないのにな。

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公開年:1987年
公開国:イギリス
時 間:95分
監 督:クライヴ・バーカー
出 演:アシュレイ・ローレンス、アンドリュー・ロビンソン、クレア・ヒギンズ、オリヴァー・スミス、ロバート・ハインズ、ショーン・チャップマン、アントニー・アレン、レオン・デイヴィス、マイケル・キャシディ 他
受 賞:【1988年/第16回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭】恐怖映画賞




フランク・コットンは、マルシャンの小箱というパズル・ボックスを手に入れる。それは、パズルを組み替えて特定の形をつくることで究極の性的官能状態を経験できると言い伝えられている物。早速自宅でパズルを組み替るフランクだったが、とある形が出来上がった瞬間、その肉体は一瞬にして破壊されてしまう。フランクは失踪者扱いとなるが、数年後、フランクの弟ラリーが、その失踪した家に引っ越してくる。ラリーの妻ジュリアと娘カースティとの3人家族だが、ジュリアは後妻。ラリーが出勤した後、フランクが使っていたと思われる部屋から、声がする。なんと、骨にわずかな肉をまとった化け物が出現。しかし、その声はフランクだった。例の小箱の力で肉体を消失したフランクだったが、引越しの際に怪我をしたラリーから滴り落ちた血を吸収したことで、少しだけ肉体が回復したのだった。驚くジュリアだったが、実はジュリアは、ラリーと結婚した直後からフランクと愛人関係となっており、失踪するまでその関係は続いていたのだ。ジュリアは、復活したラリーの言うがままに、より肉体を復活させるために、街で男たちを誘惑しては家に連れ込み、ラリーの“餌”とすることを繰り返す。しかし、ジュリアの行動を不審に思ったカースティは、彼女を尾行して…というストーリー。

あまりにピンヘッドさんのビジュアルが強烈すぎて、そういうクリーチャー物なのかな?と敬遠しており、今回初めて鑑賞。『死霊のはらわた』のようなB級レベルの部類かと思っていたが、そうではなかった。

後半までピンヘッドさんは全然出てこなくて、むしろ“魔のツール”をめぐる愛憎の物語としてプロットがしっかりしている。調べてみると原作小説が存在する模様。愛人であり夫の弟であるS男から支配される妻ジュリア。あんまり美人じゃないところがミソで、妙なリアルさがある。そのみだらな愛欲の深さがよく表現されており、快楽を求めて“箱”を開けてしまった男とのバランスが絶妙だと思う。
一方の騙されている夫は愚鈍で、そんな妻の様子にはまったく気づかない。逆にいえば信頼という名の愛情に溢れた人物。主人公である娘カースティも、そんな父を慮る家族愛に溢れた娘。同じ愛でも、情愛と家族愛という別種の愛のぶつかり合い、それが本作の根底にある。だから惹きつけられる。ピンヘッドさんたち魔導士の活躍を期待して本作を観始めると、期待はずれだと感じる人がいるかもしれないが、そうであっても納得できる内容だと思う。

ある意味、本作の重要ポイントである、魔導士さんたち関連の描写。もちろんビジュアル的にはインパクト十分で文句なしなのだが、ちょっと設定に粗があるのが気になった。快楽に溺れるものをこらしめるという目的なんだろうけど、そうなると手段に問題はあるが、ある意味、神の意向に沿った懲罰を行う執行官ということになる。ただ、どうも神側というよりも悪魔側の存在のようにも思える描写もあり、彼らの行動の源泉がいまいちよくわからない。
なんでカースティーまで襲おうとするのか。フランクの扱いをめぐって契約をしたはずで、彼女に牙を剥く理由がわからない。これで、ますます魔導士さんたちの存在意義が見えなくなってくる。

あと、ラリーの血が少しかかっただけで、ものすごく復活したのに、その後何人も丸ごとお供えされたのに、なかなか復活しないバランスの悪さ。私なら肉親の血は親和性が高いのでものすごく復活するんだよ!という設定にして、だから復活のトドメとして血縁のあるカースティを!っていう展開にするけど、ラリーは弟になりすまして普通にカースティを暮らそうとするんだよなぁ…。ものすごい違和感。
で、調べてみたら、原作ではカースティは娘の設定じゃないんだって。なんか本作のシナリオは練りが甘いよね。

まあ、難点はあるけれど、何なら魔導士さんたちがいなくても成立するくらい、しっかりした内容だった。軽くお薦め。たぶん続編を借りるね。

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公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:90分
監 督:マイケル・ホフマン
出 演:コリン・ファース、キャメロン・ディアス、アラン・リックマン、トム・コートネイ、スタンリー・トゥッチ、アンナ・スケラーン、伊川東吾、ジェラード・ホラン 他
コピー:なぜ、盗めない!?





イギリスの美術鑑定士ハリーは、メディア王で億万長者のシャバンダーに雇われていたが、人を人とも思わない横柄な態度をとり、自分を無能呼ばわりするジャバンダーに復讐しようと考える。ジャバンダーがモネの名画“積みわら、夏の終わり”を探していることを知った彼は、贋作をつかった詐欺をひらめく。まず、贋作の名人で知人の退役軍人ネルソン少佐に積みわらの贋作を作らせる。そして、入手経路に真実味を加えるために、ひとつのストーリを考える。かつて積みわらを所持していたのがナチスのゲーリングで、その別荘を攻撃したのはパットン将軍だった。そこでパットン将軍の部下の孫娘であるPJという女性を探し出し、その家から発見されたということに。PJも詐欺の仲間に引き入れて、成功の暁には報酬を山分けする約束をする。しかし、慎重なシャバンダーは、そんなところから積みわらが出てくるわけはないと、まったく信用しない。なんとかPJとシャバンダーを面談させるところまで持っていったのだが、奔放なカウガールであるPJは、ハリーの指示をすっかり無視。さらにシャバンダーがPJに熱を上げ始めたり、別の鑑定士を呼んだりと、計画はあらぬ方向に進み始め…というストーリー。

コーエン兄弟の脚本なのでもちろん大好物のハズ。でも、監督作品ではないし、『泥棒貴族』という往年の名作のリメイク…ということで、ちょと鑑賞は後回しになっていた。元の『泥棒貴族』を知らない。やっぱりコーエン兄弟作品は、独特なプロットや構成が魅力だと思うので、リメイクで力を発揮できるのか?という懸念が。

『英国王のスピーチ』でオスカーをはじめ様々な賞に輝いたコリン・ファースが主演。ひとつ極めてしまった後なので、こういう肩の力を抜いた仕事を…ってことなのかもしれない。けれど、意外と本作は難しかったと思う。
コリン・ファースの演技に文句はないのだが、さすがのコーエン兄弟でも、いわゆる“コメディー”は難しいんだなと。笑わせようとしているポイントはわかったけれど笑えなかった。おそらく日本人にはピンとこない笑い。
PJを誘うときのバーでの妄想。妄想でした…という演出、おもしろくない。ホテルの外壁をチャップリンばりにわたっていくシーン。ズボンがひらひら。ご婦人の部屋に入り込み何食わぬ顔をして切り抜けるハリー。まあ、その辺はいいのだが、ご婦人のおなら、PJの部屋でシャバンダーに見つからないようにすったもんだ…、ホテルの従業員とのやりとり、堂々とパンツ一丁でご帰宅…、ああ笑わせようとしてるんだな…という部分があまり笑えない。そうか、コーエン兄弟にも弱点があるんだな…というか、その辺は日本人と相性悪いんだな…と。過去作品では、シチュエーション的にニヤっとできる“笑い”が盛りだくさんなんだけどね。

笑いがダメなら、本筋である詐欺の部分でドキドキハラハラと驚かせてくれればいいのだが、とにかく中盤以降も詐欺師としてポンコツぷりばかり見せられる。というか、根本的にハリーが本職の詐欺師なのか、シャバンダー憎しで詐欺を思いついたポンコツ素人なのかが、判然としないのが敗因だと思う。
ちょっとネタバレしちゃうけど、実は前者で、そういうポンコツも含めて作戦なのですよ…というドンデン。でも、ああ振り返ってみると全部計画どおりだったのかぁ…という感じじゃない。持ち金がなくなって小銭を集めるところとか、後から考えてもプロっぽくないし。イヤ、プロでもそういうヘタを打つことはあるでしょ…とか、プロでもPJみたいな奔放な子には振り回されちゃうんだよ…というオモシロ場面だよ!ってことなのかもしれないけど、それがいまいちピンとこないんだな。

もしかすると、この脚本でも監督の演出次第では何とかなったのかもしれないなぁ。この監督さん、前に『終着駅 トルストイ最後の旅』を撮ってた人。演出が冗長で、コメディ向きじゃないんだよねぇ。つまんないのはコーエン兄弟のせいじゃないかも(いや、そう信じたい)。

それらを補うように魅力的なのがキャメロン・ディアス。ある意味、今回の計画のキャスティングボードを握っている人物なのだが、別に成功しなくてもいいかな…というゆるさと奔放さを兼ね備えた自由なキャラ。ハリーもシャバンダーも惚れ込んでしまう展開なのだが、年を重ねても年齢相応の魅力を爆発させているキャメロン・ディアスの説得力がすごい。若干寸胴ぎみなのだが、逆にそれが魅力的に映るほど。

なんとか彼女に救われた本作だけど、これは『泥棒貴族』を観て、比べなきゃだな。

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公開年:2002年
公開国:アメリカ
時 間:92分
監 督:ドン・コスカレリ
出 演:ブルース・キャンベル、オシー・デイヴィス、エラ・ジョイス、ハイディ・マーンハウト、ボブ・アイヴィ 他
コピー:ラフ・ミー・テンダー!
伝説のホラー映画「ファンタズム」シリーズの鬼才ドン・コスカレリ監督が仕掛ける前代未聞のバトルホラー!




テキサス州マッドクリークにある老人向けの医療施設ジェイディ・ホームで、入居老人の不審な突然死が続くようになる。その老人ホームには、頑固で口うるさいプレスリーの格好をした老人がいた。彼は20年前に腰を強打して、下半身を自由に動かすことができなくなり、長らく入所している。いくらリハビリを繰り返しても一向に改善する気配はなく、歩行器がなくては移動することもできない上に、強い薬の影響もあり意識も混濁する日々が続いていた。実は彼は、ただのコスプレ老人ではなく、かつてソックリさんと入れ替わって、自由な人生を謳歌していた本物のエルヴィス・プレスリーだったのだ。彼の唯一の友人で、自分をジョン・F・ケネディだと言い張る黒人の老人ジャックは、このところ発生している連続死が、精気を吸い取るエジプトのミイラ男“ババ・ホ・テップ”の仕業だという。確かに、全米各地を巡業していた“ミイラ展”から4000年前のミイラが何者かに盗まれるという事件があった。恐るべき事実を知った歩行器と車椅子の老人2人は、施設の平和を取り戻すために、ババ・ホ・テップ退治を決意するのだったが…というストーリー。

あらすじを読むと、本物のプレスリーなんだよ…という設定になっているんだけど、本編を見ると、本当なんだか虚言なんだかボケてるんだかよくわからなかったりする演出に。まあ、自分をJFKだと思い込んでいる黒人さんが相方だし、薬で頭がぼーっとしている人なので、仕方がないのはわかるんだけど、早々にご本人であることを確定した上で、話を展開したほうがおもしろくなったと思う。

主演のブルース・キャンベルは、『死霊のはらわた』『キャプテン・スーパーマーケット』の主役アッシュの人なのね。本人が望んでいるわけではないと思うけど、ずっとB級を貫いているキャリアはちょっと素敵。
ただ、B級に思えるのは、監督のせいだと思う。設定こそ突飛だけど、プロットはしっかりしている。不自由な体、人のために何かをする、何かを守るという“男の尊厳”を取り戻す過程、覚悟を決める瞬間、ぐっと熱くさせるポイントは押さえられていると思う。掘り下げれば、高尚なレベルまで昇華できたのではと思うけれど、そこはこの監督さんの方向性とは違うんだろうね。

また、如何せん移動手段が歩行器に車椅子なので、ラストバトルがトロい。まったくスピード感がないので、これをどう面白く観せるのかは、なかなか難しかったと思う。案の定、ボヤけたオチになってしまったな…と。

またもや、ロバート・ロドリゲスだったらどう撮ったかな…と考えてしまったよ。観客を没頭させたまま、馬鹿を真剣に貫くのって、本当に難しいんだな…と改めて思う。残念ながら貫けていない本作は、凡作からちょいと転げ落ちてる感じ。ちょっとお薦めするのが憚られる作品。

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公開年:2013年
公開国:日本
時 間:109分
監 督:FROGMAN
出 演:FROGMAN、河北麻友子、稲川淳二、鈴木あきえ、とーやま校長、よしだ教頭、上野アサ、佐野史郎、MEGUMI 他
コピー:さようなら総統。僕は幸せでした…






地球に優しい世界征服を企む秘密結社・鷹の爪団たちは、戦闘主任・吉田くんの実家がある島根でおみくじを引いたものの、全員“凶”と、あいかわらず。一方、地球から遠く離れた機会生命体惑星ゴゴゴは、悪のネマール帝国に侵略され、風前の灯となっていた。地下反乱組織は、ネマール帝国の弱点を探っていたところ、ネマール帝国に伝わる“滅びの予言”を知ることに。それは“青く輝く星に住む一人の尖った耳の男”がネマールを滅亡に導くらしい。すったもんだの末、かつてゴゴゴの総司令官で、現在はヘタをやらかしてドリンク係に降格されている中年男オキテマス・スマイルとその娘オキテマス・ヨルニーが、“救世主”を見つけるために青い星・地球に向かうことに。そしてその救世主とは、秘密結社・鷹の爪団総統のことだった…というストーリー。

わかってはいたけれど、企業の絡め方とか、バジェットゲージとか、予算不足になって絵が雑になるとか、何から何までこれまでの劇場版と同じノリ。何か違うことがあるだろうと期待した私がアホだった。でも、やっていることは何一つ悪くない。このようなノリをおもしろがることができない人は“鷹の爪”シリーズは無理なわけで、いちいち文句をいうこと自体が野暮なのは百も承知なのだが、でも正直飽きた。

トランスフォーマーのパロディはまあ良しとしても、スマホアプリの“どこでも島根”とかあまりに都合がよすぎ。総統の出生の秘密とかもパロディなのだが正設定でいいのか否か微妙。ネマールの大ボスとのラストバトルがあっさり終わっちゃったなぁ…とか、大山のぶ代と佐野史郎は私にとってはどうでもよかったなぁ…とか。
フィリップの子供のくだりとか、一応まともな複線もあったりするんだけどね…ってかフィリップって結婚してたか。
まあ、吉田くんのお母さんの営業っぷりも、あそこまで開き直れば、かえって心地よい。もう、ご当地ネタもちょっといってみたくなるくらいだから成功なんだろう。こういう作品なんだもん、「イヤなら観るな」だよね。

吉田くんが親からジャスティスと呼ばれている件とか、フィリップがリモコンで蘇生したり霊体になったりするとか、その辺を抑えていればついていけるだろう…って、もうある程度観ていないとダメってことだよね。一見さんお断り状態になるのだけはマズいんじゃないかな。

まあ、微塵も脳を使わない作品を年に2回くらい観たくなるのね。

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公開年:2013年
公開国:日本
時 間:119分
監 督:橋本一
出 演:大泉洋、松田龍平、尾野真千子、田口トモロヲ、波岡一喜、池内万作、安藤玉恵、冨田佳輔、土平ドンペイ、佐藤かよ、桝田徳寿、篠井英介、ゴリ、矢島健一、マギー、永倉大輔、麻美ゆま、徳井優、近藤公園、筒井真理子、片桐竜次、松重豊、渡部篤郎 他
ノミネート:【2013年/第37回日本アカデミー賞】助演男優賞(松田龍平)、助演女優賞(尾野真千子)
コピー:四つの運命は、【謎】で出会う。さあ、冒険のはじまりだ。


札幌ススキノ。探偵“俺”が行きつけにしているオカマ・ショーパブ“ケラーオオハタ”のママ、マサコちゃんが自宅マンション一階のゴミ置き場で何者かに殺害される。マサコちゃんが手品が得意で、マジックコンテストに参加したところあれよあれよとTV中継もされる全国大会に出場することになってしまったのだが、優勝した翌日に殺されてしまったのだ。警察の捜査は進展しないまま数ヶ月が経過。仲間たちのもこの件に触れようととはしないため、不振に感じた探偵が調査をすると、マサコちゃんが地元の大物二世議員・橡脇孝一郎と付き合っていたという事実が判明する。そんな探偵の前に、有名美人バイオリニストの河島弓子が現われ、マサコちゃん殺しの犯人を捜すと息巻く。マサコちゃんは彼女の大ファンで、何度となく彼女(?)の応援に救われてきており、その恩返しをしたいのだという。探偵は彼女に自分は動かずに、金をだして自分に捜査を依頼しろ…となだめ、相棒の高田と共に真相究明に乗り出すのだったが、橡脇を支持する集団や、橡脇に恩を売ろうとするヤクザ花岡組が、探偵の命を狙い襲撃を繰り返すようになり…というストーリー。

TV放送していたようだけど?面倒くさいのでレンタルしてきた。
前作は、ああ札幌が舞台かぁ…、しっかりロケしてるなぁ…というご当地ムービーとしてのすばらしさを堪能したわけだが、今回はしっかり内容を愉しんだ。オカマのショーパブが札幌らしいか…といわれると、当たってるようなあ当たっていないような…(笑)。
前作もそうだったけど、室蘭、中山峠…と札幌を離れると、なんか位置関係、距離関係が何か変な感じなるんだけど、地理が詳しい人からみてどう思う?
#あげ芋は一個喰ったら、十分だ

フィクションなので目くじらたてるなよ…といわれそうだけど、ものすごく違和感を感じるのが、橡脇支持者が自発的に集まっており、それが地元民であるという設定。
原発反対派(であること自体は別にいいんだけど根本的姿勢が間違っている)の議員の応援演説に、実際の札幌市長がノコノコ出演しているといる滑稽さはご覧のとおりで、実際、原発反対のデモは北海道庁前では定期的に行われていたりする。しかし、本作のエキストラのような小奇麗な見た目でもないし、あんなに人数はいない(でも、TVニュースではもっと人数がいるように見えるんだけど)。さすが、“試される赤い大地”といわれるだけの状況ではあるのだが、さすがに、“有志”が自然発生的に集まるという状況はありえない。沖縄の米軍基地反対デモが、ほとんど地元民によってなされていないのと一緒。これ、地元民じゃなくって、日本全国から集まってきた“プロ市民”という設定にすればよかったのに。それも一番特徴のある、バット振り回す人がやる物マネ、全部在阪球団のバッターのすればリアルだったのに。

それ以外は、良かったと思う。いきなりネタバレで申し訳ないけど(以下、ネタバレ注意)。

まーた依頼者が犯人かぁ?という、何割かの観客の予想を裏切ってくれたのは良かった。数ヶ月、時間を経過させるためだけに、わざわざ麻美ゆまを持ってくる必要性があったかとか、クリスチャンという設定をもう少し生かすことはできなかったのか…とか、冒頭の大倉山のシーンは掴みとして正解か?とか、橡脇陣営とか花岡組関係あたりが、微塵も勧善懲悪的な展開がなくてスッキリしないとか、ちょいちょい気になるところはあったけど、私は、前作の倍は愉しめたと思う。
犯人ははじめの方にすでに出ているという法則は、嫌いじゃないよ。

尾野真千子には申し訳ないが、いままでウマい役者だと感じたことはない。ヘタだとも思わないけど、地のキャラそのままに見えて仕方がないんだと思う。今回の役も、バラエティ番組とかに出ている本人と大差ないし。そういう意味では、大泉洋は大泉洋であって“探偵”なのかなコレ…と前回から思っている。だけど、今回のように狂言回しに徹しているような役なら、これもありだと思う。打って変わって松田龍平は、得な役だなと思う。

おそらく次回も作られるだろうけど、観ただけで北海道に行きたくなるような、ガッツリご当地映画にしてほしい。
#ところで、コピーの“四つの運命”って何を指してるんだ?と思ったものの、確認する気はおきない。その程度の作品ってことか…。

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公開年:1968年
公開国:アメリカ
時 間:98分
監 督:山下耕作
出 演:藤純子、高倉健、若山富三郎、待田京介、大木実、山本麟一、若水ヤエ子、疋田圀男、金子信雄、土橋勇、清川虹子、山城新伍、鈴木金哉、遠山金次郎、江上正伍、三島ゆり子、岡田千代、林彰太郎、楠本健二、阿波地大輔、志賀勝、堀正夫、西田良 巽、沼田曜一、前川良三、村居京之輔、島田秀雄、森源太郎、有島淳平、矢奈木邦二郎 他



大分のある矢野組の組長・矢野仙蔵には、一人娘・竜子がいる。幼くして母親は死に、男手一つで育てられているため、やくざ者の娘と後ろ指さされないように、人並み以上の教育を施し躾けて育てた。その甲斐もあって堅気の商家への縁談が決まる。しかし、仙蔵が闇討ちにあって殺されてしまうと、揉め事を恐れたのか結婚話は破談になってしまう。組の者はフグ新を除いてみんな去ってしまい、組をたたまざるを得ない状況に。竜子はフグ新に堅気になるよう命じ、自分は全国津々浦々の賭場を流れる博徒修行に出る。しかし、その本心は、仙蔵の遺体の傍らに残された犯人のものと思しき長財布をたよりに、犯人を探す旅なのであった。それから5年経った明治18年。“緋牡丹のお竜”の名で知られるようになった竜子は、岩国の賭場で胴師のイカサマを見破ると、逆恨みされて命を狙われることに。それを、旅の博徒・片桐に救われる。片桐の人柄に惹かれた竜子は、自分の生い立ちを語るが、例の長財布を見た片桐の顔は神妙となる。その後。片桐が去ると、長財布がスられていることに気付く竜子。もしや片桐が父を殺した男なのでは?と疑う竜子だったが…というストーリー。

昨日の『女囚さそり』同様にアウトローの女性キャラクター物で、且つシリーズ化している作品ということでチョイス。こちらも、高倉健、若山富三郎、清川虹子と脇を固めているのが豪華すぎる。冒頭の藤純子の音痴っぷりには、コケそうになるが、それはご愛嬌。おっさんの年齢でも藤純子(富司純子/寺島純子)といえば、昼下がりのワイドショーで、世間知らずっぷりをふんだんに発揮していた人という印象しかないんじゃないか。今の人なら、寺島しのぶ、尾上菊之助のお母さんという認識か。ここ数年は、『犬神家の一族』とかチョイ役程度で、印象薄いよね。

こういうヤクザ物には、基本的に興味はなかったのだが、シリーズ化されている作品には、それなりの理由があるということを、如実に証明している作品。なんといっても、一番驚きなのは、シナリオにまったく穴が無いこと。鈴木則文という人なんだけど『トラック野郎』の監督・脚本をやってる人だった。去年観た『トラック野郎』のときもシナリオがスゴイって褒めた記憶がある。ちょっと研究するに値する人のような気がするのだが、作品ラインナップをみると、ヤクザ、エロ、暴力ばっかりでちょっと臆してしまう。調べたら、先月お亡くなりになっているじゃないか。惜しい才能だが80歳ということなので致し方ないか。

博徒になる過程や竜子の性格、その行動様式が実にきれいにマッチしていること。高倉健演じる片桐の格好良さと、もしかして犯人か?というミステリアスさの混ざり具合。そして片桐と真犯人の関係性。真犯人と竜子の縁者との様々なエピソードが、話を展開させるだけではなく、キャラクター同士の結束を深める材料になっていること。明治初期という時代背景が、真犯人の行動や性格に十分なリアリティを持たせている点。これらが、すべて最後に集約されて、大爆発する展開。大爆発の後に、二代目就任の口上シーンできれいにクール・ダウンするというセンスの良さ。

ちょっと富士松が本当に不死身すぎるんじゃね(笑)ってこと以外は、本当に穴が無い。是非是非観てほしい、超お薦め作品。

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公開年:1972年
公開国:日本
時 間:93分
監 督:伊藤俊也
出 演:梶芽衣子、白石加代子、荒砂ゆき、伊佐山ひろ子、八並映子、賀川雪絵、石井くに子、渡辺文雄、室田日出男、堀田真三、小松方正、佐藤京一、安藤三男、阿藤海、久地明、林宏、宮地謙吉、五野上力、田中筆子、相馬剛三、高月忠、小林稔侍、伊達弘、笠原玲子、河野ミサ、戸浦六宏、三浦忍、園かおる 他




女性刑務所の地下独房に、食事も満足に与えられずに拘束されている松島ナミは、スプーンをコンクリートの床で研いでナイフを作製し、復讐の隙を狙う。ある日、法務省の役人が視察に訪れ、式典に並ぶために久々に地上のだされたナミは、刑務所長郷田のスプーンでつくったナイフで目元を狙う。間一髪で失明を免れた所長は激昂。石切り場の重労働に加え、看守たちに命じてナミを輪姦させるのだった。その後、他の女囚と一緒に移送される時、一瞬の隙をついて看守を殺害し脱走に成功する。ナミと一緒に脱走した面々も曲者ぞろいで、ボス格の大場は、亭主の浮気に立腹して幼い子供と、腹の中の子供を殺したという犯歴の持ち主。大場はナミを毛嫌いしていたが、脱走という共通の目的のために行動を共にする。途中で発見した山小屋で一休みする一行だったが、女囚の一人・及川が、抜け出してしまう。実は近所に我が家があり、子供会いたさに独断で行動したのだ。しかし、看守たちはその行動を予測して待ち伏せており及川を捕縛。看守たちは、及川を脅して彼女たちが潜む山小屋へ案内させるのだったが…というストーリー。

劇画原作特有の訳のわからなさと、サイケとエログロを履き違えたようなセンスで、独特の質感だった『女囚701号/さそり』。公開同年中に続編が作製されていることからも、当時の人気が伺えるというもの。本作は2作目。話は繋がっていて、所長の右目は前作でさそりに刺されていて、きちんと傷も残っている。逆に言えば前作の経緯を知らないと、わからない部分が多いということだ。

梶芽衣子の美しさはいうまでもないが、暴行シーン、輪姦シーンなどおかまいなしで、当時どういう扱いだったのか、どういう売り方をしようとしていたのか、よくわかる。そういうお色気アリの女優を時代は求めていたのに、風当たりは強いという、いびつな時代だったんだと思う。正直、辞めたかったんじゃなかろうか。

前作は、恋仲だった刑事に裏切られたパーソナルな怨念が、さそりの行動の源泉だったが、本作では自分に牙を向くすべての者に対して、分け隔てなく仇をなしている漢字。若干さそりが“神格化”しているような感じが漂いはじめており、シリーズ化するのも納得できる。個人的には前作よりもかなり好きかも。

なんといっても、MVPは白石加代子だろう。お得意のアングラ演技…というか、むしろアングラ演技以外に何もできなんじゃないのか?と思わされるほどのインパクト。彼女の狂気が、“さそり”という非凡な胆力のキャラクターを孤立させないことに成功している。松島ナミだけだと、あまりに超人すぎて、そんな超人ならどんなピンチでも切り抜けられるでしょ?と思っちゃうけど、それに張り合うようなクレイジー人間を登場させることで、うまくバランスが取れていると思う。

一方で、看守連中の間抜けっぷりがスゴイ。シナリオ的に、もうバレバレなのになんでストッキングを被って襲うのか、意味がわからない。仕事とはいえお父さんがあんな抜けな死に方していたらイヤだろうなぁ。小松方正だって室田日出男だって、別に好んでこんな役はやりたくはなかっただろうけど、しっかり全うしているのがすごいよ。
この、看守サイドを馬鹿にする演出は最後まで続き、女囚にだまされて、もう人質はいないと判断して銃撃、結果的に一般市民を警察が殺してしまう構図になる。慰安旅行のサラリーマンも本作ではターゲットで、いわゆる“社畜”も政府の犬だといわんばかり。あいかわらず権威・役人に対する憎悪が各所に見られるのだが、もう、四方八方、手当たりしだい噛み付き始めている。学生運動、革命思想をこじらせちゃって、ここに極まれりという感じ。そして、それが本気でやってるのか、ネタとしてやっているのか微妙なラインだというのが、本作の魅力だったりする。

白石加代子演じる大場とも、渡辺文雄演じる所長とも、しっかり決着をつけて終了しており、脚本としてもなかなか収まりがよい。前作と本作でワンセットお薦め。次作を観るかは未定。

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公開年:2012年
公開国:アメリカ
時 間:95分
監 督:ヤン・サミュエル
出 演:ラッセル・クロウ、カン・リー、ルーシー・リュー、バイロン・マン、RZA、リック・ユーン、デヴィッド・バウティスタ、ジェイミー・チャン、ダニエル・ウー、パム・グリア 他
コピー:鉄の拳でぶっつぶせ!!





19世紀の中国。武装グループの猛獅会と群狼団による抗争が続く叢林村。そこで鍛冶屋を営む黒人の男性ブラック・スミスは、両グループから特注の武器の製作を注文される。鍛冶屋の男は、娼館で働くレディー・シルクを愛しており、彼女を身請けするために金を稼ぐ必要があったのだ。そんな中、政府の総督から猛獅会が近海の輸送を依頼される。しかし、猛獅会の首領・金獅子が、部下の銀獅子と銅獅子に裏切られ殺されてしまう。銀獅子は叢林村一帯の独占を目論んで群狼団を襲撃し殲滅。おそらく自分を復讐しにくるであろう金獅子の息子ゼン・イーにも暗殺部隊を差し向ける。“X刀”の名手ゼン・イーは善戦したものの、全身を真鍮に変化させる特殊能力を持つ殺し屋・金剛によって瀕死となるが、ブラック・スミスに匿われて一命を取り留める。一方、金塊輸送の噂を聞きつけて、各地から無法者が叢林村に集まってきて…というストーリー。

ルーシー・リューは、まあわからんでもないけど、ラッセル・クロウが出るようなレベルの作品か?と誰しも思うところ。
監督で主演のRZA(主演だよね?タイトルになってるアイアン・フィストをつけているのは彼だし)は、なにかラリってるような目線と、いまいち締まりの無いお顔。脇役ならまだしも、彼が主役級を演じることで、だれが主役なのかわからなくなって、話がボケてしまうという悪影響が生まれていると思う。本当に“顔じゃない”を地でいっている。同様にメインキャストのリック・ユーンとかバイロン・マンという東洋系の俳優たちが、中途半端な演技でだらしない。所詮は“キワモノ”扱いなのだから、爪痕を残してやる!くらいの、ユニークな演技をしてほしかった。

そういうキャスト面での難点を差し引いても、群像劇っぽく描こうとしていることが仇となっていると感じる。もっと主役の鍛冶屋を“太く”描くべきで、それが難しいなら、ラッセル・クロウを演じるジャック・ナイフのエピソードを濃くするとか、複数になってもいいから話の奔流を太く描くべきだった。マダム・ブロッサムの話だって、掘り下げようとすれば、そこだけで一本映画ができそうなくらい濃そうなんだもん。なんでもかんでも盛り込みすぎなんだろう。

実は、振り返ってみると、よくできたお話だったりする。原案も脚本もRZAによるもので、かなり思い込みもあったのだろう。むちゃくちゃだけど、逃げてきた黒人奴隷という設定も悪くないし、母親が地味にパム・グリアが演じているのなんて、嫌いじゃないわ。
この人は脚本の才能はあるのだと思う。ところが、なぜか安っぽさだけが際立ってしまった。香港映画の“チープさ”の再現は、あえてやっている…という感じを出さねばいけなかったのだが、普通にチープに見えてしまっている。なぜか。

やりたいことはものすごくわかる。深夜とかに突然放送されるカンフー映画、たいして面白いストーリーじゃないし、穴だらけの設定だったりするけれど、独特の世界観のせいなのか、魅入っちゃうアレ。アレを再現したくなる気持ち、あの世界に入り込みたくなる気持ちは理解できる。
作り物ゆえの小奇麗なセット、普通にきれい過ぎる画質、が逆にうそ臭い。汚れたお話なのだがら、画面をも汚すべきだった。結局は“空気”、雰囲気を作ることに失敗しているのだと思う。なんでもかんでも自分でやらないで、自分のやりたいことを理解してくれる同志にまかせるところはまかせないと、いけないんじゃないのかな。

本作自体は凡作中の凡作だけど、ロバート・ロドリゲス監督でリビルドさせたら、シリーズ化できそうな気がする。そのくらい脚本自体は悪くない。

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公開年:2011年
公開国:アメリカ
時 間:122分
監 督:ヤン・サミュエル
出 演:ジェームズ・マカヴォイ、ロビン・ライト、ケヴィン・クライン、エヴァン・レイチェル・ウッド、ダニー・ヒューストン、ジャスティン・ロング、アレクシス・ブレデル、ジョニー・シモンズ、コルム・ミーニイ、トム・ウィルキンソン、ジェームズ・バッジ・デール、トビー・ケベル、ジョナサン・グロフ、スティーヴン・ルート、ジョン・カラム、ノーマン・リーダス 他
コピー:彼女の罪。それは、最期まで秘密を守ろうとしたこと――。



1865年。南北戦争の終結直後、リンカーン大統領が南軍の残党に暗殺される。主犯の有名俳優ジョン・ウィルクス・ブースは逃亡中に射殺されたが、他に8人が共犯として逮捕される。その中の唯一の女性メアリー・サラットは、下宿屋の経営者で2人の子供を育てる未亡人だった。世間の声は一刻も早く被告たちを処刑することの望んでいたが、元司法長官のジョンソン上院議員は、彼女がただ犯人達に宿を貸したという理由だけで逮捕されたことと、彼らが民間人であるにも関わらず軍法会議で裁かれようとしていることに意義を唱え、弁護を引き受ける。しかし、ジョンソンは南部出身で、メアリー・サラットも南部出身だったため、裁判が北部対南部という構図になっては、勝ち目がないと考えた彼は、元北軍大尉で弁護士の資格を持つフレデリック・エイキンに弁護を依頼する。しかし、エイキンも、暗殺者たちに強い憎しみを抱いており、一旦はその依頼を固辞するが、押し切られてしまう。エイキンと面会したメアリー・サラットは、毅然と無罪を主張。そんな彼女の態度に、何かを感じ取ったエイキンは…というストーリー。

スピルバーグの『リンカーン』は暗殺された直後に終了するが、まさにその時点から本作はスタートする(『リンカーン』は2012年で本作のほうが早く公開されている)。『リンカーン』がオバマ政権で調子にのった民主党支持者によって作られた作品だとすれば、本作はたとえリンカーン個人が立派だったとしても、民主党のやつらなんかクソ人間ばっかりだ!と主張するような内容になっている。

リンカーンは、憲法修正を戦時下に行うことに執心したわけだが、民主党のやつらは、犯人達を軍事法廷で裁こうとする。戦争はすっかり終わっているのだから、そんなことをする道理はない。正確な手続き上は終結していないとか、最高司令官である大統領が殺されたのだから軍事法廷でもいいんだ!とか色々理由はつけられるのだろうが、三権分立を標榜している国家がそれをやっちゃあおしまいだ。リンカーンが死んだその瞬間から、憲法違反をやりまくる。民主党なんざ理念もなにもない恥知らずの無能集団だ!と、まさに本作はそう主張しているように見える。
そして、現在のオバマ政権の無能っぷりを見るに、私も民主党は、リベラルというもっともらしい外套を羽織った無能な腰抜けだと思っている。

本作は、北部の民主党勢力がいかにもっともらしいことをいっているだけの人間か。たまたま勝っただけで、鬼の首でもとったかのようにエラそうにしている、品性のない人間たちだ…ということを主張する作品なので、判事や検事だけじゃなく、民衆たちまでも、クソ人間だらけ。アメリカ合衆国憲法の理念に則って、法の精神に則って、エイキン弁護士は行動するのに、白い目で見られ、暴行され、社交クラブからは排除さら、恋人も離れていく。軍事法廷で負けても、人身保護礼状を取って民間裁判を受けさせようとするが、無視されて死刑が執行されてしまう。なんと、リンカーンが血を吐くようにして修正した憲法は、その直後に“死”んでしまっていたという皮肉。

エンドロールの前に、その後の最高裁判決で、メアリー・サラットに対して行われた軍事法廷は憲法違反であることが確認され、息子のジョン・サラットは釈放されたという顛末が語られる。一応、憲法も司法もなんとか回復されたという内容で終わっている(息子を守ろうというメアリー・サラットの希望がかなったという捉え方もできる)。

まあ、本作がやりたいことはわかるのだが、とにかく、エイキン弁護士はこれでもかこれでもかと、いじめられまくる。全編にわたって逆転できそうな雰囲気が一切ない。ということで、観ているのがものすごく苦痛なのだ(長さが3時間くらいに感じるほど)。そう、意義のある内容だとは思うが、作品としては、とてもとても観ていられない内容。本当は『リンカーン』の直後に連続して観るつもりだったのに、あまりに苦痛で途中でやめてしまったほど。さすがにお薦めできないなぁ。
#“声をかくす人”という邦題は、まったく意味不明。なんのことやら。

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公開年:2003年
公開国:フランス、ベルギー
時 間:94分
監 督:ヤン・サミュエル
出 演:ギョーム・カネ、マリオン・コティヤール、チボー・ヴェルアーゲ、ジョゼフィーヌ・ルバ=ジョリー、ジェラール・ワトキンス、ジル・ルルーシュ、ジュリア・フォール、レティシア・ヴェネチア、エロディー・ナヴァール 他
コピー:なぜだか いつも、からまわり




肺癌に犯されて余命わずかな母親を持つジュリアンは、ポーランド移民という理由でイジメられているソフィーに手を差し伸べる。それがきっかけで、あるゲームを始めることに。それは、相手が出した“条件”を何がなんでもクリアする。それを交互に繰り返すというもの。相手が仕掛けてきたら絶対にのる…それが鉄則。このゲームのおかげで、イジメられていることも、母親の病気のことも忘れられる2人だったのだが、次第にエスカレートしていき、授業中に汚い言葉を乱発したり、校長室でわざとおしっこを漏らしたり、ソフィーの姉の結婚式をめちゃめちゃにしたりと、周囲から白い目で見られるように。やがて大人になり、その友情は愛情に変わっていたのだが、お互いそれを認めることはかなった。相変わらずゲームだけは続けており、それは本心を隠して友情を継続するために儀式になっていた。やがて、それぞれ恋人をつくり結ばれるのだったが…というストーリー。

フランスらしい雰囲気の、ちょっとクレイジーだけど微笑ましいファンタジー調のコメディかな…と思っていたが、大人になってからテイストが一変する。
ジュリアンの母が死んだあと、息子の悲しみを緩和するために、ソフィーを泊まらせるジュリアンの父だったが(ものすごくソフィーを嫌っていたのに)、大人になってもそのまま一緒に寝ているという奇妙さ。あら、付き合ってるのかな?と思いきや性的な関係は一切なく、以前と同様にゲームは継続している。一風変わった“ゲーム”と表現されているのだが、これは交互に攻守を切り替えるSMプレー以外の何物でもない。この快楽におぼれた二人は、その“プレー”の快感から逃れられなくなっている。

どうやら、ソフィーのほうは自分の本心に気付いている模様なのだが、ジュリアンはソフィーとそういう関係になるなんてことは微塵も考えていない模様。この認識の差がさらなるすれ違いを生む。こんなプレーを延々と続けるわけにはいかないと(無意識に)考えたジュリアンは、別の女と結婚しようとするが、プレーの快感から逃れられないと考えたソフィーは結婚式をむちゃくちゃにする。
これによって、彼女の意図に反して別れ別れになる。絶望したソフィーは割り切って別の男(有名人)と結婚し、幸せな生活をおくることになる。むしろ本心を自覚していたおかげで、割り切ることができたといえる。
一方ジュリアンは、望んで普通の生活を選択したものの、その後で自分の本心に気付いてしまう。次はジュリアンが苦しむ番だ。まるで例のゲームが継続されているようだ。

あとは観ていただきたいが、すったもんだでゲームは再開されるが、お互い家庭をもった後に再開されたゲームは、子供の戯言では済まない。どういう結末を迎えるのか…。ラストの展開は、賛否両論だと思うが、私は嫌いじゃない。
 現実逃避するための行いが、快感に変貌してしまい、その快感から逃れられなくなた二人。ただただ快楽に溺れた人間の先に待っている運命とはどういうものなのか。
世の中には、自分は無条件に庇護されるべきだとマイノリティを暴走させている者たちがたくさん存在するが、その末路はどういうものなのか示しているラストであるともいえる。

フランス作品の良さと悪さが、メーターを振り切って混在したような作品。収拾がつかなくなったお話を、ドラスティックなラストシーンでなぎ倒してくれた。悪趣味ではあったが、そこまでやってくれたら、逆に気持ちがよかったかも。

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プロフィール
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クボタカユキ
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映画(DVD)鑑賞・特撮フィギュア(食玩/ガシャポン)集め
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